2020-006144
目元のメイクアップ方法
- 審判番号
- 2020-006144
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-201851外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年05月07日
- 審決日
- 2021年11月24日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社コーセー
- 【請求人代理人】特許業務法人 小野国際特許事務所
- 分類
- P18 .537-WZ (A45D) / P18 .536-WZ (A45D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 7項目
第1 手続の経緯
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この出願(以下、「本願」という。)は、平成27年10月13日(優先権主張平成26年10月15日)の出願であって、令和元年6月24日付け(発送日:同年7月2日)で拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和元年8月30日に意見書が提出されたが、令和2年1月27日付け(発送日:同年2月4日)で拒絶査定がされ、これに対し、令和2年5月7日に拒絶査定不服審判が請求され、令和2年7月1日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出され、令和2年7月3日に手続補足書が提出され、当審において令和3年3月23日付け(発送日:同年3月24日)で拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和3年5月24日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年3月23日付け(発送日:同年3月24日)で拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和3年5月24日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年6月22日付け(発送日:同年6月23日)で拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和3年8月23日に意見書が提出され、令和3年8月23日付け(受付日:同年8月24日)で手続補足書が提出されたものである。
第2 当審において通知した拒絶の理由について
当審において令和3年6月22日付けで通知した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
理由1(明確性要件)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由2(サポート要件)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由3(実施可能要件)本願は、明細書及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由4(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
●理由1(明確性要件)について
本願の請求項1及び請求項2ないし5に係る発明は明確でない。
●理由2(サポート要件)について
本願の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
●理由3(実施可能要件)について
本願明細書の発明の詳細な説明及び図面は、本願の請求項1ないし5に係る発明を当業者が実施できる程度に明確に記載されていない。
●理由4(進歩性)について
本願の請求項1及び5に係る発明は、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第3 当審の判断
1 理由1(明確性要件)について
請求項1において、
「睫の曲率形状を、下記対数らせん曲線式(I)【数1】r=ebθ(式中、rは極座標における半径を、θは角度を、bはらせん曲率パラメータを示す)において、らせん曲率パラメータbとして、0.3から0.6の範囲で変化させた曲線に近似させることで、パーソナリティー印象を変化させることを特徴とする目元のメイクアップ方法。」
と記載されている。
ここで、「r=ebθ」によって表される対数らせん曲線は、極座標の中心近傍から外側にらせん状に無限に延びていくものであるが、睫に使用するのはその一部である。
そうすると、請求項1において、対数らせん曲線の範囲が規定されていないから、請求項1に係る発明は明確でない。
例えば、図面の記載を参照すると、対数らせん曲線は
「【図1】[図:0001381262000001.jpg]」
に示されるものであるところ、請求項1に係る発明は、対数らせん曲線のどの部分に近似させるのか、明確でない。
すなわち、一つの対数らせん曲線でも、θの取り方によって曲率が異なる曲線となり、例えば図1の0≦θ≦π/2の部分、π/2≦θ≦πの部分、π≦θ≦3π/2の部分、3π/2≦θ≦2πの部分では、それぞれ曲率の大きさが異なり、中心に近い部分では曲率が大きいのに対して、外側の部分では直線に近くなる。
したがって、請求項1に係る発明は、対数らせん曲線のどの部分をとるのか規定されていないから、曲率の大きさも特定されず、睫を具体的にどのような形状の曲線に近似させるのかも特定されず、不明瞭である。
これに対し、請求人は、令和3年8月23日提出の意見書において、
