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特許拒絶査定不服審判

2019-011667

陸上輸送用冷凍装置

審判番号
2019-011667
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-060269外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年09月05日
審決日
2020年07月22日
公報発行日
2020年10月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (F25B) / P18 .575-Z (F25B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015- 60269号「陸上輸送用冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-180523号〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成27年3月24日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年11月26日付けで拒絶理由通知 平成31年 1月31日に意見書及び手続補正書の提出 令和 1年 6月 4日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 1年 9月 5日に審判請求書及び手続補正書の提出 第2 令和 1年 9月 5日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和 1年 9月 5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 走行する又は牽引される車両に設けられ、 保冷庫の内に設けられる庫内熱交換器と、 保冷庫の外に設けられる庫外熱交換器と、 冷媒を圧縮し、冷凍機油を溜める油溜まりを有する圧縮機と、 前記圧縮機の起動が停止している間に、前記圧縮機に熱を与えることのできる発熱要素と、 内部に外部とは区画される空気流路が設けられ、加熱対象である前記圧縮機と前記発熱要素を前記空気流路に収容する収容室と、を備え、 前記圧縮機の運転が停止している際に、所定の条件を満たすことにより、前記発熱要素を運転してから、前記圧縮機を運転する、 ことを特徴とする陸上輸送用冷凍装置。」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正前の、平成31年1月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 走行する又は牽引される車両に設けられ、 保冷庫の内に設けられる庫内熱交換器と、 保冷庫の外に設けられる庫外熱交換器と、 冷媒を圧縮し、冷凍機油を溜める油溜まりを有する圧縮機と、 前記圧縮機の起動が停止している間に、前記圧縮機に熱を与えることのできる発熱要素と、 内部に外部とは区画される空気流路が設けられ、加熱対象である前記圧縮機と前記発熱要素を前記空気流路に収容する収容室と、を備え、 前記圧縮機の運転が停止している際に、所定の条件を満たすことにより、前記発熱要素を運転する、 ことを特徴とする陸上輸送用冷凍装置。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1の「前記圧縮機の運転」と「前記発熱要素を運転」との関係について、「前記圧縮機の運転が停止している際に、所定の条件を満たすことにより、前記発熱要素を運転する」としていたものを、「前記圧縮機の運転が停止している際に、所定の条件を満たすことにより、前記発熱要素を運転してから、前記圧縮機を運転する」として、「前記発熱要素を運転してから、前記圧縮機を運転する」ことを、さらに限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2) 引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア) 引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2010-286149号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、下線は当審において付したものである。また、「・・・」は記載の省略を示す。)。 「【請求項1】 エンジン(41)と、エンジン(41)の駆動によって発電する発電機(40)と、インバータ回路(71)とを有し、上記発電機(40)の発電によって駆動する冷媒回路(21)を備えた輸送用冷凍装置であって、 上記インバータ回路(71)の温度を検知する温度検知器(74)と、 該温度検知器(74)の検知温度が所定温度以下であると、上記エンジン(41)の廃熱によって上記インバータ回路(71)を加熱する加熱機構(60)とを備えている ことを特徴とする輸送用冷凍装置。」 「【0001】 本発明は、冷凍装置に関し、特に低外気温度下で使用される輸送用冷凍装置に係るものである。 【背景技術】 【0002】 従来、冷凍食品等の貨物を低温に保ちながら陸上輸送するための冷凍車両が知られている。冷凍車両には、例えば特許文献1に開示されているような車両用の冷凍装置が設けられている。この冷凍装置は、冷凍車両の走行用エンジンとは別のサブエンジンと、該サブエンジンによって駆動される電動圧縮機とを備えている。