2019-016494
抗菌および抗ウイルス衛生製品
- 審判番号
- 2019-016494
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-528515外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年12月05日
- 審決日
- 2020年07月28日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】イェディテペ・ウニヴェルシテシ
- 【請求人代理人】松谷 道子
- 【請求人代理人】江間 晴彦
- 分類
- P18 .121-Z (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 7項目
第1 手続の経緯
本願は、2015年11月23日(パリ条約による優先権主張 2014年11月27日 トルコ)を国際出願日とする出願であって、平成30年11月22日に拒絶理由が通知され、平成31年2月26日に手続補正書及び意見書が提出され、令和元年7月26日付けで拒絶査定がされた。これに対し、令和元年12月5日に本件拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 本願発明について
1 本願発明
特許請求の範囲の請求項1~12に係る発明は、平成31年2月26日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものであると認める。
「ホウ素化合物を使用することにより抗菌性を付与され、グルコポン、グルコン酸クロルヘキシジンおよびトリクロサンを使用することにより抗ウイルス性が付与された、衛生製品。」
2 引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2010-510819号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】特にポリオレフィン系膜材料とし、皮膜(2)で片面をコーティングした膜材料(1)であり、前記皮膜には水再溶解樹脂を含有し、有機液体及び血液によって活性化し易い抗微生物剤及び/又は吸臭剤を含有する膜材料(1)であって、前記抗微生物剤には、少なくとも1つの以下の有効成分、炭素数6~30のアルキル基を有する第四アンモニウム塩、特に、ラウリルトリメチルアンモニウム及び/又はステアリルトリメチルアンモニウム及び/又はヘキシルトリメチルアンモニウム及び/又は塩化ベンザルコニウム、ビグアナイド(ビグアニジン、クロルヘキシジン)、続きを表示(全21行)酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムの混合物、塩酸クロルヘキシジン、クエン酸トリエチル、ビオフラボノイド、テルペン、テルペノイド、トリクロサン、1ミクロン未満の平均粒度を有する銀塩、亜鉛塩、銅塩、安息香酸、安息香酸塩及びエステル、カルシウム、ナトリウム、カリウム、ホウ酸バリウム、を含み、前記吸臭剤には、少なくとも1つの前記有効成分、リシノル酸亜鉛、ゼオライト、重金属イオンを含浸させたゼオライト、活性炭、シリカゲル、フラボノイド化合物、シクロデキストリン(α、β、γシクロデキストリン)、を含むことを特徴とする膜材料(1)。」
イ 「【請求項5】使い捨てパーソナルケア製品(4)には、透液性表面シート(5)、不透液性裏面シート(6)、前記表面シート(5)と前記裏面シート(6)との間で挟持する吸収層(7)、を備え、前記裏面シート(6)を、抗菌及び/又は吸臭有効成分を含有する皮膜(2)でコーティングした膜材料(1)とし、前記皮膜(2)を前記表面シート(5)及び前記吸収層(7)の方に向けること、を特徴とする使い捨てパーソナルケア製品(4)。」
ウ 「【技術分野】【0001】膜材料について本明細書では開示するが、該材料を好適には、ポリオレフィン系材料、より好適にはポリエチレン系材料とし、該材料は抗微生物及び/又は吸臭コーティングを有する。【0002】また、方法についても開示しており、膜材料が抗微生物及び/又は吸臭コーティングを有するようにする。用語“抗微生物コーティング”は、静菌剤(細菌増殖を阻害する)、殺菌性(細菌を死滅させる)、静真菌剤(真菌、カビ、酵母の増殖を阻害する)、又は消毒剤(真菌、カビ、酵母を殺菌する)コーティングを、意味するものとする。」
エ 「【0004】この膜材料は、パーソナルケア製品、例えば幼児用おむつ、尿漏れ防止パッド及び生理用ナプキン等の他、ベッド及びテーブル等の表面を保護又は被覆する製品を作製するよう、特に設計するものである。」
オ 「【0008】また、この抗微生物及び/又は吸臭コーティングをモノリシック構造の膜にも適用し、該膜を、特に、実際にウイルス伝播の危険性がある、病院や診療所用の製品として使用してもよい。」
カ 「【0062】皮膜2に含有する抗微生物剤の例として、炭素数6~30のアルキル基を有する第四アンモニウム塩、特に、ラウリルトリメチルアンモニウム及び/又はステアリルトリメチルアンモニウム及び/又はヘキシルトリメチルアンモニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムビグアナイド(ビグアニジン、クロルヘキシジン)続きを表示(全11行)酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムの混合物塩酸クロルヘキシジンクエン酸トリエチル、ビオフラボノイド、テルペン、テルペノイドトリクロサン1ミクロン未満の平均粒度を有する銀塩、亜鉛塩、銅塩、安息香酸、安息香酸塩及びエステルカルシウム、ナトリウム、カリウム、バリウム、硼酸塩、が挙げられる。」
