特許異議申立
2019-700396
成形材料、成形材料の集合体、及びそれらの製造方法
- 審判番号
- 2019-700396
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-515160
- 登録番号
- 特許第6427719号(P6427719)
- 請求日
- 2019年05月17日
- 審決日
- 2020年06月15日
- 公報発行日
- 2020年09月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】帝人株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人航栄特許事務所
- 【異議申立人】東レ 株式会社
- 【異議申立人代理人】清流国際特許業務法人
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 大島 祥吾
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6427719号発明「成形材料、成形材料の集合体、及びそれらの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6427719号の明細書及び特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~13、31]、[14~17]、[18~30、32]について訂正することを認める。
特許第6427719号の請求項6、23に係る特許を取り消す。
特許第6427719号の請求項1ないし5、7ないし22、24ないし32に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6427719号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~30に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)10月17日(優先権主張 平成28年11月1日)を国際出願日とする出願であって、平成30年11月2日にその特許権の設定登録(請求項の数30)がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和1年5月17日に特許異議申立人 東レ株式会社(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年8月26日付けで取消理由が通知され、同年10月25日に特許権者 帝人株式会社(以下、「特許権者」という。)より意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)がされ、同年11月12日付けで特許法第120条の5第5項に基づく通知とともに審尋を行ったところ、同年12月11日に特許異議申立人より意見書および回答書の提出がされ、令和2年1月31日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、特許権者からの応答がなかったものである。
第2 訂正の拒否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「100≦F/L(N/m)」と記載されているのを、「100≦F/L(N/m)≦10,000」に訂正する。
(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2~13及び31も同様に訂正する。)
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6に「熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、成形材料の集合体が下記式(3)を満たす、請求項1~5いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
|S1-S2|<1.5・・・(3)」と記載されているのを、「熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、成形材料の集合体が下記式(3)を満たす、請求項1~5いずれか1項に記載の成形材料の集合体。ただし、SP値は、ポリカーボネート(帝人株式会社製L-1225Y)の値が9.7(cal/cm3)1/2、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業製PLACCEL(登録商標)H1P 分子量10000)の値が10.2(cal/cm3)1/2、トリフェニルホスフェートの値が10.5(cal/cm3)1/2となる算出方法で算出される値である。
|S1-S2|<1.5・・・(3)」に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に「炭素繊維束の軸方向の長さが1~30mmである、請求項1~6いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」と記載されているのを、「炭素繊維束の軸方向の長さが1~30mmである、請求項1~4いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8に「熱可塑性樹脂が非晶性樹脂を含む、請求項2~7いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」と記載されているのを、「熱可塑性樹脂が非晶性樹脂を含む、請求項2~4及び7いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」に訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に「熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項2~8いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」と記載されているのを、「熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項2、3、7及び8いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」に訂正する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10に「熱可塑性樹脂は炭素繊維束内部に含浸していない、請求項1~9いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」と記載されているのを、「熱可塑性樹脂は炭素繊維束内部に含浸していない、請求項1~4及び7~9いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」に訂正する。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項11に「F/L(N/m)<100,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する、請求項1~10いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」と記載されているのを、「F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料(ただし、下記実施例2により得られた芯鞘構造の柱状ペレットを除く)が、全集合体のうち30%以上存在する、請求項1~4及び7~10いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
(参考例1)
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの調製>
撹拌機付きの1000リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム118kg(1000モル)、96%水酸化ナトリウム42.3kg(1014モル)、N-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を163kg(1646モル)、酢酸ナトリウム24.6kg(300モル)、およびイオン交換水150kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水211kgおよびNMP4kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p-ジクロロベンゼン147kg(1004モル)、NMP129kg(1300モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水を18kg(1000モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を376kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)14.3kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、粗PPS樹脂とスラリー(C)を10kg得た。スラリー(C)をロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換後、減圧下100~160℃で1.5時間処理した後、真空乾燥機で160℃、1時間処理した。得られた固形物中のNMP量は3重量%であった。
この固形物にイオン交換水12kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水12kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィドオリゴマー100gを得た。ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが所定量に達するまで上記操作を繰り返した。
得られたポリフェニレンスルフィドオリゴマーを4g分取してクロロホルム120gで3時間ソックスレー抽出した。得られた抽出液からクロロホルムを留去して得られた固体に再度クロロホルム20gを加え、室温で溶解しスラリー状の混合液を得た。これをメタノール250gに撹拌しながらゆっくりと滴下し、沈殿物を目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を得た。
この白色粉末の重量平均分子量は900であった。この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はポリフェニレンスルフィド(PAS)であることが判明した。また、示差走査型熱量計を用いてこの白色粉末の熱的特性を分析した結果(昇温速度40℃/分)、約200~260℃にブロードな吸熱を示し、ピーク温度は215℃であることがわかった。
また高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、さらにMALDI-TOF-MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4~11の環式ポリフェニレンスルフィドおよび繰り返し単位数2~11の直鎖状ポリフェニレンスルフィドからなる混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドと直鎖状ポリフェニレンスルフィドの重量比は9:1であることがわかった。
(実施例2)
参考例1で調製したポリフェニレンスルフィドプレポリマーを、240℃の溶融バス中で溶融させ、ギアポンプにてキスコーターに供給する。230℃に加熱されたロール上にキスコーターからポリフェニレンスルフィドプレポリマーを塗布し、被膜を形成させた。
このロール上に炭素繊維トレカ(登録商標)T700S-24K(東レ(株)製)を接触させながら通過させて、炭素繊維束の単位長さあたりに一定量のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた。
ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた炭素繊維を、350℃に加熱された炉内へ供給し、ベアリングで自由に回転する、一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、かつ葛折り状に炉内に設置された10個のロールバー(φ200mm)を通過させてポリフェニレンスルフィドプレポリマーを炭素繊維束に十分に含浸させながらPASに高重合度体に転化させた。次に、炉内から引き出した炭素繊維ストランドにエアを吹き付けて冷却した後、ドラムワインダーで巻き取った。
なお、巻き取った炭素繊維束から、10mm長のストランドを10本カットし、炭素繊維とポリアリーレンスルフィドを分離するために、ソックスレー抽出器を用い、1-クロロナフタレンを用いて、210℃で6時間還流を行い、抽出したポリアリーレンスルフィドを分子量の測定に供した。得られたPPSの重量平均分子量(Mw)は26,800、数平均分子量(Mn)14,100、分散度(Mw/Mn)は1.90であった。次に、抽出したポリアリーレンスルフィドの重量減少率△Wrを測定したところ、0.09%であった。
続いて、熱可塑性樹脂(C)として、トレリナA900(東レ(株)製PPS樹脂、融点278℃)を360℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、得られた連続した強化繊維束(A)とポリアリーレンスルフィド(B)からなるストランドも上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(C)を成分(A)と成分(B)の複合体に被覆した。このとき、強化繊維の含有率を20重量%とするように成分(C)の量を調整した。
上記記載の方法により得られたストランドを、冷却後、カッターにて7mmの長さに切断して芯鞘構造の柱状ペレット(長繊維ペレット)を得た。」に訂正する。
(請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12及び13も同様に訂正する。)
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~11いずれか1項に記載の成形材料の集合体であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料の集合体。」と記載されているのを、「請求項1~4及び7~11いずれか1項に記載の成形材料の集合体であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料の集合体。」に訂正する。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項13に「成形材料の炭素繊維束の軸方向に直交する方向に切断した際の断面の形状の長径D1と短径D2との比であるD1/D2が1.1以上1.8以下である、請求項1~12いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」と記載されているのを、「成形材料の炭素繊維束の軸方向に直交する方向に切断した際の断面の形状の長径D1と短径D2との比であるD1/D2が1.1以上1.8以下である、請求項1~4及び7~12いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」に訂正する。
(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項14に「含浸助剤を含む炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂を被覆した芯鞘構造の成形材料の製造方法であって、含浸助剤が20℃で固体であり、該炭素繊維束を、予め、含浸助剤が結晶性樹脂の場合は融点以上、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度以上に加熱した状態で、熱可塑性樹脂を被覆して一体化する、成形材料の製造方法。」と記載されているのを、「含浸助剤を含む炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂を被覆した芯鞘構造の成形材料の製造方法であって、含浸助剤が20℃で固体であり、該炭素繊維束を、予め、含浸助剤が結晶性樹脂の場合は融点以上、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度以上に加熱した状態で、熱可塑性樹脂を被覆して一体化する、炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料の製造方法。」に訂正する。
(請求項14の記載を直接的又は間接的に引用する請求項15~17も同様に訂正する。)
(11) 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項15に「請求項14に記載の成形材料の製造方法を用いて、成形材料の集合体を製造する方法であって、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)<100,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する、成形材料の集合体の製造方法。」と記載されているのを、「請求項14に記載の成形材料の製造方法を用いて、成形材料の集合体を製造する方法であって、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する、成形材料の集合体の製造方法。」に訂正する。
(12) 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項18に「含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料であって、
含浸助剤が20℃で固体であり、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L(N/m)を満たす成形材料。」と記載されているのを、「含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料であって、
含浸助剤が20℃で固体であり、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L≦10,000(N/m)を満たす成形材料。」に訂正する。
(請求項18の記載を直接的又は間接的に引用する請求項19~29及び32も同様に訂正する。)
(13) 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項23に「熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、成形材料が下記式(3)を満たす、請求項18~22いずれか1項に記載の成形材料。
|S1-S2|<1.5 ・・・(3)」と記載されているのを、「熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、成形材料が下記式(3)を満たす、請求項18~22いずれか1項に記載の成形材料。ただし、SP値は、ポリカーボネート(帝人株式会社製L-1225Y)の値が9.7(cal/cm3)1/2、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業製PLACCEL(登録商標)H1P 分子量10000)の値が10.2(cal/cm3)1/2、トリフェニルホスフェートの値が10.5(cal/cm3)1/2となる算出方法で算出される値である。
|S1-S2|<1.5 ・・・(3)」に訂正する。
(14) 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項24に「炭素繊維束の軸方向の長さが1~30mmである、請求項18~23いずれか1項に記載の成形材料。」と記載されているのを、「炭素繊維束の軸方向の長さが1~30mmである、請求項18~21いずれか1項に記載の成形材料。」に訂正する。
(15) 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項25に「熱可塑性樹脂が非晶性樹脂を含む、請求項18~24いずれか1項に記載の成形材料。」と記載されているのを、「熱可塑性樹脂が非晶性樹脂を含む、請求項18~21及び24いずれか1項に記載の成形材料。」に訂正する。
(16) 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項26に「熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項18~25いずれか1項に記載の成形材料。」と記載されているのを、「熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項18~20、24及び25いずれか1項に記載の成形材料。」に訂正する。
(17) 訂正事項17
特許請求の範囲の請求項27に「熱可塑性樹脂は炭素繊維束内部に含浸していない、請求項18~26いずれか1項に記載の成形材料。」と記載されているのを、「熱可塑性樹脂は炭素繊維束内部に含浸していない、請求項18~21及び24~26いずれか1項に記載の成形材料。」に訂正する。
(18) 訂正事項18
特許請求の範囲の請求項28に「F/L(N/m)<100,000を満たす請求項18~27いずれか1項に記載の成形材料。」と記載されているのを、「F/L(N/m)≦10,000を満たす請求項18~21及び24~27いずれか1項に記載の成形材料(ただし、下記実施例2により得られた芯鞘構造の柱状ペレットを除く)。
(参考例1)
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの調製>
撹拌機付きの1000リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム118kg(1000モル)、96%水酸化ナトリウム42.3kg(1014モル)、N-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を163kg(1646モル)、酢酸ナトリウム24.6kg(300モル)、およびイオン交換水150kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水211kgおよびNMP4kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p-ジクロロベンゼン147kg(1004モル)、NMP129kg(1300モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水を18kg(1000モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を376kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)14.3kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、粗PPS樹脂とスラリー(C)を10kg得た。スラリー(C)をロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換後、減圧下100~160℃で1.5時間処理した後、真空乾燥機で160℃、1時間処理した。得られた固形物中のNMP量は3重量%であった。
