特許拒絶査定不服審判
2022-008343
感光性着色組成物およびカラーフィルタ
- 審判番号
- 2022-008343
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-174459
- 請求日
- 2022年06月01日
- 審決日
- 2023年03月17日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東洋インキSCホールディングス株式会社
- 【請求人】トーヨーカラー株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 松波 由美子
- 審判官 杉山 輝和
- 審判官 石附 直弥
- 分類
- P18 .16 -Z (G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第17条の2第6項、特許法第50条の2、特許法第17条の2第3項、特許法第41条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-174459「感光性着色組成物およびカラーフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月28日出願公開、特開2021- 9409〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特願2020-174459号(以下「本件出願」という。)は、平成28年(2016年)8月10日に出願された特願2016-157850号の一部を分割して、令和2年(2020年)10月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
令和3年 3月30日 :手続補正書の提出
令和3年 8月17日付け:特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知
令和3年10月20日 :手続補正書、意見書の提出
令和4年 3月15日付け:令和3年10月20日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和4年 6月 1日 :審判請求書の提出
令和4年 6月 1日 :手続補正書の提出
第2 令和4年6月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年6月1日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1~5の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
着色剤(A)と、樹脂(B)と、光重合開始剤(E)とを含有する感光性着色組成物であって、
前記樹脂(B)が含フッ素樹脂(BA)を含有し、含フッ素樹脂(BA)が重合性不飽和単量体の重合体であり、かつアダマンチル基、並びにフッ素化アルキル基を有する側鎖及び/又はポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、
光重合開始剤(E)が、オキシムエステル系化合物(EA)を含むことを特徴とする感光性着色組成物。
【請求項2】
含フッ素樹脂(BA)の合計量が、感光性着色組成物の固形分重量を基準として、0.01~5.0重量%であることを特徴とする請求項1に記載の感光性着色組成物。
【請求項3】
含フッ素樹脂(BA)の重量平均分子量が2000~50000であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性着色組成物。
【請求項4】
さらに、光重合性化合物(D)を含有することを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載の感光性着色組成物。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の感光性着色組成物により形成されてなるカラーフィルタ。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「 【請求項1】
着色剤(A)と、樹脂(B)と、光重合開始剤(E)とを含有する感光性着色組成物であって、
前記樹脂(B)が含フッ素樹脂(BA)を含有し、含フッ素樹脂(BA)が重合性不飽和単量体の重合体であり、かつアダマンチル基、並びにフッ素化アルキル基を有する側鎖及び/又はポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、
含フッ素樹脂(BA)の重量平均分子量が5000~50000であり、
光重合開始剤(E)が、オキシムエステル系化合物(EA)を含むことを特徴とする感光性着色組成物。」
2 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項3に係る発明の、発明を特定するために必要な事項である「含フッ素樹脂(BA)の重量平均分子量が2000~50000である」を、本件出願の明細書の【0094】の実施例の記載に基づいて、「含フッ素樹脂(BA)の重量平均分子量が5000~50000であり」と、下限値を「5000」とするよう限定して、本件補正後の請求項1に係る発明とする補正事項を含むものである。
また、本件補正前の請求項1を引用する請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)と、本件補正発明の産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は、同一である(本件出願の明細書の【0001】及び【0009】)。
