2019-012449
モサプリドとラベプラゾールの複合製剤
- 審判番号
- 2019-012449
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-567212外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年09月19日
- 審決日
- 2022年03月09日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コリア ユナイテッド ファーマ. インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】小林 浩
- 【請求人代理人】大森 規雄
- 【請求人代理人】藤田 尚
- 【請求人代理人】鈴木 康仁
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
1 手続の経緯
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本願は、2016年(平成28年)6月27日(パリ条約による優先権主張 2015年6月26日 2015年11月24日 いずれも(KR)韓国)を国際出願日とする特許出願であり、その主な手続の経緯は、次のとおりである。
平成30年10月26日付け 拒絶理由通知書
平成31年 2月 5日 手続補正書及び意見書の提出
令和 1年 5月 9日付け 拒絶査定
同年 9月19日 手続補正書及び審判請求書の提出
令和 2年 3月 6日 上申書の提出
同年12月23日付け 拒絶理由通知書
令和 3年 4月 5日 手続補正書及び意見書の提出
同年 5月 6日付け 拒絶理由通知書
同年11月11日 手続補正書及び意見書の提出
2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明は、令和3年11月11日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】モサプリド(mosapride)またはその薬学的に許容可能な塩を第1有効成分として含む第1組成物、及びラベプラゾール(rabeprazole)またはその薬学的に許容可能な塩を第2有効成分として含む第2組成物を含む、複合製剤であって、前記複合製剤が、第2組成物を内核として有し、第1組成物が第2組成物の外層を囲む有核錠構造を有し、前記第2組成物が、腸溶性コーティング錠剤の形態であり、前記第1組成物が、第1有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤を含む顆粒形態の速放部分、ならびに第1有効成分、賦形剤、崩壊剤、放出制御基剤、結合剤及び滑沢剤を含む顆粒形態の徐放部分を含み、前記放出制御基剤が、80,000cps~120,000cpsの高粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース:2,000cps~20,000cpsの低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースの重量比が2.5:1~1:1の混合物であり、大韓民国薬典の溶出試験法第2法(パドル法)に従って、37℃、pH4.0で溶出試験液に含まれた第1有効成分が、0.5時間後に第1有効成分の総重量の少なくとも34.4%、1時間後に第1有効成分の総重量の40~45%、8時間後に第1有効成分の総重量の70~75%、24時間後に第1有効成分の総重量の90%以上が溶出される溶出プロファイルを満たす、複合製剤。」
3 拒絶理由の概要
令和3年5月6日付けで通知した拒絶理由のうち、請求項1に係る発明についての進歩性に関する拒絶理由の概略は、以下のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
4 引用文献の記載事項等
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引用文献1、5及び6の記載事項等を以下に示す。下線は、一部を除き当審によるものであり、引用文献1及び5については訳文を示す。
(1)引用文献1(国際公開第2006/011159号)の記載事項
(摘記1ア)
「特許請求の範囲1.ラベプラゾール、場合によって1種又は複数のプロキネティック剤、及び1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む、安定化された医薬組成物であって、ラベプラゾールの錠剤配合物に対してラベプラゾールの増強されたバイオアベイラビリティを提供する前記組成物。…3.ラベプラゾールは、ラベプラゾールナトリウム塩の形態である、請求項1に記載の医薬組成物4.ラベプラゾールナトリウムは、腸溶性コーティングされたペレットの形態である、請求項1に記載の医薬組成物。5.プロキネティック剤は、徐放性(sustained release)形態である、請求項1に記載の医薬組成物…7.プロキネティック剤がシサプリド、ダゾプリド、モサプリド、…又はその製薬上許容されるその塩からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物8.モサプリドの好ましい塩は、クエン酸モサプリド2水塩である、請求項7に記載の医薬組成物。」(特許請求の範囲の請求項1~8)
(摘記1イ)
「このような観点から、モサプリドの徐放性製剤は、非常に有用であろう。従来モサプリドに優る徐放性モサプリドの潜在的な利点は次のとおりである。・より頻度の少ない投薬のために、患者の服用指示遵守が改善する。・この製剤で持続した治療的血漿中レベルは、24時間維持される。」(5頁下から3行~6頁4行)
(摘記1ウ)
