2020-012019
スピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物
- 審判番号
- 2020-012019
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-079195外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年08月27日
- 審決日
- 2022年01月25日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】三井金属鉱業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
- 分類
- P18 .537-WY (C01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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本願は、2017年(平成29年)2月28日(優先権主張 平成28年2月29日(JP)日本国)を国際出願日とする特願2017-562778号の一部を平成30年4月17日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和2年5月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由1(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
第3 本願発明
本願請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明9」という。)は、令和2年2月12日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1~本願発明9は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】Li、Mn及びOと、これら以外の2種以上の元素とを少なくとも含む、金属Li基準電位で4.5V以上の作動電位を有するスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物であって、一般式[Lix(M1yM2zMn2-x-y-z)O4-δ](式中、1.00≦x≦1.20、0.20≦y≦1.20、0<z≦0.5、0≦δ≦0.2、式中M1はNi、CoおよびFeからなる群から選択される一種または二種以上の元素であり、M2は、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、In、Ta、W、Re及びCeからなる群から選ばれた1種であるか又は2種以上の元素の組み合わせである。)で示され、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定によるD50、モード径及びD10に関し、D50が0.5μm~9μmであり、D10が0.2~4.0μmであり、(|モード径-D50|/モード径)×100の値が0~25%であり、(|モード径-D10|/モード径)×100の値が20~58%であり、続きを表示(全28行)走査型電子顕微鏡(SEM)により得られるSEM画像より算出した平均一次粒子径が0.3μm~6.0μmであり、前記平均一次粒子径と前記D50から算出される平均一次粒子径/D50が0.20~0.99であって、結晶子サイズが80nm~490nmであり、当該結晶子サイズと前記一次粒子径から算出される結晶子サイズ/平均一次粒子径が0.01~0.32であり、前記モード径が0.4μm~11μmであることを特徴とするスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物。【請求項2】Li、Mn及びOと、これら以外の2種以上の元素とを少なくとも含む、金属Li基準電位で4.5V以上の作動電位を有するスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物であって、一般式[Lix(NiyMzMn2-x-y-z)O4-δ](式中、1.00≦x≦1.20、0.20≦y≦0.70、0<z≦0.5、0≦δ≦0.2、式中Mは、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Co、Cu、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、In、Ta、W、Re及びCeからなる群から選ばれた1種であるか又は2種以上の元素の組み合わせである。)で示され、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定によるD50、モード径及びD10に関し、D50が0.5μm~9μmであり、D10が0.2~4.0μmであり、(|モード径-D50|/モード径)×100の値が0~25%であり、(|モード径-D10|/モード径)×100の値が20~58%であり、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られるSEM画像より算出した平均一次粒子径が0.3μm~6.0μmであり、前記平均一次粒子径と前記D50から算出される平均一次粒子径/D50が0.20~0.99であって、結晶子サイズが80nm~490nmであり、当該結晶子サイズと前記一次粒子径から算出される結晶子サイズ/平均一次粒子径が0.01~0.32であり、前記モード径が0.4μm~11μmであることを特徴とするスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物。