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特許拒絶査定不服審判

2019-014347

金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法

審判番号
2019-014347
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-071755外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年10月28日
審決日
2020年11月06日
公報発行日
2021年02月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B29C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015- 71755「金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日出願公開、特開2016-190412〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
【理 由】

第1 手続の経緯

本願は、平成27年3月31日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成30年12月 3日付け:拒絶理由通知
平成31年 2月 6日  :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 7月31日付け:拒絶査定
同年10月28日  :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 5月29日  :上申書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和1年10月28日に提出された手続補正書において、特許請求の範囲の補正がなされていないため、平成31年2月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
芳香族ポリアミド樹脂(a)を主成分として含む樹脂組成物(A)、または該樹脂組成物(A)100質量部に対して無機フィラー(F)を0質量部超過100質量部以下含んでなるフィラー含有樹脂組成物(B)が、微細凹凸表面を有する金属部材(M)の前記微細凹凸表面に固着した接合面を有する複合構造体であって、
前記芳香族ポリアミド樹脂(a)が、ジアミン単位として炭素数5以上20以下の分岐状脂肪族ジアミンに由来するジアミン単位を10モル%以上含み、
前記金属部材(M)の前記微細凹凸表面には、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立していることを特徴とする金属/樹脂複合構造体。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術事項に基づいて、その特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1:特開平9-1729号公報
引用文献3:国際公開第2015/008847号

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

引用文献1には、「積層体」に関して、おおむね、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付したものである。

(1) 「【請求項2】 特定のポリアミド層と金属層が接合している積層構造部分を少なくとも有している積層体であって、前記特定のポリアミド層が、ジカルボン酸単位とジアミン単位とから実質的になるポリアミドであって、ジカルボン酸単位の85モル%以上がテレフタル酸単位であり、ジアミン単位の60モル%以上が1,9-ノナンジアミン単位および2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位であり、且つジアミン単位における1,9-ノナンジアミン単位:2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位のモル比が60:40~99:1であるポリアミドからなる層であることを特徴とする積層体。
【請求項3】 ポリアミド層と金属層とが熱融着により接合している請求項1または2の積層体。
【請求項4】 ポリアミド層が膜状、フイルム状、シート状または板状であり、金属層が箔状、膜状、シート状、板状である請求項1~3のいずれか1項の積層体。」
(2) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特定のポリアミドの層に対して金属層が接合している積層構造部分を有する積層体および該積層体からなる印刷回路または印刷回路用材料に関するものであり、本発明の積層体は、その優れた耐熱性、寸法安定性、耐剥離性、耐水性、耐薬品性などの特性を活かして、印刷回路や印刷回路用材料などとして電気・電子工業で極めて有効に使用することができ、更には電磁波シールド材、ランプリフレクターなどの反射体、金属代替装飾成形品などの用途においても有効に使用することができる。」
(3) 「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、FPCなどにおいて要求されるような高温での耐熱性に優れ、且つ耐水性、寸法安定性、耐薬品性などの特性にも優れていて、プラスチック層と金属層との剥離が生じず、しかも接着剤を用いずに熱融着によって簡単に且つ強固に積層一体化して製造することのできる、FPCやその他の用途に有効に使用し得るプラスチックと金属との積層体を提供することである。
そして、本発明の目的は、上記した優れた特性を有するプラスチックと金属との積層体から形成した各種製品、特に、印刷回路や印刷回路用材料などを提供することである。」

(4) 「【0019】ジアミン単位が1,9-ノナンジアミン単位の外に他のジアミン単位を有する場合は、ポリアミド(A)の耐熱性、耐水性、可撓性、フイルムやシートなどへの成形性、該ポリアミド(A)の層を有する積層体の耐熱性、耐水性、可撓性などの点から、上記したジアミン単位のうちでも2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位が好ましい。そして、ポリアミド(A)が1,9-ノナンジアミン単位と共に2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位を有する場合は、ポリアミド(A)におけるジアミン単位の60モル%以上が1,9-ノナンジアミン単位および2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位であり、且つジアミン単位における1,9-ノナンジアミン単位:2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位のモル比が60:40~99:1であるのが好ましく、80:20~95:5であるのがより好ましい。」

