2020-009657
多層球形複合粒子及びUV遮蔽剤に基づく組成物
- 審判番号
- 2020-009657
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-515735外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年07月09日
- 審決日
- 2022年03月04日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 6項目
1 出願の経緯
本願は、平成27年9月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年9月19日(FR)フランス共和国)を国際出願日とする出願であって、その出願の経緯は、概略、以下のとおりである。
同年 2月28日付け:拒絶査定
同年 7月 9日受付:審判請求書、手続補正書の提出
同年 9月16日受付:上申書
同年 6月 3日受付:刊行物等提出書の提出
同年 9月 7日受付:手続補正書及び意見書の提出
2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1~15に係る発明は、令和3年9月7日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「a)少なくとも多層球形複合粒子であって、i)1.3~1.8の範囲の屈折率を有する少なくとも1つの材料Aを含むコア、及びii)1.9~3.1の範囲の屈折率を有する少なくとも1つの材料Bを含む、前記コアを覆う少なくとも1つの層、及びiii)任意の、1.3~1.8の範囲の屈折率を有する少なくとも1つの材料Cを含む、前記材料Bを覆う少なくとも1つの第2の層続きを表示(全13行)を含み、組成物の総質量に対して28.0質量%未満の量で存在する、複合粒子と、b)少なくとも1つのUV遮蔽剤とを含み、前記材料A、B、及びCは、無機材料であり、前記無機材料A及びCが、ガラス、シリカ、炭酸カルシウム、及び酸化アルミニウム、並びにこれらの混合物から形成される群から選択され、前記無機材料Bが、金属酸化物から選択される、エマルション形態の化粧用組成物であって、前記UV遮蔽剤が、遊離形態であり、有機であり、組成物の総質量に対して0.1質量%~45質量%の範囲の含有量で存在し、但し、マトリックス及び無機UV遮蔽剤を含む、0.1μmから30μmの間の平均粒径を有する小板形状の複合粒子を含まない、組成物」。
3 当審で通知した拒絶の理由
当審において、令和3年5月31日付けで通知した拒絶理由のうち、理由3(進歩性)に係る理由の概要は、次のとおりのものである。
「3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
「・請求項 1-16・引用文献等 1、3-8」
「 <引用文献等一覧>1.特表2014-504618号公報3.特表2002-518420号公報4.特開平11-139926号公報(新たに引用する文献)5.Fragrance Journal、2002年、Vol.30、No.7、p33-38(新たに引用する文献)6.無類井 行男著「第15章 ファンデーションの機能と最新の技術」、機能性化粧品II、株株式会社シーエムシー、1996年8月30日発行、p192~205(新たに引用する文献)7.特開平11-335240号公報(新たに引用する文献)8.国際公開第98/11865号(新たに引用する文献)」
4 当審の判断(理由3:進歩性について)
(1) 引用文献に記載された事項及び引用発明
ア 引用文献4に記載された事項
本願の優先日前に頒布された引用文献4(特開平11-139926号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付した(以下、他の文献についても同様)。
(ア4) 「【請求項1】 アクリル酸及びメタクリル酸並びにそれらのエステルから選ばれる1種乃至は2種以上の重合体及び/又は共重合体とシリカ・金属酸化物複合体とを含有することを特徴とする、化粧料。
