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特許拒絶査定不服審判

2020-000678

ウレタン樹脂組成物、鋼板表面処理剤及びその塗膜を有する鋼板

審判番号
2020-000678
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-527019外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年01月17日
審決日
2021年06月03日
公報発行日
2021年09月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-Z (C08G) / P18 .121-Z (C08G) / P18 .573-Z (C08G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2019-527019「ウレタン樹脂組成物、鋼板表面処理剤及びその塗膜を有する鋼板」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月 3日国際公開、WO2019/004349〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
【理 由】

第1 手続の経緯

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本願は、2018年(平成30年)6月28日(優先権主張 平成29年6月29日)を国際出願日とする出願(特願2019-527019)であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和1年 7月 9日:手続補正書、早期審査に関する事情説明書の提出

同年 7月31日付け:拒絶理由通知書

同年10月 2日  :意見書、手続補正書の提出

同年10月 8日付け:拒絶査定

令和2年 1月17日:審判請求書、手続補正書の提出

第2 本件補正について

1 本件補正の内容

令和2年1月17日提出の手続補正書によりされた補正(以下、「本件補正」という)は、請求項1における「ウレタン樹脂(A)の酸価」について、「10~25mgKOH/gの範囲である」を「10~25mgKOH/gである」にする補正である。

2 補正の適否について

本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「前記ウレタン樹脂(A)の酸価が、10~25mgKOH/gの範囲である」について、ウレタン樹脂は樹脂毎に特定の値の酸価を有し、その酸価が範囲を有するものではなく、所定の範囲に含まれる値であることを意味する「前記ウレタン樹脂(A)の酸価が、10~25mgKOH/gである」の誤記であることは明らかであるから、本件補正は、誤記の訂正を目的とするものであるといえる。

したがって、本件補正は、誤記の訂正を目的とする補正であるので、独立特許要件の検討は必要としない。

そして、上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第3号に掲げる、誤記の訂正を目的とする補正であるから、請求項1ないし6に係る本件補正は適法になされたものである。

なお、審判請求人は、審判請求書において、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的するものと主張しているものの、本件補正は、特許請求の範囲を減縮するものではないから、当該主張は採用できない。

第3 本願発明

第2で述べたとおり、請求項1ないし6に係る本件補正は適法になされたものといえるから、本願発明は、令和2年1月17日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)、及びアニオン性基を有するポリオール(a1-2)を含有するポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)との反応物であるウレタン樹脂(A)、及び水性媒体(B)を含む金属表面処理剤であって、
前記芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)中の芳香環濃度が、2.5~5mol/kgであり、
前記芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)の含有率が、前記ポリオール(a1)中、90質量%以上であり、
前記ポリイソシアネート(a2)が、脂肪族ポリイソシアネート及び/または脂環式構造を有するポリイソシアネートを含むものであり、
前記ウレタン樹脂(A)の酸価が、10~25mgKOH/gであることを特徴とする金属表面処理剤。」

第4 原査定の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~6に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、及び、

