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特許拒絶査定不服審判

2022-001033

冷蔵庫

審判番号
2022-001033
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-077225
請求日
2022年01月24日
審決日
2022年10月19日
公報発行日
2023年01月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】東芝ライフスタイル株式会社
  • 【請求人代理人】三好 秀和
審判長/審判官
  • 審判長 松下 聡
  • 審判官 西村 泰英
  • 審判官 丹治 和幸
分類
P18 .561-Z (F25D) / P18 .575-Z (F25D) / P18 .121-Z (F25D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-77225「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔令和2年7月27日出願公開、特開2020-112353〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成27年7月29日に出願した特願2015-149318号の一部を令和2年4月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 3年 4月12日付け:拒絶理由通知書 同 年 7月 9日 :意見書、手続補正書の提出 同 年10月 4日付け:拒絶査定 令和 4年 1月24日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和4年1月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年1月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 本体と、 鋼板製の前面板を有し、前記本体の前面開口部に設けられた扉と、 冷蔵庫の制御操作用の操作部と、 を備え、 前記扉の左右方向の一端部が、上下方向に沿って延びる回転軸により回動可能に前記本体に取り付けられ、 前記扉の下辺部には、前記操作部が前記前面板に隣接して配置され、 前記前面板の下辺部は、左右方向の一端から他端にかけて水平方向に沿って形成され、 前記操作部には、冷却に関する機能を選択する機能選択部と、開扉操作用の開扉操作部とが水平方向に並べて配置され、 前記開扉操作部は、前記機能選択部よりも前記扉の左右方向の他端側に配置される冷蔵庫。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和3年7月9日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 本体と、 鋼板製の前面板を有し、前記本体の前面開口部に設けられた扉と、 冷蔵庫の制御操作用の操作部と、 を備え、 前記扉の下辺部には、前記操作部が前記前面板に隣接して配置され、 前記前面板の下辺部は、左右方向の一端から他端にかけて水平方向に沿って形成されている冷蔵庫。」 2.補正の適否 (1)本件補正事項 本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記1(1)に記載したとおりのものであり、「冷蔵庫の制御操作用の操作部と、」とあることから、「操作部」は、「冷蔵庫の制御操作用」のものである。そして、本件補正により、「前記操作部には、冷却に関する機能を選択する機能選択部と、開扉操作用の開扉操作部とが水平方向に並べて配置され、」という事項が追加された。 (2)当初明細書等に記載された事項 本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、「冷蔵庫の制御操作用」の「操作部」について、【0021】に「図1に示すように、左開扉操作部61が、左側の扉7の下辺部7Pに配置され、右開扉操作部62が、右側の扉8の下辺部8Pに配置されている。しかも、操作パネル部70が右側の扉8の下辺部8Pに配置されている。」と記載されており、「操作パネル部70」と「右開閉操作部62」とが【図1】の右側の扉8の下辺部8Pに別個に配置されているとしている。 