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特許拒絶査定不服審判

2019-012917

洗剤組成物

審判番号
2019-012917
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-556542外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年09月27日
審決日
2020年06月09日
公報発行日
2020年12月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C11D) / P18 .56 -Z (C11D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2017-556542「洗剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月 3日国際公開、WO2016/176241、平成30年 8月 2日国内公表、特表2018-521149〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 20項目
【理 由】

1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)4月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年(平成27年)4月29日 欧州特許庁、同年10月15日 欧州特許庁)を国際出願日とする特許出願であって、平成30年11月7日付けで拒絶理由が通知され、平成31年2月6日に意見書及び補正書が提出され、令和元年6月4日付けで拒絶査定がされ(謄本の送達は同年6月11日)、これに対し、令和元年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に、手続補正がされたものである。

2 令和元年9月27日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

令和元年9月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

(1)本件補正について

本件補正は、本件補正により補正される前の特許請求の範囲の請求項1について、下記アを、下記イと補正するものを含む。

ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1

「【請求項1】 ヌクレアーゼ酵素と、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤系と、を含み、アニオン性界面活性剤の非イオン性界面活性剤に対する重量比が1.5:1~1:10であり、 前記ヌクレアーゼ酵素が、E.C.クラスE.C.3.1.21.x(式中、x=1、2、3、4、5、6、7、8、9)、3.1.22.y(式中、y=1、2、4、5)、E.C.3.1.30.z(式中、z=1、2)若しくはE.C.3.1.31.1のいずれか、又はこれらの混合物から選択される、洗浄組成物。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1

「【請求項1】 ヌクレアーゼ酵素と、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤系と、を含み、アニオン性界面活性剤の非イオン性界面活性剤に対する重量比が1.5:1~1:10であり、 前記ヌクレアーゼ酵素が、E.C.クラスE.C.3.1.30.2である、洗浄組成物。」

(2)新規事項の有無及び補正の目的要件

本件補正は、本件補正前の請求項1において、「ヌクレアーゼ酵素」について、複数の選択肢の中から「E.C.3.1.30.z(式中、z=2)」のみを選択したものであって、当該ヌクレアーゼ酵素は願書に最初に添付した明細書の【0029】等に例示されていることから、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であって、本件補正後の請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)を、進歩性(特許法第29条第2項)の観点から検討することとする。

(3)本件補正発明

本件補正発明は、上記(1)イの請求項1に記載されたとおりのものと認める。

(4)引用文献の記載(原文の下線は省略した。)

引用文献(特開昭63-105098号公報、平成30年11月7日付けの拒絶理由の引用文献1)