この電動圧縮機は、インバータ回路によって回転数を制御されている。」 「【0004】 ところで、一般的にインバータ回路は、所定の動作温度(例えば-20℃)以上の環境下で動作するよう設計されており、この動作温度(-20℃)以上をインバータ回路の使用可能環境としている。このため、従来の冷凍装置では、インバータ回路の動作温度(-20℃)以上で冷凍装置が使用されることを想定してインバータ回路を選定する。しかしながら、遠方まで陸上輸送を行うような冷凍車両では、冷凍装置が使用される実際の温度が、インバータ回路の動作温度(-20℃)よりも低くなる場合があり得る。ところが、このような場合も考慮し、冷凍装置の使用環境を想定すると、-20℃よりも低い温度(例えば-30℃)を動作温度とするインバータ回路を選定する必要があり、インバータ回路自体のコストが高くなるという問題があった。このような問題に対しては、インバータ回路を動作温度以下で使用する際、その動作可能な温度(上述したインバータ回路では、-20℃以上)まで予備加熱を行うという方策が考えられる。しかしながら、この場合、インバータ回路を予備加熱するために、別に予備加熱装置等が必要となり、冷凍装置の製造コストが上昇するという問題があった。」 「【0021】 上記第1の発明によれば、温度検知器(74)と加熱機構(60)とを設けたため、インバータ回路(71)が所定温度以下となった場合に、エンジン(41)の廃熱を利用して該インバータ回路(71)を加熱することができる。これにより、インバータ回路(71)自体の製造コストを上昇させることなく、インバータ回路(71)を動作させることができる。また、エンジン(41)の廃熱を利用するため、インバータ回路(71)を加熱するために別途加熱装置等を設けることなく、インバータ回路(71)の温度を所定温度以上まで加熱することができる。これらの結果、冷凍装置の製造コストの上昇を抑えつつ、インバータ回路(71)を所定温度以下の環境下で動作させることができる。」 「【0030】 〈発明の実施形態1〉 図1に示すように、本実施形態1のトレーラ用冷凍装置(20)は、冷凍食品や生鮮食品等を陸上輸送するための冷凍車両(10)に搭載されている。冷凍車両(10)は、冷凍食品等の貨物が貯蔵されるトレーラ(11)と、トレーラ(11)を牽引するトラクタ(12)とを有している。 【0031】 トレーラ(11)は、前後方向に縦長の直方体形状で、且つ前端が開放された箱状に形成されている。トレーラ(11)の内部には、庫内空間(13)が形成されており、この庫内空間(13)に冷凍食品や生鮮食品等が貯蔵される。図3に示すように、トレーラ(11)の前端には、矩形枠状の開放部(14)が形成されている。開放部(14)の前端面には、トレーラ用冷凍装置(20)を取り付けるための複数のネジ止め部(15,15,…)が形成されている。複数のネジ止め部(15,15,…)は、開放部(14)の4つの各辺において、例えば8箇所ずつ等間隔となるように配列されている。 【0032】 - トレーラ用冷凍装置の構成- トレーラ用冷凍装置(20)は、冷凍車両(10)の庫内空間(13)の空気を冷却するための冷却装置を構成している。図2 に示すように、トレーラ用冷凍装置(20)は、冷媒が充填される冷媒回路(21) を備えている。冷媒回路(21)には、圧縮機(22)と凝縮器(23)と膨張弁(24) と蒸発器(25) とが接続されている。冷媒回路(21)では、冷媒が循環することで蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。凝縮器(23)の近傍には、庫外ファン(26)が設けられている。凝縮器(23)では、庫外ファン(26)によって搬送される庫外(室外) 空気と冷媒とが熱交換する。蒸発器(25)の近傍には、庫内ファン(27)が設けられている。蒸発器(25)では、庫内ファン(27)によって搬送される庫内空気と冷媒とが熱交換する。蒸発器(25)は、トレーラ(11)の庫内空間(13)の空気を冷却するための冷却部を構成している。」 「【0046】 図5及び図6に示すように、上述した第1機械室(35)には、発電機(40)とエンジン(41)とバッテリー(42)と複数の電装品箱(43,44)とが設けられている。具体的に、第1機械室(35)には、下側プレート(54)における左右方向の中間位置に発電機(40)及びエンジン(41)が設置されている。エンジン(41)は発電機(40)を駆動するものであり、発電機(40)は上述した圧縮機(22)等を駆動するための電力を発生するものである。また、第1機械室(35)では、発電機(40)の左側の空間に第1の電装品箱(43)と、温度センサ(74)と、ダンパコントローラ(63)とが設けられ、エンジン(41)の右側の空間に第2の電装品箱(44)が設けられている。上記第1電装品箱(43)は、図8に示すように、その内部にトレーラ用冷凍装置(20)の回路基板(70)が収容されている。」 「【0047】 上記回路基板(70)は、回路部品が組み込まれたプリント基板であり、合成樹脂材料等で形成された薄板状に形成されている。この回路基板(70)の一面側には、トランスやコンデンサなどの各種電気部品(図示せず)が多数個実装されるとともに、導電路(図示せず)が敷設されている。また、この回路基板(70)の他面側には、発熱体であるインバータ素子からなるインバータ基板(71)が電気的に接続されている。尚、本実施形態1に係るインバータ基板(71)は、例示として、その動作温度を-20℃ 以上として設計されている。