また、「操作パネル部70」について、当初明細書等の請求項1には「前記扉の下辺部には、制御操作用の操作パネル部が前記前面板に隣接して配置されている」と記載されているとともに、当初明細書等の【0028】には「図3に示す操作パネル部70は、機能選択部80と、表示部110を有する。この機能選択部80は、使用者の指が接近するか接触することで、静電容量の変化を検知して、冷蔵庫1の本体1Aの機能、例えば冷蔵に関する機能や、冷凍に関する機能等を、適宜選択することができる。表示部110は、本体1Aの機能、例えば冷蔵に関する機能や冷凍に関する機能等の各種の表示項目を、点灯することで表示することができる。右開扉操作部62と操作パネル部70の前面側は、透明か半透明の前面カバー部材55により覆われている。」と記載されており、本件補正発明の「操作部」は「冷蔵庫の制御操作用」と特定されていることから見て、当該「操作部」に対応するものは、当初明細書等では「機能選択部80」を含む「操作パネル部70」を指し、「右開閉操作部62」は、「冷蔵庫の制御操作用」とはいえない、単に右扉の開閉を操作する部材とされていることが明らかである。また、当初明細書等には、「開扉操作部」に関して、これを「冷蔵庫の制御操作用」とした記載は見当たらない。 してみると、本件補正により「冷蔵庫の制御操作用の操作部」に対して「前記操作部には、冷却に関する機能を選択する機能選択部と、開扉操作用の開扉操作部とが水平方向に並べて配置され」を追加し、「操作部」の一部に「開扉操作部」が含まれるとする補正は、当初明細書等の記載に基づくものではない。 そして、上記補正により追加された「操作部」の一部に「開扉操作部」が含まれるとした事項は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 (3)予備的検討 なお、仮に、本件補正発明における上記「操作部」が、「開扉操作部」を含むものとして検討すると、「扉」に関して「前記扉の左右方向の一端部が、上下方向に沿って延びる回転軸により回動可能に前記本体に取り付けられ」たことを限定し、「操作部」に関して「前記操作部には、冷却に関する機能を選択する機能選択部と、開扉操作用の開扉操作部とが水平方向に並べて配置され」、「前記開扉操作部は、前記機能選択部よりも前記扉の左右方向の他端側に配置され」ることを限定した本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正発明が独立特許要件を有するものであるかについてさらに検討する。 ア 文献記載事項、引用発明 a 原審で引用された文献の記載事項、引用発明 本願の原出願の出願日(特願2015-149318号の出願日である平成27年7月29日)前に公知とされ、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、特開2004-44980号には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審が付与した。以下同様。) 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、冷蔵庫扉に係り、特に前面に操作表示パネルなどを配置した扉化粧板を設けた扉構成に関する。 ・・・ 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0005】 またパネルボックス(50)と前面板(56)との係合部、あるいはパネルボックス(50)と操作パネル(63)やタッチパネル(62)との隙間が変形により不均一となるとともに、各々のパネルは個々に取り付けられているため前後左右の段差や間隔が不均一になって外観を損ねることになり、さらに水が浸入しやすくなるためシール材を必要とし、コストアップや組立作業の煩雑化を招いていた。 