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特許拒絶査定不服審判

2024-004334

リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド塩を調製するための方法

審判番号
2024-004334
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-564516外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年03月12日
審決日
2026年01月07日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (C01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法49条1項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
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特願2020-564516「リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド塩を調製するための方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月28日国際公開、WO2019/224470、令和 3年 9月13日国内公表、特表2021-524429〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和1年) 5月21日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2018年(平成30年) 5月23日(FR)フランス)を国際出願日とする出願であって、令和5年 6月 7日付けで拒絶理由が通知され、同年 8月30日に手続補正書及び意見書が提出されたが、同年11月 7日付けで拒絶査定がされ、令和6年 3月12日に拒絶査定不服審判の請求がされたものであり、その後、令和7年 3月31日付けで当審からの拒絶理由が通知され、同年10月 6日に意見書及び誤訳訂正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願請求項1~5に係る発明は、令和 7年10月 6日提出の誤訳訂正書により補正(以下、「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 少なくとも一つの塩素化剤及び少なくとも一つの硫黄含有剤を用いてスルファミン酸を塩素化する工程を含むCl-SO2NHSO2Clを調製するための方法であって、前記方法は、Cl-SO2NHSO2Clを含む流れF1と、HCl及びSO2を含む気体流F2とをもたらし、且つ気体流F2を処理する工程a)を含み、 気体流F2を処理する工程a)が、i)中和カラム中で気体流F2をアルカリ性水溶液と接触させることであって、以下: - 中和カラムの頂部で回収された、水及び任意選択的に一又は複数の不活性ガスを含む気体流G1;及び - 中和カラムの底部で回収された、水、Cl-イオン及びサルファイトSO32-イオンを含むアルカリ性の流れL1 の形成及び回収を可能にする、気体流F2をアルカリ性水溶液と接触させることを含み、 流れF1は、塩素化剤を前記流れF1の全重量に対して5重量%未満の含有率で含む、方法。」 第3 当審で通知した拒絶理由の概要 令和 7年 3月31日付けで、当審から通知した拒絶理由は、次の理由を含む。 (進歩性)本件補正前の請求項1、3、14~16に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 引用文献1 特表2015-531744号公報 引用文献2 特開昭48-101378号公報 引用文献3 特開2000-197812号公報 第4 当審の判断 当審は、本願発明1は上記の理由により特許をすることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである、と判断する。 詳細は以下のとおりである。 1 引用文献の記載事項 (1)引用文献1には、「ビス(フルオロスルホニル)イミドの合成」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は、三フッ化ビスマスを用いて式X-S(0)2-Z-S(0)2-Xの非フルオロハライド化合物から、式F-S(0)2-Z-S(0)2-Fのビス(フルオロスルホニル)化合物を製造する方法に関する。