また、実施形態に係るインバータ基板(71)の「動作温度」は、本発明に係る「所定温度」を示す温度である。また、このインバータ基板(71)には、略直方体状の箱体に形成されたヒートシンク(72)が取り付けられている。このヒートシンク(72)は、第1電装品箱(43)の内部から該第1電装品箱(43)の前面部を貫通して前方に向かって突出している。このヒートシンク(72)は、金属材料によって形成されており、インバータ基板(71)で発生した熱を放熱することで、該インバータ基板(71)を冷却している。また、このヒーシンク(72)の近傍には、温度センサ(74)が設けられている。」 「【0050】 具体的に、第2機械室(36)には、上側プレート(55)における左右方向の中間位置に2つの圧縮機(22)が設置されている。この圧縮機(22)は、上記インバータ基板(71)により回転数制御が為される容量可変の圧縮機(インバータ圧縮機)に構成されている。また、圧縮機(22)の前方には、ラジエタ(45)及び凝縮器(23)が配置されている。凝縮器(23)は、2枚の鉛直プレート(57)に跨るように配設されている。凝縮器(23)の前方には、前面カバー(32)の中央導入口(32b)が位置している。また、第2機械室(36)では、前方から視て右側上方寄りの空間に第3の電装品箱(46)が設けられている。」 「【0058】 - 運転動作- 次に、トレーラ用冷凍装置(20)の運転動作について、図7及び図9を参照しながら説明する。 【0059】 エンジン(41)によって発電機(40)が駆動されると、発電機(40)で電力が発生する。この電力は、圧縮機(22)、庫外ファン(26)、及び庫内ファン(27)に供給される。冷媒回路(21)では、圧縮機(22)が運転されることで冷凍サイクルが行われる。 【0060】 詳細には、圧縮機(22)で圧縮された冷媒は、凝縮器(23)を流れる。凝縮器(23)では、冷媒が庫外空気へ放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、膨張弁(24)を通過することで減圧され、減圧後の冷媒は蒸発器(25)を流れる。蒸発器(25)では、冷媒が庫内空気から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(22)で再び圧縮される。 【0061】 庫内ファン(27)が運転されると、庫内空間(13)の庫内空気が流入口(37a)より内気流路(38)に吸い込まれる。内気流路(38)に吸い込まれた空気は、上方へ流れて蒸発器(25)を通過する。蒸発器(25)では、庫内空気が冷媒と熱交換して冷却される。蒸発(25)で冷却された庫内空気は、流出口(37b)より庫内空間(13)へ流出し、貨物等の冷蔵/冷凍に利用される。」 「【0062】 一方、庫外ファン(26)が運転されると、庫外(室外)空気が機械室(35.36)に吸い込まれる。詳細には、庫外空気は、前面カバー(32)の2つの側方導入口(32c,32c)と中央導入口(32b)に吸い込まれる。2つの側方導入口(32c,32c)のうち左側の側方導入口(32c)から第1機械室(35)に導入された空気は、第1電装品箱(43)の周囲を通過し、発電機(40)及びエンジン(41)の近傍へ送られる。また、2つの側方導入口(32c,32c)のうち右側の側方導入口(32c)から第1機械室(35)に導入された空気は、第2電装品箱(44)の周囲を通過し、エンジン(41)及び発電機(40)の近傍へ送られる。エンジン(41)及び発電機(40)の近傍を空気が流れると、エンジン(41)や発電機(40)が空気によって冷却される。エンジン(41)及び発電機(40)の冷却に利用された空気は、連通口(55c)内を上方に流れて第2機械室(36)へ送られる。 【0063】 また、中央導入口(32b)から第2機械室(36)に吸い込まれた空気は、凝縮器(23)を通過する。凝縮器(23)では、冷媒が庫外空気に放熱して凝縮する。凝縮器(23)を通過した空気は、ラジエタ(45)の周囲を流れてラジエタ(45)の冷却に利用され、連通口(55c)を通過した空気と合流する。 【0064】 第2機械室(36)で合流した後の空気は、2つの圧縮機(22,22)の周囲を流れるように、左右方向に分流する。左側に分流した空気は、前面カバー(32)内の上端開口を通過して庫外ケーシング(50) の外部へ放出される。右側に分流した空気は、第3電装品箱(46)を通過した後、前面カバー(32)内の上端開口を通過して庫外ケーシング(50)の外部へ放出される。」 「【0065】 〈インバータ基板の加熱動作〉 ここで、低外気温度環境下における本実施形態1に係るトレーラ用冷凍装置(20)のインバータ基板(71)の加熱運転について説明する。 【0066】 通常、トレーラ用冷凍装置(20)の運転中は、温度センサ(74)で検知されたインバータ基板(71) の周辺温度のデータが連続してダンパコントローラ(63)へ送られる。そして、温度センサ(74)で検知された温度が-20℃以上である場合、ダンパコントローラ(63)は、ダンパ(62)を閉状態にしている。ところが、冷凍車両(10)が、北欧等の低外気温度(本実施形態1では、-20℃より低い外気温度)の環境下で走行する場合には、インバータ基板(71)の周辺温度が-20℃より低くなることがある。 【0067】 具体的には、図10に示すように、トレーラ用冷凍装置(20)の起動時において、温度センサ(74) の検知温度が-20℃よりも低くなると、トレーラ用冷凍装置(20)は、庫外ファン(26) 、エンジン(41) 及び発電機(40) を駆動させる一方、ダンパコントローラ(63)は、ダンパ(62)を開状態にする。