特許拒絶査定不服審判
2023-013602
圧縮機、冷凍装置、および冷凍機油
- 審判番号
- 2023-013602
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-161799外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年08月10日
- 審決日
- 2024年12月19日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
- 分類
- P18 .121-WZ (C10M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-161799「圧縮機、冷凍装置、および冷凍機油」拒絶査定不服審判事件〔令和5年4月11日出願公開、特開2023-51240〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本件に係る特許出願(以下「本願」という。)は、令和3年9月30日の出願であって、その後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年10月12日付けで拒絶理由の通知
令和5年2月22日に意見書及び手続補正書の提出
令和5年5月12日付けで拒絶査定
令和5年8月10日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の提出
令和5年11月2日に上申書の提出
令和6年8月2日付けで当審における拒絶理由の通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)
令和6年10月7日に意見書の提出
2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、令和5年8月10日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
冷凍機油が貯留されるケーシング(50)と、
前記ケーシング内に収容され、冷媒を圧縮する圧縮機構(20)と、
前記ケーシング内に収容され、エステル結合を有する重合体からなる絶縁部材と、
を備え、
前記冷媒は、炭化水素を主成分とし、
前記冷媒の飽和水分量は、0.15重量%未満であり、
前記冷凍機油の飽和水分量は、1.8重量%以上であり、
前記冷凍機油は、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールとポリオールエステルとの混合油、ポリアルキレングリコールとポリビニルエーテルとの混合油、ポリアルキレングリコールとアルキルベンゼンとの混合油、および、ポリアルキレングリコールと鉱物油との混合油、からなる群から選択される、
圧縮機(11)。」
3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知で当審が通知した拒絶理由のうち、本願の請求項1に係る発明に対して通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1~3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2019/102532号
引用文献2:特開2000-274360号公報
引用文献3:特開2000-129250号公報
4 引用文献に記載された事項及び引用発明
(1)引用文献1について
ア 引用文献1の記載事項及び図示事項
引用文献1には、次の記載事項及び図示事項がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
(ア)「[0010] 実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る圧縮機の断面図である。図1に基づき、圧縮機100が密閉型スクロール圧縮機である場合を例に説明する。圧縮機100は、冷媒回路80(図2参照)に接続され、冷媒回路80に冷媒を循環させる。圧縮機100は、冷媒を吸入して圧縮し、高温高圧の状態にして吐出させる。ここで、冷媒としては、プロパン(R290)単体もしくはR290を含む混合冷媒が用いられる。」
(イ)「[0011] 圧縮機100は、軸方向が上下方向(矢印Z方向)となるように設置された縦置き型の圧縮機である。圧縮機100は、外郭となる密閉容器1と、冷媒を圧縮する圧縮機構部2と、圧縮機構部2を駆動させる駆動機構部3と、駆動機構部3に電気的に接続された密封端子5とを備えている。」
(ウ)「[0013] また、密閉容器1の下部には油溜り13aが設けられており、圧縮機構部2を潤滑及び冷却する冷凍機油が貯留されている。ここで、冷凍機油としてはR290冷媒に適したポリアルキレングリコール(PAG)油が用いられる。冷凍機油の一部は冷媒とともに冷媒回路80を循環する。また圧縮機100内に貯留された冷凍機油には冷媒の一部が溶解している。」