この出願の請求項1~6に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2012-92311号公報

第5 引用文献の記載および引用文献に記載された発明

1 引用文献1に記載された事項

本願優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された特開2012-92311号には、次の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】
脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)と親水性基含有ポリオール(a3)とを含むポリオール(A)、及び、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(b1)を含むポリイソシアネート(B)を反応させて得られる16~40の酸価を有するウレタン樹脂(C)、ならびに、水性媒体(D)を含有することを特徴とするプライマーコート剤。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(C)の全量に対する、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造の割合が0.1質量%~35質量%の範囲である、請求項1に記載のプライマーコート剤。
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・・・
【請求項4】
前記ウレタン樹脂(C)の全量に対する、前記芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)由来の芳香族構造の割合が5質量%~30質量%の範囲である、請求項1に記載のプライマーコート剤。
・・・
【請求項9】
基材表面に、請求項1~8のいずれかに記載のプライマーコート剤を塗布し、乾燥することによって形成されるプライマー層を有し、かつ、該プライマー層表面に、トップコート層を有する積層体。
・・・
【請求項12】
前記基材が金属基材またはプラスチック基材である、請求項9に記載の積層体。」
(2)「【0001】
本発明は、プラスチック基材や金属基材をはじめとする各種基材の表面被覆の際に使用可能なプライマーコート剤に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、基材やトップコート層等に対する密着性や、耐水密着性及び耐水白化性等の耐水性に優れたプライマー層を形成可能なプライマーコート剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
続きを表示(全21行)
【0012】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討するなかで、基材密着性を向上するためにはプライマー層を構成する樹脂として芳香族構造を有するものを使用することが有効ではないかと考え、前記特許文献1記載のプライマーコートをベースとして検討を進めた。
【0013】
具体的には、前記プライマーコート剤として、前記芳香族構造とともに、耐水性の向上に寄与しうると考えられる脂肪族環式構造とを組み合わせ有するウレタン樹脂を含有するものを検討した。
【0014】
前記プライマーコート剤であれば、比較的良好な基材密着性を有するプライマー層を形成できたものの、耐水性の点で、要求性能にあと一歩及ぶものではなかった。また、比較的高温下においては、前記耐水性の低下がみられた。
【0015】
そこで、本発明者等は、ウレタン樹脂を構成するポリオール及びポリイソシアネートとして、様々な組み合わせを検討したところ、脂肪族環式構造含有ポリオールと芳香族構造含有ポリエステルポリオールと親水性基含有ポリオールとを含むポリオール、及び、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートを含むポリイソシアネートを、組み合わせ反応させて得られるウレタン樹脂のうち、16~40という特定の酸価を有するウレタン樹脂を含むプライマーコート剤であれば、本発明の課題を解決できることを見出した。
【0016】
即ち、本発明は、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)と親水性基含有ポリオール(a3)とを含むポリオール(A)、及び、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(b1)を含むポリイソシアネート(B)を反応させて得られる16~40の酸価を有するウレタン樹脂(C)、ならびに、水性媒体(D)を含有することを特徴とするプライマーコート剤に関するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のプライマーコート剤であれば、基材等に対する密着性や耐水性に優れた皮膜を形成できることから、例えば鋼板等の金属基材や、ABS樹脂、PC樹脂、ABS/PC樹脂、PS樹脂、PMMA樹脂等のプラスチック基材と、トップコート層との間に設けるプライマー層に使用することができる。
【0018】
具体的には、前記プライマーコート剤は、空調機器や冷蔵庫等の熱交換器、防汚性及び防曇性が求められる反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材が使用される家電製品やディスプレイ等の家電製品、自動車内装材や外装材、壁材や屋根材等の建築部材等を塗装する際のプライマー層の形成に使用することが可能である。
【0019】
また、本発明のプライマーコート剤は、例えば、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛合金鋼板等のめっき鋼板や、アルミ板、アルミ合金板、電磁鋼板、銅板、ステンレス鋼板等の金属基材の錆等の発生を防止可能な耐食性に優れた皮膜を形成できることから、例えば外壁、屋根等の建築部材、ガードレール、防音壁、排水溝等の土木部材、家電製品、産業機械、自動車の部品等の表面塗装用のコーティング剤等に使用することが可能である。」
(4)「【0021】
本発明で使用するウレタン樹脂(C)としては、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)及び脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(b1)由来の脂肪族環式構造と、芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)由来の芳香族構造と、親水性基とを組み合わせ有するものを使用する。
【0022】
具体的には、前記ウレタン樹脂(C)は、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)と親水性基含有ポリオール(a3)とを含むポリオール(A)、及び、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(b1)を含むポリイソシアネート(B)を組み合わせ反応させて得られる。
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【0023】
ここで、前記ウレタン樹脂(C)の有する脂肪族環式構造は、前記ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)として前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)及び脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(b1)を組み合わせ使用することによってウレタン樹脂(C)中に導入されることが重要である。
【0024】
ここで、ウレタン樹脂(C)の代わりに、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)または脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(b1)のいずれか一方のみを使用して得られたウレタン樹脂を含むプライマーコート剤では、耐水密着性や耐水白化性等の耐水性に優れたプライマー層を形成できない場合がある。
・・・
【0026】
前記脂肪族環式構造は、前記ウレタン樹脂(C)の全量に対して10質量%~40質量%の範囲で含まれることが、密着性や耐水性に優れたプライマー層を形成するうえで好ましい。また、前記ウレタン樹脂(C)の全量に対する、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造の割合は、0.1質量%~35質量%の範囲であることが、優れた基材密着性と耐水性とを付与するとともに、良好な基材追従性を備えた皮膜を形成するうえで好ましい。なお、前記脂肪族環式構造の含有量は、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)および脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(b1)中に含まれる脂肪族環式構造の質量を、ウレタン樹脂(C)全量の質量で割ることよって算出した値である。」
(5)「【0027】
また、前記ウレタン樹脂(C)の有する芳香族構造は、前記ポリオール(A)として前記芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)を使用することによってウレタン樹脂(C)中に導入されることが重要である。
【0028】
前記ウレタン樹脂(C)の代わりに、前記芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)を使用せず、例えば芳香族構造含有ポリイソシアネートを使用して得られたウレタン樹脂を含むプライマーコート剤では、基材等に対する密着性や耐水密着性の優れたプライマー層を形成できない場合がある。なお、前記芳香族構造は、前記芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)とともに、前記芳香族構造含有ポリイソシアネートを組み合わせ使用することによってウレタン樹脂(C)中に導入されるものであっても良い。
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【0029】
また、前記ウレタン樹脂(C)の有する、前記芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)由来の芳香族構造の割合は、前記ウレタン樹脂(C)の全量に対して5質量%~30質量%の範囲であることが好ましい。なお、前記芳香族構造の含有量は、芳香族構造含有ポリオール(a2)及び芳香族構造含有ポリイソシアネート中に含まれる芳香族構造の質量を、ウレタン樹脂(C)全量の質量で割ることによって算出した値である。
【0030】
また、前記ウレタン樹脂(C)としては、水性媒体(D)中における良好な水分散安定性を付与し、保存安定性に優れた水性樹脂組成物を得る観点から、親水性基を有するものを使用することが好ましい。
【0031】
前記親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、及びノニオン性基を使用できるが、なかでもアニオン性基又はカチオン性基を使用することが好ましく、アニオン性基を使用することがより好ましい。
【0032】
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、スルホン酸基や、それらの一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基、スルホネート基等を使用することができる。なかでもカルボキシル基やカルボキシレート基を使用することが、良好な水分散性を付与するうえで好ましい。
【0033】
前記アニオン性基の中和に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミンや、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物等が挙げられる。」
(6)「【0037】
