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特許異議申立

2019-700665

パトロール作業用ロボット及びパトロール作業用ロボットを用いた警報システム

審判番号
2019-700665
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-104895
登録番号
特許第6475191号(P6475191)
請求日
2019年08月26日
審決日
2020年05月29日
公報発行日
2020年08月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ベステラ株式会社
  • 【権利者代理人】江藤 聡明
  • 【異議申立人】桜井 裕
審判長/審判官
  • 審判長 栗田 雅弘
  • 審判官 見目 省二
  • 審判官 松原 陽介
分類
P1651.121-YAA(G05D) / P1651.851-YAA(G05D) / P1651.853-YAA(G05D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6475191号発明「パトロール作業用ロボット及びパトロール作業用ロボットを用いた警報システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6475191号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。 特許第6475191号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 本件特許異議申立の主な経緯 平成28年 5月26日   特許第6475191号 (以下、「本件特許」という。)の請求項1 ないし3に係る特許についての出願 (特願2016-104895号) 平成31年 2月 8日   本件特許権の設定登録 同 年 2月27日   本件特許に係る特許掲載公報の発行 令和 1年 8月26日   特許異議申立人桜井裕(以下「異議申立 人」という。)による本件特許異議の申立て 同 年10月21日付け 取消理由通知書 同 年12月20日   特許権者による意見書の提出 令和 2年 1月17日付け 取消理由通知書(決定の予告) 同 年 3月17日   特許権者による意見書の提出及び訂正の 請求 同 年 4月28日   異議申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)~(3)のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「・・・記録手段と、を有すること・・・」と記載されているのを、 「・・・記録手段と、を有し、前記三次元マップが、制御部120及び三次元データを記憶する記憶部110を有するサーバ102と、ネットワーク104を介して前記サーバ102と通信可能であって表示部132を有する端末装置103と、を備えたプラント設備の三次元画像表示システム100であって、前記記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段を有するとともに、該複数の格納手段に格納された各三次元データを関連付けて記憶しており、前記複数の格納手段は、所定のプラント設備と該プラント設備の周辺領域との計測データを含む、航空レーザ計測による航空三次元データを格納する第1格納手段111と、少なくとも前記航空三次元データに含まれる、前記プラント設備を含む地上領域を計測した、モービルマッピングシステムによる広域地上三次元データを格納する第2格納手段112と、少なくとも前記プラント設備の内部を計測した、非移動式の地上型レーザ計測による狭域地上三次元データを格納する第3格納手段113とを含み、前記制御部120は、前記記憶部110に格納された三次元データに関する前記端末装置103からの位置指定及び尺度指定に基づいて、前記複数の格納手段から、前記端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出する格納部選択手段125と、該格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって指定された尺度に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を前記表示部132に表示させるように前記端末装置103へ送信する階層マップ画像表示手段126とを備えたプラント設備の三次元画像表示システム100により表示される三次元マップ画像を用いること・・・」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、 「予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部と」と記載されているのを、 「予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部20と」に訂正する。 (3)訂正事項3 本件特許明細書の段落[0010]に、 「上記目的を達成するための請求項1に記載のパトロール作業用ロボットは、プラント設備領域を含む領域の三次元マップと、周囲の立体的形状データを取得可能な周囲データ取得センサと、該周囲データ取得センサにより得られた前記立体的形状データと前記三次元マップのデータとを対比して両データの一致点を見出し、前記三次元マップ上における現在位置を決定する現在位置決定手段と、予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部と、を有し、前記三次元マップが、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであり、前記プラント設備領域内において前後左右及び高さ方向に移動しつつ該プラント設備領域のパトロール作業を行うパトロール作業用ロボットであって、前記移動中に前記周囲の雰囲気の各種物理量を検知する検知手段と、前記周囲の雰囲気の各種物理量が所定基準値範囲を外れた場合に前記三次元マップ上に前記物理量の情報を前記現在位置決定手段により決定された現在位置とともに記録する記録手段と、を有することを特徴とする。」