特許拒絶査定不服審判
2022-020715
有機EL表示装置用赤色着色組成物、有機EL表示装置用カラーフィルタ及び有機EL表示装置
- 審判番号
- 2022-020715
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-149575
- 請求日
- 2022年12月21日
- 審決日
- 2023年11月22日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東洋インキSCホールディングス株式会社
- 【請求人】トーヨーカラー株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 神谷 健一
- 審判官 宮澤 浩
- 審判官 大▲瀬▼ 裕久
- 分類
- P18 .121-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-149575「有機EL表示装置用赤色着色組成物、有機EL表示装置用カラーフィルタ及び有機EL表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月13日出願公開、特開2022- 8395〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月22日に出願した特願2017-55917号の一部を令和3年9月14日に新たな特許出願としたものであって、令和4年7月14日付けの拒絶理由の通知に対し、令和4年9月20日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和4年10月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和4年12月21日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
なお、審判の請求と同時になされた手続補正は、本願明細書の段落【0345】のみを補正するものである。
第2 本件発明の認定
本願の請求項に係る発明は、 特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、令和4年9月20日付けの手続補正によって補正された、以下のとおりのものである。
「赤色色素と、黄色色素と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性単量体と、光重合開始剤とを含有する有機EL表示装置用赤色着色組成物であって、
赤色色素がC.I.ピグメントレッド269を含み、
黄色色素がC.I.ピグメントイエロー185を含み、かつC.I.ピグメントレッド269の含有量が赤色色素100重量%中、77重量%以上であり、前記アルカリ可溶性樹脂がメチルメタクリレート由来の構成単位を有する樹脂であることを特徴とする有機EL表示装置用赤色着色組成物。」
第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、概略、この出願の請求項1~5に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献
1.国際公開第2016/204148号 (主引用文献)
2.特開2016-66020号公報 (周知技術を示す文献)
第4 引用文献
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
本願の出願前の2016年(平成28年)12月22日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である国際公開第2016/204148号(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。
なお、下線は当審において付与した。
ア 技術分野
「[0001] 本発明は、薬品耐性に優れた膜あるいは微細パターンが得られる感光性組成物に関する。本発明の感光性組成物は、カラー液晶表示装置、カラー有機EL表示装置、固体撮像素子等に用いられるカラーフィルタ、ブラックマトリックス、カラーフィルタ保護膜、フォトスペーサー、液晶配向用突起、マイクロレンズ、タッチパネル用絶縁膜、フレキシブルプリント配線板周辺などの電子材料用接着剤や接着シートなどを含めた幅広い用途に用いることができる。」
イ 背景技術
「[0002] 一般に、有機EL表示装置(特に白色発光有機ELとカラーフィルタを組み合わせるWRGB方式)、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などには、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、カラーフィルタ保護膜、フォトスペーサー、液晶配向用突起、あるいは、マイクロレンズ、タッチパネル用絶縁膜などの膜や微細パターンが設けられている。これらの膜あるいは微細パターンは、透明性などの光学特性が求められる一方、他の部材の形成や組み立てなどの後工程を行う際に、薬品耐性などが求められる。そのため、感光性組成物にあらかじめ熱架橋剤を添加して、光硬化と熱硬化を行うことで、薬品耐性に優れた膜あるいは微細パターンを形成することが知られている。(例えば特許文献1および2)
[0003] また近年、ディスプレイのフレキシブル化やウエアラブル化が進み、従来使用されてきたリジッドなガラス基板を使用せずにフレキシブル基材を使用して素子を作製するニーズが高まっている。フレキシブル基板の多くは有機系の素材からなり耐熱性がガラス基板よりも低いため、熱硬化温度を下げる必要がある。例えば、カラーフィルタは従来200~230℃程度で熱硬化が行われてきたが、プラスチック製のフレキシブル基材を使用する場合はその耐熱性の問題から80~150℃程度に熱硬化温度を下げる必要がある。特に有機EL表示装置に使用されるカラーフィルタにおいては高い色再現のために非常に濃い色を用いることが多いため、露光工程における光硬化がされにくく、より熱架橋の重要性が高く、低温での熱硬化性が求められる。
[0004] さらに、WRGB方式の有機EL表示装置に使用されるカラーフィルタ等では、感光性組成物の硬化物から脱ガスが発生することにより有機EL素子にダークスポットを発生させてしまうことが知られており、脱ガスの低減が求められている。」
ウ 発明が解決しようとする課題
「[0011] 本発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであり、低い硬化温度でも薬品耐性を付与することが可能であり、かつ、脱ガスや相溶性の問題のない感光性組成物の提供を目的とする。」
エ 課題を解決するための手段
「[0012] 本発明者らは、鋭意検討の結果、感光性組成物中にフリル基を含む化合物と光重合性官能基を含む化合物と光重合開始剤とを含むことで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の一態様は、フリル基を含む化合物(A)、光重合性官能基を含む化合物(B)、光重合開始剤(C)、および着色剤を含有する、カラーフィルタ用感光性組成物に関する。」
オ 発明の効果
「[0034] 本発明により、低い硬化温度でも薬品耐性を付与することが可能であり、かつ、脱ガスや相溶性の問題のない感光性組成物を提供することができた。」
カ 発明を実施するための形態
「[0036]<<感光性組成物の硬化方法と構成要素>>
まず、本実施形態の感光性組成物の硬化方法の例と構成する要素の組み合わせについて説明する。本実施形態の感光性組成物は、フリル基を含む化合物(A)と、光重合性官能基を含む化合物(B)と、光重合開始剤(C)を必須成分として含む。
本実施形態の感光性組成物は上記の構成を満たしていれば良く、作用や硬化プロセスに限定されるものではないが、例えば、光硬化を行ったのち熱硬化を行うことで、薬品耐性を上げることができる。…」
キ フリル基を含む化合物(A)
「[0049]<<フリル基を含む化合物(A)>>
本実施形態のフリル基を含む化合物(A)は、感光性組成物中の光重合性官能基と熱硬化工程で熱ラジカル付加反応またはDiels-Alder反応することによって、感光性組成物に薬品耐性を付与する効果を奏すると推測される。フリル基を含む化合物(A)は、フリル基(フランから1つの水素原子を除いた基)を含んでいれば特にその構造が限定されるものではない。…」
ク 光重合性官能基を含む化合物(B)
「[0102]<<光重合性官能基を含む化合物(B)>>
本実施形態の光重合性官能基を含む化合物(B)は、フリル基を含まず、光重合性官能基を含んでいれば特にその構造が限定されるものではなく、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。…
