特許拒絶査定不服審判
2022-007615
アキュムレータおよび空調用圧縮機
- 審判番号
- 2022-007615
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-023105
- 請求日
- 2022年05月20日
- 審決日
- 2023年01月20日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 平城 俊雅
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P18 .121-Z (F25B) / P18 .575-Z (F25B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018- 23105「アキュムレータおよび空調用圧縮機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月22日出願公開、特開2019-138576〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30(2018)年2月13日の出願であって、令和3年9月8日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月15日に意見書及び手続補正書が提出され、令和4年2月7日付け(送達日:同年2月22日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年5月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 令和4年5月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年5月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年11月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
空調用圧縮機の圧縮機本体に隣接して設けられ、気液分離させた冷媒ガスを容器本体から配管を介して前記圧縮機本体へと供給するアキュムレータであって、
外縁が前記容器本体の内壁に取り付けられ、前記容器本体の内部で前記配管を支持する支持孔を有する支持部材を備え、
前記支持孔の中心は、前記圧縮機本体から伝達される最も支配的な加振力の方向に沿って前記支持部材の中心を通る中心線に対してずれており、
前記支持部材は、前記支持孔とは異なる位置であり、かつ前記内壁から離間した位置に、前記支持部材の中心を基準として対称となるように複数の対をなして配置された複数の貫通孔が形成されるとともに前記容器本体の上下方向中央部に設けられている
ことを特徴とするアキュムレータ。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
空調用圧縮機の圧縮機本体に隣接して設けられ、気液分離させた冷媒ガスを容器本体から配管を介して前記圧縮機本体へと供給するアキュムレータであって、
外縁が前記容器本体の内壁に取り付けられ、前記容器本体の内部で前記配管を支持する支持孔を有する支持部材を備え、
前記支持孔の中心は、前記圧縮機本体から伝達される最も支配的な加振力の方向に沿って前記支持部材の中心を通る中心線に対してずれており、
前記支持部材は、前記支持孔とは異なる位置であり、かつ前記内壁から離間した位置に、前記支持部材の中心を基準として対称となるように複数の対をなして配置された複数の貫通孔が形成されるとともに前記容器本体の上下方向中央部に設けられ、
前記支持部材は、前記支持孔が形成された底部と、前記底部の外縁から垂直に立ち上がる壁部と、有する椀状であり、前記底部の外縁と、前記壁部が前記容器本体の内壁に固定され、
前記支持孔は、前記配管が挿入される
ことを特徴とするアキュムレータ。」
2 補正の適否について
本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0026】、【0027】に基づくものであって、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。
また、本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「支持部材」に関して、「前記支持孔が形成された底部と、前記底部の外縁から垂直に立ち上がる壁部と、有する椀状であり、前記底部の外縁と、前記壁部が前記容器本体の内壁に固定され、」と限定するとともに、「支持孔」に関して、「前記配管が挿入される」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する(下線は当審にて付した。以下同様。)。
(1)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2006-299943号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。「・・・」は記載の省略を意味する。)。
