特許拒絶査定不服審判
2021-011037
冷凍機
- 審判番号
- 2021-011037
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-542862
- 請求日
- 2021年08月19日
- 審決日
- 2022年06月01日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱電機株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 松下 聡
- 審判官 槙原 進
- 審判官 平城 俊雅
- 分類
- P18 .121-Z (F25D) / P18 .575-Z (F25D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-542862「冷凍機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月28日国際公開、WO2019/058450〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年9月20日を国際出願日とする出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。
令和2年3月19日に上申書及び手続補正書の提出
令和2年12月24日付けで拒絶理由通知
令和3年2月10日に意見書及び手続補正書の提出
令和3年3月16日付けで最後の拒絶理由通知
令和3年4月22日に意見書及び手続補正書の提出
令和3年6月15日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年8月19日に拒絶査定不服審判の請求及びその請求と同時に手続補正書の提出
第2 令和3年8月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年8月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、本件補正前に下記(2)のとおりであった特許請求の範囲の記載を、下記(1)のとおり補正するものである。
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
「【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張装置、および冷却器が冷媒配管によって接続された冷媒回路と、
冷却対象物を収容する第1の貯蔵室と、
前記冷却器を通過した空気を前記第1の貯蔵室に送るファンと、
前記第1の貯蔵室の温度を検出する第1温度センサと、
前記冷却器の温度を検出する第2温度センサと、
前記第1の貯蔵室と第2の貯蔵室と第3の貯蔵室とを含む複数の貯蔵室とを備え、
前記冷却器から前記第2の貯蔵室を塞ぐ(審決注:「繋ぐ」の誤記である。)風路の途中にダンパーが設けられ、
前記冷却器から前記第3の貯蔵室を塞ぐ(審決注:「繋ぐ」の誤記である。)風路の途中に前記ダンパーが設けられ、
前記冷却器から前記第1の貯蔵室までの風路には前記ダンパーが設けられておらず、
前記第1の貯蔵室は、前記複数の貯蔵室のうちの最も設定温度が低い貯蔵室であり、
前記膨張装置は、開度を全閉にすることが可能に構成され、前記圧縮機の停止中には開度が全閉とされ、
前記ファンは、前記圧縮機が停止中、かつ前記第1温度センサの検出温度から前記第2温度センサの検出温度を引いた温度差が第1裕度よりも大きい場合には、運転を継続し、
前記ファンは、前記圧縮機の停止中において、前記温度差が前記第1裕度よりも大きい状態から小さい状態に遷移すると運転を停止し、
前記ファンは、前記圧縮機が運転中、かつ前記温度差が第2裕度よりも小さい場合には、運転を停止し、
前記ファンは、前記圧縮機が運転中において、前記温度差が前記第2裕度よりも小さい状態から大きい状態に遷移すると、運転を開始し、
前記膨張装置は、
複数のキャピラリチューブと、
前記キャピラリチューブに連通する冷媒配管を開閉可能な流路切替弁とを含み、
前記流路切替弁は、前記複数のキャピラリチューブのいずれかを選択することにより冷媒の流路を切り換えるように構成されている、冷凍機。
【請求項2】
前記膨張装置を通過する冷媒と、前記圧縮機の吸入配管との間で冷媒同士が熱交換を行なう熱交換器をさらに備える、請求項1に記載の冷凍機。
【請求項3】
前記膨張装置は、前記圧縮機の停止期間中に加えて、前記圧縮機が運転中において前記第1温度センサの検出温度が前記第2温度センサの検出温度より高い期間は全閉状態を継続する、請求項1または2に記載の冷凍機。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和3年4月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張装置、および冷却器が冷媒配管によって接続された冷媒回路と、
