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特許拒絶査定不服審判

2021-014721

非対称に置換されたポリオルガノシロキサン誘導体

審判番号
2021-014721
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-502665外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年10月29日
審決日
2024年06月05日
公報発行日
2024年11月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-WZ (C08G) / P18 .121-WZ (C08G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-502665「非対称に置換されたポリオルガノシロキサン誘導体」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月26日国際公開、WO2017/012714、平成30年 9月27日国内公表、特表2018-528289〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成28年7月20日(パリ条約による優先権主張 2015年7月20日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願(特願2018-502665号)であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年 8月26日付け :拒絶理由通知書 令和3年 3月 1日 :意見書、手続補正書の提出 同年 6月21日付け :拒絶査定 同年10月29日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年12月14日 :上申書の提出 令和4年 3月14日 :上申書の提出 同年 6月14日 :上申書の提出 令和5年 7月28日付け :拒絶理由通知書 令和6年 2月 1日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~24に係る発明は、令和6年2月1日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は、以下のとおりである。(なお、下線は当審が付した。以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本願明細書」という。) 「式(I)の2つの異なる末端基Z1およびZ2を含むポリオルガノシロキサンであって、 Z1-{-L[SiR2O]p-SiR2}m-L-Z2 (I) p=4、ここで式(I)の化合物の80重量%超が同じ鎖長を有し、 m=1、 ここでR=R1 RまたはR1は、1価のC1-C22-アルキル基からなる群から選択される飽和炭化水素置換基であり、 Lは単結合または2価の基L1またはL2であって、1以上の-O-、-または-NR3-C(O)-、および/または-NR3-、-OC(O)NR3-、-NR3-C(O)-NR3-部分で中断され、1以上のOH基で置換されうる、2価のC1-C12-アルキレン基からなる群から選択されるものであり、ここでR3は、水素、Me3Si-、C1-C8アルキルまたはC2-C8アルケニルであり、 炭素結合を介してシロキシ単位のケイ素原子に結合し Z1およびZ2は、R1、R2、水素、1価の非置換または置換C1-C30炭化水素、及び、OHまたはOR3またはOC(O)R3末端のポリ-C2-C4-アルキレンオキシド、からなる群から選択され、ここで R2は、C2-C22-アルケニル、C6-C22-シクロアルケニル、C2-C22-アルキニルからなる群から選択される1価の不飽和の非置換または置換のアルケニルまたはアルキニル基、および、C3-C22-オキシラニル基およびC4-C23-カーボネート基からなる群、および、Cl、Br、I、-SH、-S-R1、-OH、-O-R1、-CN、-NCOから選択される基、および、(R1X)xR13-xSi-、R6xR13-xSi-から選択される基、から選択され、ここでx=1-3、ここで X=-O-または-C(O)-O-、ここで R6=C6-C10-アリール、C7-C12-アリールアルキル、C6-C12-シクロアルキル、C7-C16-ビシクロアルキル、C3-C12-エポキシアルキル、C6-C12-エポキシシクロアルキル、C7-C16-エポキシビシクロアルキル、C6-C12-チオシクロアルキル、C5-C12-ヘテロ-N,-O,-S-アリール、および、 -C(O)-O-R3、(R3O)2-P(O)-O-、(R3O)2-P(O)-、(R3-O)2-P-、-NHR3-CH2-COOHおよび-NHR3-CH2-O-S(O)2(OH)、-S-S(O)2(OR3)から選ばれるカルボン酸、SまたはPを含む酸のエステルに由来する基、および、第1級、第2級または第3級アミン、またはホスフィン、および、アミンまたはホスフィンの酸付加塩、 および、 下記式のアルキルエナミン、 【化1】 [図:0001415610000001.jpg] ここでR3は水素、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、R13Si-である、 から選択され、 Z1およびZ2はLの単結合または炭素結合を介してポリオルガノシロキサン(I)のケイ素原子に結合し、ここで -L-Z2および-L-Z1は異なる、ポリオルガノシロキサン。」 