ア 「[産業上の利用分野]
本発明は、酵素を配合した一般家庭用および業務用の液体状あるいはゲル状の洗剤、詳しく言えば衣類の洗濯、食器洗浄、家具あるいは住居の洗浄用等のいわゆるハウスホールド洗剤、シャンプーおよび身体洗浄用洗剤に関する。
[従来の技術およびその問題点]
洗剤に酵素を添加することは、洗浄率の向上等、洗浄に対し好ましい結果を与えるものであり、種々の酵素が使用あるいは提案されている。
例えば、プロテアーゼは人体汚垢に含まれるタンパク質成分を加水分解することにより洗浄率を向上する(小野打 喬、バイオインダストリー 3,181,(1986)等)。リパーゼは表面活性剤では除去しにくい人体脂質中のトリグリセリドをジグリセリドあるいはモノグリセリドに変えることにより洗浄率を向上する(M.Minagawa等,J.Am.Oil Chem.,Soc.,62 1053-1058(1985)等)。アミラーゼは食品の汚れ等に含まれるデンプン貿を加水分解して汚れを除去し易くし、またセルラーゼはドロ汚れを除去する際に有効であり、木綿布の洗浄仕上りの色を良くする(特開昭59-1598号、同57-108199号)。リゾチームは溶菌作用による生菌数の減少および身体洗浄時の消炎作用を期待して添加される。」(1頁左下欄19行~2頁左上欄3行)
イ 「[発明の概要]
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、通常使用されている液体あるいはゲル状の洗剤中では不溶性であるが、洗剤と共に水に混合した場合には容易に溶解するポリビニルアルコールにより、含水ポリヒドロオキシ化合物に溶解あるいは分散した状態の酵素を被覆してマイクロカプセルとし、このマイクロカプセルを洗剤に配合した場合に酵素活性が長期間安定に保持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は酵素をポリビニルアルコールで被覆したマイクロカプセルとし、このマイクロカプセルを液体状あるいはゲル状の洗剤に均一分散してなる洗剤組成物である。」(2頁右上欄17行~左下欄11行)
ウ 「界面活性剤
本発明の洗剤組成物においては、従来、酵素を失活させるため酵素含有液体洗剤では利用が制限されていたアニオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤をも含む、一般の洗剤用界面活性剤を広く使用することができる。
例えば、アニオン界面活性剤としては、・・・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(アルキル:C9~C17,EOP=1~20)(当審注:Pはオーバーライン。以下、単に、「EOP」と記載する。)(AES)・・・等が挙げられ、
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル:C5~C17,EOP=4~20)(AE)・・・等が挙げられ、・・・が挙げられる。」(4頁右下欄7行~5頁左上欄20行)
エ 「洗剤組成物の組成
本発明による洗剤の基本的な組成は下記のとおりである。
酵素含有カプゼル    0.01~10%(重量%)
界面活性剤          3~70%
水              5~70%
配合する酵素含有カプセルは1種類に限定されない。従来、液体洗剤のような水の存在する系で数種の酵素を混合することは困難であったが、本発明によれば、例えば、プロアテーゼ、アミラーゼ等を各々別個にマイクロカプセル化して、複数種のマイクロカプセルを同時に配合しても保存安定性の良好な状態に維持することができる。」(5頁右上欄1行~17行)
オ 「実施例1
特開昭58-134990号に記載のBacillus SP.FERM BP-93を培養し、力価105nkat/mgのプロテアーゼ(API-21)原末を得た(力価の測定は特開昭58-134990号に記載の方法に従って行なった。)。
このプロテアーゼを下記の混合物を含む溶液に調製した。
プロテアーゼ(API-21)原末      70g
酢酸カルシウム                8g
プロピレングリコール           480g
ポリビニルアルコール
(平均重合度 2,000, 鹸化率95%) 55g
蒸溜水                  387g
この溶液をフィルターで濾過後、ホウ酸飽和水溶液に細いノズルから滴下してマイクロカプセルを形成させた。このマイクロカプセルを濾過により分離し、水25%を含有するプロピレングリコール中に保管した。」(5頁左下欄9行~右下欄6行)
カ 「実施例2
豚の膵臓より分離した市販リパーゼ(天野製薬,パンクレアチンTA,リパーゼカ価5,000 U/g)、Bacillus subtilisを培養して得られるアミラーゼ(大和化成,クライスターゼ)M20,力価220,000 U/g)およびBacillus subtilisを培養して得られるプロテアーゼ(大和化成,プロチンAS,力価600,000 PU/g)を用いて下記の組成の溶液A、B、Cを作成した。
重量%
組成            A    B     C
続きを表示(全24行)
リパーゼ           5    -     -
アミラーゼ          -    5     -
プロテアーゼ         -    -     8
酢酸カルシウム      0.7    0.9   0.5
プロピレングリコール    45    4.5  50
ポリビニルアルコール     6    5     6
(平均重合度1、500,鹸化率97%)
蒸溜水         43.3   44.1  35.5
次に、溶液A、B、Cを各々50%エタノールを含むホウ酸飽和水溶液に細いノズルより滴下してマイクロカプセルを形成させ、実施例1の場合と同様に処理して水25%を含有するプロピレングリコール中に保管した。
次いで、上記3種のマイクロカプセルを配合した下記組成の液体洗剤組成物を調製した。
組成物の組成                 重量%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(C14~15,EOP=5)             10
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C13~15,EOP=12)                   25
ヤシ脂肪酸ナトリウム塩           5
カルボキシメチルセルロース         1
リパーゼマイクロカプセル-プロピレン分散液(平均リパーゼ力価,100U/ml)              3
アミラーゼマイクロカプセル-プロピレン分散液(平均アミラーゼ力価,3,300U/ml)          3
プロテアーゼマイクロカプセル-プロピレン分散液(平均プロテアーゼ力価,1,800 nkat/ml)   10
ジエチレングリコール            7
蒸溜水                  36」(6頁左上欄19行~左下欄19行)
キ 「[発明の効果]
本発明は、酵素の安定化溶液をマイクロカプセル化して液体あるいはゲル状の洗剤に配合した洗剤組成物を提供したものであり、本発明によれば、
(1)洗剤中では不溶性で、水には可溶性のポリビニルアルコールで酵素を被覆しているので、洗剤の保存時には酵素は安定化状態に維持されること、
(2)水の存在下で酵素を失活させる傾向のある界面活性剤およびその他の洗剤用ビルダーと、洗剤保存時には酵素がじかに接触しないため、従来の酵素配合液体洗剤に比べて酵素の保存安定性が格段に向上すること、
(3)酵素を失活させるため、酵素の洗浄力を加味できなかったカチオン界面活性剤あるいはアニオン界面活性剤の場合にも適用できること、
(4)液体洗剤のように水の存在下では困難であった複数種の酵素の混合が、別個にマイクロカプセル化した酵素を利用することにより可能となったこと等の優れた効果が得られる。」(8頁右下欄5行~9頁左上欄3行)