「実施例-1ラベプラゾール及びモサプリドSRカプセルの調製…腸溶性コーティングされたラベプラゾールペレットの調製続きを表示(全16行)…モサプリドクエン酸塩徐放性錠剤の調製本発明のモサプリドクエン酸塩を含有する、モサプリドクエン酸塩の徐放性錠剤における成分は以下に示され、湿式造粒法によって上記錠剤は調製される。A)IRフラクションを調製するための処方表7(省略)…B)徐放性(Sustained Release)フラクションを調製するための処方表8(省略)…フラクションA及びB(それぞれIR及びSR)の二層からなるこのように得られた最終ブレンドを、10*5mmのカプセル型のパンチを使用した錠剤圧縮機で、225mgの二層錠に圧縮した。…ラベプラゾールの最終ペレットとモサプリド錠剤を硬質ゼラチンカプセルに充填した。」(20頁10行~28頁末行)
(2)引用文献5(国際公開第2014/142616号)の記載事項(なお、参考までに、日本語対応ファミリー「特表2016-512235号公報」の対応箇所の段落番号も末尾に示す。)
(摘記5ア)
「[請求項1]有効成分としてモサプリド又はその塩を含有する、1日1回経口投与の徐放性又は制御放出型製剤であって、前記製剤は、胃腸管における滞留時間が18時間~24時間であり、胃腸管を通過する際に、胃腸から20~50%のモサプリド又はその塩を溶出させ、腸管から50~80%のモサプリド又はその塩を溶出させるものであり、有効成分、充填剤、崩解剤及び添加剤を含む速放層と、続きを表示(全11行)有効成分、充填剤、崩解剤、放出制御基剤及び添加剤を含む徐放層を含み、前記放出制御基剤は、80,000cps~120,000cpsの高粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース:2,000cps~20,000cpsの低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースの重量比が10~1:1で混合使用し、大韓民国薬典溶出試験法第2法(パドル法)に基づいて37℃、pH4.0、6.8、1.2の溶出液及び水において下記溶出プロファイル:1)pH4.0、pH1.2の溶出液及び水の条件で含まれた有効成分の溶出率が、1時間後に25~45%、8時間後に60~80%、24時間後に85%以上である2)pH6.8の溶出液の条件で含まれた有効成分の溶出率が、16時間後に45%以下であるを満たすことを特徴とする、モサプリド経口投与製剤。[請求項2]高粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース:低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースの重量比が2.6~1:1であることを特徴とする、請求項1に記載のモサプリド含有経口投与徐放錠製剤。」
(摘記5イ)
「[7]モサプリドは、半減期が1.3~2時間と短いため、薬物が体内に吸収された後、急速に消失して薬効持続時間が短く、一日に数回服用しなければならないという問題を有している。モサプリドは、現在、錠剤の形で開発されて市販中にあり、モサプリド5mg含有のものが1回につき1錠、1日3回投与されている。したがって、服用回数を減らすことで、患者の服薬順応度を高め、薬物の血中濃度を持続的に維持させて薬効を持続的に維持させる必要がある。[8]一般の徐放錠の場合、初期に有効血中濃度に達するのに長時間がかかるという欠点がある。また、経口投与後、迅速な薬理活性を発現させると、有効な薬理活性を24時間持続させるのが困難である。[9]発明の概要発明が解決しようとする課題[10]本発明の目的は、経口投与後、迅速な薬理活性を発現させながら24時間有効な薬理活性を持続させる、総重量が200mg以下、好ましくは150mg~160mgの小さいサイズのモサプリドを含有する、1日1回経口投与徐放錠製剤を提供することにある。」(【0004】~【0007】)
(摘記5ウ)
「[24]本発明に係るモサプリド経口投与製剤は、モサプリド又はその塩(例えば、クエン酸塩)、充填剤、崩解剤、添加剤(例えば、結合剤)を含む速放層と、モサプリド又はその塩、充填剤、崩解剤、放出制御基剤、及び添加剤(例えば、結合剤)を含む徐放層を含み、二層錠又は多重錠であってもよく、必要に応じて滑沢剤を含むことができる。」(【0011】)
(摘記5エ)
「[26]一方、本発明は、モサプリド又はその塩を含有する経口投与製剤の迅速な薬理活性の発現と24時間薬理活性の持続を同時に満たすために、薬物を速やかに放出させる速放層と徐々に放出させる徐放層からなる二層型錠剤の製造の際に、徐放層内の放出制御基剤として高粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を混用しながら、これらの重量比を調節し、pHが相違する各胃腸管内の部位での溶出率及び/又は胃腸管での滞留時間を制御することを特徴とする。[27]本発明者らは、pH4における溶出率の実験を通じて、徐放化基剤として低粘度HPMCのみを使用すれば、モサプリド又はその塩が6時間経過する前に100%溶出してしまい、徐放化基剤として高粘度HPMCのみ使用すると、モサプリド又はその塩が24時間後にも100%溶出しないことを見いだした。本発明者らは、これに基づいて、低粘度HPMCと高粘度HPMCを一定の割合で混合し、~pH6.8である小腸及び/又は大腸でもモサプリド又はその塩が溶出されるように、小腸以前までの滞留時間及び溶出率だけでなく、小腸以後の滞留時間及び溶出率を調節することにより、24時間、有効な薬理活性を持続させる1日1回経口投与徐放錠製剤を製造した(図9及び図10)。…[30]したがって、本発明に係るモサプリド含有経口投与徐放錠製剤は、高粘度HPMC及び低粘度HPMCの混合比を調節し、好ましくは胃腸管を通過する際に、胃で20~50%のモサプリド又はその塩を溶出させ、腸管で50~80%のモサプリド又はその塩を溶出させることができる。…[32]…高粘度HPMC:低粘度HPMCの重量比が…、好ましくは2.6~1:1で混合して使用することができる。」(【0013】~【0018】)
