特許拒絶査定不服審判
2021-012143
分割レベル吸着冷却システム
- 審判番号
- 2021-012143
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-536272
- 請求日
- 2021年09月10日
- 審決日
- 2022年08月03日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ブライ・エアー・アジア・ピーヴイティー・リミテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 松下 聡
- 審判官 丹治 和幸
- 分類
- P18 .113-Z (F25B) / P18 .121-Z (F25B) / P18 .575-Z (F25B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-536272号「分割レベル吸着冷却システム」拒絶査定不服審判事件〔2016年7月14日国際公開、WO2016/110871、平成30年3月1日国内公表、特表2018-506013号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)1月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年(平成27年)1月8日(IN)インド)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年10月31日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 5月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月25日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 5月 7日 :意見書の提出
令和 2年 6月16日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 9月24日 :意見書の提出
令和 3年 1月 6日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 3月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 4月23日付け:拒絶査定
令和 3年 9月10日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年 5月13日 :上申書の提出
第2 令和3年9月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年9月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「【請求項1】
少なくとも1つの圧縮手段が熱圧縮手段である1つまたは複数の圧縮手段、および凝縮手段から本質的に成る第1の構成要素であって、前記熱圧縮手段が、吸着ユニット又はハイブリッド蒸気圧縮/吸着ユニット又は吸収ユニット又はハイブリッド蒸気圧縮/吸収ユニットである、第1の構成要素と、
専用の筐体に各々設けられ、蒸発手段を備える、前記第1の構成要素から分離して配置された1つまたは複数の第2の構成要素と
を本質的に備え、
各々の蒸発手段は、1つまたは複数の吸い込みラインと、1つまたは複数の液体ラインとを通じて、前記凝縮手段に接続され、
前記1つまたは複数の前記吸い込みラインは、吐出された冷媒流体を、各々の前記蒸発手段から、前記1つまたは複数の圧縮手段を通じて、前記凝縮手段へと提供し、
前記1つまたは複数の液体ラインは、冷媒流体を、前記凝縮手段から各々の前記蒸発手段へと搬送する、分割式エアコンディショニングユニット。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の令和3年3月23日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも1つの圧縮手段が熱圧縮手段である1つまたは複数の圧縮手段、および凝縮手段から本質的に成る第1の構成要素と、
専用の筐体に各々設けられ、蒸発手段を備える、前記第1の構成要素から分離された1つまたは複数の第2の構成要素と
を本質的に備え、
各々の蒸発手段は、1つまたは複数の吸い込みラインと、1つまたは複数の液体ラインとを通じて、前記凝縮手段に接続され、
前記1つまたは複数の前記吸い込みラインは、吐出された冷媒流体を、各々の前記蒸発手段から、前記1つまたは複数の圧縮手段を通じて、前記凝縮手段へと提供し、