冷却対象物を収容する第1の貯蔵室と、
前記冷却器を通過した空気を前記第1の貯蔵室に送るファンと、
前記第1の貯蔵室の温度を検出する第1温度センサと、
前記冷却器の温度を検出する第2温度センサとを備え、
前記膨張装置は、開度を全閉にすることが可能に構成され、前記圧縮機の停止中には開度が全閉とされ、
前記ファンは、前記圧縮機が停止中、かつ前記第1温度センサの検出温度から前記第2温度センサの検出温度を引いた温度差が第1裕度よりも大きい場合には、運転を継続し、
前記ファンは、前記圧縮機の停止中において、前記温度差が前記第1裕度よりも大きい状態から小さい状態に遷移すると運転を停止し、
前記ファンは、前記圧縮機が運転中、かつ前記温度差が第2裕度よりも小さい場合には、運転を停止し、
前記ファンは、前記圧縮機が運転中において、前記温度差が前記第2裕度よりも小さい状態から大きい状態に遷移すると、運転を開始し、
前記膨張装置は、
複数のキャピラリチューブと、
前記キャピラリチューブに連通する冷媒配管を開閉可能な流路切替弁とを含み、
前記流路切替弁は、前記複数のキャピラリチューブのいずれかを選択することにより冷媒の流路を切り換えるように構成されている、冷凍機。
【請求項2】
前記冷凍機は、複数の貯蔵室を備え、
前記第1の貯蔵室は、前記複数の貯蔵室のうちの最も設定温度が低い貯蔵室である、請求項1に記載の冷凍機。
【請求項3】
前記膨張装置を通過する冷媒と、前記圧縮機の吸入配管との間で冷媒同士が熱交換を行なう熱交換器をさらに備える、請求項1または2に記載の冷凍機。
【請求項4】
前記膨張装置は、前記圧縮機の停止期間中に加えて、前記圧縮機が運転中において前記第1温度センサの検出温度が前記第2温度センサの検出温度より高い期間は全閉状態を継続する、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷凍機。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項2を本件補正後の請求項1としたうえでさらに限定を行ったものであり、具体的には、本件補正前の請求項2に記載された、「複数の貯蔵室」について、
本件補正後の請求項1において、「前記第1の貯蔵室と第2の貯蔵室と第3の貯蔵室とを含む」ことを限定するとともに、
「前記冷却器から前記第2の貯蔵室を塞ぐ風路の途中にダンパーが設けられ、
前記冷却器から前記第3の貯蔵室を塞ぐ風路の途中に前記ダンパーが設けられ、
前記冷却器から前記第1の貯蔵室までの風路には前記ダンパーが設けられておらず」という各貯蔵室への風路におけるダンパーの設置状態を限定するものであって、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
<特許法第29条第2項(進歩性)について>
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。
(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平9-89432号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(なお、下線は当審において付したものである。また、「・・・」は記載の省略を示す。以下同様。)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷蔵庫の貯蔵室冷却用送風機、圧縮機冷却用送風機、および凝縮器放熱用送風機の駆動制御方法に関する。
・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、圧縮機の駆動開始と同時に貯蔵室冷却用送風機の駆動を開始するので、圧縮機の駆動開始直後は、まだ充分に冷えていない蒸発器の空気を食品の貯蔵室(冷凍室、冷蔵室)に供給することになり、食品の貯蔵室を冷却するのに無駄な電力を消費してしまうという問題があった。とりわけ、霜取り運転終了直後においては、蒸発器内には霜取りヒ-タによる余熱が残っており、この状態で貯蔵室冷却用送風機を駆動するのは得策ではなかった。さらに、圧縮機の駆動停止と同時に貯蔵室冷却用送風機の駆動を停止するので、蒸発器内に残留する液化冷媒を有効に利用できず、冷凍サイクルの消費電力量を低減できないという欠点があった。
【0006】また、圧縮機の駆動開始と同時に圧縮機冷却用送風機の駆動を開始するので、まだ圧縮機が空冷を必要とする温度まで上昇していないときでも送風機を駆動することになり、不要な運転をするので無駄な電力を消費してしまうという問題があった。本発明の目的は、上記問題を解消し消費電力量を低減できる冷蔵庫の制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、貯蔵室冷却用送風機の駆動開始を前記圧縮機の駆動開始よりも遅延させ、さらに前記貯蔵室冷却用送風機の駆動停止を前記圧縮機の駆動停止よりも遅延させる手段を制御装置が具備したものである。