(摘記5オ)
「[54]一具体例として、本発明に係るモサプリド経口投与製剤は、徐放層と速放層を混合、混練及び顆粒化工程によりそれぞれ製造した後、打錠して製造することができる。まず、徐放層には徐放層の総重量を基準として、薬理学的有効成分としてモサプリド又はその塩13~15重量%、乳糖15~30重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース25~35重量%、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース15~30重量%を混合した後、予め適量のエタノールに溶解したポビドン3~10重量%を結合液として加えて混練及び顆粒化工程を行い、キャビネット乾燥機で50~60℃の温度で乾燥減量(LOD)2%以下に乾燥整粒させる。その後、適量の滑沢剤類を混合して製造する。速放層には速放層の総重量を基準として、モサプリド又はその塩6~8重量%、乳糖15~30重量%、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース25~40重量%を混合した後、予め適量のエタノールに溶解したポビドン3~10重量%を結合液として加え、混練及び顆粒化工程を行い、キャビネット乾燥機で50~60℃の温度でLOD2%以下に乾燥整粒させる。その後、適量の滑沢剤類を混合して製造する。上記で製造した混合物中、徐放層を一次打錠した後、その上に上記速放層を充填して二次打錠を行うことにより、多層錠剤を製造することができる。このとき、必ずしも徐放層を打錠した後に速放層の打錠が行われなければならないわけではなく、速放層の打錠が優先的に行われ、これに徐放層の顆粒を充填して打錠することも可能である。また、速放層及び徐放層をそれぞれ順次又は逆順で充填して単回打錠することも可能である。」(【0033】)
(摘記5カ)
「[63]発明の効果本発明により製造された速放層と徐放層の二層からなる経口投与用錠剤は、薬学的に許容可能な徐放化基剤を用いることによって、薬物の溶出速度を制御放出することができ、従来の技術と生物学的活性は同一でありながら、かつ服用時には迅速に有効治療血中濃度に到達し、即時に胃腸管運動障害の改善効果を示すだけでなく、かなりの長時間にわたり活性成分及び有効活性代謝体が血漿内で持続的に一定の濃度を維持する。したがって、既存の製剤に比べて投薬回数を減らしながらも、製剤のサイズを小型化して服用の利便性を増進させることにより、結果として患者に対する薬物適応性を高めて投薬順応性を高めることができ、非常に有用である。」(【0039】)
(摘記5キ)
「[78]実施例1~7及び比較例1~6[79]速放層の製造:表1及び表2に記載された成分の含有量に応じて、モサプリドクエン酸塩と微結晶セルロース、乳糖水和物、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)を混合した後、予めエタノールに溶かしたポビドンK-30液を加えて混練及び顆粒化し、キャビネット乾燥機で50~60℃の温度で30~40分乾燥させた(LOD2%以下)。整粒した後、残りの滑沢剤を混合した。[80]徐放層の製造:表1及び表2に記載された成分の含有量に応じて、モサプリドクエン酸塩と微結晶セルロース、乳糖水和物、低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース(4000cps、HPMC2910)、高粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース(100,000cps、HPMC2208)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)を混合した後、予めエタノールに溶かしたポビドンK-30液を加えて混練及び顆粒化し、キャビネット乾燥機で50~60℃の温度で30~40分乾燥させた(LOD2%以下)。整粒した後、残りの滑沢剤を混合した。[81]二層錠の製造:上記製造した速放層と徐放層の混合物を用いて二層錠を打錠し、オパドライ-OY-C-7000A(カラコン社の商品名)コーティング基剤で通常の方法によりフィルムコーティングし、1錠中のモサプリドとして15mg含有されたモサプリドクエン酸塩徐放錠を製造した。続きを表示(全29行)[82]表1[図:0001386439000001.jpg]…[86]実験例1[87]市販されているガスモチン錠5mg(モサプリド5mg、大熊製薬)製剤と上記比較例1で製造した速放層のみからなる錠剤に対し、pH4.0の溶出液における溶出様相を比較し、この時、大韓民国薬典一般試験法第2法に従って、パドルを50rpm/分で回転させたイン・ビトロ溶出試験を行った。その結果は、図1に示した。速放層のみからなる比較例1の場合、ガスモチン錠と類似して30分以内で100%の薬物が溶出された。…[89]一方、徐放層に高粘度又は低粘度の放出制御基剤(徐放化基剤)の添加有無及び添加量(重量)による製剤の溶出様相の変化を確認するために、表2に記載された成分の含有量に応じて、比較例2~6のモサプリドクエン酸塩錠剤を製造した。ただし、錠剤の重量は充填剤である微結晶セルロース賦形剤で補正した。上記比較例2~6の錠剤に対してpH4.0で溶出様相を確認し、その結果は図2~3に示した。…[91]考察[92]比較例2~4のように、低粘度の徐放化基剤(HPMC2910)のみを用いて製造した錠剤の溶出率は、6時間が経過する以前に薬物が100%溶出して徐放化(sustain-release)を示さなかった(図2)。一方、比較例5及び6のように高粘度の徐放化基剤(HPMC2208)のみを用いて製造した錠剤の溶出率は、24時間後も薬物が100%溶出されず、長い徐放化を示した(図3)。[93]一方、図4(当審注:下に挿入)には、実施例1~7のように低粘度と高粘度の徐放化基剤を一定の割合で混合して製造した錠剤の溶出率が示されている。