【0006】 本発明は、上記点を考慮してなされたもので、操作パネルやタッチパネルを断熱材の発泡圧力の影響を受けない構成とし、隙間のばらつきや段差のない良好で斬新な扉表面の外観を得るとともに、操作スイッチなどの動作の安定化をはかった冷蔵庫扉を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために、請求項1記載の発明による冷蔵庫扉は、扉本体を形成する前面板と、この前面板の庫内側に配置した扉内板との間に発泡充填された断熱材と、前面板端面の切欠部に設けられ断熱材側への凹陥部を形成して断熱材側を閉塞する扉キャップと、この扉キャップの前方に収納空間を有して係合固着され扉の全幅に亙って配設された扉化粧板と、扉化粧板の前面パネル部に配置した開扉操作ユニットあるいは制御表示ユニットとからなり、前記ユニットを取り付けてあらかじめ一体化した扉化粧板を、断熱材充填後における扉キャップ部に固定したことを特徴とするものである。 【0008】 上記により、扉化粧板は発泡圧の影響を受けて変形することがなく、表示あるいは操作部品は安定した動作が得られるとともに、扉表面を構成する各部品間の隙や段差を小さく均一にすることができ、冷蔵庫の表面意匠を向上させることができる。また外部からの水滴の浸入も防止することができる。」 「【0011】 【発明の実施の形態】 以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。図1にその外観正面図を示す冷蔵庫本体(1)は、最上部に冷蔵食品を収納貯蔵する冷蔵室(2)を設け、その下部に、野菜室(3)や冷凍室(4)など所定の貯蔵温度に沿った貯蔵室を配置し、それぞれの前面開口には扉を配設するとともに、前記冷蔵室(2)の前面開口には、ヒンジにより一側を冷蔵庫本体側に枢支した扉(5)を取り付けている。 【0012】 冷蔵室扉(5)は、図2、図3に示すように、外表面を薄鋼板からなり左右両側縁を後方へほぼコ字状に折曲した前面板(6)で形成しており、この前面板(6)の下端に下端開口を閉塞する扉キャップ(7)を設けるとともに、扉(2)の冷蔵室内側には、内方に貯蔵品を収納するポケット部(8)を形成する扉内板(9)を配置して、これら各部材間に形成される空間部にウレタンフォームからなる断熱材(10)を発泡充填することで構成されている。 ・・・ 【0015】 (12)は扉化粧板であり、構成部品の分解図である図4あるいは制御表示パネル部の組み込み状態を示す図5、および扉化粧板単体の裏面図である図6に示すように、前記扉キャップ(7)によって形成された凹陥部(11)を覆うように前面板(6)の台形の切欠部(6a)に沿った外周縁部を有し、下面は冷蔵室扉(5)の下方部を形成するもので、その前面を冷蔵庫の運転を制御する操作や表示、あるいは開扉操作のためのパネル部としたものである。」 「【0020】 この扉化粧板(12)の段差部(12f)への表示パネル(20)の被着は、射出成形した樹脂成型品同士であり、寸法精度が高く係合できるため、開口(12a)周囲との隙間を極小にできるものであり、外観を良好にして、且つ、表示パネル(20)を扉化粧板(12)と面一に配置固定できる。また、隙間が小さくなることにより、外部からの水滴の浸入も防止することができ、防水用のシール材を不要とすることができる。 【0021】 表示パネル(20)の下方には、押しボタン(21)を装着されている。この押しボタン(21)は、プリント配線基板(18)に固定したスイッチ部(18a)に対応し、外部からの押圧操作で冷蔵庫内の温度調整や急速冷凍など所定の制御動作をおこなうものである。 【0022】 また、他方の扉開放側の開口(12b)には、図7に示すように、冷蔵室扉(5)を開くために手指のタッチ押圧で操作されるタッチパネル(23)を表示パネル(20)に隣接して配置する。 【0023】 タッチパネル(23)は、冷蔵庫本体(1)における反ヒンジ側の上部に設けた図示しない扉開放ユニットのソレノイドに連動しており、所定の幅および高さ寸法を有する平板から形成されて使用者の押圧タッチ操作により、信号動作部である押釦スイッチを付勢してソレノイドを励磁し、突出ピンの前方への突出により扉の端面を押圧してこれを開放させるものである。」 「【0031】 次に上記構成の組立手順について説明する。前面板(6)の下端に扉キャップ(7)を設け、庫内側に扉内板(9)を配して形成される各部材間の空間部にウレタンフォーム断熱材(10)の原液を注入し、発泡充填することで、断熱扉本体(5)を形成する。 【0032】 一方、扉化粧板(12)の一方の開口(12a)には、裏面側に係止爪(17a)や係止部(12c)を利用して液晶表示パネル(14)や押しボタン(21)およびプリント配線基板(18)からなる制御表示ユニット(13)を取着するとともに、前面からは表示パネル(20)を開口(12a)に配置して固定し、さらに、他方の開口(12b)にはあらかじめ一体化された開扉操作ユニット(22)を係合固着して一体化する。 