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特許異議申立

2019-700820

腐食防止コーティング

審判番号
2019-700820
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-182721
登録番号
特許第6502905号(P6502905)
請求日
2019年10月10日
審決日
2021年04月27日
公報発行日
2021年09月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】エーヴァルト デルケン アーゲー
  • 【権利者代理人】大貫 和保
  • 【異議申立人】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー
  • 【異議申立人代理人】実広 信哉
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 直欣
  • 審判官 藤井 眞吾
  • 審判官 井上 茂夫
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6502905号発明「腐食防止コーティング」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

特許第6502905号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10、12〕、〔11〕について訂正することを認める。 特許第6502905号の請求項1~9、11、12に係る特許を維持する。 特許第6502905号の請求項10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

第1 手続の経緯 特許第6502905号の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成28年9月20日(パリ条約による優先権主張 平成27年10月9日 欧州特許庁)の出願であって、平成31年3月29日にその特許権の設定登録がされ、平成31年4月17日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 元年10月10日  :特許異議申立人アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー(以下「申立人」という。 )による請求項1~12に係る特許に対する 特許異議の申立て 令和 2年 2月 5日付け:取消理由通知 令和 2年 5月 8日  :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 2年 8月 5日  :申立人による意見書の提出 令和 2年12月 4日付け:取消理由通知(決定の予告) 令和 3年 3月 9日  :特許権者による意見書の提出 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 上記令和2年5月8日提出の訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。 本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の請求項1の「該無機ベースマトリクスがケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備し、」という記載を、 「該無機ベースマトリクスがケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備し、 無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の範囲内の炭素含有量を有し、」と訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~9、12も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 本件訂正前の請求項10を削除する。 (3)訂正事項3 本件訂正前の請求項12の「請求項1~10のいずれか1つに記載の」という記載を、「請求項1~9のいずれか1つに記載の」と訂正する。 (4)訂正事項4 本件訂正前の請求項11の「前記陰極腐食防止層が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスの基づいて形成されること」という記載を、 「前記陰極腐食防止層が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスに基づいて形成されること」と訂正する。 (5)訂正事項5 本件訂正前の請求項11の「前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物によって形成されること、」という記載を、 「前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物によって形成されること、 前記無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の炭素含有量を有すること、及び」と訂正する。 なお、訂正請求書の「7.請求の理由」の7~8ページに、請求項11に係る発明について、「無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の範囲内の炭素含有量を有する」と訂正する旨記載されているが、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項11では、「前記無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の炭素含有量を有する」とされているため、その記載に従った。 2.一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~10、12について、請求項2~10、12は、それぞれ請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「無機ベースマトリクス」について、「無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の範囲内の炭素含有量を有」することを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の「また、前記第2の層の無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~50重量%、特に0.05~40重量%、好ましくは0.1~35重量%、より好ましくは0.1~30重量%の範囲内の炭素含有量を有することも好ましい。」(【0117】)との記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内である。 また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の発明特定事項をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、上記訂正事項1の訂正に伴い請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内である。 また、訂正事項2は実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではないことは明らかである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項12の「請求項1~10のいずれか1つに記載の」という記載を、「請求項1~9のいずれか1つに記載の」と訂正するものであり、上記訂正事項2の訂正に伴って引用請求項を減少させるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内である。 また、訂正事項3は実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではないことは明らかである。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、本件訂正前の請求項11において「前記陰極腐食防止層が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスの基づいて形成されること」という記載を、「前記陰極腐食防止層が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスに基づいて形成されること」と訂正するものであって、これは、「無機ベースマトリクスの基づいて」を「無機ベースマトリクスに基づいて」として誤記を正すものであるから、誤記の訂正を目的とする訂正である。 訂正事項4は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内である。 また、訂正事項4は、誤記の訂正を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、本件訂正前の請求項11の「無機ベースマトリクス」について、「無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の炭素含有量を有すること」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項5は、本件特許明細書等の「また、前記第2の層の無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~50重量%、特に0.05~40重量%、好ましくは0.1~35重量%、より好ましくは0.1~30重量%の範囲内の炭素含有量を有することも好ましい。」(【0117】)との記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内である。 また、訂正事項5は、訂正前の請求項11の発明特定事項をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではない。 4.小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~10、12〕、〔11〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~9、11、12に係る発明(以下「本件発明1~9、11、12」という。総称して「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9、11、12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 金属基板(2)上に陰極高温腐食保護を生成するために、少なくとも2つの層を具備する高温腐食防止コーティングにおいて、 前記少なくとも2つの層が、 a) 陰極腐食防止コーティングの形の第1の層(3)であって、 前記第1の層(3)が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスに基づいて形成され、 前記金属粒子が、純亜鉛及び/若しくは亜鉛合金に基づいて形成され、且つ、 前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備するもの、及び b) 酸素障壁コーティングの形の第2の層(4)であって、 前記第2の層(4)が、無機ベースマトリクスを具備し、 該無機ベースマトリクスがケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備し、 無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の範囲内の炭素含有量を有し、 前記第2の層(4)が、該第2の層(4)に基づいて45~80重量%の範囲内のアルミニウム粒子を具備し、前記第2の層(4)は、さらに他の金属粒子を具備することができるもの; であることを特徴とするコーティング。 