2019-003130
珪化バリウム系多結晶体及び前記珪化バリウム多結晶体からなるスパッタリングターゲット又は熱電変換素子
- 審判番号
- 2019-003130
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-121660外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年03月06日
- 審決日
- 2020年08月18日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東ソー株式会社
- 分類
- P18 .121-WZ (C01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成26年 6月12日の出願であって、平成30年 4月 6日付けで拒絶の理由が通知され、同年 6月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月28日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成31年 3月 6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対し、当審において、令和 2年 4月 1日付けで拒絶の理由が通知され、同年 6月10日に意見書(以下、「本件意見書」という。)及び手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)が提出されたものである
第2 本願発明
本願の請求項1~7に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】13族元素のうち少なくとも1種類以上の元素を含み、前記13族元素がホウ素またはアルミニウムであり、含有酸素量が20atm%以下であることを特徴とする珪化バリウム多結晶体。」
第3 当審が通知した拒絶理由の概要
令和 2年 4月 1日付けで当審が通知した拒絶の理由は、概略、次の理由を含むものである。
本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~5に記載される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 引用文献
1 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載される発明
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引用文献1には、以下の(1a)~(1d)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪化バリウム多結晶体中の酸素含有量が10mol%以下であって、密度が3.0g/cm3以上であることを特徴とする珪化バリウム多結晶体。
【請求項2】
請求項1に記載の珪化バリウム多結晶体を用いることを特徴とする珪化バリウムスパッタリングターゲット。」
(1b)「【0001】
現在、Siを用いた従来の太陽電池のほかに、化合物半導体を用いた太陽電池が使用されている。・・・珪化バリウムは光吸収係数が高く、また、禁制帯幅が1.3eVと太陽電池として用いる上で良好な化合物半導体であり(例えば、非特許文献1及び2参照)、さらにSrを添加することでその禁制帯幅を1.4eVまで調整する事が可能である(例えば、特許文献1参照)。
・・・
【0003】
量産に向いている薄膜の作製製法としてスパッタ法が挙げられる。・・・
【0004】
これまで、スパッタ法にて珪化バリウム薄膜を成膜した報告はこれまで無く、珪化バリウムの塊はこれまでも真空溶解などによる製法において存在していたが、珪化バリウムに関する詳細な検討は行われてこなかった(例えば、特許文献2参照)。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、割れのない低酸素含有量珪化バリウム多結晶体を製造し、低酸素含有量珪化バリウムスパッタリングターゲットを提供することである。
・・・
【0013】
本発明の珪化バリウム多結晶体は、多結晶体中の含有酸素量が10mol%以下であることを特長とする。・・・多結晶体中の酸素含有量が10mol%より大きい場合、その酸素は多結晶体中に偏析して存在し、偏析部と通常部の間で強度が低下し、その部分が起点としてバルク内に割れを生じることがあるからである。
