特許異議申立
2019-700517
積層体、仮接着用組成物および仮接着膜
- 審判番号
- 2019-700517
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-508229
- 登録番号
- 特許第6450452号(P6450452)
- 請求日
- 2019年06月28日
- 審決日
- 2021年02月17日
- 公報発行日
- 2021年05月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】富士フイルム株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人特許事務所サイクス
- 【異議申立人】中川 賢治
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 森藤 淳志
- 審判官 石井 孝明
- 分類
- P1651.16 -YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第1項、特許法第120条の8
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6450452号発明「積層体、仮接着用組成物および仮接着膜」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6450452号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕、〔17~19〕、〔20~22〕について訂正することを認める。
特許第6450452号の請求項1及び9~22に係る特許を維持する。
特許第6450452号の請求項2~8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6450452号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~22に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)3月14日(優先権主張 平成27年3月23日、平成28年2月29日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月14日にその特許権の設定登録がされ、平成31年1月9日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和元年 6月28日:特許異議申立人(中川賢治)による請求項1~22
に係る特許に対する特許異議の申立て
令和元年 9月 3日付け:取消理由通知書
令和元年10月31日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和元年12月25日:特許異議申立人による意見書の提出
令和2年 2月28日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和2年 4月13日:特許権者代理人との面接
令和2年 5月 1日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
(これによる訂正を「本件訂正」という。)
なお、上記令和元年10月31日になされた訂正請求は、本件訂正請求があったので特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
令和2年 7月 1日付け:訂正拒絶理由通知
令和2年 7月28日:特許権者による上申書の提出
(メール応対:新型コロナウイルス感染症の影響
による手続の指定期間延長願い)
令和2年 9月 3日:特許権者による意見書及び手続補正書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
令和2年9月3日提出の手続補正書により補正された本件訂正による訂正の内容は、訂正箇所を下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において「前記仮接着膜は、フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物を含み、」という発明特定事項を付加する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において「前記仮接着膜の、昇温速度5℃/分で250℃まで昇温したときのJIS K 6862:1984に準拠した、溶融粘度が、10,000以上60,000Pa・s以下であり、」という発明特定事項を付加する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において「0.33N/mm以下である」と記載されているのを、「0.07N/mm以上0.33N/mm以下である」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1において「前記仮接着膜の表面自由エネルギーが30mJ/m2以下であり、」という発明特定事項を付加する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1において「前記仮接着膜の温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠したせん断貯蔵弾性率G’が0.1~1MPaであり、」という発明特定事項を付加する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1において「前記仮接着膜の温度25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’が150~900MPaであり、」という発明特定事項を付加する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項1において「前記仮接着膜の温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠したせん断貯蔵弾性率G’と、前記仮接着膜の25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’との比E’/G’が、E’/G’≦3500を満たし、」という発明特定事項を付加する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項1において「前記仮接着膜の温度200℃、荷重10kgにおけるJIS K 7210:1999に準拠した、メルトフローレートが20.0g/10分以下であり、」という発明特定事項を付加する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項1において「前記仮接着膜の温度60℃の時の塑性変形開始圧力P60が0.2MPa以上であり、」という発明特定事項を付加する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項1において「但し、表面自由エネルギーとは、仮接着膜に対する水、エチレングリコールおよびジヨードメタンの接触角に基づき、拡張Fowkes式から得られる値をいう;」という発明特定事項を付加する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項1において「但し、塑性変形開始圧力はシリコンウェハ上に設けた厚さ40μmの仮接着膜を60℃に加熱しながら、5mm×10mmのシリコンからなるチップを仮接着膜の膜面に対し垂直な方向から5秒間押し付け、チップを除去した後、光学顕微鏡でチップが接触していた箇所を観察し、押し付けた箇所の膜厚が10μm以上低下していた時の圧力をいう。」という発明特定事項を付加する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項2~8を削除する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項9における「請求項1~8のいずれか1項」の記載を「請求項1」に訂正する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項10における「請求項1~9のいずれか1項」の記載を「請求項1または9」に訂正する。
(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項11における「請求項1~9のいずれか1項」の記載を「請求項1または9」に訂正する。
(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項12における「請求項1~11のいずれか1項」の記載を「請求項1および9~11のいずれか1項」に訂正する。
(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項13における「請求項1~11のいずれか1項」の記載を「請求項1および9~11のいずれか1項」に訂正する。
(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項14における「請求項1~11のいずれか1項」の記載を「請求項1および9~11のいずれか1項」に訂正する。
(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項15における「請求項1~14のいずれか」の記載を「請求項1および9~14のいずれか」に訂正する。
(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項16における「請求項1~15のいずれか1項」の記載を「請求項1および9~15のいずれか1項」に訂正する。
(21)訂正事項21
特許請求の範囲の請求項17において「0.33N/mm以下である」と記載されているのを、「0.07N/mm以上0.33N/mm以下であり、」に訂正する。
(22)訂正事項22
特許請求の範囲の請求項17において「前記仮接着膜は、フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物を含み、」という発明特定事項を付加する。
(23)訂正事項23
特許請求の範囲の請求項17において「前記仮接着膜の、昇温速度5℃/分で250℃まで昇温したときの、JIS K 6862:1984に準拠した、溶融粘度が、10,000以上60,000Pa・s以下である」という発明特定事項を付加する。
(24)訂正事項24
特許請求の範囲の請求項17において「前記仮接着膜は、25℃の時の、JIS K 7161:1994に準拠した、引張弾性率Eが25~2000MPaであり、」という発明特定事項を付加する。
(25)訂正事項25
特許請求の範囲の請求項17において「前記仮接着膜の表面自由エネルギーが30mJ/m2以下であり、前記仮接着膜の温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠したせん断貯蔵弾性率G’が0.1~1MPaであり、」という発明特定事項を付加する。
(26)訂正事項26
特許請求の範囲の請求項17において「前記仮接着膜の温度25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’が150~900MPaであり、」という発明特定事項を付加する。
(27)訂正事項27
特許請求の範囲の請求項17において「前記仮接着膜の温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠したせん断貯蔵弾性率G’と、前記仮接着膜の25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’との比E’/G’が、E’/G’≦3500を満たし、」という発明特定事項を付加する。
(28)訂正事項28
特許請求の範囲の請求項17において「前記仮接着膜の温度200℃、荷重10kgにおけるJIS K 7210:1999に準拠した、メルトフローレートが20.0g/10分以下であり、」という発明特定事項を付加する。
(29)訂正事項29
特許請求の範囲の請求項17において「前記仮接着膜の温度60℃の時の塑性変形開始圧力P60が0.2MPa以上である、」という発明特定事項を付加する。
(30)訂正事項30
特許請求の範囲の請求項17において「表面自由エネルギーとは、仮接着膜に対する水、エチレングリコールおよびジヨードメタンの接触角に基づき、拡張Fowkes式から得られる値をいう」という発明特定事項を付加する。
(31)訂正事項31
特許請求の範囲の請求項17において「塑性変形開始圧力はシリコンウェハ上に設けた厚さ40μmの仮接着膜を60℃に加熱しながら、5mm×10mmのシリコンからなるチップを仮接着膜の膜面に対し垂直な方向から5秒間押し付け、チップを除去した後、光学顕微鏡でチップが接触していた箇所を観察し、押し付けた箇所の膜厚が10μm以上低下していた時の圧力をいう」という発明特定事項を付加する。
(32)訂正事項32
特許請求の範囲の請求項20において「溶融粘度が10,000Pa・s以上であり、」と記載されているのを、「溶融粘度が10,000Pa・s以上60,000Pa・s以下であり、」に訂正する。