[0107]<光重合性官能基を含む化合物(B)のうち、低分子量のもの>
光重合性官能基を含む化合物(B)のうち、低分子量のものとしては、単官能または多官能のモノマーまたはオリゴマーを挙げることができ、耐薬品性が向上するため、3官能以下のモノマーまたはオリゴマーであることが好ましい。
光重合性官能基として好ましくは(メタ)アクリロイル基、マレイミド基であり、
(メタ)アクリロイル基を含む化合物としては例えば、…
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレートなどの四官能以上の(メタ)アクリレート類等が挙げられる。…
(メタ)アクリロイル基を含む化合物としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能イソシアネートとヒドロキシル基を含む(メタ)アクリレート単量体を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート類が好ましい。…」
ケ 光重合開始剤(C)
「[0141]<<光重合開始剤(C)>>
本実施形態の光重合開始剤(C)は、紫外線照射によりラジカルが発生し、感光性組成物中の光重合性官能基の重合を開始させるために用いられものであれば特にその構造が限定されるものではない。…」
コ アルカリ可用性官能基を含む化合物(D)
「[0147]<<アルカリ可溶性官能基を含む化合物(D)>>
アルカリ可溶性官能基を含む化合物(D)(ただし、フリル基と光重合性基は含まない)は、感光性組成物をフォトリソグラフィーでパターン形成する際のアルカリ現像性を付与するために用いられる。感光性組成物をアルカリ現像型のネガ型フォトレジストとして使用し、かつ必須成分であるフリル基を含む化合物(A)および/または光重合性官能基を含む化合物(B)のいずれにもアルカリ可溶性官能基を含まない場合には、化合物(D)を用いることが必須であるが、それ以外の場合は任意に使用することができる。」
サ 着色剤
「[0163]<着色剤>
本実施形態の感光性組成物を着色し、カラーフィルタ等に使用するために、着色剤を添加してもよい。
以下に、カラーフィルタ用感光性組成物に好ましく用いられる着色剤について説明する。
[0164] カラーフィルタ用感光性組成物に含有される着色剤としては、有機または無機の顔料及び染料を、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料のなかでは、発色性が高く、且つ耐熱性の高い顔料が好ましく、通常は有機顔料が用いられるがこれに限定されるものではない。
以下に、カラーフィルタセグメントやブラックマトリックスの作製に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
[0165] 赤色フィルタセグメントを形成するための赤色感光性組成物には、例えばC.I. Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、166、168、176、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、207、208、209、210、215、216、217、220、221、223、224、226、227、228、240、242、246、254、255、264、269、272、279等の赤色顔料を用いることができる。赤色感光性組成物には、黄色顔料、オレンジ顔料を併用することができる。
また、キサンテン系、アゾ系、ジスアゾ系、アントラキノン系などの赤色染料も使用できる。具体的には、C.I.アシッド レッド 52、87、92、289、338などのキサンテン系酸性染料の造塩化合物等が挙げられる。
さらに後述する緑色顔料を色度調整用に併用することができる。
[0166] これらの中でも、赤色顔料としては、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料、又はペリレン系顔料が好ましい。ジケトピロロピロール系顔料としてはC.I.Pigment Red254が好ましく、アントラキノン系顔料としてはC.I.Pigment Red177、ペリレン系顔料としてはC.I.Pigment Red179が、優れた着色力を得られるため好ましい。
さらにアゾ系顔料としては、下記一般式(1)で表されるナフトールアゾ顔料が好ましい。
[0167][化13]
[図:0001406437000001.jpg]
[一般式(1)中、Aは、水素原子、ベンズイミダゾロン基、置換基を有してもよいフェニル基または置換基を有してもよい複素環基を表す。R1は、水素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1~4のアルキル基、-OR7または-COOR8を表す。R2~R6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、炭素数1~4のアルキル基、-OR9、-COOR10、-CONHR11、-NHCOR12または-SO2NHR13を表す。R7~R13は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
ただし、R4が-NHCOR12であり、A、R2、R3、R5、およびR6が水素原子、かつR1がハロゲン原子の場合は除く。]
[0168] 一般式(1)で表されるナフトールアゾ顔料の中でも、好ましくは、R2~R6のうち少なくとも1つがトリフルオロメチル基であるアゾ顔料、あるいはR2~R6のうち少なくとも1つが-NHCOR12であるアゾ顔料が、顔料粒子を微細化しやすくコントラスト比が秀でているため好ましい。
[0169] 一般式(1)で表されるナフトールアゾ顔料としては、カラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、C.I.ピグメントレッド31、32、146、147、150、184、187、188、210、238.245.247、266、268、269、C.I.バイオレット25、または50等が挙げられる。これらの中でも、色相・明度の観点から、C.I.ピグメントレッド150、170、187、266、268、269が好ましい。…
[0175] 本実施形態の着色剤は、化学構造が一般式(1)、またはその互変異性体であっても良く、あらゆる結晶形態を持った顔料であっても良く、いわゆる多形と呼称されるあらゆる結晶形態を持った顔料同士の混晶であっても良い。これら顔料の結晶形態は、粉末X線回折測定やX線結晶構造解析により確認できる。
[0176] ナフトールアゾ顔料は、溶媒に対して、そして光に対して優れた堅ろう性を有する水不溶性の顔料であり、この顔料を用いることで、明度とコントラスト比のいずれも優れたカラーフィルタ用着色組成物を得ることができる。
[0177] ナフトールアゾ顔料を単独で、または、2種以上を混合して使用することもできる。…
[0184] 一般式(1)で表されるナフトールアゾ顔料の中でも、好ましくは、R2~R6のうち少なくとも1つが-NHCOR12であるナフトールアゾ顔料[A2]が明度に優れていているために好ましい。ただし、R4が-NHCOR12であり、A、R2、R3、R5、およびR6が水素原子、かつR1がハロゲン原子の場合は除く。
これらの中でも、R4が-NHCOR12であることが好ましく、R1がメトキシ基であることがより好ましい。
[0185] 上記ナフトールアゾ顔料の具体例としては、下記に示すナフトールアゾ顔料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[0186][化17]
[図:0001406437000002.jpg]
…
[図:0001406437000003.jpg]
…
[0189] 全着色剤に対する赤色顔料・染料の含有量の範囲は好ましくは10~70質量%、より好ましくは10~60質量%である。赤色顔料・染料の含有量が上記範囲内であると、有機EL表示装置用カラーフィルタとしての優れた色再現性の観点で好ましい。
[0190] 黄色顔料としては、例えばC.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214等を用いることができる。
また、キノリン系、アゾ系、ジスアゾ系、メチン系などの黄色染料も使用できる。
上記の中でも、イソインドリン系顔料、キノフタロン系顔料が好ましい。これらの中でもとくにC.I.Pigment Yellow 138、C.I.Pigment Yellow 139、C.I.Pigment Yellow 185、または下記一般式(2)で表されるキノフタロン化合物を含む場合、明度や着色力に優れるため好ましい。…」
