特許拒絶査定不服審判
2024-007290
積層チップ部品の製造方法
- 審判番号
- 2024-007290
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-018697外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年04月30日
- 審決日
- 2024年12月11日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (H01F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 18697「積層チップ部品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月30日出願公開、特開2021-125585〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年2月6日に出願された特願2020-18697号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和5年 8月31日付け:拒絶理由通知
令和5年11月 6日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 2月 2日付け:拒絶査定
令和6年 4月30日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和5年11月6日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。なお、符号「A」~「D」は、当審において付したものであり、それぞれの工程を、「工程A」などという。
〈本願発明〉
A 複数のグリーンシートが積層された積層基板の主面における複数の個片化領域のそれぞれに、少なくとも前段階の中間製品を識別する情報および個片化後の最終製品を識別する情報を示すコードを形成する工程と、
B 前記積層基板を前記個片化領域ごとに個片化して、複数のグリーンチップを形成する工程と、
C 前記グリーンチップを、最終製品である、前記コードが設けられた積層チップ部品にする工程と
を含む、
D 積層チップ部品の製造方法。
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-6
・引用文献等 1-2
<引用文献等一覧>
1.特開2007-242806号公報
2.特開2015-211072号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に公開された特開2007-242806号公報(以下、「引用文献1」という。)には、積層型電子部品の製造方法について以下の記載がある(下線は、当審で付与した。以下同じ。)。
ア「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は方向認識マークが積層型電子部品の製造工程中で消失するなどして認識不能となることのない積層型電子部品と、この積層型電子部品を安定して製造する方法とを提供することを目的とする。
・・・(中略)・・・
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
まず、図1(イ)に示すように、セラミクスのグリーンシート1~3をポリエチレンテレフタレート(PET)のキャリアフィルム20上に作成する。
そして、図1(ロ)に示すように、第1のグリーンシート1の所定の位置に炭酸ガスレーザを用いて第1のグリーンシート1の厚みの途中まで窪んだ凹部5を形成する。この凹部5には図1(ハ)に示すように、銀(Ag)/パラジウム(Pd)ペースト15を凹部5の直径iより大きい直径kで印刷することによって充填し、乾燥させる。
次に、他の複数のグリーンシート3にコイル導体やコンデンサ電極となる導体パターン6を銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)などの金属ペーストで印刷する。このとき上下層の導体パターン6を接続する部分にはビアホール7を形成しておき、ビアホール7も同時に銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)などの金属ペーストで内部を充填する。そしてこれらグリーンシート3の金属ペーストを乾燥させておく。
【0013】
次に、各グリーンシート1~3をキャリアフィルム20から剥がして、図2に示すように、凹部5を形成され、銀(Ag)/パラジウム(Pd)ペースト15を充填された第1のグリーンシート1を最上部として、第1のグリーンシート1と絶縁層となるグリーンシート2と導体パターン6およびビアホール7を形成されたグリーンシート3とを所定の枚数ずつ所定の位置に積層する。このとき、グリーンシート3に形成された導体パターン6は、金属ペーストを充填されたビアホール7を介して他のグリーンシート3に印刷された導体パターン6に接続される。
【0014】
次に、これら積層された複数のグリーンシート1~3を圧着し、この圧着されたグリーンシート1~3を切断して個片化する。さらに個片化されたグリーンシート1~3を焼成して積層体8を形成し、この積層体8をバリ取りなどのためにバレル研磨する。図3にバレル研磨前(イ-1、イ-2)とバレル研磨後(ロ-1、ロ-2)の積層体8の銀(Ag)/パラジウム(Pd)ペースト15を充填された凹部5および積層体8の隅部付近を示す。このバレル研磨の工程では、図3(ロ-1)、(ロ-2)に示すように、積層体8の四隅が丸みをおびて形成されるだけでなく、凹部5に充填され、焼成された銀(Ag)/パラジウム(Pd)ペースト15も削られ、凹部5からはみ出した周辺部分16の一部または全部が消失する。