(5) 「【0037】そして、本発明の積層体を熱融着法で製造する場合は、ポリアミド(A)の軟化点以上、好ましくは融点以上の温度[ポリアミド(A)の化学構造によって異なるが通常310℃以上の温度]で、熱プレス、熱ローラなどを用いてポリアミド(A)よりなる膜、フイルム、シート、板などの平面状物と金属箔、金属シート、金属板などを熱融着(圧着)する方法が好ましく採用される。また、前記の方法に代えて、ポリアミド(A)をフイルム、シート、板などの平面状物に溶融成形する際に、溶融成形と同時に金属箔、金属シート、金属板などと熱融着させて本発明の積層体を製造してもよい。」

2 引用発明

引用文献1には、請求項2及び3を引用する請求項4に記載された積層体の一態様として、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「板状の特定のポリアミド層と板状の金属層とが熱融着により接合している積層構造部分を少なくとも有している積層体であって、
前記特定のポリアミド層が、ジカルボン酸単位とジアミン単位とから実質的になるポリアミドであって、ジカルボン酸単位の85モル%以上がテレフタル酸単位であり、ジアミン単位の60モル%以上が1,9-ノナンジアミン単位および2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位であり、且つジアミン単位における1,9-ノナンジアミン単位:2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位のモル比が60:40~99:1であるポリアミドからなる層である積層体。」

3 引用文献3の記載

引用文献3には、「金属/樹脂複合構造体および金属部材」に関して、おおむね次の記載がある。

(1) 「[請求項14] 当該金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たす、熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂部材との接合のために用いられる金属部材。
(1)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を1直線部以上含む
(2)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が2μmを超える
・・・
[請求項18] 請求項14乃至17いずれか一項に記載の金属部材において、
前記金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(4)をさらに満たす金属部材。
(4)すべての直線部の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μmを超え300μm未満である」

(2) 「[0013] 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、金属部材と、熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂部材とを、樹脂の変性等を伴うことなく、直接接合することができ、かつ金属部材と樹脂部材との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体を提供するものである。」

(3) 「[0067] <樹脂部材>
以下、本実施形態に係る樹脂部材105について説明する。
樹脂部材105は熱可塑性樹脂組成物(P)からなる。熱可塑性樹脂組成物(P)は、樹脂成分として熱可塑性樹脂(A)と、必要に応じて充填材(B)と、含む。さらに、熱可塑性樹脂組成物(P)は必要に応じてその他の配合剤を含む。なお、便宜上、樹脂部材105が熱可塑性樹脂(A)のみからなる場合であっても、樹脂部材105は熱可塑性樹脂組成物(P)からなると記載する。
[0068] (熱可塑性樹脂(A))
熱可塑性樹脂(A)としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、・・・ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー・・・等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
[0069] これらの中でも、熱可塑性樹脂(A)としては、金属部材103と樹脂部材105との接合強度向上効果がより効果的に得ることができる観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
・・・
[0077] 上記ポリアミド系樹脂としては、例えば、PA6、PA12等の開環重合系脂肪族ポリアミド;PA66、PA46、PA610、PA612、PA11等の重縮合系ポリアミド;MXD6、PA6T、PA9T、PA6T/66、PA6T/6、アモルファスPA等の半芳香族ポリアミド;ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m-フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)等の全芳香族ポリアミド、アミド系エラストマー等が挙げられる。」
(4) 「[0125] (金属部材の表面粗化処理A)
[調製例1A](酸系エッチング剤1Aによる表面粗化処理)
JIS H4000に規定された合金番号5052のアルミニウム板(厚み:1.6mm)を、長さ45mm、幅18mmに切断した。このアルミニウム板を表1Aに示す組成の酸系エッチング剤1A(30℃)中に40秒間浸漬し、揺動させることによってエッチングした。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの金属部材を得た。
得られた表面処理済みの金属部材の表面粗さを、表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用して測定し、6直線部について、切断レベル10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%および80%における負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を求めた。このうち、切断レベル20%におけるRmr(20%)値、上記Rmr(20%)値が30%以下となる直線部の本数、切断レベル40%におけるRmr(40%)値、上記Rmr(40%)値が60%以下となる直線部の本数、6直線部のRz値、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)、エッチング処理前後の金属部材の質量比から求めたエッチング率を表2Aに示す。また本測定で得られた表面粗さ曲線を図5に示す。
続きを表示(全18行)
表面処理済みの金属部材の表面を、走査型電子顕微鏡(JEOL社製、型番JSM-6701F)で拡大倍率5000倍にて観察した。写真を図6に示す。
[0126] [調製例2A](酸系エッチング剤2Aによる表面粗化処理)
調製例1Aで、表1Aに示す酸系エッチング剤1Aを酸系エッチング剤2Aに変えて80秒間エッチングしたこと以外は同様の処理を行い、表面処理済みの金属部材を得た。
得られた表面処理済み金属部材のRmr、Rz、RSm、およびエッチング率を表2Aに示す。また本測定で得られた表面粗さ曲線を図7に示す。
表面処理済みの金属部材の表面を、走査型電子顕微鏡(JEOL社製、型番JSM-6701F)で拡大倍率5000倍にて観察した。写真を図8に示す。
・・・
[0135] [実施例1A]
日本製鋼所社製のJ85AD110Hに小型ダンベル金属インサート金型102を装着し、金型102内に調製例1Aによって調製されたアルミニウム板(金属部材103)を設置した。次いで、その金型102内に熱可塑性樹脂組成物(P)として、ガラス繊維強化ポリプロピレン(プライムポリマー社製V7100、ポリプロピレン(MFR(230℃、2.16kg荷重):18g/10min)80質量部、ガラス繊維20質量部)を、シリンダー温度250℃、金型温度120℃、射出速度25mm/sec、保圧80MPa、保圧時間10秒の条件にて射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。接合強度の評価結果を表3Aに示す。
[0136] [実施例2A]
実施例1Aにおいて、調製例1Aによって調製されたアルミニウム板に変えて、調製例2Aによって調製されたアルミニウム板を設置した以外は実施例1Aと同様にして金属/樹脂複合構造体106を得た。接合強度の評価結果を表3Aに示す。
・・・
[0145] [表1A]
[0146] [表2A]
」