前記1つまたは複数の液体ラインは、冷媒流体を、前記凝縮手段から各々の前記蒸発手段へと搬送する、分割式エアコンディショニングユニット。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1における「第1の構成要素」に対して「であって、前記熱圧縮手段が、吸着ユニット又はハイブリッド蒸気圧縮/吸着ユニット又は吸収ユニット又はハイブリッド蒸気圧縮/吸収ユニットである」ことをさらに限定するとともに、「分離された」を「分離して配置された」とすることにより、分離することに加えてさらに「配置」することを限定する補正であって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、全体として、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用例の記載等
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用例である特開平10-176872号公報には、図面とともに以下の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。
(ア)引用例1の記載
a)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のようなヒートポンプは、比較的蒸発潜熱が大きな水やアルコール類を作動流体として用いているため、効率的に冷熱を得ることができる。しかしながら、このような作動流体は、常温での蒸気圧が低いため、作動流体蒸気発生装置と吸着装置との間に十分な圧力勾配を形成するのが困難である。このため、作動流体蒸気発生装置と吸着装置との間で作動流体を滞りなく移動させるためには、作動流体蒸気発生装置と吸着装置とを近接して配置する必要がある。
【0007】この結果、例えばビル用の冷房機に上述のようなヒートポンプを採用する場合は、作動流体蒸気発生装置と吸着装置とを有する上述のヒートポンプからなる室外機の他に、当該室外機の作動流体蒸気発生装置で得られた冷熱を伝達するための冷却水用の循環経路と、当該循環経路を流れる冷却水から得られる冷熱により空気を冷却して室内に送風するための室内機とを別途設ける必要がある。このような冷房機は、室外機の作動流体蒸気発生装置で得られた冷熱を冷却水を介して室内機に伝達することになるため、熱伝達効率を高めるのが困難である。また、冷却水の循環経路などの複雑な配管系を設ける必要があり、さらに室内機側にも専用の熱交換機を配置する必要があることから、安価に構成するのが困難である。
【0008】本発明の目的は、作動流体蒸気発生装置と吸着装置とを離して配置することができる吸着式ヒートポンプを実現することにある。」
b)「【0012】
【発明の実施の形態】図1に、本発明の実施の一形態に係るヒートポンプが採用された冷房装置を示す。図において、冷房装置1は、室外機2と室内機3とを主に備えている。室外機2は、例えばビルの屋上に設置されるものであり、主に、第1吸着装置4と、第2吸着装置5と、凝縮器6とを備えている。
【0013】第1吸着装置4は、内部に吸着材7が充填されており、また、その吸着材7を加熱・冷却するための伝熱管8を有している。・・・」
c)「【0019】第2吸着装置5は、内部に吸着材9が充填されており、また、その吸着材9を加熱・冷却するための伝熱管10を有している。なお、吸着材9は、第1吸着装置4内に充填されたものと同様のものであり、充填密度が第1吸着装置4の場合と同様に設定されている。また、伝熱管10は、第1吸着装置4内に配置された伝熱管8と同様の材料を用いて同様に構成されている。」
d)「【0022】上述のような第1吸着装置4、第2吸着装置5および凝縮器6を備えた室外機2において、第1吸着装置4と凝縮器6とは、途中にバルブ12aを有する連絡管12により連絡されている。また、第2吸着装置5と凝縮器6とは、途中にバルブ13aを有する連絡管13により接続されている。
【0023】室内機3は、例えばビル内の部屋に設置されるものであり、蒸発器14と膨張弁15とを有している。蒸発器14内には、蒸発管16(作動流体蒸気発生装置の一例)と、蒸発器14内の空気を外部に排出するための送風ファン17とが配置されている。蒸発管16の一端は、膨張弁15の片側に連結しており、また、蒸発管16の他端は、室外機2との連絡管18に連結している。膨張弁15の他方の側には、室外機2の凝縮器6から延びかつ室外機2内に配置された送液ポンプ19を有する連絡管20の端部が接続している。連絡管18は、室内機2(当審注:「室外機2」の誤記と認める。)内において2つの分岐管18a,18bに分岐しており、一方の分岐管18aは第1吸着装置4に、また他方の分岐管18bは連絡管13を介して第2吸着装置5にそれぞれ接続している。ここで、分岐管18bは、第2吸着装置5とバルブ13aとの間において、連絡管13に接続している。なお、分岐管18a,18bは、それぞれバルブ19a,19bを有している。