【0033】 そして、前記ユニット(13)(22)を取り付けてあらかじめ一体化した扉化粧板(12)を、断熱材(10)の充填後における扉キャップ(7)の凹陥部(11)に係合片(12h)や係合凸部(7b)を利用して取着し、底面(12i)を扉キャップ(7)の段部に係合してネジ固定することで組立を完了する。 【0034】 上記構成により、扉化粧板(12)は、前面板(6)のみならず、表示パネル(20)やタッチパネル(23)の外表面の高さとも同一面となり、冷蔵庫表面意匠として、ディスプレイ表示パネル部や開扉操作パネル部を有しながら、化粧板部分に段差や隙間のない斬新な外観デザインを得ることができるものである。」 【図1】 [図:0001392856000001.jpg] 【図3】 [図:0001392856000002.jpg] 【図4】 [図:0001392856000003.jpg] 上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 (a) 冷蔵庫本体(1)は、冷蔵室(2)を設け、冷蔵室(2)の前面開口には、ヒンジにより一側を冷蔵庫本体側に枢支した扉(5)を取り付けて、冷蔵室扉(5)は、外表面を薄鋼板からなる前面板(6)で形成している。 (b) 当該冷蔵庫の冷蔵室扉(5)の前面板(6)の下方には、冷蔵庫内の温度調整や急速冷凍など所定の制御動作をおこなう押しボタン(21)を装着した表示パネル(20)と、冷蔵室扉(5)を開くための操作をされるタッチパネル(23)と、が互いに隣接して水平方向に配置されるように両パネル(20,23)を受け入れる開口(12a、12b)を備えた扉化粧板(12)を備える。 (c) 扉化粧板(12)の外形形状は、図1の図示から、横方向の幅が扉(5)の前面から見た横幅と一致した底辺を有し、上辺は前面板(6)の下端の台形の切欠部(6a)に沿った外周縁部と下面が冷蔵室扉(5)の下方部との双方を形成するようにした下端開口に沿った形状であり、取付後の外観は一体として長方形の冷蔵室扉(5)として見えるものである。 上記(a)~(c)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「冷蔵庫本体(1)と、 薄鋼板からなる前面板(6)を有し、冷蔵庫本体(1)の前面開口にヒンジにより一側を冷蔵庫本体側に枢支した扉(5)と、 冷蔵庫内の温度調整や急速冷凍など所定の制御動作をおこなう押しボタン(21)を装着した表示パネル(20)と、冷蔵室扉(5)を開くための操作をされるタッチパネル(23)と、が互いに隣接して水平方向に配置されるように両パネル(20,23)を受け入れる開口(12a、12b)を備え、前記表示パネル(20)と前記タッチパネル(23)とが一体的に組立られた扉化粧板(12)と、 を備える冷蔵庫であって、 前記前面板(6)の下端は、台形の切欠部(6a)に沿った外周縁部と下面が冷蔵室扉(5)の下方部との双方を形成するようにした下端開口を有するように形成され、 前記扉化粧板(12)は、その上辺が、前記下端開口に沿った形状でありかつ底辺の横方向の幅が扉(5)の前面から見た横幅と一致した水平の形状とされて、前記前面板(6)に取着して組立られ、取付後の外観は一体として長方形の冷蔵室扉(5)として見える、冷蔵庫。」 b 周知文献の記載事項 (a)周知例1 本願の原出願の出願日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2006-71232号公報(平成18年3月16日公開。以下、「周知例1」という。)には、次の記載がある。 「【0011】 (第1の実施の形態) 図1から図6は、第1の実施の形態に係る冷蔵庫を示している。 先ず、図1を参照してこの実施の形態に係る冷蔵庫の概略構造を説明する。図1は、この実施の形態に係る冷蔵庫の概略説明図である。図1において、符号1で総括的に示す冷蔵庫は、温度帯の異なる複数の貯蔵室を上下に積層した冷蔵庫である。この冷蔵庫1は、前方が開放した筐体を図示しない仕切壁で分割し、その分割された複数の貯蔵室の前面に開閉ドアまたは引出ドアを備えることで、複数の密閉された貯蔵室を構成している。また、前記筐体には、図示しない圧縮機、熱交換器、送風フアン、ダンパ、制御部などの冷凍サイクル装置や温度調整機構を備えて、前記各貯蔵室の温度を一定に保っている。 