これらの化合物は、電池及びキャパシタ等の電気化学デバイスにおける電解質を含む様々な用途に有用である。」 イ「【発明が解決しようとする課題】 【0015】 したがって、高純度のビス(フルオロスルホニル)イミド化合物及びそれらの誘導体を製造する比較的安全及び/又は低コストの方法に対する要求が存在している。」 ウ「【0055】 実施例1:ビス(クロロスルホニル)イミド(HCSI)の合成 機械的撹拌と、コンデンサと、温度計とを備えた三つ口丸底フラスコに、スルファミン酸(4.2 mol、407.8.5 g)と、クロロスルホン酸(4.2 mol、489.3 g、333ml)と、塩化チオニル(11.50 mol、1369.2 g、835 ml)との混合物を、アルゴン雰囲気の下で添加した。反応混合物を24時間130℃に加熱した。遊離した塩化水素及び二酸化硫黄を、2.56モルの苛性ソーダ溶液中で泡立たせることによってガス洗浄させた(scrubbed)。過剰な塩化チオニルは、周囲圧力における蒸留によって回収した。ビス(クロロスルホニル)イミドは、淡黄色液体として減圧蒸留させ、これを室温で静置して凝固させた。収率:880 g(98%)、沸点101℃/1 mmHg~103℃/1 mmHg。 ・・・ 【0058】 実施例4:酸化ビスマスからの三フッ化ビスマスの合成 酸化ビスマス(III)(0.17 mol、80 g)をPTFE被覆フラスコに入れた。水性フッ化水素(2 mol、84.0 gの48%~50%水溶液)をゆっくりと添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、濾過した。得られた固体をPTFE被覆フラスコに移し、真空乾燥させた。収率:89.4 g(98%)。 【0059】 実施例5:回収した三フッ化ビスマスを用いたビス(フルオロスルホニル)イミドの合成 ビス(クロロスルホニル)イミド(0.3 mol、64.2 g)の入った100ml容のPTFE被覆フラスコ内に、三フッ化ビスマス(実施例4から得られた)(0.2 mol、53.18 g)を、室温で激しく撹拌しながら添加した。フラスコを冷水浴に浸すことによって反応混合物を冷却させた後、室温までゆっくりと温めた。得られる混合物を室温で12時間撹拌した。その後、反応混合物をガラスフラスコに移し、減圧蒸留させると、無色の液体としてHFSIが生成された。収率:48.3 g(89%)、沸点68℃/25 mmHg~69℃/25 mmHg。 【0060】 実施例6:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の合成 ビス(フルオロスルホニル)イミド(HFSI)(27.15 g、0.15mol)をビーカーに入れ、-78℃まで冷却させた。水(10ml)を添加し、混合物を室温まで温めた。炭酸リチウム(5.53 g)の懸濁液を、pHレベルが約pH7に達するまでゆっくりと添加した。不溶性材料は濾過によって除去し、水相を100 mlの酢酸エチルにより希釈した。有機層は分離して濃縮させた。得られる残渣を真空下で一晩50℃に加熱した。生成物LiFSIが白色固体として得られた。収率:28.05 g、92%。」 (2)引用文献2の記載 引用文献2には、「気体浄化装置」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。 ア「本発明に係る吸収液に用いられるアルカリ性物質としては、・・・SO2、SO3、HCl、Cl2等に対しては、Ca(OH)2やBa(OH)2、その他アルカリ金属の炭酸塩、燐酸塩等の水に溶けてアルカリ性を呈するものであれば単独あるいは2種以上を混合して適宜用いることができる。」(第2頁左下欄第19行~右下欄第6行) イ「つぎに本発明の実施例を図示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。図において、(1)は被処理空気の導入路に設けた防塵フィルタ、(2)はこのフィルタの通過空気を下方から導き気液接触反応により浄化して上方に放出させる充填塔、(3)はこの充填塔内部上方に設けた洗浄液噴霧用のスプレーノズル、(4)はこのノズル下方に設けた濾過床、(5)はこの充填塔における処理空気の放出端に設けたデミスタ、(6)は上記スプレーノズル(3)と充填塔下端とを連絡する洗浄液通路(7)に介挿した循環用ポンプ、(8)は充填塔(2)からの還流洗浄液中におけるH2O2濃度を検出する濃度監視器、(9)はこの監視器の情報を配線(10)を介して受け所要量のH2O2を洗浄液中に補給するH2O2供給装置である。 