・・・
【0020】
また、合成方法は特に限定されないが、極力酸素を含有させないような合成方法が好ましく、そのためには容器などに酸素を含有する機材をなるべく使用しない装置であるアーク溶解法が好ましい。」
(1c)「【0028】
(実施例1)
バリウムとシリコン粉末をモル比が1:2になるように100g秤量し、アーク溶解を行なった。アーク溶解は銅製の水冷鋳型に混合原料を約10gずつ投入し、真空処理後、アルゴンを封入しアーク放電を行ないながら材料を溶融し合金を作製した。アーク溶解を行なった後、窒素ガス雰囲気にて合成した珪化バリウム合金をメノウ乳鉢を用いて粉砕した。作製した珪化バリウム粉末の酸素含有量は2.6mol%であった。
【0029】
次に、作製した珪化バリウム粉末75gを75mmφのカーボン製の金型を用いてホットプレス処理を行なった。雰囲気は真空中にて行なった。温度は200℃/hにて昇温し、最終的に800℃まで温度を増加させ、その際の加圧条件は800℃保持の際に40MPaまで上昇させ、保持時間2時間にてホットプレス処理を行った。降温は5時間で約50℃まで降温し、金型を取り出し、多結晶体の回収を行なった。多結晶体の密度3.40g/cm3であった。
【0030】
その後、前記多結晶体を75mmφ×4mmtの形状に加工した。多結晶体中の酸素含有量は2.8mol%であった。図1に示されるX線回折により珪化バリウムの多結晶体である事が確認できた。
【0031】
ボンディング材料としてインジウムハンダを用いて、Cu製のバッキングプレート上に前記多結晶体をボンディングして、珪化バリウムスパッタリングターゲットを得た。」
(1d)「【0042】
【表1】
」
(ア)前記(1a)、(1b)によれば、引用文献1には「珪化バリウム多結晶体」が記載されており、前記「珪化バリウム多結晶体」は、珪化バリウム多結晶体中の「酸素含有量」が10mol%以下であり、「密度」が3.0g/cm3以上であるものであり、これにより、割れのない低酸素含有量珪化バリウム多結晶体を製造し、低酸素含有量珪化バリウムスパッタリングターゲットを提供するものであって、多結晶体中の酸素含有量が10mol%より大きい場合、その酸素は多結晶体中に偏析して存在し、偏析部と通常部の間で強度が低下し、その部分が起点としてバルク内に割れを生じることがあるものであり、その合成方法は、極力酸素を含有させないような合成方法が好ましく、そのためには容器などに酸素を含有する機材をなるべく使用しない装置であるアーク溶解法が好ましいものである。
具体的には、前記(1c)、(1d)の実施例1に注目すれば、前記「珪化バリウム多結晶体」は、バリウムとシリコン粉末をモル比が1:2になるように100g秤量し、アーク溶解を行なうものであり、アーク溶解は、銅製の水冷鋳型に混合原料を約10gずつ投入し、真空処理後、アルゴンを封入しアーク放電を行ないながら材料を溶融し合金を作製するものであり、アーク溶解を行なった後、窒素ガス雰囲気にて合成した珪化バリウム合金をメノウ乳鉢を用いて粉砕し、次に、作製した珪化バリウム粉末75gを75mmφのカーボン製の金型を用いてホットプレス処理を行なうものであり、ホットプレス処理は、真空中の雰囲気にて行ない、温度は200℃/hにて昇温し、最終的に800℃まで温度を増加させ、その際の加圧条件は800℃保持の際に40MPaまで上昇させ、保持時間2時間にてホットプレス処理を行ない、降温は5時間で約50℃まで降温し、金型を取り出し、多結晶体の回収を行なったものであり、このときの多結晶体の密度3.40g/cm3であり、その後、前記多結晶体を75mmφ×4mmtの形状に加工して得られるものであり、このときの多結晶体中の酸素含有量は2.8mol%であり、ボンディング材料としてインジウムハンダを用いて、Cu製のバッキングプレート上に前記多結晶体をボンディングして、珪化バリウムスパッタリングターゲットとされるものである。
(イ)前記(ア)によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。
