特許拒絶査定不服審判
2019-001152
貯蔵庫
- 審判番号
- 2019-001152
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-166698外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年01月29日
- 審決日
- 2019年11月11日
- 公報発行日
- 2020年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東芝ライフスタイル株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 サトー国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (F25D) / P18 .572-Z (F25D) / P18 .575-Z (F25D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-166698「貯蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 4日出願公開、特開2016- 44816〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年8月19日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年4月13日付けで拒絶理由通知
平成30年6月5日に意見書及び手続補正書の提出
平成30年10月31日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成31年1月29日に審判請求書及び手続補正書の提出
令和元年5月14日に上申書の提出
第2 平成31年1月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年1月29日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1ないし6の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
扉の前面板をガラスで作製したものであって、
そのガラス製の前面板と、
この前面板を固着するフレームとを具備し、
そのフレームの前面板固着部分の一部分に前記フレームの辺に沿って長く延びる接着剤注入用の溝を形成し、
前記溝を形成する部分は、前記前面板固着部分よりも細幅であり、
その溝に注入した接着剤により前記フレームに前記前面板を固着した貯蔵庫。
【請求項2】
前記溝を、複数が列する波状に形成した請求項1記載の貯蔵庫。
【請求項3】
前記フレームの溝より外側の部分に、広がった前記接着剤を見えにくくする隆起部を形成した請求項1又は2記載の貯蔵庫。
【請求項4】
前記前面板の端縁部に面取り部が存し、その面取り部に対応する面取り部を前記隆起部に形成した請求項3記載の貯蔵庫。
【請求項5】
前記フレームの溝より内側の部分に、前記接着剤の漏出を防ぐリブを形成した請求項1から4のいずれか一項記載の貯蔵庫。
【請求項6】
前記前面板の前記接着剤が接する部分に凹凸部を形成した請求項1から5のいずれか一項記載の貯蔵庫。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年6月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6の記載は次のとおりである。(なお、請求項1のみ補正されたものである。)
「【請求項1】
扉の前面板をガラスで作製したものであって、
そのガラス製の前面板と、
この前面板を固着するフレームとを具備し、
そのフレームの前面板固着部分に前記フレームの辺に沿って長く延びる接着剤注入用の溝を形成し、
その溝に注入した接着剤により前記フレームに前記前面板を固着した貯蔵庫。
【請求項2】
前記溝を、複数が列する波状に形成した請求項1記載の貯蔵庫。
【請求項3】
前記フレームの溝より外側の部分に、広がった前記接着剤を見えにくくする隆起部を形成した請求項1又は2記載の貯蔵庫。
【請求項4】
前記前面板の端縁部に面取り部が存し、その面取り部に対応する面取り部を前記隆起部に形成した請求項3記載の貯蔵庫。
【請求項5】
前記フレームの溝より内側の部分に、前記接着剤の漏出を防ぐリブを形成した請求項1から4のいずれか一項記載の貯蔵庫。
【請求項6】