(33)訂正事項33
特許請求の範囲の請求項20において「0.33N/mm以下である」と記載されているのを、「0.07N/mm以上0.33N/mm以下であり、」に訂正する。
(34)訂正事項34
特許請求の範囲の請求項20において「フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物を含む、」という発明特定事項を付加する。
(35)訂正事項35
訂正前の【表4】から実施例18を削除する。
(36)訂正事項36
訂正前の段落【0140】における「<<仮接着用組成物の組成(実施例1~14、17~18、比較例6~9)>>」の記載を「<<仮接着用組成物の組成(実施例1~14、17、比較例6~9)>>」に訂正する。
(37)訂正事項37
訂正前の【表1】から実施例18を削除する。
(38)訂正事項38
訂正前の段落【0155】における「<積層体の形成(実施例1~16、18~21、比較例1~11)>」の記載を「<積層体の形成(実施例1~16、19~21、比較例1~11)>」に訂正する。
(39)訂正事項39
訂正前の段落【0158】を削除する。
(40)訂正事項40
訂正前の段落【0141】における「・樹脂P-6:表1に記載の質量部」の記載を「・樹脂P-5:表1に記載の質量部」に訂正する。
(41)訂正事項41
訂正前の段落【0142】における「・樹脂P-7:表1に記載の質量部」の記載を「・樹脂P-6:表1に記載の質量部」に訂正する。
(42)訂正事項42
訂正前の段落【0146】を削除する。
(43)訂正事項43
訂正前の段落【0147】を削除する。
(44)訂正事項44
訂正前の段落【0148】における「・樹脂P-6:表1に記載の質量部」の記載を「・樹脂P-5:表1に記載の質量部」に訂正する。
(45)訂正事項45
訂正前の段落【0149】における「・樹脂P-6:表1に記載の質量部」の記載を「・樹脂P-5:表1に記載の質量部」に訂正する。
(46)訂正事項46
訂正前の段落【0150】における「・樹脂P-7:表1に記載の質量部」の記載を「・樹脂P-6:表1に記載の質量部」に訂正する。
(47)訂正事項47
訂正前の段落【0151】における「・樹脂P-7:表1に記載の質量部」の記載を「・樹脂P-6:表1に記載の質量部」に訂正する。
(48)訂正事項48
訂正前の段落【0152】における「・樹脂P-8:表1に記載の質量部」の記載を「・樹脂P-7:表1に記載の質量部」に訂正する。
2.一群の請求項
訂正前の請求項1~16は、訂正前の請求項2~16が、本件訂正の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項である。
また、訂正前の請求項17~19は、訂正前の請求項18、19が、本件訂正の対象である請求項17の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項である。
さらに、訂正前の請求項20~22は、請求項21、22が、本件訂正の対象である請求項20の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項である。
そして、本件訂正は、前記一群の請求項に係る請求項をすべて含む請求項1~22について請求するものであるから、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにするものである。
3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)本件訂正前の請求項1~16に係る一群の請求項に対する訂正(訂正事項1~20)について
ア.訂正事項1について
上記訂正事項1は、訂正前の請求項1の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜は、フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物を含み、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項1は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0026】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
イ.訂正事項2について
上記訂正事項2は、訂正前の請求項1の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の、昇温速度5℃/分で250℃まで昇温したときのJIS K 6862:1984に準拠した、溶融粘度が、10,000以上60,000Pa・s以下であり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項2は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0019】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ.訂正事項3について
上記訂正事項3は、訂正前の請求項1の「前記引き上げる際にかかる力を、フォースゲージを用いて測定したときの力」を、「0.07N/mm以上」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項3は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項3は、願書に添付した明細書の段落【0117】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
エ.訂正事項4、10について
上記訂正事項4は、訂正前の請求項1の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の表面自由エネルギーが30mJ/m2以下であり、」と限定するものであり、上記訂正事項10は、該「表面自由エネルギー」について、「但し、表面自由エネルギーとは、仮接着膜に対する水、エチレングリコールおよびジヨードメタンの接触角に基づき、拡張Fowkes式から得られる値をいう;」と限定するものであるから、それぞれ、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項4及び10は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項4及び10は、願書に添付した明細書の段落【0015】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
オ.訂正事項5について
上記訂正事項5は、訂正前の請求項1の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠したせん断貯蔵弾性率G’が0.1~1MPaであり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項5は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項5は、願書に添付した明細書の段落【0016】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
カ.訂正事項6について
上記訂正事項6は、訂正前の請求項1の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の温度25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’が150~900MPaであり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項6は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項6は、願書に添付した明細書の段落【0017】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
キ.訂正事項7について
上記訂正事項7は、訂正前の請求項1の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠したせん断貯蔵弾性率G’と、前記仮接着膜の25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’との比E’/G’が、E’/G’≦3500を満たし、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項7は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項7は、願書に添付した明細書の段落【0018】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ク.訂正事項8について
上記訂正事項8は、訂正前の請求項1の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の温度200℃、荷重10kgにおけるJIS K 7210:1999に準拠した、メルトフローレートが20.0g/10分以下であり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項8は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項8は、願書に添付した明細書の段落【0020】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ケ.訂正事項9、11について
上記訂正事項9は、訂正前の請求項1の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の温度60℃の時の塑性変形開始圧力P60が0.2MPa以上であり、」と限定するものであり、上記訂正事項11は、該「塑性変形開始圧力」について、「但し、塑性変形開始圧力はシリコンウェハ上に設けた厚さ40μmの仮接着膜を60℃に加熱しながら、5mm×10mmのシリコンからなるチップを仮接着膜の膜面に対し垂直な方向から5秒間押し付け、チップを除去した後、光学顕微鏡でチップが接触していた箇所を観察し、押し付けた箇所の膜厚が10μm以上低下していた時の圧力をいう。」と限定するものであるから、それぞれ、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項9及び11は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項9及び11は、願書に添付した明細書の段落【0021】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
コ.訂正事項12について
上記訂正事項12は、請求項2~8を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項12は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項12は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
サ.訂正事項13について
上記訂正事項13は、上記訂正事項12のとおり請求項2~8を削除したことに伴い、訂正前の請求項9が「請求項1~8のいずれか1項」を引用するものを、「請求項1」を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当するものである。
また、上記訂正事項13は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項13は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
シ.訂正事項14について
上記訂正事項14は、上記訂正事項12のとおり請求項2~8を削除したことに伴い、訂正前の請求項10が「請求項1~9のいずれか1項」を引用するものを、「請求項1または9」を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当するものである。
また、上記訂正事項14は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項14は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ス.訂正事項15について
上記訂正事項15は、上記訂正事項12のとおり請求項2~8を削除したことに伴い、訂正前の請求項11が「請求項1~9のいずれか1項」を引用するものを、「請求項1または9」を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当するものである。
また、上記訂正事項15は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項15は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
セ.訂正事項16について