「バリウムとシリコン粉末をモル比が1:2になるように100g秤量し、アーク溶解を行ない、アーク溶解は、銅製の水冷鋳型に混合原料を約10gずつ投入し、真空処理後、アルゴンを封入しアーク放電を行ないながら材料を溶融し合金を作製するものであり、アーク溶解を行なった後、窒素ガス雰囲気にて合成した珪化バリウム合金をメノウ乳鉢を用いて粉砕し、次に、作製した珪化バリウム粉末75gを75mmφのカーボン製の金型を用いてホットプレス処理を行ない、ホットプレス処理は、真空中の雰囲気にて行ない、温度は200℃/hにて昇温し、最終的に800℃まで温度を増加させ、その際の加圧条件は800℃保持の際に40MPaまで上昇させ、保持時間2時間にてホットプレス処理を行ない、降温は5時間で約50℃まで降温し、金型を取り出し、多結晶体の回収を行ない、このときの多結晶体の密度3.40g/cm3であり、その後、前記多結晶体を75mmφ×4mmtの形状に加工して得られる珪化バリウム多結晶体であって、このときの多結晶体中の酸素含有量は2.8mol%であり、ボンディング材料としてインジウムハンダを用いて、Cu製のバッキングプレート上に前記多結晶体をボンディングして、珪化バリウムスパッタリングターゲットとされる、珪化バリウム多結晶体。」(以下、「引用発明」という。)
2 引用文献2の記載事項
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引用文献2には、以下の(2a)~(2b)の記載がある。
(2a)「[請求項1] シリコン層と、
前記シリコン層上に設けられ、開口を有し、バリウムシリサイドを含む中間シリサイド層と、
中間シリサイド層を覆い、前記開口を介しシリコン層に接するように設けられ、前記中間シリサイド層よりドーパント濃度が高くバリウムシリサイドを含む上部シリサイド層と、
を含む半導体装置。」(請求の範囲)
(2b)「[0023] 以下、図面を参照に本発明の実施例について説明する。
実施例1
[0024] 図1は、実施例1に係る太陽電池の断面図である。第1導電型(例えばp型)を有するSi層10上にトンネル接合層16が形成されている。Si層10は、例えばB(ボロン)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)等のドーパントを有する。・・・
[0025] トンネル接合層16は、トンネルSi層12とトンネルBaSi層14とを含んでいる。トンネルSi層12とトンネルBaSi層14とはトンネル接合を形成している。・・・トンネルBaSi層14は、トンネルSi層12上に形成され、後述する第2BaSi層18よりドーパント濃度が高い第2導電型(例えばn型)である。トンネルBaSi層14は、例えばSb(アンチモン)、As(砒素)等のドーパントを有し、膜厚が例えば10~50nm、ドーパント濃度が例えば1×1019~1×1020cm-3であることが好ましい。
[0026] トンネル接合層16上にpn接合を有するBaSi層22が形成されている。BaSi層22は、トンネル接合層16上に形成された第2導電型(例えばn型)の第2BaSi層18と、第2BaSi層18上に形成された第1導電型(例えばp型)の第1BaSi層20と、を含んでいる。第1BaSi層20と第2BaSi層18とはpn接合を形成している。第2BaSi層18は、例えばSb、As等のドーパントを有し、膜厚が例えば500~1000nm、ドーパント濃度が例えば1×1016~5×1016cm-3であることが好ましい。第1BaSi層20は、例えばAl等のドーパントを有し、膜厚が例えば50~100nm、ドーパント濃度が例えば5×1017~5×1018cm-3であることが好ましい。
・・・
[0028]トンネルBaSi層14、第2BaSi層18、第1BaSi層20および実施例2で説明する中間BaSi層は、BaおよびSiを含み、例えばバリウムシリサイド層である。・・・これにより、より高効率でかつ薄膜化可能な太陽電池を提供することができる。・・・」
3 引用文献3の記載事項
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引用文献3には、以下の(3a)~(3b)の記載がある。
(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面がSiである基板と、
前記基板のSi表面のうちの1つの表面上に配置されている、エピタキシャル成長により形成されたBa原子とSi原子とを含有するn型BaSi2層と、
前記n型BaSi2層上に配置されている周期表13~15族に属する少なくとも1種の不純物原子とBa原子とSi原子とを含有するn+型BaSi2層と、
前記n+型BaSi2層上に配置されている上部電極と、