前記前面板の前記接着剤が接する部分に凹凸部を形成した請求項1から5のいずれか一項記載の貯蔵庫。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1における「そのフレームの前面板固着部分に前記フレームの辺に沿って長く延びる接着剤注入用の溝を形成し」との記載を、「そのフレームの前面板固着部分の一部分に前記フレームの辺に沿って長く延びる接着剤注入用の溝を形成し」とし、また、「前記溝を形成する部分は、前記前面板固着部分よりも細幅であり、」との記載を追加することにより、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「接着剤注入用の溝」について、溝を形成する部分の配置及び寸法関係を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2014-52175号公報(平成26年3月20日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、「冷蔵庫」に関し、図面とともに次の記載がある(なお、下線は、理解の一助のために当審において付したものである。)
「【請求項1】
ガラス板を扉の前面に備えた冷蔵庫において、前記ガラス板の落下を防止する落下防止ユニットを備え、前記落下防止ユニットは、係合部を有するガラス板保持部と、被係合部を有する扉側係合部とからなり、前記ガラス板と前記ガラス板保持部を第一の固定部によって固定するとともに、同ガラス板と前記扉側係合部とを第二の固定部によって固定し、前記第二の固定部が機能を有している場合に前記係合部と前記被係合部は未係合状態であり、前記第二の固定部が機能を無くした場合には前記係合部と前記被係合部が係合状態となることで前記ガラス板の落下を防止することを特徴とした冷蔵庫。
【請求項2】
前記落下防止ユニットの扉側係合部は扉を構成するドアフレームに形成するとともに、前記ドアフレームを第二の固定部によりガラス板に固定することによって前記扉側係合部をガラス板に固定したことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記係合部は、先端を傘形状とした請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記係合部は、板状のフック形状とした請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記第一の固定部は、前記ガラス板の裏面と前記係合部の表面とを接着材料を用いて接着する請求項1~4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記第二の固定部は、前記ガラス板の裏面と前記ドアフレームの表面とを接着材料を用いて接着する請求項2~5のいずれか1項に記載の冷蔵庫。」
「【0010】
第1の発明は、ガラス板を扉の前面に備えた冷蔵庫において、前記ガラス板の落下を防止する落下防止ユニットを備え、前記落下防止ユニットは、係合部を有するガラス板保持部と、被係合部を有する扉側係合部とからなり、前記ガラス板と前記ガラス板保持部を第一の固定部によって固定するとともに、同ガラス板と前記扉側係合部とを第二の固定部によって固定し、前記第二の固定部が機能を有している場合に前記係合部と前記被係合部は未係合状態であり、前記第二の固定部が機能を無くした場合には前記係合部と前記被係合部が係合状態となることで前記ガラス板の落下を防止する構成としてあり、これにより経年変化や衝撃等の何らかの原因によって第二の固定部が万が一機能しなくなった場合に、正常時に荷重負荷がかからない状態で固定能力を保持している第一の固定部がその負荷を吸収するので、ガラス板の落下を防止することができる。
【0011】
第2の発明は、特に第1の発明において前記落下防止ユニットの扉側係合部は扉を構成するドアフレームに形成するとともに、前記ドアフレームを第二の固定部によりガラス板に固定することによって前記扉側係合部をガラス板に固定した構成としたものであり、扉を構成するドアフレームに扉側係合部を形成しているので別部材を準備する必要がなく構成の簡素化も図ることができる。
【0012】
第3の発明は、特に、第2の発明の前記係合部は先端を傘形状としてあり、これによりドアフレームの被係合部に差し込むことができ、ガラス板をドアフレームに組み立てる工程を簡易化することができる。
【0013】
第4の発明は、特に、第2の発明の前記係合部を板状のフック形状としてあり、これによりガラス板と板表面の接着管理がし易くできるとともに、フック形状にすることでドアフレームの被係合部に差し込むことができ、ガラス板をドアフレームに組み立てる工程を簡易化することができる。
【0014】
第5の発明は、特に、第1~4のいずれか1つの発明の前記第一の固定部は、前記ガラス板の裏面と前記係合部の表面とを接着材料を用いて接着してあり、これによりガラス板を加工することなく、ガラス板の裏面と係合部を固定することができる。
【0015】
第6の発明は、特に、第2~5のいずれか1つの発明の前記第二の固定部は、前記ガラス板の裏面と前記ドアフレームの表面とを接着材料を用いて接着してあり、これにより、ガラス板を加工することなく、ガラス板の裏面とドアフレームを固定することができるとともに、ガラス板をドアフレームに組み立てる工程を簡易化することができる。」
「【0030】