上記訂正事項16は、上記訂正事項12のとおり請求項2~8を削除したことに伴い、訂正前の請求項12が「請求項1~11のいずれか1項」を引用するものを、「請求項1及び9~11のいずれか1項」を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当するものである。
また、上記訂正事項16は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項16は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ソ.訂正事項17について
上記訂正事項17は、上記訂正事項12のとおり請求項2~8を削除したことに伴い、訂正前の請求項13が「請求項1~11のいずれか1項」を引用するものを、「請求項1及び9~11のいずれか1項」を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当するものである。
また、上記訂正事項17は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項17は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
タ.訂正事項18について
上記訂正事項18は、上記訂正事項12のとおり請求項2~8を削除したことに伴い、訂正前の請求項14が「請求項1~11のいずれか1項」を引用するものを、「請求項1及び9~11のいずれか1項」を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当するものである。
また、上記訂正事項18は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項18は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
チ.訂正事項19について
上記訂正事項19は、上記訂正事項12のとおり請求項2~8を削除したことに伴い、訂正前の請求項15が「請求項1~14のいずれか1項」を引用するものを、「請求項1及び9~14のいずれか1項」を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当するものである。
また、上記訂正事項19は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項19は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ツ.訂正事項20について
上記訂正事項20は、上記訂正事項12のとおり請求項2~8を削除したことに伴い、訂正前の請求項16が「請求項1~15のいずれか1項」を引用するものを、「請求項1及び9~15のいずれか1項」を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当するものである。
また、上記訂正事項20は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項20は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
テ.小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~12は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、訂正事項13~20は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。
したがって、訂正後の請求項1~16に係る一群の請求項に係る訂正(訂正事項1~20)を認める。
(2)本件訂正前の請求項17~19に係る一群の請求項に対する訂正(訂正事項21~31)について
ア.訂正事項21について
上記訂正事項21は、訂正前の請求項17の「前記引き上げる際にかかる力を、フォースゲージを用いて測定したときの力」を、「0.07N/mm以上」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項21は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項21は、願書に添付した明細書の段落【0117】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
イ.訂正事項22について
上記訂正事項22は、訂正前の請求項17の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜は、フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物を含み、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項22は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項22は、願書に添付した明細書の段落【0026】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ.訂正事項23について
上記訂正事項23は、訂正前の請求項17の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の、昇温速度5℃/分で250℃まで昇温したときの、JIS K 6862:1984に準拠した、溶融粘度が、10,000以上60,000Pa・s以下である」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項23は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項23は、願書に添付した明細書の段落【0019】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
エ.訂正事項24について
上記訂正事項24は、訂正前の請求項17の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜は、25℃の時の、JIS K 7161:1994に準拠した、引張弾性率Eが25~2000MPaであり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項24は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項24は、願書に添付した明細書の段落【0014】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
オ.訂正事項25、30について
上記訂正事項25は、訂正前の請求項17の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の表面自由エネルギーが30mJ/m2以下であり、前記仮接着膜の温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠したせん断貯蔵弾性率G’が0.1~1MPaであり、」と限定するものであり、上記訂正事項30は、該「表面自由エネルギー」について「表面自由エネルギーとは、仮接着膜に対する水、エチレングリコールおよびジヨードメタンの接触角に基づき、拡張Fowkes式から得られる値をいう」と限定するものであるから、それぞれ、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項25及び30は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項25及び30は、願書に添付した明細書の段落【0015】及び【0016】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
カ.訂正事項26について
上記訂正事項26は、訂正前の請求項17の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の温度25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’が150~900MPaであり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項26は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項26は、願書に添付した明細書の段落【0017】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
キ.訂正事項27について
上記訂正事項27は、訂正前の請求項17の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠したせん断貯蔵弾性率G’と、前記仮接着膜の25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’との比E’/G’が、E’/G’≦3500を満たし、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項27は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項27は、願書に添付した明細書の段落【0018】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ク.訂正事項28について
上記訂正事項28は、訂正前の請求項17の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の温度200℃、荷重10kgにおけるJIS K 7210:1999に準拠した、メルトフローレートが20.0g/10分以下であり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項28は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項28は、願書に添付した明細書の段落【0020】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ケ.訂正事項29、31について
上記訂正事項29は、訂正前の請求項17の「仮接着膜」を、「前記仮接着膜の温度60℃の時の塑性変形開始圧力P60が0.2MPa以上である、」と限定するものであり、上記訂正事項31は、該「塑性変形開始圧力」について、「塑性変形開始圧力はシリコンウェハ上に設けた厚さ40μmの仮接着膜を60℃に加熱しながら、5mm×10mmのシリコンからなるチップを仮接着膜の膜面に対し垂直な方向から5秒間押し付け、チップを除去した後、光学顕微鏡でチップが接触していた箇所を観察し、押し付けた箇所の膜厚が10μm以上低下していた時の圧力をいう」と限定するものであるから、それぞれ、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項29及び31は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項29及び31は、願書に添付した明細書の段落【0021】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
コ.小括
以上のとおりであるから、訂正事項21~31は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。
したがって、訂正後の請求項17~19に係る一群の請求項に係る訂正(訂正事項21~31)を認める。
(3)本件訂正前の請求項20~22に係る一群の請求項に対する訂正(訂正事項32~34)について
ア.訂正事項32について
訂正事項32は、訂正前の請求項20の「溶融粘度」を「60,000Pa・s以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項32は、上記のとおり特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
そして、上記訂正事項32は、願書に添付した明細書の段落【0019】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
イ.訂正事項33について
上記訂正事項33は、訂正前の請求項20の「前記引き上げる際にかかる力を、フォースゲージを用いて測定したときの力」を、「0.07N/mm以上」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項33は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項33は、願書に添付した明細書の段落【0117】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ.訂正事項34について