前記基板の一方の表面上に配置されている下部電極と、
を備えることを特徴とするシリコンベースの高効率太陽電池。」
(3b)「【0033】
次に、このn型BaSi2層2の表面に周期表13~15族に属する少なくとも1種の不純物原子とBa原子とSi原子とを反応させてn+型BaSi2層3を形成する。BaSi2層に前記不純物原子をドープすることにより、より電子密度の高いn+型BaSi2層3を形成することができ、電極と太陽電池の接触抵抗が小さいため、直列抵抗による光電変換効率の低下を抑制した太陽電池を得ることができる。また、この観点からSb原子、Ga原子をドープすることが好ましい。
【0034】
前記n+型BaSi2層3中のSi原子1molに対する前記不純物原子の含有量は0.1~3mmolであることが好ましく、1~3mmolであることがより好ましい。不純物原子の含有量が上記下限未満になると電極と太陽電池の接触抵抗が大きくなる傾向にある。他方、上記上限を超えるとn+型BaSi2層の結晶品質が低下する傾向にある。」
4 引用文献4の記載事項
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引用文献4には、以下の(4a)の記載がある。
(4a)「【0032】
(ポリシリコン半導体膜)
ポリシリコン半導体膜13は、基板10上(第1下地膜11乃至第2下地膜12が設けられている場合にはその上。以下これらを単に「基板上」という。)に所定のパターンで形成されている。・・・一方、ソース電極接続領域13s及びドレイン電極接続領域13dは、基板10側からソース電極側及びドレイン電極側に向かってドーパント一定濃度層21とドーパント減少傾斜層22’とが積層した領域であり、チャネル領域13cの厚さT3より厚い厚さ(T1+T2)で形成されている。
【0033】
ドーパント一定濃度層21は、ソース電極接続領域13s及びドレイン電極接続領域13dのポリシリコン半導体膜13の基板1側(下側)の層であって、含まれるドーパントの濃度が厚さ方向で一定の層である。ドーパント一定濃度層21の形成方法としては、先ず、ドーパントを含有するシリコンターゲットを用いたスパッタリング法でドーパント含有半導体膜を成膜し、次いで、成膜したドーパント含有半導体膜の多結晶化と活性化のためのアニール(好ましくはエキシマレーザーアニール)を行い、次いで、そのドーパント含有半導体膜をパターニングして所定パターンのドーパント一定濃度層21を形成する方法を挙げることができる。ドーパントとしては、n型ドーパントであるリン、ヒ素及びアンチモンのうちのいずれか、又は、p型ドーパントであるボロン及びアルミニウムのうちのいずれかを用いることができる。」
5 引用文献5の記載事項
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引用文献5には、以下の(5a)~(5b)の記載がある。
(5a)「【0002】
近年、電子材料の分野において、各種の薄膜を形成する際にスパッタリング法が使用されている。このスパッタリング法は、正の電極と負の電極とからなるターゲットとを対向させ、不活性ガス雰囲気下でこれらの基板とターゲットの間に高電圧を印加して電場を発生させるものであり、この時電離した電子と不活性ガスが衝突してプラズマが形成され、このプラズマ中の陽イオンがターゲット(負の電極)表面に衝突してターゲット構成原子を叩きだし、この飛び出した原子が対向する基板表面に付着して膜が形成されるという原理を用いたものである。
・・・
【0006】
上記のような従来技術においては、ドーパントが均一に分散したスパッタリングターゲットが得られ、これを用いてスパッタリングした場合、ある程度の成膜の均一性を高めることが可能となった。・・・」
(5b)「【0010】
本発明は、めっきにより平均粒径10nm以下のドーパントを析出させた原料粉を用いて焼結したスパッタリングターゲットを用いることが、ドーパントを均一に分散させ、かつ安定した成膜を可能とする意味で、極めて重要な要素である
。
・・・
【0011】
このような微細に分散したドーパントを含有するターゲットを用いてスパッタリングした場合、スパッタ膜の成分組成もこのターゲットの均一な成分組成が反映され、微細に分散したドーパントを含有するスパッタ膜が得られる。また、ターゲットの均一性の影響により、パーティクルの発生等によるスパッタ膜の欠陥が著しく減少すると共に歩留りが向上し、生産効率を上げることができる。・・・」