と記載されているのを、 「上記目的を達成するための請求項1に記載のパトロール作業用ロボットは、プラント設備領域を含む領域の三次元マップと、周囲の立体的形状データを取得可能な周囲データ取得センサと、該周囲データ取得センサにより得られた前記立体的形状データと前記三次元マップのデータとを対比して両データの一致点を見出し、前記三次元マップ上における現在位置を決定する現在位置決定手段と、予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部20と、を有し、前記三次元マップが、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであり、前記プラント設備領域内において前後左右及び高さ方向に移動しつつ該プラント設備領域のパトロール作業を行うパトロール作業用ロボットであって、前記移動中に前記周囲の雰囲気の各種物理量を検知する検知手段と、前記周囲の雰囲気の各種物理量が所定基準値範囲を外れた場合に前記三次元マップ上に前記物理量の情報を前記現在位置決定手段により決定された現在位置とともに記録する記録手段と、を有し、前記三次元マップが、制御部120及び三次元データを記憶する記憶部110を有するサーバ102と、ネットワーク104を介して前記サーバ102と通信可能であって表示部132を有する端末装置103と、を備えたプラント設備の三次元画像表示システム100であって、前記記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段を有するとともに、該複数の格納手段に格納された各三次元データを関連付けて記憶しており、前記複数の格納手段は、所定のプラント設備と該プラント設備の周辺領域との計測データを含む、航空レーザ計測による航空三次元データを格納する第1格納手段111と、少なくとも前記航空三次元データに含まれる、前記プラント設備を含む地上領域を計測した、モービルマッピングシステムによる広域地上三次元データを格納する第2格納手段112と、少なくとも前記プラント設備の内部を計測した、非移動式の地上型レーザ計測による狭域地上三次元データを格納する第3格納手段113とを含み、前記制御部120は、前記記憶部110に格納された三次元データに関する前記端末装置103からの位置指定及び尺度指定に基づいて、前記複数の格納手段から、前記端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出する格納部選択手段125と、該格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって指定された尺度に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を前記表示部132に表示させるように前記端末装置103へ送信する階層マップ画像表示手段126とを備えたプラント設備の三次元画像表示システム100により表示される三次元マップ画像を用いることを特徴とする。」に訂正する。 本件特許請求の範囲に係る訂正(訂正事項1ないし2)は、一群の請求項〔1ないし3〕に対して請求されたものである。また、本件特許明細書に係る訂正(訂正事項3)は、一群の請求項〔1ないし3〕について請求されたものである。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る訂正は、請求項1に係る「三次元マップ」の構成を加入するものである。 これについて、三次元マップに関し、訂正前の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。なお、同様に訂正前の請求項2ないし3に係る発明を「本件発明2」等という。)は、 ア 「プラント設備領域を含む領域の三次元マップ」であること、 イ 「前記三次元マップが、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであ」ること、 の二点のみを特定していたものであって、特に他に限定を生じさせる事項はないから、段落【0028】~【0076】に示される実施例(特に段落【0046】~【0048】に記載された三次元マップ)のみを想定していたとはいえず、段落【0077】~【0122】、図5~図10に記載された三次元画像表示システムによって得られる三次元マップも含まれていたものと解される。この点について、段落【0083】にも、第1~第4格納手段に格納される三次元データが、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであることが記載されており、三次元マップの構成自体、段落【0028】~【0076】に示される実施例のものと変わりはない。 そうすると、訂正事項1は、本件発明1が内在していた三次元マップを、三次元画像表示システムによって得られるものに限定しようとするものであるから、この訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 また、訂正事項1に係る発明特定事項は、上記のとおり、段落【0077】~【0122】、図5~図10に記載されていた事項であって、本件発明1が内在していたものであるから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る訂正は、請求項1に係る「予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部」について、当該制御部に対応する図面中の符号「20」を加入するものである。 ここで、本件特許明細書(特に、段落【0033】、【0041】、【0052】~【0059】)及び図面(特に、図1及び図4)を参酌すれば、「予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部」は、作業用ロボット10が有する「制御部20」であることが明らかであるところ、この訂正事項は、上記訂正事項1において、サーバ102の「制御部120」が加入されたことに伴い、いずれの「制御部」であるかが判別可能となるように「20」の符号を付したものと理解できる。 そうすると、訂正事項2は、本件発明1の「予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部」を明確化するためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められるところ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3に係る訂正は、上記訂正事項1、2の請求項1に係る訂正に合わせて、本件明細書の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、訂正後の本件請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 プラント設備領域を含む領域の三次元マップと、 周囲の立体的形状データを取得可能な周囲データ取得センサと、 該周囲データ取得センサにより得られた前記立体的形状データと前記三次元マップのデータとを対比して両データの一致点を見出し、前記三次元マップ上における現在位置を決定する現在位置決定手段と、 予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部20と、を有し、 前記三次元マップが、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであり、 前記プラント設備領域内において前後左右及び高さ方向に移動しつつ該プラント設備領域のパトロール作業を行うパトロール作業用ロボットであって、 前記移動中に前記周囲の雰囲気の各種物理量を検知する検知手段と、 前記周囲の雰囲気の各種物理量が所定基準値範囲を外れた場合に前記三次元マップ上に前記物理量の情報を前記現在位置決定手段により決定された現在位置とともに記録する記録手段と、を有し、 