特許拒絶査定不服審判
2023-007463
製織された繊維プリフォームに樹脂を注入することによって部品を製造するための方法および装置
- 審判番号
- 2023-007463
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-572220
- 請求日
- 2023年05月09日
- 審決日
- 2024年11月25日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
- 【請求人代理人】弁理士法人川口國際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 宮澤 浩
- 審判官 関根 洋之
- 分類
- P18 .121-WZ (B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-572220「製織された繊維プリフォームに樹脂を注入することによって部品を製造するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月10日国際公開、WO2019/008125、令和 2年 8月31日国内公表、特表2020-526414〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)7月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年7月7日、フランス)を国際出願日とする出願であって、令和4年12月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和5年5月9日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、令和6年4月15日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対し、同年9月13日に意見書の提出とともに手続補正がなされた。
2 本件発明
本願の請求項1~11に係る発明は、令和6年9月13日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 製織された繊維プリフォーム(200)に樹脂(202)を注入することによって部品を製造する方法であって、以下のステップ:すなわち、
c)プリフォームを成形するステップであって、プリフォームが、少なくとも、それをより展性にするために事前に加湿される、当該ステップと、
d)プリフォームを形成するステップであって、プリフォームが、少なくとも、最終的な所望の形状に圧縮され、加熱によって乾燥される、当該ステップと、
e)樹脂をプリフォームに注入し、成形するステップと、
を含み、
ステップe)は、成形型(102)、対向成形型(106)、および樹脂を注入するための手段(124)を含む装置(100)によって実施され、
ステップe)は、サブステップ:
e1)成形型を対向成形型から離れるように移動させることによって、またはその逆によって、装置(100)を部分的に開くステップと、
e2)樹脂(202)を装置に注入するステップと、
e3)成形型を対向成形型に近づけることによって、またはその逆によって、装置を閉じるステップと、
e4)成形型(102)と対向成形型(106)との間で含浸プリフォーム(200)を加圧および加熱するステップと、
を含み、
装置(100)は、
- それぞれ、上部のものおよび下部のものである2つの加熱プレート(104、108)であって、下部加熱プレート(104)は、プリフォーム(200)を成形するためのかたどり部(110)を備える成形型(102)と一体であり、上側加熱プレート(108)は、別のかたどり部(112)を備える対向成形型(106)と一体である、2つの加熱プレートと、
- プレートを、好ましくは実質的に鉛直方向に、伸張位置から、成形型と対向成形型とが互いに連結される位置まで移動させるためのモータ付き手段(118)であって、モータ付き手段は、かたどり部間のプリフォーム(200)を加圧する目的で、プレートに圧縮力(120)を加えることができる、モータ付き手段と、
を含む、
ことを特徴とする、方法。」
3 当審拒絶理由における拒絶の理由
当審拒絶理由は、本件出願の請求項1~11に係る発明は、その優先権主張の日前に、日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。
なお、引用文献1は、主引用発明が記載された文献として引用しており、引用文献2は、副引用文献として引用している。また、引用文献3及び引用文献4は、請求項2に係る発明特定事項に関連する周知技術を示すものとして引用したものである。
引用文献1:特表2016-538152号公報
引用文献2:特表2016-525029号公報
引用文献3:特表2014-534918号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特表2015-501241号公報(周知技術を示す文献)
4 引用文献
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
当審拒絶理由において引用され、本願の優先権主張の日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2016-538152号公報(平成28年12月8日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、引用発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項4】
複合材ターボ機械ブレードを製造する方法において、当該方法は、