【請求項2】 前記コーティングが、0.5~200μmの範囲内の層厚を有することを特徴とする請求項1記載のコーティング。 【請求項3】 前記第1の層(3)が、0.1~180μmの範囲内の層厚を有することを特徴とする請求項1又は2記載のコーティング。 【請求項4】 前記第1の層(3)が、該第1の層に基づいて、60~95重量%の範囲内の金属粒子画分を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載のコーティング。 【請求項5】 前記亜鉛合金が、亜鉛-ビスマス合金、亜鉛アルミニウム合金及び/若しくは亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金から選択されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載のコーティング。 【請求項6】 前記第1の層(3)が、小板形状金属粒子としての亜鉛薄膜を具備することを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載のコーティング。 【請求項7】 前記第1の層(3)の無機ベースマトリクスが有機的に改質されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載のコーティング。 【請求項8】 前記第2の層(4)が、0.1~50μmの範囲内の層厚を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載のコーティング。 【請求項9】 前記無機ベースマトリクスが、有機的に改質されることを特徴とする請求項8記載のコーティング。 【請求項10】(削除) 【請求項11】 金属基板に、高温腐食コーティングを生成する方法において、 (A) 第1の方法段階において、腐食防止コーティング及び/若しくは陰極腐食防止層を生成するためのコーティング組成物が金属基板上に適用されて、陰極腐食防止層を与えること、 前記陰極腐食防止層が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスに基づいて形成されること、 前記金属粒子が、純亜鉛及び/若しくは亜鉛合金に基づいて形成されること、 及び、 前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備すること、且つ、 (B) 第2の方法段階において、酸素障壁層を生成するための腐食防止コーティングが、基板に、特に陰極腐食防止層に適用されて、酸素障壁層を与えること、 前記酸素障壁層が、無機ベースマトリクスを具備すること、 前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物によって形成されること、 前記無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の炭素含有量を有すること、及び 前記酸素障壁層が、該酸素障壁層に基づいて45~80重量%の量のアルミニウム粒子を具備することを特徴とする方法。 【請求項12】 請求項1~9のいずれか1つに記載の腐食防止コーティング及び付加的に接着促進層を具備することを特徴とするコーティングされた基板。」 第4 当審の判断 1.取消理由(決定の予告)の概要 本件発明1~9、11、12に対して、当審が令和2年12月4日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 (1)取消理由1(特許法第36条第6項第1号:サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 ア 「炭素含有量」について 「第2の層」が具備する「無機ベースマトリクス」における「炭素含有量」に関して、発明の詳細な説明には、「0.01~30重量%」の範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていないため、本件発明1~9、11、12の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 イ 「アルミニウム粒子」について 「第2の層」が「第2の層」に基づいて具備する「アルミニウム粒子」に関して、発明の詳細な説明には、「45~80重量%」の範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていないため、本件発明1~9、11、12の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 (2)取消理由2(特許法第29条第2項:進歩性) 請求項1~9、11、12に係る発明は、引用文献1、引用文献3又は引用文献4に記載された発明、及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 [引用文献等一覧] 1.独国特許出願公開第102012005806号明細書(甲第1号証) 2.特開2002-285102号公報(甲第4号証) 3.国際公開第2010/043708号(甲第2号証) 4.特開2013-119572号公報(甲第3号証) 2.取消理由(決定の予告)についての判断 (1)取消理由1(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)について ア 本件発明の課題について 本件特許に係る発明が解決しようとする課題は、「従来技術に関連して生じる問題点及び不利益点が少なくとも大きく回避されるか、少なくとも減少される高温腐食防止コーティングを提供すること」(【0024】)、及び「相対的に長く継続する温度負荷若しくは断続的な温度負荷の下で、高いレベルの腐食防止、 特に陰極腐食防止を可能にするコーティングを提供すること」(【0025】)である。 イ 「炭素含有量」について 「炭素含有量」に関して、発明の詳細な説明には次の記載がある。 「【0117】 また、前記第2の層の無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~50重量%、特に0.05~40重量%、好ましくは0.1~35重量%、より好ましくは0.1~30重量%の範囲内の炭素含有量を有することも好ましい。 【0118】 あまりに高いカーボン画分、特に相対的に長い鎖の炭素ラジカルが、高温時で、有機成分の酸化を生じ、コーティングの構造及びこれによる腐食防止効果を弱めることが明らかになったが、無機ベースマトリクスにおける所定のカーボン画分は、-既に上記に観察されたように-前記コーティングに、必要な柔軟性を与えるために利益的であり且つ必要とされるものである。」 発明の詳細な説明の当該記載から、本件発明1は、第2の層の無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の範囲内の炭素含有量を有することで、コーティングによる腐食防止効果を弱めることなく、必要な柔軟性を与えることができる。 ウ 「アルミニウム粒子」について 「アルミニウム粒子」に関して、発明の詳細な説明には次のような記載がある。 「【0121】 すでに明らかにされたように、本発明のコーティングの第2の層は、金属粒子なしに、いわゆるクリアコートの形で、形成されることも可能であり、これによって、従来技術において使用される腐食防止コーティングにおいて十分な改善である高温での腐食防止を達成する。前記第2の層は、不活性セラミック若しくはガラスベース粒子、特にフレークを有することも可能である。しかしながら、第2の層が金属粒子を具備する場合、陰極腐食防止の温度安定性において更に十分な改善を達成することができるものである。 ・・・ 【0124】 特に良好な結果は、前記第2の層が、第2の層に基づいて、35~95重量%、特に45~80重量%、好ましくは55~70重量%の範囲内の金属粒子の画分を具備する場合に、得られることができるものである。 【0125】 本発明のコーティングの第2の層が、金属粒子を具備する場合、これら金属粒子は、通例、亜鉛、アルミニウム及び/若しくはマグネシウム並びにそれらの合金に基づいて形成される。ここで、金属粒子が、アルミニウム粒子であることが特に好ましい。 【0126】 前記第2の層が、小板形状及び/若しくは粒状金属粒子、特に球状金属粒子、好ましくは小板形状金属粒子を具備するという規定を同様に設けることができる。小板形状金属粒子、特にアルミニウムフレークが、著しい酸素障壁を構成し、子温(当審注:「高温」の誤記。)ですら、陰極腐食防止層の酸化を効果的に防止することは明らかとなった。」 発明の詳細な説明の当該記載から、本件発明1は、第2の層が、該第2の層に基づいて45~80重量%の範囲内のアルミニウム粒子を具備することで、陰極腐食防止の温度安定性において更に十分な改善を達成することができ、著しい酸素障壁を構成し、高温ですら、陰極腐食防止層の酸化を効果的に防止することができる。 エ そうすると、本件発明1は、「無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の範囲内の炭素含有量を有」し、「前記第2の層(4)が、該第2の層(4)に基づいて45~80重量%の範囲内のアルミニウム粒子を具備」することにより、陰極腐食防止の温度安定性において更に十分な改善を達成することができ、著しい酸素障壁を構成し、高温ですら、陰極腐食防止層の酸化を効果的に防止することができるとともに、コーティングによる腐食防止効果を弱めることなく、必要な柔軟性を与えることができることから、本件発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。 同様に、本件発明2~9、11、12についても、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。 オ 取消理由1(サポート要件)についてのまとめ したがって、本件発明1~9、11、12は、発明の詳細な説明に記載したものである。 (2)取消理由2(特許法第29条第2項:進歩性)について ア 引用文献の記載事項 (ア)引用文献1 引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。以下訳文を示す。 「【0010】 更に、両方の層がバインダーとしてのエポキシ変性シリカ及び硬化触媒としての金属アルコキシドを含有し、かつ両方の層が同時に硬化される場合に、こうして得られた腐食保護コーティングは、環境又は化学薬品の影響に対して特に耐久性であることが明らかになった。・・・」 「【0018】 適切なエポキシ変性シリカは、当業者に公知であり、例えばエポキシ変性アルコキシシランの縮合によって得ることができる。相応する縮合反応は、ゾルゲル法として公知である。この方法においては、使用されるアルコキシシランの加水分解可能なアルコキシ基が脱離して、その際に該シランが縮合して、シリカゾルとなる。使用されるアルコキシシラン中に含まれるエポキシ変性は、この縮合反応からは除外されたままであるので、エポキシ変性シリカゾルが生ずる。アルコキシ基は、縮合に際して脱離し、アルコールとして反応溶液中に遊離する。」 「【0025】 エポキシ変性アルコキシシランとしては、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3,4-エポキシブチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシブチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが適している。」 「【0028】 本発明の方法によって得られる腐食保護コーティングの腐食保護効果は、第1の層に含有される金属粒子によってもたされる。それは陰極腐食保護である。好適な金属粒子には、例えば、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉄、マンガン、マグネシウム、銅、ニッケル、クロム、モリブテン、及びこれらの混合物又は合金が含まれる。