この固形物にイオン交換水12kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水12kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィドオリゴマー100gを得た。ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが所定量に達するまで上記操作を繰り返した。
得られたポリフェニレンスルフィドオリゴマーを4g分取してクロロホルム120gで3時間ソックスレー抽出した。得られた抽出液からクロロホルムを留去して得られた固体に再度クロロホルム20gを加え、室温で溶解しスラリー状の混合液を得た。これをメタノール250gに撹拌しながらゆっくりと滴下し、沈殿物を目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を得た。
この白色粉末の重量平均分子量は900であった。この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はポリフェニレンスルフィド(PAS)であることが判明した。また、示差走査型熱量計を用いてこの白色粉末の熱的特性を分析した結果(昇温速度40℃/分)、約200~260℃にブロードな吸熱を示し、ピーク温度は215℃であることがわかった。
また高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、さらにMALDI-TOF-MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4~11の環式ポリフェニレンスルフィドおよび繰り返し単位数2~11の直鎖状ポリフェニレンスルフィドからなる混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドと直鎖状ポリフェニレンスルフィドの重量比は9:1であることがわかった。
(実施例2)
参考例1で調製したポリフェニレンスルフィドプレポリマーを、240℃の溶融バス中で溶融させ、ギアポンプにてキスコーターに供給する。230℃に加熱されたロール上にキスコーターからポリフェニレンスルフィドプレポリマーを塗布し、被膜を形成させた。
このロール上に炭素繊維トレカ(登録商標)T700S-24K(東レ(株)製)を接触させながら通過させて、炭素繊維束の単位長さあたりに一定量のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた。
ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた炭素繊維を、350℃に加熱された炉内へ供給し、ベアリングで自由に回転する、一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、かつ葛折り状に炉内に設置された10個のロールバー(φ200mm)を通過させてポリフェニレンスルフィドプレポリマーを炭素繊維束に十分に含浸させながらPASに高重合度体に転化させた。次に、炉内から引き出した炭素繊維ストランドにエアを吹き付けて冷却した後、ドラムワインダーで巻き取った。
なお、巻き取った炭素繊維束から、10mm長のストランドを10本カットし、炭素繊維とポリアリーレンスルフィドを分離するために、ソックスレー抽出器を用い、1-クロロナフタレンを用いて、210℃で6時間還流を行い、抽出したポリアリーレンスルフィドを分子量の測定に供した。得られたPPSの重量平均分子量(Mw)は26,800、数平均分子量(Mn)14,100、分散度(Mw/Mn)は1.90であった。次に、抽出したポリアリーレンスルフィドの重量減少率△Wrを測定したところ、0.09%であった。
続いて、熱可塑性樹脂(C)として、トレリナA900(東レ(株)製PPS樹脂、融点278℃)を360℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、得られた連続した強化繊維束(A)とポリアリーレンスルフィド(B)からなるストランドも上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(C)を成分(A)と成分(B)の複合体に被覆した。このとき、強化繊維の含有率を20重量%とするように成分(C)の量を調整した。
上記記載の方法により得られたストランドを、冷却後、カッターにて7mmの長さに切断して芯鞘構造の柱状ペレット(長繊維ペレット)を得た。」に訂正する。
(請求項28の記載を直接的又は間接的に引用する請求項29及び30も同様に訂正する。)
(19) 訂正事項19
特許請求の範囲の請求項29に「請求項18~28いずれか1項に記載の成形材料であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料。」と記載されているのを、「請求項18~21及び24~28いずれか1項に記載の成形材料であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料。」に訂正する。
(20) 訂正事項20
特許請求の範囲の請求項30に「成形材料の炭素繊維束の軸方向に直交する方向に切断した際の断面の形状の長径D1と短径D2との比であるD2/D1が1.1以上1.8以下である、請求項18~29いずれか1項に記載の成形材料。」と記載されているのを、「成形材料の炭素繊維束の軸方向に直交する方向に切断した際の断面の形状の長径D1と短径D2との比であるD2/D1が1.1以上1.8以下である、請求項18~21及び24~29いずれか1項に記載の成形材料。」に訂正する。
(21) 訂正事項21
特許請求の範囲の請求項9に「熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項2~8いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」とあるうち、請求項4(訂正後の請求項4)を引用するものについて、「熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項4に記載の成形材料の集合体。」と記載し、新たに請求項31とする。
(22) 訂正事項22
特許請求の範囲の請求項26に「熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項18~25いずれか1項に記載の成形材料。」とあるうち、請求項21(訂正後の請求項21)を引用するものについて、「熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項21に記載の成形材料。」と記載し、新たに請求項32とする。
(23) 訂正事項23
願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された
「 上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]
含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料の集合体であって、
含浸助剤が20℃で固体であり、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する、成形材料の集合体。
[2]
前記成形材料が、炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂が被覆された芯鞘構造であって、炭素繊維束の軸方向の長さと、成形材料の長さとが、実質同一である[1]に記載の成形材料の集合体。
[3]
成形材料を軸心方向に切断して観察した際、成形材料が下記式(1)を満たす、[2]に記載の成形材料の集合体。
0.4≦炭素繊維単糸面積×炭素繊維束の単糸数/熱可塑性樹脂の内周で囲まれた面積≦0.9・・・(1)
ここで、熱可塑性樹脂の内周で囲まれた面積は、成形材料の集合体の平均値である。
[4]
含浸助剤が、リン酸エステルおよび脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルからなる群より選ばれる1種類以上である[1]~[3]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[5]
熱可塑性樹脂の線膨張率K1(10-4/℃)、含浸助剤の線膨張率K2(10-4/℃)としたとき、成形材料の集合体が下記式(2)を満たす、[1]~[4]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
0.1<|K1-K2|・・・(2)
[6]
熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、成形材料の集合体が下記式(3)を満たす、[1]~[5]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
|S1-S2|<1.5・・・(3)
[7]
炭素繊維束の軸方向の長さが1~30mmである、[1]~[6]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[8]
熱可塑性樹脂が非晶性樹脂を含む、[2]~[7]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[9]
熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、[2]~[8]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[10]
熱可塑性樹脂は炭素繊維束内部に含浸していない、[1]~[9]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[11]
F/L(N/m)<100,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する、[1]~[10]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[12]
[1]~[11]いずれか1項に記載の成形材料の集合体であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料の集合体。
[13]
成形材料の炭素繊維束の軸方向に直交する方向に切断した際の断面の形状の長径D1と短径D2との比であるD1/D2が1.1以上1.8以下である、[1]~[12]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[14]
含浸助剤を含む炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂を被覆した芯鞘構造の成形材料の製造方法であって、含浸助剤が20℃で固体であり、該炭素繊維束を、予め、含浸助剤が結晶性樹脂の場合は融点以上、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度以上に加熱した状態で、熱可塑性樹脂を被覆して一体化する、成形材料の製造方法。
[15]
[14]に記載の成形材料の製造方法を用いて、成形材料の集合体を製造する方法であって、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)<100,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する、成形材料の集合体の製造方法。
[16]
炭素繊維束に熱可塑性樹脂を被覆して一体化した被覆体を製造し、これを熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下に冷却した後、切断して成形材料を製造する、[14]に記載の成形材料の製造方法。
[17]
[14]又は[16]に記載の成形材料の製造方法であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料の製造方法。
[18]
含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料であって、
含浸助剤が20℃で固体であり、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L(N/m)を満たす成形材料。
[19]
前記成形材料が、炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂が被覆された芯鞘構造であって、炭素繊維束の軸方向の長さと、成形材料の長さとが、実質同一である[18]に記載の成形材料。
[20]
成形材料を軸心方向に切断して観察した際、成形材料が下記式(1)を満たす、[19]に記載の成形材料。
0.4≦炭素繊維単糸面積×炭素繊維束の単糸数/熱可塑性樹脂の内周で囲まれた面積≦0.9・・・(1)
[21]
含浸助剤が、リン酸エステルおよび脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルからなる群より選ばれる1種類以上である[18]~[20]いずれか1項に記載の成形材料。
[22]
熱可塑性樹脂の線膨張率K1(10-4/℃)、含浸助剤の線膨張率K2(10-4/℃)としたとき、成形材料が下記式(2)を満たす、[18]~[21]いずれか1項に記載の成形材料。
0.1<|K1-K2|・・・(2)
[23]
熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、成形材料が下記式(3)を満たす、[18]~[22]いずれか1項に記載の成形材料。
|S1-S2|<1.5・・・(3)
[24]
炭素繊維束の軸方向の長さが1~30mmである、[18]~[23]いずれか1項に記載の成形材料。
[25]
熱可塑性樹脂が非晶性樹脂を含む、[18]~[24]いずれか1項に記載の成形材料。
[26]
熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、[18]~[25]いずれか1項に記載の成形材料。
[27]
熱可塑性樹脂は炭素繊維束内部に含浸していない、[18]~[26]いずれか1項に記載の成形材料。
[28]
F/L(N/m)<100,000を満たす[18]~[27]いずれか1項に記載の成形材料。
[29]
[18]~[28]いずれか1項に記載の成形材料であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料。
[30]
成形材料の炭素繊維束の軸方向に直交する方向に切断した際の断面の形状の長径D1と短径D2との比であるD2/D1が1.1以上1.8以下である、[18]~[29]いずれか1項に記載の成形材料。
本発明は、上記[1]~[30]に関するものであるが、以下、それ以外の事項についても参考のため記載している。」を、
「 上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]
含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料の集合体であって、
含浸助剤が20℃で固体であり、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する、成形材料の集合体。
[2]
前記成形材料が、炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂が被覆された芯鞘構造であって、炭素繊維束の軸方向の長さと、成形材料の長さとが、実質同一である[1]に記載の成形材料の集合体。
[3]
成形材料を軸心方向に切断して観察した際、成形材料が下記式(1)を満たす、[2]に記載の成形材料の集合体。
0.4≦炭素繊維単糸面積×炭素繊維束の単糸数/熱可塑性樹脂の内周で囲まれた面積≦0.9・・・(1)
ここで、熱可塑性樹脂の内周で囲まれた面積は、成形材料の集合体の平均値である。
[4]
含浸助剤が、リン酸エステルおよび脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルからなる群より選ばれる1種類以上である[1]~[3]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[5]
熱可塑性樹脂の線膨張率K1(10-4/℃)、含浸助剤の線膨張率K2(10-4/℃)としたとき、成形材料の集合体が下記式(2)を満たす、[1]~[4]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
0.1<|K1-K2|・・・(2)
[6]
熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、成形材料の集合体が下記式(3)を満たす、[1]~[5]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。ただし、SP値は、ポリカーボネート(帝人株式会社製L-1225Y)の値が9.7(cal/cm3)1/2、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業製PLACCEL(登録商標)H1P 分子量10000)の値が10.2(cal/cm3)1/2、トリフェニルホスフェートの値が10.5(cal/cm3)1/2となる算出方法で算出される値である。
|S1-S2|<1.5・・・(3)
[7]
炭素繊維束の軸方向の長さが1~30mmである、[1]~[4]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[8]
熱可塑性樹脂が非晶性樹脂を含む、[2]~[4]及び[7]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[9]
熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、[2]、[3]、[7]及び[8]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[10]
熱可塑性樹脂は炭素繊維束内部に含浸していない、[1]~[4]及び[7]~[9]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[11]
F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料(ただし、下記実施例2により得られた芯鞘構造の柱状ペレットを除く)が、全集合体のうち30%以上存在する、[1]~[4]及び[7]~[10]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
(参考例1)
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの調製>
撹拌機付きの1000リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム118kg(1000モル)、96%水酸化ナトリウム42.3kg(1014モル)、N-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を163kg(1646モル)、酢酸ナトリウム24.6kg(300モル)、およびイオン交換水150kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水211kgおよびNMP4kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p-ジクロロベンゼン147kg(1004モル)、NMP129kg(1300モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水を18kg(1000モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を376kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)14.3kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、粗PPS樹脂とスラリー(C)を10kg得た。スラリー(C)をロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換後、減圧下100~160℃で1.5時間処理した後、真空乾燥機で160℃、1時間処理した。得られた固形物中のNMP量は3重量%であった。
この固形物にイオン交換水12kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水12kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィドオリゴマー100gを得た。ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが所定量に達するまで上記操作を繰り返した。
得られたポリフェニレンスルフィドオリゴマーを4g分取してクロロホルム120gで3時間ソックスレー抽出した。得られた抽出液からクロロホルムを留去して得られた固体に再度クロロホルム20gを加え、室温で溶解しスラリー状の混合液を得た。これをメタノール250gに撹拌しながらゆっくりと滴下し、沈殿物を目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を得た。
この白色粉末の重量平均分子量は900であった。この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はポリフェニレンスルフィド(PAS)であることが判明した。また、示差走査型熱量計を用いてこの白色粉末の熱的特性を分析した結果(昇温速度40℃/分)、約200~260℃にブロードな吸熱を示し、ピーク温度は215℃であることがわかった。
また高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、さらにMALDI-TOF-MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4~11の環式ポリフェニレンスルフィドおよび繰り返し単位数2~11の直鎖状ポリフェニレンスルフィドからなる混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドと直鎖状ポリフェニレンスルフィドの重量比は9:1であることがわかった。
(実施例2)
参考例1で調製したポリフェニレンスルフィドプレポリマーを、240℃の溶融バス中で溶融させ、ギアポンプにてキスコーターに供給する。230℃に加熱されたロール上にキスコーターからポリフェニレンスルフィドプレポリマーを塗布し、被膜を形成させた。
このロール上に炭素繊維トレカ(登録商標)T700S-24K(東レ(株)製)を接触させながら通過させて、炭素繊維束の単位長さあたりに一定量のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた。
ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた炭素繊維を、350℃に加熱された炉内へ供給し、ベアリングで自由に回転する、一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、かつ葛折り状に炉内に設置された10個のロールバー(φ200mm)を通過させてポリフェニレンスルフィドプレポリマーを炭素繊維束に十分に含浸させながらPASに高重合度体に転化させた。次に、炉内から引き出した炭素繊維ストランドにエアを吹き付けて冷却した後、ドラムワインダーで巻き取った。
なお、巻き取った炭素繊維束から、10mm長のストランドを10本カットし、炭素繊維とポリアリーレンスルフィドを分離するために、ソックスレー抽出器を用い、1-クロロナフタレンを用いて、210℃で6時間還流を行い、抽出したポリアリーレンスルフィドを分子量の測定に供した。得られたPPSの重量平均分子量(Mw)は26,800、数平均分子量(Mn)14,100、分散度(Mw/Mn)は1.90であった。次に、抽出したポリアリーレンスルフィドの重量減少率△Wrを測定したところ、0.09%であった。
続いて、熱可塑性樹脂(C)として、トレリナA900(東レ(株)製PPS樹脂、融点278℃)を360℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、得られた連続した強化繊維束(A)とポリアリーレンスルフィド(B)からなるストランドも上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(C)を成分(A)と成分(B)の複合体に被覆した。このとき、強化繊維の含有率を20重量%とするように成分(C)の量を調整した。
上記記載の方法により得られたストランドを、冷却後、カッターにて7mmの長さに切断して芯鞘構造の柱状ペレット(長繊維ペレット)を得た。
[12]
[1]~[4]及び[7]~[11]いずれか1項に記載の成形材料の集合体であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料の集合体。
[13]
成形材料の炭素繊維束の軸方向に直交する方向に切断した際の断面の形状の長径D1と短径D2との比であるD1/D2が1.1以上1.8以下である、[1]~[4]及び[7]~[12]いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
[14]
含浸助剤を含む炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂を被覆した芯鞘構造の成形材料の製造方法であって、含浸助剤が20℃で固体であり、該炭素繊維束を、予め、含浸助剤が結晶性樹脂の場合は融点以上、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度以上に加熱した状態で、熱可塑性樹脂を被覆して一体化する、炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料の製造方法。
[15]
[14]に記載の成形材料の製造方法を用いて、成形材料の集合体を製造する方法であって、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する、成形材料の集合体の製造方法。
[16]
炭素繊維束に熱可塑性樹脂を被覆して一体化した被覆体を製造し、これを熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下に冷却した後、切断して成形材料を製造する、[14]に記載の成形材料の製造方法。
[17]
[14]又は[16]に記載の成形材料の製造方法であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料の製造方法。
[18]
含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料であって、
含浸助剤が20℃で固体であり、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料。
[19]
前記成形材料が、炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂が被覆された芯鞘構造であって、炭素繊維束の軸方向の長さと、成形材料の長さとが、実質同一である[18]に記載の成形材料。
[20]
成形材料を軸心方向に切断して観察した際、成形材料が下記式(1)を満たす、[19]に記載の成形材料。
0.4≦炭素繊維単糸面積×炭素繊維束の単糸数/熱可塑性樹脂の内周で囲まれた面積≦0.9・・・(1)
[21]
含浸助剤が、リン酸エステルおよび脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルからなる群より選ばれる1種類以上である[18]~[20]いずれか1項に記載の成形材料。
[22]
熱可塑性樹脂の線膨張率K1(10-4/℃)、含浸助剤の線膨張率K2(10-4/℃)としたとき、成形材料が下記式(2)を満たす、[18]~[21]いずれか1項に記載の成形材料。
0.1<|K1-K2|・・・(2)
[23]
熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、成形材料が下記式(3)を満たす、[18]~[22]いずれか1項に記載の成形材料。ただし、SP値は、ポリカーボネート(帝人株式会社製L-1225Y)の値が9.7(cal/cm3)1/2、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業製PLACCEL(登録商標)H1P 分子量10000)の値が10.2(cal/cm3)1/2、トリフェニルホスフェートの値が10.5(cal/cm3)1/2となる算出方法で算出される値である。
|S1-S2|<1.5・・・(3)
[24]
炭素繊維束の軸方向の長さが1~30mmである、[18]~[21]いずれか1項に記載の成形材料。
[25]
熱可塑性樹脂が非晶性樹脂を含む、[18]~[21]及び[24]いずれか1項に記載の成形材料。
[26]
熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、[18]~[20]、[24]及び[25]いずれか1項に記載の成形材料。
[27]
熱可塑性樹脂は炭素繊維束内部に含浸していない、[18]~[21]及び[24]~[26]いずれか1項に記載の成形材料。
[28]
F/L(N/m)≦10,000を満たす[18]~[21]及び[24]~[27]いずれか1項に記載の成形材料(ただし、下記実施例2により得られた芯鞘構造の柱状ペレットを除く)。
(参考例1)
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの調製>
撹拌機付きの1000リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム118kg(1000モル)、96%水酸化ナトリウム42.3kg(1014モル)、N-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を163kg(1646モル)、酢酸ナトリウム24.6kg(300モル)、およびイオン交換水150kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水211kgおよびNMP4kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p-ジクロロベンゼン147kg(1004モル)、NMP129kg(1300モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水を18kg(1000モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を376kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)14.3kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、粗PPS樹脂とスラリー(C)を10kg得た。スラリー(C)をロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換後、減圧下100~160℃で1.5時間処理した後、真空乾燥機で160℃、1時間処理した。得られた固形物中のNMP量は3重量%であった。
この固形物にイオン交換水12kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水12kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィドオリゴマー100gを得た。ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが所定量に達するまで上記操作を繰り返した。
得られたポリフェニレンスルフィドオリゴマーを4g分取してクロロホルム120gで3時間ソックスレー抽出した。得られた抽出液からクロロホルムを留去して得られた固体に再度クロロホルム20gを加え、室温で溶解しスラリー状の混合液を得た。これをメタノール250gに撹拌しながらゆっくりと滴下し、沈殿物を目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を得た。
この白色粉末の重量平均分子量は900であった。この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はポリフェニレンスルフィド(PAS)であることが判明した。また、示差走査型熱量計を用いてこの白色粉末の熱的特性を分析した結果(昇温速度40℃/分)、約200~260℃にブロードな吸熱を示し、ピーク温度は215℃であることがわかった。
また高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、さらにMALDI-TOF-MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4~11の環式ポリフェニレンスルフィドおよび繰り返し単位数2~11の直鎖状ポリフェニレンスルフィドからなる混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドと直鎖状ポリフェニレンスルフィドの重量比は9:1であることがわかった。
(実施例2)
参考例1で調製したポリフェニレンスルフィドプレポリマーを、240℃の溶融バス中で溶融させ、ギアポンプにてキスコーターに供給する。230℃に加熱されたロール上にキスコーターからポリフェニレンスルフィドプレポリマーを塗布し、被膜を形成させた。
このロール上に炭素繊維トレカ(登録商標)T700S-24K(東レ(株)製)を接触させながら通過させて、炭素繊維束の単位長さあたりに一定量のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた。
ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた炭素繊維を、350℃に加熱された炉内へ供給し、ベアリングで自由に回転する、一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、かつ葛折り状に炉内に設置された10個のロールバー(φ200mm)を通過させてポリフェニレンスルフィドプレポリマーを炭素繊維束に十分に含浸させながらPASに高重合度体に転化させた。次に、炉内から引き出した炭素繊維ストランドにエアを吹き付けて冷却した後、ドラムワインダーで巻き取った。
なお、巻き取った炭素繊維束から、10mm長のストランドを10本カットし、炭素繊維とポリアリーレンスルフィドを分離するために、ソックスレー抽出器を用い、1-クロロナフタレンを用いて、210℃で6時間還流を行い、抽出したポリアリーレンスルフィドを分子量の測定に供した。得られたPPSの重量平均分子量(Mw)は26,800、数平均分子量(Mn)14,100、分散度(Mw/Mn)は1.90であった。次に、抽出したポリアリーレンスルフィドの重量減少率△Wrを測定したところ、0.09%であった。
続いて、熱可塑性樹脂(C)として、トレリナA900(東レ(株)製PPS樹脂、融点278℃)を360℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、得られた連続した強化繊維束(A)とポリアリーレンスルフィド(B)からなるストランドも上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(C)を成分(A)と成分(B)の複合体に被覆した。このとき、強化繊維の含有率を20重量%とするように成分(C)の量を調整した。
上記記載の方法により得られたストランドを、冷却後、カッターにて7mmの長さに切断して芯鞘構造の柱状ペレット(長繊維ペレット)を得た。
[29]
[18]~[21]及び[24]~[28]いずれか1項に記載の成形材料であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料。
[30]
成形材料の炭素繊維束の軸方向に直交する方向に切断した際の断面の形状の長径D1と短径D2との比であるD2/D1が1.1以上1.8以下である、[18]~[21]及び[24]~[29]いずれか1項に記載の成形材料。
[31]
熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項4に記載の成形材料の集合体。
[32]
熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項21に記載の成形材料。
本発明は、上記[1]~[30]に関するものであるが、以下、それ以外の事項についても参考のため記載している。」に訂正する。
なお、本件訂正請求における請求項1、6ないし13、31に係る訂正は、一群の請求項[1~13]に対して請求されたもの、請求項14、15に係る訂正は、一群の請求項[14~17]に対して請求されたもの、請求項18、23、30、32に係る訂正は、一群の請求項[18~30]に対して請求されたものである。また、本件訂正請求における明細書に係る訂正は、一群の請求項[1~13]、[14~17]、[18~30]に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1、12について
訂正事項1、12は、F/Lの上限を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0029】の、「また、射出成形における炭素繊維の分散不良の観点から、F/Lは100,000(N/m)未満であることが好ましく、10,000(N/m)以下がより好ましい。」との記載から、請求項1に係る訂正は、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項1の記載を引用する請求項2~13及び31も同様である。
また、請求項18に係る訂正及び請求項18の記載を引用する請求項19~29及び32も同様である。
(2) 訂正事項2、13について
訂正事項2、13は、溶解性パラメーター(SP値)の算出方法を明確にするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0046】には、
「(熱可塑性樹脂)
ポリカーボネート:帝人株式会社製:L-1225Y
ガラス転移温度:150℃
線膨張率(10-4/℃):0.7
溶解性パラメーター:9.7(cal/cm3)1/2」との記載があり、
また、段落【0047】の、
「[実施例1]
含浸助剤として、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業製PLACCEL(登録商標)H1P 分子量10000)を用い、これを不揮発分20質量%にエマルジョン化した溶液内に炭素繊維束を通過させた後、ニップロールにて過剰に付着した溶液を取り除き、その後、180℃に加熱された熱風乾燥炉内を2分間かけて通過させ乾燥させることにより、含浸助剤を含む炭素繊維束を得た。更にその後、200℃に加熱した直径60mmの2本の金属製ロールに沿わせ、再度の加熱処理を行い、炭素繊維束に含まれる水分率を0.1wt%とした。この炭素繊維束に含まれる含浸助剤の含有量は、炭素繊維100質量部あたり10質量部であった。」との記載、段落【0049】の、「なお、熱可塑性樹脂の線膨張率K1(10-4/℃)が0.7、含浸助剤の線膨張率K2(10-4/℃)が1.2であるため、|K1-K2|は0.5であり、熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値S1((cal/cm3)1/2)が9.7、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)が10.2であるため、|S1-S2|は0.5である。」との記載、さらに、段落【0057】の、「[実施例8]
含浸助剤をポリカプロラクトンではなく、トリフェニルホスフェートを用い、プレヒートする際の、炭素繊維束の温度を170℃にしたこと以外は、実施例1同様に成形材料集合体を作成した。結果を表1に示す。
なお、熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値S1((cal/cm3)1/2)が9.7、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)が10.5であるため、|S1-S2|は0.8である。」との記載から、請求項6に係る訂正は、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、請求項23に係る訂正も同様である。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、請求項5又は請求項6を引用する請求項7を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4) 訂正事項4について
訂正事項4は、請求項5又は請求項6を引用する請求項8を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5) 訂正事項5について
訂正事項5は、請求項4ないし6を引用する請求項9を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6) 訂正事項6について
訂正事項6は、請求項5又は請求項6を引用する請求項10を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7) 訂正事項7について
訂正事項7のうち、「F/L(N/m)<100,000を満たす成形材料」を、「F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料」に変更する訂正は、F/Lの上限を100,000未満から10,000以下に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0029】の、「また、射出成形における炭素繊維の分散不良の観点から、F/Lは100,000(N/m)未満であることが好ましく、10,000(N/m)以下がより好ましい。」との記載から、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
次に、訂正事項7のうち、「請求項1~10いずれか1項に記載の成形材料の集合体」を、「請求項1~4及び7~10いずれか1項に記載の成形材料の集合体」に変更する訂正は、請求項5又は請求項6を引用する請求項11を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、訂正事項7のうち、「成形材料」を、「成形材料(ただし、下記実施例2により得られた芯鞘構造の柱状ペレットを除く)」とした上で、
「(参考例1)
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの調製>
撹拌機付きの1000リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム118kg(1000モル)、96%水酸化ナトリウム42.3kg(1014モル)、N-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を163kg(1646モル)、酢酸ナトリウム24.6kg(300モル)、およびイオン交換水150kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水211kgおよびNMP4kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p-ジクロロベンゼン147kg(1004モル)、NMP129kg(1300モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水を18kg(1000モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を376kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)14.3kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、粗PPS樹脂とスラリー(C)を10kg得た。スラリー(C)をロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換後、減圧下100~160℃で1.5時間処理した後、真空乾燥機で160℃、1時間処理した。得られた固形物中のNMP量は3重量%であった。
この固形物にイオン交換水12kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水12kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィドオリゴマー100gを得た。ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが所定量に達するまで上記操作を繰り返した。
得られたポリフェニレンスルフィドオリゴマーを4g分取してクロロホルム120gで3時間ソックスレー抽出した。得られた抽出液からクロロホルムを留去して得られた固体に再度クロロホルム20gを加え、室温で溶解しスラリー状の混合液を得た。これをメタノール250gに撹拌しながらゆっくりと滴下し、沈殿物を目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を得た。
この白色粉末の重量平均分子量は900であった。この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はポリフェニレンスルフィド(PAS)であることが判明した。また、示差走査型熱量計を用いてこの白色粉末の熱的特性を分析した結果(昇温速度40℃/分)、約200~260℃にブロードな吸熱を示し、ピーク温度は215℃であることがわかった。