また、前記ウレタン樹脂(C)としては、16~40の範囲の酸価を有するものを使用することが、本発明の効果を奏するうえで必須である、ここで、前記酸価が15である場合や、41である場合には、本発明の効果を奏することができない場合がある。前記酸価としては、20~30の範囲であることが好ましく、20~25の範囲であることがより好ましい。なお、本発明で言う酸価は、前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用したカルボキシル基含有ポリオール等の酸基含有化合物の使用量に基づいて算出した理論値である。」
(7)「【0042】
前記100~500程度の低分子量の脂肪族環式構造含有ポリオール(a1-1)を使用する場合、前記ウレタン樹脂(C)の全量に対する、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1-1)由来の脂肪族環式構造の割合は、0.1質量%~10質量%の範囲であることが、基材密着性や耐水性に優れたプライマー層を形成するうえで好ましい。
・・・
【0048】
前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)の使用量は、前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用するポリオール(A)の全量に対して、0.1質量%~40質量%の範囲であることが好ましい。」
(8)「【0050】
前記芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)を使用し、ウレタン樹脂(C)中に前記(a2)由来の芳香族構造を導入することによって、密着性を向上することが可能となる。
・・・
【0054】
前記ポリオール及びポリカルボン酸の組み合わせとしては、いずれか一方または両方に芳香族構造を有するものを使用することが必須である。具体的には、前記芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)としては、エチレングリコールやジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール等の脂肪族ポリオールと、テレフタル酸やイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ポリカルボン酸とを組み合わせ反応させることによって得られるものを使用することが好ましい。
・・・
【0056】
前記芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)は、前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用するポリオール(A)の全量に対して50質量%~95質量%の範囲で使用することが好ましい。」
(9)「【0057】
また、前記ポリオール(A)に使用する前記親水性基含有ポリオール(a3)としては、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)や前記芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)以外の、親水性基を有するポリオールを使用することができ、例えば、アニオン性基含有ポリオール、カチオン性基含有ポリオール、及びノニオン性基含有ポリオールを使用することができる。なかでも、アニオン性基含有ポリオールまたはカチオン性基含有ポリオールを使用することが好ましく、アニオン性基含有ポリオールを使用することがより好ましい。
【0058】
前記アニオン性基含有ポリオールとしては、例えばカルボキシル基含有ポリオールや、スルホン酸基含有ポリオールを使用することができる。
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【0059】
前記カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば2,2’-ジメチロールプロピオン酸、2,2’-ジメチロールブタン酸、2,2’-ジメチロール酪酸、2,2’-ジメチロール吉草酸等を使用することができ、なかでも2,2’-ジメチロールプロピオン酸を使用することが好ましい。また、前記カルボキシル基含有ポリオールと各種ポリカルボン酸とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエステルポリオールも使用することもできる。
・・・
【0061】
前記カルボキシル基含有ポリオールやスルホン酸基含有ポリオールは、前記ウレタン樹脂(C)の酸価が16~40となる範囲で使用することが好ましく、20~30となる範囲で使用することがより好ましい。
【0062】
前記アニオン性基は、それらの一部または全部が塩基性化合物等によって中和されていることが、良好な水分散性を発現するうえで好ましい。
【0063】
前記アニオン性基を中和する際に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の沸点が200℃以上の有機アミンや、NaOH、KOH、LiOH等を含む金属水酸化物等を使用することができる。前記塩基性化合物は、得られるコーティング剤の水分散安定性を向上させる観点から、塩基性化合物/アニオン性基=0.5~3.0(モル比)となる範囲で使用することが好ましく、0.9~2.0(モル比)となる範囲で使用することがより好ましい。
・・・
【0068】
前記親水性基含有ポリオール(a3)は、前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用するポリオール(A)の全量に対して、0.1質量%~30質量%の範囲で使用することが好ましい。」
(10)「【0071】
また、前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用するポリイソシアネート(B)としては、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(b1)を必須とし、必要に応じてその他のポリイソシアネートを組み合わせ使用する。
・・・
【0073】
前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(b1)としては、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を使用することができる。なかでもジシクロヘキシルメタンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートを使用することが、耐水性とともに、耐久性や柔軟性に優れたプライマー層を形成するうえで好ましい。
・・・
【0075】
前記ポリイソシアネート(B)としては、優れた密着性と耐水性とを付与する観点から、前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(b1)を、前記ポリイソシアネート(B)の全量に対して90質量%以上の範囲で使用することが好ましく、95質量%~100質量%の範囲で使用することが好ましい。」
(11)「【0078】
また、前記ウレタン樹脂(C)を製造する際には、密着性や耐水性を更に向上し、かつ耐薬品性や耐食性を向上するうえで、前記ポリオール(A)及び前記ポリイソシアネート(B)の他に、必要に応じて鎖伸長剤を使用することができる。
【0079】
前記ウレタン樹脂(C)を製造する際に使用できる鎖伸長剤としては、ポリアミンや、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
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【0080】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N-ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N-エチルアミノエチルアミン、N-メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β-セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3-セミカルバジッド-プロピル-カルバジン酸エステル、セミカルバジッド-3-セミカルバジドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサンを使用することができ、エチレンジアミンを使用することが好ましい。
・・・
【0082】
前記鎖伸長剤は、例えば前記ポリアミンを使用する場合であれば、前記ポリアミンが有するアミノ基と、前記ポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)を反応させて得られたウレタンプレポリマーのイソシアネート基との当量比が、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.3~1.0(当量比)の範囲で使用することがより好ましい。鎖伸長剤を前記した範囲で使用することにより、形成する皮膜の耐溶剤性や力学的強度を向上させることができる。
【0083】
前記鎖伸長剤と前記ウレタンプレポリマーとの鎖伸長反応は、例えば前記方法で得たウレタンプレポリマーまたはその中和物の水分散体と鎖伸長剤とを混合することによって行うことができる。前記鎖伸長反応は、前記ウレタンプレポリマーの親水性基を中和する工程の前に行っても良い。
【0084】
前記ポリアミン等の鎖伸長剤は、前記ウレタン樹脂(C)のウレア結合当量が500~50000となる範囲で使用することが、密着性や耐水性、耐薬品性、耐食性に優れた皮膜を形成するうえで好ましい。」
(12)「【0090】
前記方法で得られたウレタン樹脂(C)は、例えば前記ウレタン樹脂(C)の有する親水性基の一部または全部を中和し、次いで、該中和物と水性媒体(D)とを混合することによって、前記水性媒体(D)中に前記ウレタン樹脂(C)が溶解または分散したウレタン樹脂組成物を得ることができる。前記混合の際には、必要に応じてホモジナイザー等の機械を用いても良い。
【0091】
前記水性媒体(D)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。・・・安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。」
(13)「【0115】
本発明のプライマーコート剤等は、例えばそれを前記基材表面に直接、塗布し、次いで乾燥、硬化させることによって、その表面に皮膜(プライマー層)を形成することができる。」
(14)「【0125】
以上のように、前記基材上に前記プライマー層を有し、かつ、該プライマー層上にトップコート層を設けた積層体は、水等の影響によらず長期間にわたり前記トップコート層の剥離を引き起こすことがないから、例えば空調機器や冷蔵庫等の熱交換器、防汚性及び防曇性が求められる反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材が使用される家電製品やディスプレイ、自動車内装材や外装材、壁材や屋根材等の建築部材等に使用することが可能である。」
(15)「【0127】
[実施例1]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、エチレングリコールと1,4-ブタンジオールとイソフタル酸とテレフタル酸とを反応させて得られる芳香族構造含有ポリエステルポリオール(水酸基当量840g/当量〕64質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール6質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸7質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート47質量部を、メチルエチルケトン80質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0128】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液と、トリエチルアミン5質量部とを混合することで前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水264質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を7質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが8.0であるウレタン樹脂(C-1)の水分散体からなるプライマーコート剤(I)を得た。」