好適な金属合金粒子は、例えば、亜鉛-アルミニウム粒子、亜鉛-マグネシウム粒子、亜鉛-ニッケル粒子及びクロム-ニッケル-鉄粒子である。特に、亜鉛及び亜鉛-アルミニウム合金は、非常に効果的な陰極腐食保護をもたらす。」 「【0032】 使用する金属粒子の大きさは特に限定されないが、例えば、0.1~50μm、好ましくは1~20μmの範囲であってもよい。また、使用する金属粒子の量も特に限定されない。これは使用する金属粒子及び望ましい腐食保護効果によるものであり、例えば、第1コーティング剤の乾燥重量に基いて、1~90重量%、好ましくは20~80重量%、特に好ましくは50~70重量%である。乾燥重量とは、溶媒を除いたコーティング組成物の構成成分の重量であると理解される。 【0033】 さらなる実施形態において、第2のコーティング剤は金属粒子を含む。その結果、得られる腐食保護コーティングの温度耐性は300℃を超えるまで増強され、コーティングは例えばブレーキディスクに好適となる。 【0034】 金属粒子として、上記の金属粒子を第2のコーティング剤に使用してもよい。好ましくは、アルミニウム粒子である。」 「【0046】 適用される層は、それぞれ1~50μmの範囲、好ましくは5~30μmの範囲の乾燥膜厚を有することができる。特に、薄い層厚はコーティングの柔軟性を改善し、例えばばね材料上のコーティングを剥がれ落ちにくくする。 【0047】 本発明による方法では、2つの層は、最終的には同時に硬化される。硬化は、例えば50℃~300℃の範囲の温度への加熱によって行われる。しかしながら、本発明による方法は、使用される硬化触媒に基づき、硬化が、例えば80℃~150℃の範囲の温度で、特に約110℃の温度で行われうることを有利には特徴とする。 【0048】 本発明の方法において、防食コーティングは、任意を好適な基板、特に任意の金属基板に適用され得る。」 「実施例1:バインダー ・・・ 実施例1.3 【0058】 100gの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランに、2-ブタノール中に溶解された有機配位子で安定化された20gのアルミニウム錯体(x-add(登録商標)KR 9006、NANO-X社)を素早く添加し、約5分間撹拌し、こうして透き通った溶液が生じる。そのバッチに400gのシリカゾルであるKlebosol 30 cal 25を加え、約5分間強く撹拌する。白みがかった低粘土の溶液が生ずる。」 「実施例2:第1のコーティング剤 実施例2.1 【0059】 500gの実施例1.3に相応して製造されたバインダーを、ガラスビーカーに装入し、そこから25gの熱分解法シリカ(例えば、Cab-O-Sil(登録商標)EH5、Cabot社)を加え、2時間かけて溶解機により分散させる。そのバッチに、10~20μmの粒径を有する250gの小片状の亜鉛フレーク及び10~20μmの粒径を有する25gの小片状のアルミニウム顔料並びに200mlの蒸留水3gの乳化剤(Marlipal(登録商標)24/60、Sasol社)を加えて、プロペラ型撹拌機を用いて4時間撹拌し、その後更に12時間撹拌する。」 「実施例3:腐食保護コーティング(本発明による) 【0064】 50gのDynasylan Glymo(Degussa社)に、5gのx-add KR 9006を添加し、均質混合した後に127.3gのLevasil 200 E(Bayer社)を添加し、3時間撹拌する。そのゾルの固体含量は、約35重量%である。 【0065】 この第2のコーティング剤を、実施例2.1に相応する亜鉛顔料及びアルミニウム顔料を有する腐食保護塗料のための上塗りコーティング(トップコート)として110℃で一緒に焼き付ける。下塗り塗料の層厚は、約15μmであり、トップコートは、約10μmである。 【0066】 ホイールリムクリーナー「Aluminiumteufel」,pH0.8(図2中の黒い線の左側;その線の右側は5%のNaOH)による10分間の作用後に下層の侵食は認められない。」 「実施例4:代替となる第2のコーティング剤 【0067】 50gのグリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan Glymo、Degussa社)に、5gのx-add KR 9006(NANO-X社)を添加し、均質混合した後に200gのKlebosol 30cal 50(AZ Electronic Materials社)を加え、5時間攪拌する。次いで、10gのアルミニウム顔料であるStapa 777 n.l.及び1gのByk 348を添加し、そのアルミニウム顔料を、約5時間攪拌して均質にする。」 「特許請求の範囲 【請求項1】 a)基板に第1のコーティング剤を適用して第1の層を形成する工程であって、前記第1のコーティング剤は、エポキシ変性シリカ、硬化触媒、溶媒及び金属粒子を含む、工程; b)第1の層に第2のコーティング剤を適用して第2の層を形成する工程であって、前記第2のコーティング剤は、エポキシ変性シリカ、硬化触媒、溶媒及び金属粒子を含む、工程; c)第1の層及び第2の層を同時に硬化する工程を含む、基板の上に腐食保護コーティングを生成するための方法であって、 第1及び第2のコーティング剤中の硬化触媒として、ケイ素アルコキシドではない金属アルコキシドを使用することを特徴とする方法。」 上記引用文献1の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 上記「特許請求の範囲1」の「基板に第1のコーティング剤を適用して第1の層を形成する」及び「第1の層に第2のコーティング剤を適用して第2の層を形成する」との記載を参照すると、実施例3(上記【0064】~【0066】)に記載のものは、腐食保護コーティングが、基板上に腐食保護コーティングを生成するために、第1の層及び第2の層が生成されたものであることが理解される。 上記 【0058】、【0059】を参照すると、第1のコーティング剤は、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランにアルミニウム錯体を加え、シリカゾルを加えたバインダーに、熱分解法シリカを加え、小片状の亜鉛フレーク及び小片状のアルミニウム顔料並びに蒸留水及び乳化剤を加えたものであることが理解される。 上記【0018】、【0025】、【0058】、【0065】を参照すると、バインダーとして3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランを含む第1のコーティング剤を焼き付けることで、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランの縮合によって、第1の層はエポキシ変性シリカを含有することが理解される。 上記【0067】を参照すると、第2のコーティング剤は、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan Glyeo、Degussa社)に、x-add KR 9006を添加し、アルミニウム顔料を添加したものであることが理解される。 p 上記【0018】、【0025】、【0067】を参照すると、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan Glyeo、Degussa社)を含む第2のコーティング剤を焼き付けることで、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランの縮合によって、第1の層はエポキシ変性シリカを含有することが理解される。 引用文献1に記載された実施例3(上記【0064】~【0066】)は、実施例1.3(上記【0056】~【0058】)に相応して製造されたバインダーを含有した実施例2.1(上記【0059】)に記載された第1のコーティング剤を腐食保護塗料とし、第2のコーティング剤を上塗りコーティングとして一緒に焼き付けたものである。 実施例4(上記【0067】)は、代替となる第2のコーティング剤の例であるから、引用文献1には、実施例3における第2コーティング剤を実施例4に記載された第2コーティング剤で代替したものが記載されているに等しい。 そこで、実施例3における第2コーティング剤を実施例4に記載された第2コーティング剤で代替したものに着目すると、引用文献1の上記記載事項から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「基板上に腐食保護コーティングを生成するために、第1の層及び第2の層が生成された腐食保護コーティングにおいて、 基板に第1のコーティング剤を適用して形成された、陰極腐食保護である腐食防護効果をもたらす第1の層であって、 第1の層は、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランにアルミニウム錯体を加え、シリカゾルを加えたバインダーに、熱分解法シリカを加え、小片状の亜鉛フレーク及び小片状のアルミニウム顔料並びに蒸留水及び乳化剤を加えた第1のコーティング剤を焼き付けたものであり、 第1の層はエポキシ変性シリカを含有し、 第1の層に第2のコーティング剤を適用して形成された、腐食保護コーティングの温度耐性を増強する第2の層であって、 第2の層は、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan Glyeo、Degussa社)に、x-add KR 9006を添加し、アルミニウム顔料を添加した第2のコーティング剤を焼き付けたものである腐食保護コーティング。」 また、引用文献1に記載された実施例3における第2コーティング剤を実施例4に記載された第2コーティング剤で代替したものの製造方法を、引用文献1の上記「特許請求の範囲1」の記載に照らして整理すると、引用文献1の上記記載事項から、引用文献1には次の発明(以下「引用方法発明1」という。)が記載されていると認められる。 「基板の上に腐食保護コーティングを生成するための方法であって、 a)基板に第1のコーティング剤を適用して形成された、陰極腐食保護である腐食防護効果をもたらす第1の層を形成する工程であって、前記第1のコーティング剤は、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランにアルミニウム錯体を加え、シリカゾルを加えたバインダーに、熱分解法シリカを加え、小片状の亜鉛フレーク及び小片状のアルミニウム顔料並びに蒸留水及び乳化剤を加えたものである、工程; b)第1の層に第2のコーティング剤を適用して形成された、腐食保護コーティングの温度耐性を増強する第2の層を形成する工程であって、前記第2のコーティング剤は、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan Glyeo、Degussa社)に、x-add KR 9006を添加し、アルミニウム顔料を添加したものである、工程を含む、基板の上に腐食保護コーティングを生成するための方法。」 (イ)引用文献3 引用文献3には、次の事項が記載されている。以下訳文を示す。 a 「この関連では、金属粒子は常に少なくとも1つの金属を、例えば亜鉛若しくはアルミニウムを、単独で若しくは合金中に含む。しかし特に表面処理がなされた粒子又はコーティングされた粒子も用い得る。金属粒子の組成については後に触れる。ここ及び以下では簡略化のために、「金属粒子」という概念は「金属粒子」と同じ意味で使用される。ベースコート中に使用されるそのような金属粒子は、この発明に関連して腐食保護作用性の金属粒子である。腐食保護作用性の金属粒子をバインダー内に含むコーティングが、本発明の意味においてのベースコートである。 本発明の方法によって、ワークピースと接する面及びワークピースから離れた面上で、異なった要求若しくは条件を顧慮することができる。このコーティングは全体として腐食保護に貢献するが、ただし「ワークピースに近い」層ではカソード腐食保護に集中し、他方で「ワークピースから離れた」層では機械的及び化学的影響に対して特に耐性に構成されるということが可能である。この方法のさまざまな変形及びこれと関連する利点は後に更に説明される。」