【0024】次に、上述の冷房装置1の動作について説明する。なお、ここでは、バルブ19a,13aが開放状態にあり、バルブ12aおよび19bが閉鎖状態に設定されているものとする。
【0025】送液ポンプ19を作動させると、凝縮器6内に貯溜された作動流体は連絡管20を介して室内機3の膨張弁15へ連続的に供給される。膨張弁15に供給された作動流体は、そこで低圧になり蒸発管16内に導入される。これにより、作動流体は気化して蒸気となるが、この際の蒸発潜熱により蒸発器14内の空気が冷却される。冷却された空気は、図1に矢印で示すように、送風ファン17により蒸発器14の外部に排出される。この結果、室内機3が設置された室内は冷却されることになる。
【0026】蒸発管16内で蒸気となった作動流体は、連絡管18および分岐管18aを介して第1吸着装置4内に導入され、吸着材7に吸着される。このため、蒸発器14に対して第1吸着装置4側が低圧になり、蒸発器14と第1吸着装置4との間に圧力勾配が形成される。この結果、蒸発管16内は膨張弁15に対して常時減圧状態に維持されることになり、膨張弁15から蒸発管16内へ供給される作動流体は滞り無く連続的に蒸発して第1吸着装置4内に導入されることになる。ここで形成される上述の圧力勾配は、上述のような常温での蒸気圧が高い作動流体に対して所定の吸着材7を組合わせて用いているために作動流体の蒸気が吸着材7に吸着され易いので、作動流体の蒸気を蒸発器14側から第1吸着装置4側へ遠隔搬送するのに理想的な状態に形成される。このため、冷房機1は、上述のように室外機2をビルの屋上に設置して室内機3をビルの室内に設置するような、室外機2と室内機3とを離して設置することが可能になる。
【0027】なお、吸着材7が作動流体の蒸気を吸着する際に発生する吸着熱は、伝熱管8内を循環する冷却水により吸収されて除去される。
【0028】上述のような工程が進行し、第1吸着装置4内の吸着材7にある程度の作動流体の蒸気が吸着すると、次に、バルブ19a,13aを閉鎖し、また、バルブ12a,19bを開放する。これにより、蒸発管16からの作動流体の蒸気は、連絡管18および分岐管18bを介して第2吸着装置5内に導入され、その吸着材9に吸着される。この結果、蒸発器14と第2吸着装置5との間に圧力勾配が形成されることになり、蒸発器14では引き続き空気が冷されて排出される。
【0029】一方、第1吸着装置4の伝熱管8には、冷却水に代えて熱媒を循環させる。これにより、吸着材7が加熱され、作動流体の蒸気が吸着材7から脱離する。この結果、吸着材7は再生され、再度作動流体の蒸気を吸着することができる状態に復帰する。吸着材7から脱離した作動流体の蒸気は、第1吸着装置4に対して低圧になる凝縮器6内に連絡管12を介して移動し、そこで凝縮して貯溜される。この作動流体は、再び連絡管20を介して室外機3(当審注:「室内機3」の誤記と認める。)へ供給され、再利用される。なお、伝熱管8に循環させる熱媒としては、例えば、コージェネレーションシステムや工場からの排熱を利用することができる。
【0030】上述のような工程後、再びバルブ19a,13aを開放しかつバルブ12a,19bを閉鎖し、同時に第1吸着装置4の伝熱管8には冷却水を、また第2吸着装置5の伝熱管10には熱媒をそれぞれ循環させる。これにより、蒸発管16からの作動流体の蒸気は第1吸着装置4内に導入されてその吸着材7に吸着されるようになり、また、第2吸着装置5では、吸着材9に吸着されていた作動流体の蒸気が吸着材9から脱離して凝縮器6へ移動し、吸着材9が再生される。したがって、バルブ12a,13a,19a,19bの操作により作動流体の蒸気を吸着するための吸着装置として第1吸着装置4または第2吸着装置5のいずれかを選択し、また、伝熱管8,10内を循環する熱伝達媒体を変更することにより、この冷房機1は連続運転が可能になる。」
e)図1
[図:0001392648000001.jpg]
(イ)上記(ア)から分かること
f)上記(ア)d)段落【0026】及び図1の記載からみて、室外機2はビルの屋上に設置されるものであり、室内機3はビルの室内に設置され、室外機2と室内機3は離して設置されるものであることが分かる。
g)上記(ア)d)段落【0028】、【0029】及び図1の記載からみて、連絡管18は、蒸発管16内で蒸気となった作動流体を蒸発器14から第1吸着装置4又は第2吸着装置5を介して室外機2の凝縮器6に供給し、連絡管20は、作動流体を凝縮器6から蒸発器14へ供給することが分かる。