そして、側方導入口(32c,32c)から第1機械室(35)に導入された空気は、エンジン(41)の近傍を流れてエンジン(41)から吸熱する。第1機械室(35)の空気は、連通口(55c)から第2機械室(36)に導入される。第2機械室(36)に導入された空気の一部は、空気ダクト(61)へ流入する。第2機械室(36)内の空気は、エンジン(41)から吸熱しているため比較的暖かい温度に構成されている。そして、空気ダクト(61)を通過した空気は、第1機械室(35)へ導入される。第1機械室(35)では、空気ダクト(61)から流出した空気によって、第1電装品箱(43)のヒートシンク(72)が暖められる。この暖められたヒートシンク(72)を介してインバータ基板(71)が暖められる。そして、温度センサ(74)の検知温度が-20℃以上になると、トレーラ用冷凍装置(20)は冷凍運転を開始する。次に、トレーラ用冷凍装置(20)の運転中において、温度センサ(74)での検知温度が-20℃よりも低くなると、図8に示すように、ダンパコントローラ(63)は、ダンパ(62)を開状態にする。ダンパ(62)が開状態になると、第2機械室(36) の空気の一部が空気ダクト(61)へ流入する。第2機械室(36)内の空気は、凝縮器(23)で放熱された空気、及びラジエタ(45)で吸熱した空気が含まれているため、比較的暖かい温度に構成されている。そして、空気ダクト(61)を通過した空気は、第1機械室(35)へ導入される。第1 機械室(35)では、空気ダクト(61)から流出された空気によって、第1電装品箱(43)のヒートシンク(72)が暖められる。この暖められたヒートシンク(72)を介してインバータ基板(71) が暖められる。そして、温度センサ(74)の検知温度が-20℃以上になると、ダンパコントローラ(63)はダンパ(62)を閉じる。尚、再び温度センサ(74)の検知温度が-20℃よりも低くなると、ダンパコントローラ(63)は再度ダンパ(62)を開ける。 【0068】 - 実施形態1 の効果- 本実施形態1によれば、温度センサ(74)と空気ダクト(61)とを設けたため、インバータ基板(71)の周辺温度が-20℃より低くなった場合に、エンジン(41)の廃熱を利用して加熱された空気によってインバータ基板(71)を暖めることができる。また、インバータ基板(71)にヒートシンク(72)を取り付けたため、ヒートシンク(72)を介してインバータ基板(71)を暖めることができる。空気ダクト(61)にダンパ(62)を設けたため、インバータ基板(71)の周辺温度に応じてエンジン(41)、又はラジエタ(45)で暖められた空気をインバータ基板(71)へ供給することができる。これらにより、インバータ基板(71)を加熱するために別途加熱装置等を設けることなく、インバータ基板(71)の温度を-20℃以上まで加熱することができる。この結果、トレーラ用冷凍装置(20)の製造コストの上昇を抑えつつ、インバータ基板(71)をその動作温度よりも低い温度環境下で動作させることができる。」 「 」 「 」 「 」 (イ) 引用発明 上記(ア)の記載事項を総合して、トレーラ用冷凍装置(20)の起動時に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「冷凍食品等の貨物が貯蔵されるトレーラ(11)と、トレーラ(11)を牽引するトラクタ(12)とを有している冷凍車両(10)の低外気温度下で使用されるトレーラ用冷凍装置であって、 トレーラ用冷凍装置は、冷凍車両(10)の庫内空間(13)の空気を冷却するための冷却装置を構成していて、冷媒が充填される冷媒回路(21) を備え、冷媒回路(21)には、圧縮機(22)と凝縮器(23)と膨張弁(24) と蒸発器(25) とが接続され、 圧縮機(22)は、インバータ基板(71)により回転数制御が為される容量可変の圧縮機(インバータ圧縮機)に構成され、 冷媒回路(21)では、圧縮機(22)が運転されることで冷凍サイクルが行われ、 凝縮器(23)の近傍には、庫外ファン(26)が設けられ、凝縮器(23)では、庫外ファン(26)によって搬送される庫外(室外)空気と冷媒とが熱交換し、 蒸発器(25)の近傍には、庫内ファン(27)が設けられ、蒸発器(25)では、庫内ファン(27)によって搬送される庫内空気と冷媒とが熱交換し、蒸発器(25)は、トレーラ(11)の庫内空間(13)の空気を冷却するための冷却部を構成し、 庫外空気は、前面カバー(32)の2つの側方導入口(32c,32c)と中央導入口(32b)に吸い込まれ、左側の側方導入口(32c)から第1機械室(35)に導入された空気は、第1電装品箱(43)の周囲を通過し、発電機(40)及びエンジン(41)の近傍へ送られ、 右側の側方導入口(32c)から第1機械室(35)に導入された空気は、第2電装品箱(44)の周囲を通過し、エンジン(41)及び発電機(40)の近傍へ送られ、 エンジン(41)及び発電機(40)の近傍を空気が流れると、エンジン(41)や発電機(40)が空気によって冷却され、エンジン(41)及び発電機(40)の冷却に利用された空気は、連通口(55c)内を上方に流れて第2機械室(36)へ送られ、 中央導入口(32b)から第2機械室(36)に吸い込まれた空気は、凝縮器(23)を通過し、凝縮器(23)を通過した空気は、ラジエタ(45)の周囲を流れてラジエタ(45)の冷却に利用され、連通口(55c)を通過した空気と合流し、 