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特許異議申立

2019-700319

立軸ポンプ

審判番号
2019-700319
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-085253
登録番号
特許第6426908号(P6426908)
請求日
2019年04月22日
審決日
2019年11月28日
公報発行日
2020年03月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社日立製作所
  • 【権利者代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
  • 【異議申立人】橋詰 隆
審判長/審判官
  • 審判長 久保 竜一
  • 審判官 長馬 望
  • 審判官 佐々木 芳枝
分類
P1652.113-YAA(F04D) / P1652.121-YAA(F04D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項第4号、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第120条の5第2項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6426908号発明「立軸ポンプ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6426908号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1,3,4について訂正することを認める。 特許第6426908号の請求項1に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6426908号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成26年4月17日に出願され、平成30年11月2日にその特許権の設定登録がされ、同月21日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1に係る特許について、平成31年4月22日に特許異議申立人 橋詰 隆より特許異議の申立てがされ、当審は、令和元年7月24日付けで取消理由を通知した(同月29日発送)。特許権者は、その指定期間内である同年9月25日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、この訂正の請求による訂正を「本件訂正」という。)を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人 橋詰 隆は、同年10月16日に意見書を提出した。 第2 訂正の適否 1 本件訂正の内容 本件訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし3のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項3に「前記第1のバッフルの前記ベルマウスと反対側に取り付けられ、前記中心軸に垂直な板状の第2のバッフルと、前記第2のバッフルの前記ベルマウス側の表面に立設され、流れが前記渦防止装置に当たって剥離することによる渦の発生を抑制する柱状構造と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の立軸ポンプ。」とあるうち、請求項1を引用するものと請求項2を引用するものについて、それぞれ、独立形式に改め、請求項3を「ベルマウスの上流側に取り付けられる渦防止装置を備え、前記渦防止装置は、前記ベルマウスの中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備える第1のバッフルと、前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端部に設けられ、流れが前記渦防止装置に当たって剥離することによる渦の発生を抑制する渦抑制構造と、を有し、前記渦抑制構造は、前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端面に表面が当接して固定される板状のリブを含み、前記リブは、前記第1のバッフルに対して垂直に固定されており、前記第1のバッフルの前記ベルマウスと反対側に取り付けられ、前記中心軸に垂直な板状の第2のバッフルと、前記第2のバッフルの前記ベルマウス側の表面に立設され、流れが前記渦防止装置に当たって剥離することによる渦の発生を抑制する柱状構造と、を有することを特徴とする立軸ポンプ。」と訂正し、また、新たに設けた請求項4を「ベルマウスの上流側に取り付けられる渦防止装置を備え、前記渦防止装置は、前記ベルマウスの中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備える第1のバッフルと、前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端部に設けられ、流れが前記渦防止装置に当たって剥離することによる渦の発生を抑制する渦抑制構造と、を有し、前記渦抑制構造は、前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端部に形成される貫通孔を含み、前記第1のバッフルの前記ベルマウスと反対側に取り付けられ、前記中心軸に垂直な板状の第2のバッフルと、前記第2のバッフルの前記ベルマウス側の表面に立設され、流れが前記渦防止装置に当たって剥離することによる渦の発生を抑制する柱状構造と、を有することを特徴とする立軸ポンプ。」とする。 (3)訂正事項2(下線は、訂正箇所を示す。) 特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記リブは、前記第1のバッフルに対して垂直に固定されている」を、「前記第1のバッフルは、前記ベルマウスとは反対側に位置する本体部と、前記本体部における前記中心軸を中心とした径方向外側の端部から前記ベルマウス側に向けて延伸している支持部とを有し、前記リブは、前記第1のバッフルのうちの前記本体部のみに対して垂直に固定されている」と訂正する。 (4)訂正事項3(下線は、訂正箇所を示す。) 