ここで、本願発明末尾の「Z1およびZ2はLの単結合または炭素結合を介してポリオルガノシロキサン(I)のケイ素原子に結合し」との記載をふまえると、下線部の「炭素結合を介してシロキシ単位のケイ素原子に結合し」は、Lが2価の基L1またはL2である場合の意味であり、Lが単結合である場合を排除するものではない。 第3 拒絶の理由 令和5年7月28日付け拒絶理由通知書において、請求項1に係る発明に対して通知した理由は、以下の理由を含むものである。 理由5(新規性)請求項1に係る発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由6(進歩性)請求項1に係る発明は、引用文献3及び4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 引用文献2:特開2014-198703号公報 引用文献3:特開平3-161491号公報 引用文献4:特開平11-158188号公報 第4 拒絶理由5(新規性欠如)について 1 引用文献2に記載された事項及び引用文献2に記載された発明 引用文献2の【0099】には、次の記載がある。なお、下線は当審が付した。 「[実施例1] 温度計、マグネチックスターラーバー、窒素導入管を装着した100mL3口フラスコに合成例1で合成した[[CH2=CH(CH2)2OCH2]2CHOC(=O)NH(CH2)2OC(=O)C(CH3)=CH218.3g(29.9mmol)、BHT 7.91mg(100ppm)、トルエン 23.6g(30wt%)を加え、1-ブチル-9-ヒドロ-1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン 45.0g(109mmol)を入れた滴下ロートをフラスコに装着し、60℃まで撹拌しながら昇温した。そこに、カーステッド触媒(Karstedt、Pt2[[(CH2=CH)(CH3)2Si]2O]3)の0.5wt%トルエン溶液 47.4mg(3ppm)をマイクロシリンジにて加え、そのままの温度で10分間撹拌した後、H-シロキサンを内部温度が65℃を超えないように滴下し、発熱が収まってから1H -NMRを測定したところオレフィンのシグナルが消失していることを確認した。その後、反応温度を室温まで戻した後、活性炭0.24g(0.3wt%)を加え、室温で1時間撹拌し、活性炭をろ別後、トルエンを減圧下で留去し(100℃/<1KPa)、淡黄色透明油状の生成物を得た。得られた生成物の分光学的データは分子量分布Mw/Mn=1.03で 1H-NMR (400MHz,CDCl3) δ 0.03-0.08(m,160H), 0.48-0.58(m,16H), 0.88(t, J=7.1Hz, 12H), 1.24-1.42(m, 24H), 1.57(quin., J=7.0Hz, 8H), 1.94(s, 3H), 3.30-3.84(m, 24H), 4.21(t, J=5.2Hz, 2H), 4.88-5.08(m, 2H), 5.58(t, J=1.5Hz, 1H), 6.11(s, 1H). 13C-NMR (100MHz,CDCl3) δ 0.03(CH3×16), 0.62(CH3×8), 0.79(CH3×16), 13.40(CH2×4), 17.77(CH2×4), 17.81(CH2×4), 19.50(CH2×4), 25.31(CH2×4), 26.01(CH2×4), 33.05(CH2×4), 40.61(CH2), 69.54(CH), 70.81(CH2×2), 71.71(CH2), 71.93(CH2×4), 78.71(CH×2), 125.33(CH2=C(CH3)), 135.96(CH2=C(CH3)), 155.71(C=O), 166.71(C=O). IR (NaCl) ν 797, 839, 1031, 1159, 1261, 1728, 2924, 2959, 3353. となり、[[Bu[Si(CH3)2O]4Si(CH3)2(CH2)4OCH2]2CHOCH2]2CHOC(=O)NH(CH2)2OC(=O)C(CH3)=CH2 を収率90%で得た。」 