(16)「【0140】
[比較例1]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、エチレングリコールと1,4-ブタンジオールとイソフタル酸とテレフタル酸とを反応させて得られる芳香族構造含有ポリエステルポリオール(水酸基当量840g/当量〕82質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸7質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート35質量部を、メチルエチルケトン80質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0141】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液と、トリエチルアミン5質量部とを混合することで前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水264質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を5質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが8.2であるウレタン樹脂(C-6)の水分散体からなるプライマーコート剤(VI)を得た。」
(17)「【0154】
[密着性の評価方法]
(基材とプライマー層との密着性の評価方法)
前記プライマーコート剤を、皮膜の膜厚が2μmとなるように、下記[1]~[8]で示される8種類の基材の表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で30秒間乾燥させた後、23℃で24時間乾燥することによって、各基材表面にプライマー層からなる皮膜が積層された8種の試験板1を得た。
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【0155】
〔基材〕
基材は全てエンジニアリングテストサービス社から購入。
【0156】
[1]PET:ポリエチレンテレフタレート,1.0mm×70mm×150mm
[2]PC:ポリカーボネート,1.0mm×70mm×150mm
[3]PVC:塩化ビニル,2.0mm×70mm×150mm
[4]SUS:JIS G4305 SUS304,0.5mm×70mm×150mm
[5]SPC:JIS G3141 SPCC-SB,0.8mm×70mm×150mm
[6]アルミ:JIS H4000 A1050P,0.8mm×70mm×150mm
[7]ガラス:JIS R3202,2.0mm×70mm×150mm
[8]GL:溶融亜鉛めっき鋼板(亜鉛45質量%、アルミ55質量%),0.8mm×70mm×150mm
前記で得た試験板1を構成するプライマー層(皮膜)と基材との密着性を、JIS K5600 碁盤目試験法に基づいて測定し、下記評価基準に従って評価した。
【0157】
◎:皮膜の剥がれが全く見られなかった。
○:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の3%未満であった。
△:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の3%以上50%未満であった。
×:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の50%以上であった。
【0158】
(トップコート層とプライマー層との密着性の評価方法)
前記プライマーコート剤を、上記[6]アルミ基材(JIS H4000 A1050P,0.8×70×150mm)の表面に、皮膜の膜厚が2μmとなるようにバーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で30秒間乾燥させた後、23℃で24時間乾燥することによって、アルミ基材表面にそれぞれプライマー層を形成した。
【0159】
次いで、前記したプライマー層上に、(メタ)アクリル酸とアクリルアミドとN-メチロールアクリルアミドとを共重合して得られるアクリル樹脂と、ポリエチレングリコールとを含有する親水性トップコート剤を、皮膜の膜厚が2μmとなる条件で塗布し、次いで250℃で5秒間乾燥することによって、前記プライマー層上に親水性のトップコート層を備えた積層体1を得た。
一方、前記プライマーコート剤を、上記[1]PET(ポリエチレンテレフタレート,1.0mm×70mm×150mm)からなる透明フィルムの表面に、皮膜の膜厚が2μmとなるようにバーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で30秒間乾燥させた後、23℃で24時間乾燥することによって、透明フィルムの表面にプライマー層を形成した。
【0160】
次いで、前記したプライマー層上に、(メタ)アクリル酸とアクリルアミドとN-メチロールアクリルアミドとを共重合して得られるアクリル樹脂と、ポリエチレングリコールとを含有する親水性トップコート剤を、皮膜の膜厚が2μmとなる条件で塗布し、次いで80℃で30秒間乾燥することによって、前記プライマー層上に親水性のトップコート層を備えた積層体2を得た。
前記積層体1及び2を構成するトップコート層とプライマー層との密着性を評価するために、学振型摩擦試験機(大栄科学精器製作所製)の摩擦子(縦2cm×横2cm)に水0.1mlを含浸させた綿布(カナキン3号)を取り付け、前記積層体1及び2のトップコート層表面を200gの荷重で縦10cm×横2cmの範囲を50回擦過した。擦過回数は、前記親水性のトップコート層表面の同一箇所を、綿布を用いて1往復した場合を1回とした。なお、プライマー層と基材との間で剥離が生じ、トップコート層とプライマー層との密着性を評価できなかったものは、表中「※」とした。
【0161】
◎:トップコート層の剥がれが全く見られなかった。
○:トップコート層の剥がれた面積が、全擦過面積の3%未満であった。
△:トップコート層の剥がれた面積が、全擦過面積の3%以上50%未満であった。
×:トップコート層の剥がれた面積が、全擦過面積の50%以上であった。
【0162】
[耐水性の評価方法]
(耐水密着性の評価方法)
前記プライマーコート剤を、皮膜の膜厚が2μmとなるように、上記[6]アルミ基材(JIS H4000 A1050P,0.8×70×150mm)の表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で30秒間乾燥させた後、23℃で24時間乾燥することによって、アルミ基材表面にプライマー層からなる皮膜が積層された試験板2を得た。
一方、前記プライマーコート剤を、皮膜の膜厚が2μmとなるように、上記[1]PET(ポリエチレンテレフタレート,1.0mm×70mm×150mm)からなる透明フィルムの表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で30秒間乾燥させた後、23℃で24時間乾燥することによって、前記透明フィルムの表面にプライマー層からなる皮膜が積層された試験板3を得た。
【0163】
前記試験板2及び3を、40℃の温水中に24時間浸漬し、その表面の水を拭き取った後、浸漬後の試験板2及び3をそれぞれ構成するプライマー層(皮膜)と基材との密着性を、JIS K5600 碁盤目試験法に基づいて測定し、下記評価基準に従って評価した。
【0164】
◎:皮膜の剥がれが全く見られなかった。
○:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の3%未満であった。
△:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の3%以上50%未満であった。
×:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の50%以上であった。
【0165】
(耐水白化性の評価方法)
前記プライマーコート剤を、皮膜の膜厚が2μmとなるように、上記[1]PET(ポリエチレンテレフタレート,1.0mm×70mm×150mm)からなる透明フィルムの表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で30秒間乾燥させた後、23℃で24時間乾燥することによって、透明フィルムの表面にプライマー層(皮膜)が積層された試験板4を得た。
【0166】
前記試験板4を、40℃の温水中に24時間浸漬し、その表面の水を拭き取った後、前記試験板4を構成するプライマー層の白濁の有無を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
【0167】
◎:浸漬前の試験板4の外観と全く変化がなく、白化も認められなかった。
○:ごく一部分で僅かな白化が確認できたが、実用上問題ないレベルであった。
△:試験板4の全体にわたり、僅かな白化が認められた。
×:試験板4の全体にわたり、著しい白化が認められた。
【0168】
[耐溶剤性の評価方法]
前記プライマーコート剤を、皮膜の膜厚が2μmとなるように、上記[6]アルミ基材(JIS H4000 A1050P,0.8×70×150mm)の表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で30秒間乾燥させた後、23℃で24時間乾燥することによって、各基材表面にプライマー層からなる皮膜が積層した試験板5を得た。
一方、前記プライマーコート剤を、皮膜の膜厚が2μmとなるように、上記[1]PET(ポリエチレンテレフタレート,1.0mm×70mm×150mm)からなる透明フィルムの表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で30秒間乾燥させた後、23℃で24時間乾燥することによって、各基材表面にプライマー層からなる皮膜が積層した試験板6を得た。
前記試験板5及び6のプライマー層(皮膜)表面に、メチルエチルケトンを含浸したガーゼを接触させ、ラビングテスター(自動化技研工業株式会社製)を用いて、荷重0.5Kgf/cm2の条件で、前記プライマー層(皮膜)表面を往復50回擦過した。
【0169】
前記擦過後の皮膜の表面を目視で観察し、下記基準に基づいて評価した。
◎:皮膜の表面に全く変化が無い。
○:皮膜の若干の溶解が見られるも、実用上問題ないレベルであった。
△:皮膜表面全体に対して10%以上30%未満の範囲に、溶解または基材からの脱離が見られた。
×:皮膜表面全体に対して30%以上の範囲に、溶解または基材からの脱離が見られた。
【0170】
また、前記メチルエチルケトンを含浸したガーゼの代わりに、エタノールを含浸したガーゼを用いること以外は、前記と同様の方法で、プライマー層表面の擦過を行い、擦過後の表面状態を目視で観察し、上記基準に基づいて評価した。
【0171】
[耐アルカリ性の評価方法]
前記プライマーコート剤を、皮膜の膜厚が2μmとなるように、上記[6]アルミ基材(JIS H4000 A1050P,0.8×70×150mm)の表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で30秒間乾燥させた後、23℃で24時間乾燥することによって、各基材表面にプライマー層からなる皮膜が積層した試験板7を得た。
【0172】
前記試験板7のプライマー層(皮膜)表面に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を1滴、滴下し、20分間静置後の塗膜の劣化状態を観察した。
【0173】
◎:皮膜の表面に全く変化が無かった。
○:皮膜の表面の一部に若干の変色が見られたが実用上問題ないレベルであった。
△:皮膜の表面に変色が見られた。
×:皮膜が溶解し、基材が露出した。
【0174】
【表1】
【0175】
【表2】
【0176】
表1及び2中の「脂肪族環式構造割合1」の記載は、ウレタン樹脂(C)の全量に含まれる脂肪族環式構造の質量割合を示す。また、表1及び2中の「脂肪族環式構造割合2」は、ウレタン樹脂(C)の全量に含まれる、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造の質量割合を示す。」