実施例5~7の場合、低粘度の徐放化基剤の使用量がさらに多ければ多いほど初期溶出が速く、薬物が100%溶出される時間が速くなって、1日1回服用の効果を期待するのは難しい。【図4】[図:0001386439000002.jpg][94]実施例1及び4の場合、高粘度の徐放化基剤が低粘度の徐放化基剤よりも多い場合であり、4時間が経過しても薬が60%又はそれ以下で溶出される。実施例3の場合、溶出率の初期には速放層の薬物含量と類似して、約30%前後で溶出され、20時間前後まで一定して徐放化された溶出率と共に20時間~24時間付近で薬物が100%溶出された。従って、理想的な最小有効血中濃度と最高血中濃度を期待することができ、1日1回の服用を目標とした徐放化製剤として好ましい。…[101]-多様なpH溶出液の条件における溶出率テスト[102]検体:実施例4のモサプリドクエン酸塩徐放錠製剤[103]溶出試験液:大韓民国薬局方崩壊試験法(pH1.2、4.0、6.8の溶出液、水)900ml、[104]試験温度:37±0.5℃[105]溶出方法:大韓薬局方溶出試験第2法(パドル法)、1分当たり50回転…[107]イン・ビトロ(In-vitro)で溶出率テストを行い、pHの変化によるモサプリドクエン酸塩徐放錠製剤の溶出様相を確認し、その結果を表4と図5~図8に示した。[108][表4][図:0001386439000003.jpg]」(【0042】~【0046】)
(3)引用文献6(特表平11-501949号公報)の記載事項等
ア 引用文献6には、次のとおり記載されている。
(摘記6ア)
「【特許請求の範囲】1.剤形が医薬活性成分少なくとも2種を含有する固定単位剤形の形態であり、プロトンポンプ抑制剤が腸溶性コーティング層により保護されるような、プロキネティック剤少なくとも1種および場合により医薬的に許容される賦形剤とともに酸感受性プロトンポンプ抑制剤を含有する経口用医薬剤形。2.剤形が錠剤である請求項1記載の剤形。…21.錠剤が、プロキネティック剤を含有する層により包囲されたプロトンポンプ抑制剤を含有する腸溶性コーティング層保有錠剤であるような請求項2記載の錠剤剤形。…25.プロトンポンプ抑制剤を錠剤賦形剤と混合して予備圧縮して錠剤とし、その後、錠剤を腸溶性コーティング層で被覆し、場合により腸溶性コーティング層の前に分離層を適用し、そしてその後、医薬的に許容される賦形剤と混合したプロキネティック剤を腸溶性コーティング層保有錠剤上にプレスコートすることを特徴とする、腸溶性コーティング層保有錠剤中にプロトンポンプ抑制剤およびプロキネティック剤1種以上を含有する固定剤形の製造方法。」
(摘記6イ)
「発明の分野本発明は胃食道逆流に関る疾患の予防および治療において特に使用するための新しい経口用医薬調製物に関する。本発明の調製物は、新しい固定単位(fixed unit)剤形、特に錠剤中にプロキネティック剤1種以上と組合わせてプロトンポンプ抑制剤のような胃酸抑制剤を含有する。更に、本発明はこのような調製物の製造方法、および、そのような調製物の医療、特に胃食道逆流障害および他の胃腸疾患の治療における使用に関する。」(6頁4~10行)
(摘記6ウ)
「本発明の要旨本発明は経口固定単位剤形、すなわちマルチプルユニット(multiple unit)錠剤剤形、多層錠剤または1種以上の医薬活性化合物を充填したカプセル剤を提供する。剤形中に存在する活性化合物は、好ましくは腸溶性コーティング層で保護された酸感受性プロトンポンプ抑制剤およびプロキネティック剤1種以上である。これらの新しい剤形は用法を簡素化し患者の服薬指示遵守を改善する。」(9頁4~9行)
(摘記6エ)
「製剤のプロキネティック部分は即時放出性、徐放性または延長放出性の製剤としてよい。」(11頁11~12行)
(摘記6オ)
「活性物質胃酸抑制剤は、好ましくは酸感受性プロトンポンプ抑制剤である。このようなプロトンポンプ抑制剤は、例えば下記式I:…の化合物である。式Iのプロトンポンプ抑制剤の例を以下に示す。[図:0001386439000004.jpg]…[図:0001386439000005.jpg]」(11頁13行~14頁上から2番目の式)
(摘記6カ)
「広範な種類のプロキネティック化合物を本発明の固定単位剤形中の適当なプロトンポンプ抑制剤とともに組合わせて使用してよい。このようなプロキネティック剤としては、例えば、シサプリド、モサプリド、メトクロプラミドおよびドムペリドンが包含される。活性プロキネティック剤は標準的な形態であるか、または塩、水和物、エステル等として使用してよい。2種以上の上記薬剤の組合せも使用してよい。新しい固定剤形のための好ましいプロキネティック剤はモサプリドまたはシサプリドである。」(15頁下から7~1行)
(摘記6キ)
「腸溶性コーティング層保有錠剤をプロキネティック化合物を含有する顆粒とともにプレスコートする。」(21頁5~6行)
(摘記6ク)
「実施例 2オメプラゾールマグネシウムおよびモサプリドを含有するマルチプルユニット剤形(バッチサイズ500錠)モサプリド顆粒続きを表示(全12行)クエン酸モサプリド2水塩 46.8g乳糖1水和物 350gコーンスターチ 184gヒドロキシプロピルセルロースLF 25g精製水 225gヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC) 152gステアリン酸マグネシウム 7.4g」
(摘記6ケ)