このような構成において被処理空気は防塵フィルタ(1)の通過時に除塵されてプラスチック製のテラレットまたはボールリング等の充填物が充填された濾過床(4)に導入されるが、そこを通過するとき洗浄液と向流接触し、被処理空気中に含まれる有害ガス成分を洗浄液中に化学的に吸収除去させる。しかる後、プラスチック製の板や網で構成されたデミスタ(5)を通過しミストを除去され、浄化空気となって外部へ放出される。なお、洗浄液中のH2O2濃度は通常の比色法または滴定法に基づくH2O2濃度測定器を内蔵したH2O2濃度監視器(8)によって定期的に監視され、濃度が一定値以下に低下したら自動的にH2O2供給装置(9)が動作し、洗浄液中に濃厚H2O2が供給される。H2O2供給装置としては単なる濃厚H2O2貯蔵槽であってもよいし、ペルオクソ酸塩や過酸化水素化物等の加水分解によってH2O2を発生するような小型の化学的H2O2発生装置、あるいは電解法によるH2O2発生装置を内蔵するようなH2O2供給装置であってもよい。 この構成の浄化装置に、洗浄液として1l中にKOHを1モル、H2O2を0.12モル含む水溶液を用い、空塔速度1.5m/秒、液ガス比0.5kg液体/kg気体、温度20℃の条件下でNOまたはNO2の除去効率を実測したところ、表の番号1に示した結果を得た。」(第3頁左上欄第4行~左下欄第4行) ウ「 [図:0001435561000001.jpg] 」(第4頁右上欄) (3)引用文献3の記載 引用文献3には、「排ガス処理方法および処理装置」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。 ア「【0002】 【従来の技術】従来、ごみ焼却設備(一般廃棄物もしくは産業廃棄物焼却プラント等)において、これらごみ焼却設備から出る排ガス中に含まれるHCl,SOx等の酸性ガス成分を脱酸処理する方法としては、これら酸性ガス成分を水で洗浄し、苛性ソーダなどのアルカリ剤の中和によってpH6~7に調整することにより塩に変えて回収するという方法が最も一般的に採られている。 【0003】この従来方法を図11に示されるシステム構成図によって説明する。この図11に示される従来システムにおいては、第1洗浄塔51と第2洗浄塔52とが備えられている。図示されないごみ焼却設備からの排ガスは煙道53を通して第1洗浄塔51の頂部に導入され、この第1洗浄塔51の下部に溜められた洗浄液54が循環ポンプ55にてその第1洗浄塔51の上部に配されるスプレーノズル56から噴霧され、これによって第1洗浄塔51内に導入された排ガス中の酸性ガス成分(HCl,SOx等)が洗浄液54にて吸収されるようになっている。この酸性ガス成分の吸収に伴って洗浄液54のpHは小さな値になるため、循環する洗浄液54中に苛性ソーダヘッドタンク57から苛性ソーダが補給され、その洗浄液54のpHが6~7に保持される。なお、第1洗浄塔51内の過剰の洗浄液54は排出ポンプ58により系外に排出される。 【0004】前記第1洗浄塔51を出た排ガスは煙道59により第2洗浄塔52に導入される。この第2洗浄塔52に導入された排ガス中にはまだ酸性ガス成分を含有しており、この第2洗浄塔52の下部に溜められた洗浄液60が循環ポンプ61にてその第2洗浄塔52の上部から投入されることで、排ガスと気液接触させて排ガス中の酸性ガス成分が洗浄液60にて吸収される。この酸性ガス成分の吸収に伴って洗浄液60のpHはやはり小さな値になるため、第1洗浄塔51と同様、循環する洗浄液60中に苛性ソーダヘッドタンク57から苛性ソーダが補給され、その洗浄液60のpHが6~7に保持される。そして、この第2洗浄塔52を出た排ガスは煙道63から図示されないガス再加熱器等を経て煙突により大気に放出される。なお、第1洗浄塔51および第2洗浄塔52はスプレー塔に限定されず、ラシヒリング等の充填物を充填した方式など他の各種方式のものも使用可能である。」 イ「 [図:0001435561000002.jpg] 」 2 引用文献1に記載された発明 引用文献1には、上記1(1)ウによれば、ビス(クロロスルホニル)イミドの合成方法として、塩化チオニル、クロロスルホン酸、スルファミン酸を24時間130℃で加熱を行い、遊離した塩化水素及び二酸化硫黄を苛性ソーダ溶液中で泡立たせることでガス洗浄させ、過剰な塩化チオニルは、周囲圧力における蒸留によって回収し、またビス(クロロスルホニル)イミドは減圧蒸留させること(実施例1)が記載されているといえる。 