a)糸(20a、20b、22)の三次元的製織によりプレフォームが作られ、前記プレフォームは、翼(12)、ブレードの脚(14)、及び前記翼(12)と前記脚(14)の間にあるブレードのルート(13)を有し、前記糸(20a、20b、22)は、少なくとも前記プレフォームの表面に位置して目視により確認可能なトレーサ糸(22)を有する、工程と、
b)一連のトレーサ糸(22)が無傷でプレフォームの基準面(16)に沿って配置された状態のまま前記プレフォームが切り出されることで、ブレードの構成部分の形状及び寸法を事前定義するように構成された切り出しプレフォーム(10a)が提供される、工程と、
c)前記切り出しプレフォーム(10a)が予め変形されることで、予備変形プレフォーム(10b)が提供される、工程と、
d)前記予備変形プレフォーム(10b)の予備圧縮が達成されることで、予備圧縮プレフォーム(10c)が提供される、工程と、
e)前記予備圧縮プレフォーム10aの湿潤及び乾燥が実行されることで、補強化された補強プレフォームが提供される、工程と、
f)射出成形型が用意され、その中に前記補強プレフォームが置かれる、工程と、
g)前記補強プレフォーム全体に含浸して補強プレフォームの各糸(20a、20b、22)間の相対位置関係を保持するため、熱硬化性樹脂からなるバインダが前記射出成形型内に噴射される、工程と、
h)前記射出成形型が加熱される、工程と、
i)前記射出成形型から、実質的に前記ブレードの形状と寸法を有する複合材成形品が抜き出される、工程とを有し、
工程c)の間、予備変形は、成形型(24)によって形成されたハウジング(26)内に切り出しプレフォーム(10a)を配置することにより達成され、工程d)の間、前記予備圧縮は、成形型(24)と協働する可動圧縮工具(128)を使うことで達成され、
工程d)の間、前記プレフォーム(10b)の少なくとも脚部(12)は予備圧縮され、
前記プレフォーム(10b)は、プレフォーム(10b)の中間から始まって、その端縁部まで徐々に進行する形で予備圧縮される方法。」
(合議体注:「脚部(12)」は、「脚部(14)」の誤記である。)
(イ)技術分野
「【0001】
本開示は、複合材ターボ機械ブレードの製造方法と、この方法で使用される圧縮アセンブリに関する。その複合材ブレードは、三次元的に製織された糸や繊維からなるプレフォームと、プレフォームの糸間の相対的配置関係を維持するバインダとを有するタイプのものであっても良い。前記プレフォームは縦糸と横糸とで構成され、その縦糸の方向がプレフォームの長手方向となるかもしれない。」
(ウ)発明が解決しようとする課題
【0004】
ある特許文献では、閉じた成形型の中に樹脂を噴射する含浸に先立ち、乾燥繊維を編んだプレフォームを用意し、その後、縫合によりプレフォーム同士を組み立てるという提案もなされている・・・。また、ある特許文献では、噴射に先立って、1つ又は幾つかの固体インサートを据え付けた単一の製織プレフォームを作るという代替案もある・・・。しかしながら、これらの解決策は、複数の部品を組み立てなければならないという欠点があり、またこれら組み立て領域内に、機械的強度、特に、耐衝撃性という点で極めて不利な、例えば層間剥離について特に脆弱な部位を生んでしまうといった欠点を抱えている。
・・・
【0008】
しかしながら、この成形をどのようにして達成するかという点で幾つかの問題が未解決のままである。」
(エ)課題を解決するための手段
「【0009】
本開示は、上述した欠点が回避され得る圧縮アセンブリに関するものである。具体的に言えば、その圧縮アセンブリはプレフォームの予備圧縮を可能にする。
【0010】
その圧縮アセンブリは、糸を三次元的に製織して複合材ターボ機械ブレードを形成する目的を持ったプレフォームであって、同時に翼、ブレード脚、及び翼と脚の間にあるブレードルートを有する前記ブレフォームに対して使用されるかもしれない。
【0011】
この圧縮アセンブリは、上方が開口したハウジングを形成して製織プレフォーム(事前に切り出されている場合もある)を受容するのに適した成形型と、前記ハウジング内に置かれた状態で前記プレフォームの圧縮を可能にする圧縮アセンブリを形成するべく前記成形型と協働する上下方向可動な圧縮工具とを有する。その圧縮アセンブリは、長手方向及びその長手方向に平行な垂直中間平面を明確に定めている。
・・・
【0013】
圧縮工具は形成型の方向に降下するように構成されても良い。
【0014】
本開示は又、圧縮アセンブリを用いて複合材ターボ機械ブレードを製造する方向にも関連している。」
(オ)発明を実施するための形態
「【0017】
以下の詳細な説明では、圧縮アセンブリの例や製造工程の例を示した添付図面を参照する。これらの例は、単に例示的なものとして扱われることを意図するものであって、本発明の範囲はこれらの例に限定されるものではない。
【0018】
例示的実施形態において、その製造方法は、a)製織によって縦糸20aと横糸20bを含んだ三次元的プレフォーム10を作ることからなる第1工程で始まる。これら編み糸群の双方には、他の糸と視覚的に区別することができかつ少なくともプレフォームの表面において規則的に置かれるトレーサ糸22が設けられる。
・・・
【0020】
一体物である製織プレフォームは、次いで、本方法の第2工程(b)で切り出される。具体的には、製織プレフォームは、変形した後でプレフォームが仕上げ品の形状となるように提供された所定の三次元的算盤に応じて外形を切り出すことにより輪郭化される。この切り出しは、ウォータジェット及び/又は機械的手段(鋏、カッター、鋸…)を用いて実行したり、さらに/或いはレーザー切除によって実行可能である。
・・・
【0024】
次いで、工程c)が実行され、ここで切り出しプレフォーム10aの予備変形が達成される。
【0025】