そうすると、実施例1の「1-ブチル-9-ヒドロ-1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン」に着目すると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 「化合物「[CH2=CH(CH2)2OCH2]2CHOC(=O)NH(CH2)2OC(=O)C(CH3)=CH2」と反応させたときに、分子量分布Mw/Mnが1.03である「[Bu[Si(CH3)2O]4Si(CH3)2(CH2)4OCH2]2CHOCH2]2CHOC(=O)NH(CH2)2OC(=O)C(CH3)=CH2」を収率90%で与える、1-ブチル-9-ヒドロ-1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン」 2 本願発明と引用発明2との対比 引用発明2の「1-ブチル-9-ヒドロ-1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン」は、構造式で表すと以下のとおりであり、 [図:0001415610000002.jpg] 本願発明の式(I)において、Z1が「1価の非置換または置換C1-C30炭化水素」のうち「非置換C4炭化水素」(1-ブチル基)、Lが「単結合」、Rが「C1アルキル基」(メチル基)、pが4、mが1、Z2が「水素」(ヒドロ)である化合物に相当する。 また、上記化合物は、両末端の1-ブチル基及び水素原子がペンタシロキサン部分のケイ素原子に結合していることから、本願発明の「Z1およびZ2はLの単結合・・・を介してポリオルガノシロキサン(I)のケイ素原子に結合」する要件を満たす。 そうすると、両者は 「式(I)の2つの異なる末端基Z1およびZ2を含むポリオルガノシロキサンであって、 Z1-{-L[SiR2O]p-SiR2}m-L-Z2 (I) p=4、 m=1 Rは、1価のC1-アルキル基から選択される飽和炭化水素置換基であり、 Lは単結合であり、 Z1は1価の非置換C4炭化水素から選択され、Z2は水素から選択され、 Z1およびZ2はLの単結合を介してポリオルガノシロキサン(I)のケイ素原子に結合し、ここで -L-Z2および-L-Z1は異なる、ポリオルガノシロキサン。」 である点において一致し、以下の点で一応相違する。 <一応の相違点1> 本願発明では、「式(I)の化合物の80重量%超が同じ鎖長を有」するものであるのに対し、引用発明2では、「化合物「[CH2=CH(CH2)2OCH2]2CHOC(=O)NH(CH2)2OC(=O)C(CH3)=CH2」と反応させたときに、分子量分布Mw/Mnが1.03である「[Bu[Si(CH3)2O]4Si(CH3)2(CH2)4OCH2]2CHOCH2]2CHOC(=O)NH(CH2)2OC(=O)C(CH3)=CH2」を収率90%で与える」ものである点 3 一応の相違点1についての判断 引用発明2の「1-ブチル-9-ヒドロ-1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン」は、「化合物「[CH2=CH(CH2)2OCH2]2CHOC(=O)NH(CH2)2OC(=O)C(CH3)=CH2」と反応させたときに、分子量分布Mw/Mnが1.03である「[Bu[Si(CH3)2O]4Si(CH3)2(CH2)4OCH2]2CHOCH2]2CHOC(=O)NH(CH2)2OC(=O)C(CH3)=CH2」を収率90%で与える」ものである。 そして、分子量分布Mw/Mnが「1.03」という極めて1に近い値であることを考慮すると、生成物である「[Bu[Si(CH3)2O]4Si(CH3)2(CH2)4OCH2]2CHOCH2]2CHOC(=O)NH(CH2)2OC(=O)C(CH3)=CH2」は極めて分子量がそろったほぼ単分散の化合物であることが理解できるところ、そのような生成物を得るためには、原料である「1-ブチル-9-ヒドロ-1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン」も、極めて分子量がそろったほぼ単分散の化合物であることは明らかであり、「式(I)の化合物の80重量%超が同じ鎖長を有」するものと認められる。 したがって、一応の相違点1は実質的な相違点とはいえない。 4 審判請求人の主張について 審判請求人は、令和6年2月1日提出の意見書の項目「(5-2)引例2に基づく新規性(理由5):請求項1、5、10」において、「引例2には、異なるR基を有する化合物の製造を開示しておらず、脂肪族または分岐の炭素鎖のみを開示しています。すなわち、引例2では-L-Z2及び-L-Z1を有する化合物の製造を教示も示唆も致しておりません」と主張している。 上記主張について検討すると、本願発明ではRが互いに異なることは特定されておらず、上記主張の「異なるR基」は本願発明冒頭の「2つの異なる末端基Z1およびZ2」のことを意味すると認められるところ、引用発明2の化合物は、Z1が「1価の非置換C4炭化水素」(1-ブチル基)であり、Z2が「水素」(ヒドロ)である化合物に相当することは、上記2で述べたとおりである。 