(エ)「[0016] 圧縮機構部2は、密閉容器1内の上部に設置されており、下方に形成された低圧空間S1から冷媒を吸入して圧縮し、上方に形成された高圧空間S2に吐出する。圧縮機構部2は、固定スクロール21と、固定スクロール21の下側に配置された揺動スクロール22と、密閉容器1に固定されたフレーム23とを備えている。」
(オ)「[0022] 駆動機構部3は、密閉容器1内における圧縮機構部2の下部に配置されており、圧縮機構部2の揺動スクロール22を駆動する。駆動機構部3は、少なくとも、密閉容器1内部に固定された円筒状のステータ31と、ステータ31の内周面側に回転可能に設置されたロータ32と、ロータ32の中心に固定され、回転軸となるクランクシャフト33とを備えている。」
(カ)「[0029] 図2は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の冷媒回路の概略図である。冷凍サイクル装置101は、冷媒回路80を備えた、例えば冷凍機、空気調和機又は給湯機等である。図2に示されるように、冷凍サイクル装置101は、上述した圧縮機100と、凝縮器81と、ドライヤ82と、減圧装置83と、蒸発器84とを有しており、これらが冷媒配管85により接続されて冷媒回路80を形成している。以下、冷凍サイクル装置101が冷凍機である場合を例に説明する。蒸発器84は冷凍室に設置されており、圧縮機100と凝縮器81とドライヤ82と減圧装置83とは室外に設置されている。」
(キ)「[0046] また、PAG油の飽和水分量は20000(ppm)以下である。このようにPAG油の飽和水分量に制限を設けることで、PAG油を圧縮機100及び冷凍サイクル装置101に実装した場合の不具合の発生を低減することができる。具体的には、水分による絶縁性の低下を抑制することができる。また、冷凍サイクル装置101において低温時の配管の詰まりを防止することができる。」
(ク)「[図1]
[図:0001419818000001.jpg]
」
イ 上記アから認められること
上記アから、引用文献1には、次の事項が認められる。
(ア)上記ア(イ)及び(ク)から、密閉容器1と、圧縮機構部2と、駆動機構部3と、を備えた圧縮機100が認められる。
(イ)上記ア(ウ)の「密閉容器1の下部には油溜り13aが設けられており、圧縮機構部2を潤滑及び冷却する冷凍機油が貯留されている。」との記載及び上記ア(ク)から、密閉容器1には冷凍機油が貯留されると認められる。
(ウ)上記ア(エ)の「圧縮機構部2は、密閉容器1内の上部に設置されており、下方に形成された低圧空間S1から冷媒を吸入して圧縮し」との記載及び上記ア(ク)から、圧縮機構部2は、密閉容器1内の上部に設置され、冷媒を圧縮すると認められる。
(エ)上記ア(イ)の「圧縮機構部2を駆動させる駆動機構部3」なる記載、上記ア(オ)の「駆動機構部3は、密閉容器1内における圧縮機構部2の下部に配置されており、圧縮機構部2の揺動スクロール22を駆動する。駆動機構部3は、少なくとも、密閉容器1内部に固定された円筒状のステータ31と、ステータ31の内周面側に回転可能に設置されたロータ32と、ロータ32の中心に固定され、回転軸となるクランクシャフト33とを備えている。」なる記載及び上記ア(ク)から、駆動機構部3は、密閉容器1内における圧縮機構部2の下部に配置され、密閉容器1内部に固定された円筒状のステータ31を備え、圧縮機構部2を駆動させるものと認められる。
(オ)上記ア(ウ)の「冷凍機油としてはR290冷媒に適したポリアルキレングリコール(PAG)油が用いられる。」なる記載、上記ア(キ)の「PAG油の飽和水分量は20000(ppm)以下である。」なる記載から、冷凍機油の飽和水分量は、20000(ppm)以下であり、冷凍機油は、ポリアルキレングリコール(PAG)油が用いられると認められる。
ウ 引用発明
上記ア及びイによると、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「冷凍機油が貯留される密閉容器1と、
前記密閉容器1内の上部に設置され、冷媒を圧縮する圧縮機構部2と、
前記密閉容器1内における圧縮機構部2の下部に配置され、密閉容器1内部に固定された円筒状のステータ31を備え、圧縮機構部2を駆動させる駆動機構部3と、
を備え、
前記冷媒は、プロパン(R290)単体もしくはR290を含む混合冷媒が用いられ、
前記冷凍機油の飽和水分量は、20000(ppm)以下であり、
前記冷凍機油は、ポリアルキレングリコール(PAG)油が用いられる、
圧縮機100。」
(2)引用文献2について
ア 引用文献2の記載事項
引用文献2には、次の記載事項がある。
(ア)「【0008】請求項2の発明は、炭化水素系化合物の冷媒が、R170(エタン)、R290(プロパン)、R600(n-ブタン)、R600a(I-ブタン)、R1150(エチレン)、R1270(プロピレン)の群から選択される1種類以上の冷媒からなることを特徴とする請求項1記載の密閉形電動圧縮機である。」