(第4ページ第1~19行) b 「この方法の1つの好ましい実施形態においては、使用された金属粒子は、リーフィングタイプの金属粒子だけではなくノンリーフィングタイプの金属粒子も含む。・・・このリーフィングタイプの粒子の好ましい種類は、アルミニウムを含み、好ましくは微小板及び/又は微小薄板の形状である。これらは、表面に近い層をあたかも自動的に形成するのに適していて、その層は1つには魅力的な視覚的外観を配慮し、他方でその下に位置する層の防護のための有効な防壁の役目をする。」(第8ページ第11~20行) c 「本発明による方法において、当分野において既に知られている様々なバインダーを有するベースコートを使用することができる。バインダーの重要なグループは、シラン、特に有機官能性シラン、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。・・・ さらに、チタネートに基づくバインダーも好適である。・・・ この上述のバインダーは、典型的であるように硬化過程中に水及び/又はアルコールの分離下で重合反応する。それゆえに硬化したコーティング内には主としてこのバインダーの重合反応生成物が存在する。・・・ ・・・ さらに、本発明による方法において、エポキシド、ウレタン、アクリレート(例えばメチルメタクリレート)及び/又はポリエステルなどの有機バインダーが、上記の無機バインダーと結合した有機コポリマーとして用いられる。」(第9ページ第11行~第10ページ第3行) d 「トップコートが、着色顔料及び当業者には公知である他の成分と並んで、ある程度の量の金属粒子を「メタリックな外観」の形成のために含むという可能性も存在する。この金属粒子は腐食保護的効果を発揮しない。それはまた摩擦係数の調整にも寄与しない。」(第12ページ第24~27行) e 「実施例1 鋼のスクリューのコーティングのためにベースコートA及びBの2つの浴槽液を用意する。 浴槽液の全てを以下のように製造する: 29.2重量%の脱イオン化された水を適度の攪拌下で4.6重量%のγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン及び0.9重量%のホウ酸と混合する。3時間の攪拌後、この混合物に更に45.1重量%の脱イオン化された水と、2.3重量%の、エトキシ化され分子量が395で20/20℃での比重が1.0298の非イオン性ノニルフェノール湿潤剤(「NENN」)、並びに2.3重量%の分子量が616で20/20℃での比重が1.057のNENNを含む湿潤剤混合物とを添加する。続いてこの混合物に更に3.1重量%の上述のシラン、6.3重量%のアセトン及び1.1重量%の1-ニトロプロパンを添加する。これに加えてそのつど35重量%の金属粒子を加える。入れられた材料は続いて約3時間、約960回転/分で運転されるCowles溶解機内で混合する。次に、これから得られる混合物に、攪拌が1時間継続される間に0.6重量%のビス(トリデシル)スルホコハク酸ナトリウム(アニオン性湿潤剤)を添加し、混合作業を更に約12時間継続する。これから得られたコーティング材料は6日間経過した後、更に4.5重量%のγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを攪拌下で添加する。 フレーク形状の金属粒子はそれぞれ約0.1から0.5μmまでの厚さであり、また個々の粒子の最も長い広がりは約80μmである。浴槽液Aには亜鉛粒子を添加し、他方浴槽液Bには60%の亜鉛と40%のアルミニウムとの合金からなる粒子を使用する。 ・・・ このスクリューをコーティングのためにワイヤーバスケットに入れ、バスケットを浴槽液Aに浸漬する。続いてこのバスケットをこの水槽液から引き上げ、過剰なベースコートを300回転/分でのそれぞれ10秒間の2回の脱水過程で遠心分離する。 その後スクリューをバスケットから取り出し、炉内でバインダーを70℃で10分間の前乾燥を行い、続いて320℃で30分間硬化させる。 第1の層の硬化後、スクリューを第2のワイヤーバスケットの中で浴槽内Bに浸漬する。続いて前述の脱水及び硬化過程を繰り返す。 これによって、非常に薄い、約20μmの厚さのコーティングが生じる。亜鉛が非常に反応性であるので、第1の層内の亜鉛粒子によって優れたカソード腐食保護が保証される。これに対して亜鉛合金は反応性は低いが、それに対して受動的な腐食保護、すなわちアノード腐食保護により良く適している。この層が完全である限りは、この層はその下に位置する亜鉛粒子を有する層並びに素地を腐食から効果的に保護する。この層が損傷されると、亜鉛粒子を有する層は素地の腐食を阻止する犠牲陽極としての効果を発揮する。」(第12ページ第32行~第14ページ第16行) f 「実施例3 実施例1に従ってベースコートA(亜鉛粒子)及びベースコートB(亜鉛粒子とアルミニウム粒子60:40)でコートされた鋼のスクリューを、バインダーとして水性溶液中にγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含み、また腐食保護作用性のアルミニウム粒子が添加されているトップコートでコートする。この実施例1に従ってコーティングされた鋼のスクリューは摩擦係数20を有し、第2のベースコートでコートされた鋼のスクリューは摩擦係数30を有する。特定の摩擦係数の調整に必要であるアルミニウム粒子の量は、その量が下地及びベースコートのバインダーに左右されるので、そのつど簡単な試験で確定される。」(第15ページ第31行~第16ページ第8行) g 「1.ワークピースと接する境界面とワークピースから離れた境界面とを有する、単層又は複数層のコーティングの適用及び硬化による、ワークピースの金属表面の電気化学的腐食保護のための方法であって、それぞれが少なくとも1種のバインダーと、腐食保護作用性の金属粒子とを含む1層以上のベースコートが層状に適用される方法において、ワークピースと接する境界面とワークピースから離れた境界面とで異なる金属粒子濃度及び/又は金属粒子組成を有するコーティングの適用及び硬化によって、電気化学的腐食保護がもたらされることを特徴とする方法。」(第17ページ第5~15行) h 「12.以下のステップ: バインダー、金属粒子、及び場合によっては潤滑剤を水性相若しくは有機相に含む第1のベースコートの1層若しくは複層をワークピース上に塗布するステップ、続いて、そのつどバインダー、金属粒子、及び場合によっては潤滑剤を水性相若しくは有機相に含む、少なくとも1つの第2のベースコートを第1のベースコート上に層状に塗布するステップを含み、第1のベースコート及び第2のベースコートの金属粒子濃度及び/又は金属粒子組成が相互に異なる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。」(第19ページ第6~14行) 引用文献3には、実施例3に着目すると、引用文献3の上記記載事項から次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 「鋼のスクリューに電気化学的腐食保護をもたらすために、ベースコートA及びベースコートBでコートした鋼のスクリューを、トップコートでコートしたコーティングにおいて、 鋼のスクリューに、バインダーとしてγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含み、優れたカソード腐食保護を保証する亜鉛粒子が添加されたベースコートAを塗布し、脱水及び硬化し、 その後、バインダーとしてγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含み、60%の亜鉛と40%のアルミニウムとの合金からなる粒子が添加されたベースコートBを塗布し、脱水及び硬化し、 また、バインダーとしてγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含み、腐食保護作用性のアルミニウム粒子が添加されたトップコートを塗布し、脱水及び硬化したコーティング。」 また同じく、実施例3に着目すると、引用文献3の上記記載事項から次の発明(以下「引用方法発明3」という。)が記載されていると認められる。 「鋼のスクリューに電気化学的腐食保護をもたらすために、コーティングさせる方法において、 鋼のスクリューに、バインダーとしてγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含み、優れたカソード腐食保護を保証する亜鉛粒子が添加されたベースコートAを塗布し、脱水及び硬化し、 続いて、バインダーとしてγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含み、60%の亜鉛と40%のアルミニウムとの合金からなる粒子が添加されたベースコートBを塗布し、脱水及び硬化し、 続いて、バインダーとしてγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含み、腐食保護作用性のアルミニウム粒子が添加されたトップコートを塗布し、脱水及び硬化する方法。」 (ウ)引用文献4 引用文献4には、次の事項が記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 特許文献1に開示される防錆塗料は、その塗料から形成される皮膜が薄膜であっても優れた耐食性を備える部材を提供可能である点で、良好な防錆塗料である。 しかしながら、近年、防錆皮膜に求められる防錆機能のレベルは特に高まっており、10μm程度の薄膜であっても特に優れた防錆機能を有する皮膜が求められるようになってきた。 【0008】 そこで、本発明は、かかる要求に応える皮膜、すなわち、特に優れた防錆機能を有する皮膜を提供することを課題とする。」 「【0026】 1.各皮膜に含有される金属粉末の関係 本実施形態に係る防錆皮膜が備える二層の皮膜のうち、内層側の皮膜である第一の皮膜は、第一の金属系粉末と第一のバインダー成分とを含有する第一の塗料組成物から得られるものであり、第一の金属系粉末が第一のバインダー成分に基づく物質(具体的には第一のバインダー成分の硬化物を主体とする。)により固定されて皮膜形状をなしている。 【0027】 同様に、本実施形態に係る防錆皮膜が備える二層の皮膜のうち、外層側の皮膜である第二の皮膜は、第二の金属系粉末と第二のバインダー成分とを含有する第二の塗料組成物から得られるものであり、第二の金属系粉末が第二のバインダー成分に基づく物質(具体的には第二のバインダー成分の硬化物を主体とする。)により固定されて皮膜形状をなしている。 【0028】 第一の皮膜および第二の皮膜に含まれる各金属系粉末における組成を互いに相違させることにより、これらの皮膜を備える本実施形態に係る防錆皮膜は優れた耐食性を有することが実現される。その理由は明らかでないが、第一の皮膜および第二の皮膜の間に電気化学的な相互作用が生じている可能性がある。 ・・・ 【0032】 一方、第二のアルミニウム比率R2が過度に高い場合には、防錆部材の耐食性が低下する傾向を示す場合がある。したがって、第二のアルミニウム比率R2を過度に高めないことが好ましく、具体的には、50質量%未満とすることが好ましい。」 「【0033】 2.金属系粉末の種類、形状等 次に、第一または第二の皮膜を含有される第一または第二の金属系粉末について説明する。いずれの金属系粉末も同様の特性を備えることができるため、以下の説明では、第一の金属系粉末を具体例として説明する。 第一のアルミニウム系粉末を与えるアルミニウム合金としては、Al-Cu系合金、Al-Mn系合金、Al-Si系合金、Al-Mg系合金、Al-Mg-Si系合金およびAl-Zn系合金が例示される。第一の亜鉛系粉末を与える亜鉛合金としては、Zn-Ni、Zn-Sn、Zn-Fe、Zn-AlおよびZn-Al-Mgが例示される。 【0034】 第一二の金属系粉末の形状は、これらを含有する第一の皮膜の厚さを薄くしても高い耐食性を有するように、鱗片形状を有していることが好ましい。鱗片形状であることによって、第一の皮膜中で第一の金属系粉末が皮膜の厚さ方向に積層する構造をとることが実現される。この積層構造は、バインダー成分の硬化に起因する収縮によって第一の皮膜中にクラックが発生しても、その進展を抑制し、基材が露出するような大きなクラックの発生を防止することに寄与する。」 