2020-001718
非磁性合金を含む熱間加圧変形磁石及びその製造方法
- 審判番号
- 2020-001718
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-522941外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年02月07日
- 審決日
- 2020年09月29日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (H01F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 8項目
第1 手続の経緯
本願は、2014年12月8日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和1年5月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】(a)Nd-TM-B(ここで、TMは、遷移金属を意味する)合金から磁性粉末を作製する段階と、(b)前記磁性粉末を非磁性合金の粉末と混合する段階と、(c)前記磁性粉末を加圧焼結して焼結体を作製する段階と、(d)熱と圧力を加えて前記焼結体を熱間加圧変形する段階と、を含み、前記非磁性合金は、Nd0.84Cu0.16、Nd0.7Cu0.3、Nd0.85Al0.15、Nd0.08Al0.92、Nd0.03Sb0.97、Nd0.8Ga0.2、Nd0.769Zn0.231、Nd0.07Mg0.93からなる群から選択されるいずれかを含み、前記磁性粉末は、結晶粒が複数含まれる多結晶粒子であり、前記多結晶粒子は、磁区が複数含まれる多磁区粒子であり、前記磁性粉末の平均粒径は、100~500μmである、Nd-TM-B熱間加圧変形磁石の製造方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用例1.特開2013-149862号公報
第4 引用例の記載及び引用発明
引用例1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様。)。
「【0001】本発明は、希土類磁石の製造方法に関するものである。」
「【0023】図1で示すように、たとえば50kPa以下に減圧したArガス雰囲気の不図示の炉中で、単ロールによるメルトスピニング法により、合金インゴットを高周波溶解し、希土類磁石を与える組成の溶湯を銅ロールWに噴射して急冷薄帯B(急冷リボン)を製作し、これを粗粉砕する。」
「【0029】Nd-Cu-Dy合金からなる改質合金粉を使用する場合、その成分比率によって合金の融点は相違するものの(60Nd-30Cu-10Dy合金の融点は533℃、50Nd-30Cu-20Dy合金の融点は576℃等)、この改質合金の融点は概ね600℃未満となる。また、改質合金がNd-Cu合金の場合には、その融点が520℃程度と低温であることから、520~650℃の範囲で合金を溶融させることができ、改質合金がNd-Al合金の場合には、その融点が600~650℃とやはり低温である。また、改質合金粉はその平均粒径が10μm~500μm程度のものを使用できる。」
「【0034】図示する希土類磁石の製造方法によれば、成形体Sを製造した段階で改質合金粉を溶融させて磁粉間の磁粉界面全体に改質合金粉の融液を十分に行き渡らせ、磁粉の表面に100%か100%に近い被覆率で磁粉を被覆し、次いでこの成形体に熱間塑性加工を施して改質合金粉の融液を磁粉を構成する結晶粒界相に粒界拡散させることにより、全ての磁粉に対して均一に改質合金粉の融液を粒界拡散させることができ、保磁力の極めて高い希土類磁石を製造することができる。」
「【0036】本実験においてはNd-Fe-B磁粉(市販Nd-Fe-B急冷粉末)を使用し、この粉末は、組成:Nd30Co4B1Febal、平均結晶粒径:50nm~300nm、平均粉末粒度:約200μmのものである。また、改質合金粉は、Nd、Cuインゴット(重量比80:20)をアーク溶解し、改質材合金インゴットを作製し、次に、作製したインゴットをカッターミルにより粉砕して、Nd-Cu合金粉末(重量比80:20、平均粒度:100μm)としたものである。【0037】上記するNd-Fe-B磁粉とNd-Cu改質合金粉をV型混粉機で30分間混合し、得られた混合粉末をカーボン製のダイスを用いてφ10×15mmの成形体を製作した。この際の実験水準を以下の表1に示す。次に、成形体を高周波によって700℃に加熱保持し、歪速度1/secで、試料高さ比で75%圧縮して熱間塑性加工をおこない、圧縮した試料のうちの中心の2×2×2mmを切り出して試験片とした。なお、比較例の試験片は、特許文献1の製造方法を再現して成形体とさらに熱間塑性加工後の希土類磁石を製造したものである。」
上記記載より、引用例1には、次の技術的事項が記載されている。
・引用例1に記載された技術は、希土類磁石の製造方法に関するものである(【0001】)。
・Nd-Fe-B磁粉を使用する(【0036】)。
・Nd-Fe-B磁粉とNd-Cu改質合金粉を混合し、得られた混合粉末から成形体を製作し、成形体を加熱保持し、試料高さを圧縮して熱間塑性加工をおこなう(【0037】)。
・成形体の製作は、加熱及び加圧によりおこなう(表1)。
・Nd-Fe-B磁粉は、平均結晶粒径:50nm~300nm、平均粉末粒度:約200μmであり、Nd-Cu合金粉末は、重量比80:20である(【0036】)。
よって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「Nd-Fe-B磁粉を使用し、Nd-Fe-B磁粉とNd-Cu改質合金粉を混合し、得られた混合粉末から加熱及び加圧して成形体を製作し、成形体を加熱保持し、試料高さを圧縮して熱間塑性加工をおこなう希土類磁石の製造方法であって、Nd-Fe-B磁粉は、平均結晶粒径:50nm~300nm、平均粉末粒度:約200μmであり、Nd-Cu合金粉末は、重量比80:20である、希土類磁石の製造方法。」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「Nd-Fe-B磁粉」、「Nd-Cu改質合金粉」は、それぞれ、本願発明の「磁性粉末」、「非磁性合金の粉末」に相当する。