上記訂正事項34は、訂正前の請求項20の「仮接着膜」を、「フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物を含む、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記訂正事項34は、上記のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項34は、願書に添付した明細書の段落【0026】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
エ.小括
以上のとおりであるから、訂正事項32~34は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。
したがって、訂正後の請求項20~22に係る一群の請求項に係る訂正(訂正事項32~34)を認める。
(4)明細書に係る訂正(訂正事項35~48)について
ア.訂正事項35について
上記訂正事項35は、訂正前の段落【0169】の【表4】から、実施例18を削除するものである。
ここで、訂正前の段落【0153】の【表1】及び訂正前の段落【0140】の記載から、実施例1、実施例17及び実施例18において使用された仮接着用組成物は、いずれも同一の組成を有するものであることがわかる。
一方、訂正前の段落【0169】の【表4】において、仮接着膜の「引張弾性率E」、「表面自由エネルギー」、「断貯蔵弾性率G’」、「貯蔵引張弾性率E’」、「E’/G’」、「溶融粘度」、「MFR」、「塑性変形開始圧力」の値は、実施例1と実施例17は同一であるが、実施例18のみが異なる値となっている。
また、訂正前の段落【0153】の表1及び訂正前の段落【0140】の記載から、実施例1~3、13,17,18及び比較例6において使用された仮接着用組成物は、樹脂P-1及びP-3の含有質量部が異なり、それ以外の組成は同一であることがわかる。
そして、訂正前の段落【0169】の【表4】において、仮接着膜の「MFR」の値は、実施例1~3、13,17及び比較例6は、樹脂P-1の含有割合が大きくなり樹脂P-3の含有割合が小さくなるにつれて「MFR」の値が小さくなる関係にあるのに対し、実施例18のみが、実施例1~3、13,17及び比較例6における樹脂P-1及び樹脂P-3の含有割合と「MFR」の値の関係を満たさないものとなっている。
そうすると、訂正前の段落【0169】の【表4】における実施例18の各物性値の記載自体が、実施例1~3、13,17及び比較例6の記載との関係において不合理を生じているから、上記訂正事項35により実施例18を削除してその不合理を正す訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。
また、上記訂正事項35は、上記のとおりであり、特許請求の範囲のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項35は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
イ.訂正事項36~39について
上記訂正事項36~38は、それぞれ、段落【0140】、段落【0153】の【表1】、段落【0155】から、実施例18に係る記載を削除し、上記訂正事項39は、実施例18に係る記載である訂正前の段落【0158】を削除するものである。
そして、実施例18を削除する訂正は、上記(4)ア.に示したとおり、明瞭でない記載の釈明に該当するから、上記訂正事項36~39により実施例18に係る記載を削除する訂正も、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。
また、上記訂正事項36~39は、上記のとおりであり、特許請求の範囲のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項36~39は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ.訂正事項40について
上記訂正事項40は、訂正前の段落【0141】における「・樹脂P-6:表1に記載の質量部」の記載を「・樹脂P-5:表1記載の質量部」に訂正するものである。
(ア)誤記の訂正の存否について
「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいう。
a.そこで、まず、上記訂正事項40について、訂正前の段落【0141】の記載それ自体から、訂正前の段落【0141】に誤記が存在するといえるかを検討する。
訂正前の段落【0141】の記載は以下のとおりである。
「【0141】
<<仮接着用組成物の組成(実施例15)>>
・樹脂P-6:表1に記載の質量部
・Irganox 1010(BASFジャパン(株)製):10質量部
・Sumilizer TP-D(住友化学(株)製):10質量部
・アニソール(東洋合成工業(株)製):400質量部
・TOTM(大八化学工業(株)製):3質量部
・メガファックF-553(DIC(株)製):0.1質量部・樹脂P-6:表1に記載の質量部」
訂正前の段落【0141】の記載は、「仮接着用組成物の組成」の「実施例15」が、「樹脂P-6」を「表1に記載の質量部」含有することを意味するものであるとして、明確に理解することができる。
よって、訂正前の段落【0141】の記載それ自体から、訂正前の段落【0141】の「樹脂P-6」が「樹脂P-5」の誤記であるとはいえない。
b.次に、訂正前の明細書の記載との関係で、訂正前の段落【0141】に誤記が存在するといえるかを検討する。
訂正前の明細書には、例えば以下の記載がある。
「【0142】
<<仮接着用組成物の組成(実施例16)>>
・樹脂P-7:表1に記載の質量部
・Irganox 1010(BASFジャパン(株)製):10質量部
・Sumilizer TP-D(住友化学(株)製):10質量部
・N-エチル-2-ピロリドン(丸善油化商事(株)製):400質量部
・TOTM(大八化学工業(株)製):3質量部
・メガファックF-553(DIC(株)製):0.1質量部」
「【0146】
<<仮接着用組成物の組成(実施例15)>>
・樹脂P-6:表1に記載の質量部
・Irganox 1010(BASFジャパン(株)製):10質量部
・Sumilizer TP-D(住友化学(株)製):10質量部
・アニソール(東洋合成工業(株)製):400質量部
・TOTM(大八化学工業(株)製):3質量部
・メガファックF-553(DIC(株)製):0.1質量部
【0147】
<<仮接着用組成物の組成(実施例16)>>
・樹脂P-7:表1に記載の質量部
・Irganox 1010(BASFジャパン(株)製):10質量部
・Sumilizer TP-D(住友化学(株)製):10質量部
・N-エチル-2-ピロリドン(丸善油化商事(株)製):400質量部
・TOTM(大八化学工業(株)製):3質量部
・メガファックF-553(DIC(株)製):0.1質量部
【0148】
<<仮接着用組成物の組成(比較例1)>>
・樹脂P-6:表1に記載の質量部
・Irganox 1010(BASFジャパン(株)製):10質量部
・Sumilizer TP-D(住友化学(株)製):10質量部
・アニソール(東洋合成工業(株)製):400質量部
・TOTM(大八化学工業製):0.8質量部
・メガファックF-553(DIC(株)製):0.1質量部
【0149】
<<仮接着用組成物の組成(比較例2)>>
・樹脂P-6:表1に記載の質量部
・Irganox 1010(BASFジャパン(株)製):10質量部
・Sumilizer TP-D(住友化学(株)製):10質量部
・アニソール(東洋合成工業(株)製):400質量部
・TOTM(大八化学工業(株)製):0.5質量部
・メガファックF-553(DIC(株)製):0.1質量部
【0150】
<<仮接着用組成物の組成(比較例3)>>
・樹脂P-7:表1に記載の質量部
・Irganox 1010(BASFジャパン(株)製):10質量部
・Sumilizer TP-D(住友化学(株)製):10質量部
・N-エチル-2-ピロリドン(丸善油化商事(株)製):400質量部
・TOTM(大八化学工業(株)製):0.8質量部
・メガファックF-553(DIC(株)製):0.1質量部
【0151】
<<仮接着用組成物の組成(比較例4)>>
・樹脂P-7:表1に記載の質量部
・Irganox 1010(BASFジャパン(株)製):10質量部
・Sumilizer TP-D(住友化学(株)製):10質量部
・N-エチル-2-ピロリドン(丸善油化商事(株)製):400質量部
・TOTM(大八化学工業(株)製):0.5質量部
・メガファックF-553(DIC(株)製):0.1質量部
【0152】
<<仮接着用組成物の組成(比較例5)>>
・樹脂P-8:表1に記載の質量部
・Irganox 1010(BASFジャパン(株)製):5質量部
・Sumilizer TP-D(住友化学(株)製):5質量部
・2-ヘプタノン(KHネオケム(株)製):200質量部
・メガファックF-553(DIC(株)製):0.1質量部
【0153】
【表1】
【0154】
表1中に記載の化合物の商品名およびメーカー名は以下の通りである。
<バインダー>
【表2】
」
「【0169】
【表3】
【表4】
」
訂正前の明細書の段落【0141】、【0146】、【0148】、【0149】には、実施例15、比較例1及び比較例2に含まれる樹脂が「樹脂P-6」である点が記載されており、段落【0142】、【0147】、【0150】、【0151】には、実施例16、比較例3及び比較例4に含まれる樹脂が「樹脂P-7」である点が記載されており、段落【0152】には、比較例5に含まれる樹脂が「樹脂P-8」である点がそれぞれ記載されている。
一方、訂正前の明細書の段落【0153】の【表1】には、実施例15、比較例1及び比較例2に含まれる樹脂1が「P-5」であり、実施例16、比較例3及び比較例4に含まれる樹脂1が「P-6」であり、比較例5に含まれる樹脂1が「P-7」である点がそれぞれ記載されている。
したがって、訂正前の明細書の段落【0141】、【0142】、【0146】~【0151】に記載された実施例15、実施例16、比較例1~5にそれぞれ含まれる樹脂と、訂正前の明細書の段落【0153】の【表1】に記載された実施例15、実施例16、比較例1~5にそれぞれ含まれる樹脂とが、整合していない。
しかしながら、訂正前の明細書において、実施例15、実施例16、比較例1~5にそれぞれどのような樹脂が含まれているのかについて具体的に記載されているのは、段落【0141】、【0142】、【0146】~【0151】と、段落【0153】の【表1】のみであるから、両者の記載が整合しないことのみをもって、いずれか一方の記載が正しく、他方の記載が誤っていると認めることはできない。
c.以下、いずれの一方が正しい記載であるかについて、さらに検討する。(a)明細書に記載の樹脂の特定
乙7~9号証の記載は以下のとおりである。なお、「〇R」は○の中にRの記号を表す。)
・乙第7号証(ALBIS社 Apec9379 material datasheet)
「Apec○R 9379
PC」
・乙第8号証(BASF社 プラスチックデータシート Ultrason E 6020P)
「Ultrason○R E6020P-PESU
BASF
商品の説明文
Polyethersulfone flakes, e.g. for membrane applications and coatings.」
・乙第9号証(新日鉄住金化学株式会社 エチレンMSの一般物性)
「エスチレン○RMS樹脂(・・・)は、PMMAの透明性、高表面硬度、高耐光性とポリスチレンの良加工性、低吸水性を兼ね揃えた樹脂です。・・・」
「
」
上記乙第7号証の記載から、願書に添付した明細書に記載された「樹脂P-5(APEC9379)」はポリカーボネート(PC)に該当することが分かり、同様に、上記乙第8号証の記載から「樹脂P-6(Ultrason E6020P)」はポリエーテルサルホン(ポリエーテルスルホン)(PES)に、上記乙第9号証の記載から「樹脂P-7(エスチレンMS-200)」はポリスチロールに、それぞれ該当することが分かる。
(b)樹脂の溶融粘度の大小関係の特定
乙第13号証及び乙第16号証の記載は以下のとおりである。
・乙第13号証(田原省吾、「ポリカーボネート樹脂」、日本ゴム協会誌 第43巻第3号、1970年、第61~71ページ)
「2.2 流動特性
PCの溶融時の流動特性を理解することは,成形をうまく行うために極めて重要である。・・・
実際成形を行う場合には,せん断応力と粘度の関係、せん断応力によるせん断速度の変化が問題となるのでこれらを図4に示す。」(第64ページ下から11行~末行)
「
」(第66ページ)
・乙第16号証(浅井邦明ほか、「最近の高分子材料」、日本材料学会「材料」第39巻第441号、1990年、第194~201ページ)
「一方,成形性の目安となる流動性は,棒状あるいはスパイラル状金型を用いて測定した流動長と温度の関係から得られる.図9に代表的なエンプラの流動性を肉厚1mmの棒状金型を用いて比較した結果を示す・・・」(第198ページ右欄下から第3行~第199ページ左欄第1行)
「
」(第198ページ)