2 引用文献1に記載された発明

引用文献1の実施例1に着目すると、【0127】~【0128】の記載、【表1】の芳香族構造割合、酸価の記載、SUS、SPC、アルミ、GL(溶融亜鉛めっき鋼板)に対する評価の記載、および、【0154】~【0173】の記載からみて、以下の発明が記載されているといえる。

なお、【0156】には、SUSについて、「SUS:JIS G4305 SUS304」と記載され、SPCについて、「SPC:JIS G3141 SPCC-SB」と記載されており、当該JISを参照するに、それぞれ、「冷間圧延ステンレス鋼板」、「冷間圧延鋼板」であるといえる。

「エチレングリコールと1,4-ブタンジオールとイソフタル酸とテレフタル酸とを反応させて得られる芳香族構造含有ポリエステルポリオール(水酸基当量840g/当量〕64質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール6質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸7質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート47質量部を、メチルエチルケトン80質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た後、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液と、トリエチルアミン5質量部とを混合することで前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水264質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を7質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって得られた、芳香族構造割合が15質量%、酸価が23〔KOHmg/g〕であるウレタン樹脂(C-1)の、不揮発分が35質量%で、pHが8.0である水分散体からなる、SUS(冷間圧延ステンレス鋼板)、SPC(冷間圧延鋼板)、アルミ、GL(溶融亜鉛めっき鋼板)である基材の表面に塗工するためのプライマーコート剤(I)」(以下、「引用発明1」という。)

また、引用文献1の比較例1に着目すると、同様に、【0140】~【0141】の記載、【表2】の芳香族構造割合、酸価の記載、SUS(冷間圧延ステンレス鋼板)、SPC(冷間圧延鋼板)、アルミ、GL(溶融亜鉛めっき鋼板)の評価の記載、および、【0154】~【0173】の記載からみて、以下の発明が記載されているといえる。

「エチレングリコールと1,4-ブタンジオールとイソフタル酸とテレフタル酸とを反応させて得られる芳香族構造含有ポリエステルポリオール(水酸基当量840g/当量〕82質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸7質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート35質量部を、メチルエチルケトン80質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た後、次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液と、トリエチルアミン5質量部とを混合することで前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水264質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を5質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって得られた、芳香族構造割合が19質量%、酸価が23〔KOHmg/g〕であるウレタン樹脂(C-6)の、不揮発分が35質量%で、pHが8.2である水分散体からなる、SUS(冷間圧延ステンレス鋼板)、SPC(冷間圧延鋼板)、アルミ、GL(溶融亜鉛めっき鋼板)である基材の表面に塗工するためのプライマーコート剤(VI)」(以下、「引用発明2」という。)

第6 対比および判断

1 引用発明1を主引用発明とする理由について

(1)対比

本願発明と引用発明1を対比する。

まず、引用発明1における「エチレングリコールと1,4-ブタンジオールとイソフタル酸とテレフタル酸とを反応させて得られる芳香族構造含有ポリエステルポリオール」は、本願明細書の【0018】には、「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)は、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとをエステル化反応させて得ることができる。前記多価カルボン酸と多価アルコールのうち、少なくとも1つに芳香環を有するものを用いる」と記載されているから、本願発明に係る「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)」に相当する。

本願発明における「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)中の芳香環濃度が、2.5~5mol/kg」について、「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)中の芳香環濃度」とは、その単位(mol/kg)から、芳香族ポリエステルポリオール1kg中に含まれる芳香環のモル数を意味していると解される。

そこで、引用発明1における「芳香族構造含有ポリエステルポリオール」中の芳香環濃度について、引用発明1の「ウレタン樹脂(C-1)」の「芳香族構造割合が15質量%」であるから、この値より計算する。

引用発明1における「芳香族構造割合」について、引用文献1の【0029】には、「芳香族構造の含有量は、芳香族構造含有ポリオール(a2)及び芳香族構造含有ポリイソシアネート中に含まれる芳香族構造の質量を、ウレタン樹脂(C)全量の質量で割ることによって算出した値である」と記載されている。ここで、引用発明1における「ウレタン樹脂(C-1)」は、その原料である、芳香族構造含有ポリエステルポリオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチロールプロピオン酸、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、エチレンジアミンから製造されるところ、この原料中の芳香族構造は、芳香族構造含有ポリエステルポリオールだけが含むものであることは明らかであるから、引用発明1における「ウレタン樹脂(C-1)」の原料である「芳香族構造含有ポリエステルポリオール」の質量に占める芳香環の質量の割合は、29.4質量%(=15質量%×(芳香族構造含有ポリエステルポリオール64質量部+1,4-シクロヘキサンジメタノール6質量部+2,2-ジメチロールプロピオン酸7質量部+ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート47質量部+エチレンジアミン7質量部×20質量%)/芳香族構造含有ポリエステルポリオール64質量部)と計算される。この値を用いると、上記「芳香族構造含有ポリエステルポリオール」中の芳香環濃度は、3.8mol/kg(=0.294(29.4質量%)×1000g(1kg)/78(ベンゼン環の分子量))と計算される。

そうすると、引用発明1における「芳香族構造含有ポリエステルポリオール」は、本願発明における「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)」の「芳香環濃度が、2.5~5mol/kg」を満たすといえる。

また、引用発明1における「2,2-ジメチロールプロピオン酸」は、本願明細書の【0023】~【0025】の記載からみて、本願発明における「アニオン性基を有するポリオール(a1-2)」に相当する。

さらに、引用発明1における「ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート」は、本願明細書の【0037】~【0039】の記載からみて、本願発明における「脂環式構造を有するポリイソシアネート」を含む「ポリイソシアネート(a2)」に相当する。

また、引用発明1におけるウレタン樹脂の酸価は、「23〔KOHmg/g〕」であることから、引用発明1における「ウレタン樹脂(C-1)」は、本願発明における「酸価が、10~25mgKOH/g」である「ウレタン樹脂(A)」を満たすといえる。