第5 対比

本願発明と引用発明を対比する。

引用発明のポリアミドのジアミン単位として、「2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位」が選択されて合成されたポリイミドは、分岐を持ち、炭素数が9となるから、引用発明のポリアミドは、本願発明の「ジアミン単位として炭素数5以上20以下の分岐状脂肪族ジアミンに由来するジアミン単位を含む」ことを満たす。

また、引用発明のポリアミドのジカルボン酸単位に関し、「ジカルボン酸単位の85モル%以上がテレフタル酸単位」と特定され、ここで、テレフタル酸は芳香族であるから、引用発明のポリアミドは、本願発明と「芳香族ポリアミド樹脂」を主成分として含む点で相当する。

そうすると、引用発明の「ジカルボン酸単位とジアミン単位とから実質的になるポリアミド」及び「板状の特定のポリアミド層」は、本願発明の「芳香族ポリアミド樹脂(a)を主成分として含む樹脂組成物(A)」に相当し、引用発明の「板状の金属層」は、本願発明の「金属部材(M)」に相当し、引用発明の「板状の特定のポリアミド層」、「板状の金属層」及び「熱融着により接合している積層構造部分」は、本願発明の、「芳香族ポリアミド樹脂(a)を主成分として含む樹脂組成物(A)」、「金属部材(M)」及び「表面に固着した接合面」に相当するから、引用発明の「積層体」は、本願発明の「金属/樹脂複合構造体」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の構成において一致する。

<一致点>

「芳香族ポリアミド樹脂を主成分として含む樹脂組成物が、金属部材の表面に固着した接合面を有する複合構造体であって、
前記芳香族ポリアミド樹脂が、ジアミン単位として炭素数5以上20以下の分岐状脂肪族ジアミンに由来するジアミン単位を含む
金属/樹脂複合構造体。」

そして、本願発明と引用発明とは、以下の構成において相違する。

<相違点1>

本願発明の金属/樹脂複合構造体における、金属部材の樹脂組成物への接合面は、「間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立している微細凹凸表面を有する」のに対して、引用発明の「板状の金属層」は、そのような特定を有しない点。

<相違点2>

本願発明の芳香族ポリアミド樹脂における、「炭素数5以上20以下の分岐状脂肪族ジアミンに由来するジアミン単位」は10モル%以上含むものであるが、引用発明は、そのような特定を有しない点。

第6 判断

上記相違点について、判断する。

1 相違点1について

引用文献1の段落【0007】に、発明が解決しようとする課題として、「プラスチック層と金属層との剥離が生じず、しかも接着剤を用いずに熱融着によって簡単に且つ強固に積層一体化して製造すること」と記載されるように、引用発明において、板状の特定のポリアミド層と板状の金属層との層間の結合は、強固であることが求められている。