【0012】 例えば、この実施の形態では、最上部に冷蔵室10、その下部に野菜室20、その下部に製氷室30と第2冷凍室40、その下部に第1冷凍室50を配置している。更に、前記冷蔵室10の前面には観音開きの第1開閉ドア12と第2開閉ドア13とから構成される開閉ドア11が取付けられている。また、前記野菜室20、製氷室30、第2冷凍室40、第1冷凍室50には、各貯蔵室内に上部が開放した図示しない食品収納容器を備えた引出ドア21、31,41,51が取付けられている。前記開閉ドア11は、両側上下に設けた図示しないヒンジを介して観音開きで開放可能であり、他の引出ドアは前後方向に引き出すことができる。」 【図1】 [図:0001392856000004.jpg] 【図2】 [図:0001392856000005.jpg] 上記記載から、周知例1には、次の技術的事項が記載(以下、「周知例1記載事項」という。)されていると認められる。 「冷蔵庫の前板100の下方に操作スイッチ104を備える横長長方形の表示パネル103を設け、前板100の下辺部が左右方向の一端から他端にかけて直線状に水平方向に沿って形成された冷蔵庫」 (b)周知例2 本願の原出願の出願日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2007-298242号公報(平成19年11月15日公開。以下、「周知例2」という。)には、次の記載がある。 「【0002】 近年、冷蔵庫においては、貯蔵温度帯の多様化とともに使い勝手の面から、本体の前面開口を閉塞する冷蔵室扉などの前面に温度制御のための操作表示パネルや、大収納量化により重くなった扉を自動的に開扉する扉開放装置用のタッチ操作パネルなどを扉表面に配設したものが商品化されており、この種冷蔵庫は、図8に示すように、例えば、冷蔵室扉(57)の表面(58)に液晶表示装置(以下、「LCD」という。)(66)を配設し、押釦スイッチ(67)により貯蔵室内の温度設定など各種機能の駆動停止を制御するように構成されている。」 【図8】 [図:0001392856000006.jpg] 「【0007】 以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。図1にその外観正面図を示す冷蔵庫本体(1)は、最上部に冷蔵食品を収納貯蔵する冷蔵室(2)を設け、その下部に製氷室(3)や温度切替室(4)などの小容量の室を併置し、さらにその下部に、野菜室(5)や冷凍室(6)など所定貯蔵温度に沿った貯蔵室を配置しており、それぞれの貯蔵室の前面開口には扉を配設するとともに、前記冷蔵室(2)の前面開口には、ヒンジにより外方の一側を冷蔵庫本体側に枢支した回動式の冷蔵室扉(7)を取り付けている。 ・・・ 【0009】 前記前面板(8)の下方は、扉(7)のほぼ全幅に亙って所定の高さ寸法の方形に切り欠き、この切欠部(8a)の端面に、扉キャップ(9)や表示パネル(12)の上端縁に形成した係合溝を嵌入して係止している。 ・・・ 【0011】 表示パネル(12)は、透明の合成樹脂板で形成されており、前記前面板(8)の切欠部(8a)に沿った外周縁部を形成するもので、後述するLCD表示部(16)の外面周囲を覆う意匠部材であり、この表示パネル(12)の下縁は扉キャップ(9)の端縁と係合させるようにしている。 【0012】 前記LCD表示部(16)は、冷蔵庫の各種機能の設定状態を表示するように形成されており、その前面側に表示パネル(12)が配置される構成であって、表示パネル(12)の裏面側には、図4のように、LCD表示部(16)の表示内容に合わせた形のフィルム型の静電容量形近接スイッチ(以下、「静電スイッチ」という。)(17)を貼り付けている。 【0013】 この静電スイッチ(17)は、検出電極に物体が接近したときの電極の静電容量の変化を検出して動作するスイッチである。すなわち、絶縁された導体である手指などの物体が検出電極に接近することにより直接検出される静電容量が増加し、さらに物体の対地間容量、センサの回路や配線あるいは電源の対地間容量が前記直接検出容量に対して直列の容量として入ることで検出容量が増加して、検出される静電容量が変化することになり、この変化を検出して動作するものである。 