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特許異議申立

2019-700674

摩擦材

審判番号
2019-700674
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-265396
登録番号
特許第6474544号(P6474544)
請求日
2019年08月27日
審決日
2020年10月16日
公報発行日
2021年01月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日清紡ブレーキ株式会社
  • 【権利者代理人】船越 巧子
  • 【異議申立人】山田 友則
審判長/審判官
  • 審判長 田村 嘉章
  • 審判官 尾崎 和寛
  • 審判官 内田 博之
分類
P1651.161-YAA(F16D) / P1651.113-YAA(F16D) / P1651.851-YAA(F16D) / P1651.121-YAA(F16D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6474544号発明「摩擦材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6474544号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 特許第6474544号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6474544号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成25年12月24日に出願され、平成31年2月8日にその特許権の設定登録がされ、平成31年2月27日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和1年8月27日   :特許異議申立人山田友則(以下、「申立 人」という。)による請求項1~3に係 る特許に対する特許異議の申立て 同年11月13日付け  :取消理由通知 令和2年1月10日   :特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出 同年2月5日付け    :特許法第120条の5第5項の通知 同年4月30日付け   :取消理由通知(決定の予告) 同年7月6日      :特許権者による意見書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 特許権者によって令和2年1月10日に提出された訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所である。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0重量%である」とあるのを、「摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0重量%であり、ストレートフェノール樹脂、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂から選ばれる1種または2種以上から成る樹脂を結合材とする」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「NAO材の摩擦材組成物」とあるのを、「NAO材の摩擦材組成物(ただし、ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含有する場合を除く)」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「前記摩擦材組成物が炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子を摩擦材組成物全量に対し3~10重量%含有する」とあるのを、「前記摩擦材組成物が炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子を摩擦材組成物全量に対し3~10重量%と、金属硫化物系潤滑材として硫化第一鉄を含有する」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。) 訂正前の請求項1~3について、請求項2及び3が、訂正の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正請求に係る訂正は、一群の請求項〔1~3〕について請求されているといえる。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1に係る発明の「摩擦材組成物」に含まれる結合材を「ストレートフェノール樹脂、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂から選ばれる1種または2種以上から成る樹脂」と特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 摩擦材組成物に含まれる結合材を、ストレートフェノール樹脂、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂から選ばれる1種または2種以上から成る樹脂とする訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0034】の記載に基づいており、当該訂正事項1により、訂正前の特許請求の範囲に含まれないとされていた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項1に発明特定事項として記載されている「NAO材の摩擦材組成物」について、当該NAO材の摩擦材組成物が、ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含有する場合を除くとする訂正によって、NAO材の摩擦材組成物について、訂正前の請求項1に係る発明に包含される一部の事項のみをその請求項1に記載した事項から除外することを目的とするものである。 したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2によって、訂正前の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から導かれる技術的事項に何からの変更を生じさせるものではない。 したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項1に係る発明の「摩擦材組成物」が、「金属硫化物系潤滑材として硫化第一鉄を含有する」ことを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 摩擦材組成物が、金属硫化物系潤滑材として硫化第一鉄を含有するものであるとする訂正事項3は、願書に添付した明細書の段落【0028】の記載に基づいており、当該訂正事項3により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が、訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められない。 したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求に係る訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記第2で説示のとおり本件訂正請求は適法なものと認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~3に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明3」という。)は、次のとおりのものである。 [本件発明1] 「ディスクブレーキパッドに使用され、 摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物の全量に対して0重量%であり、ストレートフェノール樹脂、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂から選ばれる1種または2種以上から成る樹脂を結合材とするNAO材の摩擦材組成物(ただし、ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含有する場合を除く)を成型した摩擦材において、 前記摩擦材組成物が炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子を摩擦材組成物全量に対し3~10重量%と、金属硫化物系潤滑材として硫化第一鉄を含有することを特徴とする摩擦材。」 [本件発明2] 「前記摩擦材組成物が金属硫化物系潤滑材として硫化第一鉄を摩擦材組成物全量に対して1~15重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の摩擦材。」 [本件発明3] 「前記摩擦材組成物が無機摩擦調整材として、アルミニウム粒子,アルミニウム繊維,アルミニウムを主成分とする合金粒子,アルミニウムを主成分とする合金繊維から選ばれる1種または2種以上を摩擦材組成物全量に対し1~10重量%含有することを特徴とする請求項2に記載の摩擦材。」 第4 取消理由の概要 本件訂正請求による訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、当審が令和2年4月30日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 (拡大先願)本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願である特願2013-234269号(特開2015-93934号公報を参照。以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 なお、先願は、申立人の提出した甲第1号証に係る出願である。 第5 当審の判断 1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について (1)先願の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲(以下、「先願明細書等」という。)に記載の事項 取消理由通知において引用した先願明細書等には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (1a)「【0001】 本発明は、摩擦材組成物および摩擦材に関するものであり、特に産業機械、鉄道車両、荷物車両、乗用車などに用いられる耐摩耗性、耐ノイズ性、ブレーキの効き等に優れた摩擦材組成物および該摩擦材組成物から得られる摩擦材に関するものである。」 (1b)「【0005】 また、ノンアスベスト摩擦材の場合、耐フェード性を向上させるため、熱伝導率の大きな金属、特に銅の繊維または銅の粒子が添加されることがある。フェード現象は、摩擦材が高温、高負荷に曝されたとき、摩擦材に含まれる有機物が分解して発生する分解ガスによって引き起こされるが、熱伝導率の大きな銅を摩擦材に添加することで摩擦材自体の放熱性が向上して、分解ガスの発生を抑制することができる。 しかし、最近、金属の種類によっては、河川や海洋汚染、人体への悪影響等の環境汚染に対する懸念から、銅のような重金属を含有しない摩擦材が開発されるようになり、国際的に重金属を除く動きが加速している。」 (1c)「【0008】 しかし、銅を除くとブレーキの耐ノイズ性、効きあるいは放熱性が低下し、適用車種が限定されてしまう場合がある。 【0009】 従って、本発明は、銅及び銅含有金属を含まない摩擦材組成物および該摩擦材組成物を成形して得られる摩擦材に関し、特定の高弾性黒鉛と銅の代替材料を使用して他の特性をほとんど悪化させずに、銅フリー摩擦材の短所を補完し、高温制動時の耐摩耗性の向上と幅広い車種に適合する耐ノイズ性とブレーキの効きが改善された摩擦材を提供することを課題とする。 なお、本発明において「銅フリー」とは、摩擦材中に実質的に銅成分を含まないことであり、具体的には、摩擦材組成物全量に対し0.5質量%以下の含有量であることを意味する。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、繊維基材、摩擦調整材及び結合材を少なくとも含有してなるブレーキ摩擦材組成物の全体量を100質量%としたときに、銅の含有量が0.5質量%以下であっても、部分黒鉛化コークス及びマスコバイトを所定量含有することにより、得られた摩擦材の高温制動時の耐摩耗性が向上し、高くかつ安定した摩擦係数の確保と、耐ノイズ性とを両立させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。」 (1d)「【0014】 本発明で使用する「弾性を有する部分黒鉛化コークス」とは、弾性黒鉛を得るために黒鉛化するための原料コークス類を黒鉛化する際に、その黒鉛化を途中で止めたものであって、その黒鉛化率は80~95%であることが好ましい。前記原料コークス類としては、コールタールピッチ、石炭系ピッチ、石油系ピッチ等を約350~500℃で熱処理した時に生成する炭素質メソフェーズ又は生コークス、あるいはこれらを硝酸もしくは硝酸と硫酸との混酸で処理したものなどの、従来弾性黒鉛の製造原料とされているものを挙げることができる。 【0015】 本発明の摩擦材に用いられる部分黒鉛化コークス(弾性コークス)は、900MPa荷重時の圧縮率が80%未満であることが好ましく、より好ましくは60%以下である。900MPa荷重時の圧縮率が80%未満であると、弾性効果が得られるため好ましい。また、荷重を取り除いたときの回復率が70%を超えることが好ましく、95%以上がより好ましい。荷重を取り除いたときの回復率が70%を超える黒鉛化コークスを用いることで、耐ノイズ性に優れた摩擦材を得ることができる。本発明に使用される部分黒鉛化コークス(弾性コークス)のX線回折の測定による黒鉛化率は、80%~95%の範囲にある。そして、その添加量は少量で十分効果があり、摩擦材組成物全量に対し2~8質量%、好ましくは3~7質量%含有されればよい。また、摩擦材において、部分黒鉛化コークスは従来の黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)と併用して用いても差し支えない。」 (1e)「【0018】 部分黒鉛化コークスは、本発明においては摩擦調整材として配合され、摩擦材組成物全体量に対し2~8質量%とすることが好ましく、より好ましくは3~7質量%である。部分黒鉛化コークスの含有量が2質量%未満であると、摩擦材のダンピング特性が不足し鳴きや異音が発生し易くなる(鳴き性能が悪化する)場合がある。一方、部分黒鉛化コークスの含有量が8質量%を超えると、弾性率や潤滑性はかなり高くなるが、他の材料の含有量が減少することで、摩擦係数や強度などの各種性能が低下する場合がある。」 (1f)「【0026】 結合材は熱硬化性樹脂からなり、熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂や、これら熱硬化性樹脂をカシューオイル、シリコーンオイル、各種エラストマー等で変性した樹脂や、これらの熱硬化性樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた樹脂等が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。結合材の含有量は、十分な機械的強度、耐摩耗性を確保するため、摩擦材組成物全量に対し、7~12質量%とすることが好ましく、8~11質量%とすることがより好ましい。 【0027】 他の摩擦調整材としては、カシューダスト、ゴムダスト(タイヤトレッドゴムの粉砕粉)、未加硫の各種ゴム粒子、加硫された各種ゴム粒子等の有機充填材や、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、バーミキュライト、マイカ、板状チタン酸カリウム、鱗片状の、チタン酸リチウムカリウム又はチタン酸マグネシウムカリウム、不定形チタン酸カリウム等の無機充填材や、炭化ケイ素、アルミナ、マグネシア、クロマイト、四酸化三鉄、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム等の研削材や、二硫化モリブデン、硫化錫、硫化亜鉛、硫化鉄等の潤滑材や、錫粉等の、銅及び銅合金以外の非鉄金属粒子等が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。摩擦調整材の含有量は、所望する摩擦特性に応じて、摩擦材組成物全量に対し60~90質量%とすることが好ましく、65~85質量%とすることがより好ましい。また、必要に応じ、その他の配合材料を使用することは何ら差し支えない。」 (1g)「【0030】 (実施例1~7、比較例1~4) <摩擦材の製造> 表1および表2に示す配合材料を混合機に一括して投入し、混合を行った。その後、得られた混合物を各々予備成形(1)、熱成形(2)、加熱および研磨(3)等の工程を経て摩擦材(ブレーキパッド)を作製した。 (1)予備成形 上記混合物を予備成形プレスの金型に投入し、常温にて20MPaで10秒間の成形を行い予備成形品を作製した。 (2)熱成形 この予備成形品を熱成形型に投入し、予め接着剤を塗布した金属板(プレシャープレート:P/P)を重ね150℃、45MPaで5分間加熱圧縮成形を行った。 この加熱圧縮成形体に250℃、3時間の熱処理を実施後、所定の厚み17.0mmに研磨、塗装し摩擦材(ブレーキパッド)を得た。」 (1h) (1i)「【0040】 表1及び2から分かるように、銅フリーの摩擦材において、実施例1~7は配合材料として部分黒鉛化コークス(弾性コークス)とマスコバイトを用い、実施例1~4は摩擦材中のマスコバイト配合量を、実施例5~7は部分黒鉛化コークスの添加量をそれぞれ変化させた例を示している。銅を加えた摩擦材を基準にすると、マスコバイトと部分黒鉛化コークスを同時に添加した実施例1~7の摩擦材は銅を5質量%含有する摩擦材(比較例2)と同等の性能を達成できることがわかった。しかし、マスコバイトと黒鉛化コークスの少なくとも一つを添加しなかった摩擦材(比較例1、3、4)は鳴き、効力及び摩耗の評価項目を満たすことが出来ないことがわかった。」 (1j)「【請求項1】 繊維基材、摩擦調整材及び結合材を含有する摩擦材組成物であって、該摩擦材組成物中の銅の含有量が0.5質量%以下であり、部分黒鉛化コークスおよびマスコバイトを含有することを特徴とする摩擦材組成物。 【請求項2】 前記部分黒鉛化コークスの摩擦材組成物全体量に対する含有量が2~8質量%であることを特徴とする請求項1に記載の摩擦材組成物。 【請求項3】 前記マスコバイトの摩擦材組成物全体量に対する含有量が1~6質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の摩擦材組成物。 【請求項4】 請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の摩擦材組成物を成形して得られる摩擦材。」 (2)先願明細書等に記載の事項から認定される事項 上記摘記(1cの段落【0009】)及び(1h)より、先願明細書に記載の実施例1~7は、摩擦材組成物として銅を含有していないと認められる。 