願書に添付した明細書の段落【0009】に記載された「前記リブは、前記第1のバッフルに対して垂直に固定されている」を、「前記第1のバッフルは、前記ベルマウスとは反対側に位置する本体部と、前記本体部における前記中心軸を中心とした径方向外側の端部から前記ベルマウス側に向けて延伸している支持部とを有し、前記リブは、前記第1のバッフルのうちの前記本体部のみに対して垂直に固定されている」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項3の記載が請求項1または請求項2の記載を引用する請求項の記載であったところ、このうち請求項1の記載を引用する請求項3の記載を、請求項1の記載を引用しない形式とし、また、請求項2の記載を引用する請求項3の記載を新たに請求項4として、請求項2の記載を引用しない形式とする訂正であり、特許法第120条の5第2項第4号の他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、新規事項を追加する訂正ではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に係る発明の「第1のバッフル」が「ベルマウスとは反対側に位置する本体部と、前記本体部における前記中心軸を中心とした径方向外側の端部から前記ベルマウス側に向けて延伸している支持部とを有」することについて限定し、また、本件訂正前の請求項1に係る発明の「板状のリブ」が、「第1のバッフルに対して垂直に固定されている」と特定されていたものを、第1のバッフルの固定される箇所について限定し、「第1のバッフルのうちの前記本体部のみに対して垂直に固定されている」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 次に新規事項の追加の有無について検討すると、本件特許の明細書には、「また、渦防止装置20は、バッフル側板21のベルマウス4と反対側に取り付けられる第2のバッフルとしてのバッフル底板22を有している。バッフル底板22は、中心軸CLに垂直な円形の板状を呈している。」(【0021】)、「バッフル側板21は、バッフル底板22側に位置する本体部211と、ベルマウス4側に位置する支持部212とを有している。支持部212は、本体部211における中心軸CLを中心とした径方向外側の端部からベルマウス4側に向けて延伸している。ここでは、本体部211と支持部212とは一体に形成されている。……」(【0022】)と記載され(下線は、当審が付与した。以下同様とする。)、【0022】の記載の「バッフル底板22側」とは、【0021】の記載より、バッフル側板21のベルマウスとは反対側を意味しているから、明細書には、「第1のバッフルは、前記ベルマウスとは反対側に位置する本体部と、前記本体部における前記中心軸を中心とした径方向外側の端部から前記ベルマウス側に向けて延伸している支持部とを有」することが記載されている。さらに、明細書には、「第1実施形態では、渦抑制構造25は、バッフル側板21の中心軸CLを中心とした径方向外側の端面213に固定される板状のリブであって、該リブの平坦な表面がバッフル側板21の端面213に当接するようにして、バッフル側板21に対して垂直に溶接等により固定されている。……」(【0025】)と記載され、本件特許の図2(a)及び(c)には、下のような図(左側が図2(a)、右側が図2(c))が示されている(符号に対する名称は、当審が一部追加した。)。 これらの図の記載から、本件の図2には、渦抑制構造25の板状のリブをバッフル側板21の本体部211のみに取り付けた状態がみてとれる。 以上のことから、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面には、第1のバッフルは、ベルマウスとは反対側に位置する本体部と、前記本体部における中心軸を中心とした径方向外側の端部から前記ベルマウス側に向けて延伸している支持部とを有し、(渦抑制構造25の板状の)リブは、前記第1のバッフルのうちの前記本体部のみに対して垂直に固定されていることが示されており、これらの事項を限定する訂正事項2は、新規事項を追加するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 また、訂正事項2は、上記のように、本件訂正前の請求項1に係る発明の「第1のバッフル」と「板状のリブ」について限定するものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項2により、本件訂正前の請求項1の記載を本件訂正後の請求項1に訂正したことに伴って、本件明細書の対応する記載を訂正するものであって、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項2についての判断と同様に、新規事項を追加するものではなく、また特許請求の範囲を拡張し、また変更するものでもないから、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第5項から第6項の規定に適合する。 3 一群の請求項について 上記訂正事項1について示すように、本件訂正後の請求項3及び4は、請求項1又は2の記載を引用しないものとし、本件訂正の請求人(異議事件の特許権者)は、訂正請求書において、訂正後の請求項3,4については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている(訂正請求書7ページ4行ないし5行)から、請求項1、3及び4は、請求項ごとに訂正の請求ができるものである。 4 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1,3,4について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明1 本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「ベルマウスの上流側に取り付けられる渦防止装置を備え、 前記渦防止装置は、 前記ベルマウスの中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備える第1のバッフルと、 前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端部に設けられ、流れが前記渦防止装置に当たって剥離することによる渦の発生を抑制する渦抑制構造と、 を有し、 前記渦抑制構造は、前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端面に表面が当接して固定される板状のリブを含み、 前記第1のバッフルは、前記ベルマウスとは反対側に位置する本体部と、前記本体部における前記中心軸を中心とした径方向外側の端部から前記ベルマウス側に向けて延伸している支持部とを有し、 前記リブは、前記第1のバッフルのうちの前記本体部のみに対して垂直に固定されていることを特徴とする立軸ポンプ。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審が令和元年7月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 本件発明1は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布されたまたは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004-270479号公報(甲第1号証、以下、「甲1」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、同項本文の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 第5 甲1の記載 1 甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付与した(以下同様とする。)