そして、本願発明において、Z1の選択肢には「1価の非置換または置換C1-C30炭化水素」が含まれるから、引用発明2が「脂肪族または分岐の炭素鎖のみを開示」しているとしても、その点は本願発明との相違点にはならない。 よって、審判請求人の主張は採用することができない。 5 拒絶理由5(新規性欠如)についてのまとめ よって、本願発明と引用発明2との間に実質的な相違点はなく、本願発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 第5 拒絶理由6(進歩性欠如)について 1 引用文献3,4に記載された事項 (1)引用文献3に記載された事項 引用文献3には、次の記載がある。 ア「一般式 [図:0001415610000003.jpg] (I) (式中、R1、R2、R3、R4及びR5は置換又は非置換の1価の炭化水素基、Bは置換又は非置換の2価の炭化水素基、Yは加水分解性基、mは0~2,000の整数、nは1~3の整数、Aは [図:0001415610000004.jpg] を表わす。但し、R3及びR4は繰り返し単位ごとに任意に異なってもよい) で示されるエポキシ基を有する有機ケイ素化合物。」(特許請求の範囲) イ 「式(I)において、mは0~2,000の整数であるが、本発明の化合物(I)をエポキシ樹脂系半導体封止材料に使用する場合には、樹脂との親和性や相溶性を考慮すると、mは1~20の範囲であることが望ましく、更に原料の入手及び合成が容易であることからmは1~5の範囲であることが好ましい。」(2頁右下欄8~14行) ウ 「本発明の化合物(I)の製法としては、一般式(II)で示されるシロキサン化合物 [図:0001415610000005.jpg] (式中、A、R1、R2、R3、R4及びmは前記と同じである) と一般式(Ill)で示されるシラン化合物 [図:0001415610000006.jpg] (式中、R5、Y及びnは前記と同じであり、R6は炭素-炭素二重結合を有する基である) とを触媒の存在下に付加反応させる方法が挙げられる。この化学反応を反応式(1)に示す。 [図:0001415610000007.jpg] (式中、A、B、C、R1、R2、R3、R4、R5、Y、m及びnは前記と同じである) 本発明の化合物(I)の原料として使用する前記シロキサン化合物(II)は次のようにして得られる。一般式(IV)で示されるα、ω-ジハイドロジェンポリオルガノシロキサンにアリルグリシジルエーテル、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン又は1,3-ジグリシドキシ-2-メチレンプロパンを白金触媒の存在下に付加反応させ、次いで減圧蒸留などの方法で精製することにより得られる。 [図:0001415610000008.jpg] (式中、R1、R2、R3、R4及びmは前記と同じである)」(2頁右下欄19行~3頁右上欄14行) エ 「実施例1 撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容積5lのフラスコに、塩化白金酸0.5gを20mlのイソプロピルアルコールに溶解した溶液5.0mlとビニルトリメトキシシラン1480g(10モル)を仕込み、撹拌を開始し、マントルヒーターで液温を70℃に加熱した。 次いで、滴下漏斗より1-(3-グリシドキシプロピル)-3-ハイドロジェン-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン2,600g(10モル)を液温70~80℃になるように適宜冷却しながら2時間かけて滴下した。滴下終了後、液温80℃で1時間撹拌し、ガスクロマトグラフィー分析により原料がほぼ消失していることを確認した。 放冷後、高さ50cmのビグローカラムを取り付けた蒸留装置で蒸留し、沸点130~131℃/3Torrの留分を分取した結果、無色透明の1-(3-グリシドキシプロピル)-3-(2-トリメトキシシリルエチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン3,762g(収率95%)を得た。このものは、ガスクロマトグラフィー分析により98%の高純度であることが確認された。 このものの元素分析、赤外線吸収スペクトル分析、1H核磁気共鳴吸収スペクトル分析及び質量スペクトル分析の結果は後記の通りであり、次式の構造であることが確認された。 [図:0001415610000009.jpg] ・元素分析: 実測値 Si:21.23% C:45.48% H: 9.08% O:24.21% 計算値 Si:21.24% C:45.42% H: 9.15% O:24.20% ・赤外線吸収スペクトル分析(液膜法:cm-1):2950,2850,1380,1240,1060,950,830,780 ・1H核磁気共鳴吸収スペクトル分析(90MHz,CCl4中): 位置 化学シフトδ(ppm) 積分強度比 a 2.4~2.6 2 b 2.8~3.1 1 c 3.4~3.6 2 d 3.4~3.6 2 e 2.4~2.8 2 f 0.4~0.6 2 g 0.4~0.6 2 h 0.4~0.6 2 i 3.5 9 ・質量スペクトル分析(m/e):396(M+)」(4頁右上欄14行~5頁左上欄5行) (2)引用文献4に記載された事項 引用文献4には、次の記載がある。なお、下線は当審が付した。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はα,ω-ジハイドロジェンオルガノペンタシロキサンの製造方法に関し、詳しくは、α,ω-ジハイドロジェンオルガノペンタシロキサンを高選択的に生産性良く製造する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】オルガノポリシロキサン鎖の両末端がケイ素原子結合水素原子で封鎖されたα,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンは、シリコーンゴム,変成シリコーンおよび表面処理剤等の原料として広範囲に使用されている。従来、その製造方法としては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとオクタメチルシクロテトラシロキサンを主成分とする環状ジメチルオリゴシロキサンを酸性触媒存在下で平衡開環重合する方法が広く使用されている。これ以外にも、ジアルキルジクロロシランを加水分解してα,ω-ジクロロオルガノポリシロキサンを合成し、次いでこれをリチウムアルミニウムハイドライドで還元する方法{Polish Journal of Chemistry, 53(6), 1363 (1979)参照}、テトラメチルジシロキサンとクロロシランの不均化による方法(西ドイツ特許第2630744号公報参照)が提案されている。しかしながら、これらの方法はいずれも平衡化反応を利用しているため、反応生成物は重合度の異なる数種類のα,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンの混合物となり、ある特定の鎖長を有するものを高選択的に生産性良く製造することはできなかった。・・・ 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明者は上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、シクロトリシロキサンと1,3-ジハイドロジェンジシロキサンが酸性触媒存在下で非平衡化反応することにより、α,ω-ジハイドロジェンオルガノペンタシロキサンが高選択的に得られることを見出し、本発明に到達した。」 「【0017】 【実施例1】窒素置換した攪拌装置付き4つ口フラスコに、ヘキサメチルシクロトリシロキサン20グラム(90ミリモル),1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン13.3グラム(99ミリモル)、GLCの内部標準としてトルエン2グラムを投入した。これを室温で攪拌したところ、反応溶液の温度は19℃まで低下した。次いでトルフルオロメタンスルホン酸1.5マイクロリットルを添加したところ、反応溶液の温度は31℃まで上昇した。この反応溶液を室温で攪拌しながら、定期的にGLCで反応の進行をモニターしたところ、45分間経過後にヘキサメチルシクロトリシロキサンの転化率が99.1%に達し、反応がほぼ完結していることが判った。GLCにて観測された各種ピークをガスクロマトグラフィー-質量分析計(以下、GC-MS)にて分析して、反応主生成物の収率をGLCにて定量したところ、得られた反応主生成物は、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン(I)であり、その収率は60.2%であることが判明した(標品との比較による補正済み収率)。これより、釜効率は55%であった。また、副生成物の構造はこの反応主生成物がさらにヘキサメチルシクロトリシロキサンと反応してなる下記構造式の化合物(II),(III)であることが判明した。 H(CH3)2Si(OSi(CH3)2)6OSi(CH3)2H (II) H(CH3)2Si(OSi(CH3)2)9OSi(CH3)2H (III) また、反応主生成物と副生成物とのGLCピーク面積比は、以下の通りであった。 [主生成物(I)]/[副生成物(II)]=3.3 [主生成物(I)]/[二量化物(III)]=13.2」 「【0019】 【実施例3】実施例1において、トリフルオロメタンスルホン酸を添加する前に水24マイクロリットルとアセトニトリル0.9グラムを添加した以外は、実施例1と同様にして反応させた。