特に、工程c)の間、上記予備変形は、成形型24(図2)に切り出しプレフォーム10aを置くことで達成され、同成形型は、切り出しプレフォーム10aを収容するキャビティやハウジング26を形成する様々な部分を有すると共に、少なくとも何本かのトレーサ糸22を位置決めする際に基準として使われるマークを備えている。」
合議体注:図2は次のものである。
[図:0001421765000001.jpg]
「【0033】
次いで、熱硬化性樹脂からなるバインダが前記射出成形型内に噴射され、プレフォーム全体に含浸させ、プレフォームの糸間の相対配置関係を保持する。なお、前記射出成形型は加熱され、実質的に前記ブレードの形状・寸法を有する複合材モールド部品が成形型から抜き出される。
【0034】
工程c)に続く工程d)では、バインダの射出に先立って、脚を含む予備変形プレフォーム10bの少なくとも一部分、好ましくは脚14とルート13の予備圧縮が、予備変形プレフォーム10bの全幅にわたって達成される。この予備圧縮は、特定の繊維を所定の位置に閉じ込めることで、目標とする最終形状にさらに近づいたプレフォーム中間形状を得るものである。
【0035】
この目的で使用され、かつその一部を図2に概略的に示す圧縮工具28は、必要な機器部品と共に成形型24を完成するように作られるかもしれない。実際、その圧縮工具28は(上下に)移動可能であり、約100℃の温度まで上昇可能でなければならない。
【0036】
この工程d)の間、糸をコーティングすることで製織を容易にするのに使用されるサイジング品は、予備圧縮部分を成す繊維同士の相対位置のブロッキングを可能にするものである。
【0037】
その後、予備圧縮されたプレフォーム10cの湿潤処理とオーブン内での乾燥処理が実行され、それらにより補強プレフォームがもたらされる。事実、この補強処理は、工程c)で与えられた形状を、切り出しプレフォーム10a(今は予備変形プレフォーム10b)に対して十分に硬化させるものであり、その結果、プレフォームはその後、上述した予備変形形状に相当する形状を実質的に変えることなく、射出成形型24内に簡単に配置されるかもしれない。
【0038】
必要ならば、オプションとして、プレフォームの内部に粘着剤、例えば希釈樹脂(特にエポキシ型)を添加することが可能である。それらの全ては、予備圧縮工程d)中に与えられる熱や圧力の影響下にあって、製織された炭素繊維同士を互いに接着させるものであり、予備変形されたプレフォーム10bがその後(とりわけ、噴射工程において)、何らかの変形を被るのを回避することができる。
【0039】
製織プレフォームを、最終品の最終繊維体積レベルに対して中間の繊維体積レベルまで圧縮可能にするべく、圧縮工具28は、成形型24のハウジング26への挿入を可能にする形状・寸法を有する。例えば、圧縮工具28を使って得られる圧縮プレフォームの目標繊維体積レベルは35%~55%であり、その場合、最終品は射出後の状態で50%~60%の目標繊維体積レベルとなる。
・・・
【0043】
本実施形態の圧縮工具28は、その移動の際、それ全体が成形型24のハウジング26内に降下(或いはハウジングから上昇)し、以て予備変形されたプレフォーム10bを圧縮するような一体品である。
【0044】
予備変形されたプレフォーム10bの繊維への損傷を回避するため、とりわけ繊維の挟み込みを回避するために、ハウジングに対面する成形型24と圧縮工具28の各表面は、如何なる(凹凸の)鋭利なエッジを持たず、フィレットを構成する、丸みを帯びるか或いは放射状に配置された接続部によって丸みのある角部を伴う面から構成される。
・・・
【0065】
複合材ターボ機械ブレードを製造する方法は、
a)糸20a、20b、22を三次元的に製織することにより、翼12、ブレードの脚14、及び翼12と脚14の間にあるブレードのルート13を同時に有するプレフォームが作られ、前記糸20は、少なくとも前記プレフォームの表面に位置し目視により確認可能なトレーサ糸22を有し、
b)一連のトレーサ糸22が無傷でプレフォームの基準面16に沿って配置された状態を残しながら前記プレフォームを切り出し、以てブレードの構成部分の形状・寸法を担うことができる切り出しプレフォーム10aが提供され、
c)前記切り出しプレフォーム10aが予め変形され、以て予備変形プレフォーム10bが提供され、
d)前記予備変形プレフォーム10bへの予備圧縮が実行され、以て予備圧縮プレフォーム10cが提供され、
e)前記予備圧縮プレフォーム10aを湿らせ、例えば乾燥オーブンでそれを乾燥することにより補強化されたプレフォームが提供され、
f)射出成形型24が用意され、その内部に前記補強プレフォームが置かれ、
g)前記射出成形型内に熱硬化性樹脂からなるバインダを噴射して補強化された予備変形プレフォーム全体を含浸させ、補強プレフォームの各糸20a、20b、22間の相対位置関係を保持し、
h)前記射出成形型が加熱され、そして
i)前記成形型から、実質的に前記ブレードの形状と寸法を有する複合材成形品が抜き出される、以上の各工程を有するかもしれない。
【0066】
工程c)の間、前記予備変形は、成形型24によって形成されたハウジング26内に切り出しプレフォーム10aを配置することにより実行され、工程d)の間、前記予備変形プレフォーム10aの前記予備圧縮は、可動圧縮工具128を使って成形型24と協働することで実行され、以て長手方向とその長手方向に平行な垂直中央平面PMを明確に定める圧縮アセンブリを形成する。
【0067】
従って、工程d)では圧縮工具28は、成形型24に向けて降下することが好ましいかもしれない。
・・・
【0073】
又、上の記述では、圧縮工具128は予備圧縮工程、即ち工程d)を実行することが述べられている。しかしながら、この圧縮工具128を射出成形型24の一要素として代替的に使用することも、それを工程f)と工程g)だけに使用することも可能である。又、別の代替例によれば、この同一圧縮工具128を予備圧縮工程d)と、工程f)及び工程g)の双方に使用することが可能である。