。 (1)「【請求項1】 ポンプ吸込口の吸込方向の直上流位置に水の旋回流に干渉して該旋回流が水中渦に発達するのを防止するとともに、前記吸込口への水の流れを許容する水中渦発生防止部材が設けられていることを特徴とするポンプの渦防止装置。」 (2)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ポンプの渦防止装置に関する。」 (3)「【0003】 …ポンプPの真後方の後壁2に垂直方向にのびる凸部4を突設することによって、水中渦3,3の発生を防止するようにしたポンプの渦防止装置がある(…)。」 (4)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】 …従来の渦防止装置では、凸部4が設けられているポンプP直後方の狭い領域における水の旋回を妨げて、この狭い領域における圧力低下を防ぐことで旋回流が水中渦3,3に発達するのを防止できる。しかし、凸部4の両側、つまり、ポンプPの斜め後方の広い領域における水の旋回を妨げて、この広い領域における圧力低下を防ぐことで、水中渦3,3の発生を防止することは期待できない。… 【0006】 本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、簡単な構造によって水中渦の発生を確実に防止することができるとともに、ポンプ設置水槽内残存水の水抜きやポンプ設置水槽に対する土木工事など不要にして、ポンプの運転休止時間を大幅に短縮し得るポンプの渦防止装置を提供することを目的としている。」 (5)「【0010】 図1~図3において、ポンプPは、その下向きの吸込ベルマウス(吸込口)6の直下に十字状のバッフル7を取付けた状態でポンプ設置水槽5の奥部であるポンプ設置域1に吊り下げて設置されている。また、吸込ベルマウス(吸込口)6の直下におけるポンプ設置域1の後壁2に対向する部位、すなわち、図1においてθ=160゜で示される後壁2に対向する領域には、平面形状が略半円形をなして下向きにのびる底無しパンチングメタル製の水中渦発生防止部材8をバッフル7の外端に配設してある。なお、水中渦発生防止部材8は、たとえば、十字状のバッフル7の外端面に対して図示していない複数本の締結ボルトで締結することにより設けることができる。 【0011】 前記構成において、ポンプPを運転するとポンプPの後側域や側域に矢印Aで示す水の旋回流が発生する。このように旋回流が発生しても、この旋回流(矢印A)は水中渦に発達してポンプPの吸込ベルマウス6から吸い込まれる前段で該ポンプPの吸込ベルマウス6の吸込方向の直上流位置に設けられているパンチングメタル製の水中渦発生防止部材8に干渉する。すなわち、旋回流(矢印A)は水中渦に発達する前段でパンチングメタル製の水中渦発生防止部材8の多数の透孔部8A,8A…を通過することになり、多数の透孔部8A,8A…を通過する際に整流されて旋回成分が弱められ、水中渦に発達するのが妨げられた状態で吸込ベルマウス6からポンプP内に吸い込まれるので、実質的に水中渦がポンプP内に吸い込まれるのを確実に防止できる。したがって、ポンプPに激しい振動や大きい騒音が発生してポンプ運転機能障害を引き起こすような事態は確実に回避される。 【0012】 このように、旋回流(矢印A)が水中渦に発達するのを確実に防止できることにより、たとえば、ポンプPの更新時においてその排水量を増大することでポンプPを設置しているポンプ設置水槽5内の流速が高く(速く)なっても、旋回流(矢印A)が水中渦に発達するのを妨げて、水中渦がポンプP内に吸い込まれるのを確実に防止できる。また、排水量の大きいポンプPの更新に際して、従来なされていたポンプ設置水槽5内残存水の水抜きや、土木構造物であるポンプ設置水槽5に対して凸部4を突設する土木工事などが不要になり、ポンプPの運転休止時間を大幅に短縮することができる。 【0013】 前記実施の形態では、図1においてθ=160゜で示される後壁2に対向する領域には、投影平面形状が略半円形をなして下向きにのびるパンチングメタル製の水中渦発生防止部材8を設けた構成で説明しているが、本発明は、前記実施の形態にのみ限定されるものではない。すなわち、図4に示すように、最小θ1=90゜~最大θ2=270゜で示す範囲であれば、前記実施の形態と同様に有効に水中渦の発生が防止できる。さらに、パンチングメタル製の水中渦発生防止部材8を使用しているが、パンチングメタルに代えて金属製のネットまたは格子状に形成した金属製品で水中渦発生防止部材8を構成してもよい。」 (6)甲1には、図1及び図2(図1のX-X断面図)として、下のような図が示されている(上側が図1、下側が図2。部材名は、当審が追記した。)。 (7)上記(5)の記載より、吸込ベルマウス6の吸込方向の直上流位置に設けられているパンチングメタル製の水中渦発生防止部材8は、バッフル7の外端に配設されているものであるから、バッフル7は、水中渦発生防止部材8と共に、吸込ベルマウス6の吸込方向の直上流位置に設けられているといえる。 (8)上記(5)に記載された「十字状のバッフル7」は、上記(6)の記載からみて、吸込ベルマウス6の中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備えている。また、上記(5)に記載された「投影平面形状が略半円形をなし」た「パンチングメタル製の水中渦発生防止部材8」は、この中心軸を中心として、投影平面形状が「略半円形状をなし」ている。 (9)上記(5)の記載より、水中渦発生防止部材8は、バッフル7の外端に配設され、ポンプPの後側域や側域に水の旋回流が発生しても、旋回流は、水中渦に発達する前段で水中渦発生防止部材8の多数の透孔部8A,8A…を通過し、その際に整流されて旋回成分が弱められ、水中渦に発達するのが妨げられることがわかるから、水中渦発生防止部材8は、バッフル7の外端に配設され、ポンプPの後側域や側域で発生する旋回流が水中渦に発達するのを妨げている。 (10)上記(6)に示す図2の記載からみて、バッフル7は、十字状に板材が形成されている下側部と、この下側部におけるベルマウス6の中心軸の延長軸上を中心とした径方向の外側の端部からベルマウス6側に向けて延びている上側部とで構成されているといえる。そして、上側部と下側部とで構成されるバッフル7において、下側部は、上側部に対して、ベルマウス6とは反対側に位置しているから、バッフル7全体からみて、下側部は、ベルマウス6とは反対側に位置するといえる。 (11)上記(5)の記載より、水中渦発生防止部材8は、十字状のバッフル7の外端面に対して締結されたパンチングメタルを含んでいる。このパンチングメタルは、上記(6)に示す図2の記載からみて、ベルマウス6の中心軸方向において、バッフル7の下側部と上側部を覆うように締結されているといえる。また、図1の記載から、ベルマウス6の中心軸方向からみて(すなわち、平面視で)、パンチングメタルは、ベルマウス6の中心軸の延長軸を中心とした投影平面形状が略半円形をなしてバッフル7に締結されている。 2 甲1発明の認定 上記1を含む甲1全体の記載を総合すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という)。 