また高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、さらにMALDI-TOF-MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4~11の環式ポリフェニレンスルフィドおよび繰り返し単位数2~11の直鎖状ポリフェニレンスルフィドからなる混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドと直鎖状ポリフェニレンスルフィドの重量比は9:1であることがわかった。
(実施例2)
参考例1で調製したポリフェニレンスルフィドプレポリマーを、240℃の溶融バス中で溶融させ、ギアポンプにてキスコーターに供給する。230℃に加熱されたロール上にキスコーターからポリフェニレンスルフィドプレポリマーを塗布し、被膜を形成させた。
このロール上に炭素繊維トレカ(登録商標)T700S-24K(東レ(株)製)を接触させながら通過させて、炭素繊維束の単位長さあたりに一定量のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた。
ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた炭素繊維を、350℃に加熱された炉内へ供給し、ベアリングで自由に回転する、一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、かつ葛折り状に炉内に設置された10個のロールバー(φ200mm)を通過させてポリフェニレンスルフィドプレポリマーを炭素繊維束に十分に含浸させながらPASに高重合度体に転化させた。次に、炉内から引き出した炭素繊維ストランドにエアを吹き付けて冷却した後、ドラムワインダーで巻き取った。
なお、巻き取った炭素繊維束から、10mm長のストランドを10本カットし、炭素繊維とポリアリーレンスルフィドを分離するために、ソックスレー抽出器を用い、1-クロロナフタレンを用いて、210℃で6時間還流を行い、抽出したポリアリーレンスルフィドを分子量の測定に供した。得られたPPSの重量平均分子量(Mw)は26,800、数平均分子量(Mn)14,100、分散度(Mw/Mn)は1.90であった。次に、抽出したポリアリーレンスルフィドの重量減少率△Wrを測定したところ、0.09%であった。
続いて、熱可塑性樹脂(C)として、トレリナA900(東レ(株)製PPS樹脂、融点278℃)を360℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、得られた連続した強化繊維束(A)とポリアリーレンスルフィド(B)からなるストランドも上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(C)を成分(A)と成分(B)の複合体に被覆した。このとき、強化繊維の含有率を20重量%とするように成分(C)の量を調整した。
上記記載の方法により得られたストランドを、冷却後、カッターにて7mmの長さに切断して芯鞘構造の柱状ペレット(長繊維ペレット)を得た。」との記載を加える訂正は、甲第2号証の実施例2を除くもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(8) 訂正事項8について
訂正事項8は、請求項5又は請求項6を引用する請求項12を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(9) 訂正事項9について
訂正事項9は、請求項5又は請求項6を引用する請求項13を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(10) 訂正事項10について
訂正事項10は、成形材料が、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす」ことを更に特定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0029】の、「また、射出成形における炭素繊維の分散不良の観点から、F/Lは100,000(N/m)未満であることが好ましく、10,000(N/m)以下がより好ましい。」との記載から、請求項14に係る訂正は、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項14の記載を引用する請求項15~17も同様である。
(11) 訂正事項11について
訂正事項11は、F/Lの上限を100,000未満から10,000以下に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0029】の、「また、射出成形における炭素繊維の分散不良の観点から、F/Lは100,000(N/m)未満であることが好ましく、10,000(N/m)以下がより好ましい。」との記載から、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(12) 訂正事項14について
訂正事項14は、請求項22又は請求項23を引用する請求項24を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(13) 訂正事項15について
訂正事項15は、請求項22又は請求項23を引用する請求項25を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(14) 訂正事項16について
訂正事項16は、請求項21、請求項22又は請求項23を引用する請求項26を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(15) 訂正事項17について
訂正事項17は、請求項22又は請求項23を引用する請求項27を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(16) 訂正事項18について
訂正事項18のうち、「F/L(N/m)<100,000を満たす成形材料」を、「F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料」に変更する訂正は、F/Lの上限を100,000未満から10,000以下に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0029】の、「また、射出成形における炭素繊維の分散不良の観点から、F/Lは100,000(N/m)未満であることが好ましく、10,000(N/m)以下がより好ましい。」との記載から、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
次に、訂正事項18のうち、「請求項18~27いずれか1項に記載の成形材料」を、「請求項18~21及び24~27いずれか1項に記載の成形材料」に変更する訂正は、請求項22又は請求項23を引用する請求項28を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、訂正事項18のうち、「成形材料。」を、「成形材料(ただし、下記実施例2により得られた芯鞘構造の柱状ペレットを除く)。
(参考例1)
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの調製>
撹拌機付きの1000リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム118kg(1000モル)、96%水酸化ナトリウム42.3kg(1014モル)、N-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を163kg(1646モル)、酢酸ナトリウム24.6kg(300モル)、およびイオン交換水150kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水211kgおよびNMP4kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p-ジクロロベンゼン147kg(1004モル)、NMP129kg(1300モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水を18kg(1000モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を376kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)14.3kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、粗PPS樹脂とスラリー(C)を10kg得た。スラリー(C)をロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換後、減圧下100~160℃で1.5時間処理した後、真空乾燥機で160℃、1時間処理した。得られた固形物中のNMP量は3重量%であった。
この固形物にイオン交換水12kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水12kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィドオリゴマー100gを得た。ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが所定量に達するまで上記操作を繰り返した。
得られたポリフェニレンスルフィドオリゴマーを4g分取してクロロホルム120gで3時間ソックスレー抽出した。得られた抽出液からクロロホルムを留去して得られた固体に再度クロロホルム20gを加え、室温で溶解しスラリー状の混合液を得た。これをメタノール250gに撹拌しながらゆっくりと滴下し、沈殿物を目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を得た。
この白色粉末の重量平均分子量は900であった。この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はポリフェニレンスルフィド(PAS)であることが判明した。また、示差走査型熱量計を用いてこの白色粉末の熱的特性を分析した結果(昇温速度40℃/分)、約200~260℃にブロードな吸熱を示し、ピーク温度は215℃であることがわかった。
また高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、さらにMALDI-TOF-MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4~11の環式ポリフェニレンスルフィドおよび繰り返し単位数2~11の直鎖状ポリフェニレンスルフィドからなる混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドと直鎖状ポリフェニレンスルフィドの重量比は9:1であることがわかった。
(実施例2)
参考例1で調製したポリフェニレンスルフィドプレポリマーを、240℃の溶融バス中で溶融させ、ギアポンプにてキスコーターに供給する。230℃に加熱されたロール上にキスコーターからポリフェニレンスルフィドプレポリマーを塗布し、被膜を形成させた。
このロール上に炭素繊維トレカ(登録商標)T700S-24K(東レ(株)製)を接触させながら通過させて、炭素繊維束の単位長さあたりに一定量のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた。
ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた炭素繊維を、350℃に加熱された炉内へ供給し、ベアリングで自由に回転する、一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、かつ葛折り状に炉内に設置された10個のロールバー(φ200mm)を通過させてポリフェニレンスルフィドプレポリマーを炭素繊維束に十分に含浸させながらPASに高重合度体に転化させた。次に、炉内から引き出した炭素繊維ストランドにエアを吹き付けて冷却した後、ドラムワインダーで巻き取った。
なお、巻き取った炭素繊維束から、10mm長のストランドを10本カットし、炭素繊維とポリアリーレンスルフィドを分離するために、ソックスレー抽出器を用い、1-クロロナフタレンを用いて、210℃で6時間還流を行い、抽出したポリアリーレンスルフィドを分子量の測定に供した。得られたPPSの重量平均分子量(Mw)は26,800、数平均分子量(Mn)14,100、分散度(Mw/Mn)は1.90であった。次に、抽出したポリアリーレンスルフィドの重量減少率△Wrを測定したところ、0.09%であった。
続いて、熱可塑性樹脂(C)として、トレリナA900(東レ(株)製PPS樹脂、融点278℃)を360℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、得られた連続した強化繊維束(A)とポリアリーレンスルフィド(B)からなるストランドも上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(C)を成分(A)と成分(B)の複合体に被覆した。このとき、強化繊維の含有率を20重量%とするように成分(C)の量を調整した。
上記記載の方法により得られたストランドを、冷却後、カッターにて7mmの長さに切断して芯鞘構造の柱状ペレット(長繊維ペレット)を得た。」に変更する訂正は、甲第2号証の実施例2を除くもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項28の記載を引用する請求項29及び請求項30においても同様である。
(17) 訂正事項19について
訂正事項19は、請求項22又は請求項23を引用する請求項29を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(18) 訂正事項20について
訂正事項20は、請求項22又は請求項23を引用する請求項30を削除するもの、つまり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(19) 訂正事項21について
訂正事項21は、請求項9に「熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項2~8いずれか1項に記載の成形材料の集合体。」とあるうち、請求項4を引用するものについて、「熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項4に記載の成形材料の集合体。」と、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(20) 訂正事項22について
訂正事項22は、請求項26に「熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項18~25いずれか1項に記載の成形材料。」とあるうち、請求項21を引用するものについて、「熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項21に記載の成形材料。」と、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(21) 訂正事項23について
訂正事項23は、上記1(1)~(22)の特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、段落【0005】の訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~13、31]、[14~17]、[18~30、32]について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項[1~13、31]、[14~17]、[18~30、32]について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし32に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明32」という。)は、令和1年10月25日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし32に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料の集合体であって、
含浸助剤が20℃で固体であり、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する、成形材料の集合体。
【請求項2】
前記成形材料が、炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂が被覆された芯鞘構造であって、炭素繊維束の軸方向の長さと、成形材料の長さとが、実質同一である請求項1に記載の成形材料の集合体。
【請求項3】
成形材料を軸心方向に切断して観察した際、成形材料が下記式(1)を満たす、請求項2に記載の成形材料の集合体。
0.4≦炭素繊維単糸面積×炭素繊維束の単糸数/熱可塑性樹脂の内周で囲まれた面積≦0.9・・・(1)
ここで、熱可塑性樹脂の内周で囲まれた面積は、成形材料の集合体の平均値である。
【請求項4】
含浸助剤が、リン酸エステルおよび脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルからなる群より選ばれる1種類以上である請求項1~3いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
【請求項5】
熱可塑性樹脂の線膨張率K1(10-4/℃)、含浸助剤の線膨張率K2(10-4/℃)としたとき、成形材料の集合体が下記式(2)を満たす、請求項1~4いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
0.1<|K1-K2|・・・(2)
【請求項6】
熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、成形材料の集合体が下記式(3)を満たす、請求項1~5いずれか1項に記載の成形材料の集合体。ただし、SP値は、ポリカーボネート(帝人株式会社製L-1225Y)の値が9.7(cal/cm3)1/2、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業製PLACCEL(登録商標)H1P 分子量10000)の値が10.2(cal/cm3)1/2、トリフェニルホスフェートの値が10.5(cal/cm3)1/2となる算出方法で算出される値である。
|S1-S2|<1.5・・・(3)
【請求項7】
炭素繊維束の軸方向の長さが1~30mmである、請求項1~4いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
【請求項8】
熱可塑性樹脂が非晶性樹脂を含む、請求項2~4及び7いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
【請求項9】
熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項2、3、7及び8いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
【請求項10】
熱可塑性樹脂は炭素繊維束内部に含浸していない、請求項1~4及び7~9いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
【請求項11】
F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料(ただし、下記実施例2により得られた芯鞘構造の柱状ペレットを除く)が、全集合体のうち30%以上存在する、請求項1~4及び7~10いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
(参考例1)
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの調製>
撹拌機付きの1000リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム118kg(1000モル)、96%水酸化ナトリウム42.3kg(1014モル)、N-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を163kg(1646モル)、酢酸ナトリウム24.6kg(300モル)、およびイオン交換水150kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水211kgおよびNMP4kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p-ジクロロベンゼン147kg(1004モル)、NMP129kg(1300モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水を18kg(1000モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を376kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)14.3kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、粗PPS樹脂とスラリー(C)を10kg得た。スラリー(C)をロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換後、減圧下100~160℃で1.5時間処理した後、真空乾燥機で160℃、1時間処理した。得られた固形物中のNMP量は3重量%であった。
この固形物にイオン交換水12kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水12kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィドオリゴマー100gを得た。ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが所定量に達するまで上記操作を繰り返した。
得られたポリフェニレンスルフィドオリゴマーを4g分取してクロロホルム120gで3時間ソックスレー抽出した。得られた抽出液からクロロホルムを留去して得られた固体に再度クロロホルム20gを加え、室温で溶解しスラリー状の混合液を得た。これをメタノール250gに撹拌しながらゆっくりと滴下し、沈殿物を目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を得た。
この白色粉末の重量平均分子量は900であった。この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はポリフェニレンスルフィド(PAS)であることが判明した。また、示差走査型熱量計を用いてこの白色粉末の熱的特性を分析した結果(昇温速度40℃/分)、約200~260℃にブロードな吸熱を示し、ピーク温度は215℃であることがわかった。
また高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、さらにMALDI-TOF-MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4~11の環式ポリフェニレンスルフィドおよび繰り返し単位数2~11の直鎖状ポリフェニレンスルフィドからなる混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドと直鎖状ポリフェニレンスルフィドの重量比は9:1であることがわかった。