また、引用発明1における「水」は、本願明細書の【0055】の記載から見て、本願発明における「水性媒体(B)」に相当する。

そして、引用発明1には、ポリオールとして、芳香族構造含有ポリエステルポリオール64質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール6質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸7質量部を含むから、ポリオール中の芳香族構造含有ポリエステルポリオールの含有量は、83.1質量%(=64/(64+6+7)×100)と計算される。

さらに、本願発明における「金属表面処理剤」について、その「剤」の目的は、金属の表面を処理することであり、その処理について、発明特定事項として、それ以上何ら限定しているものではない。したがって、「金属表面処理剤」は、金属表面を処理する剤でありさえすれば良いと解される。また、「金属表面処理剤」を適用する対象について、本願明細書には、「亜鉛めっき鋼板やアルミニウム-亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板、アルミ板、アルミ合金板、電磁鋼板、銅板、ステンレス鋼板等の金属基材」(【0011】)と記載され、また、その適用方法についても、「基材上に塗工され、乾燥、硬化されることにより塗膜を形成する」(【0075】)ことが記載されている。

一方、引用発明1の「プライマーコート剤」も、金属の表面に塗工するためのものであることから、金属の表面を処理することを目的としているものであり、その適用対象としても、「SUS(冷間圧延ステンレス鋼板)、SPC(冷間圧延鋼板)、アルミ、GL(溶融亜鉛めっき鋼板)である基材の表面」であり、その適用方法についても、引用文献1には、基材の表面に塗工し、乾燥、硬化されるものであることが記載されている(【0115】、【0154】)。

してみると、本願発明と引用発明1は、金属の表面を処理するという点で、その剤の付与の目的が共通しており、また、適用対象、適用方法についても共通しているから、引用発明1における「SUS(冷間圧延ステンレス鋼板)、SPC(冷間圧延鋼板)、アルミ、GL(溶融亜鉛めっき鋼板)である基材の表面に塗工するためのプライマーコート剤(I)」は、本願発明における「金属表面処理剤」に相当する。

なお、仮に本願発明における「金属表面処理剤」が、本願明細書の【0073】の記載から、「金属に耐食性、耐薬品性を付与する剤」であると解されるとしても、引用文献1には、プライマーコート剤の目的として、「基材等に対する密着性や耐水性に優れた皮膜を形成できる」(【0017】)、「金属基材の錆等の発生を防止可能な耐食性に優れた皮膜を形成できる」(【0019】)と記載され、実施例ではさらに、メタノールやメチルエチルケトンに対する耐溶剤性、耐アルカリ性に優れることも確認している(【0168】~【0173】、【表1】)から、引用発明1おける「プライマーコート剤」は、「金属に耐食性、耐薬品性を付与する剤」に相当するといえる。

したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。

一致点:「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)、及びアニオン性基を有するポリオール(a1-2)を含有するポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)との反応物であるウレタン樹脂(A)、及び水性媒体(B)を含む金属表面処理剤であって、

前記芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)中の芳香環濃度が、2.5~5mol/kgであり、

前記ポリイソシアネート(a2)が、脂肪族ポリイソシアネート及び/または脂環式構造を有するポリイソシアネートを含むものであり、

前記ウレタン樹脂(A)の酸価が、10~25mgKOH/gであることを特徴とする金属表面処理剤。」

相違点1:前者では、「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)の含有率が、前記ポリオール(a1)中、90質量%以上である」のに対し、後者では、「83.1質量%」である点。

なお、本願発明には、「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)、及びアニオン性基を有するポリオール(a1-2)を含有するポリオール(a1)」と規定され、また、本願明細書の【0033】には、「前記ポリオール(a1)としては、必要に応じて、その他のポリオールを組み合わせて用いることができる」と記載されているから、引用発明1において、1,4-シクロヘキサンジメタノールをポリオール成分としてウレタン樹脂に含有する点は、相違点であるとはいえない。

(2)判断

上記相違点1について検討する。

引用文献1には、ポリオールとして、芳香族構造含有ポリエステルポリオール、脂肪族環式構造含有ポリオール、親水性基含有ポリオールの3成分を含むものであることが記載され(【請求項1】)、これらの成分の配合量や役割について、下記の記載があり、各ポリオールの配合量を下記の範囲とすることは動機付けられるといえる。

・芳香族構造含有ポリエステルポリオール

【0028】には、芳香族構造含有ポリエステルポリオールを使用せず、例えば芳香族構造含有ポリイソシアネートを使用して得られたウレタン樹脂を含むプライマーコート剤では、基材等に対する密着性や耐水密着性の優れたプライマー層を形成できない場合があることが記載されている。

【0050】には、ウレタン樹脂中に、芳香族構造含有ポリエステルポリオール由来の芳香族構造を導入することによって、密着性を向上することが可能となることが記載されている。

【0056】には、芳香族構造含有ポリエステルポリオールをウレタン樹脂の製造に使用するポリオールの全量に対して50質量%~95質量%の範囲で使用することが記載されている。

・脂肪族環式構造含有ポリオール

【0026】には、ウレタン樹脂の全量に対する、脂肪族環式構造ポリオール由来の脂肪族環式構造の割合は、0.1質量%~35質量%の範囲であることが、優れた基材密着性と耐水性とを付与するとともに、良好な基材追従性を備えた皮膜を形成するうえで好ましいことが記載されている。

【0042】には、ウレタン樹脂の全量に対する、脂肪族環式構造ポリオール由来の脂肪族環式構造の割合は、0.1質量%~10質量%の範囲であることが、基材密着性や耐水性に優れたプライマー層を形成するうえで好ましいことが記載されている。

【0048】には、脂肪族環式構造ポリオールの使用量は、ウレタン樹脂の製造に使用するポリオールの全量に対して0.1質量%~40質量%の範囲であることが好ましいことが記載されている。

・親水性基含有ポリオール

【0061】には、親水性基含有ポリオールであるカルボキシル基含有ポリオールは、ウレタン樹脂の酸価が16~40となる範囲で使用することが好ましく、20~30となる範囲で使用することがより好ましいと記載されている。

【0068】には、前記親水性基含有ポリオール(a3)は、前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用するポリオール(A)の全量に対して、0.1質量%~30質量%の範囲で使用することが好ましいことが記載されている。

このように、発明の詳細な説明には、これら3成分の取り得る配合量が記載されていることから、これらを満足する範囲で調節することは、動機付けられる。特に、【0050】におけるウレタン樹脂中に、芳香族構造含有ポリエステルポリオール由来の芳香族構造を導入することによって、密着性を向上するとの記載、および、【0056】におけるウレタン樹脂の製造に使用するポリオールの全量に対して50質量%~95質量%の範囲で使用するとの記載に着目し、芳香族構造含有ポリエステルポリオールの量を90質量%以上とすることは、当業者が容易に想到することである。

