特許拒絶査定不服審判
2019-008910
カラーフィルタ用着色組成物およびカラーフィルタ
- 審判番号
- 2019-008910
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-206840
- 請求日
- 2019年07月03日
- 審決日
- 2020年06月11日
- 公報発行日
- 2020年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東洋インキSCホールディングス株式会社
- 【請求人】トーヨーカラー株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 樋口 信宏
- 審判官 宮澤 浩
- 審判官 井口 猶二
- 分類
- P18 .113-Z (G02B) / P18 .121-Z (G02B) / P18 .161-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-206840「カラーフィルタ用着色組成物およびカラーフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月12日出願公開、特開2016- 75829〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年10月8日の出願であって、平成30年2月19日付けで拒絶理由が通知され、同年4月11日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年9月19日付けで拒絶理由が通知され、同年11月7日に意見書の提出とともに手続補正がなされたところ、平成31年4月15日付けで、平成30年11月7日付け手続補正書でした補正の却下の決定がなされるとともに、拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和元年7月3日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
第2 本件補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和元年7月3日にした手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、平成30年4月11日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1の
「一般式(1)で表わされるシアニン色素(ZC)を含有する着色剤と、バインダー樹脂と、熱硬化性化合物(D)および酸化防止剤(E)の少なくとも1つとを含有することを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物。
【化1】
[一般式(1)において、
Aは置換基もしくは水素原子を有する炭素原子、または硫黄原子を表す。
R3~R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のアシル基を表す。
R11は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。
R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、重合性官能基を有する有機基、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表す。
Y-は、下記一般式(2)で表わされるイミド酸アニオン、下記一般式(3)で表わされるフッ素基含有ホウ素アニオン、下記一般式(4)で表わされるメチド酸アニオン、および下記一般式(5)で表わされる構造単位を有するビニル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンを表す。
ただし、Y-がハロゲン化物イオンである場合は除く。]
【化2】
[一般式(2)において、R21およびR22はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有してもよい複素環基を表し、R21は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、または置換基を有してもよい脂環式炭化水素基であり、R22は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有してもよい複素環基を表す。]
【化3】
[一般式(3)において、
R31~R34はそれぞれ独立に、フッ素原子で置換されていても良いアルキル基、シアノ基、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていても良いアリール基を表し、
R31~R34のうち少なくとも一つは、フッ素原子で置換されていても良いアルキル基、フッ素原子、またはフッ素原子で置換されていても良いアリール基を表す。ただし、R31~R34がすべてフッ素原子である場合は除く。]
【化4】
[一般式(4)において、
R41~R43はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、または置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表す。]
【化5】
[一般式(5)において、
R51は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
Qは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、-CONH-R52-、または-COO-R52-を表し、
R52は置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。
P-は、―SO3-、または-COO-を表す。]」を、
「一般式(1)で表わされるシアニン色素(ZC)を含有する着色剤と、バインダー樹脂と、熱硬化性化合物(D)および酸化防止剤(E)の少なくとも1つとを含有することを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物。
【化1】
[一般式(1)において、
Aは置換基もしくは水素原子を有する炭素原子、または硫黄原子を表す。
R3~R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のアシル基を表す。
R11は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。
R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、重合性官能基を有する有機基、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表す。
Y-は、下記一般式(2)で表わされるイミド酸アニオン、および下記一般式(5)で表わされる構造単位を有するビニル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンを表す。]
【化2】
[一般式(2)において、R21は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、または置換基を有してもよい脂環式炭化水素基であり、R22は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基(ただし、前記置換基から脂肪族炭化水素基およびアルコキシシリル基を除く)、または置換基を有してもよい複素環基を表す。]
【化3】
[一般式(5)において、
R51は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
Qは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、-CONH-R52-、または-COO-R52-を表し、
R52は置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。
P-は、―SO3-、または-COO-を表す。]」(以下、「本件補正発明」という。また、下線部は補正箇所を示すものである。)
と補正するものである。
2 補正事項
本件補正は、平成30年4月11日付けの手続補正書の請求項1に係る発明における発明特定事項である「シアニン色素(ZC)」の一般式(1)における「Y-」の選択肢について補正するものであって、以下の補正事項を含んでいる。
(1)補正事項1
本件補正前の「Y-」の選択肢から「一般式(3)で表わされるフッ素基含有ホウ素アニオン」及び「一般式(4)で表わされるメチド酸アニオン」を省くとともに「ただし、Y-がハロゲン化物イオンである場合は除く」とする要件を削除する補正事項
(2)補正事項2
本件補正前の「一般式(2)」について、「R21およびR22はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有してもよい複素環基を表し」とする要件を削除するとともに、R22の選択肢の芳香族炭化水素基について「(ただし、前記置換基から脂肪族炭化水素基およびアルコキシシリル基を除く)」とする要件を付加する補正事項
(3)補正事項3
本件補正前の「一般式(5)」における「Q」の選択肢について、「単結合」を付加する補正事項
3 補正の目的
(1)補正事項1のうち、本件補正前の「Y-」の選択肢から「一般式(3)で表わされるフッ素基含有ホウ素アニオン」及び「一般式(4)で表わされるメチド酸アニオン」を省く補正事項は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものといえる。
また、補正事項1のうち、「ただし、Y-がハロゲン化物イオンである場合は除く」とする要件を削除する補正事項は、本件補正前の「Y-」が「下記一般式(2)で表わされるイミド酸アニオン、下記一般式(3)で表わされるフッ素基含有ホウ素アニオン、下記一般式(4)で表わされるメチド酸アニオン、および下記一般式(5)で表わされる構造単位を有するビニル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンを表す。」と特定されていたところ、「Y-がハロゲン化物イオンである場合」は既に省かれていたといえるから、当該補正事項は特許請求の範囲の記載を整理したものといえる。
(2)補正事項2のうち、「R21およびR22はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有してもよい複素環基を表し」とする要件を削除する補正事項は、本件補正前の「一般式(2)」において「R21は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、または置換基を有してもよい脂環式炭化水素基であり、R22は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有してもよい複素環基を表す。」と特定されていたところ、R21及びR22についての記載を整理したものといえる。
また、R22の選択肢の芳香族炭化水素基について「(ただし、前記置換基から脂肪族炭化水素基およびアルコキシシリル基を除く)」とする要件を付加する補正事項は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものといえる。
(3)補正事項3は、平成30年9月19日付けの拒絶理由通知において通知された特許法第36条に係る拒絶の理由に示された事項を解消するものであって、発明の詳細な説明と整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえる。
(4)以上のとおり、本件補正は、発明特定事項を限定する補正事項を含むものである。そして、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるといえる(段落【0001】及び【0008】)。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含んでいるといえる。
そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
4 引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用文献Aの記載事項
平成31年4月15日付けの補正の却下の決定において引用され、本願の出願前の平成25年4月22日に、日本国内又は外国において頒布された、特開2013-72030号公報(以下、「引用文献A」という。)には、以下の記載事項がある。
なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子、液晶表示素子等に用いられるカラーフィルタの製造に好適な色素構造を有する樹脂を含有する着色組成物、着色硬化膜、カラーフィルタ、その製造方法、及び固体撮像素子に関する。
(中略)
【0004】
従来、着色剤として顔料を用いてカラーフィルタが作製されてきたが、顔料に代えて染料を用いることが検討されている。染料を用いる場合、以下に示す点が特に問題となる。(1)染料は、一般に顔料に比べて、耐光性、耐熱性に劣る。特に、液晶ディスプレイなどの電極として多用されているITO(酸化インジウムスズ)の成膜時の高温工程により、光学特性が変化してしまうという問題がある。
(中略)
【0007】