【請求項3】粉末X線回装置(XRD)により測定される線回折パターンにおいて、リートベルト解析より得られる歪みの数値が0.00~0.35であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物。【請求項4】金属Li基準電位において、4.5Vを超える領域の充電電圧で作動するリチウムマンガン複合酸化物粒子(「コア粒子」とも称する)の表面の一部に、少なくともチタン、またはアルミニウム、またはジルコニウムまたはこれらのうちの2種以上を含有する層(「A層」と称する)を備えた請求項1~3の何れかに記載のスピネル型リチウムマンガン複合酸化物。【請求項5】前記A層は、さらにリン(P)を含有することを特徴とする請求項4に記載のスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物。【請求項6】前記A層の厚さは0.01nm~200nmであることを特徴とする請求項4又は5に記載のスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物。【請求項7】粉末X線回折装置(XRD)により測定されるX線回折パターンにおいて、2θが14.0~16.5°の間にピークが存在することを特徴とする請求項1~6の何れかに記載のスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物。【請求項8】粉末X線回折装置(XRD)により測定されるX線回折パターンにおいて、2θが18~19°の間に存在するピークのうち最も高いピークのピーク強度に対する、2θが14.0~16.5°の間に存在するピークのうち最も高いピークのピーク強度の比率が0.05%より大きいことを特徴とする、請求項1~7の何れかに記載のスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物。【請求項9】請求項1~8の何れかに記載されたスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物を正極活物質として備えたリチウム二次電池。」
第4 当審の判断
1 サポート要件の判断手法について
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
2 本願明細書に記載された事項
本願明細書には以下の記載がある(当審注:下線は当審による。「・・・」は当審による省略を意味する。以下同じ。)。
(1)「【0013】4.5V以上の作動電位を有するスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物(「5V級スピネル」とも称する)は、4V級スピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物では殆ど生じない課題、すなわち、電解液との反応により発生するガスの発生量が多いという特徴的な課題を抱えている。かかる課題を解決するため、すなわちガス発生量を抑制するため、5V級スピネルの一次粒子径を大きくして比表面積(SSA)を低下させることで、ガス発生量を抑制することが提案されていた。しかし、比表面積を低下させると、電解液との接触面積が小さくなるため、出力特性が低下するという問題が生じてしまう。【0014】続きを表示(全11行)そこで本発明は、5V級スピネルに関し、ガス発生を抑制しつつ、同時に出力特性を向上させることができ、さらには寿命特性を向上させることができる、新たなスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物を提供せんとするものである。かかる課題を、本発明の第1課題とする。【0015】本発明者はさらに、第1課題に併せて、より出力特性を維持もしくは向上しつつ、ガス発生および寿命特性の改善可能な正極活物質を探求したところ、5V級スピネルはサイクル特性向上のため、電解液とスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物との反応を抑制するために、該スピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物の粒子表面を金属や金属酸化物で被覆することが提案されている。しかし、被覆により電池のレート特性が低下してしまうという新たな課題が生じる。そこで、本発明は、第1課題に併せて、従来提案されている表面処理を実施した正極活物質に比べて、サイクル特性の向上とガス発生の抑制を維持しつつ、レート特性の向上を達成することができる、新たなスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物を提供せんとするものである。かかる課題を、本発明の第2課題とする。【0016】本発明者はまた、第1課題に併せて、出力特性を維持もしくは向上しつつ、高電位容量域の拡大とガス発生の低減を両立可能にする正極活物質を探求した。5V級スピネルは、4.5V付近のプラトー領域を拡大し、高電位容量域を拡張することができる一方、ガスの発生量が増加することが分かってきた。そのため、5V級スピネルに関しては、高電位容量域を拡張してエネルギー密度を高くすることと、ガスの発生量を抑えることを両立させることが困難であった。そこで本発明は、第1課題に併せて、さらに高電位容量域の拡大とガス発生の抑制を両立させることができる、新たなスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物を提供せんとするものである。かかる課題を、本発明の第3課題とする。」