「吸込ベルマウス6の吸込方向の直上流位置に設けられている十字状のバッフル7と水中渦発生防止部材8を備え、 前記十字状のバッフル7と水中渦発生防止部材8は、 吸込ベルマウス6の中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備える十字状のバッフル7と、 前記十字状のバッフル7の外端に配設され、ポンプPの後側域や側域で発生する旋回流が水中渦に発達するのを妨げる水中渦発生防止部材8と、 を有し、 前記水中渦発生防止部材8は、前記十字状のバッフル7の外端面に対して締結されるパンチングメタルを含み、 前記十字状のバッフル7は、前記吸込ベルマウス6とは反対側に位置する下側部と、前記下側部における前記吸込ベルマウス6の中心軸の延長軸上を中心とした径方向の外側の端部から吸込ベルマウス6側に向けて延びている上側部とを有し、 前記パンチングメタルは、前記吸込ベルマウス6の中心軸方向において、前記十字状のバッフル7の前記下側部と前記上側部を覆うように、吸込ベルマウス6の中心軸の延長軸を中心とした投影平面形状が略半円形をなして前記十字状のバッフル7に締結されているポンプ。」 第6 当審の判断 1 本件発明1と甲1発明との対比と一致点、相違点について 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「吸込ベルマウス6」は、本件発明1の「ベルマウス」に相当し、また、甲1発明の「吸込方向の直上流位置に設けられている」、「十字状のバッフル7と水中渦発生防止部材8」、「十字状のバッフル7」は、それぞれ、本件発明1の「上流側に取り付けられる」、「渦防止装置」、「第1のバッフル」に相当する。したがって、甲1発明の「吸込ベルマウス6の吸込方向の直上流位置に設けられている十字状のバッフル7と水中渦発生防止部材8を備え」は、本件発明1の「ベルマウスの上流側に取り付けられる渦防止装置を備え」に相当する。また、甲1発明の「吸込ベルマウス6の中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備える十字状のバッフル7」は、本件発明1の「ベルマウスの中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備える第1のバッフル」に相当する。 甲1発明の「バッフル7の外端」は、バッフル7の中心軸から径方向に外側の端部であるから、甲1発明の「バッフル7の外端に配設され」は、本件発明1の「第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端部に設けられ」に相当する。 また、甲1発明の「水中渦発生防止部材8」は、渦の発生を抑制するものであるから、甲1発明の「ポンプPの後側域や側域で発生する旋回流が水中渦に発達するのを妨げる水中渦発生防止部材8」と、本件発明1の「流れが前記渦防止装置に当たって剥離することによる渦の発生を抑制する渦抑制構造」とは、「渦の発生を抑制する渦発生防止手段」である点で共通し、甲1発明の「水中渦発生防止部材8」と、本件発明1の「渦抑制構造」とは、「渦発生防止手段」である点で共通する。したがって、甲1発明の「前記十字状のバッフル7と水中渦発生防止部材8は、吸込ベルマウス6の中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備える十字状のバッフル7と、前記十字状のバッフル7の外端に配設され、ポンプPの後側域や側域で発生する旋回流が水中渦に発達するのを妨げる水中渦発生防止部材8と、を有」することは、本件発明1の「前記渦防止装置は、前記ベルマウスの中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備える第1のバッフルと、前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端部に設けられ、流れが前記渦防止装置に当たって剥離することによる渦の発生を抑制する渦抑制構造と、を有」することと、「前記渦防止装置は、前記ベルマウスの中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備える第1のバッフルと、前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端部に設けられ、渦の発生を抑制する渦発生防止手段と、を有」する点で共通する。 甲1発明の、「十字状のバッフル7の外端面」は、十字状のバッフル7の中心軸から径方向に外側の端面であるから、甲1発明の「十字状のバッフル7の外端面に対して締結される」は、本件発明1の「第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端面に表面が当接して固定される」に相当し、甲1発明の「パンチングメタル」は、本件発明1の「板状のリブ」に相当する。したがって、甲1発明の「水中渦発生防止部材8は、前記十字状のバッフル7の外端面に対して締結されるパンチングメタルを含み」は、本件発明1の「渦抑制構造は、前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端面に表面が当接して固定される板状のリブを含み」と、「渦発生防止手段は、前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端面に表面が当接して固定される板状のリブを含」む点で共通する。 さらに、甲1発明の「下側部」は本件発明1の「本体部」に相当し、甲1発明の「下側部における前記吸込ベルマウス6の中心軸の延長軸上を中心とした径方向の外側の端部」は、本件発明1の「本体部における前記中心軸を中心とした径方向外側の端部」に相当し、また甲1発明の「吸込ベルマウス6側に向けて延びている上側部」は、本件発明1の「ベルマウス側に向けて延伸している支持部」に相当する。したがって、甲1発明の「十字状のバッフル7は、前記吸込ベルマウス6とは反対側に位置する下側部と、前記下側部における前記吸込ベルマウス6の中心軸の延長軸上を中心とした径方向の外側の端部から吸込ベルマウス6側に向けて延びている上側部とを有」することは、本件発明1の「第1のバッフルは、前記ベルマウスとは反対側に位置する本体部と、前記本体部における前記中心軸を中心とした径方向外側の端部から前記ベルマウス側に向けて延伸している支持部とを有」することに相当する。 甲1発明のパンチングメタルは、吸込ベルマウス6の中心軸の延長軸を中心とした投影平面形状が略半円形をなしてバッフル7に締結されていることから、バッフル7とパンチングメタルとの間は、略半円形であるパンチングメタルに対して、バッフル7が当該半円の半径方向に配置されることとなる。したがって、平面視でバッフル7の外端面がパンチングメタルと接する点におけるパンチングメタルの接線とバッフル7(の延長線)は垂直に交わることとなるので、パンチングメタルはバッフル7に垂直に固定されているといえる。したがって、甲1発明の「前記パンチングメタルは、」「吸込ベルマウス6の中心軸の延長軸を中心とした投影平面形状が略半円形をなしてバッフル7に締結されている」は、本件発明1の「前記リブは、前記第1のバッフル」「に対して垂直に固定されている」に相当する。 