(5)引用文献に記載された発明(引用発明)

引用文献には、実施例2((4)カ)の3種のマイクロカプセルを配合した液体洗剤組成物について、

「ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(C14~15,EOP=5) 10重量%、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C13~15,EOP=12)        25重量%、
ヤシ脂肪酸ナトリウム塩         5重量%、
カルボキシメチルセルロース       1重量%、
リパーゼマイクロカプセル-プロピレン分散液(平均リパーゼ力価,100U/ml)            3重量%、
アミラーゼマイクロカプセル-プロピレン分散液(平均アミラーゼ力価,3,300U/ml)        3重量%、
プロテアーゼマイクロカプセル-プロピレン分散液(平均プロテアーゼ力価,1,800 nkat/ml) 10重量%、
ジエチレングリコール          7重量%、及び、
蒸溜水                 36重量%を、
配合した液体洗剤組成物」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(6)対比・判断

ア 対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(C14~15,EOP=5)」は、アニオン界面活性剤((4)ウ)であるから、本件補正発明の「アニオン性界面活性剤」に相当する。

また、引用発明の「ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C13?15,EOP=12)」は、非イオン界面活性剤((4)ウ)であるから、本件補正発明の「非イオン性界面活性剤」に相当する。

そして、引用発明の「ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(C14~15,EOP=5)」と「ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C13~15,EOP=12)」の重量比10:25(=1:2.5)は、本件発明の「アニオン性界面活性剤の非イオン性界面活性剤に対する重量比が1.5:1-1:10」で規定される範囲に含まれる。

また、本件補正発明の「ヌクレアーゼ酵素」と、引用発明の「リパーゼマイクロカプセル-プロピレン分散液(平均リパーゼ力価,100U/ml)」に含まれる「リパーゼ」、「アミラーゼマイクロカプセル-プロピレン分散液(平均アミラーゼ力価,3,300U/ml)」に含まれる「アミラーゼ」、「プロテアーゼマイクロカプセル-プロピレン分散液(平均プロテアーゼ力価,1,800 nkat/ml)」に含まれる「プロテアーゼ」とは、酵素である点で共通する。

そして、引用発明の「液体洗剤組成物」は、本件補正発明の「洗浄組成物」に相当する。

そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「酵素と、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤系と、を含み、アニオン性界面活性剤の非イオン性界面活性剤に対する重量比が1.5:1~1:10である、洗浄組成物。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]

酵素が、本件補正発明は、「ヌクレアーゼ酵素」の「E.C.クラスE.C.3.1.30.2」であるのに対し、引用発明は、「リパーゼ」、「アミラーゼ」及び「プロテアーゼ」である点。

イ 判断

ここで、相違点について検討する。

引用文献には、「洗剤に酵素を添加することは、洗浄率の向上等、洗浄に対し好ましい結果を与えるものであり、種々の酵素が使用あるいは提案されている。」((4)ア)ことが記載され、引用発明において、種々の酵素が用いられることが示唆されている。

一方、「ヌクレアーゼ酵素」の「E.C.クラスE.C.3.1.30.2」は、本願出願前に周知であり、洗剤の酵素として用いられることも周知である(必要であれば、米国特許出願公開第2012/0266329号明細書の「[0790] The invention provides detergent compositions comprising one or more polypeptides of the invention (e.g., enzymes as described in Tables 1,2, and 3, e.g., having cellulase, endoglucanase, cellobiohydrolase, mannanase and/ or beta glucosidase activity) and methods of making and using these compositions. (当審仮訳:この発明は、この発明の一つ以上のポリペプチドを含む洗剤組成物(たとえば、セルラーゼ、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、マンナナーゼ及び/又はベータ-グルコシダーゼ活性を有する表1、2及び3に記載される酵素)及びそれらの組成物を製造し、使用する方法を提供する。)」という記載及び[0238](47頁)の表2(Table2)に例示された「3.1.30.2 Serratia marcescens nuclease」という記載を参照されたい。)

そして、引用発明において用いられる酵素が「リパーゼ」、「アミラーゼ」及び「プロテアーゼ」に限定されるものであるということは記載されていない。また、引用発明において用いられる酵素として、「E.C.クラスE.C.3.1.30.2」を用いることを阻害する要因があるという技術常識も見当たらない。

そうすると、引用発明において用いられる酵素として、「リパーゼ」、「アミラーゼ」及び「プロテアーゼ」に加えて、周知の「ヌクレアーゼ酵素」の「E.C.クラスE.C.3.1.30.2」をさらに用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 本件補正発明の効果について