ア「【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、密閉容器の径が比較的大きな場合でも、複数の出口管を二点支持により傾きのない多気筒圧縮機用アキュムレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために本発明は、複数の出口管を固定棒で下部容器に取り付けたものである。これにより、出口管の傾きなどの恐れがなく、アキュムレータの径が比較的大きな場合でも、複数の出口管を傾きなく正確かつ容易に取り付けることができる。」
イ「【0017】
図1において、上部容器2と、下部容器3を接続した円筒状の密閉容器1の上方に入口管4と、圧縮機(図示せず)と接続された前記密閉容器1の内部に挿入される複数の出口管5a,5bと、これら出口管5a,5bと前記入口管4との間に複数の孔6を有する仕切板7とが設置されている。前記複数の出口管5a,5bは、固定孔9a,9bを有する中間板8に挿入し固定され、さらにこの中間板8が前記下部容器3に取り付けられている。
【0018】
前記構成において、入口管4から流入した冷媒の液成分は、仕切板7に当たった後、この仕切板7に設けられた複数の孔6を通り、一旦、密閉容器1の下部に溜まった後、気化してから出口管5a,5bよりガス成分として圧縮機へ流出する。
【0019】
前記固定孔9a,9bを有する中間板8を前記下部容器3に溶接等の方法によって取り付けられる。このとき、中間板8は、治具などを用いることにより取り付けられる。その後、出口管5a,5bを固定孔9a,9bに挿入し固定する事により、下部容器3の下部にロウ付けなどの方法により傾くことなく取り付けることができる。」
ウ「【0028】
図3において、中間板8は、複数の固定孔9a,9bに加え、複数の開口部9cを構成している。
【0029】
入口管4から流入した冷媒の液成分が前記複数の開口部9cを通り、密閉容器1の下部に溜まる。その後、気化してから前記複数の開口部9cを通って出口管5a,5bよりガス成分として圧縮機へ流出する。
【0030】
これにより、複数の開口部9cは、冷媒の液成分とガス成分を通過させる事ができる。
・・・
【0032】
以上のように、本発明にかかる多気筒圧縮機用アキュームレータは、生産性の向上が可能となるので、冷凍空調機のみでなく、除湿機等で使用する用途にも適用できる。」
エ「 【図1】
[図:0001396087000001.jpg]
【図5】
[図:0001396087000002.jpg]
」
オ「 【図3】
[図:0001396087000003.jpg]
」
カ 段落【0017】には「図1において、・・・圧縮機(図示せず)と接続された前記密閉容器1の内部に挿入される複数の出口管5a,5bと、・・・が設置されている。」と記載されているから、図1のアキュムレータの出口管5a,5bは圧縮機と接続されており、図5に示す従来技術と同様にアキュムレータは、圧縮機に隣接して設けられているといえる。
キ 図3から、固定孔9a,9bの中心は、中間板8の中心を通る中心線に対してずれていることが看取できる。なお、中心線とは、図3における上下方向の線である。
ク 図3から、固定孔9a,9bとは異なる位置に、中間板8の中心を基準として対称となるように複数の対をなして配置された複数の開口部9cが形成されていることが看取できる。
また、図3において、中間板8の矢印は、開口部9cの外側を指しているから、開口部9cは中間板8を構成する部材で囲まれていることが看取できる。そうすると、中間板8を下部容器3に取り付けると、開口部9cは、中間板8の内部に形成されることになるから、開口部9cは、下部容器3の内壁から離間した位置に配置されるといえる。
そして、図1から、中間板8は密閉容器1の上下方向中央部に設けられることが看取できる。
以上のことから、中間板8は、固定孔9a,9bとは異なる位置であり、かつ下部容器3の内壁から離間した位置に、中間板8の中心を基準として対称となるように複数の対をなして配置された複数の開口部9cが形成されるとともに密閉容器1の上下方向中央部に設けられることが把握できる。
上記ア~クの事項を総合すると、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「圧縮機に隣接して設けられ、入口管4から流入した冷媒の液成分が、上部容器2と下部容器3を接続した密閉容器1の下部に溜まった後、気化してから出口管5a,5bよりガス成分として圧縮機へ流出する多気筒圧縮機用アキュムレータであって、
下部容器3に溶接等の方法によって取り付けられ、固定孔9a,9bを有する中間板8を備え、
固定孔9a,9bの中心は、中間板8の中心を通る中心線に対してずれており、
中間板8は、固定孔9a,9bとは異なる位置であり、かつ下部容器3の内壁から離間した位置に、中間板8の中心を基準として対称となるように複数の対をなして配置された複数の開口部9cが形成されるとともに密閉容器1の上下方向中央部に設けられ、