そうしてみると、本件補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たすものであり、また、同条第5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の限定的減縮)を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正発明が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
3 独立特許要件適合性についての判断
(1)本件補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)を、上記1(2)において本件補正後の請求項1として記載されたとおりのものと認める。
(2)先願明細書等の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の日前の他の特許出願であって、特許法41条1項の規定による優先権の基礎とされ、同法184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法41条第3項の規定により、本件出願後に出願公開されたものとみなされる特願2016-71496号(国際公開第2017/169951号参照)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「先願明細書等」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に使用した箇所を示す。また、段落番号等については、先願明細書における番号に加え、括弧内に国際公開における共通又は対応する記載の段落番号等を付した。
ア 「【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】(国際公開[請求項1])
ポリマー(A)と、光重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、色材(D)と、フルオロカーボン基および架橋環式脂肪族基を有する化合物(E)とを含むことを特徴とする、感光性樹脂組成物。
【請求項2】(国際公開[請求項2])
前記フルオロカーボン基の炭素数が2以上10以下である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】(国際公開[請求項3])
前記架橋環式脂肪族基が、置換されていてもよいアダマンチル基および置換されていてもよいジシクロペンタニル基のいずれかである、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】(国際公開[請求項4])
前記化合物(E)が、フルオロカーボン基およびエチレン性不飽和基を有する化合物(E-1)に由来する構成単位と、架橋環式脂肪族基およびエチレン性不飽和基を有する化合物(E-2)に由来する構成単位とを含む共重合体である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】(国際公開[請求項5])
前記化合物(E)における前記化合物(E-1)に由来する構成単位と前記化合物(E-2)に由来する構成単位のモル比が、5:95~70:30である、請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】(国際公開[請求項6])
チオール化合物(F)をさらに含む、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】(国際公開[請求項8])
光透過性基材と、
前記光透過性基材の一方の面側に設けられ、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる着色層と
を備えることを特徴とする、カラーフィルタ。
【請求項8】(国際公開[請求項9])
請求項7に記載のカラーフィルタを備えることを特徴とする、画像表示装置。」
イ 「【発明の名称】感光性樹脂組成物、カラーフィルタ、および画像表示装置
【技術分野】
【0001】(国際公開[0002])
本発明は、感光性樹脂組成物、カラーフィルタ、および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】(国際公開[0003])
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。モバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)の普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。また、最近においては、自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。これらの画像表示装置の性能においては、コントラストや色再現性の向上といったさらなる高画質化や消費電力の低減が強く望まれている。
【0003】(国際公開[0004])
これらの液晶表示装置や有機発光表示装置には、カラーフィルタが用いられている。例えば液晶表示装置のカラー画像の形成は、カラーフィルタを通過した光がそのままカラーフィルタを構成する各画素の色に着色されて、それらの色の光が合成されてカラー画像を形成する。また、有機発光表示装置において、色調整などのためにカラーフィルタが用いられている。
【0004】(国際公開[0005])
カラーフィルタは、主に、光透過性基材と、光透過性基材上に形成された着色層と、着色層間に配置された遮光層と、着色層上に形成された透明電極層とから構成されている。着色層は、色材および光重合性化合物を含む感光性樹脂組成物を光透過性基材上に塗布し、フォトリソグラフィ法によってパターニングし、その後加熱処理(ポストベーク)することによって形成することができる(例えば、特許文献1参照)。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】(国際公開[0006])