上記摘記(1h)より、先願明細書に記載の実施例1~7は、摩擦組成物としてスチール系繊維を含有していないと認定できる。 上記摘記(1f)の段落【0027】より、先願明細書に記載の実施例1~7における、摩擦調整材である潤滑材の硫化錫は硫化鉄に置換可能であることから、先願明細書には、摩擦調整材を硫化鉄としたものが実質的に記載されていると認定できる。 上記摘記(1f)の段落【0026】及び(1h)より、先願明細書に記載の実施例1~7は、フェノール樹脂を摩擦材組成物の結合材としているものと認定できる。 上記摘記(1h)より、先願明細書に記載の実施例1~7は、摩擦材組成物として、ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含有していないと認定できる。 (3)先願明細書等に記載の発明 上記摘記事項の記載内容及び認定事項を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、先願明細書等には、摩擦材組成物および摩擦材に関して、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認定できる。 [先願発明] 「ディスクブレーキパッドに使用され、摩擦材組成物として銅を含有しておらず、フェノール樹脂を結合材とする、摩擦材組成物としてスチール系繊維、ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含有していない、摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物の配合組成は、潤滑性のための弾性コークスを所定質量%と、マスコバイトを所定の質量%含有し、さらに、摩擦調整材として硫化鉄を含有する摩擦材。」 (4)対比・判断 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と先願発明とを対比する。 先願発明の「摩擦材組成物として銅を含有しておらず」とは、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0重量%であることであるから、本件発明1の「摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0重量%」であることに相当する。 先願発明は、「摩擦材の配合組成物としてスチール系繊維を含んでいない」いから、先願発明の摩擦材組成物は「NAO材」であるといえる(本件特許明細書段落【0003】を参照。)。 先願発明の「潤滑性のための弾性コークス」は、本件発明1の「炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子」に相当するから、先願発明の「前記摩擦材組成物の配合組成は、潤滑性のための弾性コークスを所定質量%」「含有」することは、本件発明1の「摩擦材組成物が炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子を摩擦材組成物全量に対し3~10重量%」「含有する」こととの対比において、「摩擦材組成物が炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子を摩擦材組成物全量に対し所定重量%含有する」との限度で共通する。 先願発明の「フェノール樹脂」は、本件発明1の「ストレートフェノール樹脂」に相当するから、先願発明の「フェノール樹脂を結合材とする」ことは、本件発明1の「ストレートフェノール樹脂、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂から選ばれる1種または2種以上から成る樹脂を結合材とする」ことに相当する。 先願発明の「摩擦材組成物として」「ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含有していない」ことは、本件発明1の「摩擦材組成物(ただし、ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含有する場合を除く)」に相当する。 先願発明の「摩擦調整材として」の「硫化鉄」は、本件発明1の「金属硫化物系潤滑材」に相当し、硫化第一鉄は硫化鉄に包含されるから、先願発明の「摩擦調整材として硫化鉄を含有する」は、本件発明1の「金属硫化物系潤滑材として硫化第一鉄を含有する」こととの対比において、「金属硫化物系潤滑材として硫化鉄を含有する」との限度で共通する。 以上のことから、本件発明1と先願発明とは次の点で一致する。 「ディスクブレーキパッドに使用され、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0重量%であり、ストレートフェノール樹脂、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂から選ばれる1種または2種以上から成る樹脂を結合材とするNAO材の摩擦材組成物(ただし、ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含有する場合を除く)を成型した摩擦材において、 前記摩擦材組成物が炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子を摩擦材組成物全量に対し所定重量%と、金属硫化物系潤滑材として硫化鉄を含有する摩擦材。」 そして、本件発明1と先願発明とは次の点で一応相違する。 [相違点1] 本件発明1は、「弾性黒鉛化カーボン粒子を摩擦組成物全量に対し3~10重量%」「含有する」のに対し、先願発明は、「弾性コークスを所定質量%」「含有する」ものである点。 [相違点2] 本件発明1の「金属硫化物系潤滑材」が「硫化第一鉄」であるのに対し、先願発明は、「硫化鉄」である点。 (イ)判断 上記各相違点について検討する。 a 相違点1について 甲第1号証に記載のものの実施例1~7のうち、実施例1~4、6及び7は、弾性コークスの摩擦組成物全量に対する含有量が、4.5、7または8重量%とされているから、先願発明における弾性コークスの摩擦組成物全量に対する含有量として、4.5、7または8重量%が想定されているといえる。 してみると、かかる想定の範囲においては、弾性コークス、すなわち、弾性黒鉛化カーボンの含有量は、先願発明と本件発明1で同じであるといえるから、相違点1は実質的な相違点とはいえない。 