(イ)「【0035】また、電動機3のステータ5については、その図示しないティース部に絶縁ボビンとして直鎖型のPPS樹脂(ポリフェニレンスルフィド)を嵌め込むか、またはこのティース部をPPS樹脂によりモールド成型して、このポリエステルイミド線を施してステータに構成する。」
(ウ)「【0037】さらに、上記電気絶縁ボビンとしては、PA樹脂(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)により形成してもよい。」
(エ)「【0045】図3は本発明の第6の実施形態に係る密閉形電動圧縮機の要部横断面図である。この密閉形電動圧縮機は、上記ロータリまたはレシプロタイプの密閉形電動圧縮機1A,1BにおけるHC冷媒用の耐冷媒組成物として、電動機3の電気絶縁紙40に、溶融重合型のPETフィルムを使用して、空気調和機に組み付けた点に特徴がある。なお、図3中、符号41はステータコア、42は電線である。」
イ 引用文献2の技術事項
上記アから、引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2の技術事項A」及び「引用文献2の技術事項B」という。)が記載されていると認められる。
(ア)引用文献2の技術事項A
「電動機3のステータ5の電気絶縁ボビンとしては、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)により形成してもよいこと。」
(イ)引用文献2の技術事項B
「電動機3の電気絶縁紙40に、溶融重合型のPETフィルムを使用すること。」
(3)引用文献3について
ア 引用文献3の記載事項
引用文献3には、次の記載事項がある。
(ア)「【0051】本発明の請求項17に係る冷媒圧縮機において、前記電線に配設される絶縁紙は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)およびポリイミド(PI)からなる群より選択される少なくとも1種の材質からなることを特徴としている。」
(イ)「【0072】冷媒圧縮機のステータ2に用いられる電線、絶縁紙、しばり糸を図4に示す。この電線にはポリエステルイミドを下層にポリアミドを上層にしたダブルコートエナメル線を用いた。なお、電線としてはこの他にポリエステルイミド、ポリアミドイミドエステル、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリイミド線を、炭化水素系冷媒であるので、ホルマール、アクリル、ポリエステル線も使用可能である。また、これら表面に自己接着層を持たせた電線、自己潤滑性を持たせた電線等を使用することができる。さらにステータのコイル部分を樹脂モールドすることもできる。
【0073】層間および対地間絶縁材として使用される絶縁紙およびしばり糸の材料としてはポリエチレンテレフタレートと用いた。なお、この他にポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリサルポン、ポリエーテエーテルケトン、ポリアミドイミド、およびポリイミドを使用することができる。」
イ 引用文献3の技術事項
上記アから、引用文献3には、以下の事項(以下、「引用文献3の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「冷媒圧縮機のステータ2の層間絶縁材として用いられる絶縁紙、しばり糸の材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用すること。」
5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「冷凍機油」、「密閉容器1」、「圧縮機構部2」は、それぞれ、前者の「冷凍機油」、「ケーシング(50)」、「圧縮機構(20)」に相当する。
後者の「冷凍機油が貯留される密閉容器1」は、前者の「冷凍機油が貯留されるケーシング(50)」に相当する。
後者の「圧縮機構部2」は、「前記密閉容器1内の上部に設置され」るのであり、「前記密閉容器1内」に収容されているといえるから、後者の「前記密閉容器1内の上部に設置され、冷媒を圧縮する圧縮機構部2」は、前者の「前記ケーシング内に収容され、冷媒を圧縮する圧縮機構(20)」に相当する。
後者の「プロパン(R290)単体もしくはR290を含む混合冷媒」は、前者の「炭化水素を主成分」とする「冷媒」に相当する。
後者の「前記冷凍機油の飽和水分量は、20000(ppm)以下」は、「20000(ppm)以下」が2重量%以下を意味することが自明であり、2.0重量%~1.8重量%の範囲で、前者の1.8重量%以上の数値範囲と重複するから、前者の「前記冷凍機油の飽和水分量は、1.8重量%以上」に相当する。
後者の「前記冷凍機油は、ポリアルキレングリコール(PAG)油が用いられる」ことは、前者の「前記冷凍機油は、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールとポリオールエステルとの混合油、ポリアルキレングリコールとポリビニルエーテルとの混合油、ポリアルキレングリコールとアルキルベンゼンとの混合油、および、ポリアルキレングリコールと鉱物油との混合油、からなる群から選択される」ことに相当する。