上記乙第13号証の図4の図示から、同一温度かつ同一せん断応力において、「ポリカーボネート」よりも「ポリスチロール」の方が「見かけ粘度」が小さいことが分かる。また、本件明細書の段落0166の「<溶融粘度>・・・得られた本試験測定用の仮接着膜を用い、速度5℃/分で250℃まで昇温し、JISK6862:1984に準拠し、溶融粘度を測定した。」との記載とJIS K 6862:1984(URL:https://kikakurui.com/k6/K6862-1984-01.html)の「ホットメルト接着剤の溶融粘度試験方法・・・試験温度180℃における接着剤の溶融粘度(この方法では,見掛け粘度が求められる。以下,粘度という。)を測定する方法について規定する。」との記載をあわせると、乙第13号証における「見かけ粘度」と本件明細書における「溶融粘度」とは同様のものであるから、乙第13号証から「ポリカーボネート(PC)」よりも「ポリスチロール」の方が「溶融粘度」が小さいことが理解できる。
また、乙第16号証の図9から、同一温度で見たとき、「ポリエーテルサルホン(ポリエーテルスルホン)(PES)」よりも「ポリカーボネート(PC)」の方が「バーフロー長」が大きいことが分かる。ここで、樹脂の溶融粘度が小さいほど、樹脂の流動性が増大し、バーフロー長さが大きい値となることは技術常識であるから、「ポリエーテルサルホン(ポリエーテルスルホン)(PES)」よりも「ポリカーボネート(PC)」の方が、「溶融粘度」が小さいことが理解できる。
以上を踏まえると、樹脂の溶融粘度の大小関係は、「ポリエーテルサルホン(ポリエーテルスルホン)(PES)」>「ポリカーボネート(PC)」>「ポリスチロール」であることが技術常識であるといえる。
かかる技術常識と上記(a)を踏まえると、樹脂の溶融粘度の大小関係は、「樹脂P-6(Ultrason E6020P)」(ポリエーテルサルホン(ポリエーテルスルホン)>「樹脂P-5(APEC9379)」ポリカーボネート)>「樹脂P-7(エスチレンMS-200)」(ポリスチロール)となることは、当業者にとって自明である。
(c)誤記の特定
仮に、訂正前の明細書の段落【0141】~【0152】に記載の記載が正しいとすると、訂正前の明細書の段落【0153】の【表1】中、実施例15及び比較例1、2の樹脂P-5は樹脂P-6が、実施例16及び比較例3、4の樹脂P-6は樹脂P-5が、それぞれ正しい記載となる。しかしながら、この場合、訂正前の明細書の【表3】の溶融粘度も踏まえると、溶融粘度の大小は、樹脂P-5(実施例16、比較例3、4)の溶融粘度16500>樹脂P-6(実施例15、比較例1、2)の溶融粘度11000>樹脂P-7(比較例5)の溶融粘度4000となり、上記(b)の自明な事項と整合しないこととなる。
一方、仮に、訂正前の明細書の段落【0153】の【表1】中の記載が正しいとすると、訂正前の明細書の【表3】の溶融粘度も踏まえると、溶融粘度の大小は、樹脂P-6(実施例16、比較例3、4)の溶融粘度16500>樹脂P-5(実施例15、比較例1、2)の溶融粘度11000>樹脂P-7(比較例5)の溶融粘度4000となり、上記(b)の自明な事項と整合する。
このことから、訂正前の明細書の段落【0153】の【表1】の記載が正しく、訂正前の明細書の段落【0141】~【0152】に記載が誤りであることが理解できる。
(イ)訂正について判断
上記(ア)から訂正前の明細書の段落【0141】における「・樹脂P-6:表1に記載の質量部」の記載は、本来、「・樹脂P-5:表1記載の質量部」の意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかである。したがって、上記訂正事項40は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
また、上記訂正事項40は、上記のとおりであり、特許請求の範囲のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項40は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
エ.訂正事項44、45について
上記訂正事項44及び45は、訂正前の段落【0148】及び【0149】における「・樹脂P-6:表1に記載の質量部」の記載を「・樹脂P-5:表1記載の質量部」に訂正するものである。
訂正前の段落【0148】及び【0149】の「・樹脂P-6:表1に記載の質量部」の記載は、上記ウ.に示したのと同様の理由により、本来、「・樹脂P-5:表1記載の質量部」の意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかである。
したがって、上記訂正事項44、45は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
また、上記訂正事項44、45は、上記のとおりであり、特許請求の範囲のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項44、45は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
オ.訂正事項41、46、47について
上記訂正事項41、46及び47は、訂正前の段落【0142】、【0150】及び【0151】における「・樹脂P-7:表1に記載の質量部」の記載を「・樹脂P-6:表1記載の質量部」に訂正するものである。
訂正前の段落【0142】、【0150】及び【0151】の「・樹脂P-7:表1に記載の質量部」の記載は、上記ウ.に示したのと同様の理由により、本来、「・樹脂P-6:表1記載の質量部」の意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかである。
したがって、上記訂正事項41、46、47は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
また、上記訂正事項41、46、47は、上記のとおりであり、特許請求の範囲のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項41、46、47は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
カ.訂正事項48について、
上記訂正事項48は、訂正前の段落【0152】における「・樹脂P-8:表1に記載の質量部」の記載を「・樹脂P-7:表1記載の質量部」に訂正するものである。
訂正前の段落【0152】の「・樹脂P-8:表1に記載の質量部」の記載は、上記ウ.に示したのと同様の理由により、本来、「・樹脂P-7:表1記載の質量部」の意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかである。
したがって、上記訂正事項48は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
また、上記訂正事項48は、上記のとおりであり、特許請求の範囲のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項48は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
キ.訂正事項42、43について
上記訂正事項42は、訂正前の段落【0141】の記載と同一である訂正前の段落【0146】を削除するものであり、上記訂正事項43は、訂正前の段落【0142】の記載と同一である訂正前の段落【0147】を削除するものであり、他の記載と重複している不合理を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。
また、上記訂正事項42及び43は、上記のとおりであり、特許請求の範囲のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
そして、上記訂正事項42及び43は、上記のとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ク.小括
以上のとおりであるから、訂正事項35~39、42、43は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、訂正事項40、41、44~48は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであり、
かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正事項35~48に係る明細書の訂正を認める。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕、〔17~19〕〔20~22〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~22に係る発明(以下、「本件特許発明1」~「本件特許発明22」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1~22に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の基材と、仮接着膜と、第2の基材を、前記順に互いに隣接して有する積層体であって、
前記仮接着膜は、25℃の時の、JIS K 7161:1994に準拠した、引張弾性率Eが25~2000MPaであり、
前記仮接着膜は、フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物を含み、
前記仮接着膜の、昇温速度5℃/分で250℃まで昇温したときの、JIS K6862:1984に準拠した、溶融粘度が、10,000以上60,000Pa・s以下であり、
前記仮接着膜の表面自由エネルギーが30mJ/m2以下であり、
前記仮接着膜の温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠したせん断貯蔵弾性率G’が0.1~1MPaであり、
前記仮接着膜の温度25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’が150~900MPaであり、
前記仮接着膜の温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠したせん断貯蔵弾性率G’と、前記仮接着膜の25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’との比E’/G’が、E’/G’≦3500を満たし、
前記仮接着膜の温度200℃、荷重10kgにおけるJIS K 7210:1999に準拠した、メルトフローレートが20.0g/10分以下であり、
前記仮接着膜の温度60℃の時の塑性変形開始圧力P60が0.2MPa以上であり、
前記第1の基材および前記第2の基材の一方がキャリア基材であり、他方がデバイスウェハであり、
25℃の温度で、前記積層体の、第1の基材および第2の基材のいずれか一方を固定し、他方の基材の端部を、仮接着膜との界面から、50mm/分の速さで、前記他方の基材の基材面に対し垂直な方向に引き上げることによって、前記キャリア基材と前記仮接着膜との界面で剥離可能で、かつ、前記引き上げる際にかかる力を、フォースゲージを用いて測定したときの力が0.07N/mm以上0.33N/mm以下である、積層体;但し、表面自由エネルギーとは、仮接着膜に対する水、エチレングリコールおよびジヨードメタンの接触角に基づき、拡張Fowkes式から得られる値をいう;但し、塑性変形開始圧力はシリコンウェハ上に設けた厚さ40μmの仮接着膜を60℃に加熱しながら、5mm×10mmのシリコンからなるチップを仮接着膜の膜面に対し垂直な方向から5秒間押し付け、チップを除去した後、光学顕微鏡でチップが接触していた箇所を観察し、押し付けた箇所の膜厚が10μm以上低下していた時の圧力をいう。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
仮接着膜が、仮接着用組成物を第1の基材および第2の基材の一方の表面にスピンコート法によって形成してなるか、仮接着用組成物を第1の基材および第2の基材の一方の表面にブレードコート法によって形成してなるか、フィルム状の仮接着膜を第1の基材および第2の基材の一方の表面に熱および圧力をかけてラミネートすることで形成してなる、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
前記仮接着膜が、ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、又は、ポリアミド系エラストマーを含む、請求項1または9に記載の積層体。
【請求項11】
前記仮接着膜がエラストマーを含み、前記エラストマーの重量平均分子量が2,000~200,000である、請求項1または9に記載の積層体。
【請求項12】
仮接着膜の膜面の面積が、キャリア基材の基材面の面積よりも小さい、請求項1および9~11のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項13】
キャリア基材の基材面の直径をCμm、デバイスウェハの基材面の直径をDμm、仮接着膜の膜面の直径をTμmとしたとき、(C‐200)≧T≧Dを満たす、請求項1およびは9~11のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項14】