このような問題を解決する方法として、色素をポリマー化して色素構造を有する樹脂とすることでこれらの問題を解決する方法が開示されている(例えば、特許文献1~4参照)。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、着色組成物に含有させる成分として色素構造を有する樹脂を使用すると、前記樹脂の低分子量成分(特に分子量2000以下の成分)の分子運動性が大きいことにより樹脂の分子量分布全体のピーク面積に対して10%以上存在すると着色パターンの色抜けの原因及び耐熱性の悪化の原因として顕在化し得、また、前記低分子量成分の疎水性が大きくなる傾向にあることからパターン露光後の現像時の残渣の原因として顕在化し得るという問題を本発明者らは見出している。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされるに至ったものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の第1の目的は、形成する着色パターンの色抜けを抑制し、現像性及び耐熱性に優れる着色パターンを形成しうる着色組成物を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、形成する着色パターンの色抜けを抑制し、現像性及び耐熱性に優れる着色パターンを形成しうる着色硬化膜、該着色パターンを備えたカラーフィルタ及びその製造方法を提供することにある。
更に、本発明の第3の目的は、前記カラーフィルタを備えることにより耐色抜け性及び耐熱性に優れる固体撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
〔1〕
色素構造を有する樹脂(A)を含有する着色組成物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される前記樹脂(A)における分子量2000以下の成分の占めるピーク面積が、前記樹脂(A)の分子量分布全体のピーク面積に対して10%未満である着色組成物。
(中略)
【0013】
〔14〕
カラーフィルタの着色層形成に用いる〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載の着色組成物。
〔15〕
〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載の着色組成物を硬化して得られた着色硬化膜。
〔16〕 〔15〕に記載の着色硬化膜を備えたカラーフィルタ。
(中略)
【発明の効果】
【0014】
本発明の着色組成物によれば、形成する着色パターンの色抜けを抑制し、現像性及び耐熱性に優れる着色パターンを形成することができる。
また、本発明によれば、形成する着色パターンの色抜けを抑制し、現像性及び耐熱性に優れる着色パターンを形成しうる着色硬化膜、該着色パターンを備えたカラーフィルタ及びその製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、前記カラーフィルタを備えることにより耐色抜け性及び耐熱性に優れる固体撮像素子及び画像表示装置(液晶表示装置や有機EL表示装置等)を提供することができる。」
イ 「【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に記載する本発明における構成要素の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
(中略)
【0019】
[着色組成物]
本発明の着色組成物は、色素構造を有する樹脂(A)を含有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される前記樹脂(A)における分子量2000以下の成分の占めるピーク面積が、前記樹脂(A)の分子量分布全体のピーク面積に対して10%未満である。
【0020】
樹脂(A)のGPCにより測定される樹脂(A)における2000以下の分子量成分のピーク面積が、樹脂(A)の分子量分布全体のピーク面積に対して10%未満である本発明の着色組成物は、形成する着色パターンの色抜けを抑制し、現像性及び耐熱性に優れる着色パターンを形成しうる。その理由は定かではないが、以下のように推定される。
カラーフィルター製造時において、色素構造を有する樹脂中の2000以下の低分子量成分は分子運動性が大きいことにより、隣接着色層に含有される溶剤、パターニングにおける現像液に溶出し易く、樹脂の分子量分布全体のピーク面積に対して10%以上存在すると着色パターンの色抜けの原因として顕在化し得る。また、上述のように分子運動性が大きいことにより、プリベークなどの加熱時に他の色素構造を有する樹脂分子へ求核反応を起こし得、樹脂の分子量分布全体のピーク面積に対して10%以上存在すると着色パターンの耐熱性悪化が顕在化し得る。
さらに、色素構造を有する樹脂中の2000以下の低分子量成分は疎水性が高くなる傾向にあり、樹脂の分子量分布全体のピーク面積に対して10%以上存在すると、現像液に対する溶解性の観点からパターン露光後の現像時において残渣の原因として顕在化し得る。
これに対し、本発明は、樹脂(A)のGPCにより測定される2000以下の分子量成分の占めるピーク面積を、樹脂(A)の分子量分布全体のピーク面積に対して10%未満とすることにより、色抜けを抑制し、現像性及び耐熱性に優れる着色パターンを形成することができると推定される。
本発明の着色組成物は、感放射線性を有する着色感放射線性組成物であることが好ましい。
【0021】
本発明の着色組成物は、更に、(B)顔料を含有することが好ましく、(A)及び(B)の他、(C)重合性化合物及び(D)光重合開始剤を含有することがより好ましく、(A)~(D)の他、(E)アルカリ可溶性樹脂を含有することが特に好ましく、必要に応じて、架橋剤など他の成分を含んでもよい。
【0022】
以下、本発明の着色組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量2000以下の分子量成分のピーク面積が、樹脂の分子量分布全体のピーク面積に対して10%未満である色素構造を有する樹脂(A)(以下、単に「色素構造を有する樹脂(A)」、「樹脂(A)」ということもある。)〕
(中略)
【0024】
本発明において、樹脂(A)のGPCにより測定される2000以下の分子量成分の占めるピーク面積が、樹脂(A)の分子量分布全体のピーク面積に対して10%未満であり、樹脂(A)の分子量分布全体のピーク面積に対して7%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0025】
色素構造を有する樹脂(A)の重量平均分子量は、4,000~15,000であることが好ましく、5,000~10,000であることがより好ましい。重量平均分子量が小さすぎると、形成する着色パターンの色抜けの原因となり、また、現像性及び耐熱性が悪化の原因となる。また、重量平均分子量が大きすぎると、色ムラの悪化が大きくなる。
本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算で測定した値を用いる。
また、色素構造を有する樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)との比〔(Mw)/(Mn)〕は1.0~3.0であることが好ましく、1.6~2.5であることがさらに好ましく、1.6~2.0であることが最も好ましい。
(中略)
【0030】
色素構造を有する樹脂(A)は、より具体的には、その分子構造中に、最大吸収波長が400nm~780nmの範囲に存在する色素骨格を有する部分構造を有する樹脂であることが好ましい。色素構造を有する樹脂(A)は、本発明の着色組成物において、例えば着色剤として機能する。
【0031】
以下、色素構造を有する樹脂(A)(色素構造を有する樹脂(A)における色素に由来する部分構造、色素構造を有する樹脂(A)の好ましい構造、色素構造を有する樹脂(A)が有してもよい官能基など)について詳細に記述する。
【0032】
ここでいう「色素に由来する部分構造」とは、後述する色素構造を形成しうる具体的な色素(以下、色素化合物とも称する。)から水素原子を除いた、色素構造を有する樹脂連結部(ポリマー鎖)と直接又は間接的に連結可能な構造を表す。
【0033】
(色素に由来する部分構造)
色素構造を有する樹脂(A)における色素に由来する部分構造(以下、「色素構造」ともいう。)としては、特に制限はなく、公知の色素構造を含む種々のものを適用することができる。公知の色素構造としては、例えば、アゾ色素、アゾメチン色素(インドアニリン色素、インドフェノール色素など)、ジピロメテン色素、キノン色素(ベンゾキノン色素、ナフトキノン色素、アントラキノン色素、アントラピリドン色素など)、カルボニウム色素(ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、アクリジン色素など)、キノンイミン色素(オキサジン色素、チアジン色素など)、アジン色素、ポリメチン色素(オキソノール色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、スチリル色素、シアニン色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素など)、キノフタロン色素、フタロシアニン色素、サブフタロシアニン色素、ペリノン色素、インジゴ色素、チオインジゴ色素、キノリン色素、ニトロ色素、ニトロソ色素、及びそれらの金属錯体色素から選ばれる色素に由来する色素構造などを挙げることができる。
これらの色素構造の中でも、色相、色分離性、色むらなどの色特性の観点から、アゾ色素、ジピロメテン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、シアニン色素、スクアリリウム色素、キノフタロン色素、フタロシアニン色素、サブフタロシアニン色素から選ばれる色素に由来する色素構造が好ましく、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、シアニン色素、スクアリリウム色素、キノフタロン色素、フタロシアニン色素、サブフタロシアニン色素から選ばれる色素に由来する色素構造が最も好ましい。色素構造を形成しうる具体的な色素化合物については「新版染料便覧」(有機合成化学協会編;丸善、1970)、「カラーインデックス」(The Society of Dyers and colourists)、「色素ハンドブック」(大河原他編;講談社、1986)などに記載されている。
(中略)
【0048】
色素構造を有する樹脂(A)において、色素に由来する部分構造を形成しうる特に好ましい色素(色素化合物)について詳細に記述する。
(中略)
【0196】
(シアニン色素)
本発明に係る色素構造を有する樹脂の態様の一つは、シアニン色素(シアニン化合物)に由来する部分構造を有するものである。該色素構造を有する樹脂(A)としては、下記一般式(PM)で表される化合物(シアニン化合物)に由来する部分構造を、色素部位の部分構造として有する色素構造を有する樹脂が含まれる。本発明においてシアニン化合物とは、分子内にシアニン骨格を含む色素部位を有する化合物を総称するものである。
【0197】
【化28】
【0198】
一般式(PM)中、環Z1及び環Z2は、それぞれ独立に置換基を有してもよい複素環を表す。lは0以上3以下の整数を表す。X-はアニオンを表す。
(中略)
【0200】
一般式(PM)で表される化合物は、下記一般式(PM-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0201】
【化29】
【0202】
一般式(PM-2)中、環Z5及び環Z6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいベンゼン環又は置換基を有していてもよいナフタレン環を表す。
Y-は、Cl-、Br-、I-、ClO4-、OH-、1価の有機カルボン酸アニオン、1価の有機スルホン酸アニオン、1価のホウ素アニオン又は1価の有機金属錯体アニオンを表す。Y-は色素構造とイオン結合していることが好ましく、また、色素構造を有する樹脂の一部(高分子鎖等)と連結してもよい。
nは、0以上3以下の整数を表す。
A1及びA2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、炭素原子又は窒素原子を表す。
R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1価の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基を表す。
R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子又は1価の炭素数1~6の脂肪族炭化水素基を表すか、1個のR3と1個のR4とが一緒になって形成された2価の炭素数2~6の脂肪族炭化水素基を表す。
a及びbは、それぞれ独立に、0以上2以下の整数を表す。
【0203】
一般式(PM-2)中、Y-はフッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、過塩素酸アニオン、カルボン酸アニオンであることが好ましく、塩素アニオン、過塩素アニオン、カルボン酸アニオンであることが最も好ましい。nは1であることが好ましい。A1及びA2は、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子又は炭素原子であることが好ましく、双方が炭素原子であることが最も好ましい。
【0204】
以下に、シアニン化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0205】