【0014】 この静電スイッチ(17)は、例えば、冷蔵室(2)の設定温度表示部(16a)や冷凍室(6)の設定温度表示部(16b)に対応する位置に検知電極(17a)(17b)を配置し、また、温度切替室(4)の設定温度雰囲気を切り替える温度切替部(16c)や急速冷凍や急速製氷などの急速運転をおこなう急速制御部(16d)にも対応して検知電極(17c)(17d)を設置するようにし、設置した検知電極(17a)~(17d)に手指が触れることで、冷蔵室(2)や温度切替室(4)などの設定温度を変更したり、急速運転をおこなうように制御する。」 【図1】 [図:0001392856000007.jpg] 【図2】 [図:0001392856000008.jpg] 上記記載から、周知例2には、次の技術的事項(以下、「周知例2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「冷蔵庫の冷蔵室扉(7、57)の、前面板(8)もしくは表面(58)の下方に、横長長方形の部材の中に静電スイッチ(17)もしくは押釦操作スイッチ(67)を備え、前面板(8)、表面(58)の下辺部がいずれも左右方向の一端から他端にかけて直線状に水平方向に沿って形成された冷蔵庫」 (c)周知例3 本願の原出願の出願日前に公知となった、特開2005-201572号公報(以下、「周知例3」という。)には、次の記載ないし図示がある。 「【0002】 近年、冷蔵庫における温度調節装置は、貯蔵室の前面開口を閉塞する扉の表面に配置する構成が多く、図7に示すように、冷蔵庫本体(51)の最上部に配置した冷蔵室(54)の前面開口を開閉自在に閉塞する扉(57)を設け、この扉(57)の外表面を形成する扉面材(57a)の下方開口を下キャップ(57c)で閉塞するとともに、下方前面の切欠き部には操作パネル(61)を形成している。 【0003】 操作パネル(61)の中央部分には、扉面材(57a)とほぼ同一面となる動作状態や貯蔵庫内温度を表示する液晶表示部(61a)を配設しており、その下方には庫内温度の調整など制御のための押釦(61b)を挿着している。また、操作パネル(61)の側部には、本体上部に設けた扉開放ユニットのソレノイド(62)に通電して動作させるタッチ操作用の操作板(61c)を配置している。」 【図7】 [図:0001392856000009.jpg] 図7に図示された冷蔵庫の図示では、扉57の上端右側に、冷蔵庫本体51の筐体上面との間に長方形の部材が掛け渡されており、技術常識から考えると、扉57の回動開閉を果たすヒンジ部材であると看取できる。この理解は、扉51の左上端に扉開放ユニットのソレノイド62が存在することから、扉51の開放は図面の左側が動いてなされることが明らかな点からも合致する。 そして、扉を開放するためのタッチ操作用の操作板61cは、制御のための押釦61bに対して、扉にヒンジが設置されている側とは左右方向で他端側に配置されている。 上記記載と図7の図示と図面から看取できる事項とを総合すると、周知例3には次の技術的事項(以下、「周知例3記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「冷蔵庫本体51の前面扉57の外表面を形成する扉面材57aの下方に横長長方形の切り欠き部を設け、該切り欠き部に温度調節用の操作パネル61を付け、 該操作パネル61には、中央に液晶表示部61aと、該液晶表示部61aの下方に庫内温度の調整など制御のための押釦61bが配設され、 扉を開放するためのタッチ操作用の操作板61cは、制御のための押釦61bに対して、扉にヒンジが設置されている側とは左右方向で他端側に配置されていること。」 イ 本件補正発明と引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「冷蔵庫本体(1)」は、本件補正発明の「本体」に相当する。 また、引用発明の「薄鋼板からなる前面板(6)を有し、冷蔵庫本体(1)の前面開口にヒンジにより一側を冷蔵庫本体側に枢支した扉(5)」は、本件補正発明の「鋼板製の前面板を有し、前記本体の前面開口部に設けられた扉」でありかつ、「前記扉の左右方向の一端部が、上下方向に沿って延びる回転軸により回動可能に前記本体に取り付けられ」ることに相当する。 さらに、引用発明の「冷蔵庫内の温度調整や急速冷凍など所定の制御動作をおこなう押しボタン(21)」は、本件補正発明の「冷蔵庫の制御操作用の操作部」に、引用発明の「冷蔵室扉(5)を開くための操作をされるタッチパネル(23)」は、本件補正発明の「開扉操作用の開扉操作部」に、それぞれ相当する。 