【請求項2】 シリカ・金属酸化物複合体が、シリカを中核とし、その外層に二酸化チタン及び/又は酸化ジルコニウムの層を有し、更にその外層にシリカの層を有しているものであることを特徴とするものであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】 アクリル酸及びメタクリル酸並びにそれらのエステルから選ばれる1種乃至は2種以上の重合体及び/又は共重合体が、アクリル酸・アクリル酸エチレン・アクリル酸オクチル・メタクリル酸共重合体及び/又はアクリル酸・アクリル酸-2-エチルヘキシル・メタクリル酸メチル・α-メチルスチレンのコア-シェル型共重合体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】 下地化粧料であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の化粧料。」
(イ4) 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、この様な状況を踏まえて為されたものであり、化粧持ちを向上させ質感を変えうる下地化粧料を提供することを課題とする。
【0005】
【課題の解決手段】本発明者らは、かかる状況に鑑みて、化粧持ちを向上させ質感を変えうる下地化粧料を求めて鋭意研究を重ねた結果、アクリル酸及びメタクリル酸並びにそれらのエステルから選ばれる1種乃至は2種以上の重合体及び/又は共重合体とシリカ・金属酸化物複合体とを含有することを特徴とする、化粧料にその様な特性を見いだし、発明を完成させるに至った。尚、本発明に於いて下地化粧料とは、それ自体ではメークアップ効果が充分ではなく、その上にファンデーション等のメークアップ化粧料などを塗布することを必須とする化粧料を意味するものであって、具体的には、アンダーメークアップ、コントロールカラー、スポッツカバー等が例示できる。以下、本発明について実施の形態を中心に詳細に説明を加える。」
(ウ4) 「【0006】
【発明の実施の形態】(1)本発明の化粧料に用いる重合体及び/又は共重合体
本発明の化粧料に用いる、重合体及び/又は共重合体は、アクリル酸及びメタクリル酸並びにそれらのエステルから選ばれる1種乃至は2種以上の重合体及び/又は共重合体であることを特徴とする。ここでエステルとしては、アルキルエステル、アルキレンエステル、アリールエステル、置換基を有していても良いフェニルエステル等が例示でき、これらの炭素数としては2~10が好ましい。この様な重合体や共重合体は、例えば、乳化重合などによって製造したもの等が市販されている。本発明では、この様な乳化重合によって製造されたものを用いても良いし、他の重合法を用いて製造されたものを用いても良い。乳化重合は、モノマー類を界面活性剤などで均一な粒子径に分散させた後、過酸化ベンゾイルなどの重合開始剤を用いて重合させれば良い。又、乳化重合に於いては、通常の一段階反応で製造するものでも良いし、内層外層の順に順次反応させる、いわゆるコア-シェルタイプのものでもかまわない。かかる重合体又は共重合体として好ましいものとしては、乳化重合によるアクリル酸・アクリル酸エチレン・アクリル酸オクチル・メタクリル酸共重合体である、ポリジョイントJN(大成化工株式会社製、樹脂分50重量%)とアクリル酸・アクリル酸-2-エチルヘキシル・メタクリル酸メチル・α-メチルスチレンのコア-シェル型共重合体であるエマポリーCE-119N(日光ケミカルズ株式会社販売)が特に好ましい。これら重合体又は共重合体は唯一種を含有させても良いし、二種以上を組み合わせて含有させても良い。本発明の化粧料に於けるアクリル酸及びメタクリル酸並びにそれらのエステルから選ばれる1種乃至は2種以上の重合体及び/又は共重合体の好ましい含有量は、樹脂量に換算して0.01~10重量%であり、更に好ましくは0.03~3重量%である。これは多すぎるとファンデーション等の仕上がりが厚ぼったくなることがあり、少なすぎると化粧持ちが向上しないことがあるためである。
【0007】(2)本発明の化粧料で用いるシリカ・金属酸化物複合体