・・・
【0009】さらに、蒸発器の温度を検出する蒸発器温度センサの検出温度X℃と、冷凍室内の温度を検出する冷凍室温度センサの検出温度Y℃を比較し、X<Yの関係が成立するときに貯蔵室冷却用送風機を駆動させたものである。
・・・
【0011】さらに、凝縮器の放熱を促進させるための凝縮器放熱用送風機の駆動開始を前記圧縮機の駆動開始よりも遅延させる手段を制御装置が具備したものである。
・・・
【0012】
【作用】圧縮機の断続運転中および霜取り運転終了直後において、貯蔵室冷却用送風機の駆動開始を前記圧縮機の駆動開始よりも遅延させるので、蒸発器で生成された空気は温度が充分に下がってから食品の貯蔵室(冷凍室、冷蔵室)に供給されることになる。よって、食品の貯蔵室を冷却するのにエネルギ-効率が良くなる。さらに、貯蔵室冷却用送風機の駆動停止を圧縮機の駆動停止よりも遅延させるので、圧縮機の駆動停止後に蒸発器に残留する低温の冷気までも食品の貯蔵室に供給されることになる。よって、蒸発器で生成された冷気を無駄なく使うので、冷凍サイクルの冷凍能力が向上し圧縮機の運転率が低下する。」
「【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1~図9を用いて説明する。図3は、本発明の実施例である冷蔵庫の縦断面図で、1は冷蔵庫本体、2は冷凍室、3は冷蔵室、4は圧縮機、5は蒸発器である。6は貯蔵室冷却用送風機で、蒸発器5で冷やされた空気を冷凍室2、冷蔵室3に供給するようになっている。
【0015】図2は、本発明の実施例の貯蔵室冷却用送風機6の制御構成図で、図1は同制御タイムチャ-ト図である。図2にて、17はマイクロコンピュ-タ等を主体とした制御装置で、これには、冷凍室2内に設置された冷凍室温度センサ8からの検出温度信号が入力されるようになっている。そしてこの冷凍室温度センサ8の検出温度が所定の温度(例えば、-17℃)以上になったときに、制御装置17は駆動回路9を介して圧縮機4をオンさせ(図1のA点)、その結果、蒸発器5の温度は徐々に下降していく。次に、制御装置17に内蔵されたタイマ-機能が作動し、A点からT1時間経過後、制御装置17は駆動回路9を介して貯蔵室冷却用送風機6をオンさせて、蒸発器5で生成された冷気を食品の貯蔵室(冷凍室、冷蔵室)に供給し始め(B点)、冷却運転を行なう。ここでT1時間は、蒸発器5の温度が冷凍室2内の温度以下に下がるまでの時間に予め設定しておけば、食品の貯蔵室に供給される空気は充分に温度が低く、食品の貯蔵室を冷却するのにエネルギ-効率が良くなる。
【0016】その後、冷凍室温度センサ8の検出温度が所定の温度(例えば、-19℃)以下になれば、制御装置17は圧縮機4をオフさせる(C点)。次に、制御装置17に内蔵されたタイマ-機能が作動し、C点からT2時間経過後、制御装置17は貯蔵室冷却用送風機6をオフさせる(D点)。ここでT2時間は、蒸発器5の温度が冷凍室2内の温度以上に上がるまでの時間に予め設定しておけば、圧縮機4のオフ後に蒸発器5に残留する低温の冷気までも食品の貯蔵室に供給でき、蒸発器5で生成された冷気を無駄なく使うので、冷凍サイクルの冷凍能力が向上、圧縮機4の運転率が低下となり、エネルギ-効率が良くなる。」
「【0020】次に、凝縮器の放熱を促進するために設けた凝縮器放熱用送風機の制御についても、以下説明する。図7は、冷蔵庫の機械室の側面概略図で、1は冷蔵庫本体、12は機械室、13は凝縮器、14は凝縮器放熱用送風機である。」
「【0022】本発明の他の実施例として、蒸発器温度センサの検出温度と冷凍室温度センサの検出温度を用いる方法もあるので、図9の制御構成図と図8の制御タイムチャ-ト図で以下説明する。図9にて、17はマイクロコンピュ-タ等を主体とした制御装置で、これには、冷凍室2内に設置された冷凍室温度センサ8、および蒸発器5上に設置された蒸発器温度センサ11からの検出温度信号が入力されるようになっている。そして前記冷凍室温度センサ8の検出温度が所定の温度以上になったときに、制御装置17は駆動回路9を介して圧縮機4をオンさせ(図8のA点)、その結果、蒸発器5の温度は徐々に下降していく。次に、蒸発器温度センサ11の検出温度X℃と、冷凍室温度センサ8の検出温度Y℃を比較し、X<Yの関係が成立すると制御装置17が判断すれば、駆動回路9を介して貯蔵室冷却用送風機6をオンさせて、蒸発器5で生成された冷気を食品の貯蔵室(冷凍室、冷蔵室)に供給し始め(H点)、冷却運転を行なう。したがって、食品の貯蔵室に供給される空気は充分に温度が低く、食品の貯蔵室を冷却するのにエネルギ-効率が良くなる。