前記三次元マップが、 制御部120及び三次元データを記憶する記憶部110を有するサーバ102と、ネットワーク104を介して前記サーバ102と通信可能であって表示部132を有する端末装置103と、を備えたプラント設備の三次元画像表示システム100であって、 前記記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段を有するとともに、該複数の格納手段に格納された各三次元データを関連付けて記憶しており、 前記複数の格納手段は、 所定のプラント設備と該プラント設備の周辺領域との計測データを含む、航空レーザ計測による航空三次元データを格納する第1格納手段111と、 少なくとも前記航空三次元データに含まれる、前記プラント設備を含む地上領域を計測した、モービルマッピングシステムによる広域地上三次元データを格納する第2格納手段112と、 少なくとも前記プラント設備の内部を計測した、非移動式の地上型レーザ計測による狭域地上三次元データを格納する第3格納手段113とを含み、 前記制御部120は、 前記記憶部110に格納された三次元データに関する前記端末装置103からの位置指定及び尺度指定に基づいて、前記複数の格納手段から、前記端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出する格納部選択手段125と、 該格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって指定された尺度に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を前記表示部132に表示させるように前記端末装置103へ送信する階層マップ画像表示手段126とを備えたプラント設備の三次元画像表示システム100により表示される三次元マップ画像を用いることを特徴とするパトロール作業用ロボット。 【請求項2】 前記周囲の雰囲気の物理量が、温度、放射線、有害物質及び可燃性ガスの物理量から選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のパトロール作業用ロボット。 【請求項3】 前記三次元マップデータを無線で発信する発信手段を有する請求項1又は2に記載のパトロール作業用ロボットと、 前記発信手段により発信された情報を受信する受信手段と、該受信手段が受信した前記三次元マップデータに記録された前記物理量の情報に基づき警報を発する警報手段と、を備える警報装置と、 を有することを特徴とするパトロール作業用ロボットを用いた警報システム。」 第4 取消理由の概要 本件発明1ないし3についての特許に対して、当審が令和2年1月17日付けの取消理由通知書(決定の予告)において、特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 本件発明1ないし3は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証ないし甲第4号証に記載の事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし3についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 よって、本件発明1ないし3についての特許は、取り消されるべきものである。 第5 引用文献の記載 取消理由通知において提示した引用文献は以下のとおりである。 甲第1号証:特開平7-281753号公報 甲第2号証:特開2013-132748号公報 甲第3号証:再公表特許WO2013/030929号 甲第4号証:特開2014-44143号公報 (以下、甲第1号証ないし甲第4号証を「甲1」ないし「甲4」という。) 1.甲1の記載事項、甲1発明 甲1には、「移動ロボット」に関し、図1~7とともに以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は自律制御する移動ロボットに関する。 【0002】 【従来の技術】一般に、原子力プラントやその他悪環境下の各種プラントでは、プラント内に設置されている機器や配管に加熱や漏洩等の異常が発生した場合に、早期に発見できるように作業員が移動して点検を行っている。・・・この巡視点検作業は、人体への危害やコスト、さらに最近では作業員の確保の面などで問題があり、作業員に代替する移動式の点検装置への要求が強い。」 (イ)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】上述の従来の移動ロボットにおいては、原子力プラントやその他悪環境下の各種プラントの非常に複雑でかつ広いエリア等の使用条件において機能を満足させことが困難であった。移動ロボットを自律的に移動制御を行って、目的位置まで確実に移動させるには、移動する環境を把握し、常にロボット自身の位置や向きを求める機能(以下自己位置同定処理という)が必要となる。しかも、移動ロボットをスムーズに移動させるには、高速に自己位置同定処理を行う必要がある。人間の場合、目にとらえた映像すなわちパッシブな視覚情報から、短時間で容易に自己位置同定処理を行っている。一方、ロボットにパッシブな視覚情報で自己位置同定処理を行う場合は、人間の目に相当するテレビカメラを取り付けて、画像認識を行う必要があるが、視覚認識機能が人に比べて非常に劣る。そのため、短時間で正確な自己位置同定することが困難である。現状の認識技術は単純背景での単純物体に対しては、ある程度まで短時間で正確な認識が可能となってきているが、複雑環境では認識率が極端に低くなり、かつ10秒以上と長時間を必要とするなど、実用レベルには程遠い。複雑環境での認識技術が実用レベルに到達するまでには、今後かなりの年月がかかると思われる。このため、現状では複雑環境を移動させるロボットにはパッシブな視覚情報による自己位置同定処理は実現性に乏しい。 【0006】本発明は係る従来の事情に対処してなされたものであり、その目的は、プラントに悪影響を及ぼさず、視覚情報に代わる外界センサの採用を行い、複雑な教示やプラントに対する加工処理の不要な自己位置同定処理を構築し、複雑環境下で自己位置同定処理の正確さを向上させ、しかも高速に処理可能な移動ロボットを提供するものである。」 (ウ)「【0012】 【実施例】・・・図1は本発明に係る移動ロボットの第1の実施例における移動ロボットの外形図を示しており、移動ロボット1は移動量検出用の回転角度センサ15を有する車輪50で駆動する移動台車7に、点検用センサ9を設けた雲台8,点検用センサ信号処理装置21を備えている。また、無線伝送装置10,通信制御装置20,ロボット用の前述の視覚情報に代わる外界センサであるスキャン式レーザ距離計12,超音波センサ13a,13b,ジャイロ14,ロボットコントローラ19を搭載している。この移動ロボット1は、操作室2にある操作盤3からの指令に基づいて、プラント内に設置された点検対象物まで移動し、点検用センサ9を用いて点検を行うものである。 【0013】本実施例で用いた雲台8は、下部にはスキャン式レーザ距離計12を搭載し、ロボットコントローラ19の姿勢制御指令に基づいて旋回駆動、ふ仰駆動を行うものである。