しかしながら、このような感光性樹脂組成物を用いると、着色層形成の際における加熱処理時に色材由来の化合物が析出してしまい、外観検査において、ムラ異常として検出されてしまう。そのため最終的なカラーフィルタ製品の歩留まり低下を引き起こしてしまうおそれがある。
【0007】(国際公開[0007])
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、色材由来の化合物の析出を抑制して、生産性が高く、かつ表面粗度が低い着色層を形成することが可能な感光性樹脂組成物、このような感光性樹脂組成物を用いて形成された、生産性が高く、表面粗度が低い着色層を有するカラーフィルタ、およびこのようなカラーフィルタを備える画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】(国際公開[0008])
本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究を重ねたところ、感光性樹脂組成物に、析出抑制化合物を含ませることにより、色材由来の化合物の析出を抑制できることを見出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0009】(国際公開[0009])
本発明の一の態様によれば、ポリマー(A)と、光重合性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、色材(D)と、フルオロカーボン基および架橋環式脂肪族基を有する化合物(E)とを含むことを特徴とする、感光性樹脂組成物が提供される。
【0010】(国際公開[0016])
本発明の他の態様によれば、光透過性基材と、前記光透過性基材の一方の面側に設けられ、上記の感光性樹脂組成物の硬化物からなる着色層とを備えることを特徴とする、カラーフィルタが提供される。
【0011】(国際公開[0017])
本発明の他の態様によれば、上記のカラーフィルタを備えることを特徴とする、画像表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】(国際公開[0018])
本発明の一の態様の感光性樹脂組成物によれば、フルオロカーボン基および架橋環式脂肪族基を有する化合物を含んでいるので、色材由来の化合物の析出を抑制でき、生産性が高く、かつ表面粗度が低い着色層を形成することが可能な感光性樹脂組成物を提供できる。本発明の他の態様のカラーフィルタおよび画像表示装置によれば、上記感光性樹脂組成物を用いて形成された、生産性が高く、かつ表面粗度が低い着色層を有するカラーフィルタおよび画像表示装置を提供できる。」
エ 「 【0052】(国際公開[0079])
<フルオロカーボン基および架橋環式脂肪族基を有する化合物(E)>
フルオロカーボン基および架橋式脂肪族基を有する化合物(以下、この化合物を「析出抑制化合物」と称する)は、分子内にフルオロカーボン基および架橋式脂肪族基をそれぞれ1つ以上有する化合物である。感光性樹脂組成物中にこの析出抑制化合物を含ませることにより、着色層における色材由来の化合物の析出を抑制することができる。析出抑制化合物が、フルオロカーボン基および架橋式脂肪族基を有する化合物であることは、核磁気共鳴装置を用いて測定した1H-および13C-NMRスペクトルから確認することができる。
【0053】(国際公開[0080])
上記「フルオロカーボン基」とは、炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された構造を有する基を意味している。なお、フルオロカーボン基は、フッ素原子または水素原子の一部が塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子(ただし、フッ素原子は除く)、水酸基、チオール基、アルコキシ基、エーテル基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基あるいはエステル基、アミノ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基等のカルボニル含有基など各種置換基で置換されたものでもよいし、主鎖の一部にエーテル結合(-O-)やスルホニル結合(-SO2-)を有していてもよい。
・・・(中略)・・・
【0059】(国際公開[0086])
上記「架橋環式脂肪族基」とは、2つ以上の環が2以上の原子を共有した構造を有する脂肪族基を意味する。架橋環式脂肪族基の炭素数は、他の材料との相溶性やアルカリ現像液に対する溶解性の観点から、5以上12以下であることが好ましい。架橋環式脂肪族基の炭素数の下限は7以上であることがより好ましく、上限は10以下であることがより好ましい。
【0060】(国際公開[0087])
架橋環式脂肪族基としては、置換されていてもよいノルボルニル基、置換されていてもよいイソボルニル基、置換されていてもよいアダマンチル基、置換されていてもよいトリシクロデシル基、置換されていてもよいジシクロペンテニル基、置換されていてもよいジシクロペンタニル基、置換されていてもよいトリシクロペンテニル基、置換されていてもよいトリシクロペンタニル基、置換されていてもよいトリシクロペンタジエン基、および置換されていてもよいジシクロペンタジエン基等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性や析出抑制効果の観点から、置換されていてもよいアダマンチル基や置換されていてもよいジシクロペンタニル基が好ましい。・・・
・・・(中略)・・・
【0062】(国際公開[0089])