【化30】
【0206】
具体例のうち、(pm-1)~(pm-6)、(pm-9)及び(pm-10)で表される構造が好ましく、中でも、色特性及び耐熱性の観点より、(pm-1)、(pm-2)及び(pm-10)で表される色素構造が特に好ましい。
(中略)
【0256】
(本発明の着色組成物に用いる色素構造を有する樹脂の構造)
本発明の着色組成物に用いる色素構造を有する樹脂(A)としては、下記一般式(A)、一般式(B)、及び、一般式(C)で表される構成単位の少なくとも一つを含んでなる色素構造を有する樹脂であることが好ましい。これらを順次説明する。
<一般式(A)で表される構成単位>
【0257】
【化44】
【0258】
一般式(A)中、X1は重合によって形成される連結基を表し、L1は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIは色素構造を表す。
以下、一般式(A)について詳細に説明する。
【0259】
一般式(A)中、X1は重合によって形成される連結基を表す。すなわち重合反応で形成される主鎖に相当する繰り返し単位を形成する部分を指す。なお、2つの*で表された部位が繰り返し単位となる。X1としては、公知の重合可能なモノマーから形成される連結基であれば得に制限ないが、特に下記(XX-1)~(X-24)で表される連結基が好ましく、(XX-1)及び(XX-2)で表される(メタ)アクリル系連結鎖、(XX-10)~(XX-17)で表されるスチレン系連結鎖、及び(XX-24)で表されるビニル系連結鎖であることが最も好ましい。(XX-1)~(X-24)中、*で示された部位でL1と連結していることを表す。Meはメチル基を表す。また、(XX-18)及び(XX-19)中のRは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基を表す。
【0260】
【化45】
【0261】
一般式(A)中、L1は単結合又は2価の連結基を表す。L1が2価の連結基を表す場合の該2価の連結基としては、炭素数1~30の置換もしくは無置換のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基など)、炭素数6~30の置換もしくは無置換のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレン基等)、置換もしくは無置換のヘテロ環連結基、-CH=CH-、-O-、-S-、-C(=O)-、-CO2-、-NR-、-CONR-、-O2C-、-SO-、-SO2-及びこれらを2個以上連結して形成される連結基を表す。ここで、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。
【0262】
一般式(A)中、DyeIは前述した色素化合物に由来する色素構造を表す。
(中略)
【0264】
以下に一般式(A)で表される構成単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
(中略)
【0275】
【化56】
(中略)
【0281】
<一般式(B)で表される構成単位>
次に、一般式(B)で表される構成単位について詳細を説明する。
【0282】
【化62】
【0283】
一般式(B)中、X2は前記一般式(A)中のX1と同義である。L2は前記一般式(A)中のL1と同義である。Y2はDyeIIとイオン結合もしくは配位結合可能な基を表す。DyeIIは色素構造を表す。以下詳細に説明する。
【0284】
一般式(B)中、X2は前記一般式(A)中のX1と同義であり、好ましい範囲も同様である。L2は前記一般式(A)中のL1と同義であり、好ましい範囲も同様である。Y2はDyeIIとイオン結合もしくは配位結合可能な基であればよく、アニオン性基又はカチオン性基のどちらでもよい。アニオン性基としては、COO-、PO3H-、SO3-、-SO3NH-、-SO3N-CO-等が挙げられるが、COO-、PO3H-、SO3-が好ましい。
【0285】
カチオン性基としては、置換又は無置換のオニウムカチオン(例えば、アンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム及びホスホニウム等)が挙げられ、特にアンモニウムカチオンが好ましい。
【0286】
Y2は、DyeIIが有しているアニオン部(COO-、SO3-、O-等)やカチオン部(前記オニウムカチオンや金属カチオン等)と結合することができる。
(中略)
【0288】
以下に一般式(B)で表される構成単位具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0289】
【化63】
【0290】
<一般式(C)で表される構成単位>
【0291】
【化64】
【0292】
上記一般式(C)中、L3は単結合又は2価の連結基を表す。DyeIIIは、色素部分構造を表す。mは0又は1を表す。以下、詳細に説明する。
【0293】
前記一般式(C)中、L3で表される2価の連結基としては、炭素数1~30の置換もしくは無置換の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基など)、炭素数6~30の置換もしくは無置換のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレン基等)、置換もしくは無置換のヘテロ環連結基、-CH=CH-、-O-、-S-、-NR-(Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。)、-C(=O)-、-SO-、-SO2-,および、これらを2個以上連結して形成される連結基が好適に挙げられる。mは0又は1を表すが、1であることが好ましい。
(中略)
【0297】
以下に一般式(C)で表される構成単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
(中略)
【0299】
【化67】
【0300】
一般式(A)、一般式(B)及び/又は一般式(C)で表される構成単位を有する色素構造を有する樹脂のうち、一般式(A)及び一般式(C)で表される構成単位を有する色素構造を有する樹脂は、色素に由来する部分構造が分子構造中に共有結合で連結されているため、該色素構造を有する樹脂を含有する着色組成物は耐熱性に優れる。このため、該着色組成物を、高温プロセスを有するパターン形成に適用した場合において、隣接する他の着色パターンへの色移り抑制に効果があるため好ましい。また、特に一般式(A)で表される化合物は、色素構造を有する樹脂の分子量の制御がし易く好ましい。
【0301】
(色素構造を有する樹脂(A)が有する重合性基)
本発明における色素構造を有する樹脂(A)は、重合性基を有することが好ましい。これにより、薄層化された場合でも耐色抜け性、耐熱性、現像性などに優れ、パターン成形性の良好な着色硬化膜を形成し得る。
重合性基としては、ラジカル、酸、熱により架橋可能な公知の重合性基を用いることができ、例えばエチレン性不飽和結合を含む基、環状エーテル基(エポキシ基、オキセタン基)、メチロール基等が挙げられるが、特にエチレン性不飽和結合を含む基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がさらに好ましく、(メタ)アクリル酸グリシジル及び3,4-エポキシーシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート由来の(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
(中略)
【0319】
色素構造を有する樹脂(A)が有するアルカリ可溶性基量(酸価)は、色素構造を有する樹脂(A)1gに対し0.3mmol~2.0mmolであることが好ましく、0.4mmol~1.5mmolであることがさらに好ましく、0.5mmol~1.0mmolであることが最も好ましい。
(中略)
【0328】
本発明に係る色素構造を有する樹脂(A)は、以下の有機溶剤に溶解する化合物であることが好ましい。
有機溶剤としては、エステル類(例えば、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル等)、エーテル類(例えばメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、ケトン類(メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)が挙げられ、これら溶剤に対し、1質量%以上50質量%以下溶解することが好ましく、より好ましくは5質量%以上40質量%以下、更に好ましくは10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。この領域にあることで、本発明の着色組成物をカラーフィルタ等の作製に適用する際に、好適な塗布面状や、他色塗布後の溶出による濃度低下を低減するができるようになる。
(中略)
【0330】
〔(B)顔料〕
本発明の着色組成物は、顔料を含有することが好ましい。
本発明で使用する顔料としては、従来公知の種々の無機顔料又は有機顔料を用いることができる。該顔料としては、高透過率であることが好ましい。
(中略)
【0333】
本発明において好ましく用いることができる顔料として、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
【0334】
C.I.ピグメントイエロー11,24,108,109,110,138,139,150,151,154,167,180,185,
C.I.ピグメントオレンジ36,71,
C.I.ピグメントレッド122,150,171,175,177,209,224,242,254,255,264,
C.I.ピグメントバイオレット19,23,32,
C.I.ピグメントブルー15:1,15:3,15:6,16,22,60,66,
C.I.ピグメントグリーン7,36,37,58;
C.I.ピグメントブラック1,7
(中略)
【0341】
-分散剤-
本発明の着色組成物は、顔料分散剤を含有することができる。
本発明に用いうる顔料分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン等の界面活性剤、及び、顔料誘導体等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
(中略)
【0350】
〔(C)重合性化合物〕
本発明の着色組成物は、重合性化合物を含有することが好ましい。
ラジカル、酸、熱により架橋可能な公知の重合性化合物を用いることができ、例えば、エチレン性不飽和結合、環状エーテル(エポキシ、オキセタン)、メチロール等を含む重合性化合物が挙げられる。重合性化合物は、感度の観点から、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から好適に選ばれる。中でも、4官能以上の多官能重合性化合物が好ましく、5官能以上の多官能重合性化合物がさらに好ましい。
【0351】
このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー又はそれらの混合物並びにそれらの多量体などの化学的形態のいずれであってもよい。本発明における重合性化合物は一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(中略)
【0353】
また、前記重合性化合物としては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン基を有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物も好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48-41708号公報、特公昭50-6034号公報、特開昭51-37193号公報に記載されているようなウレタン(メタ)アクリレート類、特開昭48-64183号公報、特公昭49-43191号公報、特公昭52-30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレート及びこれらの混合物を挙げることができる。
(中略)
【0386】
〔(D)光重合開始剤〕
本発明の着色組成物は、さらに光重合開始剤を含有することが、さらなる感度向上の観点から好ましい。
前記光重合開始剤としては、前記重合性化合物の重合を開始する機能を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、前記光重合開始剤は、約300nm~800nm(330nm~500nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。
(中略)
【0396】
光重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム開始剤の具体例としては、特開2001-233842号公報記載の化合物、特開2000-80068号公報記載の化合物、特開2006-342166号公報記載の化合物を用いることができる。
(中略)
【0398】
オキシムエステル化合物としては、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653-1660)、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.156-162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202-232、特開2000-66385号公報記載の化合物、特開2000-80068号公報、特表2004-534797号公報、特開2006-342166号公報の各公報に記載の化合物等が挙げられる。
