特許異議申立
2019-700389
3次元成型品加飾用積層フィルムのクリヤー塗膜層形成用塗料組成物
- 審判番号
- 2019-700389
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-244919外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年05月14日
- 審決日
- 2020年06月09日
- 公報発行日
- 2020年09月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
- 【権利者代理人】八木 敏安
- 【異議申立人】大石 雪絵
- 【異議申立人】岡 幹男
- 分類
- P1651.113-ZB (C09D) / P1651.121-ZB (C09D) / P1651.536-ZB (C09D) / P1651.537-ZB (C09D) / P1651.841-ZB (C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6423947号発明「3次元成型品加飾用積層フィルムのクリヤー塗膜層形成用塗料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6423947号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6423947号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成26年2月3日に特許出願された特願2014-18909号の一部を、平成29年12月21日に特願2017-244919号として新たに特許出願したものであって、平成30年10月26日に特許権の設定登録がされ、同年11月14日にその特許公報が発行され、その特許に対し、令和元年5月13日に岡幹男により、また同年5月14日に大石雪絵により特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
令和元年 7月 5日付け 取消理由通知
同年 9月 6日 訂正請求書・意見書(特許権者)
同年10月 3日付け 訂正請求があった旨の通知
同年11月 7日 意見書(異議申立人大石雪絵)
同年11月19日付け 訂正拒絶理由通知
令和2年 1月15日付け 取消理由通知
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正請求の趣旨及び内容
特許権者が令和元年9月6日付け訂正請求書により請求する訂正(以下、「本件訂正」という)の「請求の趣旨」は、「特許第6423947号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1、4~6、9、11を含むものである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付した)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「ポリウレタンアクリレート(B1)と、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)と、重合開始剤(B3)とを含有する塗料組成物であって、
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、
2重結合当量:130~600g/eq
分子量Mw:4000~200000
ウレタン濃度:300~2000g/eq、
である3次元成型品加飾用積層フィルムのクリヤー塗膜層形成用塗料組成物。」
と記載されているのを、
「ポリウレタンアクリレート(B1)と、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)(ただし、重量平均分子量が3000以上のものを除く)と、重合開始剤(B3)とを含有する塗料組成物であって、
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、
2重結合当量:130~600g/eq
分子量Mw:4000~200000
ウレタン濃度:300~2000g/eq、
であり、
ウレア濃度:500~1000g/eqである(i)か、ポリカーボネート濃度:0.5~75wt%となる割合でポリカーボネートジオール骨格を有する(ii)か、少なくとも一方を満たし、(B1)の固形分重量、(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部中に、(B1)を50~99重量部、(B2)を1~50重量部の範囲内となるように含有し、(B1)の固形分重量及び(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部に対して(B3)を0.5~20重量部の範囲内で含有し、(B1)~(B3)の他の成分の含有量が、60重量%以下である3次元成型品加飾用積層フィルムのクリヤー塗膜層形成用塗料組成物。」に訂正する(請求項1を直接または間接に引用する請求項2~8も同様に訂正する)。
(2)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「更に、平均1次粒子径が100nm以下の無機・有機フィラーを0.5~60重量部含有する請求項1~3のいずれか1に記載の塗料組成物。」
と記載されているのを、
「更に、平均1次粒子径が100nm以下の無機フィラー及び/又は有機フィラーを0.5~60重量部(塗料中の固形分量に対する重量割合)含有する請求項1に記載の塗料組成物。」に訂正する(請求項4を直接または間接に引用する請求項5~8も同様に訂正する)。
(3)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「更に、イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を0.5~20重量部含有する請求項1~4のいずれか1に記載の塗料組成物。」
と記載されているのを、
「更に、イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を0.5~20重量部(塗料中の固形分量に対する重量割合)含有する請求項1、4のいずれか1に記載の塗料組成物。」に訂正する(請求項5を直接または間接に引用する請求項6~8も同様に訂正する)。
(4)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「更に、チオール基及び/又はアミン基を有するモノマーを0.5~20重量部含有する請求項1~5のいずれか1に記載の塗料組成物。」
と記載されているのを、
「更に、チオール化合物及び/又はアミン化合物を0.5~20重量部(塗料中の固形分量に対する重量割合)含有する請求項1,4,5のいずれか1に記載の塗料組成物。」に訂正する(請求項6を直接または間接に引用する請求項7~8も同様に訂正する)。