【0023】その後、冷凍室温度センサ8の検出温度が所定の温度以下になれば、制御装置17は圧縮機4をオフさせる(C点)。次に、再び蒸発器温度センサ11の検出温度X℃と、冷凍室温度センサ8の検出温度Y℃を比較し、X<Yの関係がまだ成立していると制御装置17が判断すれば、貯蔵室冷却用送風機6をオンのままとし、蒸発器温度センサ11の検出温度Xが上昇してX≧Yの関係が成立したときに、貯蔵室冷却用送風機6をオフさせる(J点)。したがって、圧縮機4のオフ後に蒸発器5に残留する低温の冷気までも食品の貯蔵室に供給でき、蒸発器5で生成された冷気を無駄なく使うので、冷凍サイクルの冷凍能力が向上し圧縮機4の運転率が低下する。よって、エネルギ-効率が良くなる。」
「
[図:0001387120000001.jpg]
[図:0001387120000002.jpg]
[図:0001387120000003.jpg]
」
「
[図:0001387120000004.jpg]
[図:0001387120000005.jpg]
[図:0001387120000006.jpg]
」
(イ)上記(ア)及び図面の記載から認められる事項
上記(ア)及び図面の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記(ア)の段落0001~0012、0014~0016、0020、0022及び0023並びに図1~3及び7~9の記載によれば、引用文献1には、冷蔵庫が記載されている。
b 上記(ア)の段落0014、0022及び0023並びに図3及び図9の記載によれば、冷蔵庫において、圧縮機4および蒸発器5を備えることが認められる。
c 上記(ア)の段落0012、0014~0016及び0022並びに図3の記載によれば、冷蔵庫において、食品を収容する冷凍室2と冷蔵室3とを含む複数の貯蔵室を備え、前記冷凍室2は、-17℃~-19℃で圧縮機4をオン、オフさせるものであり、前記冷蔵室3より設定温度は低いことから、前記複数の貯蔵室のうちの最も設定温度が低い貯蔵室であることが認められる。
d 上記(ア)の段落0014及び0022並びに図3及び9の記載によれば、冷蔵庫において、蒸発器5を通過した空気を冷凍室2に送る貯蔵室冷却用送風機6を備えることが認められる。
e 上記(ア)の段落0022及び図9の記載によれば、冷蔵庫において、冷凍室2の温度を検出する冷凍室温度センサ8と、蒸発器5の温度を検出する蒸発器温度センサ11とを備えることが認められる。
f 上記(ア)の段落0023及び図8の記載によれば、冷蔵庫において、貯蔵室冷却用送風機6は、圧縮機4が停止中、かつ蒸発器温度センサ11の検出温度X℃と冷凍室温度センサ8の検出温度Y℃と比較し、X<Yの関係が成立したときには、運転を継続することが認められる。
g 上記(ア)の段落0023及び図8の記載によれば、冷蔵庫において、貯蔵室冷却用送風機6は、圧縮機4の停止中において、X≧Yの関係が成立したとき運転を停止することが認められる。
h 上記(ア)の段落0022及び図8の記載によれば、冷蔵庫において、貯蔵室冷却用送風機6は、圧縮機4が運転中、かつX≧Yの関係が成立したときには、運転を停止することが認められる。
i 上記(ア)の段落0022及び図8の記載によれば、冷蔵庫において、貯蔵室冷却用送風機6は、圧縮機4が運転中において、X<Yの関係が成立したとき、運転を開始することが認められる。
(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)から、本件補正発明に倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「圧縮機4および蒸発器5と、
食品を収容する冷凍室2と、
前記蒸発器5を通過した空気を前記冷凍室2に送る貯蔵室冷却用送風機6と、
前記冷凍室2の温度を検出する冷凍室温度センサ8と、
前記蒸発器5の温度を検出する蒸発器温度センサ11と、
前記冷凍室2と冷蔵室3とを含む複数の貯蔵室とを備え、
前記冷凍室2は、前記複数の貯蔵室のうちの最も設定温度が低い貯蔵室であり、
前記貯蔵室冷却用送風機6は、前記圧縮機4が停止中、かつ前記蒸発器温度センサ11の検出温度X℃と前記冷凍室温度センサ8の検出温度Y℃と比較し、X<Yの関係が成立したときには、運転を継続し、
前記貯蔵室冷却用送風機6は、前記圧縮機4の停止中において、X≧Yの関係が成立したとき運転を停止し、
前記貯蔵室冷却用送風機6は、前記圧縮機4が運転中、かつX≧Yの関係が成立したときには、運転を停止し、
前記貯蔵室冷却用送風機6は、前記圧縮機4が運転中において、X<Yの関係が成立したとき、運転を開始するように構成されている、冷蔵庫。」
イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で周知技術の例証として引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002-107026号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0018】25は冷凍システムの冷媒の圧縮機、26は冷凍システムの冷媒の凝縮器、27は凝縮器26の熱にて後述の冷却器の除霜水を蒸発させる蒸発皿である。28と29は冷凍システムの冷媒の冷却器(蒸発器)であり、28は冷凍室7用冷却器であり、29は冷蔵室5用冷却器である。30は冷凍室7用冷気循環送風機、31は冷蔵室5用冷気循環送風機である。冷凍室7用冷却器28で冷却した冷気は送風機30によって、製氷室20、上冷凍室10及び下冷凍室11を経て冷却器28へ帰還する循環をする。また冷蔵室5用冷却器29で冷却した冷気は送風機31によって、冷蔵室5、特定低温室9及び野菜室6を経て冷却器28へ帰還する循環をする。特定低温室9は、特定低温室9内に設けた左右のレールに対してそれぞれ前後方向へ引き出し可能に支持した容器50が設けられている。
【0019】32は冷凍室7用冷却器28へ流入する冷媒の減圧装置としてのキャピラリチューブ、33は冷蔵室5用冷却器29へ流入する冷媒の減圧装置としてのキャピラリチューブである。34は冷媒の流れを冷凍室7用冷却器28側と冷蔵室5用冷却器29側とに切り換える冷媒流路切換装置であり、図示のものは電磁ソレノイド35への通電毎に冷凍室7側バルブ36と冷蔵室5側バルブ37の開閉が制御される、所謂、三方電磁弁である。この三方電磁弁に代わって、冷凍室7用冷却器28への冷媒通路38を開閉する電磁弁と、冷蔵室5用冷却器29への冷媒通路39を開閉する電磁弁をそれぞれ設けて同様の制御を行うことができる。」
「
[図:0001387120000007.jpg]
」
ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由で周知技術の例証として引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった実願昭58-105884号(実開昭60-14470号)のマイクロフィルム(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「本考案は冷蔵庫等のようにコンプレツサを駆動・停止させて温度制御するようにした冷凍サイクルに関する。
〔考案の技術的背景とその問題点〕
この種の冷凍サイクルは、コンプレツサに対し、コンデンサ、キヤピラリチユーブ及び冷却器を順に接統して構成されている ・・・ 第1図に示すようにコンデンサAとキヤピラリチユーブBとの間に電磁弁Cを設け、ロータリーコンプレツサDの停止に伴つて該電磁弁Cが通電されて閉動作するように構成すると共に、ロータリーコンプレツサDと冷却器Eとの間に逆止弁Fを設け、以て運転停止時にコンデンサA側のホツトガスが冷却器E内に流入することの無いようにすることが考えられている」(明細書2ページ10行~3ページ10行)
「
[図:0001387120000008.jpg]
」
エ 引用文献4
原査定の拒絶の理由で周知技術の例証として引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2003-42628号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「【0039】60は凝縮器2により凝縮され乾燥器(ドライヤ)80を通過した冷媒を減圧する減圧装置であり、乾燥器(ドライヤ)80を通過減圧手段である複数の毛細管3(本実施の形態では太管毛細管3a、細管毛細管3bの2本を表す)と複数の毛細管(本実施の形態では毛細管3a、3bの2本)が接続された複数の冷媒流路を有し、最適な冷媒流量になるように冷媒流路を切り替えたり、冷媒流路の面積を変更したりする切替手段とによって構成されている。
【0040】ここで、本実施の形態では、切替手段として1つの入口冷媒流路と2つの出口冷媒流路を有する電子式の三方切替弁6を使用した場合を一例として説明するが、毛細管3は、2本(3a、3b)でなくても良く3本以上でもよい。三方切替弁を使用すれば、構造が簡単でありながら、冷媒流路の可変制御が行いやすく、低コストであるため、信頼性が高く、流量制御精度も高く低コストな冷蔵庫が得られる。
【0041】また、毛細管3を流れる流量は同じものでも、異なったものでも良く、本実施の形態では、同一条件にて流量が多く流れる太管毛細管3aと太管毛細管3aよりは流量の少ない細管毛細管3bの流量特性の異なった2本の毛細管3を使用した場合を一例として説明する。」