・・・
【0075】
以上の記述は、一例として与えられたものであって、それに限定するものではない。以上の開示を所与として、当業者であるならば、発明の範囲内に収まる様々な変更例を考案できるであろう。さらに、ここで開示された実施形態や例の様々な特徴を単独で使用したり、互いに組合せを変えて使用すること用いることも可能であって、ここに開示された特定の組合せに限定されることは意図しない。」
イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1の記載事項(ア)に基づけば、引用文献1には、請求項4に記載された発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複合材ターボ機械ブレードを製造する方法において、当該方法は、
a)糸(20a、20b、22)の三次元的製織によりプレフォームが作られ、前記プレフォームは、翼(12)、ブレードの脚(14)、及び前記翼(12)と前記脚(14)の間にあるブレードのルート(13)を有し、前記糸(20a、20b、22)は、少なくとも前記プレフォームの表面に位置して目視により確認可能なトレーサ糸(22)を有する、工程と、
b)一連のトレーサ糸(22)が無傷でプレフォームの基準面(16)に沿って配置された状態のまま前記プレフォームが切り出されることで、ブレードの構成部分の形状及び寸法を事前定義するように構成された切り出しプレフォーム(10a)が提供される、工程と、
c)前記切り出しプレフォーム(10a)が予め変形されることで、予備変形プレフォーム(10b)が提供される、工程と、
d)前記予備変形プレフォーム(10b)の予備圧縮が達成されることで、予備圧縮プレフォーム(10c)が提供される、工程と、
e)前記予備圧縮プレフォーム10aの湿潤及び乾燥が実行されることで、補強化された補強プレフォームが提供される、工程と、
f)射出成形型が用意され、その中に前記補強プレフォームが置かれる、工程と、
g)前記補強プレフォーム全体に含浸して補強プレフォームの各糸(20a、20b、22)間の相対位置関係を保持するため、熱硬化性樹脂からなるバインダが前記射出成形型内に噴射される、工程と、
h)前記射出成形型が加熱される、工程と、
i)前記射出成形型から、実質的に前記ブレードの形状と寸法を有する複合材成形品が抜き出される、工程とを有し、
工程c)の間、予備変形は、成形型(24)によって形成されたハウジング(26)内に切り出しプレフォーム(10a)を配置することにより達成され、工程d)の間、前記予備圧縮は、成形型(24)と協働する可動圧縮工具(128)を使うことで達成され、
工程d)の間、前記プレフォーム(10b)の少なくとも脚部(14)は予備圧縮され、
前記プレフォーム(10b)は、プレフォーム(10b)の中間から始まって、その端縁部まで徐々に進行する形で予備圧縮される方法。」
(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
当審拒絶理由において引用され、本願の優先権主張の日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2016-525029号公報(平成28年8月22日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、技術的事項の認定に用いた箇所に下線を付した。
(ア)技術分野
「【0001】
本発明は、通常、ガスタービンエンジン、およびより詳細には、この種のエンジン、特に複合材料で作られるベーンまたはケーシングに属する部材の表面に保護コーティングを施すことに関する。」
(イ)「発明が解決しようとする課題
「【0010】
したがって、本発明の目的は、容易に再現性を有することができ、特にコーティングのための所与の厚さを得ることができ、部材の損傷の危険にさらすことなく、同時に作るのに適度のコストであり、より簡単で、より時間がかからず、より環境に優しい、保護されるべき部材とそのコーティングとの間の良好な密着を保証する、部材の表面に保護コーティングを施すための方法を提案することである。」
(ウ)課題を解決するための手段
「【0011】
これを行うために、本発明は、具体的にはマトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える複合材料で作られる部材を射出成形することによって部材を製作するための工具を提案し、工具は、
部材の第1の面を成形するのに適した第1のインプレッションと、
部材の第2の面を成形するのに適した第2のインプレッションと、を備える。
【0012】
工具は、
部材の繊維補強材を工具の中の適切な位置に保持するのに適した部材を保持するための要素であり、第1のインプレッション、第2のインプレッション、および保持要素が、工具の内部容積を一緒に画定する要素をさらに備え、
保持要素、ならびに第1のインプレッションおよび第2のインプレッションのうちの少なくとも1つが、部材が工具の中に作られる成形位置と、コーティングがこのように製作される部材の上に前記工具の中に射出されるコーティング位置との間で工具の内部容積を変更するように互いに対して移動可能であり、部材の繊維補強材が、どんな成形位置でも工具の中に保持要素によって適切な位置に保持されることを特徴とする。」
(エ)発明を実施するための形態
「【0018】
下記においては、本発明は、マトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える複合材料を含む、ガスタービンエンジンの部材2の射出成形による製作ステップという文脈においてより詳細に説明され、その1つの表面は、保護コーティング3で覆われる。しかしながら、これは、部材2が射出成形方法によって工具の中に射出され得るもう1つの熱成形材料を含む場合、ならびにガスタービンエンジンの中に統合されることを必ずしも目的としていない部材2の製作ステップSに、本発明がまた適用される範囲では限定されるものではない。