甲1発明の「ポンプ」は、本件発明1の「立軸ポンプ」に相当する。 以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、次の[一致点]で一致し、[相違点1]及び[相違点2]で、相違する。 [一致点] 「ベルマウスの上流側に取り付けられる渦防止装置を備え、 前記渦防止装置は、 前記ベルマウスの中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備える第1のバッフルと、 前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端部に設けられ、渦の発生を抑制する渦発生防止手段と、 を有し、 前記渦発生防止手段は、前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端面に表面が当接して固定される板状のリブを含み、 前記第1のバッフルは、前記ベルマウスとは反対側に位置する本体部と、前記本体部における前記中心軸を中心とした径方向外側の端部から前記ベルマウス側に向けて延伸している支持部とを有し、 前記リブは、前記第1のバッフルに対して垂直に固定されていることを特徴とする立軸ポンプ。」 [相違点1] 渦発生防止手段で発生を抑制する渦が、本件発明1では、「流れが前記渦防止装置に当たって剥離することによ」り発生する渦であるのに対し、甲1発明では、「ポンプPの後側域や側域で発生する旋回流が」発達した水中渦である点。 [相違点2] 第1のバッフルの中心軸を中心とした径方向外側の端面に表面が当接して固定される板状のリブが、本件発明1では、第1のバッフルのうちの本体部のみに対して固定されているのに対し、甲1発明では、吸込ベルマウス6の中心軸方向において、十字状のバッフル7の下側部と上側部を覆うように締結されている点。 2 相違点についての判断 (1)[相違点1]について 甲1発明は、吸込ベルマウス6の上流位置にバッフル7を設けているものであり、吸込ベルマウス6からポンプ設備水槽5内の水を吸い込む流れは、当然このバッフル7に当たることとなり、またバッフル7の外端部では、パンチングメタル等の水中渦発生防止部材8がなければ、剥離が発生し、その結果、渦が発生することとなる。しかし、甲1発明においては、バッフル7の外端面にパンチングメタル等の水中渦発生防止部材8があるため、上記のようなバッフル7の外端部での剥離は発生しないと解される。 したがって、甲1発明の水中渦発生防止部材8は、本件発明1における「流れが前記渦防止装置に当たって剥離することによる渦の発生を抑制する渦抑制構造」と同様の機能を有しているといえるから、上記相違点1は実質的な相違点ではない。 (2)[相違点2]について 本件発明1は、板状のリブが「第1のバッフルの…端面に表面が当接して固定され」、さらに、「本体部のみに対して固定されている」ことから、板状のリブは、「本体部」ではない「支持部」には、当接して固定されるものではないと解される。すなわち、本件発明1の板状のリブは、第1のバッフルの「本体部のみ」に当接して固定されているものであり、この板状のリブは、「支持部」に対しては、当接も固定もされず、この「支持部」の径方向外側の端面には、板状のリブが設けられていないものと理解できる。 一方、甲1発明では、パンチングメタルが吸込ベルマウス6の中心軸方向において、十字状のバッフル7の下側部と上側部を覆うように締結されており、本件発明の本体部に相当する「下側部」のみにパンチングメタルが固定されるものではない。 そして、本件発明1において、相違点2の発明特定事項である板状のリブが第1のバッフルのうちの本体部のみに対して固定されていることにより、第1のバッフルの支持部の周辺は、ベルマウス6へ流れる水等の流路となることから、上記相違点2は、実質的な相違点である。 3 異議申立人の意見について 異議申立人は、令和元年10月16日付けの意見書において、「リブは、第1バッフルの本体部のみに固定されているが、支持部には固定されていない状態で、本体部側からベルマウス側(上方)に向かって延びている」といった形態も本件発明1の技術的範囲に含まれると主張するが、上記のように、本件発明1は、「支持部には固定されていない状態で、本体部側からベルマウス側(上方)に向かって延びている」といった形態を含むとは解されない。 この点について、本件の明細書の記載及び図面をみると、本件の明細書には、「バッフル底板22側に位置する本体部211と、ベルマウス4側に位置する支持部212とを有している」(【0022】)バッフル側板21の「中心軸CLを中心とした径方向外側の端面213に固定される板状のリブ」(【0025】)を設けた立軸ポンプの発明について記載されており、さらに「該リブの平坦な表面がバッフル側板21の端面213に当接するようにして、バッフル側板21に対して垂直に溶接等により固定されている」(【0025】)ことも記載されている。さらに、これらの明細書の記載に対応する図面として、下記のような図面が【図2】(a),【図2】(c)として示されている(左側が図2(a)、右側が図2(c)であり、符号に対する名称は、当審が一部追加した。)。 これら本件明細書及び図面の記載から、これらには、渦抑制構造25の板状のリブは、第1のバッフルのうちの本体部のみに当接して固定され、支持部に対しては、設けられていないことが記載されているといえ、これは、本件発明1の板状のリブが「本体部のみに対して固定されている」ことの上記理解と整合する。 また、特許権者は、令和元年9月25日付けの意見書において、本件発明1に関し、「…リブが設けられていない場合には、流入する液体が、高速な流れのまま、第1のバッフルの本体部の外端で剥離し、渦が生じる。一方、第1のバッフルの支持部の周辺ではベルマウスに向かう方向の流れが大きいため、本体部の周辺よりも渦は生じにくい。本件発明1では、この発生原理に着目して渦の発生を抑制するとともに、十分な流入量、速度を確保するため、リブを第1のバッフルの本体部の外側端面のみに固定している。」(令和元年9月25日付け意見書第3ページ9行ないし15行)と主張しており、この主張は、リブが第1のバッフルの支持部の外側端面には、設けられていないことを前提とする主張と解され、これは、本件発明1の「板状のリブ」は「支持部」に対しては、当接も固定もされず、この「支持部」の径方向外側の端面には、板状のリブが設けられていないものと理解できることと整合する。 したがって、本件発明1が「支持部には固定されていない状態で、本体部側からベルマウス側(上方)に向かって延びている」といった形態を含むとする、異議申立人の主張は、失当である。 また、仮に、本件発明1の「第1のバッフルのうちの前記本体部のみに対して…固定されている」が、異議申立人が令和元年10月16日付けの意見書において主張するように、「リブは、第1のバッフルの本体部のみに固定されているが、支持部には固定されていない状態で、本体部側からベルマウス側(上方)に向かって延びている」といった形態を含むとしても、甲1には、パンチングメタルを含む水中渦発生防止部材8は、「十字状のバッフル7の外端面に対して図示していない複数本の締結ボルトで締結することにより設けることができる」(【0010】)と記載されているが、複数本の締結ボルトにより、十字状のバッフル7に締結する位置(吸込ベルマウス6の中心軸方向の位置)までは、特定しておらず、甲1発明は、パンチングメタルを十字状のバッフル7の下側部のみに固定したものであるとはいえないから、本件発明1と甲1発明とは、相違点2において相違する。