特許拒絶査定不服審判
2019-016897
リンクプレート
- 審判番号
- 2019-016897
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-000365外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年12月13日
- 審決日
- 2021年09月08日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (F16G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 365「リンクプレート」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月16日出願公開、特開2020-109303〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年1月5日に出願された特願2019-365号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成31年 3月 5日付け:拒絶理由通知書
令和 1年 5月 7日 :上申書、意見書、手続補正書の提出
令和 1年 7月 9日付け:拒絶理由通知書
令和 1年 8月12日 :上申書、意見書、手続補正書の提出
令和 1年 8月21日付け:拒絶査定
令和 1年12月13日 :審判請求書、意見書、手続補正書の提出
令和 3年 1月29日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 3月24日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出
第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「経糸と横糸からなるあるいは経糸に対し斜向する繊維を含む複合材シートあるいは、これらシートを複数枚重ね、連続した繊維がピッチ軸に直角方向になるように巻きかけられて作られるFRP製リンクプレートにおいて、ピッチ軸間隔間ではピッチ軸位置固定を必須条件としないことを特徴とするリンクプレート。」
第3 拒絶の理由
令和3年1月29日付けの当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、つぎのとおりのものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:実願昭60-190400号(実開昭62-98614号)のマイクロフィルム
引用文献2:特開2003-106380号公報
第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1
(1) 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「環状に捲回しかつ互いに固着した多数の炭素繊維あるいは無機繊維からなり、該繊維はリンクに働く張力方向に並びかつこの繊維は継目なしに環状をなすことを特徴とするコンベアチェンのリンク。」(2.実用新案登録請求の範囲)
「まず第1図に示すように、径30mmの断面が円形の型4上に径約6~10μmの炭素繊維2を該型4の軸を横切る方向で厚み約1mmになるように連続して捲回した。
そして、この捲回した炭素繊維群の上に溶剤で薄めたピッチ系接着剤を塗付し、繊維どうしを固着した。かくして作られた炭素繊維2の円筒を離型し、150℃で4時間焼付けた。この円筒をその軸を横切る方向に沿って厚み3mmで順次に切断して、多数の円環状のリンク1を得た。この円環状リンク1を径4mmの連結杆5で支持されるような細長環状のリンク1′にした(第3図参照)。
かくして得られた多数のリンク1′を第5図にて図示されるように、同じく炭素繊維或は無機繊維でつくられた連結杆5でつないだ。連結杆5のそれぞれの解放端には、同じく炭素繊維或は無機繊維でつくられたナットを接着剤で固定した。
これで、本考案になるリンクはコンベアチェンを構成するが、必要によっては図中に符号3で示される間隔保持体を使うこともできる。この間隔保持体3は、コンベアチェンが収納あるいは運搬時等にあって緊張下におかれていないときに、連結杆5がリンク1′の内方両側端でない位置に移動してコンベアチェン全体がぐちゃぐちゃなマス状になるのを防ぐためである。
この間隔保持体3は、リンク1′を中心に所定回数よじり、その中心のよじった個所をピッチ系接着剤等の接着剤で固着,固定したものであり、コンベアチェンに組込まれたときに張力が働く方向に整列した炭素繊維2でできている。」(明細書3ページ16行ないし同5ページ6行)
「
[図:0001380227000001.jpg]
」(第1図)
「
[図:0001380227000002.jpg]
」(第2図)
「
[図:0001380227000003.jpg]
」(第3図)
「
[図:0001380227000004.jpg]
」(第4図)
「
[図:0001380227000005.jpg]
」(第5図)
(2) 多数の細長環状のリンク1′を連結杆5で支持しつないでコンベアチェンを構成する際、特に第5図を参照すると、連結杆5は繊維が並ぶ細長環状のリンク1′に働く張力方向と直角方向に配置しているといえる。
(3) 上記から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「炭素繊維あるいは無機繊維が細長環状のリンク1′に働く張力方向に並びかつこの繊維は継目なしに環状をなすように連続して捲回した繊維群の上に溶剤で薄めたピッチ系接着剤を塗付し繊維どうしを固着した細長環状のリンク1′において、連結杆5を繊維が並ぶ細長環状のリンク1′に働く張力方向と直角方向に配置して、連結杆5で多数の細長環状のリンク1′を支持しつないでコンベアチェンを構成する際、コンベアチェンが収納あるいは運搬時等にあって緊張下におかれていないときに、連結杆5が細長環状のリンク1′の内方両側端でない位置に移動してコンベアチェン全体がぐちゃぐちゃなマス状になるのを防ぐための間隔保持体3を使うこともできる細長環状のリンク1′。」
