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特許拒絶査定不服審判

2022-007547

潤滑組成物のためのフッ素化ポリアクリレート消泡成分

審判番号
2022-007547
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-533604
請求日
2022年05月19日
審決日
2024年04月10日
公報発行日
2024年09月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ザ ルブリゾル コーポレイション
  • 【請求人代理人】山本 秀策
  • 【請求人代理人】森下 夏樹
審判長/審判官
  • 審判長 塩見 篤史
  • 審判官 安積 高靖
  • 審判官 関根 裕
分類
P18 .121-Z (C10M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-533604「潤滑組成物のためのフッ素化ポリアクリレート消泡成分」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月28日国際公開、WO2018/118163、令和 2年 1月23日国内公表、特表2020-502350〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)9月21日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2016年12月22日(以下「本件優先日」という。)(US)米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年 6月10日付け:拒絶理由通知書 令和3年 9月13日 :意見書及び手続補正書の提出 令和4年 1月17日付け:拒絶査定(謄本発送は、1月19日) 令和4年 5月19日 :審判請求と同時に手続補正書の提出 令和4年 6月24日 :手続補正書の提出(審判請求書の補正) 第2 令和4年5月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年5月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「潤滑組成物であって、 a)グループII油、グループII+油、グループIII油、グループIV油、グループV、またはその混合物からなる群から選択される潤滑粘度の油;ならびに b) (i)54wt%~最大で72wt%の、アクリル酸のC4~C8アルキルエステルを有するアクリレートモノマー; (ii)23wt%~最大で31wt%の、アクリル酸のC2~C3アルキルエステルを有するアクリレートコモノマー;および (iii)1.5wt%~最大で20wt%の、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、または2,2,3,4,4,4-ヘキサフルロブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択されるフッ素化(メタ)アクリレートモノマー を含むポリ(アクリレート)コポリマーを含む消泡成分 を含み、 前記消泡成分が少なくとも45,000ダルトンのMwを有し、 前記フッ素化(メタ)アクリレートモノマーのアルキル鎖が、1:1~1:1.8の炭素:フッ素比を有する、潤滑組成物。」 なお、「1,1,1,3,3,-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート」、「2,2,3,4,4,4-ヘキサフルロブチル(メタ)アクリレート」は、「1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート」、「2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート」の誤記と認める。 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和3年9月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「潤滑組成物であって、 a)グループII油、グループII+油、グループIII油、グループIV油、グループV、またはその混合物からなる群から選択される潤滑粘度の油;ならびに b) (i)50wt%~最大で90wt%の、アクリル酸のC4~C8アルキルエステルを有するアクリレートモノマー; (ii)10wt%~最大で35wt%の、アクリル酸のC2~C3アルキルエステルを有するアクリレートコモノマー;および (iii)1.5wt%~最大で20wt%の、フッ素化(メタ)アクリレートモノマー を含むポリ(アクリレート)コポリマーを含む消泡成分 を含み、 前記消泡成分が少なくとも45,000ダルトンのMwを有し、 前記フッ素化(メタ)アクリレートモノマーのアルキル鎖が、1:1~1:1.8の炭素:フッ素比を有する、潤滑組成物。」 