本発明で用いる、シリカ・金属酸化物複合体は、シリカと二酸化チタンなどの金属酸化物から構成される複合体であり、例えば、金属酸化物をシリカでコーティングしたものや、金属酸化物とシリカを多層構造の構築した多層複合体などが例示できる。金属酸化物としては、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛などが例示できる。これら金属酸化物は唯一種用いても良いし、二種以上用いても良い。この様なシリカ・金属複合体として最も好ましいものは、シリカを中核とし、その外層に二酸化チタン及び/又は酸化ジルコニウムの層を有し、更にその外層にシリカの層を有しているものが特に好ましく、この様なものとしては触媒化成株式会社製のマルチプルビーズが市販されており、これを用いるのが特に好ましい。勿論、シリカ上に水酸化チタンを析出させ、これを焼成し、更にこれを水ガラスと酸で処理し、焼成し作成することも可能である。これらシリカ・金属酸化物複合体は唯一種を含有させても良いし、二種以上を含有させても良い。本発明の化粧料に於ける、シリカ・金属酸化物複合体の好ましい含有量は、0.01~30重量%であり、更に好ましくは0.05~10重量%である。これは、多すぎるとファンデーション等のメークアップ化粧料ののりを損なうことがあり、少なすぎると仕上がりへの影響が少なくなりすぎることがあるためである。本発明の化粧料、取り分け下地化粧料に於いて、この粉体を1重量%以上含有することにより、優れたシワ補正効果が副次的に付加される。
【0008】(3)本発明の化粧料
本発明の化粧料は、上記、重合体及び/又は共重合体とシリカ・金属酸化物複合体とを含有することを特徴とする。本発明の化粧料は、下地化粧料として特に好適であり、化粧持ちを向上させ、立体感を付与することにより化粧仕上がりの質感を変えうる特性を有する。本発明の化粧料に於いては、これら必須成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を含有することができる。かかる任意成分としては、例えば、ワセリンやマイクロクリスタリンワックス等のような炭化水素類、ホホバ油やゲイロウ等のエステル類、牛脂、オリーブ油等のトリグリセライド類、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリンや1,3-ブタンジオール等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エタノール、カーボポール等の増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、粉体類等が例示できる。任意成分の内、特に好ましいものは、汗などの水性成分の影響を受けにくい化粧映え向上効果を有する、赤色226号等の赤色有機顔料類、化粧崩れがしにくく可溶化力に富むポリオキシブチレンポリグリセリルアルキルエーテルである、ハイグリオールS-26(日本サーファクタント株式会社製)である。赤色有機顔料の好ましい含有量は、0.001~0.05重量%であり、ポリオキシブチレンポリグリセリルアルキルエーテルの好ましい含有量は0.01~0.5重量%である。本発明の化粧料はこれら必須成分と任意成分とを常法に従って処理することにより、得ることができる。」
(エ4) 「【0010】<実施例1>以下に示す処方に従ってアンダーメークアップ化粧料を作成した。即ち、イ、ロをそれぞれ80℃に加熱し、ハをイに分散させ、これにロを徐々に加え乳化し、攪拌冷却しアンダーメークアップを得た。
イ
環状ジメチコン 26.5重量部
ソルビタンモノオレート 1.5重量部
ステアリン酸 1 重量部
蔗糖脂肪酸エステル 2 重量部
ポリオキシエチレンステアリン酸エステル 0.8重量部
ロ
水 47.6重量部
1,3-ブタンジオール 6 重量部
トリエタノールアミン 0.4重量部
ポリジョイントJN 0.2重量部
(アクリル酸・アクリル酸エチレン・アクリル酸オクチル・メタクリル酸共重合体 0.1重量部)
ハ
タルク 8 重量部
二酸化チタン 1 重量部
虹彩箔 3 重量部
マルチプルビーズ 2 重量部