市販品ではIRGACURE-OXE01(BASF社製)、IRGACURE-OXE02(BASF社製)も好適に用いられる。
(中略)
【0437】
〔(E)アルカリ可溶性樹脂〕
本発明の着色組成物は、さらに(E)アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましく、現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。
(中略)
【0449】
〔他の成分〕
本発明の着色組成物は、上述の各成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、有機溶剤、架橋剤などの他の成分を含んでいてもよい。
【0450】
(有機溶剤)
本発明の着色組成物は、有機溶剤を含有してもよい。
有機溶剤は、各成分の溶解性や着色組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はないが、特に紫外線吸収剤、アルカリ可溶性樹脂や分散剤等の溶解性、塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。また、本発明における着色組成物を調製する際には、少なくとも2種類の有機溶剤を含むことが好ましい。
(中略)
【0454】
(架橋剤)
本発明の着色組成物に補足的に架橋剤を用い、着色組成物を硬化させてなる着色硬化膜の硬度をより高めることもできる。
架橋剤としては、架橋反応により膜硬化を行なえるものであれば、特に限定はなく、例えば、(a)エポキシ樹脂、(b)メチロール基、アルコキシメチル基、及びアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、(c)メチロール基、アルコキシメチル基、及びアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された、フェノール化合物、ナフトール化合物又はヒドロキシアントラセン化合物、が挙げられる。中でも、多官能エポキシ樹脂が好ましい。
(中略)
【0456】
(界面活性剤)
本発明の着色組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
(中略)
【0460】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株))等が挙げられる。
(中略)
【0464】
(その他の添加物)
着色組成物には、必要に応じて、各種添加物、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加物としては、特開2004-295116号公報の段落0155~0156に記載のものを挙げることができる。
本発明の着色組成物においては、特開2004-295116号公報の段落0078に記載の増感剤や光安定剤、同公報の段落0081に記載の熱重合防止剤を含有することができる。
(中略)
【0468】
[着色組成物の調製方法]
本発明の着色組成物は、前述の成分を混合することで調製される。」
ウ 「【実施例】
【0490】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
(中略)
【0509】
(合成例22) キサンテン含有樹脂の合成
下記スキームのように合成した。
【0510】
【化94】
【0511】
100mL三口フラスコに、モノマー4(8.21g)、メタクリル酸(1.08g)、PGMEA(23.3g)、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。この溶液に、モノマー4(8.21g)、メタクリル酸(1.08g)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル)〔商品名:V601、和光純薬工業(株)製〕(1.5g)、PGMEA(23.3g)の混合溶液を2時間かけて滴下した。その後3時間攪拌した後、90℃に昇温し、2時間加熱攪拌した後、放冷して(MD-4)のPGMEA溶液を得た。次に、メタクリル酸グリシジル(1.42g)、テトラブチルアンモニウムブロミド(80mg)を添加し、空気雰囲気下で、100℃で15時間加熱し、メタクリル酸グリシジルが消失するのを確認した。冷却後、メタノール/イオン交換水=65mL/260mLの混合溶媒に滴下して回転数180rpmで1時間攪拌する再沈操作を1回行い、キサンテン含有樹脂を17.6g得た。
(中略)
【0514】
(合成例19、23~26、18) トリアリールメタン含有樹脂、キノフタロン含有樹脂、シアニン含有樹脂、フタロシアニン含有樹脂、サブフタロシアニン含有樹脂、及びアゾ含有樹脂2の合成
合成例22において用いた色素単量体(モノマー4)を下記構造に対応する色素構造を有するモノマーに変更した以外は(合成例19については再沈殿条件についても変更した。)、合成例22と同様にして下記に示すトリアリールメタン含有樹脂、キノフタロン含有樹脂、シアニン含有樹脂、フタロシアニン含有樹脂、サブフタロシアニン含有樹脂、及びアゾ含有樹脂2を合成した。
【0515】
【化95】
(中略)
【0517】
表2に、各色素構造を有する樹脂の物性、再沈殿条件(再沈殿回数、再沈殿溶媒量、攪拌時間)、樹脂の分子量分布全体のピーク面積に対する2000以下の分子量成分のピーク面積の割合を示す。
(中略)
【0519】
【表2】
【0520】
[実施例1~実施例26、及び比較例1~8]
1.着色感放射線性組成物の調製
1-1.青色用顔料分散液の調製
青色用顔料分散液を、以下のようにして調製した。
C.I.Pigment Blue15:6を13.0質量部(青色顔料、平均粒子径55nm)、顔料分散剤である分散樹脂A(下記構造)を5.0質量部、PGMEA82.0質量部からなる混合液を、ビーズミル(beads mill)(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、青色用顔料分散液(C.I.Pigment Blue15:6分散液)を得た。
(中略)
【0521】
【化97】
【0522】
前記「1-1.青色用顔料分散液の調製」において青色顔料として用いたC.I.Pigment Blue15:6に代えて、下記顔料を用いた以外は青色用顔料分散液の調製と同様にして、赤色用顔料分散液、及び緑色用顔料分散液を調製した。
・赤色用顔料A
C.I.ピグメントレッド254(PR254)(粒子径26nm)
(中略)
【0523】
1-2.着色感放射線性組成物の調製
(1)実施例1~26、比較例1~8の着色感放射線性組成物
下記の各成分を混合して分散、溶解し、実施例1~26、比較例1~8の各着色感放射線性組成物を得た。
・シクロヘキサノン 1.133部
・アルカリ可溶性樹脂(K1又はK2:表3に記載の化合物)0.030部
・ソルスパース20000(1%シクロヘキサン溶液、日本ルーブリゾール(株)製) 0.125部
・光重合開始剤(下記構造の化合物:表3に記載の化合物) 0.012部
・着色剤(色素構造を有する樹脂:色素構造を有する樹脂、:表3に記載の化合物) 固形分として0.040部
・表3に記載の顔料分散液 (顔料濃度13.0%) 0.615部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 0.070部
(KAYARAD DPHA;日本化薬株式会社製)
・グリセロールプロポキシレート(1%シクロヘキサン溶液)0.048部
【0524】
【化98】
【0525】
【化99】
【0526】
2.性能評価
2-1.現像性
実施例1~26、比較例1~8の着色感放射線性組成物をシリコンウエハ上にスピンコート法で塗布し、その後、ホットプレート上で100℃で2分間加熱して膜厚1μmの感光性の着色層を得た。
その感光性の着色層に対して、一辺1.1μmの正方ピクセルがそれぞれ基板上の4mm×3mmの領域に配列されたマスクパターンを介して、i線ステッパーFPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長で、露光量200mJ/cm2にて露光を行った。
前記露光後の着色層に対し、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにて水を用いてリンスを行い、更に純水にて水洗いを行った。その後、水滴を高圧のエアーで飛ばし、シリコンウエハを自然乾燥させ、200℃で300秒間、ホットプレートでポストベークを行い、シリコンウエハ上の膜厚1μmの透明パターン(硬化膜)を得た。
得られた透明パターンを測長SEM(S-7800H、(株)日立製作所製)を用いてシリコンウエハ上から30000倍で観察した。
現像残渣に関しては、以下の基準に基づき、判定した。判定結果を下記表に示す。
○:画素上には残渣が全く認められなかった。
△:残渣がわずかに認められるが、許容できる範囲内であった。
×:残渣が多く観察された。
【0527】
2-2.耐色抜け性評価
上記「2-1.現像性」において形成した感光性の着色層に対し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、アセトン、N-メチルピロリドン(NMP)、フォトレジスト剥離液MS230C(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)、アルカリ現像液FHD-5(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH):2.38質量%、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)の各々を滴下後、120秒放置し、流水にて10秒リンスした。
各種液の滴下前後での透過率の分光変動をMCPD-3000(大塚電子(株)製)を使用して測定し、色差ΔEabを測定した。ΔEabが小さいほど、耐色抜け性に優れることを意味する。最も大きいΔEabを示した液における当該ΔEabを、以下の基準に基づき判定した。結果を下記表に示す。
色差ΔEabが5以下・・・耐色抜け性が良い(○)
色差ΔEabが5より大きく10以下・・・耐色抜け性が実用的に許容できる程度(△)
色差ΔEabが10より大きい・・・耐色抜け性が悪い(×)
【0528】
2-3.耐熱性
上記「2-1.現像性」において形成した感光性の着色層について分光を測定し、630nmの透過率(透過率A)を測定した。
次いで、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理を行なった後、分光を測定し、630nmの透過率(透過率B)を測定した。この透過率A、Bの差より百分率(%)を算出し、これを、耐熱性を評価する指標とした。この数値は0%に近いほど耐熱性に優れていることを示す。以下の基準に基づき判定した。結果を下記表に示す。
透過率の減少が見られなかった。・・・耐熱性が良い(○)
透過率の減少が3%以内であった。・・・耐熱性が実用的に許容できる程度(△)
透過率の減少が3%より大きかった。・・・耐熱性が悪い(×)
【0529】
【表3】
【0530】
表3に示した結果から明らかなように、樹脂の分子量分布全体のピーク面積に対する2000以下の分子量成分のピーク面積の割合が10%以上の樹脂を使用した比較例1~8は耐色抜け性が悪いことが分かる。また、2000以下の分子量成分のピーク面積の割合が更に増えると耐色抜け性だけでなく、現像性、耐熱性も悪化することが分かる(例えば、比較例2参照。)。
一方、樹脂の分子量分布全体のピーク面積に対する2000以下の分子量成分のピーク面積の割合が10%未満の樹脂を使用した実施例1~26は現像性、耐色抜け性、耐熱性のいずれも実用的に許容できる程度以上であることが分かる。」
(2)引用文献Aに記載された発明
引用文献Aの記載事項アにおける、「本発明は、固体撮像素子、液晶表示素子等に用いられるカラーフィルタの製造に好適な色素構造を有する樹脂を含有する着色組成物、着色硬化膜、カラーフィルタ、その製造方法、及び固体撮像素子に関する。」(段落【0001】)との記載に基づけば、実施例25の着色感放射線性組成物は、「カラーフィルタの製造に好適な色素構造を有する樹脂を含有する着色組成物」であるといえる。そうすると、引用文献Aには、実施例25の着色感放射線性組成物として、次の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていたと認められる。なお、段落【0524】に記載の「IRUGACURE OXE01」は、「IRGACURE OXE01」に誤記修正した。
「下記の各成分を混合して分散、溶解して得た、カラーフィルタの製造に好適な色素構造を有する樹脂を含有する着色感放射線性組成物。
・シクロヘキサノン 1.133部
・アルカリ可溶性樹脂(K1) 0.030部
・ソルスパース20000(1%シクロヘキサン溶液) 0.125部
・光重合開始剤(IRGACURE OXE01) 0.012部
・着色剤(合成例25のシアニン含有樹脂) 固形分として0.040部
・顔料分散液PR254 (顔料濃度13.0%) 0.615部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 0.070部
・グリセロールプロポキシレート(1%シクロヘキサン溶液)0.048部
ここで、K1は、次に記載の化合物