図1を用いて実施の形態1にかかる冷蔵庫の外観を説明する。図1は実施の形態1にかかる冷蔵庫の正面斜視図である。
【0031】
冷蔵庫1は冷蔵室の観音開き式の扉2と、製氷室、切替室、冷凍室の各引き出し式の扉3を有し、扉2・扉3は全面を光沢性のあるガラス板4で構成することで、透明層で深みのある質感を得て高級感のある美観としている。また、ガラス板4は透明の樹脂板でも良く透過性があって保護用途に適する材質であれば良い。
【0032】
図2は扉2の全体を示す斜視図、図3は同扉2の分解斜視図、図4は図2のA-A断面図、図5は扉の落下防止構造部を示す拡大断面図である。
【0033】
扉2は、ガラス板4と、樹脂製のドアフレーム5と、インナードア6とを含む部品が積層状に重なって形成され、内部にウレタン等からなる発泡断熱材7が充填されている。
【0034】
上記ガラス板4は、図4、図5に示すガラス板保持部9aと扉側係合部11aとからなる落下防止ユニットにて落下を防止している。
【0035】
以下、その落下防止構造について、図4、図5を用い説明する。
【0036】
扉側係合部11aはドアフレーム5の上下内縁部に一体成型してあり、被係合部11を有する。この扉側係合部11aはドアフレーム5の外縁部周囲を第二の固定部8によってガラス板4に接着することによって当該ガラス板4に固定してある。なお、第二の固定部8は両面テープや接着剤等の接着材料を用いる。そして、ドアフレーム5の裏側にインナードアを組み付けた状態でドアフレーム内部にウレタンを注入しウレタン発泡をさせることにより、ガラス板4とドアフレーム5とをウレタン発泡を用いて接着する。
【0037】
つまり、第二の固定部8はウレタン発泡による接着力を用いても良く、その場合は両面テープの接着強度はガラス板を位置決め固定する程度のレベルとしても良い。」
【0038】
一方、ガラス板保持部9aは樹脂や金属で形成してあり、傘形状にした係合部9を有する。このガラス板保持部9aは第一の固定部10でガラス板4の上部に固定され、その係合部9は前記扉側係合部11aの被係合部11に嵌合させてある。なお、第一の固定部10も両面テープや接着剤等の接着材料を用いる。ガラス板4がドアフレーム5から落下する場合に備え、強力な接着力が必要になるため、係合部9の接着面は鏡面仕上げを施した後、脱脂処理することが品質上望ましい。
【0039】
上記係合部9を嵌合させた被係合部11の発泡断熱材7側はキャップ12を取付けてウレタン発泡時の被係合部11内へのウレタンの進入を防止している。そして、係合部9と被係合部11は、第二の固定部8が機能を有している場合つまりガラス板4がドアフレームに正常に接着している場合には係合部9と被係合部11は未係合状態であり、第二の固定部8が機能を無くした場合つまりガラス板4がドアフレーム5から剥離して落下する場合には係合部9と被係合部11は係合状態となる配置にしてある。
【0040】
次に、扉の落下防止構成まわりの組立方法について説明する。予めガラス板4に係合部9を有するガラス板保持部9aを第一の固定部10により取り付け、次にドアフレーム5の表面に両面テープを貼付した状態で、ガラス板4をドアフレーム5に正面方向から取り付ける。このときガラス板保持部9aの係合部9の傘形状部は一旦、ドアフレーム5に一体成型した扉側係合部11aの被係合部11と接触し、ガラス板4をドアフレーム5に取り付け完了状態でこの接触は開放されることにより、係合部9はいずれからも力を受けることがなくストレスフリー状態となる。よって、係合部9を有するガラス板保持部をガラス板4に固定する第一の固定部10は荷重の掛らない固定部としてクリープによる劣化を大幅に少なくでき、接着能力を経年的にも維持できる。」
「
」
(イ)上記(ア)及び図面の記載から認められる事項
上記(ア)及び図面の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記(ア)の請求項1、段落【0010】、【0031】、【0033】及び【0040】並びに図1ないし5の記載によれば、引用文献1には、長方形のガラス板4を扉2の前面に備えた冷蔵庫1が示されている。
b 上記(ア)の請求項2及び6、段落【0011】、【0015】、【0036】、【0039】及び【0040】並びに図1ないし5の記載によれば、冷蔵庫1において、ガラス板4と、前記ガラス板4を接着するドアフレーム5とを具備し、前記ドアフレーム5の外縁部周囲に接着剤を用いた第二の固定部8によって前記ガラス板4を接着することが示されている。
(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「長方形のガラス板4を扉2の前面に備えた冷蔵庫1であって、
前記ガラス板4と、
前記ガラス板4を接着するドアフレーム5とを具備し、