無線伝送装置10は通信制御装置20からの要求および制御で、地上局とロボット制御に必要となる制御信号、状態信号の送受と、点検用センサ9の送信を無線で行うものである。ジャイロ14は、ロボットの旋回角度と傾き角度と検出するものである。 【0014】スキャン式レーザ距離計12はレーザ光を発光してから被測定物から反射してくるまでの時間を計測することで、被測定物までの距離を求めるものである。スキャンニングは水平方向に270度で1秒間に10回程度行うものである。 【0015】超音波センサ13a,13bは超音波を発信するトランスデゥーサ13bと被測定物から反射してくる超音波を受信するレシーバ13aとが独立に設けられたもので、発信から受信までの時間を計測することで被測定物までの距離を求める。」 (エ)「【0017】また、通信制御装置4からの通信制御信号を無線で移動ロボット1に伝送あるいは受信するための追尾装置付き無線伝送装置11が設けられている。操作盤3は移動台車7や点検用センサ9の遠隔操作を行う操作器17、点検結果や移動ロボット1の状態を表示する状態表示モニタ16、これらを制御するマンマシンインターフェイス用制御装置18から構成されている。 【0018】オペレータは操作器17を用いて目的位置と方向に関する移動要求を入力する。ロボット統括制御装置5はオペレータからの移動要求を受けて、プラントCAD(コンピュータ支援による設計)データを用いて現在位置から目的地までの経路生成を行う機能を有し、さらに操作盤3と移動ロボット1間の通信管理を行う。このプラントCADデータは、機器の配置設計を行うためのものであり、データの内容としてはポンプ、弁、熱交換器等の機器の配置、配管の設置位置等を示す座標が、機器、配管等の占める容積全体の部分で3次元的に与えられる。 【0019】通信制御装置4は移動ロボット1の走行コントローラ24,雲台コントローラ25,点検用センサ信号処理装置21からの状態信号および点検用センサ9からのセンサ信号を入力し、ロボット統括制御装置5,診断装置6へ送信する機能を有する。また、逆にロボット統括制御装置5,診断装置6からの要求信号を入力し、移動ロボット1の走行コントローラ24,雲台コントローラ25,点検用センサ信号処理装置21へ送信する機能および追尾装置付き無線伝送装置11の制御を行う機能も有している。 【0020】診断装置6は、点検箇所において検出されるセンサ信号を入力し、内蔵されたデータベースに追記するとともに、予め記憶された正常時でのセンサ信号との比較、時間的な変動状態の検出を行い、基準値に対して大きいか否かを判定し、大きい場合には異常が発生した可能性があると診て、詳細な点検方法(新たな点検箇所と点検手段)を立案し、ロボット統括制御装置5に点検要求を出力する。また、詳細な点検結果が得られると、異常の判定と異常箇所および異常原因の推定を行う。これらの処理結果は、逐次状態表示モニタ16を介してオペレータに伝えるものである。 ・・・ 【0022】図2(b)において、移動ロボット1は、点検用センサ9としてテレビカメラ27、マイクロフォン28、レーザ振動計29、赤外線カメラ30、臭いセンサ31を備えている。これらの点検用センサ9は上述のとおり、操作器17を用いて雲台8を遠隔操作することによって、任意の点検する向きへ向けることが可能となっている。」 (オ)「【0026】位置同定コントローラ23の構成については図3に示す。ジャイロ14と移動量検出用の回転角度センサ15のデータはロボット用センサ信号処理回路22を介して、ロボットの概略位置を検出するための概略位置検出回路34に入力される。この回路で得られた概略位置はセンサシミュレーション回路37に入力され、センサシミュレーション回路37内に格納されたプラントCADデータを用いてセンサシミュレーションされて、そのプラントCADデータ上の位置データとして画像メモリ36aに記憶される。 【0027】ここで、センサシミュレーションとは、移動ロボット1が点検走行する建屋内部の位置データから構成されるプラントCADデータを用いて、移動ロボット1の移動に基づくジャイロ14および回転角度センサ15の変化量を追跡し、プラントCADデータ上での現在位置を求める操作をいう。 【0028】一方、スキャン式レーザ距離計12,超音波センサ13a,13bによって測定される距離データは、実測された距離を示している。この距離データは座標変換回路35を用いてセンサ座標系からロボット座標系に座標変換される。ここで、センサ座標系とは、スキャン式レーザ距離計12あるいは超音波センサ13a,13bを中心とした相対的な極座標系をいい、ロボット座標系とは移動ロボット1を中心とした相対的な直交座標系をいう。このロボット座標系に変換されたデータは画像メモリ36b,36cに記憶される。 【0029】さらに、上記センサシミュレーション結果のデータと実測したセンサデータの分布の対応づけを画素相関回路38を用いて行い、差分を求める。また、位置同定回路39でその差分を上記概略位置検出回路34で得られた概略位置に加えることによってロボットの自己位置を決定する。」 (カ)「【0035】図2に戻って、走行コントローラ24は、目標位置までの軌道データと上記自己位置同定結果から、走行モードと移動ロボット1の車輪50に対するステアリング角度、走行速度を算出する演算回路(図示せず)と、算出した結果を走行用ドライバ33への出力と制御状態や自己位置情報を通信制御装置20へ出力する出力回路(図示せず)からなる。ここで、走行モードには、移動ロボット1の直進・後進や、その場旋回、平行移動などがある。」 (キ)「【0038】次に、本実施例の作用について説明する。移動ロボット1は図4に示す手順で点検箇所まで移動し、所定の点検を行う。この点検の手順について以下に説明する。 【0039】移動ロボット1を点検箇所まで移動させ、所定の点検を行わせるには、まず、移動ロボット1に対して目標位置、作業要求を入力する処理、すなわち点検ルートの決定(S1)が必要である。この処理は操作盤3の操作器17を用いてオペレータが入力する。入力された目標位置、作業要求はマンマシンインターフェイス用制御装置18を介してロボット統括制御装置5に入力される。ロボット統括制御装置5は、入力された目標位置、作業要求データからプラント機器配置用のプラントCADデータを用いて、目標位置までの経路および点検する時の雲台8の姿勢を求める。また、この処理はオペレータが操作器17から直接、目標位置までの経路および点検するときの雲台8の姿勢を指示することとしてもよい。 【0040】目標位置までの経路および点検するときの雲台8の姿勢が得られたら、目標位置までの経路生成結果を通信制御装置4,追尾装置付き無線伝送装置11,無線伝送装置10,通信制御装置20を介して移動ロボット1上の走行コントローラ24へ送信する。上記走行コントローラ24は、目標位置までの経路生成結果を受信すると移動ロボット1を駆動させて、経路に沿うように走行制御(移動速度制御およびステアリング角度制御)を行って、目標位置まで移動させる処理を行う。 