これを室温で9時間攪拌してからGLCで分析したところ、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの転化率が94.9%であることが判った。得られた反応主生成物の収率をGLCにて定量したところ、この反応主生成物は、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン(I)であり、その収率は93.2%であることが判明した(標品との比較による補正済み収率)。これより、釜効率は81%であった。また、反応主生成物と副生成物とのGLCピーク面積比は、以下の通りであった。 [主生成物(I)]/[副生成物(II)]=37.6」 [主生成物(I)]/[副生成物(IV)]=129.7」 2 引用文献3に記載された発明 実施例1で製造された化合物に着目すると、引用文献3には次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。 「下記式で表され、ガスクロマトグラフィー分析により98%の高純度である化合物 [図:0001415610000010.jpg] 」 3 本願発明と引用発明3との対比 本願発明と引用発明3とを対比する。 引用発明3の [図:0001415610000011.jpg] は、本願発明の式(I)における「Z1」が「R2」であって、「C3-オキシラニル基」である場合に相当する。 引用発明3の [図:0001415610000012.jpg] は、本願発明の式(I)における「L」(左側)が「2価の基L1」であって、「1以上の-O-・・・で中断され・・・る、2価のC3アルキレン基」に相当する。 引用発明3の [図:0001415610000013.jpg] は、本願発明の式(I)における「[SiR2O]p-SiR2」の部分における、Rが「1価のC1-アルキル基」(メチル基)、pが1である場合に相当し、式(I)においてm=1である場合に相当する。 引用発明3の [図:0001415610000014.jpg] は、本願発明の式(I)における「L-Z2」であって、Lが「2価の基L2」である「2価のC2-アルキレン基」であり、Z2が「R2」である「(R1X)xR13-xSi-」であり、R1が「1価のC1-アルキル基」(メチル基)、Xが「-O-」、xが3である場合に相当する。 そうすると、両者は 「式(I)の2つの異なる末端基Z1およびZ2を含むポリオルガノシロキサンであって、 Z1-{-L[SiR2O]p-SiR2}m-L-Z2 (I) m=1、 ここでR=R1 RまたはR1は、1価のC1-アルキル基から選択される飽和炭化水素置換基であり、 Lは2価の基L1またはL2であって、1以上の-O-で中断されうる、2価のC2又はC3-アルキレン基から選択されるものであり、 炭素結合を介してシロキシ単位のケイ素原子に結合し Z1およびZ2は、R2から選択され、ここで R2は、C3-オキシラニル基、および、(R1X)xR13-xSi-から選択される基、ここでx=3、ここで X=-O- から選択され、 Z1およびZ2はLの炭素結合を介してポリオルガノシロキサン(I)のシロキシ単位のケイ素原子に結合し、ここで -L-Z2および-L-Z1は異なる、ポリオルガノシロキサン。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 式(I)のポリオルガノシロキサンが、本願発明では「p=4、ここで式(I)の化合物の80重量%超が同じ鎖長を有」するものであるのに対し、引用発明3ではp=1であり、かつガスクロマトグラフィー分析により98%の高純度である点 4 相違点2についての判断 (1)引用文献3の請求項1の一般式(I)では、「mは0~2,000の整数」と定義され、そのmの値について「本発明の化合物(I)をエポキシ樹脂系半導体封止材料に使用する場合には、樹脂との親和性や相溶性を考慮すると、mは1~20の範囲であることが望ましく、更に原料の入手及び合成が容易であることからmは1~5の範囲であることが好ましい。」(上記1(1)イ)と記載されている。 そうすると、引用発明3(m=1)において、上記の好ましい範囲である1~5のうち、m=4として、相違点2におけるp=4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、その際には、引用文献3に記載された製法(上記1(1)ウ)において、式(IV)においてm=4であるα,ω-ジハイドロジェンポリオルガノシロキサンを採用することとなる。 そして、引用文献3には、一般式(I)の原料化合物であるシロキサン化合物(II)について、「・・・を白金触媒の存在下に付加反応させ、次いで減圧蒸留などの方法で精製することにより得られる。」(上記1(1)ウ)と記載されるように、製造後に精製されるものであることや、引用発明3の化合物がガスクロマトグラフィー分析により98%の高純度であることが示されていることを考慮すると、引用発明3において、製造原料として式(IV)においてm=4であるα,ω-ジハイドロジェンポリオルガノシロキサンを採用する際にも、その純度を高めておくことが望ましいことは当業者に自明なことである。 (2)引用文献4には、α,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンは各種の原料として用いられているが、従来の製造方法では、反応生成物は重合度の異なる数種類のα,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンの混合物となり、ある特定の鎖長を有するものを高選択的に生産性良く製造することはできなかったところ、シクロトリシロキサンと1,3-ジハイドロジェンジシロキサンが酸性触媒存在下で非平衡化反応することにより、α,ω-ジハイドロジェンオルガノペンタシロキサンが高選択的に得られることが見出されたことが記載され(【0002】,【0003】)、具体的に、実施例3では、ヘキサメチルシクロトリシロキサンと1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンをトリフルオロメタンスルホン酸(酸性触媒)存在下で反応させ、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサンを93.2%の収率で得たことが記載されている(【0019】)。 そして、引用文献4の実施例3で得られた「1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン」は、引用文献3の [図:0001415610000015.jpg] で表される化合物(R1~R4がメチル基、m=4)に相当するものであるところ、上記(1)で言及したように、引用発明3において、mが4である化合物を製造する際にも、原料の純度を高めておくことは当業者に自明なことである。 したがって、上記で検討したように、引用発明3(m=1)において、m=4とするにあたって、引用文献4の実施例3に記載された、m=4の鎖長を有する高純度の「1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン」を化合物(IV)として採用し、それをアリルグリシジルエーテル及びビニルトリメトキシシランと順次反応させることにより、引用発明3の化合物において、シロキサン部分の構造を [図:0001415610000016.jpg] から「-Si(CH3)2-(O-Si(CH3)2)4-」とすることは、当業者が容易に想到することである。 そして、その化合物は、原料である「1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン」がSi原子が5つの鎖長のものを高選択的に合成(収率93.2%)したものであるから、本願発明の「式(I)の化合物の80重量%超が同じ鎖長を有する」という条件を満足するものと認められる。 したがって、引用発明3において、相違点2の本願発明の構成を有するものとすることは、当業者が容易に想到することができたことである。 5 審判請求人の主張について 審判請求人は、令和6年2月1日提出の意見書の項目「(6)引例3及び4に基づく進歩性(理由6):請求項1、5、6、7、9、10」において、以下のように主張している。 ア 「まず、引例3からは、当業者は本願の単峰的なポリオルガノシロキサンを想到し得ません。引例3は、MH-Dx-MH構造でx>2の鎖長と規定された単峰的シロキサンに到達する方法について、いかなる詳細な説明も開示していません。従って、当業者はx>2で鎖長分布が広い、MH-Dx-MH前駆体の平衡組成のポリシロキサンを用いていることを想到すると思料します。 さらに引例3では、真空蒸留後の純度に関して一切記載がありません。R1-M-D3-MR2の平均的な式で表される多分散的な化合物は、R1-M-D3-MR2、R1-M-D3-MR1、R2-M-D3-MR2の末端置換基のパターンを有します。これらの複雑な化合物群を真空蒸留で分離することは、極めて困難です。さらに、目的物であるR1-M-D3-MR2の収率は非常に低くなります。引例3の実施例では、MH-MH構造のテトラメチルジシロキサンのみを用いており、これは官能基導入後にはより複雑性の低いR1M-D-MR2、R1M-D-MR1及びR2M-D-MR2を含む混合物を与えます。これらは真空蒸留により分離が可能です。開示された方法では、単峰的なシロキサンの純度の観点からは、1以上の鎖長のD単位の数に限界があります。 従って、引例3のプロセスは、本願のプロセスで得られるR1M-D3-MR2(一般式(I)のp=4)のような高収率および高純度を与えることはありません。」 イ 「引例4は、α,ω-ジハイドロジェンペンタシロキサンの製造に関連する特許です。引例4で、より鎖長分布の小さいジハイドロジェン化合物を製造したとしても、鎖長が単峰的な非対称化合物を与えることはできないことは明らかであると思料します(平衡制御が困難)。」 