(ウ)引用発明
上記(ア)、(イ)の記載を総合すると、引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「第1吸着装置4と第2吸着装置5、及び凝縮器6からなるビルの屋上に設置した室外機2と、
ビルの室内に設置され、蒸発器14を備える、前記室外機2から離して設置された室内機3とを備え、
蒸発器14は、室外機2と連結する連絡管18と、連絡管20とを通じて凝縮器6に接続され、
連絡管18は、蒸発管16内で蒸気となった作動流体を蒸発器14から第1吸着装置4又は第2吸着装置5を介して室外機2の凝縮器6に供給し、
連絡管20は、作動流体を凝縮器6から蒸発器14へ供給する、冷房装置1。」
(3)対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「第1吸着装置4と第2吸着装置5」は、内部に吸着材7が充填された吸着装置であり(段落【0013】、【0026】)、蒸発管16内で蒸気となった作動流体を吸着する複数の圧縮手段である熱圧縮手段といえるものであるから、本件補正発明における「少なくとも1つの圧縮手段が熱圧縮手段である1つまたは複数の圧縮手段」に相当し、以下同様に、「凝縮器6」は「凝縮手段」に相当する。そうすると、引用発明における「第1吸着装置4と第2吸着装置5、及び凝縮器6からなるビルの屋上に設置した室外機2」は、本件補正発明における「少なくとも1つの圧縮手段が熱圧縮手段である1つまたは複数の圧縮手段、および凝縮手段から本質的に成る第1の構成要素」に相当する。
また、引用発明における「第1吸着装置4と第2吸着装置5」は、蒸発管16内で蒸気となった作動流体を吸着することから、それぞれ本件補正発明における「吸着ユニット」にも相当するところ、本件補正発明における「吸着ユニット又はハイブリッド蒸気圧縮/吸着ユニット又は吸収ユニット又はハイブリッド蒸気圧縮/吸収ユニットである」は択一的構成要件であり、熱圧縮手段が「吸着ユニット」である第1の構成要素を含むものであるから、引用発明は、本件補正発明における「前記熱圧縮手段が、吸着ユニット又はハイブリッド蒸気圧縮/吸着ユニット又は吸収ユニット又はハイブリッド蒸気圧縮/吸収ユニットである、第1の構成要素」を備えるといえる。
引用発明における「蒸発器14」は、本件補正発明における「蒸発手段」に相当し、室外機2から離して設置された室内機3に設けられるものであり、室内機3はごく一般的に専用の筐体に設けられることから、引用発明における「ビルの室内に設置され、蒸発器14を備える、前記室外機2から離して設置された室内機3とを備え」は、本件補正発明における「専用の筐体に各々設けられ、蒸発手段を備える、前記第1の構成要素から分離して配置された1つまたは複数の第2の構成要素とを本質的に備え」に相当する。
引用発明における「連絡管18」は、本件補正発明における「1つまたは複数の吸い込みライン」に相当し、同様に「連絡管20」は、「1つまたは複数の液体ライン」に相当するものであるから、引用発明における「蒸発器14は、室外機2と連結する連絡管18と、連絡管20とを通じて凝縮器6に接続され」は、本件補正発明における「各々の蒸発手段は、1つまたは複数の吸い込みラインと、1つまたは複数の液体ラインとを通じて、前記凝縮手段に接続され」に相当する。
引用発明における「蒸発管16内で蒸気となった作動流体」は、本件補正発明における「吐出された冷媒流体」に相当するものであるから、引用発明における「連絡管18は、蒸発管16内で蒸気となった作動流体を蒸発器14から第1吸着装置4又は第2吸着装置5を介して室外機2の凝縮器6に供給し」は、本件補正発明における「前記1つまたは複数の前記吸い込みラインは、吐出された冷媒流体を、各々の前記蒸発手段から、前記1つまたは複数の圧縮手段を通じて、前記凝縮手段へと提供し」に相当する。
引用発明における「連絡管20」は、本件補正発明における「1つまたは複数の液体ライン」に相当するものであるから、引用発明における「連絡管20は、作動流体を凝縮器6から蒸発器14へ供給する」は、本件補正発明における「前記1つまたは複数の液体ラインは、冷媒流体を、前記凝縮手段から各々の前記蒸発手段へと搬送する」に相当する。
さらに、引用発明における「冷房装置1」は、ビルの室内に設置された室内機3による冷房装置であって、室内機3は室外機2から離して設置されたものであるから、本件補正発明における「分割式エアコンディショニングユニット」に相当するものである。
そうすると、本件補正発明と引用発明には相違点がない。