第2機械室(36)で合流した後の空気は、2つの圧縮機(22,22)の周囲を流れるように、左右方向に分流し、左側に分流した空気は、庫外ケーシング(50)の外部へ放出され、 輸送用冷凍装置(20)の起動時において、温度センサ(74) の検知温度が-20℃よりも低くなると、トレーラ用冷凍装置(20)は、庫外ファン(26) 、エンジン(41) 及び発電機(40) を駆動させる一方、ダンパコントローラ(63)は、ダンパ(62)を開状態にし、側方導入口(32c,32c)から第1機械室(35)に導入された空気は、エンジン(41)の近傍を流れてエンジン(41)から吸熱し、第1機械室(35)の空気は、連通口(55c)から第2機械室(36)に導入され、第2機械室(36)に導入された空気の一部は、空気ダクト(61)へ流入し、第2機械室(36)内の空気は、エンジン(41)から吸熱しているため比較的暖かい温度に構成されて、空気ダクト(61)を通過した空気は、第1機械室(35)へ導入され、 第1機械室(35)では、空気ダクト(61)から流出した空気によって、第1電装品箱(43)のヒートシンク(72)が暖められ、この暖められたヒートシンク(72)を介してインバータ基板(71)が暖められ、そして、温度センサ(74)の検知温度が-20℃以上になると、トレーラ用冷凍装置(20)は冷凍運転を開始する、 トレーラ用冷凍装置。」 イ 引用文献2 (ア) 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2015-25579号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 「【背景技術】 【0002】 ヒートポンプの停止中、圧縮機内で冷媒が凝縮し、その液冷媒が圧縮機底部の油溜まりの潤滑油に混入することがある。そして、液冷媒と潤滑油とが二層分離し、次回の圧縮機起動時、軸受部などに潤滑油ではなく冷媒が供給され、潤滑不良を起こすおそれがある。また、圧縮空間内での液冷媒は、次回の圧縮機起動時、液圧縮を起こすおそれもある。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、従来技術では、電気またはボイラが必要である。そこで、本発明が解決しようとする課題は、電気やボイラを用いることなく、圧縮機を加熱できるヒートポンプを提供することにある。それにより、圧縮機内で凝縮していた冷媒の気化を図り、軸受部などにおける潤滑を確実に行うと共に、圧縮機における液圧縮を防止することを課題とする。」 「【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、蒸発器において熱源流体から熱をくみ上げ、凝縮器において被加熱流体を加熱する蒸気圧縮式のヒートポンプであって、圧縮機のシェルの外側に、前記熱源流体が供給されて圧縮機内を加熱する圧縮機加熱部が設けられたことを特徴とするヒートポンプである。」 「【0038】 いま、ヒートポンプ1が停止、つまり圧縮機2 が停止している状態で、ヒートポンプ1の運転の開始が指示されたとする。この場合、制御器は、圧縮機2を実際に起動する前に、まず、圧力センサ38の検出圧力に相当する飽和温度よりも、温度センサ39の検出温度が高くなるように、圧縮機2を加熱する。本実施例では、圧縮機加熱部21に熱源流体を供給して圧縮機2を加熱する。その際、圧縮機加熱部21への熱源流体の供給流量を調整してもよい。 【0039】 このようにして、圧力センサ38の検出圧力相当の飽和温度よりも温度センサ39の検出温度が高くなるように圧縮機2を加熱することで、圧縮機2内で凝縮していた冷媒の気化、過熱を図ることができる。しかも、このような加熱を圧縮機2の起動前に行うことで、油溜まり12に溶け込んでいた液冷媒を気化させることができ、圧縮機2の起動に伴い、油溜まり12から軸受部などへ潤滑油ではなく冷媒が供給されて潤滑不良を起こすおそれがなくなる。また、圧縮機2を加熱することで、圧縮機構部10の圧縮空間内に凝縮していた液冷媒も気化させることができるので、液圧縮を防止することもできる。なお、圧縮機2の吸入側の内、最も温まりにくい箇所(温度上昇が遅れる箇所)に温度センサ39を設けておき、検出圧力相当の飽和温度よりも検出温度が高くなるように加熱すれば、気化したガス冷媒が再凝縮するのを、さらに確実に防止することができる。」 「 」 (イ) 引用文献2に記載された事項 上記(ア)を総合すると、引用文献2には、以下の事項(以下「引2事項」という。)が記載されていると認められる。 「圧縮機2が停止している状態で、ヒートポンプ1の運転の開始が指示されると、制御器は、圧縮機2を実際に起動する前に、まず、圧力センサ38の検出圧力に相当する飽和温度よりも、温度センサ39の検出温度が高くなるように、圧縮機2を加熱することにより、潤滑不良や液圧縮を防止すること。」 ウ 引用文献3 (ア) 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平9-48235号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある(なお、下線は当審において付したものである。)。 「【請求項1】 コンプレッサ(6)、車室外コンデンサ(5)、車室内コンデンサ(4)、膨脹弁(8)、およびエバポレータ(3)を順に配管で連結し、前記車室外コンデンサ(5)の出入口に冷媒の流れを切り替えるための冷媒流路切替手段(9,10)を設け、前記コンプレッサ(6)から吐出される冷媒を、冷房運転時には前記冷媒流路切替手段(9,10)により前記車室外コンデンサ(5)に導入し、暖房運転時には前記冷媒流路切替手段(9,10)により前記車室外コンデンサ(5)をバイパスさせて前記車室内コンデンサ(4)に導入するようにした電気自動車用冷暖房装置において、前記コンプレッサ(6)を加熱する加熱手段(50,51,52)を設けたことを特徴とする電気自動車用冷暖房装置。」 