そこで、金属層に対する熱可塑性樹脂によるプラスチック層の熱融着に際し、接合強度向上を意図して、金属層表面の表面粗さを調整することは、例えば、引用文献3に記載されるように、当業者にとって単なる周知技術(上記第4 3(1)参照)の適用に過ぎず、その粗面化の程度として、林立する凸部の間隔周期が5nm以上500μm以下という特定は、広範なものであって、熱可塑性樹脂による熱融着における金属層表面の表面粗さを周知の方法で調整したものが包含される(例えば、引用文献3の実施例2A(上記第4 3(4))は、本件明細書中の実施例2として用いられている表面粗化された金属部材1の処理方法と全く同一の処理を行っており、本願の金属部材1と同一の間隔周期である92μmのものが得られていると解される。)。

してみると、引用発明に、上記周知技術を採用し、「間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立している微細凹凸表面を有する」板状金属層を用いることは、当業者が適宜なし得た事項である。

2 相違点2について

引用発明の「板状の特定のポリアミド層」は、「ジアミン単位の60モル%以上が1,9-ノナンジアミン単位および2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位であり、且つジアミン単位における1,9-ノナンジアミン単位:2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位のモル比が60:40~99:1であるポリアミド」と特定されるから、分岐を持ち、炭素数が9である「2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位」は、ジアミン単位の0.6~24モル%を含有する。

そうすると、本願発明の「分岐状脂肪族ジアミンに由来するジアミン単位を10モル%以上含み」とする含有量の範囲において、一部重複する。

また、引用文献1の段落【0019】には、「ジアミン単位が1,9-ノナンジアミン単位の外に他のジアミン単位を有する場合は、ポリアミド(A)の耐熱性、耐水性、可撓性、フイルムやシートなどへの成形性、該ポリアミド(A)の層を有する積層体の耐熱性、耐水性、可撓性などの点から、上記したジアミン単位のうちでも2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位が好ましい。」と記載されており、「高温での耐熱性に優れ、且つ耐水性、寸法安定性、耐薬品性などの特性にも優れ」(段落【0007】)ることを課題とする引用発明において、上記相違点2に係る、芳香族ポリアミド樹脂における、分岐状脂肪族ジアミンである、2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位の含有量の下限を10モル%に設定することは、当業者が適宜なし得たことである。

3 効果について

上記相違点1に係る特定事項による、金属層に対するプラスチック層の接合強度向上の効果及び相違点2に係る特定事項によるプラスチック層の耐熱性向上や耐水性向上の効果は、周知技術及び引用文献1の段落【0007】の記載からすれば、当業者が予想し得る程度のものであるし、また、本願明細書を参酌するとしても、比較例も含めて、具体的に試行された金属部材の微細凹凸表面の間隔周期は、本願発明の範囲内であって、相違点1に係る微細凹凸表面の間隔周期を特定の範囲に限定して奏せられる効果も格別顕著なものと認められるものではない。

4 審判請求人の主張について

審判請求人は、審判請求書及び令和2年5月29日に提出した上申書において、おおむね以下の2点について主張をしている。

引用文献1~4には、本願発明の構成全てを同時に満たすことが、「金属部材にポリアミド系樹脂部材が強固に接合・固着した、金属と樹脂の複合構造体を提供することができる」という効果の発現と関連性を有することを示唆する記載がない点、及び、「引用文献1に開示されている技術的思想は、接着剤を用いずに熱融着のみという簡単な方法で、ポリアミド層と金属層との強固な接合を実現するというものであり、引用文献3および4のように、表面粗化された金属層の表面の凹凸構造にポリアミド層を進入させて、ポリアミド層と金属層とを接合させて得られる金属樹脂複合構造体とは前提となる構成が異な」るため、「引用文献1に記載のポリアミド樹脂を引用文献3および4の金属樹脂複合体に適用する動機付けがあるとは言えない」点。

上記主張を検討する。

前者の主張については、上記3で効果について述べたように、引用発明に引用文献3記載の技術事項を適用した発明特定事項から、当業者にとって予想し得ない効果が奏せられるとはいえず、本願の明細書を参酌しても、本願発明の構成を全て満たすことによる効果が格別顕著なものと理解できるわけではない。

また、後者の主張についても、上記1で述べたように、引用発明及び引用文献3に例示される周知技術は、共に金属部材と樹脂部材との熱融着における接合強度に優れたものを得るという課題において共通するものであり、供せられる接合方法も、金属表面に対して樹脂部材の溶融成形と同時に行い得る熱融着である点で共通することから(引用文献1の段落【0037】及び引用文献3の実施例2A参照)、これらを組み合わせる動機付けがないといえるものではない。

したがって、審判請求人の上記主張は、いずれも採用できない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明、すなわち、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2019-014347

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