【0019】
部材2は、特に、静翼(ガイドベーン、ノズルベーン)、動翼(ファン翼)、あるいはケーシングであってもよい。
・・・
【0034】
少なくとも1つのインプレッション10、20および/または保持要素30の相対運動を実現するために、工具1は、このインプレッション10、20と保持要素30との間に延在する復帰手段12、22を備えることができる。復帰手段12、22は、インプレッション10、20および保持要素30を互いから離れるように(または、選択された復帰手段12、22のタイプに従ってそれぞれ互いに向かって)付勢するように構成される。工具1は、インプレッション10、20または保持要素30に力F1、F2を加え、またはこれらを互いに向かって(または、選択された復帰手段12、22のタイプに従ってそれぞれ互いから離れるように)付勢するのに適した部材14、24をさらに備える。
・・・
【0041】
たとえば、図1および図2は、保持要素30に対して移動可能な2つのインプレッション10、20を備える工具1を示しており、前記インプレッション10、20は、保持要素30を収容するのに適したハウジング15、25をそれぞれ備える。」
合議体注:図1及び図2は以下に示すものである。
[図:0001421765000002.jpg]
「【0049】
次いで、部材2の製作、およびこの工具1を用いた部材2上への保護コーティング3の塗布Sが、次のように行われ得る。
【0050】
第1のステップS1においては、工具1が、部材2の製作のために適切な位置に置かれる。これを行うために、可動部材(インプレッション10、20のうちの少なくとも1つ、および/または保持要素30)が、部材2を形成するのに適したキャビティを画定するために位置決めされる。たとえば、図に示される実施例においては、インプレッション10、20は、部材(複数の部材)14、24を用いて圧力を方向Xに加えることによって工具1の内部容積を減少させるために互いに向かって付勢される。
・・・
【0052】
そのうえ、マトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える複合材料で作られる部材2の場合は、部材2の繊維補強材は、2つのインプレッション10、20の間に、ステップS1中に工具1の中に予め位置決めされる。このために、部材2の繊維プリフォームは、前記部品30a、30bがプリフォームを工具1の中の適切な位置に保持するように、保持要素30を形成する2つの部品30a、30bの間に特に位置決めされ得る。
【0053】
第2のステップS2においては、部材2は、工具1の中へのその構成部品材料の射出成形によって従来通り製作される。
【0054】
部材2の製作およびその冷却ステップS2に続いて、これは、保護コーティング3を受け入れるために型の中に留まることができる。変形においては、部材2は、関連している作業を受けるように取り除かれ、次いで工具1の中に再導入され得る。
・・・
【0056】
次いで、第3のステップS3においては、工具1は、部材2にコーティング3を施すために適切な位置に置かれる。
【0057】
可動部材は、工具1の内部容積を増加させ、コーティング3の材料を収容することを目的としている空間(複数の空間)eおよび/またはe’を作り出すために、変位される。他方では、保持要素30および部材2は、工具1の中に固定されたままであることが好ましい。このために、部材14、24によって可動部材に加えられる圧力は、復帰手段12、22が可動部材を変位させることができるように、十分に低減されるか、または除去さえされる。復帰部材14、24によって加えられる力F1、F2は、この場合、ばねによって可動部材に加えられる力よりも小さい。同時に、部材2は、保持要素30を用いて工具1の中の適切な位置に保持され、それにより、非常に正確なコーティング厚さe、e’を得ることができる。
・・・
【0059】
工具1は、この場合、部材2上にコーティング3の層を塗布するように適切な位置にある。インプレッション10、20と保持要素30との間の密封接触、および特にシール18、28により、工具1は、閉鎖され密封され、それにより、材料のいかなる漏れも回避し、安定な所与の圧力を加えることができる。
【0060】
第4のステップS4においては、コーティング3は、従来通りの射出成形方法に続いて、工具1の中に部材2上に均一にかつ再現性よく施される。
【0061】
したがって、コーティング3の材料は、好ましくは部材2のマトリックスに使用されるそれと同じ射出チャネルを介して、工具1の中に導入され、加熱される。変形においては、工具は、工具の複雑さを低減するために二重射出チャネルを備えることができる。コーティング3の材料は、この場合、密封的に閉鎖される、部材2を備える工具1の中に高圧下で射出される。射出すると、材料は、部材2の各面を均一に覆い、かつ、特に工具1のプレスによって加えられる圧力により部材2の表面凹凸の中に入り込むように、工具1の可動部材の変位によってそれぞれ部材2とインプレッション10、20との間に作り出される空間e、e’の中に射出チャネルを介して入り込む。
【0062】
任意選択的に、圧力は、この場合、冷却ステップ中にコーティング3の材料の回収を回避するために、工具1の中に決定された持続時間の間は維持され得る。
【0063】
該当する場合は、部材2の重合度が第1のステップにおいて100%よりも小さかったのなら、部材2の重合は完了されるS5。
【0064】
最後に、コーティング3は、冷却されS6、次いで、従来の手段によって工具1から除去されるS7。」
イ 引用文献2に記載された技術的事項