【0011】<実施例2>実施例1のアンダーメークについて、化粧持ち向上効果を、サウナ試験によって確かめた。例数は5名を用いた。即ち、アンダーメークアップで処理した後、下記に処方を示すファンデーションを塗布し、仕上がりを専門パネラーによって評価した後、サウナに30分間入り、化粧仕上がりを再び専門パネラーにより判定した。化粧仕上がりの評価項目は、化粧仕上がりの立体感、化粧仕上がりの美しさ、ファンデーションののりであった。評価は、++:非常によい、+:良い、±:普通、-:悪い、--:非常に悪いであった。対照例はアンダーメークアップを用いないもの、比較例1は、実施例1のポリジョイントJNを水に置換したもの、比較例2は、実施例1のマルチプルビーズを水に置換したもの、比較例3は、実施例1のマルチプルビーズとポリジョイントJNを水に置換したものを用いた。結果例数としてを表1に示す。これより、本発明のアンダーメークアップによって質感を変え立体感が得られること、化粧持ちが著しく向上すること及びこの効果がアクリル酸及びメタクリル酸並びにそれらのエステルから選ばれる1種乃至は2種以上の重合体及び/又は共重合体とシリカ・金属酸化物複合体との組み合わせ効果によることがわかる。
【0012】
【表1】
[図:0001386501000001.jpg]
イ 引用文献5に記載された事項
本願の優先日前に頒布された引用文献5(Fragrance Journal、2002年、Vol.30、No.7、p33-38)には、以下の記載がある。
(ア5) 「メイクアップ製品の多くは,もともと酸化チタン,酸化鉄などの無機系粉体を配合しているため,ある程度の紫外線吸収及び散乱効果による紫外線防御効果を有している。しかしながら,それだけでは紫外線防御に対して十分ではなく,より高い防御効果を求める場合,さらに有機系紫外線吸収剤や無機系粉体などの紫外線防御剤の配合が必要となっている。」(第33頁左欄下から第6行~右欄第2行)
(イ5) 「2.メイクアップ化粧料に用いられる有機系紫外線防御剤
・・・
化粧品用紫外線吸収剤として,化学構造上ベンゾフェノン誘導体,パラアミノ安息香酸誘導体(PABA),パラメトキシ桂皮酸誘導体,サリチル酸誘導体,ジベンゾイルメタン誘導体などに分類することができる。UVAを吸収する吸収剤種類が少なく、ジベンゾイルメタン誘導体の4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタンが良く知られている。UVBに高い吸収をもつもののひとつに,桂皮酸系のパラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシルがあり,国内では,吸収剤の配合された多くの紫外線防御化粧品に使用されている。」(第33頁右欄第15行~第34頁左欄第15行)
(ウ5) 「
[図:0001386501000002.jpg]
」(第34頁右欄)
(エ5) 「5.化粧下地
化粧下地にも紫外線防御効果を備えた製剤が増えている。ファンデーションと異なり顔料級酸化チタンの配合が抑えられ、紫外線防御剤として微粒子酸化チタンや紫外線吸収剤をメインとした透明感のある剤型が主流であり、最近では、ブルーの偏光パールなどを配合して肌色補正を狙った製品が発売されている。」(第37頁左欄第1~8行)
(オ5) 「有機系紫外線吸収剤はそのまま油剤に配合できるが、多くなるとベタツキや油っぽさ等感触面および系の安定性に影響を与えるので注意が必要である。」(「4-3.乳化タイプ」項目の第36頁左欄第5行~右欄第1行)
ウ 引用文献7に記載された事項
本願の優先日前に頒布された引用文献7(特開平11-335240号公報)には、以下の記載がある。
(ア7) 「【請求項1】 1)球状の無水珪酸に二酸化チタンを被覆し、これに更に無水珪酸を被覆した粉体と2)1)に属さない球状粉体とを含有する化粧料。
【請求項2】 球状の無水珪酸に二酸化チタンを被覆し、これに更に無水珪酸を被覆した粉体の各部の構成比が、球状の無水珪酸70~90重量%、二酸化チタン1~10重量%、最外殻の無水珪酸が5~15重量%である、請求項1に記載の化粧料。」
(イ7) 「【0007】
【発明の実施の形態】(1)本発明の必須成分である多層被覆粉体