【0041】この処理は、移動ロボット1上に搭載した走行コントローラ24,走行用ドライバ33,回転角度センサ15,モータ32,スキャン式レーザ距離計12を用いて目標位置まで図4に示されるA(S2~S5)の処理ルーチンを繰り返して行う。 【0042】以下に、Aの処理ルーチンの各々について説明する。自己位置同定処理(S2)は、前述のとおり、位置同定コントローラ23を用いて行われる。 【0043】目標軌道とのずれ算出(S3)は、走行コントローラ24で行う。走行コントローラ24は地上局にあるロボット統括制御装置5で算出した目標軌道データを通信制御装置4,追尾装置付き無線伝送装置11を介して入力するとともに、前記位置同定コントローラ23で算出する現在の移動ロボット1の位置および向きデータとからずれを算出する。 【0044】走行コントローラ24はずれの算出を行うと次に走行モードを決定、各車輪50のステアリング角度および走行速度算出処理(S4)を行う。地上局にあるロボット統括制御装置5から新たな指令や大幅なずれが発生しない限り現状の走行モードを維持する。ロボット統括制御装置5から新たな指令があると、その指令に基づいた走行モードに切り替える。また、大幅なずれが発生し、現状の走行モードでは対応できない、あるいはずれが増加していくような場合には、例えば一度移動ロボット1を停止させて、その場旋回、平行移動などのモードで目標軌道に戻し、再び元の走行モードに切り替えて走行を再開させるなどの操作も可能である。 【0045】走行モードが決定すると、各車輪50のステアリング角度および走行速度を決定する。ずれがない場合は、ずれ量と速度からどの地点で目標軌道に一致させるか経路を決め、一致させる地点までの各車輪50のステアリング角度および走行速度を算出し、そのデータを走行用ドライバ33に出力する。 【0046】ステアリング駆動制御、速度制御処理(S5)は、各車輪50にそれぞれ備えている走行用ドライバ33で行う。走行用ドライバ33は走行コントローラ24から送られてくる各車輪50のステアリング角度および走行速度データを入力し、各車輪50のモータ32がそのデータになるようサーボ制御する。 【0047】以上の処理ルーチンAを繰り返し行うことで移動ロボット1を目標軌道に沿って移動させ、目標位置に到達させる。この処理の状態は、常に走行コントローラ24で送信用データに変換し、通信制御装置20,無線伝送装置10,通信制御装置4を介してロボット統括制御装置5へ送信される。ロボット統括制御装置5は、移動ロボット1の処理状態データを受信し、移動ロボット1の制御状態を記録するとともに、オペレータにわかりやすい表示データに変換してマンマシンインターフェイス用制御装置18を介して状態表示モニタ16に表示する。 【0048】移動ロボット1が目標位置に到達すると、ロボット統括制御装置5は雲台8の姿勢を算出する(S6)。雲台コントローラ25は、この算出結果を受信し、雲台8を制御する(S7)。 【0049】ロボット統括制御装置5は雲台8の制御が終了したことを、状態データによって受信すると、点検制御を行う。点検制御は、点検用センサ信号処理装置21を介して行う。点検用センサ9で検出したデータは無線伝送装置10を介して操作室2側に伝送され、診断装置6へ入力される。診断装置6はセンサデータから機器の異常を診断し、異常がないことをロボット統括制御装置5へ伝える。異常の疑いがあると判断すると、詳細な点検計画を生成し、その結果をロボット統括制御装置5に伝送する。ロボット統括制御装置5は診断装置6からの診断処理結果に基づいて、次の点検箇所への移動計画を作成する(S8)。」 (ク)上記(エ)から、プラントCADデータは、その内容としてはポンプ、弁、熱交換器等の機器の配置、配管の設置位置等を示す座標が、機器、配管等の占める容積全体の部分で3次元的に与えられるものであることが理解できる。 (ケ)上記(オ)、(カ)、(キ)から、ロボット統括制御装置5が、入力された目標位置、作業要求データからプラント機器配置用のプラントCADデータを用いて、目標位置までの経路を求めるが、目標位置までの経路生成結果は、移動ロボット1上の走行コントローラ24へ送信され、同じく移動ロボット1上の位置同定コントローラ23が、プラントCADデータ上の移動ロボット1の位置を把握し、走行コントローラ24は、移動ロボット1を駆動させて、経路に沿うように走行制御(移動速度制御およびステアリング角度制御)を行って、目標位置まで移動させる処理を行うもの、すなわち、目標位置までの経路の生成は、ロボット統括制御装置5が行うが、経路が生成された後の走行の制御自体は移動ロボット1の走行コントローラ24が自律的に行うものであることが理解できる。 そうすると、上記(ア)~(キ)の記載、当該記載から理解される(ク)、(ケ)の事項および図1~4を参酌すれば、甲1には、 「プラント建屋内の機器配置を示すプラントCADデータと、 周囲構造物との距離を計測する距離計測手段であるスキャン式レーザ距離計および超音波センサと、 プラントCADデータを用いて、移動ロボットの移動に基づくジャイロおよび回転角度センサの変化量を追跡し、プラントCADデータ上での現在位置の概略位置をシミュレーションして求めるとともに、スキャン式レーザ距離計、超音波センサに基づく実測したセンサデータの分布との相関から求めた差分を概略位置に加えることで自己位置を決定する位置同定コントローラと、 目標位置までの軌道データと自己位置同定結果から、前記プラント建屋内の移動を制御する走行コントローラと、を有し、 プラントCADデータは、機器の配置、配管の設置位置等を示す座標が三次元的に与えられるものであり、 プラント建屋内で直進・後進やその場旋回、平行移動などをしつつ、該プラント建屋内の点検作業を行う移動ロボットであって、 移動経路の点検箇所において、テレビカメラ、マイクロフォン、レーザ振動計、赤外線カメラ、臭いセンサの点検用センサの、センサ信号を検出し、 移動ロボットとは別の操作室に診断装置を有し、点検箇所において検出されるセンサ信号をデータベースに追記するとともに、基準値に対して大きいか否かを判定し、大きい場合には、異常が発生した可能性があると診て、詳細な点検結果から、異常の判定と異常箇所および異常原因の推定を行い、処理結果を逐次状態表示モニタを介してオペレータに伝える、移動ロボット」(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 2.甲2の記載事項 甲2には、「移動装置及び移動装置の位置認識方法」に関し、図1~13とともに以下の記載がある (ア)「【0001】 本発明は、移動装置に装着された複数のセンサを通じて検出された情報を用いて、移動装置自身の位置を推定する位置認識方法に関する。」 (イ)「【0037】 格納部400は、歩行ロボット10が位置認識を行うために必要とする事前情報、及び位置認識の結果を格納するためのもので、格納部400には、リンク(関節部と関節部との間を連結する機構構造)の機構情報(長さ情報)、歩行ロボット10の歩行過程で複数のアルゴリズム(複数のフィルタ)を用いて算出される歩行ロボット10の位置認識結果(標識の位置情報、歩行ロボットの位置/姿勢情報)、及び複数のアルゴリズムのうち、特にSLAMアルゴリズムを用いて作成される移動空間(作業空間)に対するローカルマップなどが格納される。」 (ウ)「【0055】 図6を参照して、本発明の実施例に係るノード認識方法をより具体的に説明すると、次の通りである。図6は、本発明の実施例に係るノード設定状態を示した図である。ノード認識は、現在の映像から抽出した特徴点情報を用いて、格納部400に格納されているローカルマップ上の特徴点情報と比較することを意味する。このとき、対応する特徴点の数が多いノードを決定して、歩行ロボット10の現在の位置に隣接したノードを判断する。 【0056】 本発明の実施例では、融合フィルタ360に絶対位置認識情報を提供するために、図6のように歩行ロボット10の移動空間上の一定地点をノードA~Eに設定する。ノードA~Eは、廊下の交差点やコーナーのような構造的特徴を有する地点や、多様な視覚情報を含む視覚的特徴を有する地点、または歩行ロボット10の移動時に正確な位置情報を必要とする地点などに指定できる。与えられた建物の設計図あるいは平面図からワールド原点座標系に対するノード座標系の位置を定めることができ、これから絶対位置情報が含まれたノードで構成される位相学的地図を構築できる。決定されたそれぞれのノードA~Eにおいて、ノード認識及びマッチングのために、視覚センサベースのSLAMアルゴリズムを用いて映像情報から抽出した特徴点の3次元位置と、歩行ロボット10の3次元位置/姿勢情報とを同時に推定する。歩行ロボット10の移動空間上のどの一点をノード原点O1とし、このノード原点O1を中心にカメラ120を移動させて、カメラ120を通じて確保される映像情報から位置認識に必要な特徴点を抽出する。抽出された特徴点情報は、第5ローカルフィルタ350の状態変数として登録され、確率的なフィルタ技法を用いて持続的に特徴点の位置及びカメラの位置/姿勢情報を推定する。このような視覚センサベースのSLAMアルゴリズムの結果物として得たノードA~Eの周辺の特徴点で構成されたローカルマップは格納部400に格納される。仮に3次元点群データ(3D Point Cloud Data)を得ることができるカメラ(例えば、ステレオカメラ又はTOFカメラなど)を使用する場合には、特徴点及び点群データで構成される3次元地図をノード情報として追加的に活用できる。」 3.甲3の記載事項 甲3には、「監視装置、監視システム及び監視方法」に関し、図1~24とともに以下の記載がある (ア)「【0001】 本発明は、建物内の設備要素を監視する技術に関する。 【背景技術】 【0002】 監視装置を用いて建物内の設備要素を監視するにあたっては、建物内における監視装置の自己位置を推定する必要がある。 【0003】 建物内では、GPS(全地球測位システム)を利用することができないので、これに代わる自己位置推定方法が必要であり、そのような方法の一つとして、非特許文献1に開示される自立走行ロボットのための自己位置推定方法を利用することができる。 【0004】 この方法によれば、特許文献1に開示されるようなレーザレンジファインダを用いて周囲の物体の形状や配置を計測し、計測結果と予め用意された地図とを照合(マッチング)することによって、自己位置を推定することができる。このような自己位置推定方法はスキャンマッチングと呼ばれる。」 (イ)「【0008】 本発明の目的は、建物内の設備要素を監視する監視装置において、監視中の設備要素が何であるかを特定できるようにすることである。」 (ウ)「【0018】 監視装置100は、本体101、センサ102~105及び無線通信装置106を有する。監視作業中は、作業者が本体101を把持してセンサ102~105を前方に向け、センサ102~105によって監視装置100の周囲を計測する。ここで、「建物」とは電力・配電設備、化学プラント等の建屋であり、「設備要素」とは、建物内部に設置される配管、ポンプ、バルブ等の要素である。 【0019】 センサ102~105は、本体101の正面に取り付けられている。センサ102~105は、レーザレンジファインダ(「スキャナ式レンジセンサ」ともいう。)102、熱赤外線カメラ103、可視光カメラ104及び加速度センサ105を含む。 【0020】 レーザレンジファインダ102は、レーザ照射部と受光部を有する。レーザレンジファインダ102は、回転式の反射鏡等を用いてレーザ照射部からのレーザビームを放射状に放射し、レーザビームが直近の物体の表面で反射して受光部まで戻ってくるまでの時間を計測することで、直近の物体までの距離を計測する。様々な方向について計測を行うことによって、レーザレンジファインダ102は監視装置100の周囲の三次元形状を計測する。ここで「周囲」とは、監視装置100を中心とした所定半径の領域(例えば、レーザレンジファインダ102によって距離を計測可能な範囲)を意味する。」 (エ)「【0042】 自己位置推定用地図411は、壁、柱等の建物内の構造物(設置誤差が少なく、位置及び向きが不変の固定物)の形状及び位置を含む地図である。自己位置推定用地図411は、建物の設計データである構造物CAD(Computer Aided Design)421で管理されている壁、柱等のデータを変換処理422によって自己位置推定に適した形式に変換して作成される。 【0043】 自己位置推定に適した形式とは、レーザレンジファインダ102によって計測される三次元形状との照合に適した形式である。例えば、自己位置推定用地図411は、建物内の構造物の表面形状に関するデータのみを含む。」 (オ)「【0070】 自己位置推定部401は、監視装置100の自己位置(「位置」には監視装置100の「向き」が含まれる、以下同じ。)を複数の計測結果に基づき推定する。具体的には、加速度センサ105によって計測される加速度を2回積分して第1の予測自己位置を算出するとともに、レーザレンジファインダ102によって計測される周囲の三次元形状を自己位置推定要地図401と照合して第2の予測自己位置を算出する。そして、自己位置推定部401は、統計的な誤差に基づくばらつきを含んだこれら二つの予測自己位置をカルマンフィルタを用いて統合し、最も確からしい自己位置を推定する。 ・・・ 【0072】 設備要素特定部402は、自己位置推定部401によって推定された自己位置とレーザレンジファインダ102による三次元計測の結果とを用いて、監視中の設備要素の設備ID及び位置を特定する。 【0073】 図5は、設備要素特定部402の詳細を示す機能ブロック図である。 【0074】 設備要素特定部402は、周辺設備要素抽出部501、設置誤差分布算出部502、差分抽出部503、設備要素候補抽出部504、一致度評価部505及び設備要素特定部506を含む。 【0075】 周辺設備要素抽出部501は、自己位置推定部401によって推定された自己位置に基づき、設備要素照合用地図413から自己位置の周辺の設備要素の形状タイプ及び位置・大きさ、すなわち形状及び位置を検索し、周辺設備要素として抽出する。」 4.甲4の記載事項 甲4には、「放射線検出装置および放射線検出方法」に関し、図1~22とともに以下の記載がある (ア)「【0001】 本発明は、放射線検出装置に関し、特に、局所的に放射線量が多くなっているホットスポットを探索するのに適した放射線検出装置に関するものである。」 (イ)「【0103】 ホットスポット判定部19は、算出された線量レベルが所定の閾値以上である場合に、カメラ20およびGPS22にその旨の通知をする。カメラ20は、ホットスポット判定部19から線量レベルが所定の閾値以上であるとの通知を受けたら、撮影を行なって、撮影画像をホットスポット判定部19に返す。GPS22は、ホットスポット判定部19から線量レベルが所定の閾値以上であるとの通知を受けたら、そのときの位置情報を取得して、ホットスポット判定部19に返す。 【0104】 ホットスポット判定部19は、線量レベルが所定の閾値以上である場合に、カメラ20から撮影画像を取得し、GPS22から位置情報を取得すると、表示部17に図18に示す確認画面を表示させる。この確認画面では、GPS22にて取得された位置情報に基づいて、線量レベルが所定の閾値以上となった場所が地図上に示され、カメラ20から取得された撮影画像が表示される。また、図18に示すように、確認画面には「新たにホットスポットが見つかりました」というメッセージとともに、その場所を新たなホットスポットとして登録することを指示する「新規登録」ボタンと、その場所をホットスポットとして登録しないことを指示する「キャンセル」ボタンが表示される。」 第6 対比・判断 1.本件訂正発明1について 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「プラントCADデータ」は、プラント建屋内の機器配置を示し、機器の配置、配管の設置位置等を示す座標が三次元的に与えられるものであって、これに基づき自己位置を決定するものであるところ、本件訂正発明1の「三次元マップ」とは、「プラント設備領域を含む領域のマップ」である限りで一致する。 甲1発明の「スキャン式レーザ距離計および超音波センサ」と、本件訂正発明1の「周囲データ取得センサ」とは、「周囲のデータを取得可能な周囲データを取得するセンサ」である限りで一致する。 甲1発明の「位置同定コントローラ」と、本件訂正発明1の「現在位置決定手段」とは、「マップ上における現在位置を決定する手段」である限りで一致する。 甲1発明の「走行コントローラ」は、「目標位置までの軌道データと自己位置同定結果から、前記プラント建屋内の移動を制御する」ものであるから、本件訂正発明1の「予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部20」に相当する。 甲1発明の「テレビカメラ、マイクロフォン、レーザ振動計、赤外線カメラ、臭いセンサの点検用センサ」は、本件訂正発明1の「周囲の雰囲気の各種物理量を検知する検知手段」に相当する。 甲1発明の「移動ロボット」は、「プラント建屋内で直進・後進やその場旋回、平行移動など」をするものであるから、前後左右及び高さ方向に移動することは自明であり、プラント建屋内の点検作業を行うから、本件訂正発明1の「パトロール作業用ロボット」に相当する。 そうすると、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。 一致点:プラント設備領域を含む領域のマップと、 周囲のデータを取得可能な周囲データを取得するセンサと、 前記マップ上における現在位置を決定する手段と、 予め設定された移動経路と決定された前記現在位置とに基づき、前記プラント設備領域内の移動を制御する制御部と、を有し、 前記プラント設備領域内において前後左右及び高さ方向に移動しつつ該プラント設備領域のパトロール作業を行うパトロール作業用ロボットであって、 前記移動中に前記周囲の雰囲気の各種物理量を検知する検知手段と、を有するパトロール作業用ロボット。 相違点1:本件訂正発明1の現在位置決定手段は、周囲データ取得センサにより得られた立体的形状データと三次元マップのデータとを対比して両データの一致点を見出し、前記三次元マップ上における現在位置を決定するのに対し、甲1発明の位置同定コントローラは、プラントCADデータを用いて、移動ロボットの移動に基づくジャイロおよび回転角度センサの変化量を追跡し、プラントCADデータ上での現在位置の概略位置をシミュレーションして求めるとともに、スキャン式レーザ距離計、超音波センサに基づく実測したセンサデータの分布との相関から求めた差分を概略位置に加えることで自己位置を決定するものである点。 相違点2:本件訂正発明1の三次元マップは、三次元の位置情報のプロットの集合体からなる点群マップであるのに対し、甲1発明のプラントCADデータは、機器の配置、配管の設置位置等を示す座標が三次元的に与えられるものである点。 相違点3:本件訂正発明1のパトロール作業用ロボットは記録手段を有し、周囲の雰囲気の各種物理量が所定基準値範囲を外れた場合に三次元マップ上に前記物理量の情報を現在位置決定手段により決定された現在位置とともに記録するのに対し、甲1発明は、移動ロボットとは別の操作室に診断装置を有し、点検箇所において検出されるセンサ信号をデータベースに追記するとともに、基準値に対して大きいか否かを判定し、大きい場合には、異常が発生した可能性があると診て、詳細な点検結果から、異常の判定と異常箇所および異常原因の推定を行い、処理結果を逐次状態表示モニタを介してオペレータに伝えるものである点。 相違点4:本件訂正発明1の三次元マップは、「制御部120及び三次元データを記憶する記憶部110を有するサーバ102と、ネットワーク104を介して前記サーバ102と通信可能であって表示部132を有する端末装置103と、を備えたプラント設備の三次元画像表示システム100であって、前記記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段を有するとともに、該複数の格納手段に格納された各三次元データを関連付けて記憶しており、前記複数の格納手段は、所定のプラント設備と該プラント設備の周辺領域との計測データを含む、航空レーザ計測による航空三次元データを格納する第1格納手段111と、少なくとも前記航空三次元データに含まれる、前記プラント設備を含む地上領域を計測した、モービルマッピングシステムによる広域地上三次元データを格納する第2格納手段112と、少なくとも前記プラント設備の内部を計測した、非移動式の地上型レーザ計測による狭域地上三次元データを格納する第3格納手段113とを含み、前記制御部120は、前記記憶部110に格納された三次元データに関する前記端末装置103からの位置指定及び尺度指定に基づいて、前記複数の格納手段から、前記端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出する格納部選択手段125と、該格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって指定された尺度に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を前記表示部132に表示させるように前記端末装置103へ送信する階層マップ画像表示手段126とを備えたプラント設備の三次元画像表示システム100により表示される三次元マップ画像を用いる」ものであるのに対し、甲1発明のプラントCADデータは、そのような構成を有するものではない点。 事案に鑑み、上記相違点4から検討する。 