固定孔9a,9bには、出口管5a,5bが挿入されて固定され、
冷凍空調機のみでなく、除湿機等で使用する多気筒圧縮機用アキュムレータ。」
(2)引用文献1
原審の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2016-44965号公報には、以下の事項が記載されている。
ア「【0069】
図21は、変形例Cの共鳴抑制部材319の一変形例である下部共鳴抑制部材619の平面図である。下部共鳴抑制部材619は、図17に示される2シリンダタイプの圧縮機301に接続されるアキュームレータ311に用いることができる。下部共鳴抑制部材619は、2つの管通過孔619bと、2つの連通孔619aとを有している。2つの管通過孔619bは、下部共鳴抑制部材619の中央部に形成され、出口管313a,313bが通過する円形の孔である。管通過孔619bの径は、出口管313a,313bの外径に等しい。連通孔619aは、管通過孔619bの周囲において、下部共鳴抑制部材619の中心に対して2回対称の位置に形成されているアーチ状の孔である。なお、連通孔619aの形状は、アーチ状に限られない。また、出口管313a,313bは、管通過孔619bを通過する位置において、ロウ付け等によって下部共鳴抑制部材619に取り付けられてもよい。出口管313a,313bを下部共鳴抑制部材619に取り付けることで、出口管313a,313bの取り付け公差を小さくすることができる。」
イ「【0073】
図23は、本変形例に係るアキュームレータ11の縦断面図である。アキュームレータ11は、ケーシング12の上部および下部にそれぞれ取り付けられる上部共鳴抑制部材818および下部共鳴抑制部材819を備えている。図24は、上部共鳴抑制部材818の外観図である。図25は、上部共鳴抑制部材818の上面図である。上部共鳴抑制部材818は、底面部818aと側壁部818bとから構成されている。底面部818aは、本実施形態の共鳴抑制部材18に相当する環状部材である。底面部818aの中央部には、円形状の孔818cが形成されている。側壁部818bは、底面部818aの外縁部から直立して形成されている筒状の部材である。底面部818aおよび側壁部818bは、互いに別々の部材でもよく、一体の部材でもよい。上部共鳴抑制部材818の側壁部818bの外周面と、ケーシング12の内周面とを接触させ、側壁部818bとケーシング12とをロウ付けまたは溶接等によって接合することで、上部共鳴抑制部材818がケーシング12に固定される。上部共鳴抑制部材818に関する上記の説明は、下部共鳴抑制部材819にも適用可能である。」
ウ「 【図23】
[図:0001396087000004.jpg]
【図24】
[図:0001396087000005.jpg]
」
(3)引用文献3
当審において周知の技術として新たに引用する特開平5-322382号公報には、以下の事項が記載されている。
ア「【0018】図3において、本発明の特徴は、前記支持板15をアキュームレータ7の鏡板内面と曲管11の外面に接するよう深絞りの円環形状にするとともに鏡板内面と曲管11の外面にそれぞれ固定支持を支持する点である。」
イ「 【図3】
[図:0001396087000006.jpg]
」
(4)引用文献4
当審において周知の技術として新たに引用する実願昭62-119041号(実開昭64-25678号)のマイクロフィルムには、以下の事項が記載されている。
ア「第1図及び第2図に示すように、本体1の上下方向中間高さに本体1の内部空間を上下に仕切る円形のバッフル板12が配設され、このバッフル板12の外周は本体1の内面に密着固定され、かつ、その中央を吐出管2が封密的に貫通している。このバッフル板12の中心から距離lだけ偏心した位置に円形の穴13が穿設されている。」(第5頁第2~8行)
イ「
[図:0001396087000007.jpg]
」
(5)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「出口管5a,5b」は、本願補正発明の「配管」に相当する。引用発明の「上部容器2と下部容器3を接続した密閉容器1」は、本願補正発明の「容器本体」に相当する。
また、引用発明は、「冷凍空調機のみでなく、除湿機等で使用する」ものであるから、引用発明における圧縮機は、空調用圧縮機を含むものといえる。
そして、引用発明の「入口管4から流入した冷媒の液成分が、上部容器2と下部容器3を接続した密閉容器1の下部に溜まった後、気化してから出口管5a,5bよりガス成分として圧縮機へ流出する」態様は、本願補正発明の「気液分離させた冷媒ガスを容器本体から配管を介して前記圧縮機本体へと供給する」態様に相当する。
よって、引用発明の「圧縮機に隣接して設けられ、入口管4から流入した冷媒の液成分が、上部容器2と下部容器3を接続した密閉容器1の下部に溜まった後、気化してから出口管5a,5bよりガス成分として圧縮機へ流出する多気筒圧縮機用アキュムレータ」は、本願補正発明の「空調用圧縮機の圧縮機本体に隣接して設けられ、気液分離させた冷媒ガスを容器本体から配管を介して前記圧縮機本体へと供給するアキュムレータ」に相当する。