シ 有機EL表示装置
「[0254]<有機EL表示装置>
本実施形態における有機EL表示装置は、本実施形態の感光性組成物により形成されてなるカラーフィルタと、白色発光有機EL素子(以下有機EL素子とする)を光源として有する表示装置であることが好ましい。…
[0286] 本実施形態に用いる有機EL素子のフルカラー化方式の主な方式は、カラーフィルタ方式である。カラーフィルタ方式では、白色発光の有機EL素子を使って、カラーフィルタを通して3原色の光を取り出す方法であるが、これら3原色に加えて、一部白色光をそのまま取り出して発光に利用することで、素子全体の発光効率をあげることもできる。…
[0288] 上記の様にしてガラス基板等に並置してRGBのカラーフィルタ層を作製し、そのカラーフィルタ層上に、ITO電極層と上記有機EL素子を用いて作製された発光層(バックライト)を載せることでカラー表示が可能となり、カラー表示装置が得られることになる。その際、発光時の電流の流れをTFTによりコントロールすることで高コントラスト比をもつカラー表示装置を実現することが可能となる。」
ス 実施例
「[0291] 以下に、実施例により、本発明の実施形態をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。…
[0292]<<製造例>>
<フリル基を含む化合物(A)の製造>…
[0300][製造例12]
攪拌機、温度計、滴下装置、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90.0部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら60℃に加熱して、同温度でフルフリルメタクリレート50.0部、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸26.7部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート23.3部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.5部の混合物を2時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、さらに60℃で1時間反応させた後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.0部に溶解させたものを添加し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け共重合体を得た。室温に冷却後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈することにより、不揮発分20%のフリル基を含む化合物溶液A10を得た。なお、この化合物は、アルカリ可溶性基を含み、光重合性官能基を含まない。重量平均分子量は52000であった。…
[0317]
[表5]
[図:0001406437000004.jpg]
[0318] 表5中の略語について以下に示す。なお、表5中の有機溶剤の量は、合成中に使用した量であって、室温に冷却後に不揮発分を調整するために使用したものは含まれていない。
MAA:メタクリル酸
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート:ブレンマーG(日油社製)
HPMA:ヒドロキシプロピルメタクリレート(2-ヒドロキシプロピルエステル、2-ヒドロキシ-1-メチルエチルエステル混合物)
MMA:メチルメタクリレート
BMA:n-ブチルメタクリレート
BzMA:ベンジルメタクリレート
AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル:V-60(和光純薬社製)
PGMAc:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
メトキシブタノール:3-メトキシ-1-ブタノール
MOI:2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート:カレンズMOI(昭和電工社製)
AA:アクリル酸
DBTDL:ジブチルスズジラウレート
DMBA:ジメチルベンジルアミン
MQ:メトキノン
THPA:1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸:リカシッドTH(新日本理化社製)…
[0324]<アルカリ可溶性官能基を含む化合物(D)の製造>
[製造例36]
攪拌機、温度計、滴下装置、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90.0部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら60℃に加熱して、同温度でメタクリル酸10.0部、メチルメタクリレート45.0部、n-ブチルメタクリレート45.0部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル2.5部の混合物を2時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、さらに60℃で1時間反応させた後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.5部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.0部に溶解させたものを添加し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け共重合体を得た。室温に冷却後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈することにより、不揮発分20%のアルカリ可溶性官能基を含む化合物溶液D1を得た。重量平均分子量は27000であった。
[0325][製造例37~39]
表5に記載した原料と仕込み量を用いた以外は製造例36と同様にして合成を行い、不揮発分20%のアルカリ可溶性官能基を含む化合物溶液D2~D4を得た。…
[0367]<<有機EL表示装置のカラーフィルタ用感光性組成物>>
<有機EL表示装置のカラーフィルタ用感光性組成物の製造>
[0368]<顔料の製造方法>
<アゾ顔料の製造方法>
(赤色着色剤(PR-1))
3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド52.9部、化学式(14)のアミン化合物16.3部の混合物を水1027部に分散させ、氷を加えて温度5℃に調整し、35%塩酸水溶液108.3部を加えて1時間撹拌後、亜硝酸ナトリウム19.9部を水50部に加えて調製した水溶液を添加して3時間撹拌した。スルファミン酸3.2部を加えて過剰の亜硝酸ナトリウムを消去した後、80%酢酸水溶液192部、25%水酸化ナトリウム水溶液210部、及び水180部からなる水溶液を加えて、ジアゾニウム塩水溶液とした。一方、N-[4-アセチルアミノフェニル]-3-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボアミド88.4部、25%水酸化ナトリウム水溶液174.0部をメタノール1500部に50℃で溶解させ、カップラー溶液とした。
[0369] このカップラー溶液を上記5℃のジアゾニウム塩水溶液に30分かけて注入し、カップリング反応を行った。この時のpHは4.3であった。3時間撹拌して、ジアゾニウム塩の消失を確認後、70℃に加熱し、濾過、水洗、及び90℃で24時間乾燥させ、式(A2-1)で表されるアゾ顔料と化学式(A2-6)で表されるアゾ顔料の混合物141部を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、式(A2-1)及び化学式(A2-6)のアゾ顔料の混合物の質量比が80.3:19.7であることを確認した。
[0370][化27]
[図:0001406437000005.jpg]
[0371]次に、上記の反応によって得られた式(A2-1)及び(A2-6)のアゾ顔料の混合物100部、塩化ナトリウム1200部、及びジエチレングリコール120部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、60℃で6時間混練し、ソルトミリング処理した。得られた混練物を3リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間撹拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、97部の微細化ナフトールアゾ顔料(PR-1)を得た。平均一次粒子径は37nmであった。…