以上より、本願発明と引用発明とは、以下の一致点を有し、以下の相違点について相違する。
[一致点]
「冷凍機油が貯留されるケーシング(50)と、
前記ケーシング内に収容され、冷媒を圧縮する圧縮機構(20)と、
を備え、
前記冷媒は、炭化水素を主成分とし、
前記冷凍機油の飽和水分量は、1.8重量%以上であり、
前記冷凍機油は、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールとポリオールエステルとの混合油、ポリアルキレングリコールとポリビニルエーテルとの混合油、ポリアルキレングリコールとアルキルベンゼンとの混合油、および、ポリアルキレングリコールと鉱物油との混合油、からなる群から選択される、
圧縮機(11)。」
[相違点1]
前者は、「前記ケーシング内に収容され、エステル結合を有する重合体からなる絶縁部材」を備えるのに対し、
後者は、当該事項を備えるか不明である点。
[相違点2]
前者は、「前記冷媒の飽和水分量は、0.15重量%未満であ」るのに対し、
後者は、当該事項を備えるか不明である点。
6 判断
(1)相違点1の検討
電動圧縮機において、モータのステータ等に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエステル結合を有する重合体からなる絶縁部材を用いることは、本願の出願前に周知の事項である(以下、「周知技術」という。例えば、引用文献2記載事項A、引用文献2記載事項B、引用文献3記載事項を参照。)。
そして、電動圧縮機において、モータのステータ等を絶縁することは一般的な課題であるから、駆動機構部3を備える引用発明の圧縮機100においても、当該課題は内在するといえる。
そうすると、引用発明の駆動機構部3のステータ31等に、周知技術を適用して、エステル結合を有する重合体からなる絶縁部材を用いることにより、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点2の検討
引用発明で冷媒として用いられるプロパン(R290)は、本願明細書の段落【0022】において飽和水分量が0.15重量%未満である炭化水素系冷媒の一例として示されたものであるし、本願明細書の【表1】で飽和水分量が0.13重量%であることが示されているように、0.15重量%未満の飽和水分量を有することが一般的に知られているもの(必要であれば、国際公開第00/60021号の明細書第9頁第13~14行に、炭化水素冷媒の飽和水分量が0℃において数ppm以下(10-4×数重量%以下)であることが記載されている。)であるから、引用発明のプロパン(R290)も、飽和水分量が0.15重量%未満である蓋然性が高いといえる。
してみると、相違点2は、実質的には相違点ではない。
(3)効果について
そして、本願発明を全体としてみても、その奏する効果は、引用発明及び周知技術から、当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。
(4)請求人の主張について
請求人の主張について以下に検討する。
請求人は、令和6年10月7日に提出された意見書の3.(1)(1-1)において、「引用文献1に記載の冷凍機油の飽和水分量が、本願発明1の冷凍機油の飽和水分量と、数値範囲が重なっているとしても、引用文献1には、そもそも、本願発明1のエステル系絶縁部材のような絶縁部材の使用について記載も示唆もされていません。すなわち、引用文献1に開示の発明は、本願発明1の構成要件Cを有していません。さらに、引用文献1に開示の発明には本願発明1の構成要件Cが開示されていないため、エステル系絶縁部材を用いる場合において、加水分解の影響を受けやすいという課題が認識されることはなく、加水分解の影響を抑制できる冷凍機油の飽和水分量の最適な範囲が見出されることもありません。すなわち、引用文献1に開示の発明において、本願発明1の技術的思想は想定されていません。」(第3頁第8~16行)と主張する。
しかし、冷凍サイクル装置が備える圧縮機において、エステル結合を有する重合体からなる絶縁材料が加水分解することは、本願の出願前に周知の課題(必要であれば、特開2015-17730号公報(特に、段落【0003】及び【0004】)、特開2017-133827号公報(特に、段落【0020】)、特開2018-119530号公報(特に、段落【0017】及び【0046】)及び特開2018-119531号公報(特に、段落【0006】)を参照。)であるから、引用発明の駆動機構部3のステータ31等に、周知技術を適用したものにおいても、当該絶縁材料の加水分解を抑制すべく、圧縮機内の水分を減少させるように、冷媒や冷凍機油を含めて最適化することは、当業者が認識し得ることと認められる。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
(5)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-013602