イ 引用発明の「固定孔9a,9b」は、本願補正発明の「支持孔」に相当する。
また、引用発明の「中間板8」は、当該中間板8が溶接等の方法によって下部容器3に取り付けられる際には、中間板8と下部容器3の配置(図1参照)からみて、中間板8の外縁が下部容器8の内壁に取り付けられるものと認められる。
そして、引用発明の「固定孔9a,9b」は、出口管5a,5bが挿入されて固定されるから、出口管5a,5bを支持するものといえる。
よって、引用発明の「下部容器3に溶接等の方法によって取り付けられ、固定孔9a,9bを有する中間板8」は、本願補正発明の「外縁が前記容器本体の内壁に取り付けられ、前記容器本体の内部で前記配管を支持する支持孔を有する支持部材」に相当する。
ウ 引用発明の「固定孔9a,9bの中心は、中間板8の中心を通る中心線に対してずれて」いる態様と、本願補正発明の「前記支持孔の中心は、前記圧縮機本体から伝達される最も支配的な加振力の方向に沿って前記支持部材の中心を通る中心線に対してずれて」いる態様とは、「前記支持孔の中心は、前記支持部材の中心を通る中心線に対してずれて」いる態様という限りにおいて一致する。
エ 引用発明の「開口部9c」は、本願補正発明の「貫通孔」に相当する。
よって、引用発明の「中間板8は、固定孔9a,9bとは異なる位置であり、かつ下部容器3の内壁から離間した位置に、中間板8の中心を基準として対称となるように複数の対をなして配置された複数の開口部9cが形成されるとともに密閉容器1の上下方向中央部に設けられ」る態様は、本願補正発明の「前記支持部材は、前記支持孔とは異なる位置であり、かつ前記内壁から離間した位置に、前記支持部材の中心を基準として対称となるように複数の対をなして配置された複数の貫通孔が形成されるとともに前記容器本体の上下方向中央部に設けられ」る態様に相当する。
オ 引用発明の「固定孔9a,9bには、出口管5a,5bが挿入されて固定され」る態様は、本願補正発明の「前記支持孔は、前記配管が挿入される」態様に相当する。
引用発明の「多気筒圧縮機用アキュムレータ」は、本願補正発明の「アキュムレータ」に相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「空調用圧縮機の圧縮機本体に隣接して設けられ、気液分離させた冷媒ガスを容器本体から配管を介して前記圧縮機本体へと供給するアキュムレータであって、
外縁が前記容器本体の内壁に取り付けられ、前記容器本体の内部で前記配管を支持する支持孔を有する支持部材を備え、
前記支持孔の中心は、前記支持部材の中心を通る中心線に対してずれており、
前記支持部材は、前記支持孔とは異なる位置であり、かつ前記内壁から離間した位置に、前記支持部材の中心を基準として対称となるように複数の対をなして配置された複数の貫通孔が形成されるとともに前記容器本体の上下方向中央部に設けられ、
前記支持孔は、前記配管が挿入される
アキュムレータ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
支持部材の中心を通る中心線に関して、本願補正発明は、「前記圧縮機本体から伝達される最も支配的な加振力の方向に沿って」いるものであるのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
[相違点2]
本願補正発明では、「前記支持部材は、前記支持孔が形成された底部と、前記底部の外縁から垂直に立ち上がる壁部と、有する椀状であり、前記底部の外縁と、前記壁部が前記容器本体の内壁に固定され」るのに対し、引用発明では、中間板8が、下部容器3に溶接等の方法によって取り付けられる点。
(6)判断
ア 上記[相違点1]について検討する。
引用発明の多気筒圧縮機用アキュムレータは、図5に示すように多気筒圧縮機に隣接して設けられるものであるから、多気筒圧縮機から加振力を受けることは、自明な事項である。
そして、多気筒圧縮機と多気筒圧縮機用アキュムレータとの間には、出口管5a,5bが設けられており、出口管5a,5bは、各々、多気筒圧縮機下部の各気筒に接続されているものと認められるから、出口管5a,5bが主要な加振源となることは、明らかである。
ここで、引用発明における出口管5a,5bは、図5に示すように多気筒圧縮機から離れる方向に2つ並んで配置されており、中間板8における出口管5a,5bを挿入する固定孔9a,9bも同様の配置となっており、中間板8の固定孔9a,9bの中心は中心線からずれている。
そして、このような配管(出口管5a,5b)及び支持部材(中間板8)における支持孔(固定孔9a,9b)の配置において、中間板8の中心線が圧縮機から伝達される最も支配的な加振力の方向に沿うものであることは、技術常識である(例えば、佐野 潔他,”密閉型圧縮機の低騒音化、低振動化のための研究 第4報:圧縮機の振動とその伝搬制御”,日本冷凍空調学会論文集,1997年,第14巻第3号,p.233~243参照)。