(2)引用発明の「Nd-Fe-B磁粉」は、引用例1の段落【0023】を参照すると、合金インゴットを高周波溶解し、希土類磁石を与える組成の溶湯を銅ロールWに噴射して急冷薄帯B(急冷リボン)を製作し、これを粗粉砕して作成するものであるから、Nd-Fe-B合金から作製した磁性粉末である。
そうすると、引用発明の「Nd-Fe-B磁粉を使用」することは、本願発明の「(a)Nd-TM-B(ここで、TMは、遷移金属を意味する)合金から磁性粉末を作製する段階」に相当する段階を含んでいる。
(3)引用発明の「Nd-Fe-B磁粉とNd-Cu改質合金粉を混合」することは、本願発明の「(b)前記磁性粉末を非磁性合金の粉末と混合する段階」に相当する。
(4)引用発明の「得られた混合粉末から加熱及び加圧して成形体を製作」することは、本願発明の「(c)前記磁性粉末を加圧焼結して焼結体を作製する段階」に相当する。
(5)引用発明の「成形体を加熱保持し、試料高さを圧縮して熱間塑性加工をおこなう」ことは、本願発明の「(d)熱と圧力を加えて前記焼結体を熱間加圧変形する段階」に相当する。
(6)引用発明の「Nd-Cu合金粉末は、重量比80:20である」ことと、本願発明の「前記非磁性合金は、Nd0.84Cu0.16、Nd0.7Cu0.3、Nd0.85Al0.15、Nd0.08Al0.92、Nd0.03Sb0.97、Nd0.8Ga0.2、Nd0.769Zn0.231、Nd0.07Mg0.93からなる群から選択されるいずれかを含」むことは、「前記非磁性合金は、NdCuを含む」点で共通する。
但し、NdCuの組成比について、本願発明は「Nd0.84Cu0.16、Nd0.7Cu0.3」の何れかであるのに対して、引用発明は「重量比80:20」である。
(7)引用発明の「Nd-Fe-B磁粉」は、「平均結晶粒径:50nm~300nm、平均粉末粒度:約200μm」であるので、結晶粒が複数含まれる多結晶粒子である。そして、多結晶粒子は、一般的に磁区が複数含まれるので、引用発明の「Nd-Fe-B磁粉」は、本願発明の「前記磁性粉末は、結晶粒が複数含まれる多結晶粒子であり、前記多結晶粒子は、磁区が複数含まれる多磁区粒子であ」ることに相当する。
(8)引用発明の「Nd-Fe-B磁粉」が、「平均粉末粒度:約200μm」であることは、本願発明の「前記磁性粉末の平均粒径は、100~500μmである」ことに含まれる。
(9)引用発明の「希土類磁石の製造方法」は、「Nd-Fe-B磁粉を使用し、」「熱間塑性加工をおこなう」のであるから、本願発明の「Nd-TM-B熱間加圧変形磁石の製造方法」に相当する。
すると、本願発明と引用発明とは、次の(一致点)及び(相違点)を有する。
(一致点)
「(a)Nd-TM-B(ここで、TMは、遷移金属を意味する)合金から磁性粉末を作製する段階と、(b)前記磁性粉末を非磁性合金の粉末と混合する段階と、(c)前記磁性粉末を加圧焼結して焼結体を作製する段階と、(d)熱と圧力を加えて前記焼結体を熱間加圧変形する段階と、を含み、前記非磁性合金は、NdCuを含み、前記磁性粉末は、結晶粒が複数含まれる多結晶粒子であり、前記多結晶粒子は、磁区が複数含まれる多磁区粒子であり、前記磁性粉末の平均粒径は、100~500μmである、Nd-TM-B熱間加圧変形磁石の製造方法。」
(相違点)
NdCuの組成比について、本願発明は「Nd0.84Cu0.16、Nd0.7Cu0.3」の何れかであるのに対して、引用発明は「重量比80:20」である。
第6 判断
上記相違点について検討する。
引用例1には、引用発明の製造方法による効果について、融点が520℃程度と低温のNd-Cu改質合金粉を使用することにより、520~650℃の範囲で合金を溶融させることができ(段落【0029】)、その融液を、全ての磁粉に対して均一に粒界拡散させることができると記載されている(段落【0034】)。
そして、引用発明において、Nd-Cu改質合金粉を均一に粒界拡散させるために、「Nd-Cu合金粉末」のNd及びCuの含有率を調節することは、通常行われる試行錯誤の範囲である。ここで、例えば特開2012-234985号(段落【0057】、【0063】)に、融点が520℃と低いNdCu粉末を溶融し、磁性組織の中に粒界拡散させ磁石を作成する際に、Nd70Cu30粉末を用いる技術が記載されているように、Nd70Cu30の合金粉末を用いることも格別なことではない。
そうすると、引用発明において、「Nd-Cu合金粉末」としてNd70Cu30を採用し、上記相違点に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
よって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「引用文献3(当審注:当審決における引用例1)には、磁性粉末の形態を多磁区粒子に限定することは記載されていないと思料いたします。具体的には、引用文献3には、磁性粉末として『市販Nd-Fe-B急冷粉末』を使用することが示されています。この際、合金の急冷時には結晶粒の形成に十分な時間が与えられないため、急冷粉末に含まれる合金は、結晶粒が正常に形成されない非晶質である可能性が高くなります。このため、引用文献3に記載される急冷粉末からなる合金を用いて作成される磁性粉末から、多結晶及び多磁区粒子である磁性粉末を作成することは、当業者にとって容易なことではないと思料いたします。」と主張している。
しかしながら、本願発明の「磁性粉末」も、原材料のNd-Fe-B系粉末を溶融し、当該溶融液を高速で回転する冷却ロールに注入してリボン状の合金を作製し、リボン状の合金を粉砕し作製したもの(段落【0057】)、即ち「Nd-Fe-B急冷粉末」であるから、上記主張を採用することができない。
第8 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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