「【0038】 3.塗料組成物 続いて、第一または第二の皮膜を与える第一または第二の塗料組成物について説明する。いずれの塗料組成物も同様の特性を備えることができるため、以下の説明では、第一の塗料組成物を具体例として説明する。 本実施形態に係る防錆皮膜を構成する皮膜を与える塗料組成物は、第一の金属系粉末と第一のバインダー成分とを含有する。 【0039】 第一の金属粉末の種類および形状については上記のとおりである。第一の塗料組成物における第一の金属系粉末の組成比率は、全塗料に対する質量%で、20%以上60%以下の範囲内とすることが好ましく、より好ましく30%以上50%以下である。この比率が過度に多い場合には第一の塗料組成物を薄膜状に塗布することが難しくなるとともに、得られた第一の皮膜の強度が低下する傾向が表れることが懸念される。逆に、この比率が過度に少ない場合には、得られた第一の皮膜中にクラックが進展しやすくなる傾向が表れることが懸念され、このとき皮膜の防錆機能が低下する可能性がある。 【0040】 第一の塗料組成物に含有される第一のバインダー成分の種類は特に限定されない。無機バインダー成分を含有していてもよいし、有機バインダー成分を含有していてもよい。 第一の塗料組成物は非水系組成物であっても水系組成物であってもよい。非水系組成物の場合には、塗料組成物に含有される第一の金属系粉末が保管中に腐食する可能性が低いため、好ましい。 【0041】 以下、第一の塗料組成物が非水系組成物であって、第一のバインダー成分が無機系のバインダー成分からなる場合を例として説明する。 かかる第一の塗料組成物の一例である非水系無機塗料組成物は、5質量%以上40質量%以下の有機ケイ素化合物および0.05質量%以上2質量%以下の有機チタネート化合物を含む無機バインダーと、20質量%以上60質量%以下の第一の金属系粉末と、10質量%以上60質量%以下の有機溶剤とを含有する非水系の液状組成物からなる。以下、塗料の成分の含有量に関する「%」は特にことわりがない限り全塗料に基づく質量%を意味する。 【0042】 有機ケイ素化合物は、アルコキシシランおよびその加水分解物から選んだ1種または2種以上とする。アルコキシシランは、(X’)Si(X”)3なる一般式で表される化合物であることが好ましい。 ここで、X’は、ヒドロキシ基、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、等の低級アルコキシ基、メチル、エチル、等の低級アルキル基、ビニル基、等の低級アルケニル基、さらにはγ-グリシドキシプロピル、γ-メタクリロキシプロピル、γ-メルカプトプロピル、等の官能基含有低級アルキル基から選ばれる。X”は、ヒドロキシ基ならびにメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、等のアルコキシ基から選ばれ、3個のX”は同一でも異なっていてもよい。 アルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、等が挙げられるが、それに限られるものではない。シランカップリング剤として市販されている各種のアルコキシシランを使用してもよい。 これらのアルコキシシランの中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどのテトラアルコキシシランまたはこれらのオリゴマーが好ましく、特に好ましいのは炭素数が3以下のテトラアルコキシシランまたはこれらのオリゴマーである。焼き付け処理によって縮合反応を起こした際に、三次元架橋構造の皮膜を形成することができ、皮膜強度が向上しやすい。また、縮合する際の体積収縮が比較的少ないため、クラックが成長しにくい。」 「【0060】 6.基材 ・・・ 【0061】 本実施形態に係る基材の典型的な材料は鉄鋼材料であり、その他、銅系の材料、ニッケル系の材料などが例示される。鉄鋼材料はその表面があらかじめ亜鉛などの金属によって被覆されていてもよい。そのような被覆を行う方法の典型例はめっきである。また、ショットブラスト処理のような物理的な処理が施されていてもよいし、化成処理(材料が鉄鋼の場合の例としてリン酸塩皮膜処理が挙げられる。)などの化学的な処理が施されていてもよい。 【0062】 本実施形態に係る基材の形状は任意であり、板材、棒材、管材などの一次加工品であってもよいし、ボルト、ナット、ヒンジ、エンジンブロック、ガスケット、筺体などの二次加工品であってもよい。このときの二次加工としては、切削、プレス加工、曲げ加工、切断加工、鋳造加工、鍛造加工等が例示される。 【0063】 7.防錆部材 本実施形態に係る防錆部材は、上記の基材上に、前述の第一の皮膜と第二の皮膜とからなる防錆皮膜を備える。この防錆皮膜を備えることにより防錆部材は特に優れた耐食性を有する。」 「【実施例】 【0066】 以下、具体的な実験結果により本発明についてさらに詳しく説明するが、これらの実験結果によって本発明の範囲は限定されない。 【0067】 (1)塗料の調製 鱗片状の亜鉛粉末を以下のようにして作成した。平均粒径5μmの金属亜鉛粉末100重量部をミネラルスピリット200重量部中に分散させ、さらに少量の脂肪酸を加えて、金属亜鉛粉末の分散濃度が約30重量%のスラリーとした。このスラリーをビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製スターミルZRS)で粉砕処理し、処理後のスラリーを減圧下で蒸発乾燥させて、長径の分布の中心値が10μm、厚さの分布の中心値が0.3μmの鱗片状亜鉛粉末を得た。 表1に示す5種類の鱗片状のアルミニウム粉末(いずれも東洋アルミニウム株式会社製アルペースト)を用意した。 ・・・ 【0069】 表2に示した配合(質量部)に従って、塗料用高速攪拌機を用いて各成分を一緒に3時間攪拌することにより十分に混合して、塗料No.1から12の非水系塗料を作製した。 【0070】 【0071】 表2において用いた各成分の詳細は次のとおりであった。 エチルポリシリケート:コルコート株式会社製 エチルシリケート40 テトラn-ブトキシチタン重合体:日本曹達(株)製 B-10 分散剤:楠本化成(株)製 酸化ポリオレフィン フェノール樹脂:DIC(株)製 フェノール・ホルムアルデヒド樹脂 造粘剤:日本有機粘度(株)製 ベントナイト また、表2中「金属粉末中アルミニウム粉末比率」とは、亜鉛粉末とアルミニウム粉末の総含有量に対するアルミニウム粉末の含有量の比率(単位:質量%)である。」 「【0072】 (2)耐食性評価用サンプルの作製 公知の方法により脱脂および洗浄を行った鋼製のM10ボルトにショットブラスト処理(アルミナ投射)を行った。得られたボルトをバレル内に投入し、表2に示した塗料のうちNo.1から12の一種にこのバレルを浸漬し、引き上げたのち、塗料からなる液層が表面に堆積したボルトが入ったバレルを回転させてボルト上の液層の厚さを調整した。回転終了後、バレルからボルトを取り出し、そのボルトを260℃のオーブンにて60分間加熱する焼付け処理を行った。焼付け処理後のボルトをオーブンから取り出して室温まで放冷して、厚さ4μmの塗膜(下層塗膜)をその表面に備えるボルトを得た。 【0073】 続いて、上記の下層塗膜を備えるボルトを再度バレル内に投入し、表2に示した塗料のうちNo.1から12の一種にこのバレルを浸漬し、引き上げたのち、塗料からなる液層が下層塗膜上に堆積したボルトが入ったバレルを回転させて、下層塗膜上の液層の厚さを調整した。回転終了後、バレルからボルトを取り出し、そのボルトを260℃のオーブンにて60分間加熱する焼付け処理を行った。焼付け処理後のボルトをオーブンから取り出して室温まで放冷して、厚さ4μmの新たな塗膜(上層塗膜)を下層塗膜上に備えるボルトを得た。こうして、都合8μmの防錆塗膜がボルトの表面に形成されてなる耐食性評価用サンプルを得た。」 「【0074】 (3)評価 得られた耐食性評価用サンプルを用いて次の評価を行った。 JIS Z2371に準拠した装置を用い、JIS H8502に基づいて中性塩水噴霧試験を行った。サンプルを24時間おきに目視で観察し、赤錆の発生が初めて認められた試験時間を赤錆発生時間とし、この時間を用いて耐食性を評価した。赤錆発生時間が1000時間未満の場合には耐食性に劣るものと判定した。 【0075】 (4)評価結果 評価結果を表3に示す。表3中、「RL」とは、下層塗膜を与える塗料における、亜鉛粉末とアルミニウム粉末の総含有量に対するアルミニウム粉末の含有量の比率(単位:質量%)である。また、「RU」とは、上層塗膜を与える塗料における、亜鉛粉末とアルミニウム粉末の総含有量に対するアルミニウム粉末の含有量の比率(単位:質量%)である。また、「RU/RL」とは、上記の上層塗膜を与える塗料におけるアルミニウム粉末の含有量の比率RUを、下層塗膜を与 える塗料におけるアルミニウム粉末の含有量の比率RLで除したものであり、比率RLが0質量%の場合には「-」として示した。 【0076】 」 実施例(上記【0066】~【0071】)のうち塗料No.6を下層塗膜のための塗料とし、塗料No.12を上層塗膜のための塗料としたものに着目すると、引用文献4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。 「鋼製のM10ボルトの防錆機能を高めるために、下層塗膜と上層塗膜とが形成されてなる防錆皮膜において、 下層塗膜と上層塗膜が、 下層塗膜であって、 下層塗膜が、エチルポリシリケート、テトラn-ブトキシチタン重合体、3-エトキシプロピオン酸エチル、メチルメトキシブタノール、分散剤、フェノール樹脂、増粘剤、及び金属粉末として亜鉛粉末を成分とした塗料No.6からなる液層が表面に堆積したボルトに焼付け処理を行ったものであり、 上層塗膜であって、 上層塗膜が、エチルポリシリケート、テトラn-ブトキシチタン重合体、3-エトキシプロピオン酸エチル、メチルメトキシブタノール、分散剤、フェノール樹脂、増粘剤、及び金属粉末として50質量%の亜鉛粉末と50質量%のアルミニウム粉末を成分とした塗料No.12からなる液層が下層塗膜に堆積したボルトに焼付け処理を行ったものであり、 厚さ4μmの下層塗膜、厚さ4μmの上層塗膜、都合8μmの防錆塗膜がボルトの表面に形成されてなる防錆皮膜。」 また同じく、実施例(上記【0066】~【0071】)のうち塗料No.6を下層塗膜のための塗料とし、塗料No.12を上層塗膜のための塗料としたものに着目すると、引用文献4には、次の発明(以下「引用方法発明4」という。)が記載されていると認められる。 「鋼製のM10ボルトに、防錆皮膜を形成する方法において、 下層塗膜を鋼製のM10ボルトの表面に備えること、 下層塗膜が、エチルポリシリケート、テトラn-ブトキシチタン重合体、3-エトキシプロピオン酸エチル、メチルメトキシブタノール、分散剤、フェノール樹脂、増粘剤、及び金属粉末として亜鉛粉末を成分とした塗料No.6からなる液層が表面に堆積したボルトに焼付け処理を行ったものであること、且つ、 上層塗膜を下層塗膜上に備えること、 上層塗膜が、エチルポリシリケート、テトラn-ブトキシチタン重合体、3-エトキシプロピオン酸エチル、メチルメトキシブタノール、分散剤、フェノール樹脂、増粘剤、及び金属粉末として50質量%の亜鉛粉末と50質量%のアルミニウム粉末を成分とした塗料No.12からなる液層が下層塗膜に堆積したボルトに焼付け処理を行ったものである方法。」 イ 本件発明1について (ア)引用文献1に基づく取消理由について a 対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「第1の層及び第2の層」は本件発明1の「少なくとも2つの層」に相当し、以下同様に、「第1の層」は「第1の層(3)」に、「第2の層」は「第2の層(4)」に、「基板に第1のコーティング剤を適用して形成された、陰極腐食保護である腐食防護効果をもたらす第1の層」は「陰極腐食防止コーティングの形の第1の層(3)」に相当する。 引用文献1では、第1の層によって陰極腐食保護である腐食防護硬化をもたらされ、第2の層によって温度耐性を増強されるものだから(上記ア(ア)【0033】)、引用発明1の「腐食保護コーティング」は、本件発明1の「陰極高温府嘱望保護を生成するため」の「高温腐食防止コーティング」に相当する。 