本発明の必須成分である多層被覆粉体は、球状の無水珪酸に二酸化チタンを被覆し、これに更に無水珪酸を被覆した粉体であり、このものは例えば、球状シリカ上に、水溶性チタニウム塩を中和して得た水酸化チタニウムを水性担体中で析出させ、このものを焼成し、この焼成物を水ガラスの極性溶液中に分散させ、酸などで水ガラスを中和してシリカゲルを当該焼成物上に析出させ、これを燒結すれば得られる。又、球状シリカゲルを水性担体に分散させ、これにチタニウムアルコキシドを添加し、アンモニア水等で中和して水酸化チタニウムを球状シリカ上に析出させ、これを焼成し、二酸化チタン被覆球状シリカとなし、更にこの焼成物を水ガラスの極性溶液中に分散させ、塩酸等の酸で中和し、水洗した後焼成しても得ることができる。この様な多層被覆粉体は上述の如く製造して使用しても良いが、既に市販されているものもあり、このものを利用することができる。かかる市販の多層被覆粉体としては、触媒化成株式会社製のマルチプルビーズが好ましく例示できる。ここで、本発明に好適な多層被覆粉体の好適な物性を記述すれば、最内層のシリカは球状であることが好ましく、その平均粒子径は1~10mμが好ましく、この様な市販品としてはシリカマイクロビートP1500(触媒化成株式会社製)などが例示できる。本発明の多層被覆粉体では、当該シリカが70~90重量%になる様に調整するのが好ましい。これは白っぽさを抑制するのに好ましい含有量であるからである。又、この無水珪酸の外殻に被覆される二酸化チタンは、ルチル型の結晶系でも、アナタース型の結晶系でも、その混合系でも可能であり、多層被覆粉体全量に対して1~10重量%程度被覆するように調整するのが好ましい。これは、紫外線吸収特性を維持にするために必要な量だからである。この二酸化チタンの層の外殻に被覆される無水珪酸は、多層被覆粉体全量に対して、5~15重量%になる様に調整するのが好ましい。これは、半透明な光学効果により、白っぽさを目立つことなく、自然な仕上がりを提供するのに必要だからである。尚、当該多層被覆粉体はそのまま含有させることも可能であるし、表面を、例えば、ジメチルポリシロキサン焼き付け処理、ハイドロジェンメチルポリシロキサン焼き付け処理、金属石鹸被覆処理、パーフルオロアルキル処理、シランカップリング処理、シリル化処理、脂肪酸被覆処理、アシルアミノ酸及び/又はその塩による被覆処理等の疎水化処理をしたりして使用することも可能であり、この様なものを用いること模本発明の技術的範囲に属する。本発明の化粧料に於ける、当該多層被覆粉体の好ましい含有量は、1~30重量%であり、更に好ましくは5~20重量%である。これは、多すぎても、効果の割にコストが高くなり、経済効果が少ないからであり、少ないと白さが目立ったり、紫外線防護効果が損なわれたりするためである。」
(ウ7) 「【0011】<実施例1>下記に示す処方に従って、ファンデーションを作成した。即ち、イの成分をヘンシェルミキサーで混合した後、0.9mmの丸穴アスクリーンを装着したパルベライザーで粉砕し、ヘンシェルミキサーで混合しながら、ロの成分を噴霧してコーティングし、1mmヘリングボーンスクリーンを装着したパルベライザーで粉砕して、金皿に詰めて加圧成型しファンデーションを得た。このファンデーションについて、化粧仕上がりの自然さ(白っぽさの目立たなさ)と密着性(厚ぼったさを感じない)とカバー力(シミやソバカスを隠すことができる)を専門パネラー5名により評価した。評価基準は、++:白っぽさ、厚ぼったさ或いはシミやソバカスが全く目立たない、+:白っぽさ、厚ぼったさ或いはシミやソバカスが殆ど目立たない、+-:白っぽさ、厚ぼったさ或いはシミやソバカスが比較的抑制されている、-:白っぽい、厚ぼったい或いはシミやソバカスが目立つを用いた。