前記ドアフレーム5の外縁部周囲に接着剤を用いた第二の固定部8によって前記ガラス板4を接着した冷蔵庫1。」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2005-320229号公報(以下「引用文献2」という。)には、「減圧ガラスパネル及びその製造方法」に関し、次の記載がある(なお、下線は、理解の一助のために当審において付したものである。)
「【0033】
図1は、本発明の実施の形態に係る減圧ガラスパネルとしての真空ガラスパネル100の一部切欠き斜視図である。
【0034】
図1において、本発明の実施の形態に係る減圧ガラスパネルとしての真空ガラスパネル100は、間に厚さが0.2mmの減圧空間10を形成すべくスペーサ3を介して対向配置された一対の板ガラス1,2と、一対の板ガラス1,2の周縁部を接合する接合用シール材(周縁接合部材)4と、減圧空間10内の気体を排気するための排気孔5と、減圧空間10内の気体に接触するように設置されたゲッタ7と、減圧空間10を画成する面1a,2aのうちの面1aに被覆された低放射率膜(Low-E膜)17とを備える。
【0035】
一対の板ガラス1,2には、その厚さが2~10mm程度の透明なフロートガラスが使用され、一対の板ガラス1,2間の減圧空間10が1.33Pa以下に減圧されている。
【0036】
また、スペーサ3は、形状として円柱状が好ましく、一対の板ガラス1,2に作用する大気圧に耐え得るように、圧縮強度が4.9×108Pa(5×103kgf/cm2)以上の材料、例えば、ステンレス鋼(SUS304)やインコンネル718などにより形成されている。
【0037】
そして、スペーサ3の形状が円柱状の場合であれば、直径が0.3~1.0mm程度、高さが0.15~1.0mm程度であり、各スペーサ3の間の間隔は、20mm程度に設定されている。
【0038】
図2は、図1における排気孔5の周辺断面図である。
【0039】
図2において、一方に板ガラス1には、断面が円形の排気孔5が穿設されている。この排気孔5は、円柱形状のゲッタ7を収納するためのゲッタ収納空間6を兼用するように構成され、そのゲッタ収納空間6にゲッタ7が収納され、排気孔5の開口に透明な板ガラスからなる蓋体(封止部)8が位置されている。
【0040】
図3は、図1における接合用シール材4の周辺断面図である。
【0041】
図3において、接合用シール材4は、厚さBが0.1mmの鉄板32(板状体)と、鉄板32の両面に形成された厚さAが0.05mm、減圧空間10への到達経路長さDが10mmのエポキシ系接着剤層31(有機高分子系接着剤層)、及び厚さCが0.05mm、減圧空間10への到達経路長さDが10mmのエポキシ系接着剤層33(有機高分子系接着剤層)とから成る。」
「【0055】
また、図7に示すように、鉄板32の両面に凹凸を形成してもよい。これにより、エポキシ系接着剤層31,33の減圧空間10への到達経路長さを長くすることができ、もって減圧空間10への外気透過を低減することができる共に、アンカー効果により鉄板32と板ガラス1,2との接着強度を向上することができる。ここで、鉄板32の片面のみに凹凸を形成してもよい。
【0056】
また、例えば、図8に示すようなH型の鉄板32を用いると、エポキシ系接着剤の硬化時において凹部800にエポキシ系接着剤を溜めることができ、もってエポキシ系接着剤の硬化時における自重による流動を防止して、エポキシ系接着剤層31,33の厚さが均一でない等の接着ムラを低減することができる。ここで、板ガラス1,2とH型の鉄板32との接面801にはエポキシ系接着剤が塗布されていてもいなくてもよい。なお、凹部800の深さは鉄板32(減圧空間10)の厚さの50%以下である。
【0057】
また、図9に示すように、板ガラス1,2におけるエポキシ系接着剤層31,33との接合面900に凹部901が形成されていてもよい。なお、この接合面900における凹部901は、板ガラス1,2を削ることにより形成される。これにより、エポキシ系接着剤層31,33の減圧空間10への到達経路長さを長くすることができ、もって減圧空間10への外気透過を低減することができる共に、アンカー効果により鉄板32と板ガラス1,2との接着強度を向上することができる。
【0058】
また、例えば、図10に示すような、矩形状凹部1000を有する板ガラス1,2を用いると、エポキシ系接着剤層31,33の硬化時において矩形状凹部1000にエポキシ系接着剤を溜めることができ、もってエポキシ系接着剤の硬化時における自重による流動を防止して、エポキシ系接着剤層31,33の厚さが均一でない等の接着ムラを低減することができる。ここで、板ガラス1,2と鉄板32との接面1001にはエポキシ系接着剤が塗布されていてもいなくてもよい。」
「
」
(イ)引用文献2記載の技術A
上記(ア)の段落【0034】、【0041】、【0056】及び【0058】並びに図1ないし3、8及び10の記載によれば、次の技術(以下「引用文献2記載の技術A」という。)が記載されていると認められる。