「実施例 6オメプラゾールマグネシウムおよびモサプリドのプレスコート錠剤(バッチサイズ10000錠)オメプラゾール錠剤Mg-オメプラゾール 112.5g続きを表示(全33行)マンニトール 287g微結晶セルロース 94gナトリウム澱粉グリコレート 30gヒドロキシプロピルメチルセルロース 30gタルク 25g微結晶セルロース 31gナトリウムステアリルフマレート 12.5g精製水 200g分離層用溶液(10kg錠剤用)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 300g過酸化水素(30%) 0.003g精製水 2700g腸溶性コーティング層用溶液(10kg錠剤用)メタクリル酸共重合体分散液(30%) 2450gポリエチレングリコール400 80g二酸化チタンカラー 100g精製水 1960gプレスコート錠剤Mg-オメプラゾール錠剤 10000錠モサプリド顆粒(実施例2の製法と組成) 3800g錠剤コーティング溶液(10kg錠剤用)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 250gポリエチレングリコール6000 62.5g二酸化チタン 62.5g精製水 2125g過酸化水素 0.75gオメプラゾールマグネシウム、マンニトール、微結晶セルロース、ナトリウム澱粉グリコレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを乾式混合した。粉末混合物を精製水で湿潤させた。顆粒を乾燥し、適当なミル中1mmのふるいを通してミリングした。プロトンポンプ抑制剤を含有する調製済み顆粒をタルク、微結晶セルロースおよびナトリウムステアリルフマレートと混合し、5mmのパンチを有するロータリー錠剤製造器を用いて圧縮成形して錠剤とした。得られた錠剤を分離層および腸溶性コーティング層でコーティング積層した。次にこの錠剤を11mmのパンチを有するプレスコート器を用いてモサプリド顆粒でプレスコートした。錠剤を従来の錠剤フィルムコーティング層で被覆した。」(33頁下から2行~35頁11行)
(摘記6コ)
「[図:0001386439000006.jpg]」(42頁)
「図3は、腸溶性コーティング層(8)により包囲された錠剤コア(5)中で医薬的に許容される賦形剤との混合物中にプロトンポンプ抑制剤を、そしてその上に医薬的に許容される賦形剤との混合物(6)中にプロキネティックの層を有するような腸溶性コーティング層保有錠剤の断面図である。錠剤はフィルムコーティング層(7)で被覆される。」(9頁19~23行)
イ 上記アの記載事項によれば、引用文献6には、胃食道逆流障害の治療のための医薬として用いられ、用法を簡素化し患者の服用指示遵守を改善する、腸溶性コーティング層で保護されたプロトンポンプ抑制剤、及び、プロキネティック剤を活性成分とする、多層錠剤が開示されている(摘記6ア~6ウ)。
また、プロトンポンプ抑制剤としてオメプラゾールやパリプラゾール等が例示され(摘記6オ)、プロキネティック剤としてモサプリド等が例示されている(摘記6カ)。
そして、多層錠剤について、図3にその断面図が記載され(摘記6コ)、実施例6には、腸溶性コーティングしたオメプラゾール錠剤を、モサプリド顆粒でプレスコートした多層錠剤が記載されている(摘記6ケ)。実施例6の多層錠剤は、図3の断面図からみて、腸溶性コーティングしたオメプラゾール錠剤をモサプリド顆粒が包囲していると解される。
そうすると、引用文献6には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「腸溶性コーティングしたオメプラゾール錠剤を、モサプリド顆粒で包囲しプレスコートした多層錠剤。」
5 当審の判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「モサプリド顆粒」は、本願発明の「モサプリド(mosapride)またはその薬学的に許容可能な塩を第1有効成分として含む第1組成物」であり、「前記第1組成物が」「顆粒形態」であるものに相当する。
また、引用発明の「腸溶性コーティングしたオメプラゾール錠剤」と、本願発明の「ラベプラゾール(rabeprazole)またはその薬学的に許容可能な塩を第2有効成分として含む」「第2組成物が、腸溶性コーティング錠剤の形態」とは、「オメプラゾール」と「ラベプラゾール」は共に「プロトンポンプ抑制剤」であるから(上記4(3)イ)、「プロトンポンプ抑制剤を第2有効成分として含む」「第2組成物が、腸溶性コーティング錠剤の形態」である点で共通する。
そして、引用発明の「腸溶性コーティングしたオメプラゾール錠剤を、モサプリド顆粒で包囲しプレスコートした多層錠剤」は、本願発明の「第2組成物を内核として有し、第1組成物が第2組成物の外層を囲む有核錠構造を有」する「複合製剤」という構造を有するものである。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「モサプリド(mosapride)またはその薬学的に許容可能な塩を第1有効成分として含む第1組成物、及びプロトンポンプ抑制剤またはその薬学的に許容可能な塩を第2有効成分として含む第2組成物を含む、複合製剤であって、前記複合製剤が、第2組成物を内核として有し、第1組成物が第2組成物の外層を囲む有核錠構造を有し、前記第2組成物が、腸溶性コーティング錠剤の形態であり、前記第1組成物が、顆粒形態である、複合製剤。」
<相違点1>
第2組成物に含まれるプロトンポンプ抑制剤が、本願発明においては「ラベプラゾール(rabeprazole)」であるのに対し、引用発明においては「オメプラゾール」である点。
<相違点2>
顆粒の形態である第1組成物が、本願発明においては、「第1有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤を含む」「速放部分、ならびに第1有効成分、賦形剤、崩壊剤、放出制御基剤、結合剤及び滑沢剤を含む」「徐放部分を含み、