上記析出抑制化合物は、フルオロカーボン基およびエチレン性不飽和基を有する化合物(E-1)に由来する構成単位と、架橋環式脂肪族基およびエチレン性不飽和基を有する化合物(E-2)に由来する構成単位とを含む共重合体とすることが可能である。
・・・(中略)・・・
【0065】(国際公開[0092])
析出抑制化合物は、析出抑制効果の観点から、化合物(E-1)に由来する構成単位と、化合物(E-2)に由来する構成単位とを含むブロック共重合体であることが好ましい。析出抑制化合物がブロック共重合体である場合、化合物(E-1)に由来する構成単位は、3個以上15個以下であることが好ましく、化合物(E-2)に由来する構成単位は、5個以上40個以下であることが好ましい。化合物(E-1)に由来する構成単位および化合物(E-2)に由来する構成単位が上記範囲内にあると、感光性樹脂組成物の各成分の相溶性及びレオロジー特性を損なうことなく析出抑制効果を発現することができる。
・・・(中略)・・・
【0072】(国際公開[0099])
化合物(E-1)の具体例としては、例えば、2-(パーフルオロプロピル)エチル(メタ)アクリレート、・・・等が挙げられる。これらの中でも、析出抑制と感光性樹脂組成物のレオロジー特性の観点から、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0073】(国際公開[0100])
化合物(E-2)の具体例としては、例えば、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、・・・等が挙げられる。これらの中でも、感光性樹脂組成物の各成分との相溶性や析出抑制効果の観点から、1-アダマンチル(メタ)アクリレートやジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0076】(国際公開[0103])
析出抑制化合物の重量平均分子量(Mw)は、3,000以上10,000以下であることが好ましい。析出抑制化合物の重量平均分子量が3,000以上10,000以下であると、他の材料との親和性に優れ、また粘度が高くなり過ぎることもないので、ベイク時の熱による表面ブリードが阻害されず、析出抑制効果を損なうこともない。析出抑制化合物の分子量の下限は4000以上であることがより好ましく、また析出抑制化合物の分子量の上限は8000以下であることがより好ましい。本明細書における「重量平均分子量」は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求める。なお、析出抑制化合物の重量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求める。
【0077】(国際公開[0104])
感光性樹脂組成物中の析出抑制化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分の全量100質量部に対して0.3質量部以上12質量部以下であることが好ましい。析出抑制化合物の含有量が0.3質量部以上であると、塗布された感光性樹脂組成物の塗膜の平滑性を向上させることでき、また析出抑制化合物の含有量が12質量部以下であると、成分の分離や硬化不良を抑制することができる。感光性樹脂組成物中の析出抑制化合物の含有量の下限は感光性樹脂組成物の固形分の全量100質量部に対して0.5質量部以上であることがより好ましく、感光性樹脂組成物中の析出抑制化合物の含有量の上限は感光性樹脂組成物の固形分の全量100質量部に対して10質量部以下であることがより好ましい。」
オ 「【実施例】
【0133】(国際公開[0162])
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
【0134】(国際公開[0163])
(合成例1:析出抑制化合物Iの合成)
500mlの4口セパラブルフラスコを減圧して乾燥後、Ar(アルゴン)置換した。Arを流しながら、脱水テトラヒドロフラン(THF)100g、メチルトリメチルシリルジメチルケテンアセタール2.0g、テトラブチルアンモニウム-3-クロロベンゾエート(TBACB)の1Mアセトニトリル溶液0.15ml、メシチレン0.2gを加えた。そこに滴下ロートを用いて、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(FOEMA)34.57gを45分かけて滴下した。反応が進むと発熱するため、氷冷することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、1-アダマンチルメタクリレート(1-ADMA)17.62gを15分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール5gを加えて反応を停止させた。溶剤を減圧除去して、ブロック共重合体である析出抑制化合物Iを得た。GPC測定(NMP LiBr10mM)により求めた析出抑制化合物Iの重量平均分子量は4,600であった。
【0135】(国際公開[0164])
得られた析出抑制化合物Iを熱分解GCMS、FT-IR、1H-NMR、13C-NMR及びGPCで分析することによって、析出抑制化合物IにおいてFOEMAに由来する構成単位と、1-ADMAに由来する構成単位を確認し、またFOEMAに由来する構成単位と、1-ADMAに由来する構成単位とのモル比が1:6であることを確認した。
・・・中略・・・
【0138】(国際公開[0167])
(合成例3:分散剤Iの合成)