第5 対比・判断
1 対比
(ア)本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明に係る「珪化バリウム多結晶体」は、例えば本願明細書の発明の詳細な説明の【0010】の「本発明の珪化バリウム多結晶体は、抵抗率が10-5Ωcm以上105Ωcm未満であるため、p型半導体として好適であり、太陽電池などに代表される半導体デバイス用スパッタリングターゲットに使用することができる。さらに熱電変換材料としても使用することができる。」との記載からみて、スパッタリングターゲットとしても用いられるものであるから、引用発明における「珪化バリウムスパッタリングターゲットとされる、珪化バリウム多結晶体」は、本願発明における「珪化バリウム多結晶体」に相当する。
また、引用発明において、「珪化バリウム多結晶体」中の「酸素含有量」が「2.8mol%であ」ることは、本願発明において、「含有酸素量が20atm%以下であること」に合致する。
(イ)そうすると、本願発明と引用発明とは、
「含有酸素量が20atm%以下である珪化バリウム多結晶体。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
2 判断
(ア)以下、前記1(イ)の相違点1について検討すると、前記第4の2(2a)~(2b)によれば、引用文献2には、太陽電池を構成するBaSi層がAl等のドーパントを有すること、これにより、より高効率でかつ薄膜化可能な太陽電池を提供することができることが記載され、前記第4の3(3a)~(3b)によれば、引用文献3には、太陽電池を構成するn型BaSi2層の表面に周期表13~15族に属する少なくとも1種の不純物原子をドープしてn+型BaSi2層を形成すること、これにより、直列抵抗による光電変換効率の低下を抑制した太陽電池を得ることができることが記載されている。
そして、これら引用文献2~3の記載事項によれば、太陽電池を構成する珪化バリウム層に、ドーパントとして13族元素であるホウ素またはアルミニウムを含有させて太陽電池の特性を向上させることは、本願出願日における周知技術といえるものである。
(イ)一方、前記第4の4(4a)によれば、引用文献4には、ドーパントを含有するシリコンターゲットを用いたスパッタリング法でドーパント含有半導体膜を成膜し、次いで、成膜したドーパント含有半導体膜の多結晶化と活性化のためのアニールを行い、次いで、そのドーパント含有半導体膜をパターニングして所定パターンのドーパント一定濃度層を形成する方法が記載され、前記第5の5(5a)~(5b)によれば、引用文献5には、電子材料の分野においては、各種の薄膜を形成する際にスパッタリング法が使用され、従来、ドーパントが均一に分散したスパッタリングターゲットが得られ、これを用いてスパッタリングした場合、ある程度の成膜の均一性を高めることが可能となったこと、及び、めっきにより平均粒径10nm以下のドーパントを析出させた原料粉を用いて焼結したスパッタリングターゲットを用いて成膜した場合、スパッタ膜の成分組成もこのターゲットの均一な成分組成が反映され、微細に分散したドーパントを含有するスパッタ膜が得られることが記載されている。
そして、これら引用文献4~5の記載事項によれば、電子材料においてスパッタリング法により成膜する場合、スパッタリングターゲットにドーパントを含有させて、成膜される膜に所定量のドーパントを含有させることもまた、本願出願日における周知技術といえるものである。
(ウ)ここで、前記(ア)の周知技術によれば、当業者は、太陽電池の特性を向上させる、といった目的のために、珪化バリウム層に、ドーパントとして「13族元素」である「ホウ素またはアルミニウム」を含有させるものである一方、前記(イ)の周知技術によれば、電子材料においてスパッタリング法により成膜する場合には、スパッタリングターゲットにドーパントを含有させて、成膜される膜に所定量のドーパントを含有させるものである。
そして、引用発明に係る「珪化バリウム多結晶体」が「珪化バリウムスパッタリングターゲットとされる」ものであることからみれば、引用発明において、太陽電池の特性を向上させる、といった目的のために、スパッタリングターゲットとされる「珪化バリウム多結晶体」に、ドーパントとして「13族元素」である「ホウ素またはアルミニウム」を含有させることは、当業者が容易に想到し得るものである。