よって、上記相違点1は、実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点であるとしても、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
イ 上記[相違点2]について検討する。
アキュムレータの内部で配管を支持する支持部材を、支持孔が形成された底部と、該底部の外縁から垂直に立ち上がる壁部と有する椀状に形成するとともに、支持部材の底部と壁部をアキュムレータの内壁に固定することは、周知の技術である(例えば、上記(2)から(4)に記載された引用文献1、3、4を参照のこと。)。
引用発明と上記周知の技術とは、アキュムレータの内部で支持部材により配管を支持する点において作用・機能が共通するものであるから、引用発明において、上記周知の技術の支持部材の構造を採用し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 本願補正発明が奏する効果について
本願補正発明の効果は、配管から支持部材へと伝達される最も支配的な加振力の一部が支持部材をひねる方向に分散される。その結果、配管から支持部材を介してアキュムレータの容器本体へと伝達される加振力を低減させることができるというものである(段落【0007】)。
これに対して引用発明は、上記(6)アで検討したとおり、配管(出口管5a,5b)及び支持部材(中間板8)における支持孔(固定孔9a,9b)の配置は、本願補正発明と同様のものであるから、本願補正発明と同様の効果を奏することは、明らかである。
よって、本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び周知の技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。
エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「引用文献2には、中間板8で、複数の出口管を支持することが記載されおり、中間板8の容器本体側に開口が形成されているが、貫通孔を内壁から離間した位置に移動させることは、必然的に開口面積が小さくなることとなるため、「前記支持部材は、前記支持孔が形成された底部と、前記底部の外縁から垂直に立ち上がる壁部と、有する椀状であり、前記底部の外縁と、前記壁部が前記容器本体の内壁に固定され、前記支持孔は、前記配管が挿入される」構造とすることは当業者にとって容易ではない。」(審判請求書第8頁第2~8行)と主張する。
しかしながら、上記(1)クで検討したとおり、引用文献2の図3において、中間板8の矢印は、開口部9cの外側を指しているから、開口部9cは中間板8を構成する部材で囲まれていることが看取できる。そうすると、中間板8を下部容器3に取り付けると、開口部9cは、中間板8の内部に形成されることになるから、開口部9cは、下部容器3の内壁から離間した位置に配置されるといえる。
また、上記(6)イで検討したとおり、アキュムレータの内部で配管を支持する支持部材を、支持孔が形成された底部と、該底部の外縁から垂直に立ち上がる壁部と有する椀状に形成するとともに、支持部材の底部と壁部をアキュムレータの内壁に固定することは、周知の技術である。
そして、引用発明における複数の開口部9cは、冷媒の液成分とガス成分を通過させるものであるから(引用文献2の段落【0030】)、多少小さくしてもアキュムレータの機能を損なうものではなく、引用発明に周知の技術を適用する際においても、開口部9cの大きさは、必要に応じて適宜調節可能なものであるといえる。
よって、請求人の主張は採用できない。
(7)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~4に係る発明は、令和3年11月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1(1)」に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献2:特開2006-299943号公報
3 引用文献2の記載事項及び引用発明
引用文献2の記載事項及び引用発明は、前記「第2[理由]3(1)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明の「支持部材」に関して、「前記支持孔が形成された底部と、前記底部の外縁から垂直に立ち上がる壁部と、有する椀状であり、前記底部の外縁と、前記壁部が前記容器本体の内壁に固定され、」との限定を削除するとともに、「支持孔」に関して、「前記配管が挿入される」との限定を削除するものである。
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、前記「第2[理由]3(5)」で検討した相違点1において相違するが、前記「第2[理由]3(6)(7)」で検討した理由と同様の理由により、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである
5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-007615