本件明細書の【0029】には、「クラスE.C.3.1.30.zの酵素は、DNA及びRNAの両方に作用して、5’-ホスホモノエステルを遊離させるので、好ましい場合がある。クラスE.C.3.1.31.2の好適な例は、米国特許出願公開第2012/0135498(A)号、例えば、その配列番号3に記載されている。このような酵素は、c-LECTAからDENARASE(登録商標)酵素として市販されている。」という記載はあるものの、「クラスE.C.3.1.30.2」の酵素は、DNA及びRNAの両方に作用して、5’-ホスホモノエステルを遊離させることは、当該酵素の機能として周知であり、周知技術に基づいて、当業者が容易に予測し得るものであるから、本件補正発明において、ヌクレアーゼ酵素として「クラスE.C.3.1.30.2」を用いたことにより、格別顕著な作用効果を奏するものであるとはいえない。

また、同【0041】には、「界面活性剤系は、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含み、アニオン性界面活性剤の非イオン性界面活性剤に対する重量比は、1.5:1~1:10、好ましくは1.2:1~1:5、より好ましくは1:1~1:4である。」という記載はあるものの、本願明細書には、「クラスE.C.3.1.30.2」の酵素を「アニオン性界面活性剤の非イオン性界面活性剤に対する重量比は、1.5:1~1:10」のものに用いたことによる効果及びその作用機序、並びに、「クラスE.C.3.1.30.2」の酵素を用いた実施例についての記載は見いだせないことから、本願明細書において、本件補正発明が、引用発明と比較して格別顕著な作用効果を奏するものであることが示されているとは認めることができない。

エ まとめ

以上のことから、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 請求人の主張について

請求人は、平成31年2月6日付け意見書において、実験成績証明書を提出し、アニオン性界面活性剤の非イオン性界面活性剤に対する重量比が1.5:1~1:10である場合に、ヌクレアーゼ酵素の内の一つであるE.C.3.1.30.2を使用したものは、顕著なDNA加水分解性を示している旨を主張している。

しかしながら、当該実験成績証明書には、アニオン性界面活性剤として、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)及びAES(アルキルエーテルスルホン酸ナトリウム)、非イオン性界面活性剤として、平均7モルのエトキシ化を有する直鎖アルコールエトキシレートを用いた実験であることが記載されているところ、これらの界面活性剤のアルキル鎖長といった詳細な組成は不明であり、仮に、それらが明らかになったとしても、当該実験結果は、「特定のLAS及び特定のAES」の「平均7モルのエトキシ化を有する特定の直鎖アルコールエトキシレート」に対する重量比が特定の範囲において、特定のDNAを含む溶液に対して「E.C.3.1.30.2」のDNA減少率が高いことを示すにとどまり、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤によっては、同様な界面活性作用を示すものであっても、アルキル鎖長によって重量が異なるものとなることから、当該実験結果から、本件補正発明が包含するような、あらゆる種類のアニオン性界面活性剤のあらゆる種類の非イオン性界面活性剤に対する重量比が1.5:1~1:10であるものに対し、E.C.3.1.30.2が顕著なDNA加水分解性を示すことまでを理解することができない。

したがって、請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基くものとはいえず、採用することができない。

(7)むすび

以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について

(1)本願発明

令和元年9月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成31年2月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記2(1)アの請求項1に記載されたとおりのものと認められる。

(2)原査定の拒絶の理由

本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3の記載に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

記

引用文献1:特開昭63-105098号公報
引用文献2:国際公開第2014/087011号
引用文献3:特表2002-513808号公報

そして、拒絶査定の備考欄には、次のように記載されている。

「洗濯洗剤に使用されるヌクレアーゼ酵素として本願所定のE.C.クラス番号のものが知られているし(引用文献2の第8頁第35行-第9頁第24行、第32頁第22-34行参照)、一方、引用文献1にも、当該組成物中に配合される酵素として各種使用しうることが示されているから(引用文献1の第3頁右上欄第4行-右下欄第1行参照)、上記出願人の主張を容れることはできず、引用文献1の当該組成物に配合されるヌクレアーゼ酵素として本願所定のようなものを採用することは、当業者であれば容易になし得ることである。」

すなわち、拒絶査定は、引用文献1の当該組成物に配合されるヌクレアーゼ酵素として周知の本願所定のようなものを採用することは、当業者であれば容易になし得ることである、というものである。

(3)引用文献

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項並びに引用文献1に記載された発明は、上記2(4)及び同(5)に記載したとおりである。

(4)対比・判断

本件補正発明が上記2に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、本願発明は補正発明を含むものであるから、本件補正発明と同様の理由により、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって結論のとおり審決する。

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2019-012917

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