(5)訂正事項9
明細書の[0008]に
「本発明は、ポリウレタンアクリレート(B1)と、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)と、重合開始剤(B3)とを含有する塗料組成物であって、
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、
2重結合当量:130~600g/eq
分子量Mw:4000~200000
ウレタン濃度:300~2000g/eq、
である3次元成型品加飾用積層フィルムのクリヤー塗膜層形成用塗料組成物である。」
と記載されているのを、
「本発明は、ポリウレタンアクリレート(B1)と、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(B2)(ただし、重量平均分子量が3000以上のものを除く)と、重合開始剤(B3)とを含有する塗料組成物であって、
上記ポリウレタンアクリレート(B1)は、
2重結合当量:130~600g/eq
分子量Mw:4000~200000
ウレタン濃度:300~2000g/eq、
であり、
ウレア濃度:500~1000g/eqである(i)か、ポリカーボネート濃度:0.5~75wt%となる割合でポリカーボネートジオール骨格を有する(ii)か、少なくとも一方を満たし、(B1)の固形分重量、(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部中に、(B1)を50~99重量部、(B2)を1~50重量部の範囲内となるように含有し、(B1)の固形分重量及び(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部に対して(B3)を0.5~20重量部の範囲内で含有し、(B1)~(B3)の他の成分の含有量が、60重量%以下である3次元成型品加飾用積層フィルムのクリヤー塗膜層形成用塗料組成物である。」に訂正する。
(6)訂正事項11
明細書の[0010]に
「本発明の塗料組成物は、更に、平均1次粒子径が100nm以下の無機・有機フィラーを0.5~60重量部含有することが好ましい。本発明の塗料組成物は、更に、イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を0.5~20重量部含有することが好ましい。
本発明の塗料組成物は、更に、チオール基及び/又はアミン基を有するモノマーを0.5~20重量部含有することが好ましい。
ポリウレタンアクリレート(B1)は、フッ素、シリコーンで変性されたものであることが好ましい。
本発明の塗料組成物は、(B1)の固形分重量、(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部中に、(B1)を50~99重量部、(B2)を1~50重量部の範囲内となるように含有し、(B1)の固形分重量及び(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部に対して(B3)を0.5~20重量部の範囲内で含有することが好ましい。」と記載されているのを、
「更に、平均1次粒子径が100nm以下の無機フィラー及び/又は有機フィラーを0.5~60重量部(塗料中の固形分量に対する重量割合)含有することが好ましい。
本発明の塗料組成物は、更に、イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を0.5~20重量部(塗料中の固形分量に対する重量割合)含有することが好ましい。
本発明の塗料組成物は、更更に、チオール化合物及び/又はアミン化合物を0.5~20重量部(塗料中の固形分量に対する重量割合)含有することが好ましい。
ポリウレタンアクリレート(B1)は、フッ素及び/又はシリコーンで変性されたものであることが好ましい。」に訂正する。
なお、訂正請求書第5頁において、「コ 訂正事項11 [0009]を削除する。 サ 訂正事項12 [0010]において、…」と記載されているが、訂正事項10が欠けていること、及び訂正請求書第16~17頁の記載からみて、[0009]を削除するのが「訂正事項10」、[0010]を訂正するのが「訂正事項11」であるとした。
2 訂正の目的の適否及び新規事項の有無についての当審の判断
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1のうち、「(B1)~(B3)の他の成分の含有量が、60重量%以下である」を加える訂正(以下、当該訂正1という)は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そこで、当該訂正1が、本件特許がされた明細書、特許請求の範囲、図面(以下、本件特許の明細書等という)との関係において、新たな技術的事項を追加するものであるか否かについて検討する。
まず、「60重量%以下」とは、「塗料組成物」に対する重量割合であると認められる。次に、「(B1)~(B3)の他の成分」はその種類は問わないものと認められる。よって、塗料組成物は、例えば不飽和2重結合を有さないバインダー樹脂を60重量%含み得ると認められる。
次に、本件特許の明細書等を精査すると、明細書段落0057には、「(B1)~(B3)の他の成分」として「通常、塗料材料として添加される化合物」が含まれてよく、具体例として「バインダー用樹脂」等が挙げられている。しかし、その重量について何も記載されていない。
そして、特許権者は、訂正請求書第8頁12~14行において、「訂正前の特許明細書段落[0059]の記載を根拠として「(B1)~(B3)の他の成分の含有量が、60重量部以下である」旨の構成を加」えたと主張している。しかし、当該段落0059には「クリヤー塗料組成物は、更に、平均1次粒子径が100nm以下の無機・有機フィラーを0.5~60重量部含有することが好ましい」と記載されているのみであって、「(B1)~(B3)の他の成分」をその種類を問わず60重量%以下含有できることは記載も示唆もされていない。
よって、当該訂正1は、新規事項を追加するものであり、当該訂正1を含む上記訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであるとはいえない。
(2)訂正事項4、5について
特許権者は、訂正請求書第11頁12~13行において、訂正事項4の「(塗料中の固形分量に対する重量割合)」を追加する訂正(以下、当該訂正4という)は、明瞭でない記載の釈明であ」ると主張する。
しかし、訂正事項4における「0.5~60重量部(塗料中の固形分量に対する重量割合)」とは、その括弧書きの部分が例えば「(塗料中の固形分量100重量部に対する重量割合)」のように特定されておらず、「塗料中の固形分量」何重量部に対して「0.5~60重量部」とする「重量割合」であるか依然として明確でない。よって、当該訂正4は明瞭でない記載の釈明に該当しない。また、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることのいずれにも該当しないことも明らかである。