2 本件補正の目的 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「(i)50wt%~最大で90wt%の、アクリル酸のC4~C8アルキルエステルを有するアクリレートモノマー」及び「(ii)10wt%~最大で35wt%の、アクリル酸のC2~C3アルキルエステルを有するアクリレートコモノマー」について、「(i)54wt%~最大で72wt%の、アクリル酸のC4~C8アルキルエステルを有するアクリレートモノマー」及び「(ii)23wt%~最大で31wt%の、アクリル酸のC2~C3アルキルエステルを有するアクリレートコモノマー」と含有量を限定するものであり、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「フッ素化(メタ)アクリレートモノマー」について、「2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、または2,2,3,4,4,4-ヘキサフルロブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択されるフッ素化(メタ)アクリレートモノマー」と成分を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 3 独立特許要件についての判断 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項及び引用発明 ア 原査定の拒絶の理由で引用され、本件優先日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許出願公開第2007/0254819号明細書(以下、「引用文献3」という。)には、次の記載がある。なお、各摘記事項の後に当審の仮訳を付した。 特許請求の範囲 「 [図:0001413680000001.jpg] [図:0001413680000002.jpg] 」 (1.耐発泡性組成物であって、炭化水素油と、前記炭化水素油中に分散されたアクリレートコポリマーを含み、前記アクリレートコポリマーは、重合された少なくとも1つのフッ素化(メタ)アクリレートモノマーを含み、前記少なくとも1つのフッ素化(メタ)アクリレートモノマー中の隣接する3個以下の炭素原子が、1個以上のフッ素置換基を担持している、耐発泡性組成物。 2.前記アクリレートコポリマー中の少なくとも1つのフッ素化(メタ)アクリレートモノマーは、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)-アクリレート、3,3,3-トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロイソプロピル(メタ)アクリレートと2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。 3.前記少なくとも1つのフッ素化(メタ)アクリレートモノマーは、少なくとも1種の非フッ素化オレフィン系不飽和モノマーと共重合され、前記少なくとも1種の非フッ素化オレフィン系不飽和モノマーは、アルキル基が炭素数1~18の直鎖状、分岐状又は環状であるアルキルアクリレート、アルキル基が炭素数1~18の直鎖状、分岐状又は環状であるアルキルメタクリレート、アルキル基が炭素数1~18の直鎖状、分岐状又は環状であるマレイン酸およびフマル酸のアルキルエステル、炭素数2~20の脂肪族カルボン酸のビニルエステル、アルキル基が炭素数1~18の直鎖状、分岐状又は環状であるアルキルビニルエーテル及びアルキルビニルケトン、スチレン及び置換スチレンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。 4.前記アクリレート系コポリマーにおいて、アルキル基が炭素数1~18の直鎖状、分岐状又は環状であるアルキルアクリレートの質量分率は少なくとも50%であることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。 5.前記アクリレートコポリマー中のフッ素の質量分率は、0.1%~5%であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。 6.フッ素化(メタ)アクリレートモノマーは2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。 7.前記少なくとも一種のアルキルアクリレートは、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。 8.アクリレートコポリマーの重量平均分子量は、20kg/mol~100kg/molであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。 9.炭化水素油との混合物中におけるアクリレートコポリマーの質量分率は、20mg/kg~500mg/kgであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。 10.