「(b)しかしながら、よく知られているように、対数らせん曲線は自己相似なので、式(I)中のbが同じであれば、どの部分を切り取っても、相似形となり、曲率も同じといえます(参考資料1)。ご指摘の通り、対数らせん曲線では、見かけが「中心に近い部分では曲率(曲がりと思われます)が大きいのに対して、外側の部分では直線に近くなる」ことは事実ですが、一定の角度範囲で見た場合、これが見込む曲線の曲率はどこも同一となり、そうでなければ自己相似形にはなりません。(c)なお、本拒絶理由のポイントは、睫の曲線形状を、極座標上のどの角度で表現される対数らせん曲線と近似させるのかの記載、指示がないということと判断されます。しかしながら、睫(上睫毛)の長さは、平均8~12mmとされており、この長さの睫毛に、本発明の効果がある変化を与えるための対数らせん曲線を選択することは、当業者にとって自明であります。そして、対数らせん曲線は自己相似形ですから、必要に応じ、長さと拡大、縮小率を調整し、睫毛に付与すべき形状と重ねることは、当業者にとって極めて容易であります。よって、本願の請求項1に記載の発明(本願発明)は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているものと信じます。」
と主張する。
しかしながら、対数らせん曲線が自己相似形であるとしても、どの部分を切り取っても曲率が同じということはない。曲率は曲率半径の逆数であるから、どの部分を切り取っても曲率が同じもの(すなわち曲率半径が一定のもの)は円である。(なお、曲率半径が一定のものは円であることは請求人も認めている。)実際に、図1においても曲率半径は変化しているから、曲率も当然変化している。
そうすると、請求項1に係る発明においては、睫の曲率形状が、
【数1】
r=ebθ
で表される対数らせん形状の一部であるところ、対数らせん形状のどの部分をとるのか明確でないから、請求項1に係る発明は明確ではない。
同様に、請求項2ないし5に係る発明についても明確ではない。
2 理由2(サポート要件)について
請求項1において、
「睫の曲率形状を、下記対数らせん曲線式(I)【数1】r=ebθ(式中、rは極座標における半径を、θは角度を、bはらせん曲率パラメータを示す)において、らせん曲率パラメータbとして、0.3から0.6の範囲で変化させた曲線に近似させることで、パーソナリティー印象を変化させることを特徴とする目元のメイクアップ方法。」
と記載されている。
ここで、対数らせん曲線の範囲が規定されていないことから、上記理由1について述べたとおり、具体的な曲線形状が特定されず、曲率パラメータbとパーソナリティ印象の間に相関関係があるとは、にわかに信じがたい。
そうすると、当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであるから、請求項1に係る発明は、本願の発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない。
これに対し、請求人は、上記意見書において、
「(a)本拒絶は、対数らせん曲線の範囲が規定されていないので具体的な曲線形状が特定されず、曲率パラメータbとパーソナリティ印象の間に相関関係があるとはにわかに信じがたいとの点に根拠をおくものであります。まず、理由1で述べたように、対数らせん曲線は自己相似形であり、曲率自体は一定であります。従って、対数らせん曲線の範囲(角度範囲)を規定していなくても、曲率、更には曲線形状が特定されていないとすることはできないものと思料いたします。そして、曲率パラメータbを特定すれば、その対数らせん曲線の具体的曲率も定まりますから、実施例で示すごとく、対数らせん曲線とパーソナリティ印象の間の相関関係を見いだすことは明らかと信じます。(b)なお、本明細書の実施例2で採用したセマンティック・デファレンシャル法は、反対の意味をもつ形容詞を尺度の両端に置いた評定尺度群を用い、被験者がチェックした値を基に、形容詞対の平均値を求め、対象となる概念のプロフィールを描き、刺激対象の感情的意味(印象)がどのようにとらえられているのかを判断するものであり、相関関係の有無の判断に広く利用されている信頼性の高い方法であります(参考資料2をご参照下さい)。よって、本願発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているものと信じます。」
と主張する。
しかしながら、上記1において述べたように、対数らせん曲線は自己相似形であるとしても、曲率は一定ではなく、どの部分を切り取るかによって、曲線形状は変化する。
したがって、請求人の主張は当を得ていない。
そして、本願の請求項1に係る発明は、上記のとおり、本願の発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない。
3 理由3(実施可能要件)について
本願発明の実施例として、図2
[図:0001381262000002.jpg]
に一例が記載されているが、図2の例は、対数らせん曲線の、具体的にどの部分を示しているのか不明である。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明及び図面は、本願の請求項1ないし5に係る発明を当業者が実施できる程度に明確に記載されていない。
これに対し、請求人は、上記意見書において、
「本拒絶は、図2に示す対数らせん曲線の一例を取り上げ、これが対数らせん曲線の具体的にどの部分を示しているのか不明であることを理由とするものであります。理由1において詳しく説明した通り、対数らせん曲線は自己相似形であることはよく知られており、式(I)中のbが同じであれば、どの部分を切り取っても、相似形となり、曲率も同じといえます。この図面は必ずしも正確に対数らせん曲線を表していないかもしれませんが、曲率パラメータbと外形的な曲率の関係を示したものであり、上記のような自己相似形という性質を考慮すれば、具体的などの部分かを問題にする必要はないものと思料いたします。よって本願発明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているものと信じます。」
と主張する。
しかしながら、上記1において述べたように、対数らせん曲線は自己相似形であるとしても、曲率は一定ではなく、どの部分を切り取るかによって、曲線形状は変化する。
したがって、請求人の主張は当を得ていない。
そして、図2の例は、対数らせん曲線の、具体的にどの部分を示しているのか依然として不明であるから、本願明細書の発明の詳細な説明及び図面は、本願の請求項1ないし5に係る発明を当業者が実施できる程度に明確に記載されていない。
第4 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
また、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-006144