[0375](黄色着色剤(PY-1))
ニッケルアゾ錯体系顔料:C.I. Pigment Yellow 150:ランクセス社製「E4GN」100部、塩化ナトリウム700部、およびジエチレングリコール180部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。この混合物を温水2000部に投入し、80℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、95部の黄色着色剤(PY-1)を得た。平均一次粒子径は42.3nmであった。…
[0378](黄色着色剤(PY-4))
C.I.ピグメントイエロー150を、C.I.ピグメントイエロー185(PY185)(BASF社製「パリオゲンイエロー D1155」)に変えた以外は、黄色着色剤(PY-1)の製造と同様に行い、黄色着色剤(PY-4)を得た。平均一次粒子径は38.4nmであった。…
[0396][赤色着色剤分散体 P-R1の調製]
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM-250 MKII」)で5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過し赤色顔料分散体P-R1を作製した。
赤色着色剤(PR-1) :12.0部
(アゾ顔料)
樹脂型分散剤 :3.0部
(BASF社製「EFKA4300」)
アルカリ可溶性官能基を含む化合物溶液D2 :20.0部
溶剤 :65.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)
[0397] 表11のように、着色剤を変更した以外は、赤色着色剤分散体P-R1と同様にして、赤色着色剤分散体P-R2~4、緑色着色剤分散体P-G1~4、青色着色剤分散体P-B1~3、黄色着色剤分散体P-Y1~5、紫色着色剤分散体P-V1、橙色着色剤分散体P-O1を作製した。
[0398][表11]
[図:0001406437000006.jpg]
…
[0399][実験例108~176]
表12~14に示した組成、および配合量で各材料を混合・攪拌し、1μmのフィルタで濾過して、各色の感光性着色組成物を得た。表12~14中、P-R1~4、P-G1~4、P-B1~3、P-Y1~5、P-V1~3、P-O1、A10、D3、E-1の配合量は、有機溶剤を含む溶液としての値である。
[0400]
[表12]
[図:0001406437000007.jpg]
…
[0403] 表12~14中の略語について以下に示す。
M402:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物:アロニックス M-402(東亜合成社製)
M309:トリメチロールプロハントリアクリレート:アロニックス M-309(東亜合成社製)
OXE02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム):イルガキュアOXE02(BASF社製)
PGMAc:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
[0404]<有機EL表示装置のカラーフィルタ用感光性組成物の評価>
得られた感光性組成物を用いて、薬品耐性、脱ガス、外観、保存安定性、現像速度、現像線幅を、下記の方法で評価した。結果を表12~14に示す。
表12中、実験例108~127が本発明の実施形態を示す実験例であり、実験例128~130が比較実験例である。…
[0405][外観の評価]
実験例108~176の感光性組成物を、ガラス基板上に粘着剤で固定した100mm×100mm、250μm厚のポリエチレンナフタレートフィルムに、スピンコーターを用いて減圧乾燥後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布し、減圧乾燥後、超高圧水銀ランプを用いて、照度20mW/cm2、露光量50mJ/cm2で紫外線露光を行った。塗布フィルムを100℃で20分加熱、放冷し、ガラス基板から剥がして、評価用のフィルムを得た。
得られたフィルムについて、ヘイズメーターNDH-2000(東京電色社製)測定装置を用いてヘイズ値を測定した。評価のランクは次の通りである。
◎:異物や白濁がなく、ヘイズ値0.5%未満
:非常に良好なレベル
○:異物や白濁がなく、ヘイズ値0.5%以上1.0%未満
:良好なレベル
△:異物や白濁がなく、ヘイズ値1.0%以上1.5%未満
:○と比較すると劣るが実用可能なレベル
×:異物や白濁がある または ヘイズ値 1.5%以上
:実用には適さないレベル
[0406][薬品耐性の評価]
外観の評価と同様の手順で作製した塗布フィルムを100℃または150℃で20分加熱、放冷し、ガラス基板から剥がして、評価用のフィルムを得た。
得られたフィルムについて、色度を測定し、フィルムをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに5分室温で浸漬した後、イオン交換水で洗浄、風乾した。その後、フィルムを目視観察および色度測定し、色差ΔEを計算した。なお、色度はC光源を用いた顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP-SP100」)で測定した。評価のランクは次の通りである。
◎:外観に変化なく、ΔE≦1.0
:非常に良好なレベル
○:外観に変化なく、1.0<ΔE≦2.0
:良好なレベル
△:外観に変化なく、2.0<ΔE≦3.0
:○と比較すると劣るが実用可能なレベル
×:外観に変化あり、および/または、3.0<ΔE
:実用には適さないレベル
[0407][脱ガスの評価]
外観の評価と同様の手順で作製した評価用のフィルムから、塗膜を5mg剥がして採取し、TG/DTA測定を行い、初期質量に対する質量減少率を測定した。TG/DTAはセイコーインスツルメンツ社のEXSTAR TG/DTA6200を用い、窒素流量200mL/min、室温から5℃/minで150℃まで昇温し20分保持するプログラムで測定した。
○:質量減少率1.0%未満
:良好なレベル
△:質量減少率1.0%以上2.0%未満
:○と比較すると劣るが実用可能なレベル
×:質量減少率2%以上
:実用には適さないレベル
[0408][現像速度の評価]
実験例108~176の感光性組成物を、ガラス基板上に粘着剤で固定した100mm×100mm、250μm厚のポリエチレンナフタレートフィルムに、スピンコーターを用いて減圧乾燥後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布し、減圧乾燥した。このフィルムを23℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いて時間を変えてスプレー現像し、フィルムのフチ部分を除いた塗膜がなくなる時間を目視で判断し、現像時間とした。評価のランクは次の通りである。
◎:10秒以上~20秒未満
○:20秒以上~30秒未満
○△:30秒以上~40秒未満
△:40秒以上~60秒未満
△×:60秒以上~80秒未満
×:80秒以上現像しても現像残りあり
なお、◎と○が実用上好ましいレベル、○△と△と△×は実用可能なレベル、×は実用には適さないレベルである。
[0409][現像線幅の評価]
実験例108~176の感光性組成物を、ガラス基板上に粘着剤で固定した100mm×100mm、250μm厚のポリエチレンナフタレートフィルムに、スピンコーターを用いて減圧乾燥後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布し、減圧乾燥した。このフィルムを室温に冷却後、超高圧水銀ランプを用い、50μm幅(ピッチ100μm)ストライプパターンのフォトマスクを介して紫外線を照度20mW/cm2、露光量50mJ/cm2で照射した。その後、このフィルムを23℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いてスプレー現像した後、イオン交換水で洗浄、風乾し、クリーンオーブンにて100℃で20分間加熱した。放冷した後、ガラス基板から剥がして評価用のフィルムを得た。なお、スプレー現像は、それぞれの感光性組成物を使用したフィルムについて、現像速度の評価で測定した現像時間に10秒加えた時間で行った。得られたパターンフィルムの光学顕微鏡観察を行い、50μmフォトマスク部分でのパターンの幅を測定した。フォトマスクのサイズに近いほど、高精細化が可能で良好な感光性組成物となる。評価のランクは次の通りである。