b 相違点2について 摩擦材における金属硫化物系潤滑材としての硫化鉄には、硫化第一鉄、硫化第二鉄及び二硫化鉄があることは、当業者には周知であるといえる(必要であれば、特開2012-518044号公報の段落【0049】を参照。)。 しかしながら、本件発明1は、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、高速高負荷制動時に発生する摩擦材端部のカケを抑制できる摩擦材を提供するという課題を解決するために(本件特許明細書段落【0013】を参照。)、摩擦材に弾性黒鉛化カーボン粒子を添加したものであるところ、弾性黒鉛化カーボン粒子の添加によって生じる、高速高負荷時のブレーキの効きの低下を抑制することを期待して、通常の使用領域では潤滑材として作用するが、高速高負荷制動時にはブレーキの効きを向上させる摩擦調整材として作用する硫化第一鉄を添加したものであり(本件特許明細書の段落【0014】、【0024】~【0028】を参照。)、これにより金属硫化物系潤滑材の一般的な効果とは異なる新たな効果を奏するといえる。 そうすると、たとえ、摩擦材における金属硫化物系潤滑材としての硫化第一鉄が当業者に周知であるとしても、相違点2は、課題解決のための具体化手段の微差であるとはいえず、実質的な相違点である(特許・実用新案審査基準「第III部 第3章 3.2」を参照。)。 (エ)小括 以上のとおりであるから、本件発明1と先願発明とは同一であるとはいえない。 イ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、発明特定事項を付加するものである。 上記アに説示のとおり、本件発明1と先願発明とは同一であるとはいえないから、本件発明2及び3も同様に先願発明と同一であるとはいえない。 2 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった異議申立理由について 申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明について、甲第2号証(特開2013-100476号公報)に記載の発明を主引用発明として新規性及び進歩性を否定し、また、甲第3号証(特開2012-255054号公報)に記載の発明を主引用発明として進歩性を否定しているのでこの点について検討する。 (1)甲第2号証について 甲第2号証に記載の発明 甲第2号証の、特に段落【0001】、【0014】、【0015】、【0038】-【0041】の記載を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第2号証には、摩擦材に関して、実施例13として、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認定できる。 [甲2発明] 「自動車、鉄道車両、産業機械等のブレーキパッドに使用され、摩擦材の使用材に銅を含んでおらず、アスベストを含んでいないセラミックスをマトリックスとする摩擦材の使用材を成型した摩擦材において、前記摩擦材の使用材が弾性黒鉛を摩擦材の使用材全量に対し10体積%含有する摩擦材。」 (3)甲第3号証について 甲第3号証に記載の発明 甲第3号証の、特に【請求項1】、【請求項4】、段落【0001】、【0008】、【0009】、【0021】、【0022】、【0027】及び【0040】~【0042】の記載を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第3号証には、ノンアスベスト摩擦材組成物に関して、実施例10として、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認定できる。 [甲3発明] 「ディスクブレーキパッドに使用され、摩擦材組成物に含まれる銅の含有量が摩擦材組成物全量に対して0質量%であるノンアスベスト摩擦材であって、フェノール樹脂を結合材として摩擦材組成物全量に対して9質量%含有し、アラミド繊維を摩擦材組成物全量に対し2質量%含有し、さらに、ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を、摩擦材組成物全量に対して、それぞれ、2質量%含有する摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物が黒鉛を摩擦材組成物全量に対し5質量%含有する摩擦材。」 (4)甲2発明を主引用発明として ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「自動車、鉄道車両、産業機械等のブレーキパッド」は、本件発明1の「ディスクブレーキパッド」に相当する。 以下同様に、「摩擦材の使用材」は、「摩擦材組成物」に、 「弾性黒鉛」は、「炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子」に、 「摩擦材の使用材に銅を含んで」いないことは、「摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0重量%である」ことに、それぞれ相当する。 以上のことから、本件発明1と甲2発明とは次の点で一致する。 「ディスクブレーキパッドに使用され、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0重量%である、摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物が炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子を含有する摩擦材。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点3] 本件発明1は、「ストレートフェノール樹脂、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂から選ばれる1種または2種以上から成る樹脂を結合材とするNAO材の摩擦材組成物(ただし、ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含有する場合を除く)」であるのに対し、甲2発明は、「アスベストを含んでいないセラミックスをマトリックスとする摩擦材の使用材」である点。 [相違点4] 弾性黒鉛化カーボン粒子の含有量に関して、本件発明1においては、摩擦材組成物全量に対し「3~10重量%」含有するのに対して、甲2発明においては、「10体積%」含有する点。 (イ)判断 相違点3について検討する。 