前記放出制御基剤が、80,000cps~120,000cpsの高粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース:2,000cps~20,000cpsの低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースの重量比が2.5:1~1:1の混合物であり、大韓民国薬典の溶出試験法第2法(パドル法)に従って、37℃、pH4.0で溶出試験液に含まれた第1有効成分が、0.5時間後に第1有効成分の総重量の少なくとも34.4%、1時間後に第1有効成分の総重量の40~45%、8時間後に第1有効成分の総重量の70~75%、24時間後に第1有効成分の総重量の90%以上が溶出される溶出プロファイルを満たす」ものであるのに対し、引用発明においては、対応する事項が特定されていない点。
(2)判断
ア 相違点1について
引用文献6には、プロトンポンプ抑制剤として、オメプラゾールだけでなくパリプラゾールが例示されており(摘記6オ)、その構造からみてパリプラゾールはラベプラゾールを意味すると解される。また、当業界においてラベプラゾールとモサプリドを組み合わせて用いることは知られている(摘記1ウ。必要ならば、国際公開第2006/134611号:34頁実施例26、国際公開第2004/071374号:41~42頁実施例16。)。
そうすると、引用発明のオメプラゾールに代えて、引用文献6に例示されたラベプラゾールを用いることは、当業者が適宜なし得たことである。
イ 相違点2について
(ア)引用文献6には、「製剤のプロキネティック部分は即時放出性、徐放性または延長放出性の製剤としてよい。」(摘記6エ)と記載され、プロキネティック部分に相当するモサプリドの放出特性を調節した製剤とし得ることが記載されている。
また、引用文献6と同じくプロトンポンプ抑制剤とプロキネティック剤との複合製剤を開示する引用文献1には、モサプリドの徐放性製剤は、治療的血漿中レベルは24時間維持され非常に有用であること(摘記1イ)、及び、モサプリドの速放性(IR)と徐放性(SR)の組成を組み合わせること(摘記1ウ)が記載されている。
さらに、モサプリドの24時間有効な薬理活性を維持する徐放性製剤について、引用文献5にも、速放性と徐放性の組成を組み合わせることが記載されている(摘記5ア、5イ)。
そうすると、引用発明におけるプロキネティック部分であるモサプリド顆粒からなる層においても、引用文献1及び5に記載されたような、速放性と徐放性の成分を用いることにより迅速かつ24時間有効な薬理活性を有することが好ましいことは、当業者において明らかである。
(イ)a 引用文献5には、モサプリドを含む錠剤は、モサプリドの半減期が短いため、1日に数回服用しなければならないという問題があるが、徐放錠の場合は、初期に有効な血中濃度に達するのに長時間かかるという欠点があることから、「迅速な薬理活性を発現させるとともに24時間有効な薬理活性を持続させるため」の製剤として(摘記5イ)、
「有効成分としてモサプリド又はその塩を含有する、1日1回経口投与のモサプリド含有経口投与徐放錠製剤であって、前記製剤は、胃腸管における滞留時間が18時間~24時間であり、胃腸管を通過する際に、胃腸から20~50%のモサプリド又はその塩を溶出させ、腸管から50~80%のモサプリド又はその塩を溶出させるものであり、有効成分、充填剤、崩壊剤及び添加剤を含む速放層と、有効成分、充填剤、崩解剤、放出制御基剤及び添加剤を含む徐放層を含み、前記放出制御基剤は、80,000cps~120,000cpsの高粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース:2,000cps~20,000cpsの低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースの重量比が2.6~1:1で混合使用し、大韓民国薬典溶出試験法第2法(パドル法)に基づいて37℃、pH4.0、6.8、1.2の溶出液及び水において下記溶出プロファイル:1)pH4.0、pH1.2の溶出液及び水の条件で含まれた有効成分の溶出率が、1時間後に25~45%、8時間後に60~80%、24時間後に85%以上である、2)pH6.8の溶出液の条件で含まれた有効成分の溶出率が、16時間後に45%以下であるを満たすことを特徴とする、モサプリド含有経口投与徐放錠製剤。」(摘記5ア)
が記載されている。
b 引用文献5には、「充填剤である微結晶セルロース賦形剤」(段落[89])、「添加剤(例えば、結合剤)」(段落[24])と記載されていることから、引用文献5の請求項1及び2に記載された「充填剤」及び「添加剤」は、それぞれ「賦形剤」及び「結合剤」を含むものである。
また、製造方法について、徐放層と速放層を、それぞれ顆粒化工程により製造し滑沢剤類を使用することが記載されている(段落[54])。
そして、実施例(段落[82]表1の特に実施例3、4)において、有効成分以外の成分として、速放層には「賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤」が、徐放層には「賦形剤、崩壊剤、徐放化基剤(当審注:請求項1における「放出制御基剤」に相当)、結合剤及び滑沢剤」が記載されている。
そうすると、引用文献5には、以下の製剤が記載されていると認められる。
「有効成分としてモサプリド又はその塩を含有する組成物を顆粒としてから打錠した錠剤であって、有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤を含む顆粒形態の速放部分と有効成分、賦形剤、崩壊剤、放出制御基剤、結合剤及び滑沢剤を含む顆粒形態の徐放部分とを含み、前記放出制御基剤は、80,000cps~120,000cpsの高粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース:2,000cps~20,000cpsの低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースの重量比が2.6~1:1で混合使用し、大韓民国薬典溶出試験法第2法(パドル法)に基づいて37℃、pH4.0の溶出液に含まれた有効成分の溶出率が、1時間後に25~45%、8時間後に60~80%、24時間後に85%以上である、モサプリド含有経口投与徐放錠製剤。」