2 引用文献2の記載
(1) 引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はチェーンおよびその製法に関する。さらに詳しくは、軽量で耐食性および量産性にすぐれ、しかもチェーンの寸法および強度を容易に変更することができるチェーンおよびその製法に関する。」
「【0016】本実施の形態のリンクプレート2、3は、長繊維の少なくとも一部が3次元方向に配向された繊維強化プラスチックで作製されているため、充分な強度を有している。しかも、後述するように、リンクプレート2、3は、スリット8の形状に対応するマンドレル9(図3~4参照)の周りにガラス繊維などの長繊維を含むFRPからなる線状またはテープ状部材を巻きつけ、硬化させてFRP成型体10(図4~5)を成型し、ついでFRP成型体10を輪切りにし、ピン挿入孔6を形成することにより作製されるので、大量生産に適している。」
「【0018】リンクプレート2、3の材料であるFRPに含まれる長繊維としては、ガラス、カーボン、セラミックスファイバーなどの無機質繊維、または有機繊維などが採用される。長繊維は、繊維の状態でもよいし、クロス状、テープ状または網目状に編んだものを用いてもよい。」
「【0024】ついで、図4に示されるように、かかるマンドレル9の表面において、あらかじめ線状、クロス状または細幅のテープ状に成型された前述のエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた無機質長繊維からなるFRPを、所望のリンクプレート2、3の厚さ分程度だけ巻き付ける(ワインディング)。そののち、マンドレル9に巻き付けられた線状またはテープ状のFRPを加熱および加圧することにより硬化させて、楕円または矩形断面を呈するパイプ状のFRP成型体10を成形する。
【0025】かかるFRP成型体10を、図5に示されるように、前記マンドレル9の幅方向に沿って輪切りにする。なお、輪切りにする工程は、マンドレル9をFRP成型体10から引き抜く前に行なってもよい。」
(2) 上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「チェーンのFRP製リンクプレート2、3を作る際に巻き付ける長繊維は、繊維の状態でもよいし、クロス状、テープ状または網目状に編んだものを用いてもよいこと。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
形状・機能からみて、引用発明の「細長環状のリンク1′」は本願発明の「リンクプレート」に相当する。
同様に、引用発明の「連結杆5」は本願発明の「ピッチ軸」に相当する。
引用発明の「繊維群の上に溶剤で薄めたピッチ系接着剤を塗付し繊維どうしを固着した(細長環状のリンク1′)」は、繊維強化プラスチック製といえるから、本願発明の「FRP製(リンクプレート)」に相当する。
引用発明の「連結杆5を繊維が並ぶ細長環状のリンク1′に働く張力方向と直角方向に配置して、連結杆5で多数の細長環状のリンク1′を支持しつないでコンベアチェンを構成する際、コンベアチェンが収納あるいは運搬時等にあって緊張下におかれていないときに、連結杆5が細長環状のリンク1′の内方両側端でない位置に移動してコンベアチェン全体がぐちゃぐちゃなマス状になるのを防ぐため間隔保持体3を使うこともできる(細長環状のリンク1′)」は、連結杆5の位置が細長環状のリンク1′の内方両側端に固定されていないといえるから、本願発明の「ピッチ軸間隔間ではピッチ軸位置固定を必須条件としない(リンクプレート)」に相当する。
引用発明の「炭素繊維あるいは無機繊維が細長環状のリンク1′に働く張力方向に並びかつこの繊維は継目なしに環状をなすように連続して捲回した」ことについて検討すると、引用発明の「繊維は継目なしに環状をなすように連続して捲回した」点は本願発明の「連続した繊維が」「巻きかけられて作られる」点に相当し、引用発明の「炭素繊維あるいは無機繊維が細長環状のリンク1′に働く張力方向に並び」「捲回した」点は、引用発明が「連結杆5を繊維が並ぶ細長環状のリンク1′に働く張力方向と直角方向に配置して、連結杆5で多数の細長環状のリンク1′を支持しつないでコンベアチェンを構成する」ことからすると、本願発明の「繊維がピッチ軸に直角方向になるように巻きかけられて作られる」点に相当するから、結局、本願発明の「経糸と横糸からなるあるいは経糸に対し斜向する繊維を含む複合材シートあるいは、これらシートを複数枚重ね、連続した繊維がピッチ軸に直角方向になるように巻きかけられて作られる」ことと、引用発明の「炭素繊維あるいは無機繊維が細長環状のリンク1′に働く張力方向に並びかつこの繊維は継目なしに環状をなすように連続して捲回した」こととは、「連続した繊維がピッチ軸に直角方向になるように巻きかけられて作られる」ことに限り一致している。
2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「連続した繊維がピッチ軸に直角方向になるように巻きかけられて作られるFRP製リンクプレートにおいて、ピッチ軸間隔間ではピッチ軸位置固定を必須条件としないリンクプレート。」
<相違点>
「FRP製リンクプレート」を作る際に「連続した繊維がピッチ軸に直角方向になるように巻きかけ」られるものが、本願発明は「経糸と横糸からなるあるいは経糸に対し斜向する繊維を含む複合材シートあるいは、これらシートを複数枚重ね」たものであるのに対し、引用発明では、「炭素繊維あるいは無機繊維」である点。
第6 判断
上記相違点について検討する。
1 上記のとおり、引用文献2には、「チェーンのFRP製リンクプレート2、3を作る際に巻き付ける長繊維は、繊維の状態でもよいし、クロス状、テープ状または網目状に編んだものを用いてもよいこと。」が記載されている(上記「引用文献2記載技術的事項」)から、FRP製リンクプレートを作る際に「連続した繊維がピッチ軸に直角方向になるように巻きかけ」られるものとして、繊維状態でもクロス状態、すなわち織物状態でもよいといえる。