(実施例2)
参考例1で調製したポリフェニレンスルフィドプレポリマーを、240℃の溶融バス中で溶融させ、ギアポンプにてキスコーターに供給する。230℃に加熱されたロール上にキスコーターからポリフェニレンスルフィドプレポリマーを塗布し、被膜を形成させた。
このロール上に炭素繊維トレカ(登録商標)T700S-24K(東レ(株)製)を接触させながら通過させて、炭素繊維束の単位長さあたりに一定量のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた。
ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた炭素繊維を、350℃に加熱された炉内へ供給し、ベアリングで自由に回転する、一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、かつ葛折り状に炉内に設置された10個のロールバー(φ200mm)を通過させてポリフェニレンスルフィドプレポリマーを炭素繊維束に十分に含浸させながらPASに高重合度体に転化させた。次に、炉内から引き出した炭素繊維ストランドにエアを吹き付けて冷却した後、ドラムワインダーで巻き取った。
なお、巻き取った炭素繊維束から、10mm長のストランドを10本カットし、炭素繊維とポリアリーレンスルフィドを分離するために、ソックスレー抽出器を用い、1-クロロナフタレンを用いて、210℃で6時間還流を行い、抽出したポリアリーレンスルフィドを分子量の測定に供した。得られたPPSの重量平均分子量(Mw)は26,800、数平均分子量(Mn)14,100、分散度(Mw/Mn)は1.90であった。次に、抽出したポリアリーレンスルフィドの重量減少率△Wrを測定したところ、0.09%であった。
続いて、熱可塑性樹脂(C)として、トレリナA900(東レ(株)製PPS樹脂、融点278℃)を360℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、得られた連続した強化繊維束(A)とポリアリーレンスルフィド(B)からなるストランドも上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(C)を成分(A)と成分(B)の複合体に被覆した。このとき、強化繊維の含有率を20重量%とするように成分(C)の量を調整した。
上記記載の方法により得られたストランドを、冷却後、カッターにて7mmの長さに切断して芯鞘構造の柱状ペレット(長繊維ペレット)を得た。
【請求項12】
請求項1~4及び7~11いずれか1項に記載の成形材料の集合体であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料の集合体。
【請求項13】
成形材料の炭素繊維束の軸方向に直交する方向に切断した際の断面の形状の長径D1と短径D2との比であるD1/D2が1.1以上1.8以下である、請求項1~4及び7~12いずれか1項に記載の成形材料の集合体。
【請求項14】
含浸助剤を含む炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂を被覆した芯鞘構造の成形材料の製造方法であって、含浸助剤が20℃で固体であり、該炭素繊維束を、予め、含浸助剤が結晶性樹脂の場合は融点以上、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度以上に加熱した状態で、熱可塑性樹脂を被覆して一体化する、炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の成形材料の製造方法を用いて、成形材料の集合体を製造する方法であって、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する、成形材料の集合体の製造方法。
【請求項16】
炭素繊維束に熱可塑性樹脂を被覆して一体化した被覆体を製造し、これを熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下に冷却した後、切断して成形材料を製造する、請求項14に記載の成形材料の製造方法。
【請求項17】
請求項14又は16に記載の成形材料の製造方法であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料の製造方法。
【請求項18】
含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料であって、
含浸助剤が20℃で固体であり、
炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料。
【請求項19】
前記成形材料が、炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂が被覆された芯鞘構造であって、炭素繊維束の軸方向の長さと、成形材料の長さとが、実質同一である請求項18に記載の成形材料。
【請求項20】
成形材料を軸心方向に切断して観察した際、成形材料が下記式(1)を満たす、請求項19に記載の成形材料。
0.4≦炭素繊維単糸面積×炭素繊維束の単糸数/熱可塑性樹脂の内周で囲まれた面積≦0.9・・・(1)
【請求項21】
含浸助剤が、リン酸エステルおよび脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルからなる群より選ばれる1種類以上である請求項18~20いずれか1項に記載の成形材料。
【請求項22】
熱可塑性樹脂の線膨張率K1(10-4/℃)、含浸助剤の線膨張率K2(10-4/℃)としたとき、成形材料が下記式(2)を満たす、請求項18~21いずれか1項に記載の成形材料。
0.1<|K1-K2|・・・(2)
【請求項23】
熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、成形材料が下記式(3)を満たす、請求項18~22いずれか1項に記載の成形材料。ただし、SP値は、ポリカーボネート(帝人株式会社製L-1225Y)の値が9.7(cal/cm3)1/2、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業製PLACCEL(登録商標)H1P 分子量10000)の値が10.2(cal/cm3)1/2、トリフェニルホスフェートの値が10.5(cal/cm3)1/2となる算出方法で算出される値である。
|S1-S2|<1.5 ・・・(3)
【請求項24】
炭素繊維束の軸方向の長さが1~30mmである、請求項18~21いずれか1項に記載の成形材料。
【請求項25】
熱可塑性樹脂が非晶性樹脂を含む、請求項18~21及び24いずれか1項に記載の成形材料。
【請求項26】
熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項18~20、24及び25いずれか1項に記載の成形材料。
【請求項27】
熱可塑性樹脂は炭素繊維束内部に含浸していない、請求項18~21及び24~26いずれか1項に記載の成形材料。
【請求項28】
F/L(N/m)≦10,000を満たす請求項18~21及び24~27いずれか1項に記載の成形材料(ただし、下記実施例2により得られた芯鞘構造の柱状ペレットを除く)。
(参考例1)
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの調製>
撹拌機付きの1000リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム118kg(1000モル)、96%水酸化ナトリウム42.3kg(1014モル)、N-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を163kg(1646モル)、酢酸ナトリウム24.6kg(300モル)、およびイオン交換水150kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水211kgおよびNMP4kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p-ジクロロベンゼン147kg(1004モル)、NMP129kg(1300モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水を18kg(1000モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を376kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)14.3kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、粗PPS樹脂とスラリー(C)を10kg得た。スラリー(C)をロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換後、減圧下100~160℃で1.5時間処理した後、真空乾燥機で160℃、1時間処理した。得られた固形物中のNMP量は3重量%であった。
この固形物にイオン交換水12kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水12kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィドオリゴマー100gを得た。ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが所定量に達するまで上記操作を繰り返した。
得られたポリフェニレンスルフィドオリゴマーを4g分取してクロロホルム120gで3時間ソックスレー抽出した。得られた抽出液からクロロホルムを留去して得られた固体に再度クロロホルム20gを加え、室温で溶解しスラリー状の混合液を得た。これをメタノール250gに撹拌しながらゆっくりと滴下し、沈殿物を目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を得た。
この白色粉末の重量平均分子量は900であった。この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はポリフェニレンスルフィド(PAS)であることが判明した。また、示差走査型熱量計を用いてこの白色粉末の熱的特性を分析した結果(昇温速度40℃/分)、約200~260℃にブロードな吸熱を示し、ピーク温度は215℃であることがわかった。
また高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、さらにMALDI-TOF-MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4~11の環式ポリフェニレンスルフィドおよび繰り返し単位数2~11の直鎖状ポリフェニレンスルフィドからなる混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドと直鎖状ポリフェニレンスルフィドの重量比は9:1であることがわかった。
(実施例2)
参考例1で調製したポリフェニレンスルフィドプレポリマーを、240℃の溶融バス中で溶融させ、ギアポンプにてキスコーターに供給する。230℃に加熱されたロール上にキスコーターからポリフェニレンスルフィドプレポリマーを塗布し、被膜を形成させた。
このロール上に炭素繊維トレカ(登録商標)T700S-24K(東レ(株)製)を接触させながら通過させて、炭素繊維束の単位長さあたりに一定量のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた。
ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた炭素繊維を、350℃に加熱された炉内へ供給し、ベアリングで自由に回転する、一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、かつ葛折り状に炉内に設置された10個のロールバー(φ200mm)を通過させてポリフェニレンスルフィドプレポリマーを炭素繊維束に十分に含浸させながらPASに高重合度体に転化させた。次に、炉内から引き出した炭素繊維ストランドにエアを吹き付けて冷却した後、ドラムワインダーで巻き取った。
なお、巻き取った炭素繊維束から、10mm長のストランドを10本カットし、炭素繊維とポリアリーレンスルフィドを分離するために、ソックスレー抽出器を用い、1-クロロナフタレンを用いて、210℃で6時間還流を行い、抽出したポリアリーレンスルフィドを分子量の測定に供した。得られたPPSの重量平均分子量(Mw)は26,800、数平均分子量(Mn)14,100、分散度(Mw/Mn)は1.90であった。次に、抽出したポリアリーレンスルフィドの重量減少率△Wrを測定したところ、0.09%であった。
続いて、熱可塑性樹脂(C)として、トレリナA900(東レ(株)製PPS樹脂、融点278℃)を360℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、得られた連続した強化繊維束(A)とポリアリーレンスルフィド(B)からなるストランドも上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(C)を成分(A)と成分(B)の複合体に被覆した。このとき、強化繊維の含有率を20重量%とするように成分(C)の量を調整した。
上記記載の方法により得られたストランドを、冷却後、カッターにて7mmの長さに切断して芯鞘構造の柱状ペレット(長繊維ペレット)を得た。
【請求項29】
請求項18~21及び24~28いずれか1項に記載の成形材料であって、
含浸助剤を含む炭素繊維束の水分率W(wt%)としたとき、0.001≦W(wt%)<0.4である、成形材料。
【請求項30】
成形材料の炭素繊維束の軸方向に直交する方向に切断した際の断面の形状の長径D1と短径D2との比であるD2/D1が1.1以上1.8以下である、請求項18~21及び24~29いずれか1項に記載の成形材料。
【請求項31】
熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項4に記載の成形材料の集合体。
【請求項32】
熱可塑性樹脂がポリカーボネートを含む、請求項21に記載の成形材料。」
第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について
特許異議申立人が特許異議申立書において、訂正前の請求項1~30に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
申立理由1(新規性) 本件特許の請求項1~3、5~14、16~20、22~30に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証あるいは甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~30に係る特許は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証あるいは甲第4号証に記載された発明および甲第5号証ないし甲第8号証の記載事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
<証拠方法>
甲第1号証:国際公開第2016/021479号
甲第2号証:特開2008-231292号公報
甲第3号証:特開2001-129826号公報
甲第4号証:特開2010-248483号公報
甲第5号証:国際公開第2013/137246号
甲第6号証:東レ株式会社、実験報告書、2019年5月10日
甲第7号証:特開平9-33361号公報
甲第8号証:特開2016-124887号公報
(なお、甲第6号証は、甲第1号証ないし甲第4号証の実施例等を追試したものである。)
申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1、11、15、18、28についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由4(明確性) 本件特許の請求項5~13、22~30についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由5(実施可能要件) 本件特許の請求項1~7、11、15、18、28についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
そして、申立理由3~5の具体的理由の概略は次のとおりである。
・申立理由3
本件特許の発明の詳細な説明に記載された成形材料は、F/L(N/m)が90~773という狭い範囲でしかない。発明の詳細な説明に記載されたF/Lの値域(90~773)は、本件特許発明1が規定するF/Lが100以上、上限なしという値域、並びに本件特許発明11、15および28が実質的に規定する100≦F/L(N/m)<100,000という値域、と比べ極めて狭い範囲である。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明に記載された事項から、本件特許発明1、11、15、18、28に記載された範囲にまで拡張・一般化することはできない。
・申立理由4-1
本件特許発明5、22は、熱可塑性樹脂の線膨張係数K1(10-4/℃)、含浸助剤の線膨張係数K2(10-4/℃)に関し、0.1<|K1-K2|を満たすことを特定するが、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、線膨張係数K1、K2の定義及び決定方法について何ら記載していないから、本件特許発明5および22、並びにこれらを引用する本件特許発明は明確でない。
・申立理由4-2
本件特許発明6、23は、熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、|S1-S2|<1.5を満たすことを特定するが、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、SP値S1、S2の定義及び決定方法について何ら記載していないから、本件特許発明6および23、並びにこれらを引用する本件特許発明は明確でない。
・申立理由5
本件特許発明1、11、15、18、28、およびこれらの従属項は、炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力FとしたときのF/L(N/m)に関し、「100≦F/L(N/m)」、「F/L(N/m)<100,000」、「100≦F/L(N/m)<100,000」、「80≦F/L(N/m)」と、上限を特定しない、あるいは上限を10,000と特定するが、本件特許の明細書の発明の詳細な説明では、F/L(N/m)が90~773の成形材料について検討されているものの、773を超え100,000未満の成形材料を如何に実施するのかについては何ら記載されていない。
そして、甲第6号証における甲第3号証、甲第4号証の再現実験結果からは、F/L(N/m)が17,000を超える場合には、測定機器による測定ができない状態となったことが示されている。
してみると、F/L(N/m)に関し、例えば17,000を超えるような大きな値となる条件に関し、如何にすれば、そのF/L(N/m)値を測定し、実施することができるのか、当業者が理解できる程度に明細書の発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載しているとはいえない。
第5 令和2年1月31日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
本件訂正後の請求項6及び23に係る特許に対して、当審が令和2年1月31日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由(明確性) 本件特許の請求項6及び23についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
そして、その具体的理由は次のとおりである。
本件発明6、23には、熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、
「|S1-S2|<1.5」
を満たすものであって、
「ただし、SP値は、ポリカーボネート(帝人株式会社製L-1225Y)の値が9.7(cal/cm3)1/2、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業製PLACCEL(登録商標)H1P 分子量10000)の値が10.2(cal/cm3)1/2、トリフェニルホスフェートの値が10.5(cal/cm3)1/2となる算出方法で算出される値である。」
ことが特定されている。
この溶解性パラメーターS1、S2に関し、本件特許の発明の詳細な説明には、
「【0020】
[熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値]
本発明における成形材料の集合体は、熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値をS1((cal/cm3)1/2)、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)としたとき、成形材料の集合体が下記式(3)を満たすことが好ましい。
|S1-S2|<1.5・・・(3)
式(3)を満たすことで、含浸助剤を含む炭素繊維束に熱可塑性樹脂を被覆する際に一部含浸助剤と熱可塑性樹脂が混ざりやすいため成形材料において炭素繊維束が抜け落ちにくくなる。」
「【0049】
なお、熱可塑性樹脂の線膨張率K1(10-4/℃)が0.7、含浸助剤の線膨張率K2(10-4/℃)が1.2であるため、|K1-K2|は0.5であり、熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値S1((cal/cm3)1/2)が9.7、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)が10.2であるため、|S1-S2|は0.5である。
・・・」
「【0057】
[実施例8]
含浸助剤をポリカプロラクトンではなく、トリフェニルホスフェートを用い、プレヒートする際の、炭素繊維束の温度を170℃にしたこと以外は、実施例1同様に成形材料集合体を作成した。結果を表1に示す。
なお、熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値S1((cal/cm3)1/2)が9.7、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)が10.5であるため、|S1-S2|は0.8である。
【0058】
[実施例9]
含浸助剤をポリカプロラクトンではなく、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を用い、プレヒートする際の炭素繊維束の温度を170℃にしたこと以外は、実施例1同様に成形材料集合体を作成した。結果を表1に示す。