500mlの4口セパラブルフラスコを減圧して乾燥後、Ar(アルゴン)置換した。Arを流しながら、脱水THF100g、メチルトリメチルシリルジメチルケテンアセタール2.0g、テトラブチルアンモニウム-3-クロロベンゾエート(TBACB)の1Mアセトニトリル溶液0.15ml、メシチレン0.2gを加えた。そこに滴下ロートを用いて、メチルメタクリレート(MMA)36.7gを45分かけて滴下した。反応が進むと発熱するため、氷冷することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMMA)13.3gを15分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール5gを加えて反応を停止させた。溶剤を減圧除去して、ブロック共重合体を得た。GPC測定(NMP LiBr10mM)により求めた重量平均分子量は7,600、アミン価は95mgKOH/gであった。
【0139】(国際公開[0168])
100mL丸底フラスコ中でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)29.35質量部に、上記で得られたブロック共重合体を29.35質量部溶解し、前記一般式(13)で表される化合物であるフェニルホスホン酸(PPA、東京化成製)3.17質量部(前記一般式(13)で表される化合物がブロック共重合体1のDMMAユニット1モルに対し、0.20モル)加え、反応温度30℃で20時間攪拌することにより、塩型ブロック共重合体(分散剤I)溶液を得た。塩形成後のアミン価は具体的には、以下のように算出した。
・・・中略・・・
【0142】(国際公開[0171])
(合成例4:アルカリ可溶性樹脂I溶液の合成)
ベンジルメタクリレート(BzMA)40質量部、メチルメタクリレート(MMA)15質量部、メタクリル酸(MAA)25質量部、および2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3質量部の混合液を、PGMEA150質量部を入れた重合槽中に、窒素気流下、100℃で、3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃で、3時間加熱し、重合体溶液を得た。この重合体溶液の重量平均分子量は、7000であった。
【0143】(国際公開[0172])
次に、得られた重合体溶液に、グリシジルメタクリレート(GMA)20質量部、トリエチルアミン0.2質量部、及びp-メトキシフェノール0.05質量部を添加し、110℃で10時間加熱することにより、主鎖メタクリル酸のカルボン酸基と、GMAのエポキシ基との反応を行った。反応中は、GMAの重合を防ぐために、反応溶液中に、空気をバブリングさせた。尚、反応は溶液の酸価を測定することで追跡した。得られたアルカリ可溶性樹脂Iは、BzMAとMMA、MAAの共重合により形成された主鎖にGMAを用いてエチレン性二重結合を有する側鎖を導入した樹脂であった。アルカリ可溶性樹脂I溶液は、固形分が40質量%、酸価が74mgKOH/gであり、アルカリ可溶性樹脂Iの重量平均分子量は12、000であった。
・・・中略・・・
【0145】(国際公開[0174])
<合成例6:酸性色素誘導体Iの合成>
三酸化硫黄の含有率が11質量%の発煙硫酸374.76質量部を10℃に冷却しながら攪拌し、ピグメントイエロー138を74.96質量部加えた。次いで、90℃で6時間攪拌した。得られた反応液を氷水1600質量部中に加え、15分間攪拌した後、沈殿をろ過した。
【0146】(国際公開[0175])
得られたウェットケーキを、800質量部の脱塩水で3回洗浄した。洗浄後のウェットケーキを、80℃で真空乾燥し、酸性色素誘導体Iである黄色色素スルホン化誘導体を得た。TOF-MSにより分子量を測定し、合成目的物であることを確認した。
【0147】(国際公開[0178])
<実施例1>
(1)色材分散液の製造
分散剤として合成例3の分散剤I溶液を4.93質量部、色材として臭素化ジケトピロロピロール系顔料(Br-DPP、商品名「Irgaphor RED S 3621CF」BASF社製)を12.35質量部、合成例4で得られたアルカリ可溶性樹脂I溶液を18.27質量部、PGMEAを63.80質量部、酸性色素誘導体Iを0.65質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズを100質量部、マヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液を得た。
【0148】(国際公開[0179])
(2)感光性樹脂組成物R1の製造
上記(1)で得られた色材分散液を59.40質量部、合成例4で得られたアルカリ可溶性樹脂I溶液を4.83質量部、光重合性化合物(商品名「アロニックスM-520D」、東亞合成社製)を5.82質量部、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(光開始剤、商品名「イルガキュア369」、BASF社製)を0.86質量部、1-プロパノン,3-シクロペンチル-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)(オキシムエステル光開始剤、商品名「TR-PBG-304」常州強力電子新材料社製)を0.58質量部、析出抑制化合物Iを0.02質量部、PGMEAを9.10質量部加え、感光性樹脂組成物R1を得た。
【0149】(国際公開[0180])
(3)着色層の形成
上記(2)で得られた感光性樹脂組成物R1を、厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(商品名「NA35」、NHテクノグラス社製)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥し、超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射し、更に230℃のクリーンオーブンで30分間加熱することにより、硬化後の膜厚が2.2μmとなるように膜厚を調整して着色層を形成した。