「【0083】ここで、毛細管の選定方法について説明する。本実施の形態では、三方切替弁6の出口パイプ6bと太管毛細管3aを接続し、出口パイプ6cと細管毛細管3bを接続した場合について説明する。太管毛細管3aは、圧縮機1の上限回転数(「高」回転数)の条件において、冷蔵庫の最大負荷時に必要な冷却能力を満足するようにその内径や長さが決定される。細管毛細管3bは、圧縮機1の上限回転数(「高」回転数)での流量が、圧縮機1の下限回転数(「低」回転数)の条件での太管毛細管3aの流量と同等となるようにその内径や長さが決定される。
【0084】上記のように太管毛細管3aと細管毛細管3bを選定すれば、太管毛細管3aと細管毛細管3bを切り替え、圧縮機1の回転数を変化させることにより、冷媒流量を可変にして冷却能力を変更することができる。本実施の形態では、上述したように三方切替弁6の出口パイプ6cの冷媒流量をリニアに可変させるようにしており、圧縮機1の回転数との組み合わせで従来よりも広範囲な流量範囲を得ることができるようになるので、図7を使用して圧縮機回転数と冷媒流量の関係について説明する。」
「【0140】また、図2に示したように冷却器4と圧縮機1との間に逆止弁7を設けているので、圧縮機1の停止時に低圧側(圧縮機1の吸入管側)の冷媒が移動するのを防止でき、また、三方切替弁6の出口パイプ2箇所(6b、6c)の流路(冷媒流路6hb、6hc)を全閉させることにより高圧側(凝縮器2側)の冷媒の移動も防止できるので、圧縮機1の停止時でも冷媒の移動を防止でき、冷凍サイクル内の圧力バランスを長時間に渡って維持させることができる。したがって、冷媒による熱エネルギーの移動を防止させることができるので、圧縮機1の停止時間が長時間になっても熱移動による損失が少なくなり、消費電力量を低減させることができる。」
「
[図:0001387120000009.jpg]
」
オ 引用文献5
原査定の拒絶の理由で周知技術の例証として引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-78028号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
「【0052】
図3には、冷却装置100の減圧器の構成例が示される。減圧器は、三方弁13と内径が相違するキャピラリチューブ12Aと12Bとを含む。三方弁13は1個の入力端と2つの出力端とを有する。入力端はドライヤ14の出力側が冷媒流路により接続されて、2つの出力端それぞれには、キャピラリチューブ12Aと12Bの一端が接続される。キャピラリチューブ12Aと12Bの他方端は、蒸発器15の入力端に設けられた管状のリードパイプ152に接続される。ここでは、キャピラリチューブ12Aの内径は、キャピラリチューブ12Bよりも大きい。なお、図面では、説明のために、内径が大きいキャピラリチューブ12AをキャピラリチューブAと指し、小さいキャピラリチューブ12BをキャピラリチューブBと指す場合がある。」
「【0083】
切替制御部62は、運転開始後は駆動制御部61から圧縮機10に出力される制御信号に基づき、圧縮機10が停止状態(OFF)であるか否かを判定する(ステップT1)。たとえば、冷却が進行し庫内の温度が十分に低下することにより、圧縮機10が停止状態にあると判定すると(ステップT1でYES)、切替制御部62は、切替信号を出力し、キャピラリチューブ12Aと12Bの両方の弁を閉じるように三方弁13を制御する(ステップT3)。これにより、蒸発器15における新たな冷媒による熱交換を抑制し、庫内の冷却状態を維持することができる。」
「
[図:0001387120000010.jpg]
」
「
[図:0001387120000011.jpg]
」
カ 引用文献8
原査定の拒絶の理由で周知技術の例証として引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開昭63-213766号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の記載がある。
「さらに、同図において、(30)は上記過熱度演算部(22)で得られた実際の圧縮機吸入過熱度SHmと、上記判断基準値演算部(26)で得られた判断基準値SHoとの差(SHm-3Ho)を演算し、この差(SHm-3Ho)をセンサの誤差等を考慮した余裕値uと大小比較して、SHm-3Ho>uの場合にはその継続時間をタイマ部(31)で計測し、この計測時間が所定時間Tsを越えると、冷媒不足信号を出力する比較手段としての比較部、(32)は該比較部(30)からの冷媒不足信号を受信し、発光ダイオードを点灯させたり、警報器を作動させたりする冷媒量不足表示部である。」(3ページ右下欄5行~同欄16行)
キ 引用文献9
原査定の拒絶の理由で周知技術の例証として引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-172890号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の記載がある。
「【0042】