「四角形のガラス板1又は2の周縁部とその周縁部に配置された鉄板32とをエポキシ系接着剤層31又は33により接着した構造において、ガラス板1又は2の周縁部と鉄板32のいずれかにおける接合面の一部分に凹部800又は矩形状凹部1000を形成し、前記凹部800又は矩形状凹部1000を形成する部分は、前記接合面よりも細幅であり、前記凹部800又は矩形状凹部1000に溜めたエポキシ系接着剤により前記ガラス板1又は2の周縁部と前記鉄板32を接着したものとすることにより、接着ムラを低減すること。」
(ウ)引用文献2記載の技術B
上記(ア)の段落【0034】、【0041】、【0055】及び【0057】並びに図1ないし3、7及び9の記載によれば、次の技術(以下「引用文献2記載の技術B」という。)が記載されていると認められる。
「四角形のガラス板1又は2の周縁部とその周縁部に配置された鉄板32とをエポキシ系接着剤層31又は33により接着した構造において、ガラス板1又は2の周縁部と鉄板32の少なくともいずれかにおける接合面に複数の凹部(図7参照。)又は凹部901(図9参照。)を形成し、エポキシ系接着剤により前記ガラス板1又は2の周縁部と前記鉄板32を接着したものとすることにより、アンカー効果により接着強度を向上すること。」
(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
後者の「扉2」は、前者の「扉」に相当し、以下同様に、「冷蔵庫1」は「もの」又は「貯蔵庫」に、「接着する」は「固着する」に、「ドアフレーム5」は「フレーム」に、「外縁部周囲」は「前面板固着部分」に、「接着剤を用いた第二の固定部8」は「接着剤」に、それぞれ相当する。
また、後者の「長方形のガラス板4」は、扉2の前面に備えられたものであるから、前者の「扉の前面板」又は「ガラス製の前面板」に相当する。
そして、後者の「長方形のガラス板4を扉2の前面に備えた冷蔵庫1」は、前者の「扉の前面板をガラスで作製したもの」に相当する。
また、後者の「前記ガラス板4を接着するドアフレーム5」は、前者の「この前面板を固着するフレーム」に相当する。
さらに、後者の「前記ドアフレーム5の外縁部周囲に接着剤を用いた第二の固定部8によって前記ガラス板4を接着した」は、前者の「そのフレームの前面板固着部分の一部分に前記フレームの辺に沿って長く延びる接着剤注入用の溝を形成し、前記溝を形成する部分は、前記前面板固着部分よりも細幅であり、その溝に注入した接着剤により前記フレームに前記前面板を固着した」に、「そのフレームの前面板固着部分において接着剤により前記フレームに前記前面板を固着した」という限りにおいて一致する。
そうすると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「扉の前面板をガラスで作製したものであって、
そのガラス製の前面板と、
この前面板を固着するフレームとを具備し、
そのフレームの前面板固着部分において接着剤により前記フレームに前記前面板を固着した貯蔵庫。」
[相違点A]
「そのフレームの前面板固着部分において接着剤により前記フレームに前記前面板を固着した」ことに関し、本件補正発明においては、「そのフレームの前面板固着部分の一部分に前記フレームの辺に沿って長く延びる接着剤注入用の溝を形成し、前記溝を形成する部分は、前記前面板固着部分よりも細幅であり、その溝に注入した接着剤により前記フレームに前記前面板を固着した」のに対し、引用発明においては、「前記ドアフレーム5の外縁部周囲に接着剤を用いた第二の固定部8によって前記ガラス板4を接着した」ものである点(以下「相違点A」という。)。
(4)判断
ア 相違点Aについて
引用文献2記載の技術Aは、引用発明とは、ガラス板と他の部材とを接着剤により接着する構成において共通し、接着ムラを低減することは接着剤により接着する際の一般的な課題であって、引用発明においても内在する課題である。
そうすると、引用発明において、引用文献2記載の技術Aを適用し、ドアフレーム5(フレーム)の外縁部周囲(前面板固着部分)の一部分に凹部(接着剤注入用の溝)を形成し、前記凹部は、前記外縁部周囲よりも細幅であり、前記凹部に溜めた(注入した)エポキシ系接着剤(接着剤)により前記ドアフレーム5にガラス板4(前面板)を接着(固着)したものとすることは、当業者にとって格別困難ではない。
また、引用発明において、ドアフレーム5の外縁部周囲とガラス板4との接着には、接着ムラの低減が求められること、及び、ドアフレーム5の裏側にインナードアを組み付けた状態でドアフレーム内部にウレタンを注入しウレタン発泡をさせることから(引用文献1の段落【0036】)、シール性が求められることを考慮すると、引用文献2記載の技術Aの適用の際に、ドアフレーム5(フレーム)の外縁部周囲(前面板固着部分)の一部分に形成する凹部(接着剤注入用の溝)を、長方形のガラス板4の辺と対応したドアフレーム5の辺に沿って長く延びるものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、引用発明において、上記相違点Aに係る本件補正発明の構成とすることは、引用文献2記載の技術Aを適用することにより、当業者が容易になし得たことである。