【0150】(国際公開[0181])
<実施例2~17および比較例1~4>
実施例2~17および比較例1~4においては、表2~4に示される各色材を用いた色材分散液を得てから、表2~4に示される組成となるように感光樹脂組成物R2~R13、G1~G6、B1、B2を調整し、それ以外は実施例1と同様に着色層を形成した。ただし、感光樹脂組成物B1、B2で用いられた色材分散液は、色材を13.00質量部とし、酸性色素誘導体は添加しなかった。」
カ 「 【0154】(国際公開[0189])
以下、結果を表2~表4に示す。
【表2】
[図:0001397932000001.jpg]
【0155】(国際公開[0190])
【表3】
[図:0001397932000002.jpg]
【0156】(国際公開[0191])
【表4】
[図:0001397932000003.jpg]
【0157】(国際公開[0194])
表中の各略号は、以下の通りである。
・Br-DPP:臭素化ジケトピロロピロール系顔料
・R254:C.I.ピグメントレッド254
・G7:C.I.ピグメントグリーン7
・G59:C.I.ピグメントグリーン59
・Y138:C.I.ピグメントイエロー138
・Y150:C.I.ピグメントイエロー150
・B15:3:C.I.ピグメントブルー15:3
・B15:6:C.I.ピグメントブルー15:6
・V23:C.I.ピグメントバイオレット23
・析出抑制化合物III:メガファックF575(フルオロカーボン基および架橋環式脂肪族基含有化合物、DIC社製)
・析出抑制化合物IV:メガファックF444(パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、DIC社製)
・チオール化合物:2-メルカプトベンゾチアゾール(東京化成社製)」
(3)先願発明
上記(2)オの摘記事項によれば、先願明細書等には、【0148】に記載された製造方法により得られた、実施例1に係る「感光性樹脂組成物R1」の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。
また、感光性樹脂組成物R1の製造に用いられた成分は、それぞれ、【0134】(合成例1)に記載された「析出抑制化合物I」、【0147】に記載された「色材分散液」、【0138】~【0139】(合成例3)に記載された「分散剤I溶液」、【0142】~【0143】(合成例4)に記載された「アルカリ可溶性樹脂I溶液」、及び、【0145】~【0146】(合成例6)に記載された「酸性色素誘導体I」であって、下記イないしカに示すものである(以下、各成分の発明を、それぞれ、「析出抑制化合物I発明」、「色材分散液発明」、「分散剤I溶液発明」、「アルカリ可溶性樹脂I溶液発明」、及び、「酸性色素誘導体I発明」という。)。
ア 先願発明
「色材分散液を59.40質量部、アルカリ可溶性樹脂I溶液を4.83質量部、光重合性化合物(商品名「アロニックスM-520D」、東亞合成社製)を5.82質量部、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(光開始剤、商品名「イルガキュア369」、BASF社製)を0.86質量部、1-プロパノン,3-シクロペンチル-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)(オキシムエステル光開始剤、商品名「TR-PBG-304」常州強力電子新材料社製)を0.58質量部、析出抑制化合物Iを0.02質量部、PGMEAを9.10質量部加えて得た、感光性樹脂組成物R1。」
イ 析出抑制化合物I発明
「500mlの4口セパラブルフラスコを減圧して乾燥後、Ar(アルゴン)置換し、Arを流しながら、脱水テトラヒドロフラン(THF)100g、メチルトリメチルシリルジメチルケテンアセタール2.0g、テトラブチルアンモニウム-3-クロロベンゾエート(TBACB)の1Mアセトニトリル溶液0.15ml、メシチレン0.2gを加え、そこに滴下ロートを用いて、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(FOEMA)34.57gを45分かけて滴下し、氷冷することにより温度を40℃未満に保ち、1時間後、1-アダマンチルメタクリレート(1-ADMA)17.62gを15分かけて滴下し、1時間反応させた後、メタノール5gを加えて反応を停止させて得た、ブロック共重合体であり、重量平均分子量は4,600である、析出抑制化合物I。」
ウ 色材分散液発明
「分散剤として分散剤I溶液を4.93質量部、色材として臭素化ジケトピロロピロール系顔料(Br-DPP、商品名「Irgaphor RED S 3621CF」BASF社製)を12.35質量部、アルカリ可溶性樹脂I溶液を18.27質量部、PGMEAを63.80質量部、酸性色素誘導体Iを0.65質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズを100質量部、マヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、得た、色材分散液。」
エ アルカリ可溶性樹脂I溶液発明
「ベンジルメタクリレート(BzMA)40質量部、メチルメタクリレート(MMA)15質量部、メタクリル酸(MAA)25質量部、および2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3質量部の混合液を、PGMEA150質量部を入れた重合槽中に、窒素気流下、100℃で、3時間かけて滴下し、滴下終了後、更に100℃で、3時間加熱し、重合体溶液を得て、次に、得られた重合体溶液に、グリシジルメタクリレート(GMA)20質量部、トリエチルアミン0.2質量部、及びp-メトキシフェノール0.05質量部を添加し、110℃で10時間加熱することにより、主鎖メタクリル酸のカルボン酸基と、GMAのエポキシ基との反応を行って、得られた、アルカリ可溶性樹脂I溶液。」