したがって、このような形態を含むとしても、甲1に記載された発明が「リブは、第1バッフルの本体部のみに固定されている」ものとはいえない。 4 小括 以上のことから、本件発明1は、甲1に記載された発明ということはできない。 第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 異議申立人の主張 異議申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の本件の請求項1に係る発明は、特開2010-190184号公報(甲第2号証。以下、「甲2」という。)に記載されたものに甲1に記載されたものを適用することで、当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定に該当する旨を主張している。 そこで、以下、この点について検討する。 2 甲2の記載 (1)甲2に記載された事項 甲2には、次の事項が記載されている。 ア「【請求項1】 内部に水を吸い上げる羽根車を配設した筒状のポンプケースと、該ポンプケースの下端に設けられ下向きに直径が漸次大きくなる略円錐筒状の拡径部を有する吸込ベルとを備え、前記ポンプケースの下端と吸込ベルの上端にそれぞれ取付フランジ部を設け、これらを締付金具によって固定するようにしたポンプに装着する吸込渦防止部材であって、 前記吸込ベルの取付フランジ部の下面に配設され前記締付金具によって一体的に固定される環状の上枠部と、該上枠部から鉛直下向きに延びる複数の支持部と、該支持部の下端に設けた下枠部と、装着状態で吸込ベルの下部において所定の支持部から吸込ベルの軸芯に向けて延びる邪魔板と、を備えること特徴とするポンプ用吸込渦防止部材。」 イ「【0001】 本発明は、ポンプ用吸込渦防止部材に関するものである。 【背景技術】 【0002】 雨水などは、吸水槽に排水された後にポンプによって吸い上げられ、下流側の処理場などの吐出水槽に排水される。この排水ポンプ場の吸水槽内では、給水量が増加すると流速が速くなるため、ポンプの後ろ側の領域、即ち吸水槽の閉鎖端側の水面に空気吸込渦が発生し易くなる。この空気を含む水がポンプに吸い込まれると、激しい振動や大きい騒音が発生するため、運転機能障害を引き起こしたり、機場の基礎や建屋などを劣化させる。」 ウ「【0007】 本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、既設のポンプにも装着することが可能で、その取付状態も安定したポンプ用吸込渦防止部材を提供することを課題とするものである。」 エ「【0009】 本発明の吸込渦防止部材は、ポンプによる水の吸水中に吸込ベルの下部で発生した吸込渦を邪魔板で破壊および整流することができる。そのため、ポンプが激しく振動したり、大きな騒音が発生したりすることを防止でき、ポンプの運転機能障害や、機場の基礎や建屋などの劣化も防止できる。また、この吸込渦防止部材は、ポンプに装着する構成であるため、既設機場に水があってもポンプを取り出すことにより装着(施工)できる。」 オ「【0015】 図1は、本発明の実施形態に係る吸込渦防止部材20を適用したポンプ2を示す。この吸込渦防止部材20は、図示しない流入側管路から排水ポンプ場の吸水槽1内に流入する雨水などを下流側に排水するポンプ2に装着することにより、吸水槽1内で発生する吸込渦を破壊して整流し、吸水能力を向上するためのものである。 【0016】 まず、ポンプ2の構成について具体的に説明する。本実施形態のポンプ2は立軸ポンプであり、鉛直方向に延びるケーシング3を備えている。このケーシング3は、直管状の揚水管4と、揚水管4の下端に連結されたポンプケース5と、ポンプケース5の下端に連結された吸込ベル6と、揚水管4の上端に連結された吐出エルボ7とを備えている。そして、吐出エルボ7には、下流側の吐出水槽(図示せず)に排水するための吐出管8が更に連結されている。」 カ「【0020】 次に、このポンプ2に装着する第1実施形態の吸込渦防止部材20について説明する。 【0021】 この吸込渦防止部材20は、ポンプケース5と吸込ベル6とを連結するための取付フランジ部5b,6cに固定されるものである。この吸込渦防止部材20は、吸込ベル6の取付フランジ部6cの下面に配設される環状の上枠部21と、上枠部21から鉛直下向きに延びる複数の支持部27と、支持部27の下端に設けた下枠部28と、支持部27から吸込ベル6の軸芯に向けて内向きに延びる邪魔板29とを備えている。 【0022】 前記上枠部21は、図3および図4に示すように、環状固定部22と、環状固定部22とは別体のスペーサ部材24A,24Bとで構成されている。環状固定部22は、吸込ベル6の取付フランジ部6cの挿通孔10を形成した位置(直径)は勿論、吸込ベル6の下端外径より大きな内径を有する円環状のものである。この環状固定部22には、周方向に所定間隔をもって複数のネジ挿通孔23が設けられている。スペーサ部材24A,24Bは、それぞれが取付フランジ部6cの下面に配設された状態で円環状をなす半円環状のものである。これらスペーサ部材24A,24Bは、外径が環状固定部22の外径と略同一に形成され、内径が取付フランジ部6cの内径と略同一に形成されている。即ち、このスペーサ部材24A,24Bの内径は、吸込ベル6の下端外径より小さい。このスペーサ部材24A,24Bには、環状固定部22のネジ挿通孔23と対応する位置に、同様の第1ネジ挿通孔25が設けられ、ボルトとナットとからなる締付金具で一体的に固定される。これらネジ挿通孔23,25は、本実施形態では45度間隔で8個設けられている。また、スペーサ部材24A,24Bには、取付フランジ部6cの挿通孔10と対応する位置に、同様の第2ネジ挿通孔26が設けられ、ボルトにより吸込ベル6と一緒にポンプケース5に対して一体的に固定される。これら挿通孔10,26は、本実施形態では22.5度間隔で16個設けられている。しかも、内側に位置する第2ネジ挿通孔26が、外側に位置する第1ネジ挿通孔25に対して、径方向に一致しないように周方向に位相させて設けられている。 【0023】 前記支持部27は、上枠部21を構成する環状固定部22から、吸込ベル6の軸方向に沿って鉛直下向きに延びるように連結(接合)されたパイプからなる。この支持部27は、環状固定部22に対して周方向に所定間隔をもって複数設けられている。本実施形態では、環状固定部22に対して45度間隔で8本設けられている。しかも、周方向に一致するネジ挿通孔23と重ならないように、ネジ挿通孔23に対して所定角度(22.5度)周方向に位相させて設けられている。 【0024】 前記下枠部28は、環状固定部22と同一外径の円板状のもので、各支持部27の下端が連結(接合)されている。 【0025】 前記邪魔板29は、ケーシング3への装着状態で吸込ベル6の下部に位置するように、下枠部28から支持部27に沿って所定高さで設けられている。本実施形態では、1本おきの支持部27から邪魔板29を内向きに突設することにより、平面視で+字形状をなすように構成している。