アクリレートコポリマー中の前記少なくとも1つのフッ素化(メタ)アクリレートモノマーの質量分率は、0.1%~10%であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。) 「 [図:0001413680000003.jpg] 」 ([0001]本発明は、耐発泡性炭化水素油組成物に関し、より詳細には、このような油中の高分子消泡剤に関するものである。) 「 [図:0001413680000004.jpg] [図:0001413680000005.jpg] 」 ([0005]アクリレートコポリマーである消泡添加剤中のフッ素は、炭化水素油の発泡に対する耐性を有意に改善する。そのようなフッ素は、アクリレートコポリマーを構成するモノマー成分である少なくとも一つのフッ素化(メタ)アクリレートの存在により提供される。発泡を抑制するのに有効な、アクリレートコポリマー中のそのような結合されたフッ素の量は、アクリレートコポリマーが分散される炭化水素油の組成または配合によって変化する。アクリレートコポリマー中のフッ素の質量分率は、約30%までで、ほとんどの炭化水素油用の消泡剤として一般的には十分であり、約0.10%~約10%の質量分が好ましく、約0.50%~5%が最も好ましい。少なくとも1種のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーの量は、アクリレートコポリマー中の少なくとも1種のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーの質量分率が0.1%~10%であるように好ましくは選択される。) 「 [図:0001413680000006.jpg] 」 ([0011]アクリレートコポリマー消泡剤は、炭化水素溶媒中の溶液として炭化水素油に添加することが好ましい。アクリレートコポリマーの発泡抑制効果は、炭化水素油中の他の補助剤の存在によって実質的に影響されない。アクリレートコポリマーはごく僅かな量で油中に存在するので、極めて酸性又は極めて塩基性の補助剤の油中での使用は、消泡添加剤の性能上の効果に影響しない。本発明の消泡剤を含有する炭化水素油組成物は、長い期間に亘って貯蔵安定性を有し、使用条件で熱および圧力に供された場合も同様である。発泡抑制量の消泡アクリレートコポリマーを組み込むことにより実質的に耐発泡性を付与される炭化水素油は、内燃機関とモータとのための潤滑油、ディーゼル燃料油、潤滑剤および圧力伝達媒体、例えば、工業用潤滑剤、プロセス油、油圧作動油、タービン油、スピンドル油、軸受油、空気圧工具潤滑剤など、様々な粘度を有する合成油又は石油原料油である。これらは、全ての種類の合成または天然炭化水素、すなわちパラフィン系、ナフテン系、芳香族系、またはブレンドでもよい。) 「[0016]・・・ [図:0001413680000007.jpg] [図:0001413680000008.jpg] 」 ([0016]・・・ 実施例1 コポリマー中の2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートの質量分率が1%である消泡剤 [0017]この例は、トリフルオロエチルメタクリレートを含むラジカル溶液重合方法での製造を例示する。) 「 [図:0001413680000009.jpg] 」 ([0018]2000mlのガラスリアクタに、初めに酢酸エチル(102.7g)およびイソプロピルアルコール(25.7g)を充填した。内容物を約80℃に加熱した。(R)(当審注:(R)は丸囲いのRである。以下、同じ。)vazo-64(2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル,E.I.,DuPont de Nemours & Co.,製,1.15g)、酢酸エチル(20.5g)、イソプロピルアルコール(5.1g)、アクリル酸エチル(103.0g)、2-エチルヘキシルアクリレート(320.0g)、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(4.05g)の混合物を2時間にわたって反応器に徐々に添加した。第1の混合物を添加した後、システムは、設定温度で1時間撹拌下に維持した。第2の混合物、(R)vazo-64(4.02g)、酢酸エチル(39.8g)、イソプロピルアルコール(9.9g)、アクリル酸エチル(137.0g)、2-エチルヘキシルアクリレート(240.0g)、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(4.05g)を、次いで、2時間にわたって反応器に添加した。混合物をさらに1時間半反応させた。開始から溶媒、残留モノマーおよび他の副生成物を除去した。得られたポリマーは、次いで、65℃に冷却し、濾過した。無色の粘稠なポリマーは98.9%の収率で得られた。重量平均モル質量は71,800g/モルであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準として測定した。コポリマー中のフッ素の質量分率は、0.34%であった。) 