この記載を「ビス(クロロスルホニル)イミドの合成方法」に注目して整理すると、次の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されていると認められる。 〔引用1発明〕 「塩化チオニル、クロロスルホン酸、スルファミン酸を24時間130℃で加熱を行うことでビス(クロロスルホニル)イミドを合成する方法であって、遊離した塩化水素及び二酸化硫黄は、苛性ソーダ溶液中で泡立たせることでガス洗浄させ、過剰な塩化チオニルは、周囲圧力における蒸留によって回収し、また減圧蒸留することでビス(クロロスルホニル)イミドを得る方法。」 3 対比、判断 (1)本願発明1と引用1発明との対比 ア 本願発明1と引用1発明との対応関係は次のとおりである。 (ア)引用1発明の「塩化チオニル」は、本願明細書の「塩素化剤は、塩化チオニル(SOCl2)、塩化オキサリル(COCl)2、五塩化リン(PCl5)、三塩化ホスホニル(PCl3)、三塩化ホスホリル(POCl3)及びそれらの混合物からなる群より選択され得る。」(【0131】)との記載を踏まえると、本願発明1の「少なくとも一つの塩素化剤」に相当する。 (イ)引用1発明の「クロロスルホン酸」は、本願明細書の「硫黄含有剤は、クロロスルホン酸(ClSO3H)、硫酸、発煙硫酸及びそれらの混合物からなる群より選択され得る。」との記載を踏まえると、本願発明1の「少なくとも一つの硫黄含有剤」に相当する。 (ウ)引用1発明の「ビス(クロロスルホニル)イミド」は、本願発明1の「Cl-SO2NHSO2Cl」に相当する。 (エ)引用1発明の「塩化チオニル、クロロスルホン酸、スルファミン酸を24時間130℃で加熱を行うことでビス(クロロスルホニル)イミドを合成する方法」は、上記(ア)~(ウ)を踏まえると、「スルファミン酸」を「塩素化剤」と「硫黄含有剤」により「Cl-SO2NHSO2Cl」としているといえるから、本願発明1の「スルファミン酸を塩素化する工程を含むCl-SO2NHSO2Clを調製するための方法」に相当する。 (オ)引用1発明の「減圧蒸留することでビス(クロロスルホニル)イミドを得る」は、「減圧蒸留」によって「ビス(クロロスルホニル)イミド」の流れが形成されていることは明らかであるから、上記(ウ)を踏まえると、本願発明1の「Cl-SO2NHSO2Clを含む流れF1」「をもたらし」に相当する。 (カ)引用1発明の「遊離した塩化水素及び二酸化硫黄」は、「苛性ソーダ溶液中で泡立たせることでガス洗浄させ」ており、「塩化水素及び二酸化硫黄」のガス流が形成されていることは明らかであるから、本願発明1の「HCl及びSO2を含む気体流F2」に相当する。 イ 前記アの対応関係を踏まえると、本願発明1と引用1発明は、「少なくとも一つの塩素化剤及び少なくとも一つの硫黄含有剤を用いてスルファミン酸を塩素化する工程を含むCl-SO2NHSO2Clを調製するための方法であって、Cl-SO2NHSO2Clを含む流れF1と、HCl及びSO2を含む気体流F2とをもたら」す「方法」の点で一致し、以下の点で相違する。 (ア)本願発明1は、「気体流F2を処理する工程a)を含み、 気体流F2を処理する工程a)が、i)中和カラム中で気体流F2をアルカリ性水溶液と接触させることであって、以下: - 中和カラムの頂部で回収された、水及び任意選択的に一又は複数の不活性ガスを含む気体流G1;及び - 中和カラムの底部で回収された、水、Cl-イオン及びサルファイトSO32-イオンを含むアルカリ性の流れL1の形成及び回収を可能にする、気体流F2をアルカリ性水溶液と接触させることを含む」のに対し、引用1発明は、「遊離した塩化水素及び二酸化硫黄は、苛性ソーダ溶液中で泡立たせることでガス洗浄させ」る点(以下、「相違点1」という。)。 (イ)本願発明1は、「流れF1は、塩素化剤を前記流れF1の全重量に対して5重量%未満の含有率で含む」であるのに対し、引用1発明は、それを特定していない点(以下、「相違点2」という。)。 (2)相違点1の検討 引用文献2には、上記1(2)ア~ウによれば、SO2やHCl等の有害ガス成分を含む被処理空気を充填塔内部の下方から上方へ導き、充填塔内部上方に設けたスプレーノズルからアルカリ性を呈する水溶液からなる洗浄液を噴霧して、被処理空気と洗浄液を向流接触し、被処理空気中に含まれる有害ガス成分を除去し、浄化空気となって上方に放出され、洗浄液を充填塔下端に連絡している洗浄液通路で循環することが開示されている。 また、引用文献3には、上記1(3)ア、イによれば、排ガス中の酸性ガス成分(HCl、SOx)を洗浄塔において洗浄液である苛性ソーダと接触して吸収することで、大気に放出される排ガスと、使用後の洗浄液とが得られることが開示されている。 