言い換えれば、邪魔板29は、吸込ベル6の軸芯と一致する下枠部28の中心から、略+字形状をなすように軸方向に突設するとともに、径方向外向きに突設し、その外端が支持部27に連結されている。 【0026】 このように構成した吸込渦防止部材20を既設排水ポンプ場のポンプ2に適用する場合には、吐出エルボ7と吐出管8を連結したボルトとナットとを外して、ポンプ2を取り出す。そして、ポンプケース5と吸込ベル6とを連結したボルトを外す。 【0027】 ついで、吸込ベル6の取付フランジ部6cの下面側にスペーサ部材24A,24Bを径方向外側から配設し、吸込ベル6の挿通孔10とスペーサ部材24A,24Bの第2ネジ挿通孔26とを一致させ、ボルトにより締め付ける。これにより、スペーサ部材24A,24Bを吸込ベル6と一緒にポンプケース5に固定する。 【0028】 その後、環状固定部22を吸込ベル6に覆い被せるように、吸込ベル6に対して環状固定部22から軸方向に外嵌させ、該環状固定部22をスペーサ部材24A,24Bの下面に位置させる。そして、互いのネジ挿通孔23,25を一致させ、ボルトとナットにより一体的に固定する。 【0029】 最後に、このようにして吸込渦防止部材20を装着したポンプ2を、吸込渦防止部材20の側から再び吸水槽1内に設置する。」 キ「【0033】 そして、本実施形態のポンプ2は、吸込ベル6の下端が取付フランジ部6cより大きな直径を有するものであるが、上枠部21を構成するスペーサ部材24A,24Bを、2つに分割した構成としているため、確実に取付フランジ部6cに固定することが可能である。そして、このスペーサ部材24A,24Bを介して確実に整流の目的を果たす邪魔板29を配設することができる。」 ク 上記カの記載から、吸込渦防止部材20は、ポンプケース5と吸込ベル6とを連結するための取付フランジ部5b,6cに固定され、この吸込渦防止部材20は、吸込ベル6の取付フランジ部6cの下面に配設される環状の上枠部21を備えている。環状の吸込渦防止部材20が備える上枠部21が吸込ベル6の取付フランジ部6cの下面に配設されることから、吸込渦防止部材20は、吸込ベル6の下面に固定されることがわかる。 ケ 上記キの記載から、邪魔板29は、整流の目的を果たすものであり、さらに、上記オの記載より、この邪魔板29は、支持部27から吸込ベル6の軸芯に向けて内向きに延びることから、邪魔板29と支持部27とは、整流の目的を果たす邪魔板29とこれを支持する支持部27を有している整流器であるといえる。また、上記オの記載から、支持部27は、吸込ベル6の下面に配設される上枠部21から鉛直下向きに延びるものであり、支持部27から邪魔板29が内向きに延びるものであるから、この整流器は鉛直に設けられているといえる。さらに、上記カの記載から、邪魔板29は、吸込ベル6の軸芯と一致する中心から、略+字形状をなすように径方向外向きに突設している。したがって、吸込渦防止部材20は、鉛直に設けられ、かつ吸込ベル6の軸芯と一致する中心から、略+字形状をなすように軸方向に突設している邪魔板29と支持部27を備える整流器を有しているといえる。 コ 上記カの記載から、整流器が備える支持部27は、吸込ベル6の下面に配設される上枠部21から鉛直下向きに延びるものであるから、支持部27の上端側、すなわち整流器の上端側に吸込ベル6があるといえる。また、この支持部27の下端には、下枠部28が連結され、この下枠部28から支持部27に沿って所定高さで邪魔板29が設けられていることから、支持部27の下端から所定高さまで邪魔板29が設けられているといえる。したがって、邪魔板29は、整流器の吸込ベル6とは反対側に位置するといえる。 サ 上記ケに示すように、邪魔板29は、吸込ベル6の軸芯と一致する中心から、略+字形状をなすように軸方向に突設しており、上記カの記載から、この邪魔板29は、支持部27に沿って設けられているものであるから、支持部27は、邪魔板29における吸込ベル6の軸芯を中心とした径方向の外側の端部にあるといえ、上記コに示すように、支持部27の上端は、吸込ベル6側に設けられるものであるから、支持部27は、吸込ベル6側に向けて設けられているといえる。 (2)甲2発明の認定 上記(1)を含む甲2全体の記載を総合すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲2発明」という)。 「吸込ベル6の下面に固定される吸込渦防止部材20を備え、 前記吸込渦防止部材20は、 鉛直に設けられ、かつ吸込ベル6の軸芯と一致する中心から、略+字形状をなすように径方向外向きに突設している邪魔板29と支持部27を備える整流器、 を有し、 前記整流器は、吸込ベル6側の反対側に設けられている邪魔板29と、 前記邪魔板29における前記吸込ベル6の軸芯を中心とした径方向外側の端部から吸込ベル6側に向けて設けられている支持部27とを有するポンプ2。」 3 当審の判断 (1)本件発明1と甲2発明との対比と一致点、相違点について 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「吸込ベル6」は、本件発明1の「ベルマウス」に相当し、甲2発明の「吸込ベル6の下面」は、吸込ベル6の上流側になるから、甲2発明の「吸込ベル6の下面に固定される」は、本件発明1の「ベルマウスの上流側に取り付けられる」に相当する。また、甲2発明の「吸込渦防止部材20」は、本件発明1の「渦防止装置」に相当する。したがって、甲2発明の「吸込ベル6の下面に固定される吸込渦防止部材20」は、本件発明1の「ベルマウスの上流側に取り付けられる渦防止装置」に相当する。 本件発明1の「第1のバッフル」は、ベルマウスの「中心軸を通る板を備え」、また、本体部の「径方向外側の端部から前記ベルマウス側に向けて延伸している支持部」を有するものであり、この「中心軸を通る板」は、「ベルマウス4の直下における渦の発生を防止する」(本件特許公報の【0027】参照。)ものであり、また、支持部は、第1のバッフルとベルマウスとを固定するものと解され(本件特許公報の【0022】、【0023】参照。)る。一方、甲2発明の「整流器」は、邪魔板29と支持部27を備えるものであり、この邪魔板29は、「ポンプによる水の吸水中に吸込ベルの下部で発生した吸込渦を邪魔板で破壊および整流する」(上記1(1)エ参照)ものであり、また支持部27は、「吸込ベル6の取付フランジ部6cの下面に配設される環状の上枠部21」「から鉛直下向きに延び」(上記1(1)カ参照)、支持部27から吸込ベル6の軸芯に向けて内向きに邪魔板29が延びるものである(上記1(1)カ参照)から、整流器と吸込ベルとを固定するものと解される。したがって、甲2発明の「整流器」は、本件発明1の「中心軸を通る板」に相当する「邪魔板29」と本件発明1の「支持部」に相当する「支持部27」を備えるから、甲2発明の「整流器」は、本件発明1の「第1のバッフル」に相当する。甲2の図1等の記載より、ポンプを設置した状態で吸込ベル6の中心軸は、鉛直であると解されるから、甲2発明の「整流器」が「鉛直に設けられ」ることは、本件発明1の「第1のバッフル」が「ベルマウスの中心軸に平行で」あることに相当する。