「【0026】以上により本実施形態では、暖房運転の開始のとき、コンプレッサを起動させる前に燃焼式ヒータによって暖められた温水でコンプレッサを暖めることで、寒冷時において、コンプレッサ起動時のオイルの粘性を下げ、また、暖房運転中にあっては燃焼式ヒータが補助熱源となり温水が冷媒を暖めるのことになるで、車室内の十分な暖房が可能となる。なお、燃焼式ヒータの加熱量に十分な余裕があれば従来のように、車室内への放熱器をダクト内に設け温水をコンプレッサからさらにこの放熱器に導くようにしてもよい。」 (イ) 上記(ア)を総合すると、引用文献3には、以下の事項(以下「引3事項」という。)が記載されていると認められる。 「コンプレッサを起動させる前に燃焼式ヒータによって暖められた温水でコンプレッサを暖めることにより、吐出冷媒の温度を上昇させること。」 (3)引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ア 後者の「圧縮機(22)」は、前者の「圧縮機」に相当する。そして、後者の「圧縮機(22)」は、前者の「冷媒を圧縮し、冷凍機油を溜める油溜まりを有する圧縮機」と、「冷媒を圧縮する圧縮機」との限りで一致する。 イ 後者における「冷凍食品等の貨物が貯蔵されるトレーラ(11)」、「トレーラ(11)を牽引するトラクタ(12)」、「トレーラ(11)」 と「トラクタ(12)とを有している冷凍車両(10)」は、それぞれ、前者の「走行すい又は牽引される車両」に相当する。また、後者の「トレーラ用冷凍装置」は、前者の「陸上輸送用冷凍装置」に相当する。 ウ 後者の「冷凍食品等の貨物が貯蔵されるトレーラ(11)」は、冷凍食品等の貨物を貯蔵するので、貯蔵するための空間として保冷庫を備えることは明らかであり、後者は、前者の「保冷庫」を備えたものといえる。そうすると、後者の「トレーラ(11)の庫内空間(13)」は、前者の「保冷庫の内」部空間に相当するものである。 エ 後者の「蒸発器(25)」は、「トレーラ(11)の庫内空間(13)の空気を冷却するための冷却部を構成」し、「蒸発器(25)の近傍には、庫内ファン(27)が設けられ」ていることから、前者の「保冷庫の内に設けられる庫内熱交換器」に相当する。 オ 後者の「凝縮器(23)」は、「近傍には、庫外ファン(26)が設けられ、凝縮器(23)では、庫外ファン(26)によって搬送される庫外(室外)空気と冷媒とが熱交換」するものであり、「庫外」が保冷庫の外になるので、前者の「保冷庫の外に設けられる庫外熱交換器」に相当する。 カ 後者の「エンジン(41)及び発電機(40)の近傍を空気が流れると、エンジン(41)や発電機(40)が空気によって冷却され」るものであるから、後者の「エンジン(41)や発電機(40)」は、発熱する要素であるといえるので、前者の「発熱要素」に相当する。 キ 後者の「庫外空気は、前面カバー(32)の2つの側方導入口(32c,32c)と中央導入口(32b)に吸い込まれ、左側の側方導入口(32c)から第1機械室(35)に導入された空気は、第1電装品箱(43)の周囲を通過し、発電機(40)及びエンジン(41)の近傍へ送られ、 右側の側方導入口(32c)から第1機械室(35)に導入された空気は、第2電装品箱(44)の周囲を通過し、エンジン(41)及び発電機(40)の近傍へ送られ、 エンジン(41)及び発電機(40)の近傍を空気が流れると、エンジン(41)や発電機(40)が空気によって冷却され、エンジン(41)及び発電機(40)の冷却に利用された空気は、連通口(55c)内を上方に流れて第2機械室(36)へ送られ、 中央導入口(32b)から第2機械室(36)に吸い込まれた空気は、凝縮器(23)を通過し、凝縮器(23)を通過した空気は、ラジエタ(45)の周囲を流れてラジエタ(45)の冷却に利用され、連通口(55c)を通 過した空気と合流し」ていることは、前面カバー(32)の内部に外部と区画されて、空気が送られ、流れる流路が形成されているから、前者の「内部に外部とは区画される空気流路が設けられ」ることに相当する。 さらに、後者の「第2機械室(36)で合流した後の空気は、2つの圧縮機(22,22)の周囲を流れるように、左右方向に分流し、左側に分流した空気は、庫外ケーシング(50)の外部へ放出され」ることを踏まえると、後者の前面カバー(32)の内部は、エンジン(41)、発電機(40)及び圧縮機(22,22)を収容する収容室として機能するものである。そうすると、後者の前面カバー(32)の内部は、前者の「加熱対象である前記圧縮機と前記発熱要素を前記空気流路に収容する収容室」と、「前記圧縮機と前記発熱要素を前記空気流路に収容する収容室」との限りで一致する。 ク 後者のトレーラ用冷凍装置(20)は、冷凍運転を開始する前に、冷媒回路をなす圧縮機の運転が停止していることが明らかであり、検知温度が-20℃よりも低くなることが所定の条件を満たすことといえるので、後者の「輸送用冷凍装置(20)の起動時において、温度センサ(74) の検知温度が-20℃よりも低くなると、トレーラ用冷凍装置(20)は、庫外ファン(26) 、エンジン(41) 及び発電機(40) を駆動させ」ることは、前者の「前記圧縮機の運転が停止している際に、所定の条件を満たすことにより、前記発熱要素を運転」することに相当する。 