オ 分散剤I溶液発明
「500mlの4口セパラブルフラスコを減圧して乾燥後、Ar(アルゴン)置換し、Arを流しながら、脱水THF100g、メチルトリメチルシリルジメチルケテンアセタール2.0g、テトラブチルアンモニウム-3-クロロベンゾエート(TBACB)の1Mアセトニトリル溶液0.15ml、メシチレン0.2gを加え、そこに滴下ロートを用いて、メチルメタクリレート(MMA)36.7gを45分かけて滴下し、氷冷することにより温度を40℃未満に保ち、1時間後、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMMA)13.3gを15分かけて滴下し、1時間反応させた後、メタノール5gを加えて反応を停止させ、溶剤を減圧除去して、ブロック共重合体を得て、100mL丸底フラスコ中でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)29.35質量部に、上記で得られたブロック共重合体を29.35質量部溶解し、フェニルホスホン酸(PPA、東京化成製)3.17質量部加え、反応温度30℃で20時間攪拌することにより得た、塩型ブロック共重合体(分散剤I)溶液である、分散剤I溶液。」
カ 酸性色素誘導体I発明
「三酸化硫黄の含有率が11質量%の発煙硫酸374.76質量部を10℃に冷却しながら攪拌し、ピグメントイエロー138を74.96質量部加え、次いで、90℃で6時間攪拌し、得られた反応液を氷水1600質量部中に加え、15分間攪拌した後、沈殿をろ過し、得られたウェットケーキを、800質量部の脱塩水で3回洗浄し、洗浄後のウェットケーキを、80℃で真空乾燥し、得た、黄色色素スルホン化誘導体である酸性色素誘導体I。」
(4)先願の形式的要件に係る事項
先願発明の発明者は、「鈴木 琢実」及び「上森 理恵」である。
本願の出願時、先願の出願人は、「株式会社DNPファインケミカル」であった。
(5)対比
本件補正発明と先願発明とを対比する。
ア 感光性着色組成物及び着色剤(A)
先願発明において、上記(3)アで感光性樹脂組成物R1の製造に用いられる色材分散液は、上記(3)ウのとおり、色材として臭素化ジケトピロロピロール系顔料を含むから、感光性樹脂組成物R1は、色材として臭素化ジケトピロロピロール系顔料を含有するものと認められる。
そして、色材としての臭素化ジケトピロロピロール系顔料は、本件補正発明の「着色剤(A)」に相当するから、先願発明の「感光性樹脂組成物R1」は、本件補正発明の「感光性着色組成物」に相当し、「着色剤(A)」「を含有する」との要件を満たす。
イ 樹脂(B)
上記(3)アによれば、先願発明の感光性樹脂組成物R1は「析出抑制化合物I」を含有するものであり、上記(3)イによれば、「析出抑制化合物I」は「2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(FOEMA)」と「1-アダマンチルメタクリレート(1-ADMA)」とを構成単位として含むブロック共重合体であるから、「析出抑制化合物I」は、「1-アダマンチルメタクリレート(1-ADMA)」構成単位に由来する「アダマンチル基」、並びに、「2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(FOEMA)」構成単位に由来する「フッ素化アルキル基を有する側鎖及び/又はポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖」を有する含フッ素樹脂であると認められる。
してみると、先願発明の「析出抑制化合物I」は、本件補正発明の「含フッ素樹脂(BA)」に相当し、本件補正発明の「含フッ素樹脂(BA)が重合性不飽和単量体の重合体であり、かつアダマンチル基、並びにフッ素化アルキル基を有する側鎖及び/又はポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し」との要件も満たす。そして、先願発明は、本件補正発明の「樹脂(B)」「を含有する」、及び、「前記樹脂(B)が含フッ素樹脂(BA)を含有し」との要件を満たす。
ウ 光重合開始剤(E)
上記(3)アによれば、先願発明の感光性樹脂組成物R1は、「1-プロパノン,3-シクロペンチル-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)(オキシムエステル光開始剤、商品名「TR-PBG-304」常州強力電子新材料社製)」を含有するものであると認められるところ、該「1-プロパノン,3-シクロペンチル-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)(オキシムエステル光開始剤、商品名「TR-PBG-304」常州強力電子新材料社製)」は、本件補正発明の「光重合開始剤(E)」が含む「オキシムエステル系化合物(EA)」に相当するから、先願発明は、本件補正発明の「光重合開始剤(E)とを含有する」、及び、「光重合開始剤(E)が、オキシムエステル系化合物(EA)を含む」との要件を満たす。
(6)一致点及び相違点の認定
ア 一致点
上記(5)によれば、本件補正発明と先願発明とは、以下の点で一致する。
「 着色剤(A)と、樹脂(B)と、光重合開始剤(E)とを含有する感光性着色組成物であって、
前記樹脂(B)が含フッ素樹脂(BA)を含有し、含フッ素樹脂(BA)が重合性不飽和単量体の重合体であり、かつアダマンチル基、並びにフッ素化アルキル基を有する側鎖及び/又はポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、