引用文献2、3の上記記載から、気体流中のSO2やHCl等を浄化させる方法として、洗浄塔でSO2やHCl等を含む気体流をアルカリ性の水溶液からなる洗浄液と接触させ、洗浄塔の上方から浄化された気体流と、洗浄塔の底部から回収されるSO2やHClの浄化に用いた洗浄液とが生成されることは周知な技術であると認められる。そして、アルカリ性の洗浄液を用いてSO2やHClを浄化すると、洗浄液内に水、Cl-イオン及びサルファイトSO32-イオンが存在することは明らかである。また、洗浄塔は、アルカリ性の洗浄液と接触させるものであるから、中和カラムと言い換えることができることも明らかである。さらに、洗浄塔の上方から浄化された気体流には、水溶液の反応を経ていることから、水(水滴、水蒸気等)が含まれていることも明らかである。 そうしてみると、相違点1に係る本願発明1の「気体流F2を処理する工程a)が、i)中和カラム中で気体流F2をアルカリ性水溶液と接触させることであって、以下:- 中和カラムの頂部で回収された、水及び任意選択的に一又は複数の不活性ガスを含む気体流G1;及び- 中和カラムの底部で回収された、水、Cl-イオン及びサルファイトSO32-イオンを含むアルカリ性の流れL1の形成及び回収を可能にする、気体流F2をアルカリ性水溶液と接触させること」は、ガス洗浄方法として周知技術といえる。 そして、引用1発明は、「遊離した塩化水素及び二酸化硫黄は、苛性ソーダ溶液中で泡立たせることでガス洗浄させ」ているところ、引用1発明の「遊離した塩化水素及び二酸化硫黄は、苛性ソーダ溶液中で泡立たせることでガス洗浄させ」ることを、「気体流F2を処理する工程a)が、i)中和カラム中で気体流F2をアルカリ性水溶液と接触させることであって、以下:- 中和カラムの頂部で回収された、水及び任意選択的に一又は複数の不活性ガスを含む気体流G1;及び- 中和カラムの底部で回収された、水、Cl-イオン及びサルファイトSO32-イオンを含むアルカリ性の流れL1の形成及び回収を可能にする、気体流F2をアルカリ性水溶液と接触させること」とすることは、単に周知な技術に置き換えたに過ぎず、当業者であれば容易に想到し得たものである。 (3)相違点2の検討 引用1発明の「ビス(クロロスルホニル)イミド」に関して、引用文献1には、上記1(1)ウによれば、「ビス(クロロスルホニル)イミドは、淡黄色液体として減圧蒸留させ、これを室温で静置して凝固させた。収率:880g(98%)、沸点101℃/1mmHg~103℃/1mmHg。」(【0055】)と記載され、「ビス(クロロスルホニル)イミド」の沸点は、1mmHgの減圧下で101~103℃程度といえる。また、「塩化チオニル」の沸点は常圧下で76℃程度であることが技術常識といえる。 そうすると、引用1発明において、「過剰な塩化チオニル」を「周囲圧力における蒸留によって回収し」た後の「ビス(クロロスルホニル)イミド」には、「塩化チオニル」は含まれていないか、仮に含まれていたとしても極少量であるといえることから、引用1発明は、「流れF1は、塩素化剤を前記流れF1の全重量に対して5重量%未満の含有率で含む」ものといえ、相違点2は実質的な相違点とはいえない。 仮に、相違点2が実質的な相違点であるとしても、引用1発明は、「過剰な塩化チオニルは、周囲圧力における蒸留によって回収」することから、「ビス(クロロスルホニル)イミド」中の「塩化チオニル」を低減して、その含有率を5重量%未満とすることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。 (4)本願発明1が奏する効果について ア 本願明細書には、以下の記載がある。 (ア)「【背景技術】 ・・・ 【0004】 特に塩素化する工程を含む、LiFSIを調製するためのいくつかの方法が存在する。しかし、これらの方法は、大気中に放出される可能性があり、したがって環境に悪影響を与える可能性がある有毒な生成物の放出をもたらす。 【0005】 そのため、上記の欠点を示さないリチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド塩の調製のための方法がさらに必要である。 【0006】 特に、より環境にやさしく且つ/又は経済的に有益であるリチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド塩の調製のための方法が必要である。」 (イ)「【発明の概要】 【0007】 本発明は、少なくとも一つの塩素化剤及び少なくとも一つの硫黄含有剤を用いてスルファミン酸を塩素化する工程を含むCl-SO2NHSO2Clを調製するための方法に関し、前記方法は、Cl-SO2NHSO2Clを含む好ましくは液体の流れF1と、HCl及びSO2を含む気体流F2とをもたらし、前記方法は、気体流F2を処理する工程a)を含む。 【発明を実施するための形態】 【0008】 処理工程a)は、有利には、気体流F2に含有されるHCl及びSO2の大気への排出を回避することを可能にする。」 (ウ)「【0140】 本発明によるリチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド塩を調製するための方法は、有利には、HCl及びSO2の大気への放出を回避することを可能にする。よって、この方法は、有利には、汚染が少なく、より環境にやさしい。」 イ 上記アによると、本願明細書には、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド塩の調製においてもたらされるHCl及びSO2の大気への排出を回避することで環境にやさしい方法とするために、HCl及びSO2を含む気体流F2を処理する工程a)を行うことが記載されているといえる。 ウ 一方、引用1発明は、「遊離した塩化水素及び二酸化硫黄は、苛性ソーダ溶液中で泡立たせることでガス洗浄させ」るものである。 つまり、引用1発明には、ビス(クロロスルホニル)イミドの合成方法において生じた塩化水素及び二酸化硫黄をガス洗浄するものであるから、塩化水素及び二酸化硫黄は、大気へ排出されていないものといえる。 エ また、上記(2)で検討したとおり、引用文献2には、SO2やHCl等の有害ガス成分を含む被処理空気中に含まれる有害ガス成分を除去し、浄化空気となって上方に放出することが開示され、また引用文献3には、排ガス中の酸性ガス成分(HCl、SOx)を洗浄塔において洗浄液である苛性ソーダと接触して吸収することで、大気に放出される排ガスと、使用後の洗浄液とが得られることが開示されている。 オ 上記イ~エの検討を踏まえると、引用1発明、及び引用文献2、3に記載されている事項においても、塩化水素及び二酸化硫黄は、大気へ排出されていないものであるといえる。 そうすると、本願発明1が奏する効果であるHCl及びSO2の大気への排出を回避することで環境にやさしい方法とすることは、引用1発明が備えた効果であるといえるし、また、引用1発明に、上記(2)で検討したガス洗浄方法として周知な技術に置き換えた発明も、同様の効果を奏するものであるので、本願発明1が奏する効果は、当業者が容易に予測し得る程度の効果にすぎず、格別顕著なものであるともいえない。 (5)請求人の主張について 請求人は、令和7年10月6日提出の意見書において、引用文献1~3には、本願発明の流れF1に相当する流れが流れの全重量に対して5重量%未満の含有率で含むことを開示も示唆もされていないとした上で、本願発明は進歩性を有する旨の主張をしている。 しかしながら、前記(3)で検討したとおり、引用1発明は、「流れF1は、塩素化剤を前記流れF1の全重量に対して5重量%未満の含有率で含む」ものといえるし、仮にそうでないとしても、「ビス(クロロスルホニル)イミド」中の「塩化チオニル」を低減して、その含有率を5重量%未満とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 そして、「流れF1は、塩素化剤を前記流れF1の全重量に対して5重量%未満の含有率で含む」ことに関して、本願明細書には、「流れF1は、場合によっては、例えばSOCl2などの塩素化剤を、前記流れF1の全重量に対して、例えば5重量%未満、優先的には1重量%未満、有利には0.5重量%未満の含有率で含み得る」こと(【0012】)、及び「流れF1は、場合によっては、例えばSOCl2及びH2SO4などの塩素化剤及び硫黄含有剤を、前記流れF1の全重量に対して、例えば5重量%未満、優先的には1重量%未満、有利には0.5重量%未満の全含有率で含み得る」こと(【0014】)が記載されているのみであり、格別顕著な効果を奏することは記載されていない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 4 まとめ よって、本願発明1は、その優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は、同法第49条第1項第2号に該当し、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-004334

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