(3)本願発明の効果について

本願発明の効果について、本願明細書には、「本発明のウレタン樹脂組成物は、配合安定性に優れており、さらに、耐食性、耐薬品性及び基材密着性に優れた塗膜を形成できる」(【0011】)こと、そのために、芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)として芳香環濃度を2.5~5mol/kgの範囲のものを用いること(【0016】)や、脂肪族ポリイソシアネート及び/または脂環式構造を有するポリイソシアネートのポリイソシアネート中の割合を10~100質量%とすること(【0040】)が記載され、実施例1~15および比較例1~5も記載され、それらの対比より、芳香族ポリエステポリオール中の芳香環濃度が2.5~5の範囲を満足しない場合(比較例1、5)、脂肪族および/または脂環式ポリイソシアネートを用いない場合(比較例2)、酸価が10~25mgKOH/gを満足しない場合(比較例3、4)には、これらの効果が得られないことが記載されており、逆にこれらの規定を満足する実施例は、本願発明の効果が奏されることが示されているといえる。

しかしながら、引用文献1には、「本発明のプライマーコート剤であれば、基材等に対する密着性や耐水性に優れた皮膜を形成できることから、例えば鋼板等の金属基材・・・とトップコート層との間に設けるプライマー層に使用することができる」(【0017】)という効果が記載され、また、水性媒体中における良好な水分散安定性を付与し、保存安定性に優れた水性樹脂組成物を得る観点から、アニオン性基を有するものを使用し(【0030】、【0031】)、ウレタン樹脂として16~40の範囲の酸価を有するものを使用することが上記効果を奏するうえで必須であること(【0037】)、芳香族構造含有ポリエステルポリオールを使用し、ウレタン樹脂に芳香族構造を導入することによって密着性を向上すること(【0050】、【0028】)、及び、優れた密着性と耐水性とを付与する観点から、脂肪族環式構造ポリイソシアネートをポリイソシアネートの全量に対して90質量%以上の範囲で使用すること(【0075】)が記載されており、上記水分散安定性や保存安定性は本願発明における配合安定性のことであり、上記耐水性について、引用文献1の【0162】には、耐水密着性を評価することが記載されているから、上記密着性や上記耐水密着性は本願発明における基材密着性のことであるといえる。

また、引用文献1には、実施例1である引用発明1は、金属基材との密着性、アルミとの耐水密着性、エタノールに対する耐溶剤性、耐アルカリ性の点で優れた効果を奏することが具体的に示されており(【表1】)、上記エタノールに対する耐溶剤性及び耐アルカリ性は、本願発明における耐薬品性のことであるといえる。

そうすると、本願発明によって奏される上記配合安定性、耐薬品性及び基材密着性の効果は、引用文献1の記載から予測し得ることであるといえる。

また、本願発明の耐食性に関して、本願明細書には、比較例として、多価カルボン酸のみならず、多価アルコールにも芳香環を有するものを使用して芳香環濃度を6.8mol/kgと高めた芳香族ポリエステルポリオールを用いたもの(比較例1、合成例6)、及び、脂肪族ポリイソシアネート及び/または脂環式構造を有するポリイソシアネートの代わりに芳香族ポリイソシアネートを用いたもの(比較例2)は、実施例と比べて耐食性及び耐アルカリ性に劣ることが示されているが、引用発明1は、本願明細書の比較例1及び比較例2のような芳香族ポリエステルポリオールや芳香族ポリイソシアネートを用いるものではないし、引用文献1にも、脂肪族ポリオールと芳香族カルボン酸を反応させて得られる芳香族構造含有ポリエステルポリオール(【0054】)や、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(【0071】、【0075】)を使用することが好ましいことが記載されている。さらに、引用文献1には、金属基材の錆等の発生を防止可能な耐食性に優れた皮膜を形成できること(【0019】)も記載されている。これらの記載から、引用発明1においても、本願発明と同程度の耐食性を示すものと解される。

したがって、本願発明が、配合安定性に優れ、耐食性、耐薬品性及び基材密着性に優れた塗膜を形成できるという効果を奏することは、引用文献1の記載から、当業者が予測し得る範囲のことである。

念のため、本願発明の「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)の含有量が、前記ポリオール(a1)中、90質量%以上」であることによる効果について、さらに検討する。

本願明細書には、「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)の含有率は、前記ポリオール(a1)中、好ましくは50質量%以上、・・・さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは99質量%以下・・・である」(【0022】)と記載されているものの、これがどのような効果の観点で好ましいのかは記載されていないし、本願明細書の実施例1~15及び比較例1~5を対比しても、上記芳香族ポリエステルポリオールの含有量が90質量%以上であることにより、樹脂組成物の配合安定性や、当該樹脂組成物により形成された塗膜の耐食性、耐薬品性及び基材密着性に関して顕著な効果を奏することを、具体的に読み取ることはできない。

そして、上記(2)で述べたように、引用文献1には、芳香族構造含有ポリエステルポリオールをポリオールの全量に対して50~95質量%の範囲で使用することにより密着性が向上することが示唆されていることから(【0050】、【0056】)、この範囲であれば、上記した、引用文献1の実施例1~5と同程度の基材密着性等の効果が得られることは、当業者であれば予測し得るといえる。

したがって、本願発明が、「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)の含有量が、前記ポリオール(a1)中、90質量%以上」であることにより、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するとはいえない。

(4)審判請求人の主張の検討

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ア 内容

令和2年1月17日提出の審判請求書において、審判請求人は、下記の点を主張している。

(ア)本願発明は、芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)中の芳香環濃度、芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)のポリオール(a1)中の含有率を所定の範囲としたことによって、金属基材の表面の劣化を防止可能な耐食性及び耐薬品性に優れた塗膜を形成できるものとなるのに対して、引用文献1の比較例1では、芳香族ポリエステルポリオールの含有率を高めることで、逆に、アルミ板に対する耐水密着性が不良となり、しかも耐アルカリ性にも劣るものとなってしまうことが示されている。

(イ)本願発明の効果に関して、本願発明の金属表面処理剤では、加工時、高温で短時間の処理(250℃で10秒)を行って塗膜を形成しているのに対し、引用文献1のプライマー剤では、低温で比較的長時間の処理(80℃で30秒間乾燥させた後、23℃で24時間乾燥する)を行うことで塗膜を形成しており、この加工条件の違いは、塗膜形成時のポリマーネットワークの形成状態にも違いが生じるものであり、本願発明では、高温・短時間の処理により塗膜が形成される金属表面処理剤として用いることで、金属基材の表面の劣化を防止可能な耐食性及び耐薬品性を得ることが可能となることを見出したものであり、一方、引用文献1にはプライマーコート剤としての加工方法が記載されているに過ぎず、したがって、そこから予測される効果も、プライマーコート剤としての効果の範疇にとどまっており、当業者が引用文献1を参照したところで、金属表面処理剤としての特性を予期することはできない。