光重合開始剤(E)が、オキシムエステル系化合物(EA)を含む、感光性着色組成物。」
イ 一応の相違点
本件補正発明と先願発明とは、以下の点で、一応相違する。
本件補正発明では、含フッ素樹脂(BA)の重量平均分子量が「5000~50000」であるのに対して、先願発明では、析出抑制化合物Iの重量平均分子量が「4,600」である点。
(7)判断
上記一応の相違点について検討する。
先願の特許請求の範囲(上記(2)ア)、同明細書【0006】~【0012】、【0052】等(上記(2)ウ、エ)の記載によれば、先願明細書等には、感光性樹脂組成物において、フルオロカーボン基および架橋環式脂肪族基を有する化合物(析出抑制化合物)を含むことにより、色材由来の化合物の析出を抑制して、生産性が高く、かつ表面粗度が低い着色層を形成することが可能な感光性樹脂組成物を提供するという課題を解決しようとする発明が開示されているところ、先願明細書【0076】(上記(2)エ参照。)には、該析出抑制化合物(本件補正発明の「含フッ素樹脂(BA)」)の重量平均分子量について、以下の記載がある。
「析出抑制化合物の重量平均分子量(Mw)は、3,000以上10,000以下であることが好ましい。析出抑制化合物の重量平均分子量が3,000以上10,000以下であると、他の材料との親和性に優れ、また粘度が高くなり過ぎることもないので、ベイク時の熱による表面ブリードが阻害されず、析出抑制効果を損なうこともない。析出抑制化合物の分子量の下限は4000以上であることがより好ましく、また析出抑制化合物の分子量の上限は8000以下であることがより好ましい。」
すなわち、先願明細書には、上記相違点に係る本件補正発明の含フッ素樹脂(BA)の重量平均分子量である「5000~50000」と、少なくとも「5000~10000」において重なる範囲が、好ましい範囲であることが開示されていると認められる。
してみると、先願明細書等に開示された発明の一実施例たる先願発明の「析出抑制化合物I」の重量平均分子量は「4,600」と本件補正発明の範囲外であるものの、先願明細書等の記載に接した当業者は、析出抑制化合物として、本件補正発明と一致する「5000~10000」の範囲の重量平均分子量を有するものについても、先願の特許請求の範囲及び明細書全体から把握される発明において、その効果が得られる範囲内のものと認識するといえる。
してみると、上記相違点は、当業者にとって、周知、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないものといえるから、課題解決のための具体化手段における微差の域を超えるものではない。
したがって、本件補正発明と先願発明とは、実質同一である。
(8)形式的要件について
上記(4)によれば、先願発明の発明者は、本願の請求項に係る発明の発明者と同一の者ではなく、先願の出願人は、本願の出願時において、本願の出願人と同一の者でない。
(9)請求人の主張について
請求人は、令和4年6月1日提出の審判請求書において、以下のとおり主張している。
「 本願の請求項1に係る発明は(以下、本願発明1)と出願3に記載された発明を対比すると、出願3の実施例で使用された析出抑制化合物I、IIおよびIIIの重量平均分子量は、それぞれ4600、4500および不明であり、本願発明1における含フッ素樹脂(BA)の重量平均分子量5000~50000とは、相違します。
したがって、本願発明1は、出願3に記載された発明と同一または実質同一ではありません。」
しかしながら、上記の点が実質同一であることについては、上記(7)で述べたとおりである。
以上のとおり、請求人の主張はいずれも採用できない。
(10)小括
以上のとおり、本件補正発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2016-71496号(国際公開第2017/169951号参照)の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法29条の2の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。
4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項3に係る発明(本願発明)は、前記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2016-71496号(国際公開第2017/169951号参照)の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法29条の2の規定により、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3 先願明細書等の記載及び先願発明
先願明細書等の記載及び先願発明は、前記「第2」[理由]3(2)及び(3)に記載したとおりである。
4 対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]3で検討した本件補正発明において、「含フッ素樹脂(BA)の重量平均分子量が5000~50000であり」との特定事項における数値範囲の下限を拡張し、「含フッ素樹脂(BA)の重量平均分子量が2000~50000である」としたものに相当する。
そして、本願発明は、本件補正発明と上記数値範囲を除いては同一のものであるから、本願発明と先願発明とは、前記「第2」[理由]3(6)アの一致点において一致するとともに、先願発明は、本願発明の「含フッ素樹脂(BA)の重量平均分子量が2000~50000である」との要件も満たすものである。
してみると、本願発明と先願発明には相違するところはなく、本願発明は、先願発明と同一の発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-008343