合成例25のシアニン含有樹脂は、次のシアニン含有樹脂のうち、シアニン構造を有する繰り返し単位の前駆体(シアニン色素の窒素原子に、アクリロイルオキシプロピル基が結合したもの、以下、「シアニン色素モノマー」という。)、メタクリル酸、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という。)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルの混合溶液を加熱攪拌して得たPGMEA溶液に、メタクリル酸グリシジル、テトラブチルアンモニウムブロミドを添加し、空気雰囲気下で、加熱し、メタクリル酸グリシジルを消失させて得たもの(重量平均分子量Mw=7000)
顔料分散液PR254は、C.I.ピグメントレッド254を13.0質量部、顔料分散剤である分散樹脂A(下記構造)を5.0質量部、PGMEA82.0質量部からなる混合液を、混合・分散して、顔料分散液を調製し、その後さらに、分散処理を繰り返して得たもの
」
5 対比
本件補正発明と引用発明Aとを対比する。
(1)着色剤
引用発明Aの「着色剤(合成例25のシアニン含有樹脂)」及び「顔料分散液PR254」は、技術的にみて、本件補正発明の「着色剤」に相当する。
また、引用発明Aの「着色剤(合成例25のシアニン含有樹脂)」は、その色素構造からみて、本件補正発明の一般式(1)のカチオン部分において、Aが「置換基もしくは水素原子を有する炭素原子」であり、R3~R10が「水素原子」であり、R11が「水素原子」であり、R12及びR13の一方が「置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルキル基」であり、他方が、シアニン色素モノマーとメタクリル酸の共重合体の水酸基にメタクリル酸グリシジルが開環重合してなる化合物(合成例25のシアニン含有樹脂)のうち、シアニン色素の窒素原子と結合する、炭素数3の連結基を含む原子団である。そして、この化合物は、メタクリル酸グリシジルのメタクリル酸部分に由来する炭素炭素二重結合を有することから、本件補正発明における「重合性官能基を有する有機基」に該当する。また、引用発明Aの「着色剤(合成例25のシアニン含有樹脂)」は、その色素構造からみて、本件補正発明の一般式(1)のアニオン部分において、「一般式(5)で表わされる構造単位を有するビニル系樹脂」(Pが「-COO-」、Qが「単結合」、R51が「置換もしくは無置換のアルキル基」であるもの)に該当する。
したがって、引用発明Aの「着色剤(合成例25のシアニン含有樹脂)」は、本件補正発明の「一般式(1)で表わされるシアニン色素(ZC)を含有する」という要件を満たしている。
(2)バインダー樹脂
引用発明Aの「アルカリ可溶性樹脂(K1)」は、技術的にみて、本件補正発明の「バインダー樹脂」に相当する。
(3)カラーフィルタ用着色組成物
引用発明Aの「着色感放射線性組成物」は、「カラーフィルタの製造に好適な色素構造を有する樹脂を含有する」ものである。したがって、引用発明Aの「着色感放射線性組成物」は、本件補正発明の「カラーフィルタ用着色組成物」に相当する。
(4)一致点及び相違点
以上より、本件補正発明と引用発明Aとは、
「一般式(1)で表わされるシアニン色素(ZC)を含有する着色剤と、バインダー樹脂とを含有するカラーフィルタ用着色組成物。
【化1】
[一般式(1)において、
Aは置換基もしくは水素原子を有する炭素原子、または硫黄原子を表す。
R3~R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のアシル基を表す。
R11は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。
R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、重合性官能基を有する有機基、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表す。
Y-は、下記一般式(2)で表わされるイミド酸アニオン、および下記一般式(5)で表わされる構造単位を有するビニル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンを表す。]
【化2】
[一般式(2)において、R21は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、または置換基を有してもよい脂環式炭化水素基であり、R22は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基(ただし、前記置換基から脂肪族炭化水素基およびアルコキシシリル基を除く)、または置換基を有してもよい複素環基を表す。]
【化3】
[一般式(5)において、
R51は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
Qは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、-CONH-R52-、または-COO-R52-を表し、
R52は置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。
P-は、―SO3-、または-COO-を表す。]」である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
[相違点A]本件補正発明は、「熱硬化性化合物(D)および酸化防止剤(E)の少なくとも1つ」を含有するのに対し、引用発明Aは、熱硬化性化合物(D)および酸化防止剤(E)の少なくとも1つを含有するとされていない点。
6 判断
(1)[相違点A]についての検討
ア 引用発明Aは、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」を含有している。引用文献Aの記載事項イにおける「本発明の着色組成物は、重合性化合物を含有することが好ましい。」及び「ラジカル、酸、熱により架橋可能な公知の重合性化合物を用いることができ、例えば、エチレン性不飽和結合、環状エーテル(エポキシ、オキセタン)、メチロール等を含む重合性化合物が挙げられる。」(段落【0350】)、「また、前記重合性化合物としては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン基を有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物も好ましい。その例としては、・・・ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、・・・及びこれらの混合物を挙げることができる。」(段落【0353】)との記載に基づけば、引用発明Aにおける「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」は、ラジカル、酸、熱により架橋可能な重合性化合物として含有されるものと理解できる。そして、引用文献Aの記載事項ウにおける「その後、水滴を高圧のエアーで飛ばし、シリコンウエハを自然乾燥させ、200℃で300秒間、ホットプレートでポストベークを行い、シリコンウエハ上の膜厚1μmの透明パターン(硬化膜)を得た。」(段落【0526】)との記載に基づけば、引用発明Aは、ポストベークすることによって硬化膜が得られるものである。そうすると、引用発明Aは、ポストベークによって硬化する「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」を含有するものであるから、本件補正発明における「熱硬化性化合物(D)および酸化防止剤(E)の少なくとも1つ」を含有するという要件を満たすものといえる。したがって、上記[相違点A]は、実質的な相違点とはいえないものである。
イ 仮に、引用発明Aに含有される「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」が、一般に、ラジカルにより架橋可能な重合性化合物であるとしても、引用文献Aには、上記アに記載したとおり、記載事項イに「ラジカル、酸、熱により架橋可能な公知の重合性化合物を用いることができ」(段落【0350】)との記載があり、「熱により架橋可能な公知の重合性化合物」は「熱硬化性化合物(D)」に該当する。さらに、引用文献Aには、記載事項イに「着色組成物には、必要に応じて、各種添加物、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。」(段落【0464】)と記載されており、着色感放射線性組成物に「酸化防止剤(E)」を含有させることも示唆されている。
そうすると、上記引用文献Aの記載に基づいて、引用発明Aの着色感放射線性組成物に、「熱硬化性化合物(D)および酸化防止剤(E)の少なくとも1つ」を含有させることは、当業者が容易になし得たことであるといえる。
(2)本件補正発明の効果
本件補正発明の効果は、本願の明細書の段落【0020】の記載に基づけば、「高明度でありながら、耐熱性および耐薬品性といった堅牢性にも優れており、色特性に優れたフィルタセグメントが形成できる」というものである。
一方、引用文献Aには、記載事項アに、発明の効果として、「本発明の着色組成物によれば、形成する着色パターンの色抜けを抑制し、現像性及び耐熱性に優れる着色パターンを形成することができる。」(段落【0014】)との記載がある。当該記載に基づけば、引用発明Aも、耐熱性及び耐薬品性といった堅牢性に優れているといえる。また、引用発明Aに含有される「合成例25のシアニン含有樹脂」は、塩を形成した染料といえるものであるから、「高明度」の着色パターンを形成できるものといえる。
したがって、引用発明Aは、本件補正発明と同様の効果を奏するものといえるから、仮に、上記[相違点A]が実質的に相違するものであったとしても、本件補正発明が格別な効果を奏するものということはできない。
7 請求人の主張について
(1)請求人は、審判請求書の請求の理由の3.(5-1)において、「次に本願発明と、引用文献2に記載された発明を対比すると、引用文献2の実施例25で使用されるシアニン含有樹脂は、カチオン部位が樹脂と共有結合して側鎖を形成していることに加え、前記樹脂の他の側鎖にあるアニオン部位と、同一分子内で塩を形成しています。一方、本願発明においてシアニン色素(ZC)は、カチオン部位が樹脂と共有結合する態様を採りえないため一般式(5)のアニオンと同一分子内で塩を形成することがなく、カチオン部位とアニオン部位はイオン結合するのみで、互いに共有結合する構造を有しない点が相違します。」(合議体注:審判請求書における「引用文献2」は、引用文献Aである。)と主張している。
しかしながら、本件補正発明において、「一般式(1)で表わされるシアニン色素(ZC)」は、「Y-は、下記一般式(2)で表わされるイミド酸アニオン、および下記一般式(5)で表わされる構造単位を有するビニル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンを表す。」と特定されるものであって、カチオン部位とアニオン部位とが、「互いに共有結合する構造を有しない」と特定していない。そして、本件補正発明の「一般式(1)で表わされるシアニン色素(ZC)」のカチオン部分における「R12およびR13」は、「重合性官能基を有する有機基」を選択肢として含むものであるから、「本願発明においてシアニン色素(ZC)は、カチオン部位が樹脂と共有結合する態様を採りえない」ということもできない(特許請求の範囲には、「重合性官能基を有する有機基」から「樹脂」を除く(単量体に限られる)旨の記載はなく、また、引用発明の「合成例25のシアニン含有樹脂」は、オリゴマー程度の分子量にとどまる。)。
そうすると、上記請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づいたものではないから、採用することができない。
(2)また、請求人は、審判請求書の請求の理由の3.(5-3)において、「次に、引用文献2は、色素構造を有する樹脂を使用することで、形成する着色パターンの色抜けを抑制し、現像性および耐熱性に優れる着色パターンを形成しうるという課題を解決します。そのため、引用文献2に接した当業者が、最も重要な構成である色素構造を有する樹脂の記載から、あえて樹脂と結合しない色素を選択する動機付けがありません。」と主張している。
しかしながら、前記(1)に記載したとおりであるから、本件補正発明の「一般式(1)で表わされるシアニン色素(ZC)」は「樹脂と結合しない色素」ではない。したがって、上記請求人の主張も採用できない。
8 補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する、或いは、引用文献Aに記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正却下の決定の結論]に記載のとおり、決定する。
第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、令和元年7月3日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の1に記載したとおりの発明である。
2 引用刊行物の記載及び引用発明
(1)原査定の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2014-80584号公報(以下、「引用文献B」という。)には、次の事項事項がある。
なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した(混同を避けるため、引用文献Bに付されていた下線は消去した。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤、着色組成物、カラーフィルタ及び表示素子に関わり、より詳しくは、透過型あるいは反射型のカラー液晶表示素子、固体撮像素子、有機EL表示素子、電子ペーパー等のカラーフィルタに好適に用いられる着色剤、当該着色剤を含有する着色組成物、該着色剤を含有する着色層を備えるカラーフィルタ、並びに当該カラーフィルタを具備する表示素子に関する。
(中略)
【0003】
ところで、表示素子の高輝度化と高色純度化、あるいは固体撮像素子の高精細化を実現するには、着色剤として染料を用いることが有効であることが知られている。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献5で提案されているトリアリールメタン系染料では、耐熱性が不十分であり、200℃を超えるような露光・現像後の加熱(ポストベーク)工程を経ると、顔料に対する色度特性の優位性が失われる。また、染料を用いると、カラーフィルタの電圧保持率が悪化するという問題がしばしば生じる。以上のような背景から、高い耐熱性と良好な電圧保持率とを両立できるカラーフィルタの作製に好適な着色組成物の開発が強く求められている。
したがって、本発明の課題は、高い耐熱性と良好な電圧保持率とを両立できる着色層の形成に好適な着色組成物を提供することにある。また、本発明の課題は、上記着色組成物から形成された着色層を備えてなるカラーフィルタ、及び当該カラーフィルタを具備する表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情に鑑み、本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、アルコキシシリル基を有する特定のスルホニルイミドアニオンと、特定のカチオン性発色団とから構成される着色剤を用いることによって、上記課題を解決できることを見出した。
(中略)
【発明の効果】
【0011】
本発明の着色組成物を用いれば、高い耐熱性と良好な電圧保持率とを両立し得る着色層を形成することができる。したがって、本発明の着色組成物は、表示素子用カラーフィルタ、固体撮像素子の色分解用カラーフィルタ、有機EL表示素子用カラーフィルタ、電子ペーパー用カラーフィルタを始めとする各種のカラーフィルタの作製に極めて好適に使用することができる。」
イ 「【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
着色組成物
以下、本発明の着色組成物の構成成分について詳細に説明する。
【0013】
-(A)着色剤-
本発明の着色組成物は、本着色剤を含有する。本着色剤は、下記式(1)で表されるアニオンと、下記式(8-1)で表されるトリアリールメタン系のカチオン性発色団、下記式(8-2)で表されるトリアリールメタン系のカチオン性発色団、アゾ系のカチオン性発色団、ジアリールメタン系のカチオン性発色団、キノンイミン系のカチオン性発色団、アントラキノン系のカチオン性発色団、フタロシアニン系のカチオン性発色団、キサンテン系のカチオン性発色団及びシアニン系のカチオン性発色団よりなる群から選ばれる少なくとも1つのカチオン性発色団とから構成されるものである。
【0014】
まず、本着色剤のアニオン部について説明する。
本着色剤は式(1)で表されるアニオンを有する。
【0015】
【化4】
【0016】
〔式(1)において、
Xは、2価の炭化水素基を示す。
Yは、ハロ基又はハロゲン化炭化水素基を示すか、又は炭素原子、水素原子若しくはハロゲン原子以外の原子を含む連結基と、ハロゲン置換アルカンジイル基と、アルキル基、脂環式炭化水素基、ヘテロアリール基及び置換若しくは非置換のアリール基から選ばれる1価の基とを組み合わせてなる基を示す。
R1は、アルキル基を示す。〕
(中略)
【0017】
Xにおける2価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖を有するアルカンジイル基、炭素数6~20のアリーレン基、炭素数7~20のアリーレンアルカンジイル基などが挙げられる。
アルカンジイル基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基などが挙げられる。中でも、炭素数2~8のアルカンジイル基が好ましく、炭素数2~6のアルカンジイル基がより好ましい。
アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントリル基などが挙げられる。中でも、炭素数6~10のアリーレン基が好ましく、特にフェニレン基が好ましい。
アリーレンアルカンジイル基とは、前述のアリーレン基と前述のアルカンジイル基とを組み合わせてなる2価の基である。アリーレンアルカンジイル基としては、原料の入手及び製造上の容易さの点から、炭素数7~15のアリーレンアルカンジイル基が好ましく、炭素数7~10のアリーレンアルカンジイル基がより好ましい。具体的には、フェニレンメチレン基、フェニレンジメチレン基、フェニレントリメチレン基、フェニレンテトラメチレン基等のフェニレンC1-4アルカンジイル基を挙げることができる。なお、アリーレンアルカンジイル基では、オルト体、メタ体及びパラ体があるが、立体障害が少ない点から、パラ体であることが好ましい。
これらのうち、Xにおける2価の炭化水素基としては、炭素数6~20のアリーレン基、炭素数7~20のアリーレンアルカンジイル基が好ましい。
(中略)
【0035】
次に、本着色剤のカチオン部について説明する。
本着色剤は下記式(8-1)で表されるトリアリールメタン系のカチオン性発色団、下記式(8-2)で表されるトリアリールメタン系のカチオン性発色団、アゾ系のカチオン性発色団、ジアリールメタン系のカチオン性発色団、キノンイミン系のカチオン性発色団、アントラキノン系のカチオン性発色団、フタロシアニン系のカチオン性発色団、キサンテン系のカチオン性発色団及びシアニン系のカチオン性発色団よりなる群から選ばれる少なくとも1つのカチオン性発色団を有する。
(中略)
【0064】
また、前記シアニン系のカチオン性発色団としては、下記式(5)又は(6)で表される発色団が好ましい。
【0065】
【化19】
【0066】
〔式(5)において、
R21~R26は、相互に独立に、水素原子又はアルキル基を示す。
環Z1及びZ2は、相互に独立に、芳香環を示し、該芳香環は、ハロ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のフッ化アルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルキルカルボニル基で置換されていてもよい。
pは、1~4の整数を示す。〕
【0067】
【化20】
【0068】
〔式(6)において、
R27~R30は、相互に独立に、水素原子又はアルキル基を示す。
環Z3及びZ4は、相互に独立に、芳香環を示し、該芳香環は、ハロ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のフッ化アルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルキルカルボニル基で置換されていてもよい。
Qは、酸素原子又は硫黄原子を示す。
qは、1~4の整数を示す。〕
【0069】
R21~R30におけるアルキル基としては、炭素数1~8、更に炭素数1~4のアルキル基が好ましい。具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。
環Z1~Z4における芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。該芳香環は、ハロ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のフッ化アルキル基、及び炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよいが、これら置換基の具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。また、該芳香環は、炭素数2~6のアルキルカルボニル基で置換されていてもよいが、アルキルカルボニル基としては、炭素数2~5のアルキルカルボニル基が好ましい。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基等を挙げることができる。
p及びqは、1又は2が好ましい。
【0070】
上記式(5)で表されるシアニン系のカチオン性発色団の代表例としては、例えば、下記の化合物群fに示す発色団を挙げることができる。
【0071】
【化21】
【0072】
上記式(6)で表されるシアニン系のカチオン性発色団の代表例としては、例えば、下記の化合物群gに示す発色団を挙げることができる。
【0073】
【化22】
【0074】
上記のシアニン系のカチオン性発色団のほか、下記の化合物群hに示す発色団を使用することもできる。
【0075】
【化23】
(中略)
【0077】
本着色剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0078】
本発明の着色組成物は、着色剤として、本着色剤と共に、更に他の着色剤を含有することができる。他の着色剤としては、特に限定されるものではなく、用途に応じて色彩や材質を適宜選択することができる。
【0079】
他の着色剤としては、本着色剤以外の顔料、染料及び天然色素の何れをも使用することができるが、輝度及び色純度の高い画素を得るという意味においては、有機顔料、有機染料が好ましく、有機顔料がより好ましい。
【0080】
上記有機顔料としては、例えば、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメントに分類されている化合物が挙げられるが、中でも、特開2001-081348号公報、特開2010-026334号公報、特開2010-191304号公報、特開2010-237384号公報、特開2010-237569号公報、特開2011-006602号公報、特開2011-145346号公報等に記載のレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー80、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー211、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントバイオレット23等のレーキ顔料以外の有機顔料が好ましい。また、レーキ顔料の中では、トリアリールメタン系レーキ顔料、キサンテン系レーキ顔料、アゾ系レーキ顔料が好ましく、トリアリールメタン系レーキ顔料およびキサンテン系レーキ顔料がより好ましい。
(中略)
【0082】
本発明において、他の着色剤として顔料を使用する場合、更に公知の分散剤及び分散助剤を含有せしめることもできる。公知の分散剤としては、例えば、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系分散剤、ポリエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪酸エステル系分散剤、ポリエステル系分散剤、アクリル系分散剤等を、分散助剤としては顔料誘導体等を挙げることができる。
【0083】
このような分散剤は商業的に入手することができ、例えば、アクリル系分散剤として、Disperbyk-2000、Disperbyk-2001、BYK-LPN6919、BYK-LPN21116、BYK-LPN21324(以上、ビックケミー(BYK)社製)等を、ウレタン系分散剤として、Disperbyk-161、Disperbyk-162、Disperbyk-165、Disperbyk-167、Disperbyk-170、Disperbyk-182(以上、ビックケミー(BYK)社製)、ソルスパース76500(ルーブリゾール(株)社製)等を、ポリエチレンイミン系分散剤として、ソルスパース24000(ルーブリゾール(株)社製)等を、ポリエステル系分散剤として、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB880、アジスパーPB881(以上、味の素ファインテクノ(株)社製)等を、それぞれ挙げることができる。
(中略)
【0087】
-(B)バインダー樹脂-
本発明におけるバインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、カルボキシル基、フェノール性水酸基等の酸性官能基を有する樹脂であることが好ましい。中でも、カルボキシル基を有する重合体(以下、「カルボキシル基含有重合体」という。)が好ましく、例えば、1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(b1)」という。)と他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(b2)」という。)との共重合体を挙げることができる。
(中略)
【0100】
-(C)重合性化合物-
本発明において重合性化合物とは、2個以上の重合可能な基を有する化合物をいう。重合可能な基としては、例えば、エチレン性不飽和基、オキシラニル基、オキセタニル基、N-アルコキシメチルアミノ基等を挙げることができる。本発明において、重合性化合物としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又は2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましい。
(中略)
【0106】