キャリア基材の基材面の直径をCμm、デバイスウェハの基材面の直径をDμm、仮接着膜のキャリア基材と接している側の膜面の直径をTCμm、仮接着膜のデバイスウェハと接している側の膜面の直径をTDμmとしたとき、(C‐200)≧TC>TD≧Dを満たす、請求項1および9~11のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項15】
第1の基材および第2の基材の一方がキャリア基材であり、他方が厚さ200μm以下のデバイスウェハである、請求項1および9~14のいずれかに記載の積層体。
【請求項16】
前記仮接着膜は、前記仮接着膜の固形分に対し、シリコーン化合物を0.001~1質量%の割合で含む、請求項1および9~15のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項17】
第1の基材と、仮接着用組成物を製膜してなる仮接着膜と、第2の基材を、前記順に互いに隣接して有する積層体に用いる仮接着用組成物であって、前記第1の基材および前記第2の基材の一方がキャリア基材であり、他方がデバイスウェハであり、前記積層体の、25℃の温度で、第1の基材および第2の基材のいずれか一方を固定し、他方の基材の端部を、仮接着膜との界面から、50mm/分の速さで、前記他方の基材の基材面に対し垂直な方向に引き上げることによって、前記キャリア基材と前記仮接着膜との界面で剥離可能で、かつ、前記引き上げる際にかかる力を、フォースゲージを用いて測定したときの力が0.07N/mm以上0.33N/mm以下であり、前記仮接着膜は、フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物を含み、前記仮接着膜の、昇温速度5℃/分で250℃まで昇温したときの、JIS K6862:1984に準拠した、溶融粘度が、10,000以上60,000Pa・s以下であり、前記仮接着膜は、25℃の時の、JIS K 7161:1994に準拠した、引張弾性率Eが25~2000MPaであり、前記仮接着膜の表面自由エネルギーが30mJ/m2以下であり、前記仮接着膜の温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠したせん断貯蔵弾性率G’が0.1~1MPaであり、前記仮接着膜の温度25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’が150~900MPaであり、前記仮接着膜の温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠したせん断貯蔵弾性率G’と、前記仮接着膜の25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’との比E’/G’が、E’/G’≦3500を満たし、前記仮接着膜の温度200℃、荷重10kgにおけるJIS K 7210:1999に準拠した、メルトフローレートが20.0g/10分以下であり、前記仮接着膜の温度60℃の時の塑性変形開始圧力P60が0.2MPa以上である仮接着用組成物;但し、表面自由エネルギーとは、仮接着膜に対する水、エチレングリコールおよびジヨードメタンの接触角に基づき、拡張Fowkes式から得られる値をいう;但し、塑性変形開始圧力はシリコンウェハ上に設けた厚さ40μmの仮接着膜を60℃に加熱しながら、5mm×10mmのシリコンからなるチップを仮接着膜の膜面に対し垂直な方向から5秒間押し付け、チップを除去した後、光学顕微鏡でチップが接触していた箇所を観察し、押し付けた箇所の膜厚が10μm以上低下していた時の圧力をいう。
【請求項18】
ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、又は、ポリアミド系エラストマーを含む、請求項17に記載の仮接着用組成物。
【請求項19】
エラストマーを含み、前記エラストマーの重量平均分子量が2,000~200,000である、請求項17に記載の仮接着用組成物。
【請求項20】
25℃の時の、JIS K 7161:1994に準拠した、引張弾性率Eが25~2000MPaであり、
表面自由エネルギーが30mJ/m2以下であり、
温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠し、せん断貯蔵弾性率G’が0.1~1MPaであり、
温度25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’が150~900MPaであり、
温度190℃の時のJIS K 7244-6:1999に準拠し、せん断貯蔵弾性率G’と、25℃の時のJIS K 7244-4:1999に準拠した引張貯蔵弾性率E’との比E’/G’が、E’/G’≦3500を満たし、
昇温速度5℃/分で250℃まで昇温し、JIS K6862:1984に準拠した、溶融粘度が10,000Pa・s以上60,000Pa・s以下であり、
温度200℃、荷重10kgにおけるJIS K 7210:1999に準拠した、メルトフローレートが20.0g/10分以下であり、
温度60℃の時の塑性変形開始圧力P60が0.2MPa以上であり、
第1の基材と、仮接着用組成物を製膜してなる仮接着膜と、第2の基材を、前記順に互いに隣接して有する積層体に用いる仮接着膜であって、前記第1の基材および前記第2の基材の一方がキャリア基材であり、他方がデバイスウェハであり、前記積層体の、25℃の温度で、第1の基材および第2の基材のいずれか一方を固定し、他方の基材の端部を、仮接着膜との界面から、50mm/分の速さで、前記他方の基材の基材面に対し垂直な方向に引き上げることによって、前記キャリア基材と前記仮接着膜との界面で剥離可能で、かつ、前記引き上げる際にかかる力を、フォースゲージを用いて測定したときの力が0.07N/mm以上0.33N/mm以下であり、フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物を含む、
仮接着膜;但し、表面自由エネルギーとは、仮接着膜に対する水、エチレングリコールおよびジヨードメタンの接触角に基づき、拡張Fowkes式から得られる値をいう;塑性変形開始圧力はシリコンウェハ上に設けた厚さ40μmの仮接着膜を60℃に加熱しながら、5mm×10mmのシリコンからなるチップを仮接着膜の膜面に対し垂直な方向から5秒間押し付け、チップを除去した後、光学顕微鏡でチップが接触していた箇所を観察し、押し付けた箇所の膜厚が10μm以上低下していた時の圧力をいう。
【請求項21】
ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、又は、ポリアミド系エラストマーを含む、請求項20に記載の仮接着膜。
【請求項22】
エラストマーを含み、前記エラストマーの重量平均分子量が2,000~200,000である、請求項20に記載の仮接着膜。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1~5、17~19及び20~22に係る特許に対して、当審が令和2年2月28日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)特許法第36条第4項第1号に規定する要件について
ア.仮接着膜の剥離について
特許請求の範囲の【請求項1】には、「前記キャリア基材と前記仮接着膜との界面で剥離可能」と記載されており、「仮接着膜」が「デバイスウェハ」との界面ではなく「キャリア基材」との界面で剥離可能であることが特定されている。
しかし、本件特許の発明の詳細な説明を参照しても、「仮接着膜」を「デバイスウェハ」との界面ではなく「キャリア基材」との界面で剥離させるための手段が不明であって、そのような構造の「積層体」を作ることができない。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本件特許発明1と同様の特定がある本件特許発明17と本件特許発明20、及び、それらを引用する本件特許発明2~5、7~16、18~19、21~22も同様の理由により、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者がこれらを実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
イ.「実施例15」と「実施例16」について
本件特許明細書の段落【0153】【表1】の「実施例15」と「実施例16」に関する欄と本件特許明細書の段落【0141】及び【0142】の記載とが整合していないため、「実施例15」の「仮接着用組成物」を作成するために「P-5」と「P-6」のどちらのバインダーを使用すればよいのか、「実施例16」の「仮接着用組成物」を作成するために「P-6」と「P-7」のどちらのバインダーを使用すればよいのか、本件特許明細書の記載からは不明である。
よって、当業者は本件特許明細書の記載から、本件特許発明で特定される「仮接着膜」又は「仮接着用組成物」を作成できるとはいえないから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
(2)特許法第36条第6項第1号に規定する要件について
ア.本件特許発明1~5、7~16について
本件特許の発明の詳細な説明には、実施例として特定の「引張弾性率E」、「表面自由エネルギー」、「せん断貯蔵弾性率G’」、「引張貯蔵弾性率E’」、「E’/G’」、「溶融粘度」、「メルトフローレート」及び「塑性変形開始圧力」を有する仮接着膜について、薄型化後のウェハの反りを評価することで、発明が解決しようとする課題が解決されることが記載されている。
しかし、本件特許発明1においては、仮接着膜の物性について「引張弾性率E」が25~2000MPaであることと、「溶融粘度」が10,000以上60,000Pa・s以下であることのみが特定されており、他の物性については特定されておらず、「引張弾性率E」と「溶融粘度」が前記数値範囲を満たせば、他の物性に関係なく、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるとはいえない。
そうすると、本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができるとはいえないから、本件特許発明1は発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本件特許発明2~5、7~16においても、本件特許発明1と同様に発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
イ.本件特許発明17~19について
本件特許発明17~19においては、仮接着膜の物性について「溶融粘度」が10,000以上60,000Pa・s以下であることのみが特定されており、他の物性については特定されていない。
よって、上記ア.と同様、本件特許発明17~19の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができるとはいえないから、本件特許発明17~19は発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.当審の判断
(1)特許法第36条第4項第1号に規定する要件について
ア.仮接着膜の剥離について
本件特許発明1において、「第1の基材と、仮接着膜と、第2の基材を、前記順に互いに隣接して有する積層体であって」、「前記仮接着膜は、フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物を含み」、「前記キャリア基材と前記仮接着膜との界面で剥離可能で」ある「積層体」が特定されている。
また、本件特許発明17において、「第1の基材と、仮接着用組成物を製膜してなる仮接着膜と、第2の基材を、前記順に互いに隣接して有する積層体に用いる仮接着用組成物であって」、「前記キャリア基材と前記仮接着膜との界面で剥離可能で」、「前記仮接着膜は、フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物を含」む「仮接着用組成物」が特定されている。
また、本件特許発明20において、「第1の基材と、仮接着用組成物を製膜してなる仮接着膜と、第2の基材を、前記順に互いに隣接して有する積層体に用いる仮接着膜であって」、「前記キャリア基材と前記仮接着膜との界面で剥離可能で」、「フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物を含む」、「仮接着膜」が特定されている。
そして、本件特許発明1は「積層体」、本件特許発明17は「仮接着用組成物」、また、本件特許発明20は「仮接着膜」という物の発明であるところ、本件特許発明において、当業者が、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、本件特許発明に係る「積層体」、「仮接着用組成物」又は「仮接着膜」を使用することができる、特に、「仮接着膜」が「デバイスウェハ」との界面ではなく「キャリア基材」との界面で剥離可能であることが理解できるのであれば、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たすということができる。