「[0019]・・・ [図:0001413680000010.jpg] [図:0001413680000011.jpg] 」 ([0019] 実施例3 耐発泡性 [0020]耐発泡性を評価する試験方法は、ASTMD892-92を変形したものである。微細に分散された消泡剤を含有する炭化水素油サンプルに、(24.0±0.5)℃で(94±5)ml/分で5分間一定の速度で空気を吹き込み、次いで、静置する。オイルの上方に発生した泡の容積を測定し、完全に泡が崩壊するために必要とされる時間が測定される。この段階での性能は、シーケンス(“Seq”と略記する)下で記録した。Iは以下の表にある。この試験は、温度(94.0±0.5)℃で第2のサンプルで繰り返し、表中に”Seq II”として結果が示された。Seq.IIにおける泡が崩壊した後、同じサンプルを24℃に冷却し、”Seq I”のプロセスを繰り返した結果を”Seq III”として示す。Seq.III試験からの同サンプルは、(153.0±0.5)℃に加熱され、Seq Iのプロセスが、より高いエアフローである(200±5)ml/分で繰り返され、このよりシビアな高温試験の結果は”Seq IV”として示される。) 「 [図:0001413680000012.jpg] 」 ([0021]脂肪族炭化水素溶媒((R)Shellsol D40,,C9-11のパラフィン類及びナフテン類の混合物,溶液100g中のポリマー40g)中の実施例1の消泡剤の溶液2.5gを、さらなる溶媒に50gで希釈した。この希釈溶液中の消泡剤の質量分率はこの時点で2%(2g/100g)であり、この消泡剤溶液0.8gを試験油200gに添加した。この試験油混合物を3分間激しく振とうして、消泡剤溶液を油中に微細に分散させた。耐発泡性は、上記試験方法の様々なシーケンスの下、異なる炭化水素油組成物を用いて測定した。これらの炭化水素油組成物は、炭化水素油に対してこの試験油ブレンドを添加することにより調製した。使用した試験油は、消泡剤の添加がない、商用銘柄の工業用油、ATM(自動変速機)用流体、およびギアオイルに関する組成物であった。通常、このような油中の消泡剤(非フッ素化アクリレートコポリマーをベースとする従来の消泡剤)の質量分率は、約200mg/kg(”200ppm”)である。) 「 [図:0001413680000013.jpg] 」 ([0022]この試験で使用された炭化水素油は、消泡剤の通常の添加がない、市販の工業用油、自動変速機油、ギヤ油であった。本発明の消泡剤は、実施例1(”Ex.1”)のアクリレートコポリマーである。比較のため、同一質量分率のアクリレートコポリマーである実施例2を用いて類似の組成物を調製した。”Comp”は、Cytec Industries, Inc.から入手可能な従来の非フッ化ポリアクリレート消泡剤である(R)PC-1644を意味する。炭化水素油組成物中の消泡剤の質量分率wは、消泡剤の質量mAと炭化水素油組成物の質量をmOとの比として計算され、”ppm”に相当する”mg/kg”で測定される。測定される発泡体の体積Vは、ml(ミリリットル)で示され、崩壊時間tはs(秒)で示される。試験は、炭化水素油組成物中の消泡剤の質量分率(30mg/kgおよび50mg/kg)という、一般的に使用されている(200mg/kg)と比較して極めて低い質量分率で行われた。この低い質量分率を選択することの目的は、開発した物質と及び現在市販の消泡剤との違いを確認するためであった。) 「 [図:0001413680000014.jpg] (表1 工業用油 消泡剤 シーケンスI シーケンスII シーケンスIII) 「 [図:0001413680000015.jpg] 」 (表2 自動変速機油 消泡剤 シーケンスI シーケンスII シーケンスIII シーケンスIV) 「 [図:0001413680000016.jpg] 」 (表3 ギア油 消泡剤 シーケンスI シーケンスII シーケンスIII シーケンスIV) 「 [図:0001413680000017.jpg] 」 ([0025]上記のデータは、種々の炭化水素油中において、約0.34%の質量分率の化学的に組み込まれたフッ素を有する本発明のアクリレートコポリマー消泡剤が、実施例2のフッ素化アクリレートコポリマー(化学的に組み込まれた約0.64%の質量分率のフッ素を有する)及び純粋な(すなわち非フッ素化)ポリアクリレート消泡剤と比較して、有意な耐発泡性を有する結果を示す。純粋なポリアクリレート消泡剤と比較して、フッ素系消泡剤(実施例1および2)は、高い温度効率ならびに一般的な消泡特性を大きく向上させることが示された。フッ素置換基を有し3個以上の隣接する炭素原子を有する嵩高いフッ素含有部分を有する実施例2の消泡剤と比較して、実施例1のアクリレートコポリマー消泡剤は、少なくとも1個のフッ素置換基を有する隣接炭素原子3個以下を有する短鎖フッ素化モノマーを有する。予期せぬことに、このようなアクリレートコポリマーは、炭化水素油中に含まれることで、前述した長鎖のフッ素化材料を含む消泡剤と比較し、良好な高温消泡性能及び改善された保存寿命安定性を示す。) イ 引用文献3の[0016]~[0018]に示された実施例1の記載を参酌して、[0019]~[0022]及び[表1]に示された実施例3の工業用油を用いた例に着目すると、引用文献3には、以下の発明が記載されているものと認められる。 (引用発明) 「市販の工業用油に、実施例1のアクリレートコポリマーである消泡剤を添加した工業用油組成物であって、 実施例1のアクリレートコポリマーは、2000mlのガラスリアクタに、初めに酢酸エチル(102.7g)およびイソプロピルアルコール(25.7g)を充填し、内容物を約80℃に加熱し、第1の混合物として、(R)vazo-64(2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル,E.I.,DuPont de Nemours & Co.,製,1.15g)、酢酸エチル(20.5g)、イソプロピルアルコール(5.1g)、アクリル酸エチル(103.0g)、2-エチルヘキシルアクリレート(320.0g)、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(4.05g)の混合物を2時間にわたって反応器に徐々に添加した後、設定温度で1時間撹拌下に維持し、第2の混合物として、(R)vazo-64(4.02g)、酢酸エチル(39.8g)、イソプロピルアルコール(9.9g)、アクリル酸エチル(137.0g)、2-エチルヘキシルアクリレート(240.0g)、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(4.05g)を、2時間にわたって反応器に添加し、混合物をさらに1時間半反応させ、開始から溶媒、残留モノマーおよび他の副生成物を除去し、得られたポリマーを、65℃に冷却し、濾過し、98.9%の収率で得た、重量平均モル質量は71,800g/モルであり、コポリマー中のフッ素の質量分率は0.34%であり、無色の粘稠なポリマーであり、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートを共重合体中に1質量%含む消泡剤である、工業用油組成物。」 (3)対比・判断 ア 本件補正発明と引用発明との対比・判断 (ア)本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「市販の工業用油」は、工業用の潤滑油として用いられるものであり、本件補正発明の「潤滑粘度の油」に相当する。 引用発明の「2-エチルヘキシルアクリレート」は、本件補正発明の「アクリル酸のC4~C8アルキルエステルを有するアクリレートモノマー」に相当する。 引用発明の「アクリル酸エチル」は、本件補正発明の「アクリル酸のC2~C3アルキルエステルを有するアクリレートコモノマー」に相当する。 引用発明の「2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート」は、本件補正発明の「2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート」、「フッ素化(メタ)アクリレートモノマー」に相当する。 引用発明の「2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートを共重合体中に1質量%含む消泡剤」は、本件補正発明の「ポリ(アクリレート)コポリマーを含む消泡成分」に相当する。 引用発明の「2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートを共重合体中に1質量%含む消泡剤」は、「アクリル酸エチル」240g(103.0g+137.0g)、「2-エチルヘキシルアクリレート」560g(320.0g+240.0g)、「2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート」8.1g(4.05g+4.05g)を反応させて得られたものであるから、共重合体中に「アクリル酸エチル」を29.7wt%(240/808.1)、「2-エチルヘキシルアクリレート」を69.3wt%(560/808.1)、「2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート」を1.0wt%(8.1/808.1)含むものといえるため、本件補正発明の「(i)54wt%~最大で72wt%の、アクリル酸のC4~C8アルキルエステルを有するアクリレートモノマー」、「(ii)23wt%~最大で31wt%の、アクリル酸のC2~C3アルキルエステルを有するアクリレートコモノマー」を充足する。 引用発明の「2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートを共重合体中に1質量%含む消泡剤」は、「重量平均モル質量は71,800g/モル」であるから、本件補正発明の「前記消泡成分が少なくとも45,000ダルトンのMwを有し」を充足する。 引用発明の「2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート」は、アルキル鎖の炭素:フッ素比が2:3(1:1.5)であるから、本件補正発明の「前記フッ素化(メタ)アクリレートモノマーのアルキル鎖が、1:1~1:1.8の炭素:フッ素比を有する」を充足する。 