加えて、引用発明の「扉化粧板(12)」が「冷蔵庫内の温度調整や急速冷凍など所定の制御動作をおこなう押しボタン(21)を装着した表示パネル(20)と、冷蔵室扉(5)を開くための操作をされるタッチパネル(23)と、が互いに隣接して水平方向に配置される」よう「前記表示パネル(20)と前記タッチパネル(23)とが一体的に組立」られていることは、本件補正発明の「前記操作部には、冷却に関する機能を選択する機能選択部と、開扉操作用の開扉操作部とが水平方向に並べて配置され」るとした事項にも相当する。 そして、引用発明は、「前記扉化粧板(12)は、その上辺が、前記下端開口に沿った形状でありかつ底辺の横方向の幅が扉(5)の前面から見た横幅と一致した水平の形状とされて、前記前面板(6)に取着して組立られ、取付後の外観は一体として長方形の冷蔵室扉(5)として見える」ものであって、「扉化粧板(12)」は、「冷蔵庫内の温度調整や急速冷凍など所定の制御動作をおこなう押しボタン(21)を装着した」「前記表示パネル(20)」と「前記タッチパネル(23)」とが一体的に組立られたものであるから、本件補正発明における「前記扉の下辺部には、前記操作部が前記前面板に隣接して配置され」る構成を備えるものである。 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「本体と、 鋼板製の前面板を有し、前記本体の前面開口部に設けられた扉と、 冷蔵庫の制御操作用の操作部と、 を備え、 前記扉の左右方向の一端部が、上下方向に沿って延びる回転軸により回動可能に前記本体に取り付けられ、 前記扉の下辺部には、前記操作部が前記前面板に隣接して配置され、 前記操作部には、冷却に関する機能を選択する機能選択部と、開扉操作用の開扉操作部とが水平方向に並べて配置される 冷蔵庫。」 【相違点1】 本件補正発明は、「前記前面板の下辺部は、左右方向の一端から他端にかけて水平方向に沿って形成され」るのに対し、引用発明の「前面板(6)」の下端は、水平方向に沿った形状ではない点。 【相違点2】 本件補正発明は、「前記開扉操作部は、前記機能選択部よりも前記扉の左右方向の他端側に配置される」のに対し、引用発明の「押しボタン(21)を装着した表示パネル(20)」と「冷蔵室扉(5)を開くための操作をされるタッチパネル(23)」とは互いに隣接するものの、扉の開閉される側に対して当該両パネル(20,23)がどのように配置されるかは不明である点。 ウ 判断 そこで、上記相違点1、2について検討する。 相違点1について 上記相違点1に係る本願発明の特定事項は、令和3年7月9日の手続補正により導入されたものであり、同日に提出された意見書の1.には、係る補正の根拠に関し以下の説明がなされている。 <意見書1.より抜粋> 「・・・『前記前面板の下辺部は、左右方向の一端から他端にかけて水平方向に沿って形成されている』との補正は、段落[0015]、[0021]の記載、並びに[図1]の記載内容に基づくものであります。・・・」 そして、補正の根拠とされている明細書の【0015】及び【0021】には次の記載がある。 「【0015】 図1と図2に示すように、左右の扉7,8,と引出し式の扉9,10,11,12の各前面(外面)には、金属製の前面側の板、好ましくは鋼板製の前面板7A,8A,9A,10A,11A,12Aが配置されている。」 「【0021】 <左開扉操作部61と右開扉操作部62と操作パネル部70> 図1に示すように、左開扉操作部61が、左側の扉7の下辺部7Pに配置され、右開扉操作部62が、右側の扉8の下辺部8Pに配置されている。しかも、操作パネル部70が右側の扉8の下辺部8Pに配置されている。この下辺部7P,8Pは、冷蔵庫1のX方向(水平方向)に沿ったベルトラインとも呼ばれている下辺領域部分である。なお、冷蔵庫1の左右方向の幅方向がX方向であり、奥行き方向がY方向であり、そして上下方向がZ方向で示している。」 【図1】(冷蔵庫の全体を示す正面図:【図面の簡単な説明】より) [図:0001392856000010.jpg] 以上の記載及び図1の図示を総合すると、本件補正発明の相違点1に係る事項にある「前面板の下辺部」とは、扉7,8の下端領域を指し、加えて、【0021】の「この下辺部7P,8Pは、冷蔵庫1のX方向(水平方向)に沿ったベルトラインとも呼ばれている下辺領域部分である。