また、後者の「エンジン(41)及び発電機(40)を駆動」して、「インバータ基板(71)が暖められ、そして、温度センサ(74)の検知温度が-20℃以上になると、トレーラ用冷凍装置(20)は冷凍運転を開始する」ことは、後者の「圧縮機(22)は、インバータ基板(71)により回転数制御が為される容量可変の圧縮機(インバータ圧縮機)に構成され」ていて、エンジン(41)及び発電機(40)の駆動に伴い、検知温度が-20℃以上となってインバータが動作可能となることにより、圧縮機が運転されるので、前者の「前記発熱要素を運転してから、前記圧縮機を運転する」ことに相当する。 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「走行する又は牽引される車両に設けられ、 保冷庫の内に設けられる庫内熱交換器と、 保冷庫の外に設けられる庫外熱交換器と、 冷媒を圧縮する圧縮機と、 発熱要素と、 内部に外部とは区画される空気流路が設けられ、前記圧縮機と前記発熱要素を前記空気流路に収容する収容室と、を備え、 前記圧縮機の運転が停止している際に、所定の条件を満たすことにより、前記発熱要素を運転してから、前記圧縮機を運転する、 陸上輸送用冷凍装置。」 [相違点1] 本件補正発明では、圧縮機が「冷凍機油を溜める油溜まりを有」しているのに対し、引用発明では、そのようなものを有するか不明である点。 [相違点2] 発熱要素について、本件補正発明では、「圧縮機に熱を与えることのできる発熱要素」とされ、「加熱対象」が「圧縮機」であり、「圧縮機の起動が停止している間に、前記圧縮機に熱を与えることのできる」としているのに対し、引用発明では、「空気ダクト(61)から流出した空気によって、第1電装品箱(43)のヒートシンク(72)が暖められ、この暖められたヒートシンク(72)を介してインバータ基板(71)が暖められ」とされ、加熱の対象が「インバータ基板(71)」であり、圧縮機の起動と圧縮機の加熱との関係については特定していない点。 (4)判断 ア 相違点1について 冷凍装置に用いられる圧縮機において、油溜まりを有することは、本願出願前に周知の事項である(例えば、引用文献2の【0039】、図2等に記載された油溜まり12を参照。以下「周知事項1」という。)。 そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点でないか、仮に相違するとしても、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 引用発明は、「エンジン(41)や発電機(40)が空気によって冷却され、エンジン(41)及び発電機(40)の冷却に利用された空気は、連通口(55c)内を上方に流れて第2機械室(36)へ送られ、 中央導入口(32b)から第2機械室(36)に吸い込まれた空気は、凝縮器(23)を通過し、凝縮器(23)を通過した空気は、ラジエタ(45)の周囲を流れてラジエタ(45)の冷却に利用され、連通口(55c)を通過した空気と合流し、 第2機械室(36)で合流した後の空気は、2つの圧縮機(22,22)の周囲を流れるように、左右方向に分流」するものである。 そうすると、空気は、エンジン(41)、発電機(40)、凝縮器(23)、ラジエタ(45)で暖められたあと、圧縮機(22,22)の周囲を流れるものである。 そして、引用発明は、「輸送用冷凍装置(20)の起動時において、温度センサ(74)の検知温度が-20℃よりも低くなると、トレーラ用冷凍装置(20)は、庫外ファン(26) 、エンジン(41) 及び発電機(40) を駆動させ」、その後、「インバータ基板(71)が暖められ、そして、温度センサ(74)の検知温度が-20℃以上になると、トレーラ用冷凍装置(20)は冷凍運転を開始」するものであって、「圧縮機(22)は、インバータ基板(71)により回転数制御が為される容量可変の圧縮機(インバータ圧縮機)に構成され」ることを踏まえると、結局、エンジン(41)及び発電機(40)の駆動に伴い、検知温度が-20℃以上となってインバータが動作可能となることにより、圧縮機が運転されるものといえる(検知温度が-20℃未満の場合はインバータが動作しないので、当然圧縮機は運転されない。)。 そうすると、引用発明において、起動時に停止状態の圧縮機の周囲を流れる暖められた空気は、本件補正発明の「圧縮機の起動が停止している間に、前記圧縮機に熱を与えることのできる」ものといえる。 そうすると、引用発明の「発電機(40)及びエンジン(41)」は、「前記圧縮機の起動が停止している間に、前記圧縮機に熱を与えることのできる発熱要素」に相当する。 また、引2事項及び引3事項を踏まえると、潤滑不良の防止、液圧縮防止や吐出冷媒の温度を上昇させる等のために圧縮機の起動前に圧縮機を加熱することは、本願出願前に周知の事項(以下「周知事項2」という。)である。 そして、「エンジン(41)及び発電機(40)の冷却に利用された空気」及び「中央導入口(32b)から第2機械室(36)に吸い込まれた空気」は、合流した後、「2つの圧縮機(22,22)の周囲を流れるように、左右方向に分流」する態様を、上記周知事項2を踏まえてみると、引用発明において、圧縮機の起動時に圧縮機(22,22)が潤滑不良の防止、液圧縮防止や吐出冷媒の温度を上昇させる等のために加熱対象となるものであることは、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 ウ 請求人の主張について なお、請求人は、令和1年9月5日に提出された審判請求書において、以下のとおり主張している。 