【0015】
次に積層体8の各端面に露出している導体パターン6を電気的に接続するように銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)などの金属ペーストを塗布し、焼成することによって外部電極9を形成し、図4に示す積層型電子部品10を完成させる。図4(イ)は積層型電子部品10の平面図であり、(ロ)はその正面図である。ここで、銀(Ag)/パラジウム(Pd)ペースト15を充填された凹部5が方向認識マーク11となっている。」
イ「【0027】
さらに、本実施形態では方向認識マーク11の目的で銀(Ag)/パラジウム(Pd)ペースト15を充填した凹部5を使用したが、ロット番号や製造年月日などの製品に関する情報を識別するためのマークを付すために使用しても良い。
また、本実施形態では凹部5の横断面形状は円状であるが、これに限られず、多角形状などの認識目的にあったものでも良い。」
ウ「【図4】
[図:0001419194000001.jpg]
」
(2)引用文献1に記載された技術事項
上記(1)の摘記事項から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
ア 段落【0005】の記載によれば、引用文献1には、「積層型電子部品を」「製造する方法」が記載されている。
イ 段落【0012】の記載によれば、「セラミクスのグリーンシート1~3をポリエチレンテレフタレート(PET)のキャリアフィルム20上に作成」し、「第1のグリーンシート1の所定の位置に炭酸ガスレーザを用いて第1のグリーンシート1の厚みの途中まで窪んだ凹部5を形成」し「この凹部5に」「ペースト15を」「印刷することによって充填し、乾燥させ」、「次に、他の複数のグリーンシート3にコイル導体やコンデンサ電極となる導体パターン6を」「金属ペーストで印刷」する。
ウ 段落【0013】の記載によれば、「次に、各グリーンシート1~3をキャリアフィルム20から剥がし」、「凹部5を形成され、」「ペースト15を充填された第1のグリーンシート1を最上部として、第1のグリーンシート1と絶縁層となるグリーンシート2と導体パターン6」「を形成されたグリーンシート3とを所定の枚数ずつ所定の位置に積層」する。
エ 段落【0014】の記載によれば、「次に、これら積層された複数のグリーンシート1~3を圧着し、この圧着されたグリーンシート1~3を切断して個片化」し、「さらに個片化されたグリーンシート1~3を焼成して積層体8を形成し、この積層体8をバリ取りなどのためにバレル研磨」する。
オ 段落【0015】の記載によれば、「次に積層体8の各端面に露出している導体パターン6を電気的に接続するように」「金属ペーストを塗布し、焼成することによって外部電極9を形成し、」「積層型電子部品10を完成」させる。
カ 段落【0015】に「図4(イ)は積層型電子部品10の平面図」と記載され、図4(イ)より積層型電子部品10の積層体8に凹部5が設けられていることが見てとれるから、凹部5は積層型電子部品10の主面に設けられているものと認められる。
キ 段落【0027】の記載によれば、「ペースト15を充填した凹部5を」「ロット番号や製造年月日などの製品に関する情報を識別するためのマークを付すために使用」する。
(3)引用発明
上記「(2)ア」ないし「(2)キ」の技術事項を総合勘案すると、引用文献1には、積層型電子部品を安定して製造する方法について次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、各工程、構成の符号は、説明のために当審において付したものである(以下、それぞれ「工程a」~「工程g」、「構成h」、「構成i」という。)。
〈引用発明〉
a セラミクスのグリーンシート1~3をポリエチレンテレフタレート(PET)のキャリアフィルム20上に作成し、
b 第1のグリーンシート1の所定の位置に炭酸ガスレーザを用いて第1のグリーンシート1の厚みの途中まで窪んだ凹部5を形成しこの凹部5にペースト15を印刷することによって充填し、乾燥させ、
c 他の複数のグリーンシート3にコイル導体やコンデンサ電極となる導体パターン6を金属ペーストで印刷し、
d 各グリーンシート1~3をキャリアフィルム20から剥がし、凹部5を形成され、ペースト15を充填された第1のグリーンシート1を最上部として、第1のグリーンシート1と、絶縁層となるグリーンシート2と、導体パターン6を形成されたグリーンシート3と、を所定の枚数ずつ所定の位置に積層し、
e これら積層された複数のグリーンシート1~3を圧着し、この圧着されたグリーンシート1~3を切断して個片化し、さらに個片化されたグリーンシート1~3を焼成して積層体8を形成し、この積層体8をバリ取りなどのためにバレル研磨し、
f 積層体8の各端面に露出している導体パターン6を電気的に接続するように金属ペーストを塗布し、焼成することによって外部電極9を形成し、積層型電子部品10を完成させる
g 積層型電子部品を製造する方法において、
h 凹部5は積層型電子部品10の主面に設けられ、
i ペースト15を充填した凹部5をロット番号や製造年月日などの製品に関する情報を識別するためのマークを付すために使用する、
g 積層型電子部品を製造する方法。
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 本願発明の工程Aについて
引用発明の工程bにおいて形成される「凹部」は、複数のグリーンシートが積層されてなる「積層型電子部品の主面に設けられ」るから(構成h)、工程eにて個片化される「個片化領域のそれぞれ」に形成されるものである。