尚、マルチプルビーズ(球状無水珪酸85.5%、二酸化チタン4.5%、最外殻の無水珪酸10%)を球状無水珪酸85.5%、二酸化チタン4.5%、無水珪酸10%の混合物に置換したものを比較例1、マルチプルビーズを球状無水珪酸上に二酸化チタンを被覆した粉体(球状無水珪酸95%、二酸化チタン5%)90%と無水珪酸10%の混合物に置換したものを比較例2、球状粉体であるナイロンパウダーを全てタルクに置換したものを比較例3とし、ナイロンパウダーを全てタルクに置換し、且つ、マルチプルビーズを球状無水珪酸85.5%、二酸化チタン4.5%、無水珪酸10%の混合物に置換したものを比較例4とし、ナイロンパウダーを全てタルクに置換し、且つ、マルチプルビーズを球状無水珪酸上に二酸化チタンを被覆した粉体(球状無水珪酸95%、二酸化チタン5%)90%と無水珪酸10%の混合物に置換したものを比較例5とした。結果を表1に示す。これより本発明の化粧料は、充分なカバー力を有しているにもかかわらず、白っぽさや厚ぼったさが更に目立たなくなり、メークアップ効果に優れることがわかる。
イ
マルチプルビーズ 10 重量部
二酸化チタン 10 重量部
ナイロンパウダー 20 重量部
タルク 10 重量部
セリサイト 20 重量部
マイカ 15 重量部
黄色酸化鉄 4 重量部
ベンガラ 0.5重量部
紺青 0.2重量部
チタンマイカ 0.3重量部
ロ
ジメチルポリシロキサン 10 重量部
【0012】
[図:0001386501000003.jpg]
」
エ 引用発明
引用文献4の上記アの摘記事項(ア4)~(エ4)、特に(エ4)の記載からみて、引用文献4には、以下の発明が記載されている。
「以下の成分を配合したアンダーメークアップ化粧料環状ジメチコン 26.5重量部ソルビタンモノオレート 1.5重量部ステアリン酸 1 重量部続きを表示(全15行)蔗糖脂肪酸エステル 2 重量部ポリオキシエチレンステアリン酸エステル 0.8重量部水 47.6重量部1,3-ブタンジオール 6 重量部トリエタノールアミン 0.4重量部ポリジョイントJN 0.2重量部(アクリル酸・アクリル酸エチレン・アクリル酸オクチル・メタクリル酸共重合体 0.1重量部)タルク 8 重量部二酸化チタン 1重量部虹彩箔 3 重量部マルチプルビーズ 2重量部。」(以下、「引用発明」という。)
(2) 本願発明について
ア 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「マルチプルビーズ」は、摘記事項(ウ4)の段落【0007】の記載によれば、「シリカを中核とし、その外層に二酸化チタン及び/又は酸化ジルコニウムの層を有し、更にその外層にシリカの層を有している」多層粒子形状のものである。また、当該マルチプルビーズの中核及び外層を構成するシリカは、それぞれ本願発明の「多層球状複合粒子」の無機材料A及びCに相当し、また、マルチプルビーズの中間層を構成する二酸化チタン、酸化ジルコニウムは「無機材料」に相当し、それらの屈折率は、引用文献5の摘記事項(ウ5)の表1によれば、二酸化チタンは2.72(ルチル型)又は2.52(アナターゼ型)、酸化ジルコニウムは2.20であるから、本願発明の「多層球状複合粒子」の「1.9~3.0の範囲の屈折率を有する無機材料B」に相当する。
すると、引用発明の「マルチプルビーズ」は、本願発明の「a)少なくとも多層球形複合粒子であって、
i)1.3~1.8の範囲の屈折率を有する少なくとも1つの材料Aを含むコア、及び
ii)1.9~3.1の範囲の屈折率を有する少なくとも1つの材料Bを含む、前記コアを覆う少なくとも1つの層、及び
iii)任意の、1.3~1.8の範囲の屈折率を有する少なくとも1つの材料Cを含む、前記材料Bを覆う少なくとも1つの第2の層
を含み、
前記材料A、B、及びCは、無機材料であり、
前記無機材料A及びCが、ガラス、シリカ、炭酸カルシウム、及び酸化アルミニウム、並びにこれらの混合物から形成される群から選択され、
前記無機材料Bが、金属酸化物から選択される、」「多層球形複合粒子」に相当する。
また、引用発明のアンダーメークアップ化粧料中のマルチプルビーズの含有割合は、全体100重量部中2重量部であり、(2/100)×100=2質量%と計算できるから、本願発明の多層球形複合粒子の組成物における含有割合である「組成物の総質量に対して28.0質量%未満の量」の範囲内のものである。