そして、高圧圧力飽和温度の値が外気温度の値よりも大きいものと判断した場合はステップS12へ進む。ステップS12では中間冷却器出口温度の値から高圧圧力飽和温度の値を引いた値が5(K)より小さいかどうかを判断する。5Kの差を設ける理由は、高圧圧力兼温度検知器52及び外気温度検知器55の検知精度バラツキと検知誤差をふまえて駆動制御を確実に行うためのマージンである。また、中間冷却器出口温度値は中間冷却器出口温度検知器54が検知する値である。」
ク 引用文献10
原査定の拒絶の理由で周知技術の例証として引用された文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2013/168199号(以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。
「[0048] 組成判定機能部40Bにおいて組成演算機能部40Aの組成演算結果の正誤判定を行う際、混合冷媒の充填組成Yiを用いて判定を行うため、判定式で使用するエンタルピの演算結果は、実際の循環組成を用いた場合に対する誤差や圧力検出装置や温度検出装置による測定誤差を含んでいる。このため、実際には組成演算機能部40Aの演算結果が誤の場合においても、演算結果が正と判定してしまう可能性がある。そこで、組成判定機能部40Bが行う正誤判定の判定式に誤差を見込んだマージンを加えた形にすることで、組成を誤検知してしまう可能性を減らすことができる。
[0049] 例えば、マージンを加えない場合のF1<FL1かつF2>FL2という判定式をF1<FL1×αかつF2>FL2×βという形に変更する。ここで、αおよびβはそれぞれ高圧側と低圧側のマージンであり、α<1かつβ>1となる値として定義することで、図7の点Aを左側に、点Dを右側に移動させることになり、より厳しい安定側の組成演算結果の正誤判定を行うことができる。」
ケ 引用文献11
当審において新たに周知技術の例証として引用する文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平11-194826号公報(以下「引用文献11」という。)には、次の記載がある。
「【0022】まず、第1の実施の形態として、本発明の開閉部材の駆動方法を、シングルタイプの開閉部材の駆動機構としてのモータ式ダンパー装置1に適用させた例を図1から図4に示して説明する。なお、この第1の実施の形態のモータ式ダンパー装置1は、冷蔵庫に使用されるものとなっている。
【0023】このモータ式ダンパー装置1は、図1及び図2に示すように、両端が開放された筒状のフレーム2と、フレーム2に形成される開口部3と、開口部3を開閉する開閉部材としてのバッフル4と、バッフル4を駆動するための駆動部5から主に構成される。」
「【0032】このように構成されるモータ式ダンパー装置1は、例えば、図4に示すような形で冷蔵庫21に組込まれる。すなわち、この冷蔵庫21は、冷凍室22と、冷蔵室23と、野菜室24に区分され、冷凍室22の底部にエバポレータ25が設けられている。エバポレータ25の後部にはファンモータ26が配設され、得られた冷気を冷凍室22、冷蔵室23及び野菜室24へ送風循環させている。
【0033】そして、エバポレータ25と冷蔵室23の間には仕切坂27が設けられ、エバポレータ25の冷気が直接冷蔵室23に流れるのを遮断している。一方、この仕切坂27の後部と冷蔵庫21の後部内壁との間には、冷気流通路28が形成され、この冷気流通路28の野菜室24に通ずる部分にモータ式ダンパー装置1が嵌め込まれている。すなわち、モータ式ダンパー装置1のフレーム2が冷気流通路28の一部を形成するように嵌め込まれ、モータ式ダンパー装置1自体が冷気流通路28を兼ねている。また、このモータ式ダンパー装置1は、冷蔵室23の背面部にも設置されている。つまり、この第1の実施の形態では、モータ式ダンパー装置1を2つ設置している。なお、このモータ式ダンパー装置1は、冷蔵室23と野菜室24の双方に設置せず、どちらか一方にのみ設置しても良いし、加えて冷凍室22用に取り付けても良いし、または、全室にそれぞれ取り付けても良い。」
「
[図:0001387120000012.jpg]
[図:0001387120000013.jpg]
」
「
[図:0001387120000014.jpg]
」
コ 引用文献12
当審において新たに周知技術の例証として引用する文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-115038号公報(以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。
「【0024】
冷蔵庫本体1内には、冷却器11で生成された冷気をそれぞれの貯蔵室(冷蔵室2、切替室3、製氷室4、冷凍室5及び野菜室6)へと供給するための冷却風路13が設けられている。冷却風路13は、各貯蔵室に設けられた図示しない冷気吹出口へと通じている。