よって、当該訂正4を含む上記訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものとはいえず、目的要件に適合するものではない。
訂正事項5についても同様である。
(3)訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項6の「(塗料中の固形分量に対する重量割合)」を追加する訂正(以下、当該訂正6という)は、上記(2)と同様に、明瞭でない記載の釈明等に該当しない。よって、当該訂正6を含む上記訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものとはいえず、目的要件に適合するものではない。
イ 新規事項の有無について
特許権者は、訂正請求書第14頁6~7行において、当該訂正6は、「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である」と主張するが、どの記載を根拠とするのか等の具体的な説明が全くない。また、訂正請求書第12頁15~20行において、訂正事項4に関して、「「イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を0.5~20重量%(塗料中の固形分比)含有するものであってもよい。」との記載、実施例において、フィラーとイソシアネート化合物の配合に関する記載が同等であることを考慮すれば、固形物換算であることは明らかであります。なお、塗料の分野においては、各成分の配合割合は固形分重量比で記載することが最も一般的であることも申し述べる。」と主張していることを考慮すると、同様の理由により、チオール化合物及び/又はアミン化合物の含有量が固形分換算であると主張していると解して、以下に一応検討する。
ここで、本件特許の明細書段落0052には、「上記クリヤー塗料組成物は、チオール基及び/又はアミン基を有するモノマーを0.5~20重量部含有することが好ましい。」と記載されている。確かに、塗料の技術分野においては、添加剤の配合割合は固形分重量比で記載することが最も一般的であるから、当該「0.5~20重量部」が「塗料中の固形分量に対する重量割合」を示していると解し得る。しかし、本件特許の明細書の段落0048~0051には「(B1)の固形分重量、(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部」に対する、「(B1)~(B3)の配合量)」について記載があり、それに続いて、段落0052に上記記載がある。そうすると、当該「0.5~20重量部」は「(B1)の固形分重量、(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部」に対するものであるとも解し得る。また、本件特許の明細書の表2、参考例26には、「チオール化合物」である「B6」の配合量が「(B1)の固形分重量、(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部」に対する重量割合として記載されている。
よって、本件特許の明細書等において、チオール化合物及び/又はアミン化合物の含有量である「0.5~20重量部」が、特許権者の主張するように「塗料中の固形分量に対する重量割合」であるのか、「(B1)の固形分重量、(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部」に対する重量割合であるのかは不明といわざるを得ない。それゆえ、「0.5~20重量部」を「塗料中の固形分量に対する重量割合」であるとする当該訂正6は、新たな技術的事項を追加するものである(なお、「0.5~20重量部」を「(B1)の固形分重量、(B2)の固形分重量の合計量((B1)+(B2))100重量部」に対する重量割合であるとする訂正も、新たな技術的事項を追加するものであることを付記する)。
以上のように、当該訂正6は、新規事項を追加するものであり、当該訂正6を含む上記訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであるとはいえない。
(4)訂正事項9、11について
訂正事項9は、本件特許の明細書の段落0008を、上記訂正事項1において請求項1を訂正したことに伴い、訂正後の請求項1と同一の内容に訂正するものであるから、上記(1)と同様に、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであるとはいえない。
訂正事項11は、本件特許の明細書の段落0010を、上記訂正事項4~6において請求項4~6を訂正したこと等に伴い、訂正後の請求項4~6等と同一の内容に訂正するものであるから、上記(2)、(3)と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものとはいえないし、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであるとはいえない。
(5)一群の請求項について
訂正事項1~8に係る訂正前の請求項1~8について、その請求項2~8はいずれも請求項1を直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項1~8は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
また、訂正事項9~13による明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項1~8であるから、訂正事項1~8と関係する一群の請求項が請求の対象とされている。
したがって、訂正事項1~13による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
3 小括
以上のとおり、上記訂正事項1、6、9、11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであるとはいえず、上記訂正事項4~6、11は、特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものとはいえない。
そして、訂正事項1、4~6、9、11による本件訂正は訂正後の請求項1~8に係る一群の請求項を訂正するものであるから、その他の訂正事項の適否にかかわらず、請求項1~8に係る一群の請求項の訂正を認めることができない。
第3 まとめ 令和元年9月6日付けの訂正請求については、上記第2で検討したとおりであるから、特許第6423947号の請求項1~8に係る発明は、特許掲載公報に記載された特許請求の範囲の請求項1~8に記載されたとおりものである。これに対して、令和2年1月15日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項1~8に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700389