(2)「【0045】(モード径)本5V級スピネルのモード径、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定によるモード径は0.4μm~11μmであるのが好ましい。本5V級スピネルに関しては、モード径を上記範囲内とすることで、二次粒子内にLiが拡散するときの抵抗を小さくすることができ、その結果、出力特性を向上させることができる。続きを表示(全52行)・・・【0046】(D50)本5V級スピネルのD50、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定によるD50は0.5μm~9μmであるのが好ましい。本5V級スピネルに関しては、D50を上記範囲とすることで、二次粒子内にLiが拡散するときの抵抗を小さくすることができ、その結果、出力特性を向上させることができる。・・・【0047】(|モード径-D50|/モード径)本5V級スピネルについては、(|モード径-D50|/モード径)×100の値が0~25%であるのが好ましい。(|モード径-D50|/モード径)×100の値が25%以下であるということは、粒度分布が単峰型すなわち複数のピークを持たない分布であり、しかも、正規分布であるかそれに近い分布であることを示す。・・・【0048】(D10)本5V級スピネルのD10、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定によるD10は0.2μm~4.0μmであるのが好ましい。本5V級スピネルに関しては、D10を上記範囲に調整することにより、ガス発生を抑制することができる。・・・【0049】(|モード径-D10|/モード径)本5V級スピネルについては、(|モード径-D10|/モード径)×100の値が20~58%であるのが好ましい。(|モード径-D10|/モード径)×100の値が20~58%であるということは、本5V級スピネルのモード径からD10までの分布の幅が狭いことを示す。【0050】また、上記(|モード径-D50|/モード径)×100を上記範囲に調整すること又は、(|モード径-D10|/モード径)×100の値を上記範囲にすることにより、粒度分布が正規分布且に近く、シャープな分布となる。つまり、一次粒子および二次粒子の大きさを均一化することができる。これは、粒度分布全体における微粉領域の割合を小さくすることができることを示している。微粉はガス発生及び寿命特性に悪影響を及ぼすため、微粉の占める割合を小さくすることで、ガス発生および寿命特性を改善することができる。・・・【0051】(Dmin)本5V級スピネルのDmin、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定によるDminは0.1μm~2.0μmであるのが好ましい。本5V級スピネルに関しては、Dminが上記範囲であればガス発生を抑制することができる。・・・【0053】(平均一次粒子径)本5V級スピネルの平均一次粒子径、すなわちSEM画像より算出した平均一次粒子径は0.3~6.0μmであるのが好ましい。本5V級スピネルに関しては、一次粒子サイズを上記範囲にすることで、ガス発生量の低減と出力特性の向上の両方を達成することができる。・・・【0054】(平均一次粒子径/D50)本5V級スピネルに関しては、上記D50に対する上記平均一次粒子径の比率(平均一次粒子径/D50)が0.20~0.99であるのが好ましい。平均一次粒子径/D50を上記範囲に規定することにより、一次粒子の分散性を高めることができる。そのため、二次粒子が粒度分布の半分以上を占める場合に比べて、一次粒子1つ1つが十分に電解液と接触することができる。これにより、Liと粒子との反応面積が増加するとともに、二次粒子内の一次粒子同士の界面における抵抗を減少させることができ、出力特性改善に繋がる。・・・【0056】(結晶子サイズ)本5V級スピネルに関しては、結晶子サイズが80nm~490nmであるのが好ましい。結晶子サイズを上記範囲に規定することにより、結晶子内のイオン導電性を高めることができ、出力を高めることができる。また、出力向上により、サイクル時の分極を抑えることができ、高温時における充放電の繰り返しに伴って徐々に放電容量が低下するのを抑制することができる。・・・【0058】(結晶子サイズ/平均一次粒子径)本5V級スピネルにおいては、結晶子サイズに対する平均一次粒子径の比率結晶子サイズ/平均一次粒子径は、0.01~0.32であるのが好ましい。上述のように、本5V級スピネルは多結晶体であるから、結晶子サイズ/平均一次粒子径は1未満の値となり、さらに上記の範囲であれば粉体中の一次粒子の分散性が良好となり、一次粒子と電解液との接触面積が増加するとともに、二次粒子内の一次粒子同士の界面における抵抗を減少させることができ、出力特性改善に繋がる。・・・」