なお、熱可塑性樹脂の溶解性パラメーター(SP)値S1((cal/cm3)1/2)が9.7、含浸助剤のSP値をS2((cal/cm3)1/2)が10.3であるため、|S1-S2|は0.6である。
なお、実施例9は「実施例」とあるのを「参考例」に読み替えるものとする。」
及び段落【0062】の【表1】の記載(記載内容については省略)があり、溶解性パラメーター値S1、S2の値そのものの記載はあるものの、溶解性パラメーター値S1、S2の定義及びその決定方法について何ら記載されていない。
さらに、甲第11号証(山本秀樹著、SP値基礎・応用と計算方法、株式会社情報機構、2005年3月31日第1刷、第6章、第65~69頁)の「table 14 溶解度パラメーターの実測値から計算したEcohの値とKreverenとHoftyzerの推算法およびFedorの推算法により計算されたEcohの値」から、推算法により、溶解度パラメーター(溶解性パラメーター)の値は異なることが理解できるところ、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、溶解性パラメーターの定義及び決定条件が記載されていないから、本件発明6、23は、その発明を明確に認識することができない。
この取消理由は、申立理由4-2と同旨である。
第5 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由について
令和2年1月31日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項6、23に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
2 採用しなかった異議申立理由について
(1) 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった異議申立理由の概略は次のとおりである。
ア 甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証あるいは甲第4号証のそれぞれを主引用例とする、本件発明1~3、5~14、16~20、22~30についての新規性の欠如(申立理由1)及び本件発明1~30についての進歩性の欠如(申立理由2)
イ 本件発明1、11、15、18についてのサポート要件違反(申立理由3)
ウ 本件発明5、7~13、22、24~30についての明確性要件違反(申立理由4-1)
エ 本件発明1~7、11、15、18、28についての実施可能要件違反(申立理由5)
(2) 申立理由1、2(特許法第29条第1項第3号、第29条第2項)について
ア 主な甲号証の記載事項等
(ア) 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明について
甲第1号証には次の事項が記載されている。
「[請求項1] 熱可塑性樹脂[A]と、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂[A]よりも低い樹脂[D]が強化繊維[B]に含浸された樹脂含浸強化繊維束[E]と、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂[A]よりも低く、かつ、前記熱可塑性樹脂[A]とのSP値差が1.0以上である強化繊維改質成分[C]とを含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、熱可塑性樹脂[A]、強化繊維[B]および強化繊維改質成分[C]の合計100重量部に対し、熱可塑性樹脂[A]を50~98.9重量部、強化繊維[B]を1~40重量部、強化繊維改質成分[C]を0.1~10重量部、樹脂[D]を0.2~12重量部含み、前記樹脂含浸強化繊維束[E]が、前記熱可塑性樹脂[A]および強化繊維改質成分[C]を含む樹脂組成物で被覆された、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料。」
「[0177] (参考例1)炭素繊維の作製
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体を原料として用い、紡糸、焼成処理および表面酸化処理の各工程を経て、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm3、表面酸素濃度[O/C]0.12の均質な炭素繊維[B-1]を得た。この炭素繊維のストランド引張強度は4880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。」
「[0180] (参考例2)樹脂含浸強化繊維束[E]の作製
塗布温度150℃に加熱されたロール上に、各実施例および比較例に示すエポキシ樹脂[D-1]を加熱溶融した液体の被膜を形成させた。ロール上に一定した厚みの被膜を形成するため、リバースロールを用いた。このロール上に、参考例1で得られた連続した炭素繊維[B-1]束を、接触させながら通過させて、エポキシ樹脂[D-1]を付着させた。次に、エポキシ樹脂が付着した炭素繊維束を、窒素雰囲気下において、温度250℃に加熱されたチャンバー内にて、5組の直径50mmのロールプレス間を通過させた。この操作により、エポキシ樹脂[D-1]を炭素繊維束の内部まで含浸させ、樹脂含浸強化繊維束[E-1]を得た。」
「[0183] 熱可塑性樹脂[A-1]
ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、「“パンライト”(登録商標)L-1225L」)を用いた。200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、14000Pa・sであった。」
「[0186] 強化繊維改質成分[C-1]
カルボキシル基を有するオレフィン系ワックス(三菱化学(株)製“ダイヤカルナ”(登録商標)30)を用いた。これを含浸助剤塗布装置内のタンク内に投入し、タンク内の温度を200℃に設定し、1時間加熱して溶融状態にした。この時の、200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、0.03Pa・sであった。また、GPCにより測定した重量平均分子量は9,000であった。本発明に関わるGPCの測定方法は以下の通り実施した。
使用機種:ウォーターズ社製「150C」 測定温度:140℃ 溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB) カラム:「AD806M/S」(3本) 流速:1.0mL/分 分子量標準物質:標準ポリスチレン
強化繊維改質成分[C-2]
官能基で変性されたオレフィン化合物(三洋化成(株)製“ユーメックス”(登録商標)1010)を用いた。これを含浸助剤塗布装置内のタンク内に投入し、タンク内の温度を200℃に設定し、1時間加熱して溶融状態にした。この時の、200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、20Pa・sであった。また、(C-1)と同様の測定条件にて、GPCにより測定した重量平均分子量は30,000であった。
[0187] 強化繊維改質成分[C-3]
水溶性ナイロン(東レ(株)製“AQナイロン”(登録商標)P70)を用いた。これを含浸助剤塗布装置内のタンク内に投入し、タンク内の温度を200℃に設定し、1時間加熱して溶融状態にした。この時の、200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、20Pa・sであった。また、GPCにより測定した重量平均分子量は1,000であった。なお、重量平均分子量1,000以下の成分量の測定は、以下の通り実施した。
使用機種:東ソー社製「HLC-8320GPC」 測定温度:40℃ 溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)(トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/l)
カラム:「TSKgel SuperHM-H」(2本) 流速:0.3mL/分 分子量標準物質:ポリメチルメタクリレート(PMMA)
樹脂[D-1]
固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004AF、軟化点97℃)を用いた。これを含浸助剤塗布装置内のタンク内に投入し、タンク内の温度を200℃に設定し、1時間加熱して溶融状態にした。この時の、200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、1Pa・sであった。また、溶融粘度変化率を算出した結果、1.1%であった。」
「[0190] (実施例1)
参考例2に従い、炭素繊維[B-1]に樹脂[D-1]を含浸して得られた樹脂含浸強化繊維束[E-1]を日本製鋼所(株)TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通した。一方、参考例3に従って作製した、熱可塑性樹脂[A-1]および強化繊維改質成分[C-1]を含む樹脂組成物をTEX-30α型2軸押出機のメインホッパーから供給して溶融混練し、溶融した状態で前記ダイ内に吐出させ、樹脂含浸強化繊維束[E-1]の周囲を被覆するように連続的に配置した。この時、熱可塑性樹脂[A]、強化繊維[B]および強化繊維改質成分[C]の合計100重量部に対して、熱可塑性樹脂[A]、強化繊維[B]、強化繊維改質成分[C]および樹脂[D]が表1記載の配合量となるように、樹脂組成物の吐出量を調整した。得られた連続状の成形材料を冷却後、カッターで切断して、長さ7mmの長繊維ペレット状の樹脂成形材料を得た。
[0191] 得られた長繊維ペレット状の成形材料を、住友重機械工業社製SE75DUZ-C250型射出成形機を用いて、射出時間:10秒、スクリュー回転数:100rpm、背圧力:10MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:300℃、金型温度:100℃の条件で射出成形することにより、ISO型引張ダンベル試験片、80mm×80mm×3mm厚の試験片および80mm×10mm×4mm厚の試験片(成形品)を作製した。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするために成形材料を注入する金型の温度を示す。得られた試験片(成形品)を、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間静置した後、前述の方法により評価した。評価結果を表1に示した。」
「[0213]
[表1]
」
「
」
「
」
これらの記載、特に実施例1の記載から、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「炭素繊維[B-1]に含浸助剤である樹脂[D-1]を含浸して得られた樹脂含浸強化繊維束[E-1]に、熱可塑性樹脂[A-1]および強化繊維改質成分[C-1]を含む樹脂組成物で樹脂含浸強化繊維束[E-1]の周囲を被覆し、得られた連続状の成形材料を冷却後、カッターで切断して得られた、長さ7mmの長繊維ペレット状の樹脂成形材料。
熱可塑性樹脂[A-1]:ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、「“パンライト”(登録商標)L-1225L」)
炭素繊維[B-1]:ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体を原料として用い、紡糸、焼成処理および表面酸化処理の各工程を経て得た、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm3、表面酸素濃度[O/C]0.12の均質な炭素繊維
強化繊維改質成分[C-1]:カルボキシル基を有するオレフィン系ワックス(三菱化学(株)製“ダイヤカルナ”(登録商標)30)
樹脂[D-1]:固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004AF、軟化点97℃)」
(イ) 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明について
甲第2号証には次の事項が記載されている。
「【0103】
(参考例1)
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの調製>
撹拌機付きの1000リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム118kg(1000モル)、96%水酸化ナトリウム42.3kg(1014モル)、N-メチル-2-ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を163kg(1646モル)、酢酸ナトリウム24.6kg(300モル)、およびイオン交換水150kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水211kgおよびNMP4kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
【0104】
次に、p-ジクロロベンゼン147kg(1004モル)、NMP129kg(1300モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水を18kg(1000モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を376kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)14.3kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、粗PPS樹脂とスラリー(C)を10kg得た。スラリー(C)をロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換後、減圧下100~160℃で1.5時間処理した後、真空乾燥機で160℃、1時間処理した。得られた固形物中のNMP量は3重量%であった。
【0105】
この固形物にイオン交換水12kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水12kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィドオリゴマー100gを得た。ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが所定量に達するまで上記操作を繰り返した。
【0106】
得られたポリフェニレンスルフィドオリゴマーを4g分取してクロロホルム120gで3時間ソックスレー抽出した。得られた抽出液からクロロホルムを留去して得られた固体に再度クロロホルム20gを加え、室温で溶解しスラリー状の混合液を得た。これをメタノール250gに撹拌しながらゆっくりと滴下し、沈殿物を目開き10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を得た。
【0107】
この白色粉末の重量平均分子量は900であった。この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はポリフェニレンスルフィド(PAS)であることが判明した。また、示差走査型熱量計を用いてこの白色粉末の熱的特性を分析した結果(昇温速度40℃/分)、約200~260℃にブロードな吸熱を示し、ピーク温度は215℃であることがわかった。」
「【0109】
(実施例1)
参考例1で調製したポリフェニレンスルフィドプレポリマーを、240℃の溶融バス中で溶融させ、ギアポンプにてキスコーターに供給する。230℃に加熱されたロール上にキスコーターからポリフェニレンスルフィドプレポリマーを塗布し、被膜を形成させた。
【0110】
このロール上に炭素繊維トレカ(登録商標)T700S-24K(東レ(株)製)を接触させながら通過させて、炭素繊維束の単位長さあたりに一定量のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた。
【0111】
ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた炭素繊維を、350℃に加熱された炉内へ供給し、ベアリングで自由に回転する、一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、かつ葛折り状に炉内に設置された10個のロールバー(φ200mm)を通過させてポリフェニレンスルフィドプレポリマーを炭素繊維束に十分に含浸させながらPASに高重合度体に転化させた。次に、炉内から引き出した炭素繊維ストランドにエアを吹き付けて冷却した後、ドラムワインダーで巻き取った。
【0112】
なお、巻き取った炭素繊維束から、10mm長のストランドを10本カットし、炭素繊維とポリアリーレンスルフィドを分離するために、ソックスレー抽出器を用い、1-クロロナフタレンを用いて、210℃で6時間還流を行い、抽出したポリアリーレンスルフィドを分子量の測定に供した。得られたPPSの重量平均分子量(Mw)は26,800、数平均分子量(Mn)14,100、分散度(Mw/Mn)は1.90であった。次に、抽出したポリアリーレンスルフィドの重量減少率△Wrを測定したところ、0.09%であった。
【0113】
続いて、ウルテム1000R(日本ジーイープラスチックス(株)製PEI樹脂、荷重たわみ温度200℃、非晶性樹脂)を360℃で単軸押出機にて溶融させ、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、得られた連続した強化繊維束(A)とポリアリーレンスルフィド(B)からなるストランドも上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(C)を成分(A)と成分(B)の複合体に被覆した。このとき、強化繊維の含有率を20重量%とするように成分(C)の量を調整した。
【0114】
上記記載の方法により得られたストランドを、冷却後、カッターにて7mmの長さに切断して芯鞘構造の柱状ペレット(長繊維ペレット)を得た。
【0115】
得られた長繊維ペレットは運搬による毛羽立ちもなく、良好な取扱性を示した。得られた成形材料を140℃、5時間以上真空下で乾燥させた。得られた成形材料を、日本製鋼所(株)製J150EII-P型射出成形機を用いて、各試験片用の金型を用いて成形を行った。条件はいずれもシリンダー温度:380℃、金型温度:140℃、冷却時間30秒とした。成形後、真空下で80℃、12時間の乾燥を行い、かつデシケーター中で室温、3時間保管した乾燥状態の試験片について評価を行った。評価結果を表1にまとめて記載した。」
「【0120】
(実施例2)
熱可塑性樹脂(C)として、トレリナA900(東レ(株)製PPS樹脂、融点278℃)を使用して、実施例1と同様の方法で、芯鞘構造の柱状ペレット(長繊維ペレット)を得た。また、得られた成形材料を、同様に射出成形を行い、各評価に供した。各プロセス条件および評価結果を表1に記載した。
【0121】
【表1】
」
これらの記載、特に実施例2の記載から、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
「含浸助剤であるポリフェニレンスルフィドプレポリマーを付着させた炭素繊維トレカ(登録商標)T700S-24K(東レ(株)製)の炭素繊維束に、熱可塑性樹脂(C)として、トレリナA900(東レ(株)製PPS樹脂、融点278℃)が被覆されたものであって、7mmの長さに切断して得られた芯鞘構造の柱状ペレット(長繊維ペレット)。」
(ウ) 甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載された発明について
甲第3号証には次の事項が記載されている。
「【0132】・・・
(実施例1)まず、連続した導電性繊維束を180℃に加熱しながら開繊させ、溶融させたフェノール系重合体をギアポンプにて計量し、カーテンコータにて塗布した。次いで、180℃に加熱した雰囲気中の複数のスクイーズバーを通過させることによりフェノール系重合体を導電性繊維束中に十分含浸させ、連続した導電性繊維とフェノール系重合体との複合体を得た(含浸工程)。
【0133】次に、樹脂を、1軸押出機を用いて、その先端に取り付けられた被覆ダイ中(270℃)に十分溶融混練された状態で押し出すのと同時に、得られた前記複合体を前記被覆ダイ中に連続して供給する(130℃)ことにより、溶融した樹脂を前記複合体の表面に被覆し、連続導電性繊維強化樹脂ストランドを得た(コーティング工程)。
【0134】その後、前記導電性連続繊維強化樹脂ストランドを100℃以下まで冷却し、カッターを用いて7mmに切断して芯鞘型の長繊維ペレットを得た(切断工程)。前述芯鞘型の長繊維ペレットの製造を、含浸工程、コーティング工程、切断工程についてそれぞれ連続してオンラインで行った結果、20m/min以上の高い引取速度にて製造することができた。つまり、芯鞘型の長繊維ペレットは生産性に非常に優れているといえる。また、得られた成形品も良好な導電性や力学的特性を示し、従来の課題を克服した成形材料といえる。」
「【0140】
【表1】
」
「【0142】なお、表1、2における各成分の略記号は下記のものである。
樹脂
N6:ナイロン6樹脂[ηr=2.35]
MXD6:ポリメタキシリレンアジパミド[ηr=2.2]
PC/ABS:ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイ樹脂[帝人化成(株)製マルチロンT-3000]
フェノール系重合体
T/P1:テルペン・フェノール共重合体[ヤスハラケミカル(株)製YP90L]
T/P2:テルペン・フェノール共重合体[ヤスハラケミカル(株)製マイティーエースG150]
導電性繊維
CF1:PAN系炭素繊維[Tex=800g/1000m、平均単繊維直径=7μm、引張破断伸度=2.1%、Lc=1.9nm、表面官能基(O/C)=0.07]
CF2:PAN系炭素繊維[Tex=1650g/1000m、平均単繊維直径=約7μm、引張破断伸度=2.1%、Lc=1.8nm、表面官能基(O/C)=0.07]
CF3:PAN系炭素繊維[Tex=6000g/1000m、平均単繊維直径=約10μm、引張破断伸度=1.5%、Lc=1.7nm、表面官能基(O/C)=0.06]
カーボンブラック
CB:カーボンブラック[I2/I1=0.68、I2/I3=0.60]導電性付与剤
・・・」
これらの記載、特に実施例1の記載から、甲第3号証には以下の発明が記載されていると認める。
「フェノール系重合体としてテルペン・フェノール共重合体[ヤスハラケミカル(株)製YP90L]を含浸させた導電性繊維束に、ナイロン6樹脂が被覆された、長さ7mmの芯鞘型の長繊維ペレット体。」(以下、「甲3材料発明」という。)
「フェノール系重合体としてテルペン・フェノール共重合体[ヤスハラケミカル(株)製YP90L]を含浸させた導電性繊維束に、ナイロン6樹脂が被覆された芯鞘型の長繊維ペレットの製造方法であって、予め、フェノール系重合体を含浸させた導電性繊維束を130℃に加熱した状態で、ナイロン6樹脂を被覆し、その後、冷却し、切断して長さ7mmの芯鞘型の長繊維ペレットを製造する方法。」(以下、「甲3製法発明」という。)
(エ) 甲第4号証の記載事項及び甲第4号証に記載された発明について
甲第4号証には次の事項が記載されている。
「【0139】
実施例1.
