2019-013549
冷凍機用潤滑油組成物及び冷凍機
- 審判番号
- 2019-013549
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-235061外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年10月09日
- 審決日
- 2020年06月24日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (C10M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 8項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成26年11月19日の出願であって、平成30年9月10日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年11月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月26日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成31年3月7日に意見書が提出され、同年7月3日付けで拒絶査定され(謄本の発送は同月9日)、これに対し、令和元年10月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和2年3月25日に上申書が提出されたものである。
なお、令和元年10月9日に提出された手続補正書による補正の目的は明瞭でない記載の釈明に該当する。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成30年11月16日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「 【請求項1】1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び1,2,3,3-テトラフルオロプロペンから選択される少なくとも一種である冷媒とともに用いられる冷凍機用潤滑油組成物であって、基油と、β-ピネンとを含む冷凍機用潤滑油組成物。」
第3 原査定の理由の概要
原査定の理由は、平成30年12月26日付け拒絶理由通知書に記載された理由1であって、要するに、上記本願発明は、下記の刊行物1に記載された発明及び刊行物2~4に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
第4 当審の判断
当審は、令和元年10月9日提出の審判請求書及び令和2年3月25日提出の上申書を斟酌しても、上記した原査定の拒絶の理由が依然として妥当すると判断する。
その理由は以下のとおりである。
1.刊行物及びその記載事項
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(1)刊行物1:国際公開第2011/118732号
原査定で引用された本願出願前に頒布された刊行物1には、次の記載がある。
(1a)「[請求項1]
基油と、分子内に非共役二重結合を2つ以上有する有機化合物とを含む冷凍機用潤滑油組成物。」
(1b)「[0017]
上述した分子内に非共役二重結合を2つ以上有する有機化合物の配合量は、組成物全量基準で0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。配合量が当該範囲にあると、冷媒との相溶性を維持しつつ酸素捕捉剤としての機能が十分に発揮される。
上記配合量は0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、本発明の冷凍機用潤滑油組成物には、上記分子内に非共役二重結合を2つ以上有する有機化合物が含まれていればよく、必要により他の酸素捕捉剤が含まれていてもよい。」
(1c)「[0125]
<配合成分>
冷凍機用潤滑油組成物の調製に用いた各成分の種類を以下に示す。
(1)基油
[0126]
(2)酸素捕捉剤(分子内に二重結合を2つ以上有する有機化合物)
[0127]
(3)その他の添加剤
以下の各成分を用い、組成物全量中の配合量をおのおの( )内に示す量(質量%)として、全体で0.70質量%となるように添加した。
[0128]
<実施例1~7及び比較例1~6>
第1表に示す組成の冷凍機油組成物を調製し、冷媒としてHFO1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)を用いて、前記組成物の熱安定特性を評価した。その結果を第1表に示す。
[0129]
[表1]
」
(2)刊行物2:国際公開第2012/043617号
原査定で引用された本願出願前に頒布された刊行物2には、次の記載がある。
(2a)「[請求項1]
基油と、分子内に非共役二重結合を2つ以上有する有機化合物、二重結合を有するテルペン化合物及び分子内に二重結合を1つ有する炭素数12~30脂肪族不飽和炭化水素からなる群から選ばれる一種又は二種以上の分子内に二重結合を有する有機化合物を含有する、炭素数1~3の飽和フッ化炭化水素を含む冷媒を用いる圧縮型冷凍機用潤滑油組成物。」
(2b)「[0016]
上述した分子内に二重結合を有する有機化合物の配合量は、組成物全量基準で0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。配合量が当該範囲にあると、冷媒との相溶性を維持しつつ酸素捕捉剤としての機能が十分に発揮される。
上記配合量は0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、本発明の圧縮型冷凍機用潤滑油組成物には、上記分子内に二重結合を有する有機化合物が含まれていればよく、必要により他の酸素捕捉剤が含まれていてもよい。」
(2c)「実施例
[0118]
次に、本発明を、実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、基油の性状及び冷凍機用潤滑油組成物の諸特性は、以下に示す要領に従って求めた。
[0119]
<基油の性状>
(1)100℃動粘度
JIS K2283-1983に準じ、ガラス製毛管式粘度計を用いて測定した。
(2)数平均分子量
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した。GPCは、HLC-8120GPC、SC-8020(東ソー(株)社製)を用い、THF(テトラヒドロフラン)を溶離液として、IR検出器を用いて測定を行った。その結果から、polystylene標準試料による検量線から数平均分子量を求めた。
(3)引火点
JIS K 2265(COC法)に準拠して測定した。
(4)粘度指数
JIS K 2283に準拠して測定した。
[0120]
<冷凍機用潤滑油組成物の熱安定性試験>