(3)「【0176】【表1】[図:0001382000000001.jpg]」
(4)「【0178】上記実施例の結果とこれまで行ってきた試験結果から、5V級スピネルの一次粒子を多結晶体とすると共に、体積粒度分布測定におけるD50が0.5~9μmであり、モード径、D50及びD10の関係を特定し、且つ、一次粒子径とD50と関係を特定することにより、一次粒子の分散性を高め、さらには、粒度分布を正規分布に近く尚かつシャープに近づけることができ、その結果、ガス発生を抑制しつつ、同時に出力特性及び寿命特性を向上させることができ、第1課題の解決ができることが分かった。かかる観点から、少なくとも、Li、Mn及びOと、これら以外の2種以上の元素とを少なくとも含む、金属Li基準電位で4.5V以上の作動電位を有するスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物に関しては、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定によるD50が0.5~9μmであって、モード径、D50及びD10より算出される(|モード径-D50|/モード径)×100の値が0~25%であり、(|モード径-D10|/モード径)×100の値が20~58%であるのが好ましいことがわかった。また、SEM画像より算出した一次粒子径と前記D50から算出される一次粒子径/D50は0.20~0.99であるのが好ましいことがわかった。」
3 本願発明の課題
本願明細書の【0013】~【0016】(上記2(1))には「第1課題」~「第3課題」が記載されているが、「第2課題」及び「第3課題」は「第1課題」をより限定して設定されたものであることからすれば、本願発明の課題は、少なくとも「第1課題」として記載されるとおり「5V級スピネル(当審注:「4.5V以上の作動電位を有するスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物」を意味する。以下同じ。)に関し、ガス発生を抑制しつつ、同時に出力特性を向上させることができ、さらには寿命特性を向上させることができる、新たなスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物を提供」することであるといえる。
4 発明の詳細な説明の記載等から本願発明の課題を解決できると認識できる範囲
(1)上記3の発明の課題の「ガス発生を抑制」及び「寿命特性の向上」について
発明の課題の内「ガス発生を抑制」及び「寿命特性の向上」について、上記2(2)の【0050】には、「上記(|モード径-D50|/モード径)×100を上記範囲に調整すること又は、(|モード径-D10|/モード径)×100の値を上記範囲にすることにより、粒度分布が正規分布且に近く、シャープな分布となる。つまり、一次粒子および二次粒子の大きさを均一化することができる。
これは、粒度分布全体における微粉領域の割合を小さくすることができることを示している。微粉はガス発生及び寿命特性に悪影響を及ぼすため、微粉の占める割合を小さくすることで、ガス発生および寿命特性を改善することができる。」と記載され、微粉の存在が、ガス発生及び寿命特性に悪影響を及ぼすため、粒度分布全体における微粉領域の割合を小さくすることで、発明の課題である「ガス発生を抑制」及び「寿命特性の向上」を解決することができることが理解できる。そして、微粉の占める割合が少ないことを示す指標として、「(|モード径-D50|/モード径)×100」、又は「(|モード径-D10|/モード径)×100」を採用し、同(2)の【0047】の記載によれば、「(|モード径-D50|/モード径)×100」の値が0~25%である場合、又は同(2)の【0049】の記載によれば、「(|モード径-D10|/モード径)×100」の値が20~58%の場合、粒度分布が正規分布に近く、シャープな分布を示し、粒度分布全体における微粉割合が小さくなることが理解できる。
ここで、上記の「(|モード径-D50|/モード径)×100」又は「(|モード径-D10|/モード径)×100」の算出には、モード径、D50及びD10の値が必要になるところ、同(2)の【0045】には、「モード径は0.4μm~11μmであるのが好ましい」こと、【0046】には、「D50は0.5μm~9μmであるのが好ましい」こと、【0048】には、「D10は0.2μm~4.0μmであるのが好ましい」とされている。
さらに、上記2(3)には、具体的な実施例において、モード径、D50、D10、(|モード径-D50|/モード径)×100及び(|モード径-D10|/モード径)×100が上記の範囲にあるスピネル型リチウムマンガン酸複合酸化物であれば、「ガス発生を抑制」及び「寿命特性の向上」していることに対応する「ガス発生量指標」及び「容量維持率指標」で良好な結果が得られることが示されている。