◎:50μm以上~53μm未満
○:53μm以上~56μm未満
○△:56μm以上~60μm未満
△:60μm以上~65μm未満
×:65μm以上
なお、◎と○が実用上好ましいレベル、○△と△は実用可能なレベル、×は実用には適さないレベルである。
[0410][保存安定性の評価]
実験例108~176の感光性組成物について、初期および室温1ヵ月後の粘度を測定し、初期粘度に対する粘度増加度合いを算出して評価を行った。評価のランクは次の通りである。
◎:粘度増加の割合が5%未満で良好
:非常に良好なレベル
○:粘度増加の割合が5%以上、7%未満
:良好なレベル
△:粘度増加の割合が7%以上、10%未満
:○と比較すると劣るが実用可能なレベル
×:粘度増加の割合が10%以上
:実用には適さないレベル
[0411] 表12~14に示すように、各種着色剤のいずれの組み合わせにおいても、フリル基を含む化合物(A)を含有する実験例108~127、131~150、154~173の感光性組成物は、薬品耐性、脱ガス、外観、保存安定性、現像速度、現像線幅がいずれも良好であった。特に、実験例112、135、161においては光重合性官能基を含む化合物(B)に3官能のモノマー(M309)を用いることで耐薬品性がさらに向上した。また実験例113、136、162においては、シラン化合物(E-1)を用いることで内部架橋が進み、耐薬品性がさらに向上した。
それに対して、比較実験例である実験例128~130、151~153、174~176の感光性組成物は、いずれもフリル基を含む化合物(A)が含まれないため上記の物性のいずれかが不良な結果となり、すべてが実用レベルを満たすものは得られなかった。…」
セ 産業上の利用可能性
「[0414] 本発明の感光性組成物の用途は、光と熱で硬化させる用途であれば用いることができ、上記で説明したカラーフィルタ、ブラックマトリックスのほかに、カラーフィルタ保護膜、フォトスペーサー、液晶配向用突起、タッチパネル層間絶縁膜、感光性ソルダーレジスト、マイクロレンズ、光学ハードコート、UVインキ、感光性平版印刷版、各種コーティング等などを製造するのに用いることができる。
また、フレキシブルプリント配線板に使用される、補強板用接着剤や層間接着剤、コーティング剤、電磁波シールド用接着剤、感光性光導波路、光熱デュアル硬化型ポッティング剤等にも用いることができる。」
(2)引用発明の認定
以上の記載に基づけば、引用文献1には、実施例115として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「以下に示した組成、および配合量で各材料を混合・攪拌し、1μmのフィルタで濾過して得た、有機EL表示装置のカラーフィルタ用感光性着色組成物であって、
顔料分散体 P-R1 22.6質量部
P-Y4 15.0質量部
フリル基を含む化合物(A) A10 11.3質量部
光重合性官能基を含む化合物(B) M402 3.0質量部
アルカリ可溶性官能基を含む化合物(D) D3 11.2質量部
光重合開始剤(C) OXE02 0.6質量部
有機溶剤 PGMAc 36.3質量部
ここで、
P-R1は、赤色着色剤であって、以下に示す化学式(A2-1)及び化学式(A2-6)の質量比が80.3:19.7であるアゾ顔料の混合物を混練し、ソルトミリング処理し、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、乾燥して得た、微細化ナフトールアゾ顔料(PR-1)と、樹脂型分散剤(BASF社製「EFKA4300」)と、アルカリ可溶性官能基を含む化合物溶液D2と、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)の混合物を撹拌混合した後、分散し、濾過して得た赤色顔料分散体P-R1であり、
P-Y4は、C.I.ピグメントイエロー185(BASF社製「パリオゲンイエロー D1155」)150部、ランクセス社製「E4GN」100部、塩化ナトリウム700部、およびジエチレングリコール180部を80℃で6時間混練し、この混合物を温水2000部に投入し、80℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、乾燥して得た、黄色着色剤(PY-4)と、樹脂型分散剤(BASF社製「EFKA4300」)と、アルカリ可溶性官能基を含む化合物溶液D2と、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)の混合物を撹拌混合した後、分散し、濾過して得た黄色着色剤分散体P-Y4であり、
A10は、フリル基、アルカリ可溶性基を含み、光重合性官能基を含まない化合物溶液であり、
M402は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(東亜合成社製:アロニックス M-402)であり、
D3は、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレートを含む混合物を滴下して重合反応を行って得られた、重量平均分子量31000のアルカリ可溶性官能基を含む化合物溶液であり、
OXE02は、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製:イルガキュアOXE02)であり、
PGMAcは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、
感光性着色組成物。
[図:0001406437000008.jpg]
[図:0001406437000009.jpg]
」
2 引用文献2
周知技術を示す文献として引用され、本願の出願日前の平成28年4月28日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2016-66020号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
(1)技術分野
「【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置、有機EL表示装置、および固体撮像素子等に用いられるカラーフィルタ用赤色着色組成物、並びにこの赤色着色組成物を用いて形成されるフィルタセグメントを具備するカラーフィルタに関するものである。」
(2)背景技術
「【0002】
カラーフィルタを使用する画像表示装置としては、たとえば(i)光源としてのバックライト、光シャッターとしての液晶、色調整機能(色変換機能、色分解機能、色補正機能など)を有するカラーフィルタの組み合わせからなるカラー液晶表示装置、(ii)有機EL光源、色調整機能(色変換機能、色分解機能、色補正機能など)を有するカラーフィルタの組み合わせからなる有機EL表示装置などが挙げられる。…
【0008】
一般的なカラーフィルタでは、透明基板上に光の3原色である青、緑、赤のフィルタセグメントが配置されている。このような光の3原色のフィルタセグメントが配置されているカラーフィルタにおいて、近年では透過度、すなわち明度や色純度といった色特性の向上についての要求が高まっている。色特性については、各単色だけでなく、3色を点灯させて得られるホワイトについても各用途に応じた要求があり、色度や色温度(K)、色差(Δuv)によって管理されている。色特性の管理は、XYZ(Yxy)表色系(CIE標準色系)で、色度図を使って色をYxyの3つの値で表して行われており、Yが明度に対応し、xyが色度に対応する。…
【0011】
液晶表示装置、有機EL表示装置いずれにおいても、近年高い色再現性が求められるようになっている。色再現性を上げるためには着色剤の濃度を高くする必要があるが着色剤の濃度が高くなると乾燥性が高まり、塗布時の乾燥異物が著しく悪化し、さらには塗膜の現像性が低下するという問題があった。」
(3)発明が解決しようとする課題
「【0013】
本発明は、色再現性に優れ、乾燥後でも洗浄溶剤に対する溶解性が高く、かつ良好な現像性を示すカラーフィルタ用赤色着色組成物を提供することを目的とする。」
(4)課題を解決するための手段
「【0014】
本発明者らは、上記の諸問題点を考慮し解決すべく鋭意研究を重ねた結果、赤色色素および青色色素を含有するカラーフィルタ用赤色着色組成物において、青色色素が、一般式(1)で表わされるフタロシアニン化合物を含むことにより、乾燥後においても高い溶解性を発揮するとともに高い現像性をもつことを見出し、この知見に基づいて本発明をなしたものである。」
(5)実施例