イ 効果について
そして、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献2記載の技術Aから予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
ウ まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成30年6月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
(1)理由2(進歩性)
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2014-52175号公報(原査定において引用文献2として引用)
引用文献2:特開2005-320229号公報(原査定において引用文献3として引用)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2、それらの記載事項、並びに、引用発明、引用文献2記載の技術A及び引用文献2記載の技術Bは、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比
前記第2の[理由]2(3)の検討を踏まえて、本願発明と引用発明とを対比すると、一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「扉の前面板をガラスで作製したものであって、
そのガラス製の前面板と、
この前面板を固着するフレームとを具備し、
そのフレームの前面板固着部分において接着剤により前記フレームに前記前面板を固着した貯蔵庫。」
[相違点B]
「そのフレームの前面板固着部分において接着剤により前記フレームに前記前面板を固着した」ことに関し、本願発明においては、「そのフレームの前面板固着部分に前記フレームの辺に沿って長く延びる接着剤注入用の溝を形成し、その溝に注入した接着剤により前記フレームに前記前面板を固着した」のに対し、引用発明においては、「前記ドアフレーム5の外縁部周囲に接着剤を用いた第二の固定部8によって前記ガラス板4を接着した」ものである点(以下「相違点B」という。)。
5 判断
(1)相違点Bについて
引用文献2記載の技術Bは、引用発明とは、ガラス板と他の部材とを接着剤により接着する構成において共通し、接着強度を向上することは接着剤により接着する際の一般的な課題であって、引用発明においても内在する課題である。
そうすると、引用発明において、引用文献2記載の技術Bを適用し、ドアフレーム5(フレーム)の外縁部周囲(前面板固着部分)に複数の凹部(接着剤注入用の溝)を形成し、前記複数の凹部に塗布された(注入した)エポキシ系接着剤(接着剤)により前記ドアフレーム5にガラス板4(前面板)を接着(固着)したものとすることは、当業者にとって格別困難ではない。
また、引用発明において、ドアフレーム5の外縁部周囲とガラス板4との接着には、ドアフレーム5の裏側にインナードアを組み付けた状態でドアフレーム内部にウレタンを注入しウレタン発泡をさせることから(引用文献1の段落【0036】)、シール性が求められることを考慮すると、引用文献2記載の技術Bの適用の際に、ドアフレーム5(フレーム)の外縁部周囲(前面板固着部分)に形成する凹部(接着剤注入用の溝)を、長方形のガラス板4の辺と対応したドアフレーム5の辺に沿って長く延びるものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、引用発明において、上記相違点Bに係る本願発明の構成とすることは、引用文献2記載の技術Bを適用することにより、当業者が容易になし得たことである。
さらに、本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明において、接着剤注入用の溝を形成する部分について、「そのフレームの前面板固着部分の一部分」であったのを、「そのフレームの前面板固着部分」に上位概念化し、また、「前記溝を形成する部分は、前記前面板固着部分よりも細幅であり」という発明特定事項を削除したものである。
そうすると、前記第2の[理由]2(4)アの検討を踏まえれば、引用発明において、上記相違点Bに係る本願発明の構成とすることは、引用文献2記載の技術Aを適用することにより、当業者が容易になし得たことである。
(2)効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献2記載の技術Bから、又は、引用発明及び引用文献2記載の技術Aから予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術Bに基いて、又は、引用発明及び引用文献2記載の技術Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-001152