してみれば、引用発明において、「珪化バリウム多結晶体」を、「13族元素のうち少なくとも1種類以上の元素を含み、前記13族元素がホウ素またはアルミニウムである」、との前記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を有するものとすることは、本願出願日における周知技術に基づいて当業者が容易になし得るものであり、かつ、そうすることにより格別な効果を奏するものでもないので、本願発明は、引用発明及び本願出願日における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 請求人の主張について
(ア)請求人は、本件意見書において、本願発明は、特に、「極力酸素を含有させないような合成方法が好ましく、そのためには容器などに酸素を含有する機材をなるべく使用しない装置であるアーク溶解法が好ましい。」(方法1)、「珪化バリウム合金の合成後から酸素含有量を増加させないため、粉砕作業は不活性ガス、乾燥ガス雰囲気で行うことが好ましい。」(方法2)を用いることにより、酸素含有量を低減しており、引用文献1も、本願発明と同様に含有酸素量を低減させることを効果目的としており、そのためには方法1を用いる必要がある一方、引用文献2~5は、含有酸素量を低減させるという技術的思想がなく、方法1を用いないものであり、含有酸素量低減に方法1が必要である引用文献1と、方法1を用いない引用文献2~5とでは、当業者であっても組み合わせないから、本願発明は、引用文献1~5に基づき、容易に想到できるものではない旨を主張している。
(イ)以下、前記(ア)の主張について検討すると、引用発明に係る「珪化バリウム多結晶体」は、「バリウムとシリコン粉末をモル比が1:2になるように100g秤量し、アーク溶解を行ない、アーク溶解は、銅製の水冷鋳型に混合原料を約10gずつ投入し、真空処理後、アルゴンを封入しアーク放電を行ないながら材料を溶融し合金を作製するものであり、アーク溶解を行なった後、窒素ガス雰囲気にて合成した珪化バリウム合金をメノウ乳鉢を用いて粉砕」するものであって、「容器などに酸素を含有する機材をなるべく使用しない装置であるアーク溶解法」によるものといえ、かつ、「珪化バリウム合金の合成後から酸素含有量を増加させないため、粉砕作業は不活性ガス、乾燥ガス雰囲気で行う」ものといえ、引用発明は、「珪化バリウム多結晶体」の含有酸素量を低減させるために、前記方法1、方法2を用いるものといえる。
一方、前記2(ア)によれば、引用文献2~3は、太陽電池を構成する珪化バリウム層に、ドーパントとして13族元素であるホウ素またはアルミニウムを含有させて太陽電池の特性を向上させることをいうものであり、同(イ)によれば、引用文献4~5は、電子材料においてスパッタリング法により成膜する場合、スパッタリングターゲットにドーパントを含有させて、成膜される膜に所定量のドーパントを含有させることをいうものであるが、引用発明に係る「珪化バリウム多結晶体」は、もともと含有酸素量を低減させるために前記方法1、方法2を用いるものであり、そのような引用発明に係る「珪化バリウム多結晶体」にドーパントを含有させたとしても、その酸素含有量が増加するものではないし、ドーパントを含有させることで、前記方法1、方法2を用いることが阻害されるものでもない。
すると、引用文献2~5に、含有酸素量を低減させるという技術的思想がなく、これらが方法1を用いるものではないとしても、もともと含有酸素量を低減させるために前記方法1、方法2を用いる引用発明においてドーパントを含有させたとき、引用発明に係る「珪化バリウム多結晶体」中の酸素含有量が増加するものではないから、含有酸素量を低減させて、割れのない低酸素含有量珪化バリウム多結晶体を製造し、低酸素含有量珪化バリウムスパッタリングターゲットを提供する、という引用発明の効果目的を阻害しないことは明らかである。
したがって、引用文献1に記載された発明と、引用文献2~5に記載される周知技術を組み合わせることが阻害されるものではなく、含有酸素量低減に方法1が必要である引用文献1と、方法1を用いない引用文献2~5とを、当業者であっても組み合わせないとはいえないので、請求人の前記(ア)の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び本願出願日における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-003130