なお、冷蔵庫1の左右方向の幅方向がX方向であり、奥行き方向がY方向であり、そして上下方向がZ方向で示している。」とされていることから見て、 “ベルトラインとも呼ばれる冷蔵庫扉の下端にある領域を、前面板の下辺部という”と解される。 そうすると、相違点1に係る本件補正発明を特定しようとする「前面板の下辺部は、左右方向の一端から他端にかけて水平方向に沿って形成されている」とは、 “前面板の下辺部は、前面板の下端領域の箇所を、前面板を正面から見た場合、扉の右端から左端に向けて水平方向に横長の長方形の形で形成されている”と解される。 これらの理解は、本件明細書の【発明が解決しようとする課題】に示された、操作パネルを兼ねた表示パネルが扉の前面板の中間位置に縦長の長方形形状で配置されたことによる外観デザイン上好ましくないとされた課題を、操作部が配置される領域を上述の「前面板の下辺部」に定めることにより解決したとの考えに合致し、解釈上特段の齟齬を生じないと認められる。 当該理解に沿って、引用発明の「前面板(6)」の下端領域における「押しボタン(21)」が配置される部材の外観形状を見ると、引用文献1の【図1】、【図3】、【図4】中の「扉化粧板(12)」の形状は、扉(5)の右端から左端に向けて水平方向には形成されているものの、その形状は横長の長方形の形とはいえないため、当該相違点1に係る相違は実質的な相違と認められる。 しかしながら、冷蔵庫の扉に操作部を設けるに当たり、扉の右端から左端に向けて水平方向に横長の長方形の形で形成された領域内を選んで操作部を設けるとすることは、上記周知例1記載事項や周知例2記載事項に見られるように、本願の出願前に当業者がなし得た周知の技術的事項に過ぎない。 そうすると、当該相違点1に係る事項は、当業者が引用発明及び周知の技術的事項に基いて、容易になし得たものと認められる。 相違点2について 上記相違点2に係る事項は、上記周知例3記載事項と同様の配置に過ぎず、同様に、当該相違点2に係る事項は、当業者が引用発明及び周知の技術的事項に基いて、容易になし得たものと認められる。 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ 小括 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、同法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、仮に同法第17条の2第3項の規定に適合するものであったとしても、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 令和4年1月24日に審判請求と同時にした手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和3年7月9日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~6に係る発明は、原出願の出願日に遡及した本願の出願の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 引用文献1.特開2004-44980号公報(上記第2の2.(3)アaと同じ) 3.引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2.(3)アのaに記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2.(3)で検討した本件補正発明から、「前記扉の左右方向の一端部が、上下方向に沿って延びる回転軸により回動可能に前記本体に取り付けられ、」、「前記操作部には、冷却に関する機能を選択する機能選択部と、開扉操作用の開扉操作部とが水平方向に並べて配置され、」、及び、「前記開扉操作部は、前記機能選択部よりも前記扉の左右方向の他端側に配置される」とした限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2.(3)に記載したとおり、引用発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-001033

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