特許訂正審判
2019-390031
三次元網状構造体
- 審判番号
- 2019-390031
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2013-549127外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年02月22日
- 審決日
- 2019年04月09日
- 公報発行日
- 2019年07月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 シーエンジ
- 【請求人代理人】尾崎 隆弘
- 分類
- P141 .853-Y (D04H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5986584号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5986584号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5986584号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成24年12月14日(パリ条約による優先権主張2011年12月14日(韓国)、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月12日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成31年2月22日に本件訂正審判の請求がされたものである。
2.請求の趣旨
(1)本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
(2)本件訂正審判の請求に係る訂正の内容は、以下のとおりである。
[訂正事項1]
訂正前の明細書の段落【0015】に、「温度190℃、管内径D1がφ1.0mm、長さ10mmのキャピラリーの上から圧力をかけ、押出量3g/10minで原料樹脂を押し出す。」と記載されているのを、
「温度190℃、管内径D1がφ1.0mm、長さ10mmのキャピラリーの上から圧力をかけ、原料樹脂を押し出す。」に訂正する(以下「本件訂正」という。)。
3.当審の判断
(1)ア.本件特許の明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0015】の記載は、スウェル比の測定方法、測定装置について説明する記載であり、スウェル比の測定方法は、「温度190℃、管内径D1がφ1.0mm、長さ10mmのキャピラリーの上から圧力をかけ、原料樹脂を押し出」し、「原料樹脂のせん断速度別にスウェル比を測定」するものとされる。
イ.本件明細書の段落【0016】には、そのスウェル比とせん断速度との関係について記載され、「スウェル比はせん断速度に対して依存し、せん断速度が増加するとスウェル比も増加する」ものとされる。
このせん断速度は、半径r(cm)のキャピラリーから押し出した場合、本件明細書に記載されるように、下式(a)により算出されることが知られている。
γ=4Q/πr3 ・・・(a)
(γはせん断速度(1/s)、rはキャピラリー半径(cm)、Qはフローレート(cm3/s))
上記式(a)を、フローレートQについて求めると、下式(b)となる。
Q=πr3γ/4 ・・・(b)
ここで、10min当たりの原料樹脂の押出量をq(g/10min)とすると、密度ρ(g/cm3)の原料樹脂の場合、押出量qとフローレートQとの関係式は、下式(c)となることが明らかである。
q=600ρQ ・・・(c)
この押出量qについての式(c)に、上記フローレートQについての式(b)を代入すると、下式(d)となる。
q=150πr3ργ ・・・(d)
この式(d)から、押出量q(g/10min)は、原料樹脂の密度ρ(g/cm3)とともに、せん断速度γ(1/s)により変化する値であることが理解される。
ウ.本件特許明細書の段落【0017】に「表1にスウェル比のせん断速度依存性に関する測定結果を示す。」と記載され、段落【0019】に表1が記載されている。
この表1には、異なる樹脂製品A~Gの、せん断速度「24.3」、「60.8」、「121.6」、「243.2」、「608.0」、「1216」でのスウェル比の測定結果が示されている。
エ.上記イ.で述べたように、押出量q(g/10min)は、原料樹脂の密度ρ(g/cm3)とともに、せん断速度γ(1/s)により変化する値であるから、キャピラリーの上から圧力をかけて原料樹脂を押し出し、測定対象の原料樹脂について、同じせん断速度での測定結果を求めるには、上記式(d)によれば、原料樹脂の押出量q(g/10min)を、原料樹脂毎に、密度ρと、測定するせん断速度γとから算出する必要がある。
すなわち、上記ウ.の表1のように、樹脂製品A~G毎の、せん断速度「24.3」、「60.8」、「121.6」、「243.2」、「608.0」、「1216」でのスウェル比の測定結果を求めるには、上記式(d)より算出される押出量q(g/10min)で原料樹脂を押し出す必要があり、原料樹脂の密度と、測定するせん断速度が変われば、当然、押出量q(g/10min)も変わることが明らかである。
オ.ところが、スウェル比の測定方法について説明する本件明細書の段落【0015】には、「温度190℃、管内径D1がφ1.0mm、長さ10mmのキャピラリーの上から圧力をかけ、押出量3g/10minで原料樹脂を押し出す。」と記載されている。
上記エ.で述べたように、密度が異なる原料樹脂の複数のせん断速度でのスウェル比を測定するためには、キャピラリーから押し出す原料樹脂の押出量を、密度とせん断速度に応じて算出された量に変える必要があり、段落【0015】の「押出量3g/10minで」と単一の押出量とする記載は、それと整合しないものである。仮に「押出量3g/10minで」固定して測定した場合、複数のせん断速度について測定することができない。また、原料樹脂が変わり密度が異なると、固定された押出量から逆算すると、せん断速度も変わることとなり、表1に示されるような、同じせん断速度でのスウェル比を測定して、原料樹脂の物性を比較することができなくなる。
そうすると、本来、押出量を、原料樹脂の密度とせん断速度に応じて変えることにより、同じせん断速度でのスウェル比を測定して、原料樹脂の物性を比較することができるところ、訂正前の段落【0015】は、スウェル比を、「押出量3g/10minで」と単一の押出量によってのみ、測定するように記載されていたため、スウェル比の測定方法が不明瞭となっていたものであり、このような記載を削除して明瞭なものとする本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
(2)また、本件訂正は、上記のように明瞭でない記載の釈明をするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)さらに、上記(1)で述べたように、本件明細書には、せん断速度別のスウェル比を測定するために、押出量を、原料樹脂の密度とせん断速度に応じて変えるものとして記載されているから、「押出量3g/10minで」との記載を削除して、複数の押出量を取り得るものとする本件訂正により、本件明細書に記載された技術的事項に変更を生じさせているものとはいえず、本件訂正が本件明細書に開示された技術的事項に新たな技術的事項を付加したものではないことは明らかである。
よって、本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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