引用発明の「アンダーメークアップ化粧料」は、複数の成分を配合している「化粧用」の「組成物」であり、また、摘記事項(エ4)の「即ち、イ、ロをそれぞれ80℃に加熱し、ハをイに分散させ、これにロを徐々に加え乳化し、攪拌冷却しアンダーメークアップを得た。」との記載からみるに、乳化して製造しているから、本願発明の「エマルジョン形態の化粧用組成物」に相当する。
そして、引用発明の「二酸化チタン」は、無機の金属酸化物であって、紫外線防御作用を有し(必要であれば、引用文献5第33頁左欄下から第6行~右欄第2行)、マルチプルビーズと結合せずに存在している遊離形態のものであるから、引用発明の「二酸化チタン」と本願発明の「遊離形態であ」る「UV遮蔽剤」は、化粧用組成物において、「遊離形態」である「UV遮蔽剤」を含む点に限り、一致する。
さらに、引用発明は、本願発明で「但し、マトリックス及び無機UV遮蔽剤を含む、0.1μmから30μmの間の平均粒径を有する小板形状の複合粒子を含まない」として除外される該小板形状の複合粒子は含まない。
そうすると、本願発明と引用発明は、
「a)少なくとも多層球形複合粒子であって、i)1.3~1.8の範囲の屈折率を有する少なくとも1つの材料Aを含むコア、及びii)1.9~3.1の範囲の屈折率を有する少なくとも1つの材料Bを含む、前記コアを覆う少なくとも1つの層、及びiii)任意の、1.3~1.8の範囲の屈折率を有する少なくとも1つの材料Cを含む、前記材料Bを覆う少なくとも1つの第2の層続きを表示(全12行)を含み、組成物の総質量に対して28.0質量%未満の量で存在する、複合粒子と、b)少なくとも1つのUV遮蔽剤とを含み、前記材料A、B、及びCは、無機材料であり、前記無機材料A及びCが、ガラス、シリカ、炭酸カルシウム、及び酸化アルミニウム、並びにこれらの混合物から形成される群から選択され、前記無機材料Bが、金属酸化物から選択される、エマルジョン形態の化粧用組成物であって、前記UV遮蔽剤が、遊離形態であり、但し、マトリックス及び無機UV遮蔽剤を含む、0.1μmから30μmの間の平均粒径を有する小板形状の複合粒子を含まない、組成物。」
の発明である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点a>
遊離形態である前記UV遮蔽剤が、本願発明では「有機であり、組成物の総質量に対して0.1質量%~45質量%の範囲の含有量で存在する」のに対し、引用発明では、無機UV遮蔽剤に相当する「二酸化チタン」を配合しており、本願発明が特定する有機のUV遮蔽剤を特定量で含有していない点。
イ 判断
(ア) 相違点について
上記相違点aについて検討する。
引用文献4には、任意成分として、紫外線吸収剤を配合しても良い旨の記載がある(摘記事項(ウ4)の段落【0008】)。また、引用文献5の摘記事項(ア5)に「メイクアップ製品」について、「より高い防御効果を求める場合,さらに有機系紫外線吸収剤や無機系粉体などの紫外線防御剤が必要となっている」との記載があり、摘記事項(イ5)にも「2.メイクアップ化粧料に用いられる有機系紫外線防御剤」との項目で、「化粧品用紫外線吸収剤」の説明があるように、化粧品用の紫外線吸収剤は、有機系紫外線防御剤であり、有機のものである。
さらに、引用文献5の摘記事項(エ5)には、
「5.化粧下地化粧下地にも紫外線防御効果を備えた製剤が増えている。ファンデーションと異なり顔料級酸化チタンの配合が抑えられ、紫外線防御剤として微粒子酸化チタンや紫外線吸収剤をメインとした透明感のある剤型が主流であり」と記載されているから、有機のUV遮蔽剤である紫外線吸収剤を化粧下地等の化粧料組成物に配合することはごく一般的に行われることである。
そして、本願発明では、「前記UV遮蔽剤が、遊離形態であり、有機であり」との特定がされているものの、無機の紫外線防御剤の配合を排除するものではないし、また、紫外線吸収剤は、通常、油剤として遊離形態で配合されるものである(引用文献5の摘記事項(オ5))。
そうすると、引用文献4の摘記事項(ウ4)の段落【0008】に任意成分として紫外線吸収剤を配合できる旨が記載されていること及び引用文献5の摘記事項(ア5)、(イ5)、(エ5)から、化粧下地において、有機のUV遮蔽剤である紫外線吸収剤を配合することは、ごく一般的であることを併せ考慮すれば、引用発明において、二酸化チタンに代えて又はそれに加えて、有機のUV遮蔽剤である紫外線吸収剤を好ましい量で配合することは、当業者であれば容易になし得たことである。