本発明における(C)重合性化合物の含有量は、(A)着色剤100質量部に対して、10~1,000質量部が好ましく、更に20~700質量部、更に100~500質量部、特に200~400質量部が好ましい。このような態様とすることで、硬化性、アルカリ現像性を良好にすることができる。
【0107】
-光重合開始剤-
本発明の着色組成物には、光重合開始剤を含有せしめることができる。これにより、着色組成物に感放射線性を付与することができる。本発明に用いる光重合開始剤は、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により、(C)架橋剤の重合を開始しうる活性種を発生する化合物である。
【0108】
このような光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O-アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物、オニウム塩系化合物等を挙げることができる。
(中略)
【0118】
-溶媒-
本発明の着色組成物は、上記(A)~(C)成分、及び任意的に加えられる他の成分を含有するものであるが、通常、溶媒を配合して液状組成物として調製される。上記溶媒としては、着色組成物を構成する(A)~(C)成分や他の成分を分散又は溶解し、かつこれらの成分と反応せず、適度の揮発性を有するものである限り、適宜に選択して使用することができる。
(中略)
【0125】
-添加剤-
本発明の着色組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を含有することもできる。
添加剤としては、例えば、ガラス、アルミナ等の充填剤;ポリビニルアルコール、ポリ(フロオロアルキルアクリレート)類等の高分子化合物;フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等の界面活性剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチルフェノール等の酸化防止剤;2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤;ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤;マロン酸、アジピン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸、2-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール、5-アミノ-1-ペンタノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、4-アミノ-1,2-ブタンジオール等の残渣改善剤;こはく酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、フタル酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の現像性改善剤;特開2008-242078号公報等に開示されている反応性官能基を有するシロキサンオリゴマー等を挙げることができる。
【0126】
本発明の着色組成物は、適宜の方法により調製することができ、本着色剤が染料である場合は、例えば、特開2008-58642号公報、特開2010-132874号公報等に開示されている方法により調製することができる。着色剤として染料である本着色剤と顔料の両方を使用する場合、特開2010-132874号公報に開示されているように、本着色剤等を含む染料溶液を第1のフィルタに通した後、第1のフィルタを通過した染料溶液を、別途調製した顔料分散液等と混合し、得られた着色組成物を第2のフィルタに通すことにより調製する方法を採用することができる。また、本着色剤等を含む染料と、上記(B)~(C)成分、並びに必要に応じて使用する他の成分を溶媒に溶解し、得られた溶液を第1のフィルタに通した後、第1のフィルタを通過した溶液を、別途調製した顔料分散液と混合し、得られた着色組成物を第2のフィルタに通すことにより調製する方法を採用してもよい。また、本着色剤等を含む染料溶液を第1のフィルタに通した後、第1のフィルタを通過した染料溶液と、上記(B)~(C)成分、並びに必要に応じて使用する他の成分を混合・溶解し、得られた溶液を第2のフィルタに通し、更に第2のフィルタを通過した溶液を、別途調製した顔料分散液と混合し、得られた着色組成物を第3のフィルタに通すことにより調製する方法も採用することができる。
【0127】
カラーフィルタ及びその製造方法
本発明のカラーフィルタは、本着色剤を含有する着色層を備えるものである。
【0128】
カラーフィルタを製造する方法としては、第一に次の方法が挙げられる。まず、基板の表面上に、必要に応じて、画素を形成する部分を区画するように遮光層(ブラックマトリックス)を形成する。次いで、この基板上に、例えば、本着色剤を含有する青色の本発明の感放射線性組成物の液状組成物を塗布したのち、プレベークを行って溶媒を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ現像液を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去する。その後、ポストベークすることにより、青色の画素パターンが所定の配列で配置された画素アレイを形成する。
【0129】
次いで、緑色又は赤色の各感放射線性着色組成物を用い、上記と同様にして、各感放射線性着色組成物の塗布、プレベーク、露光、現像及びポストベークを行って、緑色の画素アレイ及び赤色の画素アレイを同一基板上に順次形成する。これにより、赤色、緑色及び青色の三原色の画素アレイが基板上に配置されたカラーフィルタが得られる。但し、本発明においては、各色の画素を形成する順序は、上記のものに限定されない。また、カラーフィルタを製造する第一の方法においては、上記青色、緑色、赤色の画素アレイのいずれか1以上が、本着色剤を含有する着色層であればよい。
(中略)
【0138】
ポストベークの条件は、通常120~280℃で10~60分程度であるが、本着色剤の耐熱性の点から、ポストベークの温度は、好ましくは240℃以下、特に好ましくは230℃以下である。」
ウ 「【実施例】
【0148】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0149】
<本着色剤の合成>
合成例1
特開2012-37740号公報の段落〔0069〕に記載の方法に従って、下記式(7)で表されるアニオンを含む生成物を得た。得られた生成物を、中間体1とする。
【0150】
【化24】
【0151】
合成例2
攪拌子を投入したスクリュー管に、C.I.ベーシックバイオレット11:1(上記式(4)において、R12~R15が全てエチル基であり、R16が-COOCH3であり、かつm=1であるキサンテン系のカチオン性発色団と、Cl-との塩)を1.3g、上記合成例1で得られた中間体1を1.6g、クロロホルム20mL及び水10mLを加え、室温で7時間攪拌した。水層を分離除去後、有機層を2回水洗し減圧下で濃縮し、更に得られた固体を減圧乾燥することにより、紫色固体1.5gを得た。得られた化合物を、着色剤(A-1)とする。
【0152】
合成例3
合成例2においてC.I.ベーシックバイオレット11:1に代えてC.I.ベーシックレッド12(上記式(5)において、R21~R26が全てメチル基であり、環Z1及びZ2が共にベンゼン環であり、かつp=1であるシアニン系のカチオン性発色団と、Cl-との塩)を用いた以外は、合成例2と同様にして着色剤を合成した。得られた化合物を、着色剤(A-2)とする。
(中略)
【0166】
<顔料分散液の調製>
調製例1
着色剤としてC.I.ピグメントブルー15:6を15質量部、分散剤としてBYK-LPN21116(ビックケミー(BYK)社製)12.5質量部(固形分濃度40質量%)、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート72.5質量部を用いて、ビーズミルにより処理して、顔料分散液(a-1)を調製した。
【0167】
調製例2
調製例1において、C.I.ピグメントブルー15:6に代えてC.I.ピグメントレッド254を用いた以外は調製例1と同様にして、顔料分散液(a-2)を調製した。
(中略)
【0169】
<染料溶液の調製>
調製例4
着色剤(A-1)10重量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル90重量部とを混合し、染料溶液(A-1)を調製した。
【0170】
調製例5~18
調製例4において、着色剤(A-1)に代えて着色剤(A-2)~(A-15)を用いた以外は、調製例4と同様にして、染料溶液(A-2)~(A-15)を調製した。
【0171】
<バインダー樹脂の合成>
樹脂合成例1
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部を仕込んで窒素置換した。80℃に加熱して、同温度で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部、メタクリル酸20質量部、スチレン10質量部、ベンジルメタクリレート5質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート15質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート23質量部、N-フェニルマレイミド12質量部、こはく酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)15質量部及び2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)6質量部の混合溶液を1時間かけて滴下し、この温度を保持して2時間重合した。その後、反応溶液の温度を100℃に昇温させ、さらに1時間重合することにより、バインダー樹脂溶液(固形分濃度33質量%)を得た。得られたバインダー樹脂は、Mwが12,200、Mnが6,500であった。このバインダー樹脂を「バインダー樹脂(B1)」とする。
【0172】
樹脂合成例2
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに、シクロヘキサノン86.4質量部を仕込んで窒素置換した。80℃に加熱して、同温度で、シクロヘキサノン20質量部、メタクリル酸21.6質量部、メタクリル酸ブチル13.5質量部、メタクリル酸メチル13.5質量部、2-エチルヘキシルEO変性アクリレート(東亞合成株式会社製、商品名M-120)13.5質量部及びグリセロールメタクリレート27.9質量部の混合溶液、並びにシクロヘキサノン57.6質量部及び2,2'-アゾビスブチロニトリル7.20質量部の混合溶液を2時間かけて各々滴下し、この温度を保持して1時間重合した。その後、反応溶液の温度を90℃に昇温させ、さらに1時間重合を行った。次に、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、商品名カレンズMOI)34.3質量部(グリセロールメタクリレートのモル数に対して95モル%)及び4-メトキシフェノール0.36質量部の混合溶液を空気バブリング条件下、15分かけて滴下し、この温度を保持して1.5時間付加反応を行った。その後、この溶液を室温まで冷却し、不揮発分が40質量%になるようシクロヘキサノンを加えることにより、バインダー樹脂溶液を得た。得られたバインダー樹脂は、Mw=8400、Mn=3700であり、ヨウ素価は208g/100gであった。このバインダー樹脂を「バインダー樹脂(B2)」とする。
(中略)
【0175】
<着色組成物の調製及び評価>
実施例1
顔料分散液(a-1)16.5質量部、染料溶液(A-1)2.8質量部、バインダー樹脂としてバインダー樹脂(B1)溶液13.9質量部、架橋剤として東亞合成株式会社製M-402(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物)8.2質量部、光重合開始剤として2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名IRGACURE369)1.8質量部、フッ素系界面活性剤としてメガファックF-554(DIC株式会社製)0.2質量部、及び溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとプロピレングリコールモノメチルエーテルを混合して、固形分濃度15質量%の着色組成物(CR1)を調製した。なお、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとプロピレングリコールモノメチルエーテルは、着色組成物(CR1)中において両者の混合比が質量比で90:10となるよう使用した。
【0176】
着色組成物(CR1)を、ガラス基板上に、スリットダイコーターを用いて塗布した後、80℃のホットプレートで10分間プレベークを行って塗膜を形成した。スリットダイコーターの塗布条件を変えて同様の操作により、膜厚の異なる3枚の塗膜を形成した。
次いで、これらの基板を室温に冷却したのち、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介さずに、各塗膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を2000J/m2の露光量で露光した。その後、230℃のクリーンオーブン内で30分間ポストベークを行うことにより、評価用硬化膜を形成した。
【0177】
耐熱性の評価