キ 「【0069】可能な1実施例では、特に幼児用おむつ、尿漏れ防止パッド及び生理用ナプキンに適しており、抗微生物剤には以下の有効成分の組み合わせを含んでもよい、ビオフラボノイド、テルペン、テルペノイド、カルシウム、ナトリウム、カリウム、ホウ酸バリウム、及び吸臭剤には、ゼオライトを含む。」
ク 「【0072】ナトリウム、カリウム、及びホウ酸バリウムは、殺菌剤及び抗真菌剤であり、特にメタホウ酸バリウムは、菌類がそれを利用してセルロースを破壊するセルラーゼ酵素を阻害し、それにより、殺菌剤能力をこの化合物に与える。」
ケ 「【0087】可能な1実施例では、該懸濁液には、プロポリス抽出物(ビオフラボノイド、テルペン、テルペノイドを含む)、カルシウム、ナトリウム、カリウム、ホウ酸バリウム、及びゼオライトを含有する。」
コ 「【実施例2】【0124】流体の浸透圧を利用する引き付け作用について、イタリア規格の002NMC93に従いテストしたが、該テストを、抗微生物剤を含む皮膜でコーティングした裏面シートを有する尿漏れ防止パッドを2枚(其々クエン酸トリエチルとトリクロサン)広げた状態で、行った。」
(2)引用例1に記載された発明
上記(1)の「膜材料(1)」についての【請求項5】及び【0004】の記載に着目すると、引用例1には、【請求項1】の「膜材料(1)」を備える幼児用おむつ、尿漏れパッド及び生理用ナプキンが記載されているといえる。
そうすると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「ポリオレフィン系膜材料とし、皮膜(2)で片面をコーティングした本願明細書を参酌しても、「であり、前記皮膜には水再溶解樹脂を含有し、有機液体及び血液によって活性化し易い抗微生物剤及び/又は吸臭剤を含有する膜材料(1)であって、前記抗微生物剤には、少なくとも1つの以下の有効成分、
炭素数6~30のアルキル基を有する第四アンモニウム塩、特に、ラウリルトリメチルアンモニウム及び/又はステアリルトリメチルアンモニウム及び/又はヘキシルトリメチルアンモニウム及び/又は塩化ベンザルコニウム、
ビグアナイド(ビグアニジン、クロルヘキシジン)、
酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムの混合物、
塩酸クロルヘキシジン、
クエン酸トリエチル、
ビオフラボノイド、テルペン、テルペノイド、
トリクロサン、
1ミクロン未満の平均粒度を有する銀塩、亜鉛塩、銅塩、
安息香酸、安息香酸塩及びエステル、
カルシウム、ナトリウム、カリウム、ホウ酸バリウム、を含み、
前記吸臭剤には、少なくとも1つの前記有効成分、
リシノル酸亜鉛、
ゼオライト、
重金属イオンを含浸させたゼオライト、
活性炭、
シリカゲル、
フラボノイド化合物、
シクロデキストリン(α、β、γシクロデキストリン)、
を含むことを特徴とする膜材料(1)を備える、幼児用おむつ、尿漏れパッド又は生理用ナプキン。」
(3)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-143620号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【要約】【課題】 低濃度でも優れた抗菌活性を有し、安全性の高い抗菌剤を提供する。【解決手段】 (a)特定のアルキルグリコシド型界面活性剤及び(b)ビグアニド系化合物を有効成分とする抗菌剤。」
(イ)「【背景技術】【0002】従来より、医薬品等には、製造時及び使用時における細菌等の微生物の混入による変質を防止すること、或いは細菌の増殖抑制、殺菌することを目的として、製品の特徴に応じてパラオキシ安息香酸エステル及びその塩類、安息香酸ナトリウム及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、塩化ベンザルコニウム、ビグアニド系化合物、メチルクロロイソチアゾリオン(ケーソンCG)、トリクロサン等の抗菌剤が配合されている(例えば、特許文献1及び2参照)。」
(4)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-36387号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0048】本発明の使用に適した他の殺生剤の例には、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、ジブロモプロパミジン、ハロゲン化ジフェニルアルカン、ジブロムサラン、メタブロムサラン、トリブロムサラン、カルバニリド、サリチルアニリド、テトラクロロサリチルアニリド、トリクロロカルバニリド、プロパミジンイセチオネート、ペンタミジン、ピクロキシジン、メンダルアミン、酸添加および第四、マンテル酸メテンアミン、ポリオキシメチレンジエステル、ポリオキシメチレンジアセテートなどのポリオキシメチレンエステルなど、およびそれらの混合物が含まれる。【0049】特に好ましい殺生剤には、トリクロサン、クロルヘキシジンジヒドロクロリド、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジンジアセテート、トリクロサン、クロロキシレノール、塩化デクアリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンズアルコニウムおよびこれらの混合物が含まれる。さらに、1つまたは複数の殺菌剤が、抗菌組成物の全重量に対して、約0.01~10重量%、より好ましくは約0.01~5重量%の量で存在することが好ましい。【0050】抗菌組成物は、(パッド、スクリーン)印刷を通してまたは溶液槽を使用するなどのさまざまな方法を使用して包帯材料に適用することができる。さらに抗菌組成物は、製織の前あるいは後に繊維に適用することができる。」