(イ) 効果について
本願発明の効果について検討する。
本願明細書には、実施例と比較実施例(「本願発明外」のもの)を対比して、有機のUV遮蔽剤と多層球形複合粒子を配合した場合に、多層球形複合粒子の配合量が多いと安定性が悪くなり、滑らかさで劣るとの結果が記載されているところ、無機粒子である多層球形複合粒子の配合量が多ければ乳化安定性が低下するのは当然に起こる結果である。また、SPF値についても、多層球形複合粒子の配合量に従って増加しているにすぎず、引用発明のマルチプルビーズが紫外線防護効果を有することは引用文献7の摘記事項(イ7)の段落【0007】(特に、第3頁左欄第17~22行)に記載されているとおり知られていることからすると、本願発明により奏される効果は、当業者であれば予測する範囲のものあって、格別顕著なものとは評価できない。
(ウ) 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和3年9月7日受付の意見書において、
「補正について既述の通り、本願発明におけるUV遮蔽剤は、このたび、有機UV遮蔽剤に限定しております。これに対して、主引例とされた引用文献4においてUV遮蔽剤として使用されているのは、無機UV遮蔽剤に相当する「酸化チタン」のみです。引用文献4には、「必須成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を含有することができる」と記載されており、列挙された任意成分には「紫外線吸収剤」が含まれております(引用文献4、(0008))。しかしながら、前記二酸化チタン以外の紫外線吸収剤として、特に遊離形態の有機UV遮蔽剤を選択的に使用することは、引用文献4には何ら示唆されてはいません。」
「なお、補正について既述の通り、このたび、新請求項1におきましては、本願発明による組成物が「マトリックス及び無機UV遮蔽剤を含む、0.1μmから30μmの間の平均粒径を有する小板形状の複合粒子を含まない」旨を規定しております。かかる補正により、本願発明による組成物と引用文献1に記載された発明の組成物とが、確かに異なる構成を有していることがあらためて明示され、引用文献1の記載が本願発明の独自の構成を示唆するものではないことが明示されたと思料致します。また、他のいずれの引用文献にも、またこれらの組み合わせによっても、本願新請求項1に係る発明の独自の構成は何ら示唆されてはいないと思料致します。」
と述べている。
しかしながら、引用文献4の摘記事項(ウ4)の段落【0008】に、任意成分としての紫外線吸収剤についての記載があり、また、引用文献5の摘記事項(ア5)、(イ5)には、紫外線吸収剤が有機系紫外線防御剤であること、つまり、有機のUV遮蔽剤であることや、引用文献5の摘記事項(エ5)の「化粧下地にも紫外線防御効果を備えた製剤が増えている。ファンデーションと異なり顔料級酸化チタンの配合が抑えられ、紫外線防御剤として微粒子酸化チタンや紫外線吸収剤をメインとした透明感のある剤型が主流であ」るとの化粧料分野の技術常識に関する記載があることをふまえれば、引用発明において、二酸化チタンに代えて又はそれに加えて、有機UV遮蔽剤に相当する紫外線吸収剤を選択して配合することは、当業者であれば容易に想到し得ることといえる。
したがって、上記の審判請求人の主張、特に、他のいずれの引用文献にも、またこれらの組み合わせによっても、本願発明の独自の構成は何ら示唆されてはいないとの主張は採用できない。
よって、本願発明は、引用文献4に記載された発明並びに引用文献4、5及び7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることはできない。
5 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用文献4に記載された発明並びに引用文献4、5及び7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-009657