「【0152】
<バインダ-樹脂溶液の製造方法>…
【0153】
(アクリル樹脂溶液(R-2))
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら120℃に加熱して、同温度で滴下管よりスチレン5.2部、グリシジルメタクリレート35.5部、ジシクロペンタニルメタクリレート41.0部、アゾビスイソブチロニトリル1.0部の混合物を2.5時間かけて滴下し重合反応を行った。
次にフラスコ内を空気置換し、アクリル酸17.0部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.3部、およびハイドロキノン0.3部を投入し、120℃で5時間反応を続け固形分酸価=0.8となったところで反応を終了し、重量平均分子量が約12000(GPCによる測定)の樹脂溶液を得た。
さらにテトラヒドロ無水フタル酸30.4部、トリエチルアミン0.5部を加え120℃で4時間反応させ、不揮発分が20重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加してエチレン性不飽和活性二重結合を有するエネルギー線硬化性樹脂である、アクリル樹脂溶液(R-2)を得た。…
【0178】
<フタロシアニン化合物溶液の製造方法>
(フタロシアニン化合物溶液(SD-1))
下記の混合物を、1時間超音波照射を行うことで、フタロシアニン化合物溶液(SD-1)を得た。
フタロシアニン化合物(D-1) : 8.0部
アクリル樹脂溶液(R-2) : 60.0部
溶剤 : 32.0部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC))
計 :100.0部
【0179】
(フタロシアニン化合物溶液(SD-2~13))
フタロシアニン化合物溶液(SD-1)の製造におけるフタロシアニン化合物(D-1)を表1に記載した組成へ変更した以外は、フタロシアニン化合物溶液(SD-1)の場合と同様の方法で、フタロシアニン化合物溶液(SD-2~13)を得た。
【0180】
【表1】
[図:0001406437000010.jpg]
【0181】
<微細化顔料の製造方法>…
【0184】
(赤色微細顔料:PR-4(PR269))
アゾ系赤色顔料C.I.ピグメントレッド 269(Clariant社製「Toner Magenta F8B」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8000部の温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、190部の赤色微細顔料(PR-4)を得た。…
【0188】
(黄色微細顔料:PY-3(PY185))
イソインドリン系黄色顔料のC.I.ピグメントイエロー 185(BASF社製「パリオゲンイエロー D1155」)100部、塩化ナトリウム700部、およびジエチレングリコール180部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。この混合物を温水2000部に投入し、80℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、95部の黄色微細顔料(PY-3)を得た。…
【0195】
<顔料分散体の製造方法>
(顔料分散体(DR-1))
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM-250 MKII」)で5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し着色剤分散体(DR-1)を作製した。
赤色微細顔料(PR-1) :12.0部
樹脂型分散剤 : 1.0部
(BASF社製「EFKA4300」)
アクリル樹脂溶液(R-1) :35.0部
溶剤 :52.0部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC))
【0196】
(顔料分散体(DR-2~5、DY-1~3、DG-1~2、DB-1~2、DV-1))
表2に示す組成(重量部)の混合物に変更した以外は、着色剤分散体(DR-1)と同様にして、着色組成物(DR-2~5、DY-1~3、DG-1~2、DB-1~2、DV-1)を作製した。
【0197】
【表2】
[図:0001406437000011.jpg]
…
【0202】
<感光性青色着色組成物の製造方法>
(感光性青色着色組成物(RB-1))
下記組成の混合物を均一になるように撹拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過し、感光性青色着色組成物(RB-1)を作製した。
着色剤分散体(DB-1) :19.8部
(C.I.ピグメントブルー15:6)
着色剤分散体(DV-1) :13.2部
(C.I.ピグメントバイオレット23)
アクリル樹脂溶液(R-2) :39.0部
光重合性単量体 : 4.0部
(東亞合成社製「アロニックスM402」)
光重合開始剤 : 1.2部
(BASF社製「イルガキュアー907」)
増感剤 : 0.4部
(保土谷化学社製「EAB-F」)
溶剤 :22.4部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC))
【0203】
[実施例1]
(感光性赤色着色組成物(RR-1))
下記の混合物(合計100部)を均一になるように攪拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過して、感光性赤色着色組成物(RR-1)を得た。
顔料分散体(DR-4) :38.7部
フタロシアニン化合物溶液(SD-1) : 1.9部
顔料分散体(DY-1) :26.7部
アクリル樹脂溶液(R-2) : 4.7部
光重合性単量体 : 4.0部
(東亞合成社製「アロニックスM-402」)
光重合開始剤 : 1.2部
(BASF社製「イルガキュアー907」)
増感剤 : 0.4部
(保土谷化学社製「EAB-F」)
溶剤 :22.4部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC))
【0204】
[実施例2~33、比較例1~5]
(感光性赤色着色組成物(RR-2~38)
フタロシアニン化合物溶液、顔料分散体、アクリル樹脂溶液を表4~6に示す種類、および配合量(重量部)に変更した以外は赤色感光性着色組成物(RR-1)と同様にして、感光性赤色着色組成物(RR-2~38)を作製した。
なお、表4~6中の青色色素の含有量は、着色剤全量(100重量%)中における青色色素の含有量(重量%)を示している。…
【0207】
【表6】
[図:0001406437000012.jpg]
【0208】
[感光性赤色着色組成物の評価]
実施例および比較例で得られた感光性赤色着色組成物の色特性評価、溶剤浸漬評価、現像性評価を下記の方法で行った。表7、8に結果を示す。
【0209】
<フィルタセグメントの形成>
100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上にブラックマトリクスをパターン加工し、該基板上にスピンコーターで得られた感光性赤色着色組成物を塗布し、70℃で20分乾燥させた。該被膜にフォトマスクを介して、超高圧水銀ランプを用いて150mJ/cm2の紫外線を照射した。次いで炭酸ナトリウム0.15重量% 炭酸水素ナトリウム0.05重量% 陰イオン系界面活性剤(花王社製「ペレックスNBL」)0.1重量%及び水99.7重量%からなるアルカリ現像液によりスプレー現像して未露光部分を取り除いた後、イオン.交換水で洗浄し、この基板を230℃で20分加熱して赤色フィルタセグメントを形成した。
【0210】
<色特性評価>
得られた赤色フィルタセグメントのC光源での色度(x,y,Y)を顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP-SP100」)を用いて測定した。
【0211】
<溶剤浸漬評価>
感光性赤色着色組成物を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に乾燥後の膜厚が2μmになる回転数にてスピンコーターを用いて塗布した基板を、23℃のクリーンルーム内で12時間放置して乾燥することにより塗膜を形成した。次いで、この基板をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100ml中に2分間浸漬させた。目視評価により、塗膜が完全に溶解した場合は○、塗膜が剥離片となった場合、また基板から塗膜が剥がれ落ちなかった場合は×と判定した。