c 引用文献5に記載されたモサプリド顆粒から製造した徐放錠製剤の有効成分の溶出率は、「大韓民国薬典溶出試験法第2法(パドル法)に基づいて37℃、pH4.0の溶出液に含まれた有効成分の溶出率が、1時間後に25~45%、8時間後に60~80%、24時間後に85%以上」であり、本願発明の「1時間後に40~45%、8時間後に70~75%、24時間後に90%以上」という溶出率はこの範囲に含まれるものである。
d 0.5時間後の溶出率について、引用文献5には、実施例4の製剤の29.88%という数値のみが記載され(段落[108]表4)、これ以外にどの範囲を設定できるのかは明記されていない。
しかしながら、引用文献5に記載されたモサプリド顆粒から製造した徐放錠製剤は、迅速な薬理活性を発現させることを目的の一つとしているところ(段落[10])、迅速な薬理活性を発現させるためには初期の溶出率をある程度高く設定することは自明であり、また、図4(段落[93])から初期の溶出率の立ち上がりが速い製剤であることが見てとれる。
そうすると、1時間後の溶出率を「25~45%」のうち高めの「40~45%」に設定した場合には、0.5時間後の溶出率として、29.88%より少し高めの34.4%程度の数値は、引用文献5の記載の上記徐放錠製剤から十分に想定される範囲内のものといえる。
また、速放層のみからなる錠剤は、市販されているガスモチン錠と類似して30分以内で100%の薬物が溶出されたことから(段落[87])、速放層の有効成分の含有量や速放層の徐放層に対する比等を調節することで、0.5時間後の溶出率を高めることができ、さらに、図4の記載からみて、低粘度と高粘度の徐放化基剤を含む徐放層における低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースの比率を上げると、0.5時間後の溶出率も高まるものと理解できるから、0.5時間後の溶出率が34.4%程度となる組成とすることも当業者であれば適宜なし得る程度のことといえる。
e そうすると、引用文献5に記載された「1時間後に25~45%、8時間後に60~80%、24時間後に85%以上」の中で高めの範囲である「1時間後に40~45%、8時間後に70~75%、24時間後に90%以上」であり、「0.5時間後に34.4%程度」となる溶出率は、引用文献5に接した当業者であれば想定可能な溶出率にすぎない。
(ウ)したがって、引用発明において、外層を形成するモサプリド顆粒について迅速かつ24時間有効な薬理活性を有するものとするために(上記(ア))、引用文献5記載のモサプリド顆粒を用いて、引用文献5から当業者が想定可能な溶出率である「1時間後に40~45%、8時間後に70~75%、24時間後に90%以上」であり、「0.5時間後に34.4%程度」となる溶出率(上記(イ))を有する多層錠剤(複合製剤)とし、相違点2に係る本願発明の構成を備えるものとすることは、当業者が容易に想到することができたことである。
ウ 効果について
(ア)本願明細書には、「発明の効果」として、「本発明に基づいて製造された複合製剤は、モサプリド及びラベプラゾールの相互作用による溶出低下の現象なしに、薬物の速放性放出を可能にして向上された薬物の溶出率及び生体利用率を示すのみならず、製品の安定性に優れて賦形剤の含量を大幅に下げることができ、剤形のサイズに起因する患者の服薬順応度を高めることができる。」(【0010】)と記載されている。
(イ)引用発明の外層を引用文献5記載のモサプリド顆粒で形成しても、複合製剤の外層と腸溶性コーティングされた内核とは、物理的に離れて存在していることから、その製造工程や体内においてもそれほど相互作用することはなく、また、複合製剤の外層と、単一製剤とは、外部の溶媒に対して同じ環境にあるといえるから、引用発明の外層におけるモサプリドの溶出率は、引用文献5記載の単一製剤におけるモサプリドの溶出率と大きく変化することはないと当業者であれば予測することが可能であり、これを妨げる技術常識は見いだせない。
したがって、本願発明が、モサプリド及びラベプラゾールの相互作用による溶出低下がなく、引用文献5に記載されたものと同程度のモサプリドの溶出率を達成できることは、当業者が予測可能な程度のものにすぎないし、溶出率と密接に関連する生体利用率が向上することについても同様である。
(ウ)引用文献5には「製剤のサイズを小型化して服用の利便性を増進させる」という効果を奏すること(段落[63])、また、引用文献6には、「用法を簡素化し患者の服薬指示遵守を改善する」(摘記6ウ)と記載されていることから、本願発明が、製品の安定性に優れて賦形剤の含量を大幅に下げることができ、剤形のサイズに起因する患者の服薬順応度を高めることができるという効果も、引用文献6や5に記載された事項から、当業者が予測可能なものである。
(エ)さらに、本願明細書には、実施例1~9においてモサプリドとラベプラゾールの複合製剤が製造され、そのうち実施例3の製剤が本願発明の溶出率を満たすものであるが、本願発明の溶出率の数値範囲に、引用文献5に記載された数値範囲と比較して臨界的意義があることは示されておらず、溶出率を特定したことにより引用文献6、5及び1から当業者が予測できない顕著な効果を奏するとはいえない。
(3)小括
以上によれば、本願発明は、引用文献6に記載された発明、引用文献5及び1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 請求人の主張について
以下において記載する溶出性は、37℃、pH4.0における溶出率である。