上記記載事項(エ)に基づけば、引用文献2には、以下の技術的事項(以下「文献2記載技術」という。)が記載されていると認められる。
「マトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える複合材料を含む、ガスタービンエンジンの部材2の製作を、可動部材を、部材2を形成するのに適したキャビティを画定するために位置決めした後に、工具1の内部容積を増加させると共に閉鎖され密封されるように変位させ、コーティング3の材料を工具1の中に高圧下で射出し、材料が工具1のプレスによって加えられる圧力により部材2の表面凹凸の中に入り込むように、工具1の可動部材を変位させ、持続時間の間圧力を維持し、最後に、コーティング3を冷却し、工具1から除去する工程により、行うこと。」
5 対比(一致点、相違点の認定)
本件発明と引用発明とを対比する。
(1)部品を製造する方法
引用発明は、「複合材ターボ機械ブレードを製造する方法」である。引用発明の「複合材ターボ機械ブレード」は、ターボ機械を構成するものであるから、本件発明の「部品」に相当する。また、引用発明は、「a)糸(20a、20b、22)の三次元的製織によりプレフォームが作られ」、「g)前記補強プレフォーム全体に含浸して補強プレフォームの各糸(20a、20b、22)間の相対位置関係を保持するため、熱硬化性樹脂からなるバインダが前記射出成形型内に噴射される、工程」を含んでいる。そうすると、引用発明は、製織により作られたプレフォームに、熱硬化性樹脂からなるバインダを噴射することによって、複合材ターボ機械ブレードを製造する方法であるといえる。
したがって、引用発明の「複合材ターボ機械ブレードを製造する方法」は、本件発明の「製織された繊維プリフォーム(200)に樹脂(202)を注入することによって部品を製造する方法」に相当する。
(2)ステップc)
引用発明の「e)前記予備圧縮プレフォーム10aの湿潤及び乾燥が実行されることで、補強化された補強プレフォームが提供される、工程」のうち、前半の「前記予備圧縮プレフォーム10aの湿潤」が実行される工程は、三次元的製織により作られた予備圧縮プレフォームが、湿潤されることにより、展性になるといえる。
したがって、引用発明の「前記予備圧縮プレフォーム10aの湿潤」が実行される工程は、本件発明の「c)プリフォームを成形するステップであって、プリフォームが、少なくとも、それをより展性にするために事前に加湿される、当該ステップ」に相当する。
(3)ステップd)
引用発明の「e)前記予備圧縮プレフォーム10aの湿潤及び乾燥が実行されることで、補強化された補強プレフォームが提供される、工程」のうち、後半の「乾燥が実行される」工程は、乾燥によって「予備変形形状に相当する形状を実質的に変えることなく」、「十分に硬化させるもの」(段落【0037】)であるから、湿潤された予備圧縮プレフォームの形状を規定される形状となるように形成しているといえる。
したがって、引用発明の「乾燥が実行される」工程は、本件発明の「d)プリフォームを形成するステップであって、プリフォームが、少なくとも、最終的な所望の形状に圧縮され、加熱によって乾燥される、当該ステップ」に相当する。
(4)ステップe)
引用発明の「f)射出成形型が用意され、その中に前記補強プレフォームが置かれる、工程」、「g)前記補強プレフォーム全体に含浸して補強プレフォームの各糸(20a、20b、22)間の相対位置関係を保持するため、熱硬化性樹脂からなるバインダが前記射出成形型内に噴射される、工程」及び「h)前記射出成形型が加熱される、工程」において、熱硬化性樹脂からなるバインダは、補強プレフォームに注入され、加熱によって硬化することにより、「複合材ターボ機械ブレード」が成形されると理解できる。
したがって、引用発明の「g)前記補強プレフォーム全体に含浸して補強プレフォームの各糸(20a、20b、22)間の相対位置関係を保持するため、熱硬化性樹脂からなるバインダが前記射出成形型内に噴射される、工程」及び「h)前記射出成形型が加熱される、工程」は、本件発明の「e)樹脂をプリフォームに注入し、成形するステップ」に相当する。
また、引用発明の「g)前記補強プレフォーム全体に含浸して補強プレフォームの各糸(20a、20b、22)間の相対位置関係を保持するため、熱硬化性樹脂からなるバインダが前記射出成形型内に噴射される、工程」は、本件発明におけるステップe)のサブステップである「e2)樹脂(202)を装置に注入するステップ」に相当する。
さらに、本件発明におけるステップe)のサブステップである「e4)成形型(102)と対向成形型(106)との間で含浸プリフォーム(200)を加圧および加熱するステップ」と引用発明の「h)前記射出成形型が加熱される、工程」とは、「e4)成形型(102)と対向成形型(106)との間で含浸プリフォーム(200)を加熱するステップ」である点で共通する。
そして、引用発明の「射出成形型」は、その中に前記補強プレフォームが置かれた状態において、熱硬化性樹脂からなるバインダが前記射出成形型内に噴射されるものであり、工程i)において、「前記射出成形型から、実質的に前記ブレードの形状と寸法を有する複合材成形品が抜き出される」ものであるから、補強プレフォームを密閉してバインダを射出成形型内に噴射した後で複合材成形品を抜き出すための射出成形型に対向する型と、熱硬化性樹脂からなるバインダを内部に噴射するための手段を有しているといえる。
したがって、引用発明の「射出成形型」は、本件発明の「成形型(102)、対向成形型(106)、および樹脂を注入するための手段(124)を含む装置(100)」に相当し、引用発明の工程f)~h)は、上記「装置(100)によって実施」されるとする要件を満たしている。
(5)一致点及び相違点
以上より、本件発明と引用発明とは、
「 製織された繊維プリフォーム(200)に樹脂(202)を注入することによって部品を製造する方法であって、以下のステップ:すなわち、