(イ)「【0054】【表1】」
3 本願発明と引用発明の対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ホウ酸バリウム」、「トリクロサン」、「幼児用おむつ、尿漏れパッド又は生理用ナプキン」は、その機能から、それぞれ本願発明の「ホウ素化合物」、「トリクロサン」、「衛生製品」に相当する。
(イ)引用発明の「ホウ酸バリウム、を含」むことは、引用例1の【0072】の「ホウ酸バリウムは、殺菌剤及び抗真菌剤であり」との記載を参照すると抗菌性を付与することは明らかであるから、本願発明の「ホウ素化合物を使用することにより抗菌性を付与さ」れることに相当する。
(ウ)引用発明の「トリクロサン」を含むことは、本願発明の「トリクロサンを使用すること」に相当し、引用発明の「ビグアナイド(ビグアニジン、クロルヘキシジン)」と本願発明の「グルコン酸クロルヘキシジン」とは、クロルヘキシジンの限りで一致する。
したがって、引用発明の「ビグアナイド(ビグアニジン、クロルヘキシジン)」、「トリクロサン」を含むことと、本願発明の「グルコポン、グルコン酸クロルヘキシジンおよびトリクロサンを使用することにより抗ウイルス性が付与された」こととは、クロルヘキシジンおよびトリクロサンを使用することの限りで一致する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「ホウ素化合物を使用することにより抗菌性を付与され、クロルヘキシジンおよびトリクロサンを使用する、衛生製品。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
クロルヘキシジンおよびトリクロサンを使用することについて、本願発明は、「グルコポン、グルコン酸クロルヘキシジンおよびトリクロサンを使用することにより抗ウイルス性が付与された」ものであるのに対して、引用発明は、クロルヘキシジン、トリクロサンを含むものであるが、それにより抗ウイルス性が付与されるものであるか不明である点。
(2) 当審の判断
上記相違点について検討する。
抗菌剤として、グルコポン(アルキルグルコシド)及びグルコン酸クロルヘキシジンは、周知(引用例2及び3の上記2(3)及び(4)の摘記事項参照。)である。
また、グルコン酸クロルヘキシジン及びトリクロサンが抗ウィルス性を有することは、周知(例えば、特開2011-30793号公報の【0043】、特表2015-512386号公報の【0051】、特開2009-155262号公報の【0031】参照。)である。
そして、引用例1の【0008】の「この抗微生物及び/又は吸臭コーティングをモノリシック構造の膜にも適用し、該膜を、特に、実際にウイルス伝播の危険性がある、病院や診療所用の製品として使用してもよい。」との記載から、引用発明には、抗ウィルス性を付与することの動機はあるといえる。
そうすると、「微生物」は、「ウィルス」を含む文言であるところ、引用発明は、「抗微生物剤」として、複数の有効成分を組み合わせて用いるものであるから、引用発明において、抗菌剤として又は抗ウィルス性を有すものとして周知であるグルコポン及びグルコン酸クロルヘキシジンを更に用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、グルコン酸クロルヘキシジン及びトリクロサンを含むものは、抗ウィルス性を有すると表現し得ることが明らかであるから、引用発明において、抗菌剤として周知であるグルコポン及びグルコン酸クロルヘキシジンを更に用いることで、上記相違点に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
<本願発明の奏する効果について>
そして、本願発明の効果は、引用発明及び周知の事項から、当業者が容易に想到し得る範囲のものであって、格別なものでない。
請求人は、審判請求書(令和2年1月15日の手続補正書)において、グルコポン、グルコン酸クロルヘキシジン及びトリクロサンの全てを組み合わせることで、抗真菌性、抗カンジダ性、抗細菌性に加えてさらに抗ウイルス性を有することを達成できることを見出している旨主張する。
しかし、通常、複数の抗微生物剤を含有するものは、それぞれの抗微生物剤が有する抗微生物性を発揮することが期待できるものであって、グルコン酸クロルヘキシジン及びトリクロサンが抗ウィルス性を有することは上記のとおりである。
また、本願明細書の【表5】、【表6】、【表9】を比較しても、グルコポン、グルコン酸クロルヘキシジン及びトリクロサンの全てを組み合わせることの相乗効果を認めることはできない。さらに、グルコポン、グルコン酸クロルヘキシジン及びトリクロサンの全てを組み合わせた際の抗真菌性、抗カンジダ性、抗細菌性については、本願明細書に具体的な記載はなく、単にそれぞれの剤の有する抗真菌性、抗カンジダ性、抗細菌性以上の効果は認められない。
したがって、請求人の当該主張は採用できない。
4 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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