相違点4に係る、三次元マップとして、「制御部120及び三次元データを記憶する記憶部110を有するサーバ102と、ネットワーク104を介して前記サーバ102と通信可能であって表示部132を有する端末装置103と、を備えたプラント設備の三次元画像表示システム100であって、前記記憶部110は、三次元データを格納する複数の格納手段を有するとともに、該複数の格納手段に格納された各三次元データを関連付けて記憶しており、前記複数の格納手段は、所定のプラント設備と該プラント設備の周辺領域との計測データを含む、航空レーザ計測による航空三次元データを格納する第1格納手段111と、少なくとも前記航空三次元データに含まれる、前記プラント設備を含む地上領域を計測した、モービルマッピングシステムによる広域地上三次元データを格納する第2格納手段112と、少なくとも前記プラント設備の内部を計測した、非移動式の地上型レーザ計測による狭域地上三次元データを格納する第3格納手段113とを含み、前記制御部120は、前記記憶部110に格納された三次元データに関する前記端末装置103からの位置指定及び尺度指定に基づいて、前記複数の格納手段から、前記端末装置103によって指定された位置に関する三次元データを有する格納手段を抽出する格納部選択手段125と、該格納部選択手段125によって抽出された格納手段の三次元データから、指定された位置を含む領域であって指定された尺度に適した三次元マップ画像を生成し、該三次元マップ画像を前記表示部132に表示させるように前記端末装置103へ送信する階層マップ画像表示手段126とを備えたプラント設備の三次元画像表示システム100により表示される三次元マップ画像を用いる」ことは、甲1ないし甲4のいずれにも記載も示唆もされておらず、甲1発明について、相違点4に係る構成を採用することは、当業者が容易に想定し得た程度のことということはできない。 したがって、他の相違点1~3について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明および甲2ないし甲4に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到することができたものということはできない。 2.本件訂正発明2、3について 本件訂正発明2及び本件訂正発明3は、本件訂正発明1を引用するものであって、本件訂正発明1のすべての発明特定事項を含むものであるところ、上記1.のとおり、本件訂正発明1が甲1発明および甲2ないし甲4に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到することができたものということはできないから、本件訂正発明2及び本件訂正発明3についても同様に、甲1発明および甲2ないし甲4に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到することができたものということはできない。 第7 異議申立人の意見書における主張について 異議申立人は、令和2年4月28日提出の意見書において、本件訂正は認められるべきでないこと及び本件訂正発明1に関し、 ア 本件訂正発明1は、前段の構成(訂正前の本件発明1の構成)と後段の構成(訂正事項1により加わった構成)とでは、作業用ロボットの移動領域や必要とするデータの種類が相違するため、前段の構成と後段の構成との関係が明瞭でなく、課題を解決するための構成が不明瞭となっている イ 訂正事項1では符号が多くの構成要件に付与されたところ、このような記載は、第三者に発明の詳細な説明や図面との照合を必要以上に強いるものであり、本件訂正発明1の理解や権利範囲の判断を著しく妨げるものである ウ 訂正事項1の「三次元マップ画像」は、「航空レーザ計測による航空三次元データ」等が必要であり、そのような構成について記載も示唆もないため発明特定事項を減縮したものではなく、また、仮に訂正事項1が特許請求の範囲の減縮に相当したとしても、訂正事項1の「三次元画像表示システム」に関する構成は、航空三次元データ等を用いてプラント全体の画像表示を行うもので、本件発明1に係る「パトロール作業ロボット」の技術的範囲を拡張、変更している旨主張をしている。 しかしながら、本件訂正が認められることは、上記第2に詳述したとおりである。 また、上記アの主張については、訂正前の本件発明1は、三次元画像表示システムによって得られる三次元マップも内在していたものであるから、本件訂正発明1の記載についても、何ら矛盾はなく、発明が不明確ということはできない。 上記イの主張について、請求項の内容を理解するために必要があるときは、図面において使用した符号を用いることが許容されているところ、これによって、第三者の本件訂正発明1の理解を過度に妨げるものではなく、むしろ理解を容易にするものであるといえる。 上記ウの主張について、上記第2の2.(1)で検討したとおり、訂正事項1に係る発明特定事項は、本件発明1が内在していたものであるから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 したがって、異議申立人の上記ア、イ、ウの主張はいずれも採用できない。 第8 むすび 以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700665

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  • 2020-700898異議申立 / 2021-08-04 / 訂正認容回転電機及び回転電機の異常検出方法
    同じ当事者: 桜井 裕
  • 2019-700499異議申立 / 2020-12-25 / 訂正認容ホウ素中性子捕捉療法システム
    同じ当事者: 桜井 裕
  • 2018-700894異議申立 / 2019-05-28 / 訂正認容作業計画作成装置
    同じ当事者: 桜井 裕
同じ論点・分野の審決(審決分類)149件(121・G05D、851・G05D、853・G05D)
  • 2020-700120異議申立 / 2022-10-06 / 訂正認容機械学習装置、補正パラメータ調整装置および機械学習方法
    共通の審決分類: 121・G05D、851・G05D、853・G05D
  • 2023-701184異議申立 / 2025-05-15 / 訂正認容運転経路生成装置、運転経路生成方法、運転経路生成プログラム、およびドローン
    共通の審決分類: 121・G05D
  • 2023-700424異議申立 / 2025-02-12 / 訂正認容移動体通行管理システム、及び移動体通行管理方法
    共通の審決分類: 121・G05D
  • 2023-700435異議申立 / 2024-12-05 / 訂正認容演算処理装置、無線操縦飛行機
    共通の審決分類: 121・G05D
  • 2023-701093異議申立 / 2024-09-18 / 請求成立(取消)経路決定装置、ロボット及び経路決定方法
    共通の審決分類: 121・G05D

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