引用発明の「工業用油組成物」は、本件補正発明の「潤滑組成物」に相当する。 (イ)以上より、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「潤滑組成物であって、 a)潤滑粘度の油;ならびに b) (i)54wt%~最大で72wt%の、アクリル酸のC4~C8アルキルエステルを有するアクリレートモノマー; (ii)23wt%~最大で31wt%の、アクリル酸のC2~C3アルキルエステルを有するアクリレートコモノマー;および (iii)2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、または2,2,3,4,4,4-ヘキサフルロブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択されるフッ素化(メタ)アクリレートモノマー を含むポリ(アクリレート)コポリマーを含む消泡成分 を含み、 前記消泡成分が少なくとも45,000ダルトンのMwを有し、 前記フッ素化(メタ)アクリレートモノマーのアルキル鎖が、1:1~1:1.8の炭素:フッ素比を有する、潤滑組成物。」 (相違点1) 潤滑粘度の油について、本件補正発明は、「グループII油、グループII+油、グループIII油、グループIV油、グループV、またはその混合物からなる群から選択される」と特定するのに対し、引用発明は、そのような特定がされない点。 (相違点2) ポリ(アクリレート)コポリマー中のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーについて、本件補正発明は、「1.5wt%~最大で20wt%」含むのに対し、引用発明は、1重量%含むものである点。 (ウ)判断 (相違点1について) 油の種類について、引用文献3の[0011]には、「炭化水素油は、内燃機関とモータとのための潤滑油、ディーゼル燃料油、潤滑剤および圧力伝達媒体、例えば、工業用潤滑剤、プロセス油、油圧作動油、タービン油、スピンドル油、軸受油、空気圧工具潤滑剤など、様々な粘度を有する合成油又は石油原料油である。これらは、全ての種類の合成または天然炭化水素、すなわちパラフィン系、ナフテン系、芳香族系、またはブレンドでもよい。」と記載されており、様々な炭化水素油を用いることができるものといえる。そして、工業用油などに用いる潤滑剤基油は、グループI~Vの5つのグループに分類され、いずれのグループの基油も一般的に用いられる周知なものである。そうすると、引用発明において、工業用油として、潤滑剤基油として周知であるグループII~Vのいずれかの基油を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本件補正発明において、「グループII油、グループII+油、グループIII油、グループIV油、グループV、またはその混合物からなる群から選択される潤滑粘度の油」を用いることにより顕著な効果を奏するとは認められない。 (相違点2について) フッ素含有モノマーの比率について、引用文献3の[0005]には、「アクリレートコポリマーである消泡添加剤中のフッ素は、炭化水素油の発泡に対する耐性を有意に改善する。」、「発泡を抑制するのに有効な、アクリレートコポリマー中のそのような結合されたフッ素の量は、アクリレートコポリマーが分散される炭化水素油の組成または配合によって変化する。」と記載され、「少なくとも1種のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーの量は、アクリレートコポリマー中の少なくとも1種のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーの質量分率が0.1%~10%であるように好ましくは選択される。」と記載されている。そうすると、引用発明において、発泡に対する耐性をより改善するため、炭化水素油の組成や配合に応じて、アクリレートコポリマー中の2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートの質量分率を0.1%~10%の範囲内で調整し、1.5~10%とすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願明細書には、【0027】に「コポリマー消泡成分中での、アクリレートモノマーとアクリレートコモノマーとフッ素化(メタ)アクリレートモノマーとのモル比は、消泡性能に直接の影響を有することが分かった。」と記載され、【0281】~【0299】の実施例において、フッ素化(メタ)アクリレートモノマーを含む場合に、含まない場合と比較して消泡効果が高いこと、フッ素化(メタ)アクリレートモノマーを15wt%含む場合(表6、7の流体F、表8、9の流体D、表10~12の流体H)に、5wt%(表6、7の流体E)又は7wt%(表8、9の流体C、表10~12の流体G)含む場合よりも消泡効果が高いことが記載されているが、フッ素化(メタ)アクリレートモノマーの含有量を「1.5wt%~最大で20wt%」の範囲内とすることにより、当該範囲外である場合と比較して顕著な効果を奏することが記載されているとはいえない。