「4.本願発明と引用文献との対比 本願発明と引用文献1とは、圧縮機の運転状態が異なっている。つまり、本願発明は、圧縮機が停止している間に発熱要素を運転するのに対して、引用文献1は、圧縮機(22)が運転している間にインバータ基板(71)を暖める。 ヒートポンプサイクルにおいて、圧縮機の起動前に圧縮機の温度が所定温度以下の場合に、圧縮機を加熱することは例えば、引用文献2(段落0038参照)、引用文献3(要約、段落0026-0027参照)に開示されている。引用文献2および引用文献3においては、加熱される圧縮機は起動前、つまり運転が停止している。 しかるに、引用文献1に記載の発明においては、そもそも圧縮機が運転されていることを前提とするものである。したがって、圧縮機が停止していることを前提とする引用文献2および引用文献3を引用文献1に適用することは、格別な示唆がない限り、当業者であっても困難である。」 しかしながら、引用発明は、「輸送用冷凍装置(20)の起動時において、温度センサ(74) の検知温度が-20℃よりも低くなると、トレーラ用冷凍装置(20)は、庫外ファン(26) 、エンジン(41) 及び発電機(40) を駆動させる一方、ダンパコントローラ(63)は、ダンパ(62)を開状態にし、側方導入口(32c,32c)から第1機械室(35)に導入された空気は、エンジン(41)の近傍を流れてエンジン(41)から吸熱し、第1機械室(35)の空気は、連通口(55c)から第2機械室(36)に導入され、第2機械室(36)に導入された空気の一部は、空気ダクト(61)へ流入し、第2機械室(36)内の空気は、エンジン(41)から吸熱しているため比較的暖かい温度に構成されて、空気ダクト(61)を通過した空気は、第1機械室(35)へ導入され、 第1機械室(35)では、空気ダクト(61)から流出した空気によって、第1電装品箱(43)のヒートシンク(72)が暖められ、この暖められたヒートシンク(72)を介してインバータ基板(71)が暖められ、そして、温度センサ(74)の検知温度が-20℃以上になると、トレーラ用冷凍装置(20)は冷凍運転を開始する」ものであり、また、引用文献1には、他に、「具体的には、図10に示すように、トレーラ用冷凍装置(20)の起動時において、温度センサ(74) の検知温度が-20℃よりも低くなると、トレーラ用冷凍装置(20)は、庫外ファン(26) 、エンジン(41) 及び発電機(40) を駆動させる一方、ダンパコントローラ(63)は、ダンパ(62)を開状態にする。・・・そして、温度センサ(74)の検知温度が-20℃以上になると、トレーラ用冷凍装置(20)は冷凍運転を開始する。次に、トレーラ用冷凍装置(20)の運転中において、温度センサ(74)での検知温度が-20℃よりも低くなると、・・・」(【0067】)と記載されていて、引用文献1には、圧縮機の起動時を前提とし、圧縮機を制御するインバータ基板が予備加熱により-20℃以上とならないと圧縮機を動作することができないことが記載されているので、請求人の上記主張は採用できない。 エ 効果について そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知事項1、2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 オ まとめ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~11に係る発明は、平成31年1月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 <理由1(進歩性)> 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載の発明及び引用文献2、3にみられるような周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(上記第2の2(4)で表記したように「当業者」ともいう。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2010-286149号公報 引用文献2:特開2015-25579号公報 引用文献3:特開平9-48235号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1~3及びそれらの記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、「前記圧縮機の運転」と「前記発熱要素を運転」との関係について、本件補正発明において、「前記圧縮機の運転が停止している際に、所定の条件を満たすことにより、前記発熱要素を運転してから、前記圧縮機を運転する」としていたものを、「前記圧縮機の運転が停止している際に、所定の条件を満たすことにより、前記発熱要素を運転する」として、「発熱要素を運転してから、前記圧縮機を運転する」という限定を省いたものであり、本願発明と引用発明とは、上記相違点1及び2で相違する。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本件補正発明についての前記第2の[理由]2(3)及び(4)における検討を踏まえると、本願発明は、引用発明及び周知事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-011667

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