引用文献1において、第1のコーティング剤を焼き付けることによって、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランが縮合することで、第1の層はエポキシ変性シリカを含有するものであるから(上記ア(ア)【0018】、【0047】、【0058】、【0065】)、「エポキシ変性シリカ」は「無機ベースマトリクス」に相当し、また、引用発明1の「第1の層」が、「3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランにアルミニウム錯体を加え、シリカゾルを加えたバインダーに、熱分解法シリカを加え、小片状の亜鉛フレーク及び小片状のアルミニウム顔料並びに蒸留水及び乳化剤を加えた第1のコーティング剤を焼き付けたもの」であり、「エポキシ変性シリカを含有」することは、本件発明1の「前記第1の層(3)が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスに基づいて形成され、前記金属粒子が、純亜鉛及び/若しくは亜鉛合金に基づいて形成され、且つ、前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備する」ことに相当する。 同様に、引用発明1の「第2の層」が「グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan Glyeo、Degussa社)に、x-add KR 9006を添加し、アルミニウム顔料を添加した第2のコーティング剤を焼き付けたもの」であることは、本件発明1の「前記第2の層(4)が、無機ベースマトリクスを具備し、該無機ベースマトリクスがケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備し、前記第2の層(4)が、アルミニウム粒子を具備」することに相当する。 引用発明1の「基板」と本件発明1の「金属基板(2)」とは「基板」である限りで一致し、同様に、「第1の層に第2のコーティング剤を適用して形成された、腐食保護コーティングの温度耐性を増強する第2の層」と「酸素障壁コーティングの形の第2の層(4)」とは「コーティングの形の第2の層」である限りで一致する。 以上のことから、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「基板上に陰極高温腐食保護を生成するために、少なくとも2つの層を具備する高温腐食防止コーティングにおいて、 前記少なくとも2つの層が、 a) 陰極腐食防止コーティングの形の第1の層であって、 前記第1の層が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスに基づいて形成され、 前記金属粒子が、純亜鉛及び/若しくは亜鉛合金に基づいて形成され、且つ、 前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備するもの、及び b) コーティングの形の第2の層であって、 前記第2の層が、無機ベースマトリクスを具備し、 該無機ベースマトリクスがケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備し、 前記第2の層が、アルミニウム粒子を具備するもの; であるコーティング。」 <相違点1-1> 本件発明1では基板が「金属基板(2)」であるのに対して、引用発明1では、そのように特定されていない点。 <相違点1-2> 第2の層のコーティングが、本件発明1では「酸素障壁」であるのに対して、引用発明1では「温度耐性を増強する」点。 <相違点1-3> 本件発明1では、第2の層において、「無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の範囲内の炭素含有量を有」するのに対して、引用発明1では、当該炭素含有量が不明である点。 <相違点1-4> 本件発明1では、「前記第2の層(4)が、該第2の層(4)に基づいて45~80重量%の範囲内のアルミニウム粒子を具備」するのに対して、引用発明1では、第2の層が具備するアルミニウム顔料の第2の層に基づいた重量%が不明である点。 <相違点1-5> 本件発明1は、「前記第2の層(4)は、さらに他の金属粒子を具備することができる」のに対して、引用発明1は、第2の層が他の金属粒子を含むか否か不明である点。 b 判断 まず、相違点1-3について検討する。 引用発明1における「第2の層」の「グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan Glyeo、Degussa社)」による無機マトリックスに基づく炭素含有量は、約40重量%程度である。 また、引用文献1には、「エポキシ変性アルコキシシラン」である「グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan Glyeo、Degussa社)」の他の適した例が上記ア(ア)【0025】に挙げられているが、いずれにおいても無機マトリックスに基づく炭素含有量が、0.01~30重量%の数値範囲に含まれることについて記載がない。 さらに、引用発明1は、「エポキシ変性シリカ」を含有することにより、腐食保護コーティングが、環境又は化学薬品の影響に対して特に耐久性であるものとするものであるところ、引用発明1における「グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan Glyeo、Degussa社)」に替えて、無機マトリックスに基づく炭素含有量が、0.01~30重量%の数値範囲に含まれるような「エポキシ変性シリカ」を選択することは、引用文献1に記載も示唆もされていない。 したがって、引用発明1において、相違点1-3に係る事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)引用文献3に基づく取消理由について a 対比 本件発明1と引用発明3とを対比する。 引用発明3の「ベースコートA及びベースコートBでコートした鋼のスクリューを、トップコートでコートした」ことは引用発明3の「少なくとも2つの層を具備する」ことに相当する。 引用発明3の「鋼のスクリュー」と本件発明1の「金属基板(2)」とは「金属基材」である限りで一致し、引用発明3の「電気化学的腐食保護をもたらす」と本件発明1の「陰極高温腐食保護を生成する」とは「腐食保護を生成する」限りで一致する。 引用文献3では、ベースコートによるコーティングは、ベースコート中に使用される腐食保護作用性の金属粒子をバインダー内に含むものであるから(上記ア(イ)a)、引用発明3の「ベースコートA」で「コート」した層は、本件発明1の「第1の層」に相当し、本件発明1の「陰極腐食防止コーティングの形の第1の層」と「腐食防止コーティングの形の第1の層」である限りで一致する。 引用文献3において、無機バインダーは、硬化過程中に水及び/又はアルコールの分離下で重合反応し、それゆえに硬化したコーティング内には主としてこのバインダーの重合反応生成物が存在することから(上記ア(イ)c)、引用発明3の「バインダーとしてγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含み、優れたカソード腐食保護を保証する亜鉛粒子が添加されたベースコートAを塗布し、脱水及び硬化」することは、本件発明1の「前記第1の層(3)が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスに基づいて形成され、前記金属粒子が、純亜鉛及び/若しくは亜鉛合金に基づいて形成され、且つ、前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備する」ことに相当する。 同様に、引用発明3の「バインダーとしてγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含み、腐食保護作用性のアルミニウム粒子が添加されたトップコートを塗布し、脱水及び硬化」することは、本件発明1の「前記第2の層(4)が、無機ベースマトリクスを具備し、該無機ベースマトリクスがケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備し、前記第2の層(4)が、アルミニウム粒子を具備」することに相当する。 引用文献3において、ワークピースから離れた層では化学的影響に対して特に耐性に構成されること(上記ア(イ)a)、及び金属粒子としてアルミニウムを含むことにより、その下に位置する層の防護のための有効な防壁の役目をすること(上記ア(イ)b)から、引用発明3の「バインダーとしてγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含み、腐食保護作用性のアルミニウム粒子が添加されたトップコートを塗布し、脱水及び硬化」した層と本件発明1の「酸素障壁コーティングの形の第2の層(4)」とは「障壁コーティングの形の第2の層」である限りで一致する。 以上のことから、本件発明1と引用発明3との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「金属基材に腐食保護を生成するために、少なくとも2つの層を具備する腐食保護コーティングにおいて、 前記少なくとも2つの層が、 a) 腐食防止コーティングの形の第1の層であって、 前記第1の層が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスに基づいて形成され、 前記金属粒子が、純亜鉛及び/若しくは亜鉛合金に基づいて形成され、且つ、 前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備するもの、及び b) 障壁コーティングの形の第2の層であって、 前記第2の層が、無機ベースマトリクスを具備し、 該無機ベースマトリクスがケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備し、 前記第2の層が、アルミニウム粒子を具備するコーティング。」 <相違点3-1> 「金属基材に腐食保護を生成する」について、本件発明1では「金属基板(2)上に陰極高温腐食保護を生成する」のに対して、引用発明3では「鋼のスクリューに電気化学的腐食保護をもたらす」点。 <相違点3-2> 腐食防止コーティングの形の第1の層が、本件発明1では「陰極腐食防止」であるのに対して、引用発明3では優れたカソード腐食保護を保証する亜鉛粒子が添加された点。 <相違点3-3> 障壁コーティングの形の第2の層が、本件発明1では「酸素障壁」であるのに対して、引用発明3では腐食保護作用性のアルミニウム粒子が添加された点。 <相違点3-4> 本件発明1では、第2の層において、「無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の範囲内の炭素含有量を有」するのに対して、引用発明3では当該炭素含有量が不明である点。 <相違点3-5> 本件発明1では、「前記第2の層(4)が、該第2の層(4)に基づいて45~80重量%の範囲内のアルミニウム粒子を具備」するのに対して、引用発明3では当該重量%が不明である点。 <相違点3-6> 本件発明1は、「前記第2の層(4)は、さらに他の金属粒子を具備することができる」のに対して、引用発明3は、そのようなものであるか不明である点。 b 判断 まず、相違点3-4について検討する。 引用発明3における「バインダーとしてγ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン」による無機マトリックスに基づく炭素含有量は、約40重量%程度である。 また、引用文献3には、「トップコート」の「バインダー」について実施例3に記載されたもののほかに例示はなく、また、無機マトリックスに基づく炭素含有量が、0.01~30重量%の数値範囲に含まれることについて記載がない。 