c)プリフォームを成形するステップであって、プリフォームが、少なくとも、それをより展性にするために事前に加湿される、当該ステップと、
d)プリフォームを形成するステップであって、プリフォームが、少なくとも、最終的な所望の形状に圧縮され、加熱によって乾燥される、当該ステップと、
e)樹脂をプリフォームに注入し、成形するステップと、
を含み、
ステップe)は、成形型(102)、対向成形型(106)、および樹脂を注入するための手段(124)を含む装置(100)によって実施され、
ステップe)は、サブステップ:
e2)樹脂(202)を装置に注入するステップと、
e4)成形型(102)と対向成形型(106)との間で含浸プリフォーム(200)を加熱するステップと、
を含む、
方法。」
である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
[相違点1-1]
ステップe)が、本件発明では、「e1)成形型を対向成形型から離れるように移動させることによって、またはその逆によって、装置(100)を部分的に開くステップ」及び「e3)成形型を対向成形型に近づけることによって、またはその逆によって、装置を閉じるステップ」のサブステップを含み、成形型(102)と対向成形型(106)との間で含浸プリフォーム(200)を加熱するステップにおいて「加圧」を行うのに対し、引用発明では、上記サブステップe1)及びe3)を含んでおらず、「射出成形型が加熱される、工程」において加圧を行うとされていない点。
[相違点1-2]
装置(100)が、本件発明では、「それぞれ、上部のものおよび下部のものである2つの加熱プレート(104、108)であって、下部加熱プレート(104)は、プリフォーム(200)を成形するためのかたどり部(110)を備える成形型(102)と一体であり、上側加熱プレート(108)は、別のかたどり部(112)を備える対向成形型(106)と一体である、2つの加熱プレート」と、「プレートを、好ましくは実質的に鉛直方向に、伸張位置から、成形型と対向成形型とが互いに連結される位置まで移動させるためのモータ付き手段(118)であって、モータ付き手段は、かたどり部間のプリフォーム(200)を加圧する目的で、プレートに圧縮力(120)を加えることができる、モータ付き手段」とを含むとされているのに対し、引用発明では、「射出成形型」が、2つの加熱プレートとモータ付き手段を含むものであるか特定されていない点。
6 判断(相違点についての検討)
(1)[相違点1-1]について
前記4(2)イに記載したように、「マトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える複合材料を含む、ガスタービンエンジンの部材2の製作を、可動部材を、部材2を形成するのに適したキャビティを画定するために位置決めした後に、工具1の内部容積を増加させると共に閉鎖され密封されるように変位させ、コーティング3の材料を工具1の中に高圧下で射出し、材料が工具1のプレスによって加えられる圧力により部材2の表面凹凸の中に入り込むように、工具1の可動部材を変位させ、持続時間の間圧力を維持し、最後に、コーティング3を冷却し、工具1から除去する工程により、行うこと」(文献2記載技術)は、本願の優先権主張の日前に知られていたといえる。
ここで、工具1の内部容積を増加させると共に閉鎖され密封されるように変位させる工程は、本件発明の「e1)成形型を対向成形型から離れるように移動させることによって、またはその逆によって、装置(100)を部分的に開くステップ」に該当する。また、材料が工具1のプレスによって加えられる圧力により部材2の表面凹凸の中に入り込むように、工具1の可動部材を変位させる工程は、本件発明の「e3)成形型を対向成形型に近づけることによって、またはその逆によって、装置を閉じるステップ」に該当する。さらに、冷却ステップの前、つまり加熱された状態において、圧力を維持していることから、加熱と共に加圧を行っているといえる。
引用発明は、「複合材ターボ機械ブレードを製造する方法」であるから、引用発明と上記引用文献2に記載されている部品2の製作とは、同じ技術分野に属する。また、引用発明が解決しようとする課題は、「複数の部品を組み立てなければならないという欠点があり、またこれら組み立て領域内に、機械的強度、特に、耐衝撃性という点で極めて不利な、例えば層間剥離について特に脆弱な部位を生んでしまうといった欠点を抱えている。」(段落【0004】)という背景技術における成形の欠点を解決しようとするものである。一方、引用文献2に記載された技術的事項も、「本発明の目的は、容易に再現性を有することができ、特にコーティングのための所与の厚さを得ることができ、部材の損傷の危険にさらすことなく、同時に作るのに適度のコストであり、より簡単で、より時間がかからず、より環境に優しい、保護されるべき部材とそのコーティングとの間の良好な密着を保証する、部材の表面に保護コーティングを施すための方法を提案することである。」(段落【0010】)というものであり、複数の部材を組み立てることなく、機械的強度に優れた部品を成形しようとする点で共通するものである。そうすると、引用発明において、引用文献2に記載された技術的事項を採用しようとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、引用発明において、引用文献2に記載された技術的事項を採用し、本件発明の[相違点1-1]の要件を満たすものとすることは当業者が容易になし得たことである。
(2)[相違点1-2]について