また、甲2発明の邪魔板29が「吸込ベル6の軸芯と一致する中心から、略+字形状をなすように径方向外向きに突設している」ことは、邪魔板29が吸込ベル6の軸芯を通ることから、本件発明1の板が「中心軸を通る」ことに相当する。さらに、甲2発明の「邪魔板29と支持部27を備える整流器」は、本件発明1の「板を備える第1のバッフル」に相当する。したがって、甲2発明の「鉛直に設けられ、かつ吸込ベル6の軸芯と一致する中心から、略+字形状をなすように径方向外向きに突設している邪魔板29と支持部27を備える整流器」は、本件発明1の「前記ベルマウスの中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備える第1のバッフル」に相当する。 甲2発明の「吸込ベル6側の反対側に設けられている邪魔板29」は、本件発明1の「ベルマウスとは反対側に位置する本体部」に相当し、前者の「邪魔板29における前記吸込ベル6の軸芯を中心とした径方向外側の端部から吸込ベル6側に向けて設けられている支持部27」は、後者の「本体部における前記中心軸を中心とした径方向外側の端部から前記ベルマウス側に向けて延伸している支持部」に相当する。また、前者の「ポンプ2」は、後者の「立軸ポンプ」に相当する。 以上のことから、本件発明1と甲2発明とは、次の[一致点]で一致し、[相違点3]で、相違する。 [一致点] ベルマウスの上流側に取り付けられる渦防止装置を備え、 前記渦防止装置は、 前記ベルマウスの中心軸に平行で、かつ該中心軸を通る板を備える第1のバッフル、 を有し、 前記第1のバッフルは、前記ベルマウスとは反対側に位置する本体部と、前記本体部における前記中心軸を中心とした径方向外側の端部から前記ベルマウス側に向けて延伸している支持部とを有する立軸ポンプ。 [相違点3] 本件発明1は、「第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端部に設けられ、流れが前記渦防止装置に当たって剥離することによる渦の発生を抑制する渦抑制構造」を有し、この「渦抑制構造は、前記第1のバッフルの前記中心軸を中心とした径方向外側の端面に表面が当接して固定される板状のリブを含み、」この「リブは、前記第1のバッフルのうちの前記本体部のみに対して垂直に固定されている」のに対し、甲2発明は、このような渦の発生を抑制する渦抑制構造を有していない点。 (2)相違点についての判断 ア [相違点3]について 甲2には、ポンプ周辺で発生する渦について、「給水量が増加すると流速が速くなるため、ポンプの後ろ側の領域、即ち吸水槽の閉鎖端側の水面に空気吸込渦が発生し易くなる」(【0002】、上記2・(1)イ参照)ことは記載されているが、ほかの原因により渦が発生すること、特に、「渦防止装置に当たって剥離することによる渦」が発生することは、記載されていないし、また、甲2の記載に接した当業者にとって、甲2発明のポンプにおいて、吸込渦防止部材20に流体が当たって剥離することにより渦が発生することは自明な事項であるとはいえない。そうすると、甲2発明において、このような発生することが明らかでない渦を抑制する手段を設けることは、当業者にとって容易であるとはいえない。 また、仮に甲2発明に「渦防止装置に当たって剥離することによる渦」の発生を抑制する手段を設けることが容易であるとしても、甲1に記載された「水中渦発生防止部材8」は、上記第5・1・(9)のとおりのものであって、ポンプPの後側域や側域に発生した旋回流が水中渦に発達する前段で、この水中渦発生防止部材8の多数の透孔部8A,8A…を通過させることにより、水中渦に発達することを妨げるものであり、「渦防止装置に当たって剥離することによる渦」の発生を抑制する手段ではないから、甲1に記載された水中渦発生防止部材8を甲2発明に適用する動機付けを欠くものである。したがって、甲2発明に甲1に記載された水中渦発生防止部材8を適用することは、当業者にとって容易であるとはいえない。 さらに、仮に甲2発明に甲1に記載された水中渦発生防止部材8を適用することが容易であるとしても、甲1には、上記第5及び第6に示すように、リブを「第1のバッフルのうちの前記本体部のみに対して…固定されていること」は記載されていないから、甲2発明に甲1に記載された水中渦発生防止部材8を適用して、当該発明特定事項を得ることは当業者にとって容易であるとはいえず、また、甲1に記載された水中渦発生防止部材8は、「十字状のバッフル7の外端面に対して図示していない複数本の締結ボルトで締結することにより設けることができる」(【0010】)と記載されているが、複数本の締結ボルトにより、十字状のバッフル7に締結する位置(吸込ベルマウス6の中心軸方向の位置)までは、特定していないものである(上記第6・2(2)参照。)から、本件発明1の発明特定事項である「リブは、前記第1のバッフルのうちの前記本体部のみに対して垂直に固定されている」ことは得られず、またこのようにすることが当業者にとって容易であるともいえない。 また、ほかに、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を得ることが容易であることを示す証拠は、本件異議申立事件において示されておらず、当業者にとって自明な事項であるともいえない。 イ 異議申立人の主張について 異議申立人は、特許異議申立書において、甲2発明の「邪魔板29」、「支持部27」がそれぞれ、本件発明1の「第1のバッフル」、「渦抑制構造」に相当する(特許異議申立書 8ページ21行ないし23行)とした上で、甲2に記載されたものと甲1に記載されたものとは、共通の技術分野に属するから、甲1に記載されたものを甲2に記載されたものに適用することは容易である旨を主張している。 しかしながら、甲2に記載された「支持部27」が、本件発明1の「渦抑制構造」と同様の「渦防止装置に当たって剥離することによる渦の発生を抑制する」作用を有することは、甲2に記載されておらず、また、甲2の記載から当業者にとって自明であるともいえない。さらに、甲2には、支持部27に関して、上枠部21から鉛直下向きに延び、下端に下枠部28を設け、支持部27から吸込ベル6の軸芯に向けて内向きに邪魔板29が延びることが記載(【0021】、上記2(1)オ参照。)されていることから、支持部27は、本件発明1の第1のバッフルが有する支持部と同様に作用を有するものであるといえ、甲2発明の「支持部27」が、本件発明1の「渦抑制構造」に相当するとする異議申立人の主張は失当である。 さらに、甲2に記載されたものと甲1に記載されたものが共通の技術分野に属するとしても、甲2発明に甲1に記載された「水中渦発生防止部材8」を適用することが容易ではなく、さらに「水中渦発生防止部材8」を適用しても、本件発明1が得られないことは、前記アに示すとおりであって、異議申立人の主張は、失当である。 ウ 小括 上記アに示すように、本件発明1の[相違点3]に係る発明特定事項を得ることが当業者にとって容易であるとはいえないから、本件発明1は、甲2に記載されたものに甲1に記載されたものを適用することで、当業者が容易に想到できるものとはいえない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700319

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