(ウ)本願発明は、従来技術からは予測できない未知の属性として、芳香族ポリエステルポリオールを所定量含むポリオールを用いた水性ウレタン樹脂組成物を用いて金属表面処理を施した場合に、金属基材に耐食性(塩水試験)、耐薬品性(耐アルカリ性、耐エタノール)を付与することができ、しかも金属基材への密着性が良好となるという属性を発見したものであって、この属性により、芳香族ポリエステルポリオールを所定量用いた水性ウレタン樹脂組成物が、金属表面処理剤という新たな用途に適することを見出したものである。

イ 検討

上記アの各主張について検討する。

(ア)引用文献1の比較例1(引用発明2)は、後記2で述べるように、本願発明のすべての特定事項を満たすものであり、本願発明と同じ発明である。

そして、引用文献1の比較例1は、脂肪族環式構造含有ポリオールの含有量が0質量%であると、【0024】や【0042】に記載されるように、基材密着性や耐水密着性や耐水白化性等の耐水性が不良となることを示す例であって、その芳香族ポリエステルポリオールの含有率が、後記2(1)で示すように92.1質量%であることを根拠に、芳香族ポリエステルポリオールの含有率が90質量%以上である全てのプライマーコート剤は、耐水密着性及び耐水白化性が不良となるとは解せない。

(イ)上記(1)で述べたように、引用発明1における「プライマーコート剤」は、本願発明の「金属表面処理剤」に相当するものであり、用途に関する実質的な違いはないものと解される。また、本願発明は、「金属表面処理剤」の乾燥における加熱温度や時間などの加工条件が特定されているものではないから、請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。

そして、本願発明の効果について、引用文献1の記載から当業者が予測できることは、上記(3)で述べたとおりである。

(ウ)引用発明1における「プライマーコート剤」は、「芳香族構造含有ポリエステルポリオール」が反応したウレタン樹脂の水分散体であって、上記(1)で述べたように、金属基材の表面に塗工されるものであり、本願発明における「金属表面処理剤」に相当するものである。

また、引用文献1には、「本発明のプライマーコート剤は、例えば、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛合金鋼板等のめっき鋼板や、アルミ板、アルミ合金板、電磁鋼板、銅板、ステンレス鋼板等の金属基材の錆等の発生を防止可能な耐食性に優れた皮膜を形成できることから・・・表面塗装用のコーティング剤等に使用することが可能である」(【0019】)と記載されており、この用途は、本願発明とおおよそ同じものである(本願明細書の【0012】、【0078】)。

そして、本願発明の効果である耐食性、耐薬品性、基材密着性は、上記(3)で述べたように、引用文献1の記載から予測し得ることである。

そうすると、本願発明は、水性ポリウレタン樹脂組成物の、従来技術からは予測できない未知の属性を発見したものであるとはいえないものである。

以上のとおりであるから、審判請求人の上記主張を採用することができない。

(5)小括

よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用発明2を主引用発明とする理由について

(1)対比および判断

本願発明と引用発明2を対比する。

まず、引用発明2における「エチレングリコールと1,4-ブタンジオールとイソフタル酸とテレフタル酸とを反応させて得られる芳香族構造含有ポリエステルポリオール」は、上記1(1)で述べたとおり、本願発明に係る「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)」に相当する。

次に、引用発明2における「芳香族構造含有ポリエステルポリオール」の芳香環濃度について確認する。引用発明2における「ウレタン樹脂(C-6)」の「芳香族構造割合が19質量%」であるから、上記1(1)と同様に計算すると、芳香族構造含有ポリエステルポリオールの重量に占める芳香環の重量の割合は、29.0質量%(=19質量%×(芳香族構造含有ポリエステルポリオール82質量部+2,2-ジメチロールプロピオン酸7質量部+ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート35質量部+エチレンジアミン5質量部×20質量%)/芳香族構造含有ポリエステルポリオール82質量部)と計算される。この値を用いると、引用発明2における「芳香族構造含有ポリエステルポリオール」中の芳香環濃度は、3.7mol/kg(=0.290(29.0質量%)×1000g(1kg)/ベンゼン環の分子量78)と計算される。そうすると、引用発明2における「芳香族構造含有ポリエステルポリオール」は、本願発明における「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)」の「芳香環濃度が、2.5~5mol/kg」を満たすといえる。

また、上記1(1)で述べたとおり、引用発明2の「2,2-ジメチロールプロピオン酸」は、本願発明における「アニオン性基を有するポリオール(a1-2)」に相当し、引用発明2における「ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート」は、本願発明における「脂環式構造を有するポリイソシアネート」を含む「ポリイソシアネート(a2)」に相当する。

また、引用発明2におけるウレタン樹脂の酸価は、23〔KOHmg/g〕であることから、引用発明2における「ウレタン樹脂(C-6)」は、本願発明における「酸価が、10~25mgKOH/g」である「ウレタン樹脂(A)」に相当する。

また、引用発明2における「水」は、上記1(1)と同様に、本願発明における「水性媒体(B)」に相当する。

そして、引用発明2には、ポリオールとして、芳香族構造含有ポリエステルポリオール82質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸7質量部含むから、ポリオール中の「芳香族構造含有ポリエステルポリオール」の含有量は、92.1質量%(=82/(82+7)×100)と計算され、本願発明における「芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)の含有率が、前記ポリオール(a1)中、90質量%以上」との点を満足する。

さらに、本願発明の「金属表面処理剤」について、上記1(1)で述べたとおり、引用発明2における「SUS(冷間圧延ステンレス鋼板)、SPC(冷間圧延鋼板)、アルミ、GL(溶融亜鉛めっき鋼板)である基材の表面に塗工するためのプライマーコート剤(VI)」は、金属基材の表面に塗工される剤であり、上記1(1)で述べたように、金属の表面を処理するという付与目的、その適用対象、適用方法も、共通しているから、本願発明における「金属表面処理剤」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明2の間に異なるところがない。

(2)審判請求人の主張の検討

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令和2年1月17日提出の審判請求書において、審判請求人は、上記1(4)ア(ア)で述べたとおりの主張をしており、下記に再掲する。

本願発明は、芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)中の芳香環濃度、芳香族ポリエステルポリオール(a1-1)のポリオール(a1)中の含有率を所定の範囲としたことによって、金属基材の表面の劣化を防止可能な耐食性及び耐薬品性に優れた塗膜を形成できるものとなるのに対して、引用文献1の比較例1では、芳香族ポリエステルポリオールの含有率を高めることで、逆に、アルミ板に対する耐水密着性が不良となり、しかも耐アルカリ性にも劣るものとなってしまうことが示されている。

上記1(4)ア(イ)での主張も踏まえると、このような効果の違いは、剤を用いる際の加工方法(加工時の加熱温度と時間)によって生じる旨を主張する。

しかしながら、本願発明は「金属表面処理剤」であって、これを用いる際の加工方法(温度と時間)は特定されていないから、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であって、採用することはできない。

(3)小括

以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。

また、仮に相違点があるとしても、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-000678

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