そうすると、上記3の発明の課題の内「ガス発生を抑制」及び「寿命特性の向上」することについては、スピネル型リチウムマンガン酸複合酸化物の粒度分布について、少なくとも、モード径が0.4μm~11μm、D50が0.5μm~9μm、(|モード径-D50|/モード径)×100が0~25%、又はモード径が0.4μm~11μm、D10が0.2μm~4.0μm、(|モード径-D10|/モード径)×100が20~58%であれば、発明の課題を解決できると認識できるといえる。
なお、「ガス発生を抑制」との観点では、上記2(2)の【0051】には、「Dminは0.1μm~2.0μmであるのが好ましい。本5V級スピネルに関しては、Dminが上記範囲であればガス発生を抑制することができる。」、【0053】には、「平均一次粒子径は0.3~6.0μmであるのが好ましい。本5V級スピネルに関しては、一次粒子サイズを上記範囲にすることで、ガス発生量の低減と出力特性の向上の両方を達成することができる。」との記載があり、「Dmin」及び「一次粒子サイズ」も、「ガス発生を抑制」することに関連するが、「Dmin」及び「一次粒子サイズ」を上記の範囲とした場合には、より高いレベルで発明の課題が達成されると理解できる。
(2)上記3の発明の課題の「出力特性を向上」について
発明の課題の内「出力特性を向上」について、上記2(2)の【0058】には、「(結晶子サイズ/平均一次粒子径)
本5V級スピネルにおいては、結晶子サイズに対する平均一次粒子径の比率結晶子サイズ/平均一次粒子径は、0.01~0.32であるのが好ましい。
上述のように、本5V級スピネルは多結晶体であるから、結晶子サイズ/平均一次粒子径は1未満の値となり、さらに上記の範囲であれば粉体中の一次粒子の分散性が良好となり、一次粒子と電解液との接触面積が増加するとともに、二次粒子内の一次粒子同士の界面における抵抗を減少させることができ、出力特性改善に繋がる。」と記載され、一次粒子の分散性が良好であれば、一次粒子と電解液との接触面積が増加し、発明の課題である「出力特性を向上」を解決することができることが理解できる。そして、一次粒子の分散性が良好であることを示す指標として、「結晶子サイズ/平均一次粒子径」を採用し、その範囲が、0.01~0.32である場合、一次粒子と電解液との接触面積が増加し、発明の課題である「出力特性を向上」を解決することができることが理解できる。
ここで、上記の「結晶子サイズ/平均一次粒子径」の算出には、結晶子サイズ及び平均一次粒子径の値が必要になるところ、同(2)の【0056】には、「結晶子サイズが80nm~490nmであるのが好ましい」こと、【0053】には、「平均一次粒子径は0.3~6.0μmであるのが好ましい」とされている。
さらに、上記2(3)には、具体的な実施例において、結晶子サイズ、平均一次粒子径及び結晶子サイズ/平均一次粒子径が上記の範囲にあるスピネル型リチウムマンガン酸複合酸化物であれば、「出力特性を向上」していることに対応する「出力特性指標」で良好な結果が得られることが示されている。
そうすると、上記3の発明の課題の内「出力特性を向上」することについては、スピネル型リチウムマンガン酸複合酸化物の粒度分布について、少なくとも、結晶子サイズが80nm~490nm、平均一次粒子径が0.3~6.0μm、結晶子サイズ/平均一次粒子径が0.01~0.32であれば、発明の課題を解決できると認識できるといえる。
なお、「出力特性を向上」との観点では、上記2(2)の【0054】には、「D50に対する上記平均一次粒子径の比率(平均一次粒子径/D50)が0.20~0.99であるのが好ましい。平均一次粒子径/D50を上記範囲に規定することにより、一次粒子の分散性を高めることができる。そのため、二次粒子が粒度分布の半分以上を占める場合に比べて、一次粒子1つ1つが十分に電解液と接触することができる。これにより、Liと粒子との反応面積が増加するとともに、二次粒子内の一次粒子同士の界面における抵抗を減少させることができ、出力特性改善に繋がる。」との記載があり、「平均一次粒子径/D50」も、「出力特性を向上」することに関連するが、「平均一次粒子径/D50」を上記の範囲とした場合には、より高いレベルで発明の課題が達成されると理解できる。
(3)上記(1)及び(2)によれば、上記3の発明の課題を解決する、すなわち、「ガス発生を抑制」、「寿命特性の向上」及び「出力特性を向上」するには、スピネル型リチウムマンガン酸複合酸化物の粒度分布において、少なくとも、
モード径が0.4μm~11μm、D50が0.5μm~9μm、(|モード径-D50|/モード径)×100が0~25%、又はモード径が0.4μm~11μm、D10が0.2μm~4.0μm、(|モード径-D10|/モード径)×100が20~58%
さらに、それぞれについて、結晶子サイズが80nm~490nm、平均一次粒子径が0.3~6.0μm、結晶子サイズ/平均一次粒子径が0.01~0.32であれば良いことを認識できるといえる。
5 特許請求の範囲に記載された発明と本願発明の課題を解決できると認識できる範囲との対比
本願発明1~9と上記4(3)に記載した発明の詳細な説明の記載等から本願発明の課題を解決できると認識できる範囲を対比すると、本願発明1~9は当該範囲に含まれるものであるから、上記1の判断手法に照らし、サポート要件に適合するものといえる。
6 小活
したがって、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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