130℃加熱されたロール上に、(B)テルペン系樹脂として(b-1)テルペン樹脂(ヤスハラケミカル(株)製YSレジンPX1250樹脂:主成分としてα-ピネン、β-ピネンを用いて重合された重合体からなる樹脂)を加熱溶融した液体の被膜を形成させた。ロール上に一定した厚みの被膜を形成するためキスコーターを用いた。このロール上を連続した(a)多官能化合物として、(a-1)グリセロールトリグリシジルエーテルを用いて、参考例1、参考例3から得られた連続炭素繊維束を接触させながら通過させて、0.8質量%付着させた。次に、180℃に加熱された、ベアリングで自由に回転する、一直線上に配置された10本の直径50mmのロールの上下を、交互に通過させた。この操作により、(B)テルペン系樹脂を繊維束の内部まで含浸させ、複合体を形成した。この連続した複合体を、日本製鋼所(株)TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、押出機からダイ内に230℃に溶融させた(C)ポリプロピレン樹脂(c-1)(プライムポリマー(株)製プライムポリプロJ105G樹脂)を吐出させて、複合体の周囲を被覆するように連続的に配置した。この際、炭素繊維のみの含有率が20質量%になるように(C)プロピレン系樹脂量を調整した。得られた成形材料を冷却後、カッターで切断してペレット状の成形材料とした。
【0140】
次に得られたペレット状の成形材料を、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:220℃、金型温度:60℃で特性評価用試験片(成形品)を成形した。得られた試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片(成形品)を上記の射出成形品評価方法に従い評価した。評価結果を、まとめて表1に示した。得られた成形品中の炭素繊維の割合は20質量%であり、(B)テルペン系樹脂は0.8質量%、(C)プロピレン系樹脂は79質量%である。
実施例2.
(B)テルペン系樹脂を2.8質量%と、(C)ポリプロピレン系樹脂に、(c-1)プロピレン系単独重合体(プライムポリマー(株)製プライムポリプロJ105G樹脂)50質量%と、参考例4で作製した(c-2)酸変性プロピレン系樹脂50質量%とからなる樹脂を77質量%用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価をおこなった。特性評価結果はまとめて表1に記載した。」
「【0142】
実施例4.
(B)テルペン系樹脂を9.8質量%とし、(C)プロピレン系樹脂を70質量%用いたこと以外は、実施例2と同様にしてペレットを得、成形評価をおこなった。特性評価結果はまとめて表1に記載した。」
「【0168】
【表1】
」
「
」
「
」
「
」
これらの記載、特に実施例4の記載から、甲第4号証には以下の発明が記載されていると認める。
「含浸助剤としてテルペン系樹脂(ヤスハラケミカル(株)製YSレジンPX1250樹脂、融点70℃)を含む連続炭素繊維束に、ポリプロピレン樹脂が被覆された長さ7mmの成形材料。」(以下、甲4材料発明」という。)
「含浸助剤としてテルペン系樹脂(ヤスハラケミカル(株)製YSレジンPX1250樹脂、融点70℃)を含む連続炭素繊維束の周囲に、ポリプロピレン樹脂を被覆した芯鞘構造の成形材料の製造方法であって、180℃に加熱されたロールの上下を交互に通過させることで、テルペン系樹脂を繊維束の内部まで含浸させるとともに、ポリプロピレン樹脂の被覆工程を引き続き実施する、長さ7mmの成形材料の製造方法。」(以下、「甲4製法発明」という。)
(オ) 甲第6号証の記載事項について
甲第6号証には次の事項が記載されている。
甲第1号証の実施例1、甲第2号証の実施例2、甲第3号証の実施例1、甲第4号証の実施例4を再現した上で、得られた材料を分析した結果を示したものとする表6。
「
」
イ 甲第1号証を主引用例とする、取消理由1(新規性)および取消理由2(進歩性)について
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「樹脂含浸強化繊維束[E-1]」は、本件発明1の「炭素繊維束」に相当する。また、甲1発明の含浸助剤である樹脂[D-1]の軟化点は97℃であるから、本件発明1の「含浸助剤が20℃で固体」との条件を満たすことは明らかである。さらに、甲1発明の「長繊維ペレット状の樹脂成形材料」はその集合体として用いられるものであるから、本件発明1の「成形材料の集合体」に相当することも明らかである。
したがって、両者は、
「含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料の集合体であって、
含浸助剤が20℃で固体である、成形材料の集合体。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
成形材料の集合体について、本件発明1は、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する」ものと特定するのに対し、甲1発明では不明である点。
以下、相違点1について検討する。
成形材料の集合体において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する」点については、甲第1号証に記載も示唆もされていない。また、当該技術分野において、成形材料の集合体において、F/Lを本件発明1で特定する範囲に調整することが通常行われているものともいえない。
なお、この点について特許異議申立人は、甲第6号証を提出し、甲第1号証の実施例1について再現実験を行い、その結果、甲1発明において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)を満たす成形材料」が100%であったことを主張している。
しかしながら、甲第6号証に記載されている再現実験について、令和1年11月12日付け審尋において、実験の条件等のデータを提示することを求めたものの、特許異議申立人が令和1年12月11日に提出した回答書には、「実験条件を追加したとしても、その信憑性が高くなるものではない。」(回答書第2頁第5行ないし第6行)と主張するにとどまり、具体的な実験の条件等のデータの提示はなされなかった。実験条件のデータの解釈はともかく、実験の条件等のデータの提示の求めに対して、データの提示ができないのであるから、再現実験の条件に対する疑義が解消したとはいえず、故に、甲第6号証において示されている実験結果についても採用することができない。
また、他の証拠の全ての記載を見ても、相違点1に係る本件発明1の特定事項を導くこともできない。
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、つまり、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件発明2~3、5~13について
本件発明2~3、5~13は、いずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である、本件発明2~13、31もまた、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件発明4、31について
本件発明4、31は、いずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である、本件発明4及び31もまた、甲第1号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件発明18について
本件発明18と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「樹脂含浸強化繊維束[E-1]」は、本件発明18の「炭素繊維束」に相当する。また、甲1発明の含浸助剤である樹脂[D-1]の軟化点は97℃であるから、本件発明18の「含浸助剤が20℃で固体」との条件を満たすことは明らかである。さらに、甲1発明の「長繊維ペレット状の樹脂成形材料」は、本件発明18の「成形材料」に相当する。
したがって、両者は、
「含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料の集合体であって、
含浸助剤が20℃で固体である、成形材料。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点2>
本件発明18の成形材料の集合体は、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L≦10,000(N/m)を満たす成形材料」であるのに対し、甲1発明では不明である点。
以下、相違点2について検討する。
成形材料において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料」については、甲第1号証に記載も示唆もされていない。また、当該技術分野において、成形材料の集合体において、F/Lを本件発明1で特定する範囲に調整することが通常行われているものともいえない。
なお、この点について特許異議申立人は、甲第6号証を提出し、甲第1号証の実施例1について再現実験を行い、その結果、甲1発明において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、F/L(N/m)が16940であったと主張している。
しかしながら、上記(ア)で検討したとおり、甲第6号証において示されている実験結果を採用することはできない。
また、仮に採用できたとしても、本件発明18の特定事項を満たしていない(F/Lの値を満たさない)ことも明らかである。
さらに、他の証拠の全ての記載を見ても、相違点2に係る本件発明18の特定事項を導くこともできない。
以上のとおりであるから、本件発明18は、甲1発明、つまり、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(オ) 本件発明19、20、22~30について
本件発明19、20、22~30は、いずれも、直接又は間接的に請求項18を引用する発明であり、本件発明18の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(エ)のとおり、本件発明18は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明18の特定事項を全て含む発明である、本件発明19、20、22~30もまた、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(カ)本件発明21、32について
本件発明21、32は、いずれも、直接又は間接的に請求項18を引用する発明であり、本件発明18の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(エ)のとおり、本件発明18は、甲第1号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明18の特定事項を全て含む発明である、本件発明21、32もまた、甲第1号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 甲第2号証を主引用例とする、取消理由1(新規性)および取消理由2(進歩性)について
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「柱状ペレット(長繊維ペレット)」はその集合体として用いられるものであるから、本件発明1の「成形材料の集合体」に相当することは明らかである。
したがって、両者は、
「含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料の集合体。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点3>
含浸助剤に関し、本件発明1は20℃で固体であるのに対し、甲2発明の含浸助剤であるポリフェニレンスルフィドプレポリマーは、20℃で固体であるか否か不明である点。
<相違点4>
成形材料の集合体に関し、本件発明1は「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する」ものであるのに対し、甲2発明では不明である点。
事案に鑑み、相違点4についてまず検討する。
成形材料の集合体において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する」点については、甲第2号証に記載も示唆もされていない。また、当該技術分野において、成形材料の集合体において、F/Lを本件発明1で特定する範囲に調整することが通常行われているものともいえない。
なお、この点について特許異議申立人は、甲第6号証を提出し、甲第2号証の実施例2について再現実験を行い、その結果、甲2発明において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)を満たす成形材料」が100%であったことを主張している。
しかしながら、甲第6号証に記載されている再現実験については、上記イ(ア)で検討したとおり採用することはできない。
また、他の証拠の全ての記載を見ても、相違点4に係る本件発明1の特定事項を導くこともできない。
以上のとおりであるから、相違点3については検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、つまり、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲第2号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件発明2、3、5~13について
本件発明2、3、5~13は、いずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である、本件発明2、3、5~13もまた、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件発明4、31について
本件発明4、31は、いずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である、本件発明4、31また、甲第2号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
。
(エ) 本件発明18について
本件発明18と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「柱状ペレット(長繊維ペレット)」は、本件発明18の「成形材料」に相当することは明らかである。
したがって、両者は、
「含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点5>
含浸助剤に関し、本件発明18は、20℃で固体であるのに対し、甲2発明の含浸助剤であるポリフェニレンスルフィドプレポリマーは、20℃で固体であるか否か不明である点。
<相違点6>
成形材料に関し、本件発明18は、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L≦10,000(N/m)を満たす成形材料」であるのに対し、甲2発明では不明である点。
事案に鑑み、相違点6についてまず検討する。
成形材料において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料」については、甲第2号証に記載も示唆もされていない。また、当該技術分野において、成形材料の集合体において、F/Lを本件発明1で特定する範囲に調整することが通常行われているものともいえない。
なお、この点について特許異議申立人は、甲第6号証を提出し、甲第2号証の実施例2について再現実験を行い、その結果、甲2発明において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、F/L(N/m)が2466であったことを主張している。
しかしながら、上記(ア)で検討したとおりであるから、甲第6号証において示されている実験結果を採用することはできない。
また、他の証拠の全ての記載を見ても、相違点6に係る本件発明18の特定事項を導くこともできない。
以上のとおりであるから、相違点5については検討するまでもなく、本件発明18は、甲2発明、つまり、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲第2号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(オ) 本件発明19、20、22~30について
本件発明19、20、22~30は、いずれも、直接又は間接的に請求項18を引用する発明であり、本件発明18の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(エ)のとおり、本件発明18は、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明18の特定事項を全て含む発明である、本件発明19、20、22~30もまた、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(カ) 本件発明21,32について
本件発明21、32は、いずれも、直接又は間接的に請求項18を引用する発明であり、本件発明18の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(エ)のとおり、本件発明18は、甲第2号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明18の特定事項を全て含む発明である、本件発明21、32また、甲第2号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 甲第3号証を主引用例とする、取消理由1(新規性)および取消理由2(進歩性)について
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲3材料発明とを対比する。
甲3材料発明の「フェノール系重合体」は、甲第3号証の段落【0092】によると、導電性繊維束を含浸するものであるから、本件発明1の「含浸助剤」に相当する。また、甲3材料発明の「長繊維ペレット」はその集合体として用いられるものであるから、本件発明1の「成形材料の集合体」に相当することは明らかである。
したがって、両者は、
「含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料の集合体。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点7>
含浸助剤に関し、本件発明1は、20℃で固体であるのに対し、甲3材料発明のフェノール系重合体であるテルペン・フェノール共重合体[ヤスハラケミカル(株)製YP90L]は、20℃で固体であるか否か不明である点。
<相違点8>
成形材料の集合体に関し、本件発明1は、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L≦10,000(N/m)を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する」ものであるのに対し、甲3材料発明では不明である点。
事案に鑑み、相違点8についてまず検討する。
成形材料の集合体において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する」点については、甲第3号証に記載も示唆もされていない。また、当該技術分野において、成形材料の集合体において、F/Lを本件発明1で特定する範囲に調整することが通常行われているものともいえない。
なお、この点について特許異議申立人は、甲第6号証を提出し、甲第3号証の実施例1について再現実験を行い、その結果、甲3発明において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)を満たす成形材料」が100%であったことを主張している。
しかしながら、甲第6号証に記載されている再現実験については、上記イ(ア)で検討したとおり採用することはできない。
また、他の証拠の全ての記載を見ても、相違点8に係る本件発明1の特定事項を導くこともできない。
以上のとおりであるから、相違点7については検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明、つまり、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件発明2、3、5、7~10、12、13について
本件発明2、3、5、7~10、12、13は、いずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である、本件発明2、3、5、7~10、12、13もまた、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件発明4、31について