内容量200mLのオートクレーブに、油/冷媒(30g/30gの比率、油中の水分含有量500質量ppm)、及び鉄、銅、アルミニウムからなる金属触媒を充填して封管し、空気圧18.7kPa、温度200℃の条件にて240時間保持後、油外観を目視観察すると共に、酸価を測定した。なお、酸価はJIS K2501に規定される「潤滑油中和試験方法」に準拠し、指示薬法により測定した。
[0121]
<配合成分>
冷凍機用潤滑油組成物の調製に用いた各成分の種類を以下に示す。
(1)基油
[0122]
(2)安定化剤(分子内に二重結合を有する有機化合物)
[0123]
(3)その他の添加剤
以下の各成分を用い、組成物全量中の配合量をおのおの( )内に示す量(質量%)として、全体で1.10質量%となるように添加した。
[0124]
<実施例1~9及び比較例1~7>
第1表及び第2表に示す組成の冷凍機油組成物を調製し、冷媒としてR32(ジフルオロメタン)又はR410A〔R32とR125(ペンタフルオロエタン)との質量比50:50混合物〕を用いて、前記組成物の熱安定特性を評価した。その結果を第1及び第2表に示す。
[0125]
[表1]
」
2.刊行物1に記載された発明について
刊行物1の実施例1には、「2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである冷媒とともに用いられる冷凍機用潤滑油組成物であって、
基油と、1,4-p-メンタジエンである酸素捕捉剤とを含む冷凍機用潤滑油組成物。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる(摘記(1c)。
3 対比・判断
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである冷媒」は、本願発明の「1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び1,2,3,3-テトラフルオロプロペンから選択される少なくとも一種である冷媒」に相当する。
引用発明の「1,4-p-メンタジエンである酸素捕捉剤」は、本願発明の「β-ピネン」と酸素捕捉剤である限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び1,2,3,3-テトラフルオロプロペンから選択される少なくとも一種である冷媒とともに用いられる冷凍機用潤滑油組成物であって、
基油と、酸素捕捉剤とを含む冷凍機用潤滑油組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
酸素捕捉剤が、本願発明はβ-ピネンであるのに対し、引用発明は1,4-p-メンタジエンである点。
(2)相違点について検討する。
本願発明は、上記請求項1の記載からみて、酸素捕捉剤としてβ-ピネンを含むと特定されており、β-ピネン以外の酸素捕捉剤を含むことを排除していない。
ここで、刊行物1には、必要により他の酸素捕捉剤が含まれていてもよいことが、記載されている(摘記1b参照)。
そして、刊行物2には、分子内に非共役二重結合を2つ以上有する有機化合物が酸素捕捉剤であることが記載され(摘記2a参照)、分子内に非共役二重結合を2つ以上有する有機化合物と二重結合を有するテルペン化合物が同様に使用できることが記載され(摘記2b参照)、分子内に非共役二重結合を2つ以上有する有機化合物として1,4-p-メンタジエンが、そして、二重結合を有するテルペン化合物としてβ-ピネンが、それぞれ具体的に記載されている(摘記2c参照)。
そうすると、引用発明において、引用発明の1,4-p-メンタジエンに加えて、他の酸素捕捉剤としてβ-ピネンを採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、本願発明が酸素捕捉剤としてβ-ピネンを単独で含むとして、引用発明の1,4-p-メンタジエンに代えて、1,4-p-メンタジエンと同様に使用できるβ-ピネンを採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
4.本願発明の効果について
本願明細書段落[0067]表1の実施例7(β-ピネン:環状有機化合物5)と、基油のPVEが同じ本願の比較例に相当する実施例11(γ-テルピネン(1,4-p-メンタジエン):環状有機化合物8)とを比べてみれば、酸素捕捉剤としてγ-テルピネンとβ-ピネンは同等の酸価及びスラッジ判定を有しており、酸素捕捉剤としてγ-テルピネンを使用する刊行物1の当該組成物が本願と同等の効果を有するものと認められるから、酸素捕捉剤としてβ-ピネンを含むと特定したことによって、本願発明が、当業者であっても引用文献1に記載された事項から予測し得ない顕著な効果を発現しているとは認められない。
5.審判請求人の主張
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(1) 審判請求人は、審判請求書において、『引用文献1(当審決における刊行物1)の記載内容に接した当業者において、本願発明1のように「非共役二重結合を2つ以上有する有機化合物」を必須の構成要件とすることなく、酸素捕捉剤として引用文献2~4に記載されているテルペン系酸素捕捉剤である「β-ピネン」を必須の構成要件とする発明に到達することは容易なことではなく、むしろ困難であり、百歩譲って、引用文献1に記載の発明に、引用文献2~4に記載されているテルペン系酸素捕捉剤を組み合わせたとしても、それはあくまでも「非共役二重結合を2つ以上有する有機化合物」と共に「β-ピネン」を用いる態様に限定されます。』と主張する。
しかし、上記3.(2)のとおり、引用発明の1,4-p-メンタジエンに加えて、他の酸素捕捉剤としてβ-ピネンを採用することは、当業者が容易に想到し得ることであるし、また、本願発明が、酸素捕捉剤としてβ-ピネンを単独で含むとして、引用発明の1,4-p-メンタジエンに代えて、引用文献2において、酸素捕捉剤として1,4-p-メンタジエンと同様に使用されているβ-ピネンを採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、審判請求人のこれらの主張を採用することはできない。
(2)審判請求人は、上申書において、「他の酸素捕捉剤」として、「β-ピネン」を選択することはできず、仮に、採用して併用することに特定したとしても、併用する以上、本願請求項1に係る発明の構成とはなり得ないものであり、当業者が容易になし得るものではないと主張する。
しかし、上記3.(2)のとおり、本願発明は、「β-ピネン」以外の他の酸素捕捉剤を含有する態様を含むものであるから、審判請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものではない。また、引用発明の1,4-p-メンタジエンに加えて、他の酸素捕捉剤としてβ-ピネンを採用することは、当業者が容易に想到し得ることである
6.小括
以上検討のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載の発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
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