また、引用発明の「凹部」は、「ロット番号や製造年月日などの製品に関する情報を識別するためのマークを付すために使用」するものであり(構成i)、マークが示す「ロット番号や製造年月日などの製品に関する情報」は、本願発明の「個片化後の最終製品を識別する情報」に相当し、このような情報を示す態様にあっては、引用発明の「マーク」は、その付された位置を表すにとどまらず、情報を表現する符号としての機能を果たすから、本願発明の「コード」に対応する構成であるといえる。
そうすると、引用発明は、本願発明の工程Aのうち、「複数のグリーンシートが積層された積層基板の主面における複数の個片化領域のそれぞれに、個片化後の最終製品を識別する情報を示すコードを形成する工程」を備えているということができる。
一方、コードが示す情報の内容が、本願発明は「少なくとも前段階の中間製品を識別する情報および個片化後の最終製品を識別する情報」であるのに対して、引用発明は、前段階の中間製品を識別する情報を付すことは特定されていない点で相違する。
2 本願発明の工程Bについて
引用発明は、その工程eにおいて、工程dにより積層された複数のグリーンシートを、圧着、切断して個片化し、焼成して積層体を得るものであり、ここでいう「積層体」は、本願発明の「グリーンチップ」に相当するから、本願発明の工程Bである「前記積層基板を前記個片化領域ごとに個片化して、複数のグリーンチップを形成する工程」を備えているといえる。
3 本願発明の工程Cについて
引用発明は、その工程fにおいて、工程eにより形成された積層体に対し、外部電極を形成して、積層型電子部品を完成させるものであり、ここで、構成h、iによれば、当該積層型電子部品の主面には、ロット番号や製造年月日などの製品に関する情報を識別するためのマークを付すために使用する凹部が設けられているから、引用発明は、本願発明の工程Cである「前記グリーンチップを、最終製品である、前記コードが設けられた積層チップ部品にする工程」を備えているといえる。
4 本願発明の工程Dについて
引用発明の「積層型電子部品」は、本願発明の「積層チップ部品」に相当するから、引用発明の工程gは、本願発明の工程Dと一致する。
5 以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「複数のグリーンシートが積層された積層基板の主面における複数の個片化領域のそれぞれに、少なくとも個片化後の最終製品を識別する情報を示すコードを形成する工程と、
前記積層基板を前記個片化領域ごとに個片化して、複数のグリーンチップを形成する工程と、
前記グリーンチップを、最終製品である、前記コードが設けられた積層チップ部品にする工程と
を含む、積層チップ部品の製造方法。」
〈相違点〉
コードが示す情報が、本願発明は「少なくとも前段階の中間製品を識別する情報および個片化後の最終製品を識別する情報」であるのに対して、引用発明は、前段階の中間製品を識別する情報を付すことを特定しない点。
第6 判断
1 相違点について
上記相違点について検討する。
引用発明のごとき積層型電子部品に限らず、製品の不具合等が生じた場合に、その原因究明に供するために、製品の製造段階における情報、例えば、当該製品を製造するために用いた部品や製造工程における各種の製造条件等についての情報を追跡可能に記録することは、いわゆるトレーサビリティを確立するための周知技術として、広く行われていることである。
原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された、特開2015-211072号公報においても、その段落【0031】に「絶縁基板1の上面のうち凹部2を囲む枠状部1aに設けられた識別マーク8は、作製された電子装置20の製品名、製作された週または日等の製作時期、製造ロットの番号およびその他の注意事項等に関する情報を表示するためにものである。また、この識別マーク8は、電子装置20の製作に用いられた配線基板10の製作時期、製造ロットの番号等を表示するために設けられる場合もある。このような情報を知ることによって、例えば仮に電子装置20において不具合が発生したときに、その不具合が発生した電子装置20または配線基板10の製造時期または製造ロットの番号等の情報を知ることができる。これにより、例えば電子装置20または配線基板の品質管理、不具合の原因解析等に上記の情報を利用することができる。」と記載されるように、製品自体の情報と同様に当該製品の製造に用いた部品等に関する情報を記録することも、当業者が普通に採用する事項に過ぎない。
そうすると、引用発明では、積層型電子部品に対して「ロット番号や製造年月日などの製品に関する情報」をマークとして付すものであるところ、ここで「製品に関する情報」として、さらなるトレーサビリティの確保を図るべく、引用文献1に明示されている、ロット番号や製造年月日に加えて、その積層型電子部品の製造のために用いた、任意の段階の中間製品についての情報を付加することとして、上記相違点に係る構成を得ることに、当業者が格別の創作能力を要するものとは認められない。
2 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、本願発明について、「コードが形成されるタイミングは積層基板の形態とされた後である」から、正確に中間製品を特定することができ、高いトレーサビリティを実現することができる旨述べるが、請求項1を引用する請求項2において、積層前にコードを形成することが特定されているように、請求項1の記載は、コード形成のタイミングを特定していないから、かかる主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明ならびに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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