ウ 「引例3の方法で引例4の原料を用いたとしても、本願の請求項にある単峰的な鎖長の非対称官能化シロキサンを与えることは無いことは明らかです。特にシロキサンの鎖長が長くなれば、シロキサンが反応中に開裂し、異なる鎖長のシロキサンを与える(すなわち鎖長分布が拡がる)リスクが増します。このリスクは、化合物を(酸触媒の存在下で)多段階的に添加して請求項に記載したようなの異なる官能基をもつ化合物を与える際に、特に顕著になると思料します。 また、引例3のプロセスは、単純なジシロキサンを用いております。当業者は、引例3の方法を用いると、ペンタシロキサン(一般式(I)のp=4)のようなより大きなシロキサンは、分解してより広範囲の分布に至ることは容易に想到できると思料します。 それ故異なる官能基を有するシロキサンが単峰的な鎖長の分布で得られることは、引例3及び4の組合せからは、期待されません。」 そこで上記主張について検討する。 主張アについて、「MH-Dx-MH構造でx>2の鎖長と規定された単峰的シロキサンに到達する方法」については、引用文献4に記載されている。そして、引用発明3の化合物(引用文献3の特許請求の範囲におけるm=1の化合物)において、mの値を好ましい1~5の範囲内のm=4とすることは当業者が容易に想到し得たことであり、その化合物を製造するために必要な出発物質が引用文献4に記載され、両者を組み合わせる動機付けがあることは、上記4で示したとおりである。 主張イについて、上記4で示したように、引用文献4には、鎖長分布の小さいα,ω-ジハイドロジェンペンタシロキサンを製造する方法が記載されており、それを引用文献3に記載された化合物の出発原料として用いることにより、「鎖長が単峰的な非対称化合物」を得ることができる。 主張ウについて、「シロキサンの鎖長が長くなれば、シロキサンが反応中に開裂し、異なる鎖長のシロキサンを与える(すなわち鎖長分布が拡がる)リスクが増します。このリスクは、化合物を(酸触媒の存在下で)多段階的に添加して請求項に記載したような異なる官能基をもつ化合物を与える際に、特に顕著になる」ことについて、審判請求人は、引用文献3に記載された反応条件ではシロキサンが反応中に開裂することが技術常識であることを示す具体的な証拠は何ら示していない。 そして、本願明細書において、本願発明のオルガノポリシロキサンを具体的に製造した実施例3には、 「【0124】 実施例3.ブチルおよびアルコキシシリル官能化ペンタシロキサンCH3(CH2)3-SiMe2-O-[D]3-SiMe2-CH2CH2-Si(OMe)3の合成 実施例2の生成物CH3(CH2)3-SiMe2-O-[D]3-SiMe2-H(111.5g、0.30mol)およびトリメトキシビニルシラン(159.2g、1.10mol)の混合物を90℃に加熱し、続いてLamoreaux-Pt触媒溶液(10ppm、オクタノール中の3.3重量%Pt溶液として)を添加した。CH3CH2CH2CH2-SiMe2-O-[D]3-SiMe2-H(229.3g、0.60mol)をゆっくりと添加しながら、混合物を130℃の温度に保った。その後、反応混合物を130℃で1時間加熱し、ヒドロシリル化反応を完了させた。揮発物を減圧下で除去し(<2000Pa(20mbar)、150℃)、生成物として淡黄色液体の412.5g(使用したペンタシロキサン出発物質に関して収率89.1%)を得た。」 と記載されているところ、上記記載をみても、実施例2の生成物とトリメトキシビニルシランとの反応条件は「Lamoreaux-Pt触媒溶液」を用いて「130℃で1時間」という条件であり、引用文献3の実施例1に記載された反応条件(塩化白金酸を用いて「液温80℃で1時間」、上記1(1)エを参照)と格別差があるとも認められない。 さらに、本願発明のオルガノポリシロキサンを製造する方法に関連する本願の請求項7~9の記載や、本願明細書の実施例の記載をみても、本願発明のオルガノポリシロキサンを製造する際に、引用文献3の実施例とは実質的に異なる、シロキサンが分解しない何か特別な条件で反応を行っている等の事情があるものとも認められない。 そうすると、上記主張ウにおける「異なる鎖長のシロキサンを与える(すなわち鎖長分布が拡がる)リスクが」増すとの前提について根拠がないから、当該前提に基づく「異なる官能基を有するシロキサンが単峰的な鎖長の分布で得られることは、引例3及び4の組合せからは、期待され」ないとする主張は採用できない。 以上のとおり、審判請求人の上記主張はいずれも採用することができない。 6 拒絶理由6(進歩性欠如)についてのまとめ よって、本願発明は、引用文献3及び4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、引用文献3及び4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-014721

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