引用文献1の段落【0073】には、「この圧縮工具128を射出成形型24の一要素として代替的に使用することも、それを工程f)と工程g)だけに使用することも可能である。又、別の代替例によれば、この同一圧縮工具128を予備圧縮工程d)と、工程f)及び工程g)の双方に使用することが可能である。」と記載されている。当該記載に基づけば、引用文献1には、各工程において用いる工具を同一のものとすることが示唆されているといえる。また、引用文献1において、成形型と射出成形型を同じ番号「24」を付して説明していることからみても、各工程において工具を共通して使用することを想定していることは明らかである。
そして、引用文献1の段落【0066】には、「工程c)の間、前記予備変形は、成形型24によって形成されたハウジング26内に切り出しプレフォーム10aを配置することにより実行され、工程d)の間、前記予備変形プレフォーム10aの前記予備圧縮は、可動圧縮工具128を使って成形型24と協働することで実行され、以て長手方向とその長手方向に平行な垂直中央平面PMを明確に定める圧縮アセンブリを形成する。」と記載されており、引用発明における「可動圧縮工具128」と「成形型24」(あるいは「射出成形型」)とが「圧縮アセンブリ」を構成しているといえる。また、引用文献1の段落【0011】には、「この圧縮アセンブリは、上方が開口したハウジングを形成して製織プレフォーム(事前に切り出されている場合もある)を受容するのに適した成形型と、前記ハウジング内に置かれた状態で前記プレフォームの圧縮を可能にする圧縮アセンブリを形成するべく前記成形型と協働する上下方向可動な圧縮工具とを有する。」と記載されていることから、「成形型24」あるいは「射出成形型24」は、製織プレフォーム等を置くことができるように下部に配置され、「圧縮工具128」は上部に配置されると共に鉛直方向に可動であるといえる。そして、圧縮アセンブリによる予備圧縮によって予備圧縮プレフォーム(10c)等が提供されるのであるから、成形型24及び可動圧縮工具128は、それぞれ、予備圧縮プレフォーム(10c)をかたどるためのかたどり部を有しているといえる。さらに、段落【0035】には、「実際、その圧縮工具28は(上下に)移動可能であり、約100℃の温度まで上昇可能でなければならない。」と記載されていることから、圧縮工具は加熱手段を備えているといえる。また、引用発明は「h)前記射出成形型が加熱される、工程」を含むものであるから、射出成形型も加熱手段を備えているといえる。
引用文献1には、引用発明における「射出成形型」及び「圧縮手段」について、上記のとおり、各工程において共通して使用すること、それぞれかたどり部を有し、圧縮手段が鉛直方向に移動可能とすること、加熱手段を備えることが示唆されていたといえる。
引用文献1には、圧縮手段を鉛直方向に移動し圧縮するための構成が具体的に開示されていないものの、モータを用いて移動及び圧縮を行うことは、文献を示すまでもなく周知技術といえる。また、圧縮アセンブリを加熱するにあたり、加熱プレートを用いることも周知技術といえる。したがって、引用発明において、2つの加熱プレートとモータ付き手段を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
なお、審判請求人は、令和6年9月13日付けの意見書において、「圧縮工具を加熱するために、請求項1に記載された加熱プレートを使用することが周知であるということには、承服できない」と主張している。
しかしながら、例えば、特開昭59-190828号公報の第3頁左下欄第4~9行には、「第1図は垂直移動できる連結棒1をもった油圧成形プレスの一例を示す。連結棒1は垂直移動できるプレスラム2に結ばれ、ラム2は加熱プレート又はプラテン3をもち、プラテン3は下部雄型4を支え、雄型4はSMC仕込み5を含んでいる。」と記載されている。また、特開平6-339997号公報の段落【0008】には、「図1は、この発明にかかる三次元織物を使用した繊維強化プラスチックパネル1を製造する成形装置の側面図を示し、2aは表面に加熱プレート3を備えた上プレート、2bは表面に加熱プレート3を備えた下プレートであって、この上下プレート2a,2bの側面は、平行リンク機構を構成するピン4及びリンク5a,5bを介して揺動可能に連結されている。」と記載されている。さらに、特開2003-39466号公報の段落【0016】には、金型装置について、「上記上型1は、成形空間3を形成する成形面4を有して成型品を成形する型部材6と、上記型部材6が着脱可能に取り付けられて型部材6を加熱する型加熱プレート8とを備えて構成されている。また、上記下型2も同様に、型部材7と、上記型部材7が着脱可能に取り付けられる型加熱プレート9とを備えて構成されている。」と記載されている。また、特開2014-107503号公報の段落【0016】には、「本真空加熱加圧封止成形装置においては、基台1上に加圧シリンダ下板2が配置され、加圧シリンダ下板2の上にはスライド移動テーブル3が置かれ、スライドシリンダ4がロッドを介してスライド移動テーブル3の側方に連結されている。スライド移動テーブル3上には下枠部材置台5が置かれ、下枠部材置台5の上方には下加熱プレート7が配置され、下加熱プレート7上には基板置台8が置かれ、基板置台8の上には素子9付き基板10が配置され、素子9上には封止シート11が配置されるようになっている。」と記載されている。これらの記載に基づけば、圧縮アセンブリを加熱するにあたり、加熱プレートを用いることは、当該技術分野において周知技術であるといえる。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。
(3)小括
以上のとおり、[相違点1-1]及び[相違点1-2]は、いずれも、当業者が容易になし得たことであるから、本件発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
7 むすび(結論)
上記のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-007463