【0212】
<現像性評価>
感光性赤色着色組成物を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に乾燥後の膜厚が2μmになる回転数にてスピンコーターを用いて塗布した基板を、70℃で20分乾燥後、23℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いてスプレー現像し、現像性を3段階で評価した。なお、アルカリ現像液は、炭酸ナトリウム1.5重量%、炭酸水素ナトリウム0.5重量%、陰イオン系界面活性剤(花王社製「ペレックスNBL」)8.0重量%、および水90重量%からなるものを用いた。
また、現像性評価は下記基準に従って判定した。
なお、○、△は実用可能なレベルであり、×は実用に適さないレベルである。
○:30秒以内に完全に除去できるもの
△:30秒を超えるが40秒以内に完全に除去できるもの
×:40秒を超えても完全に除去できないもの…
【0214】
【表8】
[図:0001406437000013.jpg]
【0215】
本発明の赤色色素と、青色色素として一般式(1)で表わされるフタロシアニン化合物を含有する感光性赤色着色組成物は、狙いの色度を達成しながら、高い溶剤溶解性を示すと同時に良好な現像性を示した。
【0216】
[実施例34]
(カラーフィルタ(CF-1))
100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上にブラックマトリクスをパターン加工し、該基板上にスピンコーターで得られた感光性赤色着色組成物(RR-1)を塗布し、70℃で20分乾燥させた。該被膜にフォトマスクを介して、超高圧水銀ランプを用いて150mJ/cm2の紫外線を照射した。次いで炭酸ナトリウム0.15重量% 炭酸水素ナトリウム0.05重量% 陰イオン系界面活性剤(花王社製「ペレックスNBL」)0.1重量%及び水99.7重量%からなるアルカリ現像液によりスプレー現像して未露光部分を取り除いた後、イオン交換水で洗浄し、この基板を230℃で20分加熱して赤色フィルタセグメントを形成した。次に感光性緑色着色組成物(RG-1)使用し、赤色フィルタセグメントと同様にして緑色フィルタセグメントを形成し、さらに感光性青色着色組成物を使用して赤色フィルタセグメントと同様にして青色フィルタセグメントを形成し、カラーフィルタ(CF-1)を得た。
【0217】
[実施例35~45、比較例6~9]
(カラーフィルタ(CF-2~16))
感光性赤色着色組成物(RR-1)、および感光性緑色着色組成物(RG-1)の代わりに表9に記載した感光性赤色着色組成物および感光性緑色着色組成物を用いた以外は、実施例34(カラーフィルタ(CF-1))と同様にして、(カラーフィルタ(CF-2~16))を得た。
【0218】
[カラーフィルタの評価]
得られたカラーフィルタの色特性評価、異物評価を下記の方法で行った。表9に結果を示す。
【0219】
<色特性評価>
得られたカラーフィルタのC光源での色度(x,y,Y)を顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP-SP100」)を用いて測定した。3色のカラーフィルタの色度結果、3色のカラーフィルタを組み合わせた場合のホワイト色度の測定結果を表9に示す。
【0220】
<異物評価方法>
得られたカラーフィルタを金属顕微鏡(OLYMPUS社製「MX51」)にて500倍に拡大して観察し、フィルタセグメントにおける、5000μm×5000μm内に付着した感光性赤色着色組成物由来の異物数を測定し、下記の2段階で評価した。
○:異物数が0~5個
×:異物数が6個以上
【0221】
【表9】
[図:0001406437000014.jpg]
【0222】
本発明の着色剤が、赤色色素と、青色色素として一般式(1)で表わされるフタロシアニン化合物とを含有する着色組成物を使用して形成されたカラーフィルタは、溶剤溶解性に優れるため、比較例のカラーフィルタと同等のホワイト色度を達成しながら、異物数を低減することができた。また、現像性が良好であるため現像時間が短く、カラーフィルタとしての生産性に優れたものであった。
そのため、本発明の赤色フィルタセグメントを具備するカラーフィルタは、カラー液晶表示装置のホワイトバランスについても良好な値を付与することができるとともに、その異物数の少なさから高い製品歩留まりを達成することができるため、透過型・反射型のカラー液晶表示装置ならびに固体撮像素子の色分解用カラーフィルタとして好適である。」
第5 対比(一致点、相違点の認定)
本件発明と引用発明とを対比する。
1 赤色色素
引用発明の感光性着色組成物は、顔料分散体「P-R1」を含んでいる。顔料分散体「P-R1」は赤色着色剤であり、その製法からみて、式(A2-1)及び化学式(A2-6)で示されるアゾ顔料を、質量比が80.3:19.7で含んでいる。
したがって、引用発明に含まれる式(A2-1)及び化学式(A2-6)のアゾ顔料は、「赤色着色剤」を構成するものであるから、本件発明の「赤色色素」に相当する。
2 黄色色素
引用発明の感光性着色組成物は、顔料分散体「P-Y4」を含んでいる。顔料分散体「P-Y4」は黄色着色剤であり、その製法からみて、C.I.ピグメントイエロー185を含んでいる。
したがって、引用発明に含まれるC.I.ピグメントイエロー185は、「黄色着色剤」を構成するものであるから、本件発明の「黄色色素」に相当する。また、本件発明の「黄色色素がC.I.ピグメントイエロー185を含み、」とする要件を満たしている。
3 アルカリ可溶性樹脂
引用発明の感光性着色組成物は、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレートを含む混合物を滴下し重合反応を行って得られた、重量平均分子量31000のアルカリ可溶性官能基を含む化合物「D3」の溶液を、少なくとも含んでいる。化合物「D3」は、その製法及び重量平均分子量からみて、アルカリ可溶性の樹脂であるといえる。
したがって、引用発明に含まれる「D3」は、本件発明の「アルカリ可溶性樹脂」に相当する。
また、「D3」は、「メチルメタクリレート」を含む混合物を重合して得られるものであるから、「メチルメタクリレート」由来の構成単位を有することは明らかである。したがって、引用発明は、本件発明のアルカリ可溶性樹脂が「メチルメタクリレート由来の構成単位を有する樹脂」であるとの要件を満たしている。
4 光重合性単量体
引用発明の感光性着色組成物は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物である、「M402」を含んでいる。引用文献1の記載事項(ク)に基づけば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートは、いずれも、多官能の「モノマー」であって、「光重合性官能基を含む化合物」である。そうすると、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートは、光重合性のモノマーであるといえる。
したがって、引用発明に含まれる「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」及び「ジペンタエリスリトールペンタアクリレート」は、いずれも、本件発明の「光重合性単量体」に相当する。
5 光重合開始剤
引用発明の感光性着色組成物は、光重合開始剤(C)として、OXE02を含んでいる。引用発明に含まれる「OXE02」は、本件発明の「光重合開始剤」に相当する。
6 有機EL表示装置用赤色着色組成物
引用発明の感光性着色組成物は、「有機EL表示装置のカラーフィルタ用」の感光性組成物である。また、引用発明の感光性着色組成物は、赤色着色剤である「P-R1」を22.6質量部、黄色着色剤である「P-Y4」を15.0質量部の配合量で含んでいる。各着色剤の配合割合からみて、引用発明の感光性着色組成物は、赤色の組成物であると理解できる。
したがって、引用発明の感光性着色組成物は、本件発明の「有機EL表示装置用」かつ「赤色」であるとする要件を満たしているといえる。
7 一致点及び相違点
以上より、本件発明と引用発明とは、
「 赤色色素と、黄色色素と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性単量体と、光重合開始剤とを含有する有機EL表示装置用赤色着色組成物であって、