2 その他の文献について
(1) 参考文献1:特開2013-119871号公報
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記参考文献1には、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製のリンクプレート本体と、該リンクプレート本体の連結用の孔の内面に一体に装着する筒状の補強材とを備えてなり、前記筒状の補強材は、炭素繊維のシート材により形成することを特徴とするチェーン用のリンクプレート。
【請求項2】
前記筒状の補強材は、炭素繊維による織物組織、編物組織、組紐組織のいずれかによって形成することを特徴とする請求項1記載のチェーン用のリンクプレート。
【請求項3】
前記リンクプレート本体は、無端の補強材を全周に一体に装着し、前記無端の補強材は、炭素繊維のシート材により形成することを特徴とする請求項1または請求項2記載のチェーン用のリンクプレート。
【請求項4】
前記無端の補強材は、炭素繊維による織物組織、編物組織、組紐組織のいずれかによって形成することを特徴とする請求項3記載のチェーン用のリンクプレート。」
「【0013】
なお、筒状の補強材は、たとえば位置決め用のインサートピンを介して金型内にセットし、インサート成形法、レジンインジェクション成形法、レジントランスファ成形法などの成形法によりリンクプレート本体を成形すると同時に連結用の孔の内面に一体に装着することができる。このとき、筒状の補強材は、リンクプレート本体のプラスチック材料が内面にまで均一に含浸され、内面に平滑なピン孔が形成されている。ただし、筒状の補強材は、1層または複層の炭素繊維のシート材によって形成するものとし、少なくとも一部の炭素繊維が連結用の孔の周方向に1周以上の長さに連続していることが好ましい。」
「【0015】
リンクプレート本体は、炭素繊維のシート材の無端の補強材を全周に一体に装着することにより、たとえば小判形や長円形などのように外周に凹所を含まない形状の場合、全体の引張強さを補強することができ、たとえばひょうたん形やサイレントチェーン用などのように外周に凹所を含む形状の場合、外周を他の物品と摺動させるときの耐摩耗性を向上させることができる。ただし、無端の補強材は、連結用の孔の内面の筒状の補強材と同様に、たとえばインサート成形法、レジンインジェクション成形法、レジントランスファ成形法などによってリンクプレート本体を成形する際に、金型の内面にセットしてリンクプレート本体の成形と同時にリンクプレート本体のプラスチック材料を外面にまで含浸させ、リンクプレート本体の外周に一体に装着して滑らかな外表面を形成することができる。」
「【0030】
以上の説明において、補強材12、13は、それぞれ炭素繊維による織物組織、編物組織、組紐組織のいずれであってもよい。また、補強材12、13は、多数のフィラメント状の炭素繊維を一方向に引き揃えてプリプレグとし、プリプレグを周方向に丸めて形成することも可能である。」
と記載されており、
「炭素繊維或いはその織物組織で強化したFRP製チェーンのリンクプレート」
に係る技術的事項が記載されている。
(2) 参考文献2:特開2013-221550号公報
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記参考文献2には、
「【0008】
本発明は、安価なFRPチェーンを得るために2次元織のFRPシートを用いてチェーン用リンクプレートを製造する方法の考案である。チェーンを構成する部品の中でリンクプレートの重量は大きい。また強度を要求される。このリンクプレートをFRPにすることにより軽量・高強度チェーンを実現する。」
「【0011】
1枚のFRPシートを二本のパイプないしロッドに捲きつけ・折り重ね・捲きつけの方法、あるいは1枚のFRPシートを中子に捲きるけることで、FRPリンクプレートを安価に製造する。FRPシートを複数枚重ねたものを用いてもよい。」
と記載されており、
「2次元織のFRPシートを用いて製造したチェーン用リンクプレート」
に係る技術的事項が記載されている。
(3) 参考文献3:特開2016-98956号公報
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記参考文献3には、
「【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック製の動力伝達チェーンを構成するリンクプレートの構成に関する。」
「【0013】
図3は芯部の周りに所要の外形寸法が得られるまでFRPシート6を巻きつけて得られたリンクプレートロッドを示す。FRPシート(織物)の縦あるいは横糸いずれか一方がパイプ2の軸に垂直となるようにシートを配置し、張力を掛けながら巻き掛ける。」
と記載されており、引用文献2記載技術的事項と同様に、
「FRPシート(織物)製の動力伝達チェーンを構成するリンクプレート」
に係る技術的事項が記載されている。
(4) 本願出願前周知の技術的事項
以上のことからすると、
「織物状態で強化したFRP製チェーンのリンクプレート」
は「本願出願前周知の技術的事項」であるといえる。
3 そうすると、引用文献2記載技術的事項からして、本願出願前周知の技術的事項も考慮することで、チェーンのFRP製リンクプレートといえる引用発明の炭素繊維あるいは無機繊維を織物状態として、引用発明をして上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明並びに引用文献2記載技術的事項及び本願出願前周知の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
4 したがって、本願発明は、引用発明並びに引用文献2記載技術的事項及び本願出願前周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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