したがって、引用発明3において、相違点3-4に係る事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者が引用発明3に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)引用文献4に基づく取消理由について a 対比 本件発明1と引用発明4とを対比する。 引用発明4の「下層塗膜」は本件発明1の「第1の層(3)」に相当し、同様に、「上層塗膜」は「第2の層(4)」に相当する。 引用発明4の「鋼製のM10ボルト」又は「ボルト」と本件発明1の「金属基板(2)」とは「金属基材」である限りで一致する。 以上のことから、本件発明1と引用発明4との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「金属基材に腐食保護を生成するために、少なくとも2つの層を具備する腐食保護コーティングにおいて、 前記少なくとも2つの層が、 a) コーティングの形の第1の層であって、 前記第1の層が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスに基づいて形成され、 前記金属粒子が、純亜鉛及び/若しくは亜鉛合金に基づいて形成され、且つ、 前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備するもの、及び b) コーティングの形の第2の層であって、 前記第2の層(4)が、無機ベースマトリクスを具備し、 該無機ベースマトリクスがケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物を具備し、 前記第2の層(4)が、アルミニウム粒子を具備するコーティング。」 <相違点4-1> 「金属基材に腐食保護を生成する」について、本件発明1では「金属基板(2)上に陰極高温腐食保護を生成する」のに対して、引用発明4では「鋼製のM10ボルトの防錆機能を高める」点。 <相違点4-2> コーティングの形の第1の層が、本件発明1では「陰極腐食防止」であるのに対して、引用発明4ではそうではない点。 <相違点4-3> コーティングの形の第2の層が、本件発明1では「酸素障壁」であるのに対して、引用発明4ではそうではない点。 <相違点4-4> 本件発明1では、第2の層において、「無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の範囲内の炭素含有量を有」するのに対して、引用発明4では当該炭素含有量が不明である点。 <相違点4-5> 本件発明1では、「前記第2の層(4)が、該第2の層(4)に基づいて45~80重量%の範囲内のアルミニウム粒子を具備」するのに対して、引用発明4では当該重量%が不明である点。 b 判断 まず、相違点4-5について検討する。 引用文献4の実施例における塗料No.12の各成分を参照すると、引用発明4における「上層塗膜」における「アルミニウム粉末」は、金属系粉末の50重量%であるが、他に樹脂成分を含む上層塗膜において45重量%以上とならないことは明らかである。 また、引用文献4には、「上層塗膜」における「第二のアルミニウム系粉末の第二の金属系粉末全体に対する質量比率であるR2」について、「第二のアルミニウム比率R2が過度に高い場合には、防錆部分の耐食性が低下する傾向を示す場合がある。したがって、第二のアルミニウム比率R2を過度に高めないことが好ましく、具体的には、50質量%未満とすることが好ましい。」と記載されていることを踏まえると、引用発明4において、上層塗膜におけるアルミニウム粉末の含有量を増加させて、アルミニウム粉末を上層塗膜に基づいて45~80重量%とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者が引用発明4に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~9、12について 本件発明2~9、12は、本件発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イで検討したのと同じ理由により、当業者が引用発明1、引用発明3又は引用発明4に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件発明11について (ア)引用文献1に基づく取消理由について a 対比 本件発明11と引用方法発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「基板に高温腐食コーティングを生成する方法において、 (A) 第1の方法段階において、腐食防止コーティング及び/若しくは陰極腐 食防止層を生成するためのコーティング組成物が基板上に適用されて、陰極腐食防止層を与えること、 前記陰極腐食防止層が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスに基づいて 形成されること、 (B) 第2の方法段階において、 第2の層が、無機ベースマトリクスを具備すること、 前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物によって形成される方法。」 <相違点1-6> 本件発明11では基板が「金属基板」であるのに対して、引用方法発明1では、そのように特定されていない点。 <相違点1-7> 本件発明11では「第2の方法段階において、酸素障壁層を生成するための腐食防止コーティングが、基板に、特に陰極腐食防止層に適用されて、酸素障壁層を与える」のに対して、引用方法発明1では「第2の層を形成する工程」が「第1の層に第2のコーティング剤を適用して形成された、腐食保護コーティングの温度耐性を増強する」点。 <相違点1-8> 本件発明11では、「酸素障壁層」において、「無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の炭素含有量を有」するのに対して、引用方法発明1では、当該炭素含有量が不明である点。 <相違点1-9> 本件発明11では、「前記酸素障壁層が、該酸素障壁層に基づいて45~80重量%の範囲内のアルミニウム粒子を具備」するのに対して、引用方法発明1では、第2の層が具備するアルミニウム顔料の第2の層に基づいた重量%が不明である点。 b 判断 相違点1-8について検討するに、相違点1-3について示したものと同様の理由により、引用方法発明1において、相違点1-8に係る事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明11は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者が引用方法発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)引用文献3に基づく取消理由について a 対比 本件発明11と引用方法発明3との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「金属基材に腐食保護を生成する方法において、 (A) 第1の方法段階において、腐食防止コーティング及び/若しくは陰極腐食防止層を生成するためのコーティング組成物が金属基材上に適用されて、腐食防止層を与えること、 前記腐食防止層が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスに基づいて形成されること、 (B) 第2の方法段階において、 第2の層が、無機ベースマトリクスを具備すること、 前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物によって形成される方法。」 <相違点3-7> 「金属基材に腐食保護を生成する」について、本件発明11では「金属基板に、高温腐食コーティングを生成」するのに対して、引用方法発明3では、「鋼のスクリューに電気化学的腐食保護をもたらす」点。 <相違点3-8> 第1の層のコーティングが、本件発明11では「陰極腐食防止」であるのに対して、引用方法発明3では優れたカソード腐食保護を保証する亜鉛粒子が添加された点。 <相違点3-9> 第2の方法段階について、本件発明11では「酸素障壁層を生成するための腐食防止コーティングが、基板に、特に陰極腐食防止層に適用されて、酸素障壁層を与える」のに対して、引用方法発明3では腐食保護作用性のアルミニウム粒子が添加された点。 <相違点3-10> 本件発明11では、「酸素障壁層」において、「無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の炭素含有量を有」するのに対して、引用方法発明3では、当該炭素含有量が不明である点。 <相違点3-11> 本件発明11では、「前記酸素障壁層が、該酸素障壁層に基づいて45~80重量%の範囲内のアルミニウム粒子を具備」するのに対して、引用方法発明3では、当該重量%が不明である点。 b 判断 相違点3-10について検討するに、相違点3-4について示したものと同様の理由により、引用方法発明3において、相違点3-10に係る事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明11は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者が引用方法発明3に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)引用文献4に基づく取消理由について a 対比 本件発明11と引用方法発明4との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「金属基材に腐食保護を生成する方法において、 (A) 第1の方法段階において、コーティング組成物が金属基材上に適用されて、第1の層を与えること、 前記第1の層が、金属粒子を具備する無機ベースマトリクスに基づいて形成されること、 (B) 第2の方法段階において、 第2の層が、無機ベースマトリクスを具備すること、 前記無機ベースマトリクスが、ケイ素酸化物、チタン酸化物及び/若しくはジルコニウム酸化物によって形成される方法。」 <相違点4-6> 「金属基材に腐食保護を生成する」について、本件発明11では「金属基板に、高温腐食コーティングを生成」するのに対して、引用方法発明4では、「鋼製のM10ボルトに、防錆皮膜を形成する」点。 <相違点4-7> 第1の方法段階におけるコーティング組成物について、本件発明11では「腐食防止コーティング及び/若しくは陰極腐食防止層を生成するため」のものであり、「陰極腐食防止を与える」のに対して、引用方法発明4ではそうではない点。 <相違点4-8> 第2の方法段階について、本件発明11では「酸素障壁層を生成するための腐食防止コーティングが、基板に、特に陰極腐食防止層に適用されて、酸素障壁層を与える」のに対して、引用方法発明4ではそのようなものであるか不明である点。 <相違点4-9> 本件発明11では、「酸素障壁層」において、「無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の炭素含有量を有」するのに対して、引用方法発明4では、当該炭素含有量が不明である点。 <相違点4-10> 本件発明11では、「前記酸素障壁層が、該酸素障壁層に基づいて45~80重量%の範囲内のアルミニウム粒子を具備」するのに対して、引用方法発明4では、当該重量%が不明である点。 b 判断 相違点4-10について検討するに、相違点4-5について示したものと同様の理由により、引用方法発明4において、相違点4-10に係る事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明11は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者が引用方法発明4に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 オ 取消理由2(進歩性)についてのまとめ 本件発明1~9、11、12は、引用文献1、引用文献3又は引用文献4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3.