得られた3枚の硬化膜について、カラーアナライザー(大塚電子(株)製MCPD2000)を用い、C光源、2度視野にて、CIE表色系における色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定した。次いで、230℃で30分間追加ベークをした後の色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定し、追加ベーク前後での色変化、即ちΔEabを評価した。評価結果を表1に示す。なお、ΔEab値が小さい程、耐熱性が良好であることを意味する。
【0178】
電圧保持率(%)の評価
表面にナトリウムイオンの溶出を防止するSiO2膜が形成され、さらにITO(インジウム-酸化錫合金)電極を所定形状に蒸着したソーダガラス基板上に、得られた着色組成物をスリットダイコーターを用いて塗布した後、100℃のホットプレートで1分間プレベークを行って、膜厚2.0μmの被膜を形成した。次いで、フォトマスクを介さずに、被膜に700J/m2の露光量で露光した。その後、この基板を23℃の0.04質量%の水酸化カリウム水溶液からなる現像液に1分間浸漬して、現像した後、超純水で洗浄して風乾し、さらに230℃で30分間ポストベークを行い、被膜を硬化させて、永久硬化膜を形成した。次いで、この画素を形成した基板とITO電極を所定形状に蒸着しただけの基板とを、1.8mmのガラスビーズを混合したシール剤で貼り合わせた後、メルク製液晶(MLC6608)を注入して、液晶セルを作製した。次いで、液晶セルを60℃の恒温層に入れて、液晶セルの電圧保持率を液晶電圧保持率測定システム(VHR-1A型、東陽テクニカ社)により測定した。このときの印加電圧は5.5Vの方形波、測定周波数は60Hzとした。ここで電圧保持率とは、(16.7ミリ秒後の液晶セル電位差/印加直後の電圧)により求められる値である。液晶セルの電圧保持率が90%以下であると、液晶セルは16.7ミリ秒の時間、印加電圧を所定レベルに保持できず、十分に液晶を配向させることができないことを意味し、残像等の「焼き付き」を起こすおそれがある。
【0179】
実施例2~17及び比較例1~2
実施例1において、顔料分散液、染料溶液及びバインダー樹脂溶液の種類を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして着色組成物(CR2)~(CR19)を調製した。そして、得られた着色組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0180】
【表1】
【表1】
」
(2)引用文献Bに記載された発明
引用文献Bの記載事項アにおける、「本発明は、着色剤、着色組成物、カラーフィルタ及び表示素子に関わり、より詳しくは、透過型あるいは反射型のカラー液晶表示素子、固体撮像素子、有機EL表示素子、電子ペーパー等のカラーフィルタに好適に用いられる着色剤、当該着色剤を含有する着色組成物、該着色剤を含有する着色層を備えるカラーフィルタ、並びに当該カラーフィルタを具備する表示素子に関する。」(段落【0001】)との記載に基づけば、実施例2の着色組成物(CR2)は、「カラーフィルタに好適に用いられる着色剤を含有する着色組成物」であるといえる。そうすると、引用文献Bには、実施例2として、次の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されていたと認められる。
「C.I.ベーシックレッド12(下記式(5)において、R21~R26が全てメチル基であり、環Z1及びZ2が共にベンゼン環であり、かつp=1であるシアニン系のカチオン性発色団と、Cl-との塩)を1.3g、下記式(7)で表されるアニオンを含む生成物を1.6g、クロロホルム20mL及び水10mLを加え、室温で7時間攪拌し、水層を分離除去後、有機層を2回水洗し減圧下で濃縮し、更に得られた固体を減圧乾燥することにより着色剤(A-2)を得て、
着色剤(A-2)10重量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル90重量部とを混合し、染料溶液(A-2)を調製し、
着色剤としてC.I.ピグメントブルー15:6を15質量部、分散剤としてBYK-LPN21116(ビックケミー(BYK)社製)12.5質量部(固形分濃度40質量%)、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート72.5質量部を用いて、ビーズミルにより処理して、顔料分散液(a-1)を調製し、
顔料分散液(a-1)16.5質量部、染料溶液(A-2)2.8質量部、バインダー樹脂としてバインダー樹脂(B1)溶液13.9質量部、架橋剤として東亞合成株式会社製M-402(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物)8.2質量部、光重合開始剤として2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名IRGACURE369)1.8質量部、フッ素系界面活性剤としてメガファックF-554(DIC株式会社製)0.2質量部、及び溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとプロピレングリコールモノメチルエーテルを混合して得た、カラーフィルタに好適に用いられる着色剤を含有する着色組成物(CR2)。
」
3 対比
本件発明と引用発明Bとを対比する。
(1)着色剤
引用発明Bの「着色剤(A-2)」及び「C.I.ピグメントブルー15:6」は、技術的にみて、本件発明の「着色剤」に相当する。
また、引用発明Bの「着色剤(A-2)」は、「式(5)において、R21~R26が全てメチル基であり、環Z1及びZ2が共にベンゼン環であり、かつp=1であるシアニン系のカチオン性発色団」を有するものであるから、本件発明の一般式(1)のカチオン部分において、Aが「置換基もしくは水素原子を有する炭素原子」であり、R3~R10が「水素原子」であり、R11が「水素原子」であり、R12及びR13が「置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基」である化合物である。また、引用発明Bの「着色剤(A-2)」は、「式(7)で表されるアニオン」を有するものであるから、本件発明の一般式(2)において、R21が「置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基」であり、R22が「置換基を有してもよい芳香族炭化水素基」であるアニオンに該当する。さらに、引用発明Bの「式(7)で表されるアニオン」は、「ハロゲン化物イオン」には該当しない。
したがって、引用発明Bの「着色剤(A-2)」は、本件発明の「一般式(1)で表わされるシアニン色素(ZC)を含有する」という要件を満たしている。
(2)バインダー樹脂
引用発明Bの「バインダー樹脂(B1)」は、技術的にみて、本件発明の「バインダー樹脂」に相当する。
(3)カラーフィルタ用着色組成物
引用発明Bの「着色組成物(CR2)」は、「カラーフィルタに好適に用いられる着色剤」を含有するものである。したがって、引用発明Bの「着色組成物(CR2)」は、本件発明の「カラーフィルタ用着色組成物」に相当する。
(4)一致点及び相違点
以上より、本件発明と引用発明Bとは、
「一般式(1)で表わされるシアニン色素(ZC)を含有する着色剤と、バインダー樹脂とを含有するカラーフィルタ用着色組成物。
【化1】
[一般式(1)において、
Aは置換基もしくは水素原子を有する炭素原子、または硫黄原子を表す。
R3~R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のアシル基を表す。
R11は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~4のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。
R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、重合性官能基を有する有機基、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表す。
Y-は、下記一般式(2)で表わされるイミド酸アニオン、下記一般式(3)で表わされるフッ素基含有ホウ素アニオン、下記一般式(4)で表わされるメチド酸アニオン、および下記一般式(5)で表わされる構造単位を有するビニル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンを表す。
ただし、Y-がハロゲン化物イオンである場合は除く。]
【化2】
[一般式(2)において、R21およびR22はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有してもよい複素環基を表し、R21は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、または置換基を有してもよい脂環式炭化水素基であり、R22は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有してもよい複素環基を表す。]
【化3】
[一般式(3)において、
R31~R34はそれぞれ独立に、フッ素原子で置換されていても良いアルキル基、シアノ基、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていても良いアリール基を表し、
R31~R34のうち少なくとも一つは、フッ素原子で置換されていても良いアルキル基、フッ素原子、またはフッ素原子で置換されていても良いアリール基を表す。ただし、R31~R34がすべてフッ素原子である場合は除く。]
【化4】
[一般式(4)において、
R41~R43はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、または置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表す。]
【化5】
[一般式(5)において、
R51は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
Qは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、-CONH-R52-、または-COO-R52-を表し、
R52は置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。
P-は、―SO3-、または-COO-を表す。]」である点で一致し、以下の点で一応相違する。
[相違点B]本件発明は、「熱硬化性化合物(D)および酸化防止剤(E)の少なくとも1つ」を含有するのに対し、引用発明Bは、熱硬化性化合物(D)および酸化防止剤(E)の少なくとも1つを含有するとされていない点。
4 判断
上記[相違点B]について検討する。
引用発明Bは、「架橋剤」を含有している。そして、引用文献Bの記載事項ウにおける「その後、230℃のクリーンオーブン内で30分間ポストベークを行うことにより、評価用硬化膜を形成した。」(段落【0176】)及び「得られた着色組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。」(段落【0179】)との記載に基づけば、引用発明Bの「架橋剤」は、ポストベークによって硬化する、本件発明の「熱硬化性化合物(D)」に相当するといえる。
したがって、引用発明Bは、本件発明における「熱硬化性化合物(D)および酸化防止剤(E)の少なくとも1つ」を含有するという要件を満たすものといえるから、上記[相違点B]は、実質的な相違点とはいえないものである。
よって、本件発明は、引用発明Bと同一の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
仮に、引用発明Bの「架橋剤として東亞合成株式会社製M-402(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物)」が「熱硬化性化合物(D)」といえないとしても、引用文献Bには、記載事項イに「本発明において重合性化合物とは、2個以上の重合可能な基を有する化合物をいう。重合可能な基としては、例えば、エチレン性不飽和基、オキシラニル基、オキセタニル基、N-アルコキシメチルアミノ基等を挙げることができる。」(段落【0100】)と記載されており、熱硬化性化合物(例:2個以上のオキシラニル基を有する化合物)が選択肢として挙げられている。また、記載事項イの「本発明の着色組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を含有することもできる。」及び「添加剤としては、・・・2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチルフェノール等の酸化防止剤;・・・等を挙げることができる。」(段落【0125】)と記載されている。当該記載に基づいて、引用発明Bの着色組成物に、「熱硬化性化合物(D)および酸化防止剤(E)の少なくとも1つ」を含有させることは、当業者が容易になし得たことであるといえる。
5 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明Bと同一の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件発明は、引用発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-008910