黄色色素がC.I.ピグメントイエロー185を含み、前記アルカリ可溶性樹脂がメチルメタクリレート由来の構成単位を有する樹脂である有機EL表示装置用赤色着色組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明の赤色色素が「C.I.ピグメントレッド269」を含み、C.I.ピグメントレッド269の含有量が「赤色色素100重量%中、77重量%以上」であるのに対し、引用発明の赤色色素が「化学式(A2-1)」及び「化学式(A2-6)」のアゾ顔料の混合物であり、C.I.ピグメントレッド269の含有量が、赤色色素100重量%中、0重量%である点。
第6 判断(相違点についての検討)
上記[相違点]について検討する。
引用文献1の記載事項サには、アゾ系顔料として、「一般式(1)で表されるナフトールアゾ顔料が好ましい。」(段落[0166]、[0167])との記載がある。さらに、引用文献1の記載事項サには、「一般式(1)で表されるナフトールアゾ顔料の中でも、好ましくは、R2~R6のうち少なくとも1つが-NHCOR12であるナフトールアゾ顔料[A2]が明度に優れていているために好ましい。」(段落[0184])との記載とともに、その具体例として、引用発明に含まれる「化学式(A2-1)」及び「化学式(A2-6)」のアゾ顔料(段落[0185]、[0186])が挙げられている。これらの記載に基づけば、引用発明の赤色着色剤は、明度に優れたカラーフィルタとする観点から選択されたものと理解できる。
一方、上記記載事項サには、「一般式(1)で表されるナフトールアゾ顔料としては、カラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、C.I.ピグメントレッド31、32、146、147、150、184、187、188、210、238.245.247、266、268、269、C.I.バイオレット25、または50等が挙げられる。これらの中でも、色相・明度の観点から、C.I.ピグメントレッド150、170、187、266、268、269が好ましい」(段落[0169])との記載もある。当該記載に基づけば、明度に色相の観点を加えて選択する場合、同じ「一般式(1)」で表されるナフトールアゾ顔料の中から、「C.I.ピグメントレッド269」を選択できることが示唆されているといえる。また、上記記載事項サには、「ナフトールアゾ顔料を単独で、または、2種以上を混合して使用することもできる。」(段落[0177])との記載もある。赤色着色剤を選択するに際し、複数又は単独のいずれの顔料を選択するかは、所望の光学特性に合わせて適宜選択されるべき事項である。
カラーフィルタ用の感光性着色組成物において、明度だけでなく、色相も含めた光学特性全般の最適化をはかることは、当業者が通常考慮することである。そうすると、引用発明における赤色着色剤として、化学式(A2-1)及び化学式(A2-6)で示されるアゾ顔料を用いる替わりに、一般式(1)に包含されるという共通する化学構造を有する既知の化合物の中から、色相・明度の観点から好ましいとされる、C.I.ピグメントレッド269を採用することは、当業者が当然試みることである。そして、赤色着色剤として、化学式(A2-1)及び化学式(A2-6)で示されるアゾ顔料の替わりにC.I.ピグメントレッド269を採用した場合、C.I.ピグメントレッド269の含有量が、赤色色素100重量%中、100重量%となるため、本件発明の「C.I.ピグメントレッド269の含有量が赤色色素100重量%中、77重量%以上であり、」とする要件を満たすことになる。また、引用文献2の実施例30に示されるとおり、黄色色素としてC.I.ピグメントイエロー185を含み、赤色色素としてC.I.ピグメントレッド269のみを含む、つまり、C.I.ピグメントレッド269の含有量が、赤色色素100重量%中、100重量%である感光性赤色着色組成物も、従来より知られている。
審判請求人は、審判請求書において、「PR269は、色相・明度・着色力向上のために使用することは周知ですが、『平坦性、耐薬品性』のための使用は周知とはいえません。」と主張している。しかしながら、上記のとおり、色相・明度の観点から好ましいとされる、C.I.ピグメントレッド269を採用することは、当業者が当然試みることであるから、動機付けがあるといえる。仮に、平坦性、耐薬品性のために選択することが知られていないとしても、C.I.ピグメントレッド269の採用を試みることを阻害する要因となるとは考えられない。
次に、黄色色素としてC.I.ピグメントイエロー185を含むカラーフィルタ用感光性着色組成物において、C.I.ピグメントレッド269を採用したことにより、従来知られていない格別な効果の差異が生じるといえるかについて検討する。審判請求人は、C.I.ピグメントレッド269について、「アルカリ可溶性樹脂が保有するカルボン酸と相互作用しやすい官能基を保有しながら、かつ色素同士の分子間相互作用が弱いためにアルカリ可溶性樹脂との相互作用が強くなり、塗膜の平坦性や薬品耐性が向上します。特にPR269の含有量を赤色色素100重量%中、77重量%以上にすることでアルカリ可溶性樹脂との相互作用が十分得られるため塗膜の平坦性や薬品耐性を損ないません。」と主張している。しかしながら、C.I.ピグメントレッド269と、化学式(A2-1)及び化学式(A2-6)で示されるアゾ顔料とは、一般式(1)で示される基本骨格を共通して有するものであり、官能基も、メトキシ基を共通して有している。クロロ基と-NHCOCH3基の違いがあるとしても、これらの違いが、各色素間の相互作用に大きく影響を及ぼすとは考えられず、まして、一般化されたアルカリ可溶性樹脂との間の相互作用に違いが生じるとは到底考えられない。そして、引用発明(実施例115)は、表12に示されるとおり、外観の評価の結果が「◎:異物や白濁がなく、ヘイズ値0.5%未満」、薬品耐性の評価が「○:外観に変化なく、1.0<ΔE≦2.0」(なお、ΔEは、試験前後の色度の差を意味する。)というものである。これらの試験結果に基づけば、引用発明は薬品耐性を備えるとともに、相溶性の問題のない感光性組成物であって塗膜の平坦性が担保されていると理解できる。そうすると、カラーフィルタ用感光性着色組成物において、C.I.ピグメントレッド269を採用したことにより、従来知られていない格別な効果の差異が生じるは考えられない。
また、審判請求人は、「引用文献1および2では、組成物中に配合されているプロピレングリコールモノメチルエチルエーテルアセテートを使用して耐溶剤性試験を行っています。つまり、本願は、有機EL表示装置用途に応じてポリイミド樹脂に由来する溶剤の影響を考慮した耐溶剤性を評価しているのに対して、引用文献1および2では、通常の赤色画素、青色画素、緑色画素を順に形成する際、組成物中に含まれる溶剤に画素が溶解するか否かの観点で耐溶剤性を評価しているに過ぎません。」と主張している。しかし、耐溶剤性の評価に用いた溶剤が異なっていたとしても、C.I.ピグメントレッド269を採用したことによって効果に差異が生じることを示すものではない。なお、本件発明は「有機EL表示装置用」との用途限定が付されているが、有機EL表示装置が、必ずフレキシブル基板を備えているとはいえないため、有機EL表示装置用赤色着色組成物の薬品耐性が、ポリイミド樹脂に含まれるN-メチル-ピロリドンへの薬品耐性を意味すると理解することもできない。また、本願の明細書の段落【0356】には、「表8、9に示すように、赤色色素としてC.I.ピグメントレッド177および/または下記一般式(1)で表されるナフトールアゾ顔料[A]を含み、黄色色素がC.I.ピグメントイエロー185を含み、かつC.I.ピグメントレッド177または下記一般式(1)で表されるナフトールアゾ顔料[A]のいずれか一方の含有量が赤色色素100重量%中の77重量%以上となる感光性着色組成物は、薄膜の仕上がりでありかつ良好な塗膜平坦性と薬品耐性を示した。中でも赤色色素として一般式(1)で表されるナフトールアゾ顔料[A]、特にC.I.ピグメントレッド269を含有した場合には塗膜も更に薄膜となり好ましい結果であった。」との記載がある。しかし、表8,9に開示された各実施例について確認すると、C.I.ピグメントレッド269を含有する実施例である、実施例22,30,31,33~35,40,41,43の膜厚の平均値は2.27であるのに対し、C.I.ピグメントレッド269以外の一般式(1)に包含される赤色色素を含有する実施例(参考例)である、実施例1~21,23~28,44,45の膜厚の平均値は2.25であり、C.I.ピグメントレッド269を含有する実施例の方が厚膜となっていることがわかる。本願の明細書に、C.I.ピグメントレッド269を含有した場合に塗膜が更に薄膜となるという効果を奏することが実質的に開示されていたと理解することができない。
第7 むすび(結論)
上記のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-020715