本件発明4、31は、いずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である、本件発明4、31もまた、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ) 本件発明14について
本件発明14と甲3製法発明とを対比する。
甲3製法発明の「フェノール系重合体」は、甲第3号証の段落【0092】によると、導電性繊維束を含浸するものであるから、本件発明14の「含浸助剤」に相当する。また、甲3製法発明の「長繊維ペレット」は、本件発明14の「成形材料」に相当する。
したがって、両者は、
「含浸助剤を含む炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂を被覆した芯鞘構造の成形材料の製造方法であって、含浸助剤が20℃で固体であり、該炭素繊維束を、予め、含浸助剤が結晶性樹脂の場合は融点以上、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度以上に加熱した状態で、熱可塑性樹脂を被覆して一体化する、成形材料の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点9>
含浸助剤に関し、本件発明14は、20℃で固体であるのに対し、甲3製法発明のフェノール系重合体であるテルペン・フェノール共重合体[ヤスハラケミカル(株)製YP90L]は、20℃で固体であるか否か不明である点。
<相違点10>
成形材料の製造方法に関し、本件発明14は、炭素繊維束を、「予め、含浸助剤が結晶性樹脂の場合は融点以上、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度以上に加熱した状態」とするものであるのに対し、甲3製法発明では130℃に加熱するものである点。
<相違点11>
成形材料の製造方法に関し、本件発明14は、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料の製造方法」であるのに対し、甲3製法発明では不明である点。
事案に鑑み、相違点11についてまず検討する。
成形材料において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料の製造方法」については、甲第3号証に記載も示唆もされていない。また、当該技術分野において、成形材料の集合体において、F/Lを本件発明14で特定する範囲に調整することが通常行われているものともいえない。
なお、この点について特許異議申立人は、甲第6号証を提出し、甲第3号証の実施例1について再現実験を行い、その結果、甲3発明において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、F/L(N/m)が17000以上であったことを主張している。
しかしながら、上記(ア)で検討したとおりであるから、甲第6号証において示されている実験結果を採用することはできない。
また、仮に採用できたとしても、本件発明14の特定事項を満たしていない(F/Lの値を満たさない)ことも明らかである。
さらに、他の証拠の全ての記載を見ても、相違点11に係る本件発明14の特定事項を導くこともできない。
以上のとおりであるから、相違点9、10については検討するまでもなく、本件発明14は、甲3発明、つまり、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(オ) 本件発明15について
本件発明15は、請求項14を引用する発明であり、本件発明14の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(エ)のとおり、本件発明14は、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明14の特定事項を全て含む発明である、本件発明15もまた、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(カ) 本件発明16、17について
本件発明16、17は、いずれも、直接又は間接的に請求項14を引用する発明であり、本件発明14の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(エ)のとおり、本件発明14は、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明14の特定事項を全て含む発明である、本件発明16、17もまた、甲第3号証に記載された発明ではなく、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(キ) 本件発明18について
本件発明18と甲3材料発明とを対比する。
甲3材料発明の「長繊維ペレット」は、本件発明18の「成形材料」に相当することは明らかである。
したがって、両者は、
「含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点12>
含浸助剤に関し、本件発明18は、20℃で固体であるのに対し、甲3材料発明のフェノール系重合体であるテルペン・フェノール共重合体[ヤスハラケミカル(株)製YP90L]は、20℃で固体であるか否か不明である点。
<相違点13>
成形材料の集合体に関し、本件発明18は、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料」であるのに対し、甲3材料発明では不明である点。
事案に鑑み、相違点13についてまず検討する。
成形材料において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料」については、甲第3号証に記載も示唆もされていない。また、当該技術分野において、成形材料の集合体において、F/Lを本件発明1で特定する範囲に調整することが通常行われているものともいえない。
なお、この点について特許異議申立人は、甲第6号証を提出し、甲第3号証の実施例1について再現実験を行い、その結果、甲3発明において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、F/L(N/m)が17000以上であったことを主張している。
しかしながら、上記(ア)で検討したとおりであるから、甲第6号証において示されている実験結果を採用することはできない。
また、仮に採用できたとしても、本件発明18の特定事項を満たしていない(F/Lの値を満たさない)ことも明らかである。
さらに、他の証拠の全ての記載を見ても、相違点13に係る本件発明18の特定事項を導くこともできない。
以上のとおりであるから、相違点12については検討するまでもなく、本件発明18は、甲3発明、つまり、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ク) 本件発明19、20、22、24~30について
本件発明19、20、22、24~30は、いずれも、直接又は間接的に請求項18を引用する発明であり、本件発明18の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(キ)のとおり、本件発明18は、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明18の特定事項を全て含む発明である、本件発明19、20、22、24~30もまた、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ケ) 本件発明21、32について
本件発明21、32は、いずれも、直接又は間接的に請求項18を引用する発明であり、本件発明18の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(キ)のとおり、本件発明18は、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明18の特定事項を全て含む発明である、本件発明21、32もまた、甲第3号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 甲第4号証を主引用例とする、取消理由1(新規性)および取消理由2(進歩性)について
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲4材料発明とを対比する。
甲4材料発明の「成形材料」は、その集合体として用いられるものであるから、本件発明1の「成形材料の集合体」に相当することは明らかである。また、甲4材料発明のテルペン系樹脂(ヤスハラケミカル(株)製YSレジンPX1250樹脂)は融点が70℃であるから、20℃においては固体であることも明らかである。
したがって、両者は、
「含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料の集合体であって、
含浸助剤が20℃で固体である、成形材料の集合体。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点14>
成形材料の集合体に関し、本件発明1は、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L≦10,000(N/m)を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する」ものであるのに対し、甲4材料発明では不明である点。
以下、相違点14について検討する。
成形材料の集合体において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料が、全集合体のうち30%以上存在する」点については、甲第4号証に記載も示唆もされていない。また、当該技術分野において、成形材料の集合体において、F/Lを本件発明1で特定する範囲に調整することが通常行われているものともいえない。
なお、この点について特許異議申立人は、甲第6号証を提出し、甲第4号証の実施例4について再現実験を行い、その結果、甲4発明において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)を満たす成形材料」が100%であったことを主張している。
しかしながら、甲第6号証に記載されている再現実験については、上記イ(ア)で検討したとおり採用することはできない。
また、他の証拠の全ての記載を見ても、相違点14に係る本件発明1の特定事項を導くこともできない。
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲4発明、つまり、甲第4号証に記載された発明ではなく、また、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件発明2、3、5~7、10、12、13について
本件発明2、3、5、7~10、12、13は、いずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明ではなく、また、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である、本件発明2、3、5~7、10、12、13もまた、甲第4号証に記載された発明ではなく、また、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件発明4、31について
本件発明4、31は、いずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である、本件発明4、31もまた、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ) 本件発明14について
本件発明14と甲4製法発明とを対比する。
甲4製法発明のテルペン系樹脂(ヤスハラケミカル(株)製YSレジンPX1250樹脂)は融点が70℃であるから、20℃において固体であることは明らかである。
したがって、両者は、
「含浸助剤を含む炭素繊維束の周囲に熱可塑性樹脂を被覆した芯鞘構造の成形材料の製造方法であって、含浸助剤が20℃で固体であり、熱可塑性樹脂を被覆して一体化する、成形材料の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点15>
請求項14に係る発明の成形材料の製造方法では、炭素繊維束を、「予め、含浸助剤が結晶性樹脂の場合は融点以上、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度以上に加熱した状態」とするものであるのに対し、甲4製法発明ではポリプロピレン樹脂の被覆工程に先立って、連続炭素繊維束を、180℃に加熱されたロールの上下を交互に通過させることで、テルペン系樹脂を繊維束の内部まで含浸させるものである点。
<相違点16>
成形材料の製造方法に関し、本件発明14は、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料」であるのに対し、甲4製法発明では不明である点。
事案に鑑み、相違点16についてまず検討する。
成形材料において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、100≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料の製造方法」については、甲第3号証に記載も示唆もされていない。また、当該技術分野において、成形材料の集合体において、F/Lを本件発明14で特定する範囲に調整することが通常行われているものともいえない。
なお、この点について特許異議申立人は、甲第6号証を提出し、甲第4号証の実施例4について再現実験を行い、その結果、甲4発明において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、F/L(N/m)が17000以上であったことを主張している。
しかしながら、上記(ア)で検討したとおりであるから、甲第6号証において示されている実験結果を採用することはできない。
また、仮に採用できたとしても、本件発明14の特定事項を満たしていない(F/Lの値を満たさない)ことも明らかである。
さらに、他の証拠の全ての記載を見ても、相違点16に係る本件発明14の特定事項を導くこともできない。
以上のとおりであるから、相違点15については検討するまでもなく、本件発明14は、甲4発明、つまり、甲第4号証に記載された発明ではなく、また、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(オ) 本件発明17について
本件発明17は、請求項14を引用する発明であり、本件発明14の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(エ)のとおり、本件発明14は、甲第4号証に記載された発明ではなく、また、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明14の特定事項を全て含む発明である、本件発明17もまた、甲第4号証に記載された発明ではなく、また、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(カ) 本件発明18について
本件発明18と甲4材料発明とを対比する。
甲4材料発明のテルペン系樹脂(ヤスハラケミカル(株)製YSレジンPX1250樹脂)は融点が70℃であるから、20℃において固体であることは明らかである。
したがって、両者は、
「含浸助剤を含む炭素繊維束に、熱可塑性樹脂が被覆された成形材料であって、
含浸助剤が20℃で固体である、成形材料。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点17>
成形材料の集合体に関し、本件発明18は、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L(N/m)を満たす成形材料」であるのに対し、甲4材料発明では不明である点。
以下、上記相違点17について検討する。
成形材料において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、80≦F/L(N/m)≦10,000を満たす成形材料」については、甲第4号証に記載も示唆もされていない。また、当該技術分野において、成形材料の集合体において、F/Lを本件発明1で特定する範囲に調整することが通常行われているものともいえない。
なお、この点について特許異議申立人は、甲第6号証を提出し、甲第4号証の実施例4について再現実験を行い、その結果、甲4発明において、「炭素繊維束の軸方向の成形材料長さL、炭素繊維束の成形材料への把持力Fとしたとき、F/L(N/m)が17000以上であったことを主張している。
しかしながら、上記(ア)で検討したとおりであるから、甲第6号証において示されている実験結果を採用することはできない。
また、仮に採用できたとしても、本件発明18の特定事項を満たしていない(F/Lの値を満たさない)ことも明らかである。
さらに、他の証拠の全ての記載を見ても、相違点17に係る本件発明18の特定事項を導くこともできない。
以上のとおりであるから、本件発明18は、甲4発明、つまり、甲第4号証に記載された発明ではなく、また、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(キ) 本件発明19、20、22~27、29、30について
本件発明19、20、22~27、29、30は、いずれも、直接又は間接的に請求項18を引用する発明であり、本件発明18の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(カ)のとおり、本件発明18は、甲第4号証に記載された発明ではなく、また、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明18の特定事項を全て含む発明である、本件発明19、20、22~27、29、30もまた、甲第4号証に記載された発明ではなく、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ク) 本件発明21、32について
本件発明21、32は、いずれも、直接又は間接的に請求項18を引用する発明であり、本件発明18の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(カ)のとおり、本件発明18は、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明18の特定事項を全て含む発明である、本件発明21、32もまた、甲第4号証に記載された発明及び他の証拠の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 申立理由3(サポート要件)について
F/L、つまり単位長さあたりの把持力が強い方が、炭素繊維が脱落しにくくなることは、当業者であれば理解できる。
よって、申立理由3は理由がない。
(4) 申立理由4-1(明確性)について
請求項5、22には、熱可塑性樹脂の線膨張係数K1(10-4/℃)、含浸助剤の線膨張係数K2(10-4/℃)に関し、0.1<|K1-K2|を満たすことが特定されている。
この点について、段落【0049】の記載があるものの、明細書の発明の詳細な説明には、熱可塑性樹脂の線膨張係数K1、含浸助剤の線膨張係数K2がいかなるものであるのか、その定義及び決定方法についての明示的記載はない。
しかしながら、線膨張係数については、「ISO11359-2」による測定法が当該技術分野においてよく知られていることからすれば、当業者であれば、明細書の発明の詳細な説明中において明示的記載がなくとも、「ISO11359-2」にしたがって測定するものであろうことは、当然理解できる。
よって、申立理由4-1は理由がない。
(5) 申立理由5(実施可能要件)について
申立理由5については、本件訂正により、F/Lの上限として、「F/L≦10,000」であることが特定された。
そして、明細書の段落【0029】、実施例などの記載を参酌すれば、当業者であれば、本件発明1~32を実施できる程度に明細書の発明の詳細な説明に記載しているものといえる。
よって、申立理由5は理由がない。
第6 まとめ
以上のとおり、本件発明6、23に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
また、本件発明1~5、7~22、24~32に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~5、7~22、24~32に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700396