甲2発明は、「セラミックスをマトリックスとする摩擦材」を使用材とするものであって、これによって、「高耐熱性、高靱性、高強度の素材をマトリックスとして用いることにより、摩擦材が熱分解等の影響を受けることがなく、高温及び高負荷領域での使用時においても耐熱性及び耐摩耗性に優れ、摩擦係数の高い摩擦材を提供することができる。また、制動時における欠けや割れに対しても耐久性を有する摩擦材を提供することができる。」という作用効果を発揮するものである(甲第2号証の段落【0009】を参照。)。 してみれば、甲2発明において、摩擦材の使用材(摩擦材組成物)として、ストレートフェノール樹脂、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂から選ばれる1種または2種以上から成る樹脂を結合材とするNAO材を使用すること、すなわち、フェノール樹脂類をマットリックすることは想定されていないといえる(甲第2号証の段落【0008】を参照。)。 したがって、相違点3は実質的な相違点であるといえるし、甲2発明において、相違点3に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 なお、申立人の提出した甲第3号証~甲第5号証は、摩擦材の使用材として、アスベストを含んでいないセラミックスをマトリックスを、フェノール樹脂類をマットリックとすることについて示唆するものではない。 よって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、発明特定事項を付加したものである。 上記アで説示のとおり、本件発明1は甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明2及び3も甲2発明(及び甲第3号証~甲第5号証に記載の事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)甲3発明を主引用発明として ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲3発明とを対比する。 甲3発明の「銅の含有量が摩擦材組成物全量に対して0質量%」であることは、本件発明1の「銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0重量%」であることに相当する。 また、甲3発明の「フェノール樹脂を結合材として、摩擦材組成物全量に対して9質量%含有」することは、本件発明1の「ストレートフェノール樹脂、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂から選ばれる1種または2種以上から成る樹脂を結合材とする」ことに相当する。 さらに、甲3発明の「ノンアスベスト摩擦材であって、アラミド繊維を摩擦材組成物全量に対し2質量%含有する摩擦材組成物」は、本件発明1の「NAO材」に相当する。 甲3発明の「黒鉛」と、本件発明1の「弾性黒鉛化カーボン粒子」とは、「黒鉛」である限りにおいて、共通する。 以上のことから、本件発明1と甲3発明とは次の点で一致する。 「ディスクブレーキパッドに使用され、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0重量%であり、ストレートフェノール樹脂、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂から選ばれる1種または2種以上から成る樹脂を結合材とするNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物が黒鉛を含有する摩擦材。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点5] 黒鉛に関して、本件発明1においては、「炭素質系潤滑材として弾性黒鉛化カーボン粒子を摩擦材組成物全量に対し3~10重量%含有する」のに対して、甲3発明においては、黒鉛を摩擦材組成物全量に対し5質量%含有する点。 [相違点6] 本件発明1のNAO材の摩擦材組成物が「ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含有する場合を除く」と限定されているものであるのに対し、甲3発明の摩擦材組成物は、「ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を、摩擦材組成物全量に対して、それぞれ、2質量%含有する」ものである点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点6について検討する。 甲3発明は、銅及び銅合金の含有量が少なくても、摩擦係数、耐クラック性及び耐摩耗性に優れた摩擦材を与えることができるノンアスベスト摩擦材組成物、さらに該ノンアスベスト摩擦材組成物を用いた摩擦材及び摩擦部材を提供することを目的とし(甲第3号証の段落【0008】)、ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含有することで、上記目的を達成するものであると解される(甲第3号証の段落【0009】を参照。)。 してみると、甲3発明において、ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含有しないものとすることには阻害要因があるといえる。 したがって、甲3発明において、相違点6に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 また、申立人の提出した、甲第5号証及び甲第6号証は、摩擦材組成物について、ニトリル-ブタジエンゴム及び錫粉を含まないことについて示唆するものではない。 よって、相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明並びに甲第5号証及び甲第6号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、発明特定事項を付加したものである。 上記アで説示のとおり、本件発明1は甲3発明並びに甲第5号証及び甲第6号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明2及び3も甲3発明並びに甲第5号証及び甲第6号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700674

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