したがって、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
また、仮に、引用発明と本件補正発明の上記構成要件に設計上の微差があったとしても、「室外機2と室内機3とを離して設置する」(段落【0026】)ことができ、構成上、差異のない冷房装置である引用発明からみて、本件補正発明が格別の効果を奏するとは認められず、かつ、本願の明細書を参酌しても、請求項1に特定された構成を有する本件補正発明が奏する効果が引用発明と異なる点を読み取ることはできない以上、本件補正発明は当業者が引用発明から予測する範囲を超えた顕著な効果を奏するということもできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
なお、審判請求人は、審判請求書において「引用文献1~5には、蒸発器が第1の構成要素の圧縮機/凝縮器から分離して配置されかつ圧縮機/凝縮器が熱圧縮に基づいていることは示されていない。・・・引用文献1及び2に記載の装置と本願発明の装置との構造的な差異に加えて、引用文献1~5には、装置が、熱圧縮手段及び凝縮手段を備える第1の構成要素を有し、熱圧縮手段が吸着ユニット又はハイブリッド蒸気圧縮/吸着ユニットであることは開示も示唆もなされていない。」と主張しているが、本件補正発明の蒸発手段に相当する引用発明の「蒸発器14」は「第1吸着装置4」、「第2吸着装置5」及び「凝縮器6」から分離して配置され、当該2つの吸着装置は熱圧縮手段に相当するものであることは、上記に説示したとおりである。
さらに、審判請求人は、令和4年5月13日に提出した上申書において、「引用文献1及び2に関しまして、審査官殿は、温度の幅広い範囲にわたって動作する、排熱エネルギーが動作を駆動することができる、吸着システムが配向が独立しているとともに分割式蒸発器と組み合わせられるという本願発明の装置の柔軟性を見落とされているものと思料いたします。また、審査官殿は、引用文献1に記載の発明は、本願発明の装置では排除されている冷水回路を必要とするものと考えられるという事実を考慮されていないものと思料いたします。実際には、引用文献1に記載の発明は、本願発明の『エアコンディショニングユニット』ではなくヒートポンプです。」と主張しているが、これらの主張は具体性がなく、本件補正発明のどの構成を根拠に主張しているのかも明らかではない。さらに、引用発明は、室外機2及び室内機3を備える冷房装置であって、本件補正発明の「エアコンディショニングユニット」に相当するものであることは明らかである。
したがって、審判請求人の上記主張は、いずれも採用できない。
(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
1 本願発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、引用例1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである(令和3年4月23日付けの拒絶査定のタイトル「●理由1(特許法第29条第1項第3号)について」は、特許法第29条第2項の記載漏れがあるが、その本文では「特許法第29条第2項により特許を受けることができない。」との判断もなされており、同査定の前提となる令和3年1月6日付け拒絶理由通知でも「●理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について」とのタイトルのもとで特許法第29条第1項第3号及び同第29条第2項の判断がなされている。)。
・請求項1に対し、引用例1
<引用例一覧>
1.特開平10-176872号公報
3 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1の記載事項は、前記第2 2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2 2で検討した本件補正発明における「第1の構成要素」から「であって、前記熱圧縮手段が、吸着ユニット又はハイブリッド蒸気圧縮/吸着ユニット又は吸収ユニット又はハイブリッド蒸気圧縮/吸収ユニットである」の限定を省くとともに、「分離して配置された」から「配置」することの限定を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2 2(3)に記載したとおり、引用発明であるか、又は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明であるか、又は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-012143