ここで、「仮接着膜」の「剥離」や「仮接着膜」が「フッ素系液体状化合物および/またはシリコーン化合物」を含む点に関して、本件特許明細書の段落【0026】には、「フッ素系液体状化合物は偏在性に富む化合物であるため、上記のように配合量が少なくても離型性を十分に確保できる」、「シリコーン化合物は偏在性に富む化合物であるため、上記のように配合量が少なくても離型性を十分に確保できる。」との記載があり、本件特許明細書に接した当業者は、本件特許発明が、「フッ素系液体状化合物」又は「シリコーン化合物」を含むことにより、「仮接着膜」を「デバイスウェハ」との界面や「キャリア基材」との界面で剥離性(離型性)を確保できることが理解でき、また、本件特許明細書の段落【0089】の「本発明の仮接着用組成物は、・・・フッ素系液体状化合物とバインダーとの質量比が上記範囲とすることで、仮接着膜の空気界面側にフッ素系液体状化合物をより多く偏在させ易い。」と記載れるように、離型剤であるフッ素系液体状化合物が「仮接着膜の空気界面側」に偏在することが理解できる。これらは、例えば、乙第1号証(特開2013-164574号公報)の段落0332の記載とも整合するものであり、本件特許に係る出願の出願前における技術常識といえる。
そして、本件特許明細書の段落【0155】に記載のように、本件特許発明の実施例では、「シリコンウェハ」「の表面に」「仮接着用組成物を」「滴下し」、「加熱することで、シリコンウェハの表面に仮接着膜を形成し」、「ついで、仮接着膜が形成された側の面に対し」、「キャリア基材」を「圧着を行って、積層体を得」ていることから、上記技術常識を踏まえれば、当業者は、本件特許の実施例では、キャリア基材を圧着する面に離型剤が偏在し、もって、「仮接着膜」が「デバイスウェハ」との界面ではなく「キャリア基材」との界面で剥離可能であることが理解できるものである。
そうすると、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明1、17及び20を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえる。また、本件特許発明1、17及び20を引用する本件特許発明9~16、18~19、21~22も同様の理由により、その実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
イ.「実施例15」と「実施例16」について
訂正事項40~48により、訂正後の明細書の段落【0153】の【表1】に記載された実施例15、実施例16、比較例1~5にそれぞれ含まれる樹脂と訂正後の明細書の段落【0141】、【0142】、【0146】~【0151】に記載された実施例15、実施例16、比較例1~5にそれぞれ含まれる樹脂とは整合しており、「実施例15」や「実施例16」の「仮接着用組成物」を作成するためにどのバインダーを使用すればよいのか、本件特許明細書の記載から理解することができ、当業者は、本件特許発明で特定される「仮接着膜」又は「仮接着用組成物」を作成できるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
ウ.小括
以上のとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
(2)特許法第36条第6項第1号に規定する要件について
訂正事項4~11及び訂正事項23~31により、訂正後の本件特許発明1、17において、仮接着膜の物性である「引張弾性率E」、「表面自由エネルギー」、「せん断貯蔵弾性率G’」、「引張貯蔵弾性率E’」、「E’/G’」、「溶融粘度」、「メルトフローレート」及び「塑性変形開始圧力P60」の値が特定の数値範囲である仮接着膜について、薄型化後のウェハの反りを評価することが特定された。
そして、本件特許の発明の詳細な説明には、仮接着膜の物性である「引張弾性率E」、「表面自由エネルギー」、「せん断貯蔵弾性率G’」、「引張貯蔵弾性率E’」、「E’/G’」、「溶融粘度」、「メルトフローレート」及び「塑性変形開始圧力P60」の値が特定の数値範囲である仮接着膜について、薄型化後のウェハの反りを評価することで、本件特許発明の課題である「ウェハを薄型にしても、反りを発生しにくくすることが可能な、積層体、仮接着用組成物および仮接着膜を提供する」(段落【0009】)ことを解決できることが具体的に記載されているから、当業者は、上記の本件特許発明の特定によって、本件特許発明の課題を解決できることを認識できるといえる。
そうすると、本件発明1及び17は、本件特許の発明の詳細な説明に記載したものといえる。また、本件特許発明1及び17を引用する本件特許発明9~16、18~19も同様の理由により、本件特許の発明の詳細な説明に記載したものといえる。
したがって、請求項1、9~16、17~19に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.特許法第36条第6項第2号に係る申立理由
(1)異議申立における理由
特許異議申立人は、訂正前の請求項1において、「引き上げる際にかかる力を、フォースゲージを用いて測定したときの力が0.33N/mm以下である」との記載があることに関して、以下を主張する。また、このことは、訂正前の請求項17及び20並びに請求項1、17又は20を引用する請求項についても同様である旨主張する。
ア.「引き上げる際にかかる力」の物理量を示す単位は「N」であるべきであり、この「力」を「長さ」で除す理由が不明であるから、訂正前の請求項に係る発明の意味するところが不明確である。
イ.「引き上げる際にかかる力」について、「0.33N/mm以下である」との記載があるのみで、その下限値について記載がないから、「引き上げる際にかかる力」が「ゼロ」又はそれに近い値を包含し、この場合、デバイスウェアとキャリア基材とを一時的に固定(仮接着)することができない、課題を解決できないような構成が記載されていることとなるから、訂正前の請求項は不明確な記載である。
(2)当審の判断
ア.「引き上げる際にかかる力」の単位について
「引き上げる際にかかる力」については、本件特許発明1、17及び20において「フォースゲージを用いて測定したときの力」であることが特定されている。
ここで、「フォースゲージ」は、押したり引っ張ったりする力を数値化する測定器で、押す力(圧縮試験)や引く力(引張試験)だけではなく、剥がす力(剥離試験)や摩擦係数の測定に用いられるものであること、及び、例えば、日本工業規格である「JIS Z 0238:1998 ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法」において、「3定義・・・c)ヒートシール強さ 内容物を詰めた袋のヒートシール部分の強さ。」、「7.袋のヒートシール強さ試験・・・7.3 操作 ・・・試験片の両端を引張試験機のつかみに取り付け,ヒートシール部が破断するまで引張荷重を加え,その間の最大荷重(N{kgf}/15mm)を求め,ヒートシール強さとする。」と記載されるように、強さを単位長さ当たりの力であらわすことは、それぞれ技術常識であるといえる。
かかる技術常識を踏まえれば、本件特許発明は明確であり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。
イ.「引き上げる際にかかる力」の下限値
訂正事項3、訂正事項21及び訂正事項33により、訂正後の本件特許発明において、「引き上げる際にかかる力」について下限が特定されているから、本件特許発明は明確であり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。
ウ.小括
以上のとおりであるから、特許異議申立人の特許法第36条第6項第2号に係る主張は、採用することができない。
2.特許法第29条の2に係る申立理由
(1)異議申立における理由
特許異議申立人は、以下の甲第1号証~甲第4号証(以下「甲1」等という。)を提出して、訂正前の請求項1~22に記載の発明に係る特許は、第1に実質的に記載された発明であるから、特許法第29条の2の発明に該当する旨を主張する。
甲1:特願2015-39457号(特開2015-214675号)
甲2:特開2014-55280号公報
甲3:特開2010-67957号公報
甲4:特開平10-244545号公報
(2)当審の判断
ア.先願発明について
本件特許の出願日前の他の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開された特願2015-39457号(特開2015-214675号)(出願日:平成27年2月27日、出願人:東京応化工業株式会社、発明者:吉岡孝広、田村弘毅、今井洋文、久保安通史、岩田泰昌、石田信悟)(以下、「先願1」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0013】
<接着剤組成物>
本発明の一実施形態に係る接着剤組成物について、図1を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0014】
一実施形態に係る接着剤組成物は、基板1と、基板1を支持するサポートプレート(支持体)2とを一時的に貼り付けるための接着剤組成物であって、熱可塑性樹脂と、離型剤とを含んでいる(図1の(a))。
【0015】
上記構成によれば、接着剤組成物よって形成された接着層3の接着性を好適に調整することができる。このため、基板1に所望の処理を行なうときに、接着層3を介して基板1とサポートプレート2とを好適に貼り付けておくことができる。また、基板1に所望の処理を行なった後、基板1からサポートプレート2を容易に剥離することができる。このため、基板1とサポートプレート2を貼り付ける前に、サポートプレート2に分離層を形成しておく必要がない。つまり、一実施形態に係る接着剤組成物を用いれば、光を吸収することにより変質する分離層を形成しなくても、基板1からサポートプレート2を剥離することが可能な積層体を形成することができる。
【0016】
〔熱可塑性樹脂〕
熱可塑性樹脂は、接着剤組成物に含まれる樹脂であり、熱可塑性樹脂の接着性によって基板1とサポートプレート2とを接着する。以下、本実施形態に係る接着剤組成物が含んでいる熱可塑性樹脂の組成について説明する。
【0017】
熱可塑性樹脂としては、例えばアクリル系、ノボラック系、ナフトキノン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマー等の、当該分野において公知の種々の接着剤に用いられる熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0018】
熱可塑性樹脂としては、例えば、エラストマー樹脂、炭化水素樹脂、アクリル-スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、等又はこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。
【0019】
接着剤組成物のガラス転移温度(Tg)は、熱可塑性樹脂の種類や分子量、及び接着剤組成物に配合される可塑剤等の種類や量によって変化する。接着剤組成物に含有される熱可塑性樹脂の種類や分子量は、基板及び支持体の種類に応じて適宜選択することができるが、接着剤組成物に使用する熱可塑性樹脂のTgは-60℃以上、200℃以下の範囲内が好ましく、-25℃以上、150℃以下の範囲内がより好ましい。接着剤組成物に使用する熱可塑性樹脂のTgが-60℃以上、200℃以下の範囲内であることによって、冷却に過剰なエネルギーを要することなく、好適に接着層3の接着力を低下させることができる。また、接着層3のTgは、適宜、可塑剤や低重合度の樹脂等を配合することによって調整してもよい。
【0020】
(エラストマー)
一実施形態に係る接着剤組成物が含んでいる熱可塑性樹脂は、エラストマーであることが好ましい。
【0021】
熱可塑性樹脂にエラストマーを用いることによって、耐熱性が高く、レジスト溶剤に対する耐性の高い接着剤組成物を得ることができる。
【0022】
エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいることが好ましく、当該「スチレン単位」は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。また、当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であることがより好ましい。さらに、エラストマーは、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であることが好ましい。」
(イ)「【0087】
<積層体10>
図1の(a)を用いて、本発明の一実施形態に係る積層体10についてより詳細に説明する。図1に示すように、積層体10は、基板1と、基板1を支持するサポートプレート2とを、本発明の一実施形態に係る接着剤組成物を用いて形成した接着層3を介して貼り付けてなる。
【0088】
積層体10の基板1には、所望の処理が行われる。基板1には、一例として、グラインダ等によって、25μm~150μmの厚さになるように薄化処理が行われる。また、基板1を所望の厚さまで薄化した後に、フォトリソグラフィー処理等を行ない、基板1に回路素子等を形成する。つまり、一実施形態に係る積層体10は、力を加えられ、加熱されても、基板1をサポートプレート2に好適に密着させておくことができるように、離型剤を含んだ接着層3の接着性が調整されている。