また、引用文献3の[0005]に「アクリレートコポリマーである消泡添加剤中のフッ素は、炭化水素油の発泡に対する耐性を有意に改善する。」と記載されていることから、フッ素化(メタ)アクリレートモノマーの含有量を多くすることによりフッ素の含有量が増え、消泡効果が向上することは、当業者が予測し得る効果であるともいえる。よって、本件補正発明が、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートを1wt%含むアクリレートコポリマーを用いる引用発明と比較して、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するとは認められない。 イ 審判請求人の主張について 審判請求人は、令和4年6月24日に提出された、審判請求書の補正を行う手続補正書において、「本願特許請求の範囲の発明によって解決される技術的課題は、非フッ素化ポリ(アクリレート)消泡成分と比較して、シリコーンベースのフォームインプレースガスケット材料の存在下で消泡性能を向上させることです。」と説明し、「引用文献は、この技術的課題やその解決策を教示も示唆もしていません。したがって、本願請求項1に定義されたポリマー成分が、シリコーンFIPG材料の存在下で許容可能な消泡特性を提供することは、当業者にとって自明ではなく、容易に予想されなかったことです。」として、「従いまして、本願発明は、その技術的思想において引用文献の発明と顕著に異なるものであり、引用文献から容易に想到されたものではありません。」と主張している。 しかしながら、本件補正発明は、シリコーンベースのフォームインプレースガスケット材料の存在下で用いるものと特定されているわけではないため、当該効果は特許請求の範囲の記載に基づくものとはいえず、参酌できない。 また仮に当該効果を参酌するとしても、引用発明は、フッ素化ポリアクリレートを消泡剤として用いるものであるから、シリコーンベースのフォームインプレースガスケット材料の存在下でも、本件補正発明と同様に消泡性能を有するものといえる。よって、本件補正発明が、「非フッ素化ポリ(アクリレート)消泡成分と比較して、シリコーンベースのフォームインプレースガスケット材料の存在下で消泡性能を向上させる」効果を奏するとしても、当該効果は、引用発明と比較した有利な効果であるとはいえない。 したがって、審判請求人の前記主張は採用できない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 本件補正についてのむすび 本件補正は、前記3で検討したとおり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和4年5月19日にされた手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年9月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~16に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2又は3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 記 引用文献2:特表2001-520303号公報 引用文献3:米国特許出願公開第2007/0254819 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3の記載事項は、上記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]3で検討した本件補正発明の「(i)54wt%~最大で72wt%の、アクリル酸のC4~C8アルキルエステルを有するアクリレートモノマー」及び「(ii)23wt%~最大で31wt%の、アクリル酸のC2~C3アルキルエステルを有するアクリレートコモノマー」について、「(i)50wt%~最大で90wt%の、アクリル酸のC4~C8アルキルエステルを有するアクリレートモノマー」及び「(ii)10wt%~最大で35wt%の、アクリル酸のC2~C3アルキルエステルを有するアクリレートコモノマー」とし、本件補正発明の「2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、または2,2,3,4,4,4-ヘキサフルロブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択されるフッ素化(メタ)アクリレートモノマー」について、「フッ素化(メタ)アクリレートモノマー」とするものである。 そうすると、本願発明と引用発明とを対比した場合、前記第2[理由]3(3)ア(イ)の相違点1及び2の点で相違するが、前記相違点1及び2は、当業者が容易になし得たものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-007547

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