取消理由(決定の予告)に採用しなかった異議申立理由 (1)特許異議申立ての理由中、取消理由(決定の予告)に採用しなかったものは、概略以下のとおりである。 ア 新規性 本件発明1~9、11は、甲第1号証(引用文献1)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 イ 実施可能要件、サポート要件 本件発明1~9、11、12についての特許は、次のとおり特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 本件発明1~9、11、12の実施例が存在せず、本件発明の効果が実証されておらず、また、第1の層の厚み、第2の層の厚み、及びコーティングの厚みが特定の場合以外に腐食防止効果が得られることが実証されていないため、発明の詳細な説明は、本件発明1~9、11、12を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されてものでなく、本件発明1~9、11、12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 ウ 明確性 本件発明1~9、11、12についての特許は、次のとおり特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 請求項1、11における「高温腐食」の記載について、具体的にどの程度の温度が「高温」に該当するかが不明であるから、本件発明1~9、11、12は、明確でない。 (2)当審の判断 ア 新規性について 本件発明1~9、11は、上記2.(2)で示したとおりの相違点を有し、引用文献1に記載された発明でないことは明らかである。 イ 実施可能要件、サポート要件について (ア)実施可能要件について 本件発明1は、「無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~30重量%の範囲内の炭素含有量を有し」、「前記第2の層(4)が、該第2の層(4)に基づいて45~80重量%の範囲内のアルミニウム粒子を具備」することが特定されている。 「炭素含有量」に関して、発明の詳細な説明には、次の記載がある。 「【0108】 本発明の好ましい具体例によれば、前記無機ベースマトリクスは、付加的に改質される。無機ベースマトリクスの有機改質は、結果として、順に、第2の層の柔軟性の向上、より良い酸素障壁層、及びこれによるコーティングの剥離若しくは層間剥離、並びにコーティング内のクラッキングを防止する。 【0109】 本発明に関連して、特に良好な結果は、バインダーが、有機ラジカル、特にアルキル、アリル及びオレフィンラジカル及びそらら(当審注:「そらら」は「それら」の誤記。)の混合物並びに反応生成物から選択される有機ラジカルによって改質される場合に、得られるものである。これに関連して、有機ラジカルが、C1~C10アルキルラジカル、特にC1~C5アルキルラジカル、好ましくはC1~C3アルキルラジカル、より好ましくはC1及び/若しくはC2アルキルラジカルであることが提供される。 【0110】 同様に、前記有機ラジカルは、C6~C20アリルラジカル、特にC6~C15アリルラジカル、好ましくはC6~C10アリルラジカルであることを提供することができる。 【0111】 さらに、前記有機ラジカルが、C2~C10オレフィンラジカル、特にC2~C8オレフィンラジカル、好ましくはC2~C5オレフィンラジカル、より好ましくはC2及び/若しくはC3オレフィンラジカル、非常の好ましくはビニルラジカルであることが可能である。 ・・・ 【0115】 本発明の1つの好ましい具体例によれば、第2の層の無機ベースマトリクスは、無機基の縮合反応によって得られる。そのため、第2の層の無機ベースマトリクスは、例えば、対応するアルコキシ化合物の加水分解によって、得られる無機水酸化物の縮合反応によって生成されることが好ましい。この方法において、特に耐性のあるコーティングが得られ、それは高温時の耐酸化性でもある。高温時、有機基を介するコーティング組成物のそれぞれの分子及び/若しくは粒子の架橋において、炭素鎖の少なくとも部分的な酸化が観察され、コーティングの腐食防止効果において低下を生じるものである。 【0116】 さらに、本発明に関連して、第2の層の無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、50重量%以下、特に40重量%以下、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下の炭素含有量を有する場合に、得られるものである。 【0117】 また、前記第2の層の無機ベースマトリクスが、無機ベースマトリクスに基づいて、0.01~50重量%、特に0.05~40重量%、好ましくは0.1~35重量%、より好ましくは0.1~30重量%の範囲内の炭素含有量を有することも好ましい。 【0118】 あまりに高いカーボン画分、特に相対的に長い鎖の炭素ラジカルが、高温時で、有機成分の酸化を生じ、コーティングの構造及びこれによる腐食防止効果を弱めることが明らかになったが、無機ベースマトリクスにおける所定のカーボン画分は、-既に上記に観察されたように-前記コーティングに、必要な柔軟性を与えるために利益的であり且つ必要とされるものである。」 当該記載を参照すると、無機ベースマトリクスを改質する有機ラジカルを選択することによって、無機ベースマトリクスに基づく炭素含有量を設定できることが理解できる。 また、「アルミニウム粒子」に関して、発明の詳細な説明には、次の記載がある。 「【0120】 第2の層の無機ベースマトリクスは、-第1の層のように-溶媒ベース若しくは水ベースのコーティング組成物から、又は、コーティング組成物に基づいて、95~100重量%の固体含有量を有する超高固体コーティング組成物から、取得可能である。 【0121】 すでに明らかにされたように、本発明のコーティングの第2の層は、金属粒子なしに、いわゆるクリアコートの形で、形成されることも可能であり、これによって、従来技術において使用される腐食防止コーティングにおいて十分な改善である高温での腐食防止を達成する。前記第2の層は、不活性セラミック若しくはガラスベース粒子、特にフレークを有することも可能である。しかしながら、第2の層が金属粒子を具備する場合、陰極腐食防止の温度安定性において更に十分な改善を達成することができるものである。 【0122】 本発明に関連して、第2の層が、金属粒子を具備することは利益的である。この場合、第2の層が、第2の層に基づいて、少なくとも5重量%、特に少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%の金属粒子を具備することが提供されるものである。 【0123】 前記第2の層が、第2の層に基づいて、5~50重量%、特に10~40重量%、好ましくは15~30重量%の範囲内の金属粒子の画分を有することが好ましい。 【0124】 特に良好な結果は、前記第2の層が、第2の層に基づいて、35~95重量%、特に45~80重量%、好ましくは55~70重量%の範囲内の金属粒子の画分を具備する場合に、得られることができるものである。 【0125】 本発明のコーティングの第2の層が、金属粒子を具備する場合、これら金属粒子は、通例、亜鉛、アルミニウム及び/若しくはマグネシウム並びにそれらの合金に基づいて形成される。ここで、金属粒子が、アルミニウム粒子であることが特に好ましい。 【0126】 前記第2の層が、小板形状及び/若しくは粒状金属粒子、特に球状金属粒子、好ましくは小板形状金属粒子を具備するという規定を同様に設けることができる。 小板形状金属粒子、特にアルミニウムフレークが、著しい酸素障壁を構成し、子温(当審注:「子温」は「高温」の誤記。)ですら、陰極腐食防止層の酸化を効果的に防止することは明らかとなった。」 当該記載を参照すると、第2の層を形成するコーティング組成物に基づいてアルミニウム粒子の画分を調整することによって、第2の層(4)に基づいてアルミニウム粒子の重量%を設定できることが理解できる。 よって、発明の詳細な説明は、本件発明1~9、11、12を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されてものである。 (イ)サポート要件について a 上記2.(1)で示したとおり、本件発明1~9、11、12は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。 よって、本件発明1~9、11、12は、発明の詳細な説明に記載したものである。 b 「第1の層、第2の層、及びコーティング」について、発明の詳細な説明には、次の記載がある。 「【0039】 それゆえに、本発明の第1の様相によれば、本発明の主題は、金属基板上に陰極高温腐食防止を生成するためのコーティング、特に高温腐食防止コーティングであり、少なくとも2つの層を具備するものにおいて、前記コーティングが、 (a) 陰極腐食防止コーティングの形の第1の層、及び、 (b) さらなる腐食防止コーティングの形の、特に酸素障壁コーティングの形の第2の層 を有する。 【0040】 それゆえに、本発明に関連して、陰極腐食防止層及び別の腐食防止層、特に陰極高温腐食防止を提供するための酸素障壁層を具備し、金属基板が、温度曝露の間だけでなく、同様に繰り返しの温度曝露の場合においてもそれを介して防護され、その陰極腐食効果を失うことのないコーティングを使用することが可能である。それにゆえに、本発明のコーティングは、相対的に長く継続する温度曝露の場合だけでなく、それに代わって、例えば自動車のエンジンに生じるような断続的な温度曝露の場合でも同様に、陰極腐食防止を可能にする。」 当該記載を参照すると、「第1の層」の厚みは、「陰極腐食防止コーティングの形」としての機能を有する程度のものであること、「第2の層」の厚みは、「さらなる腐食防止コーティングの形の、特に酸素障壁コーティングの形」としての機能を有する程度の厚みのものであること、また、「コーティング」の厚みは、「金属基板上に陰極高温腐食防止を生成するためのコーティング、特に高温腐食防止コーティング」としての機能を有する程度のものであることは明らかである。 そうすると、本件発明1~9、11、12では、「第1の層の厚み、第2の層の厚み、及びコーティングの厚み」が特定されていないものの、本件発明1~9、11、12が、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できること当業者が認識できるように記載された範囲を超えるとまではいえない。 よって、本件発明1~9、11、12は、発明の詳細な説明に記載したものである。 ウ 明確性について 本件発明1、11は、「金属基板(2)上に陰極高温腐食保護を生成するために、少なくとも2つの層を具備する高温腐食防止コーティング」に関する発明である。 本件特許明細書等の「この種の高温抵抗腐食防止コーティングは、例えば、温度曝露領域における内燃機関、排気システム及びネジシステム、エネルギー再生プラント又は産業用プラントに使用される金属部品の寿命又は耐用年数において、十分な向上を達成することができるであろう。」(【0022】)の記載から、請求項1に記載される「高温」は、これら用途に用いられたときにさらされる程度の温度を意味するものと理解できる。 そうすると、本件発明1、11における「高温腐食」の記載について、発明の範囲が不明確とまではいえない。 よって、本件発明1~9、11、12は、明確である。 第5 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人の主張する特許異議申立理由によっては、本件発明1~9、11、12に係る特許を取り消すことはできない。 また、請求項10に係る特許は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項10に対して申立人がした特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700820

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