(1)請求人は、引用文献5のモサプリド15.87mgを含む製剤(実施例4)は、0.5時間後の溶出率は29.88%(約4.74g)であるから(表4)、0.5時間以内に全て溶解する対照薬のモサプリド5.29mgと比較すると、89.64%(約4.74/5.29×100)のモサプリドが放出されたことになるのに対し、本願発明は、0.5時間後の溶出率は34.4%(約5.46g)であるから、103.2%(約5.46/5.29×100)となるから、本願発明は、初期の薬物吸収が最大10%の差を示す可能性があることを示唆するから、引用文献5の製剤に比べてモサプリドの効力が優れていることを示唆する旨を主張する(令和3年11月11日提出の意見書4頁)。
しかしながら、引用文献5記載の製剤は、モサプリド製剤の迅速な薬理活性を発現させることを目的の一つとするものであり、目的に合わせてその溶出性の程度を調整するものであると理解されるから、0.5時間後の溶出率は、実施例4の製剤の29.88%に限られるとは理解されず、上記5で述べたように、0.5時間後に34.4%程度となる溶出率は、引用文献5に接した当業者であれば想定可能なものである。
そして、0.5時間後の溶出率が高い方が、初期のモサプリドの効力が優れることは、当業者が予測可能なものにすぎない。
したがって、請求人の上記主張を検討しても、上記5に説示した判断には影響しない。
(2)請求人は、本願発明は、モサプリド速放層+モサプリド徐放層+ラベプラゾールの内核の三重構成であり、速放層、内核、徐放層の主成分と賦形剤の組成が異なるため、製剤の製造過程で各部の溶解が相互に影響し合う可能性があるところ、それにもかかわらず、本願発明の製剤は、溶解時の相互作用を排除し、所望の初期溶解速度を得ることができるという当業者にとって予想外の顕著な効果を奏するものであり、本願発明の製剤は、内核と第1組成物及び第2組成物を含む構造によって、この問題を解決したものである旨を主張する(令和3年11月11日提出の意見書5頁)。
しかしながら、引用発明においても、モサプリドを含む層(第1組成物に相当)と腸溶性コーティングした内核(第2組成物に相当)とは、異なる層として分離されており、その分離されている構造を本願発明はそのまま使用したものであるにすぎない。
そして、請求人が指摘する溶解時の相互作用を排除したことによる効果は、引用発明の上記構造から、当業者が予測可能なものである。
(3)請求人は、持続放出層(徐放層)に使用されるHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)はゲルを形成し、マトリックスになることによってそのような持続放出特性を有し、形成されたゲルが内部有核錠剤を取り囲む場合、ラベプラゾールの溶解もまた、持続放出ゲルのために制限されるが、この現象は、単一モサプリド製剤の持続放出に関する技術を開示する引用文献5では考慮されておらず、対照的に、本願発明の製剤は、このような問題を解決するものである旨を主張する(令和3年4月5日提出の意見書7頁21~26行)。
しかしながら、本願明細書において溶出プロファイルを測定しているのはモサプリドのみであり、ラベプラゾールの溶出プロファイルは調べていないから、本願発明の製剤が、請求人が主張する問題を解決しているかどうかは、本願明細書の記載からは理解することはできない。
仮に、解決しているとしても、引用文献6には、モサプリド等のプロキネティック部分を徐放性とし得ることも記載されており、その場合には、内核は、本願発明も引用発明も、脂溶性コーティングしたプロトンポンプ抑制剤の錠剤である点で変わりはないから、引用発明におけるプロトンポンプ抑制剤も、本願発明と同様な溶解性を示すものと考えるのが自然である。
したがって、請求人の上記主張を検討しても、上記5に説示した判断に影響しない。
(4)請求人は、補足実施例1についての添付資料1を示し、高粘度HPMC:低粘度HPMCの比率である2.5:1~1:1は、特定の実験なしには得られない顕著な徐放性効果を有するから、モサプリド-ラベプラゾール複合製剤の有核錠剤構造による溶出速度の制御効果は、当業者が容易に導き出すことができないものである旨を主張する(令和3年4月5日提出の意見書7頁29~37行)。
しかしながら、引用文献5には、ラベプラゾールを含まないモサプリド製剤ではあるが、高粘度HPMC:低粘度HPMCの比率である「2.6:1~1:1」が好ましいことが記載され(段落[32])、表1には、高粘度HPMC:低粘度HPMCの比率が、「1.75:1」である実施例3、「1.2:1」である実施例4が記載されている。これらの実施例3、4における高粘度HPMC:低粘度HPMCの比率は、本願発明の「2.5:1~1:1」の範囲に包含されるものである。
このように、引用文献5においても、実験によって、本願発明とほぼ同じ範囲を好ましい範囲として導き出している。
そうすると、本願発明は、複合製剤においても、引用文献5と同じ高粘度HPC:低粘度HPMCの比率が適切であったことを確認したにすぎないものといえる。
(5)請求人は、補足実施例2についての添付資料2を示し、有核錠剤構造を設計した場合は、腸溶性コーティング錠への製剤化を行わない場合と比べて、ラベプラゾールの溶出プロファイルが最も腸溶性錠剤に近く、経済的にも効率的であることなどが示された旨を主張する(令和3年4月5日提出の意見書7頁38~42行)。
また、添付資料3~5を示し、モサプリドとラベプラゾールを単に併用した場合は、コアタブレット構造で使用した場合とは溶出プロファイルが異なるため、本願発明の溶出プロファイルを導き出すことができない旨を主張する(同8頁1~4行)。
しかしながら、引用発明も、本願発明と同じく有核錠剤構造を備えるものであるから、請求人が主張する、有核錠剤構造を有しないものと比較した溶出プロファイル等についての有利な点は、本願発明が、引用発明との相違点に係る構成を備えたことにより生じるものとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は、引用発明を主引例とする当審の判断に影響しない。
7 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-012449