【0089】
また、積層体10は分離層を備えていなくても、所望の処理の後、基板1からサポートプレート2を容易に剥離することができる。このため、分離層を備えた積層体のように、分離層の耐薬品及び密着性等を考慮することなく、基板1に所望の処理を行なうことができる。
【0090】
なお、分離層とは、積層体における支持体と接着層の間に設けられる層であり、例えば、プラズマCVD法によって形成されたフルオロカーボン膜等の有機膜又は金属膜等の無機膜からなる層のことである。分離層は、光を吸収することによって変質し、強度又は接着性を低下することで、基板から支持体を剥離する。
【0091】
〔基板1〕
基板1は、接着層3を介してサポートプレート2に貼り付けられる。基板1としては、シリコンウエハ基板に限定されず、セラミックス基板、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板を使用することができる。
【0092】
〔サポートプレート2〕
サポートプレート(支持体)2は、基板1を支持する支持体であり、接着層3を介して、基板1に貼り付けられる。そのため、サポートプレート2としては、基板1の薄化、搬送、実装等のプロセス時に、基板1の破損又は変形を防ぐために必要な強度を有していればよい。以上の観点から、サポートプレート2としては、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂からなるもの等が挙げられる。
【0093】
〔接着層3〕
基板1とサポートプレート2とを貼り付けるための層であり、本発明の一実施形態に係る接着剤組成物を用いて形成される。接着層3は、接着剤組成物の塗布方法及び接着層3の膜厚等に応じて、希釈溶剤により接着剤組成物の適宜粘度を調整して形成するとよい。
【0094】
接着層3は、例えば、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法により、接着剤組成物を基板1又はサポートプレート2に塗布することで形成することができる。
【0095】
接着層3の厚さは、貼り付けの対象となる基板1及びサポートプレート2の種類、貼り付け後の基板1に施される処理等に応じて適宜設定すればよい。ここで、接着層3の厚さは、10μm以上、150μm以下の範囲内であることが好ましく、15μm以上、100μm以下の範囲内であることがより好ましい。
【0096】
<第1の実施形態に係る剥離方法>
図1を用いて、一実施形態(第1の実施形態)に係る剥離方法をより詳細に説明する。本実施形態に係る剥離方法は、本発明の一実施形態に係る積層体10における接着層3の外周部の少なくとも一部を除去する予備処理工程と(図1の(a)及び(b))、積層体10における基板1からサポートプレート2を剥離する剥離工程と(図1の(c))を包含している。
【0097】
これによって、予備処理工程において、積層体10における接着層3を除去した部分に、剥離工程において積層体10に加える力を集中させることができる。
従って、剥離工程において積層体10に過度な力を加えなくても基板1からサポートプレート2を剥離することができる。
【0098】
このため、本実施形態に係る剥離方法によれば、光を吸収することにより変質する分離層を積層体10に設ける必要がない。
【0099】
また、図1の(d)及び(e)に示すように、本実施形態に係る剥離方法では、剥離工程の後、サポートプレート2を剥離した基板1から接着層3を剥離する接着層剥離工程を包含している。
【0100】
これによって、サポートプレート2を剥離した基板1から接着層3を好適に除去することができる。」
(ウ)「【0109】
〔剥離工程〕
図1の(c)に示すように、剥離工程では、基板1が底面側に位置するように積層体10を固定し、積層体10の上面側に位置するサポートプレート2に力を加えることによって、積層体10における基板1からサポートプレート2を剥離する。
【0110】
ここで、積層体10は、予備処理工程によってサポートプレート2に接着している接着層3の一部が除去されているため、積層体10のサポートプレート2に加えられる力は、当該接着層3が除去された部分に集中する。また、予備処理工程において接着層3が除去された部分は、剥離溶剤によって接着性が低下している。このため、積層体10のサポートプレート2に加えられる力を、接着層3が除去された部分により好適に集中させることができる。また、予備処理工程において、接着層3の外周部分の端部から少なくとも2mm以上の深さまで、接着層3を除去しておけば、より好適に接着層3が除去された部分に剥離工程において加える力を集中させることができる。
【0111】
また、本実施形態に係る剥離方法は、一実施形態に係る積層体10に対して好適に行なわれる。ここで、積層体10の接着層3は離型剤を含む接着剤組成物によって形成されており、接着層3の接着性が調整されている。このため、積層体10に過度な力を加えなくても、基板1からサポートプレート2を容易に剥離することができる。
【0112】
また、積層体10は接着層3に離型剤を含んでいるため、サポートプレート2は接着層3との界面において基板1から剥離する。このため、サポートプレート2の洗浄を省略するか、又は、サポートプレート2を洗浄するための溶剤の量を低減することができる。
【0113】
(剥離装置)
本実施形態に係る剥離方法は、一般的な剥離装置を用いて行なうことができる。例えば、剥離装置は、積層体10を固定するためのステージ(不図示)、及び積層体10に力を加えるための分離プレート(不図示)を少なくとも備えていればよい。ステージは、一例として、減圧手段によって吸引することで積層体10を固定するポーラス部であり得る。また、分離プレートは、一例として、サポートプレート2を把持することができる複数のクランプを備えているとよい。また、分離プレートは、フローティングジョイントを備えていることがより好ましい。
【0114】
剥離工程では、例えば、ステージの上に、基板1が底面側に位置するように積層体10を固定し、複数のクランプを備えた分離プレートよってサポートプレート2の外周端部の面取り部分を把持し、当該分離プレートを上昇させることによって積層体10に力を加えるとよい。
【0115】
また、剥離工程では、積層体10の平面に対して平行な円状の軌道、及び、積層体10の平面に対して垂直な弧状の軌跡をとるように可動するフローティングジョイント等を介して、分離プレートから積層体10に力を加えることがより好ましい。
【0116】
フローティングジョイントを介して分離プレートから積層体10に力を加えれば、接着層3が除去された部分に力が集中したときに、フローティングジョイントが可動し、分離プレートが傾き、これに伴い、サポートプレート2が傾く。これによって、サポートプレート2及び基板1の一部に過度な力が加わることを防止することができる。従って、サポートプレート2及び基板1が過度な力によって破損することを防止しつつ、より好適に基板1からサポートプレート2を剥離することができる。」
(エ)「【0185】
表12に示すように、実施例1及び2の積層体では、半導体ウエハ基板から支持体を剥離するときの剥離強度は、1.5kgfよりも低い結果となった。これに対し、比較例1の積層体では、剥離強度は3.8kgf以上の値を示し、基板及び支持体を破損することなく、基板から支持体を剥離することは不可能であった。」
(オ)図1
「
」
(カ)上記(オ)に摘記した先願明細書等1の図1(b)(c)から、サポートプレート2の基材面に対し垂直な方向に引き上げることによって、サポートプレート2と接着層3との界面で剥離していることが看取できる。
以上の記載事項と認定事項から、先願1の先願明細書等1には、以下の発明(以下、「先願発明1」という。)が記載されていると認められる。
「サポートプレートと、接着剤組成物をスピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法により塗布することで形成してなる接着層と、シリコンウエハ基板を、サポートプレートとシリコンウエハ基板とを接着層を介して貼り付けてなる積層体に用いる接着剤組成物であって、前記積層体のシリコンウエハ基板を固定し、サポートプレートの外周端部を、接着層との界面から、サポートプレートの基材面に対し垂直な方向に引き上げることによって、前記サポートプレートと前記接着層との界面で剥離可能で、かつ、前記引き上げる際にかかる力が、1.5kgfよりも低い、接着剤組成物。」
イ.対比
本件特許発明1と先願発明1とを対比すると、「接着層」が「仮接着膜」に相当し、「サポートプレート」が「キャリア基材」に相当し、「シリコンウエハ基板」が「デバイスウェハ」に相当する。また、本件特許発明1は「第1の基材」および「第2の基材」の一方を「キャリア基材」と特定し、他方を「デバイスウェハ」と特定しているから、先願発明1の「サポートプレート」は本件特許発明1の「キャリア基材」に相当するとともに「第1の基材」にも相当し、先願発明1の「シリコンウエハ基板」は本件特許発明1の「デバイスウェハ」に相当するとともに「第2の基材」にも相当する。このことから、先願発明1の「シリコンウエハ基板を固定し」が本件特許発明1の「第1の基材および第2の基材のいずれか一方を固定し」に相当し、先願発明1の「サポートプレートの外周端部」が本件特許発明1の「他方の基材の端部」に相当し、先願発明1の「シリコンウエハ基板を、サポートプレートとシリコンウエハ基板とを接着層を介して貼り付けてなる積層体」は本件特許発明1の「第1の基材」と「仮接着膜」と「第2の基材」をこの「順に互いに隣接して有する積層体」に相当する。
よって、本件特許発明1と先願発明1とは、
「第1の基材と、仮接着膜と、第2の基材を、前記順に互いに隣接して有する積層体であって、前記第1の基材および前記第2の基材の一方がキャリア基材であり、他方がデバイスウェハであり、前記積層体の、第1の基材および第2の基材のいずれか一方を固定し、他方の基材の端部を、仮接着膜との界面から、前記他方の基材の基材面に対し垂直な方向に引き上げることによって、前記キャリア基材と前記仮接着膜との界面で剥離可能である、積層体。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
本件特許発明1は仮接着膜の物性である「引張弾性率E」、「溶融粘度」、「表面自由エネルギー」、「せん断貯蔵弾性率G’」、「引張貯蔵弾性率E’」、「E’/G’」、「メルトフローレート」及び「塑性変形開始圧力P60」の値が特定の数値範囲であるのに対して、先願発明1は仮接着膜の物性値は不明である点。
(相違点2)
キャリア基材と仮接着膜との界面で剥離するためにかかる力が、本件特許発明1は25℃の温度で、50mm/分の速さで引き上げる際にかかる力が、フォースゲージを用いて測定したときの力が0.33N/mm以下であるのに対して、先願発明1は1.5kgfよりも低い点。
ウ.判断
事案に鑑みて、相違点1について検討する。
先願1の先願明細書等1には、仮接着膜の物性値を特定の数値範囲となすことについて、何らの記載もなく、また、それらが周知技術であることを示す証拠もない。また、本件特許発明1は、相違点1に係る構成を有することで、本件発明の課題である「ウェハを薄型にしても、反りを発生しにくくすることが可能な、積層体、仮接着用組成物および仮接着膜を提供する」(段落【0009】)ことを解決するものであるから、相違点1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は、先願発明1ではないから、特許法第29条の2の発明に該当しない。
エ.その余の本件特許発明
本件特許発明17又は本件特許発明20と先願発明1とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、実質的に本件特許発明1と先願発明1の上記一致点及び相違点と同様である。そうすると、上記ウ.の判断と同様の理由により、本件発明17又は本件特許発明20は、先願発明1ではないから、特許法第29条の2の発明に該当しない。
また、本件特許発明9~16、18~19、21~22は、本件特許発明1、17又は20をさらに限定したものであるから、特許法第29条の2の発明に該当しない。
3.小括
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は、採用することができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1、9~16、17~19、20~22に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができず、また、他に本件特許発明1、9~16、17~19、20~22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項2~8は、本件訂正請求による訂正が認められることにより、削除されたため、本件特許発明2~8についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。よって、本件特許発明2~8についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700517