【0025】
冷却器11は、冷却風路13内における冷凍室5のほぼ後方となる位置に配置されている。冷却風路13内における冷却器11の上方には送風機12が配設されている。送風機12は、冷却器11により冷却された空気を各貯蔵室へと送る気流を冷却風路13内に発生させるためのものである。送風機12が稼働することで、冷却器11により冷却された空気が冷却風路13を通じて冷蔵庫本体1内に循環される。
【0026】
冷凍室5を除く各貯蔵室の冷気吹出口には、図示しないダンパが開閉可能に設けられている。これらのダンパは個別に開閉させることが可能であり、これらのダンパにより各貯蔵室へと通じる冷却風路13を貯蔵室毎に個別に開閉することができる。なお、冷蔵庫本体1が備える各貯蔵室のうち、冷凍室5の冷気吹出口にはダンパは設けられていない。」
「
[図:0001387120000015.jpg]
」
サ 引用文献13
当審において新たに周知技術の例証として引用する文献であって、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-4489号公報(以下「引用文献13」という。)には、次の記載がある。
「【0029】
図1に示すように、冷蔵庫1は、本体としての断熱箱体2を備え、該断熱箱体2の内部に食品等を貯蔵する貯蔵室を形成している。貯蔵室の内部は、保存温度や用途に応じて複数の収納室3~7に区分されている。最上段が冷蔵室3、その下段左側が製氷室4で右側が上段冷凍室5、更にその下段が下段冷凍室6、最下段が野菜室7である。尚、製氷室4、上段冷凍室5及び下段冷凍室6は、何れも冷凍温度域の収納室であり、以下の説明では適宜、これらをまとめて冷凍室4~6と称する。」
「【0034】
また、冷凍室4~6の奥側には、合成樹脂製の仕切部材である前面カバー24で区画され、冷凍室供給風路14が形成されている。具体的には、冷凍用供給風路14は、仕切体25とその前方に組み付けられる前面カバー24との間に形成された空間であり、冷却器33で冷却された冷気を流す風路となる。
【0035】
前面カバー24には、冷凍室4~6に冷気を吹き出す開口である吹出口15が形成されている。また、下段冷凍室6の下部背面には、冷凍室4~6から冷却室13へと空気を戻す戻り口20が形成されている。
【0036】
また、冷蔵室3の背面には、冷蔵室3へと冷気を供給する冷蔵室供給風路16が形成されている。冷蔵室供給風路16には、冷蔵室3に冷気を流す吹出口17が形成されている。冷凍室供給風路14と冷蔵室供給風路16とは、ダンパ装置34(風路開閉器)の冷蔵室ダンパ34aを介して連通している。冷蔵室ダンパ34aは、冷蔵室3へと供給する冷気の流量を制御して、冷蔵室3内部の温度を適切に維持するためのものである。
【0037】
内箱2b内部の冷凍室供給風路14の更に奥側には、仕切体25で区分けされ形成された冷却室13が設けられている。即ち、冷却室13は、内箱2bと仕切体25とによって挟まれて形成された空間である。冷却室13上部の仕切体25には、冷却室13と冷凍室供給風路14とをつなぐ開口13aが形成されており、開口13aには、各貯蔵室3~7に冷気を供給するための送風機32が配設されている。他方、冷却室13の下方には、貯蔵室からの帰還冷気を冷却室13の内部へと吸入する開口13bが形成されている。
【0038】
そして、冷却室13の内部には、循環する空気を冷却するための冷却器33(蒸発器)が配置されている。冷却器33は、圧縮器31、放熱器(図示せず)、膨張弁(キャピラリーチューブ)(図示せず)に冷媒配管を介して接続されており、蒸気圧縮式の冷凍サイクル回路を構成するものである。尚、本実施形態に係る冷蔵庫1では、前記冷凍サイクルの冷媒として、イソブタン(R600a)を用いている。
【0039】
図3に示すように、冷蔵庫1は、冷蔵室3から冷却室13(図2参照)へと空気を流す帰還風路21を備えている。冷蔵室3の下部には、帰還風路21につながる開口である戻り口22が形成されている。冷蔵室3内の空気は、戻り口22を介して帰還風路21へと流れ、冷却器33の下方へと流れる。
【0040】
また、帰還風路21の前方には、冷却器33で冷却された空気を野菜室7へと流す野菜室供給風路18が形成されている。野菜室供給風路18は、冷凍室供給風路14から上方に分岐して、冷凍室4~6の上方の断熱仕切壁35の内部を経由して下方に向きを変え、冷凍室4~6の奥を通過している。そして、断熱仕切壁36を貫通して野菜室7へとつながっている。野菜室7には、野菜室供給風路18から冷気を吹き出す開口である吹出口19が形成されている。
【0041】
断熱仕切壁35の奥側の野菜室供給風路18には、野菜室に供給する冷気の流れを制御する野菜室ダンパ34bが設けられている。これにより、冷蔵室3の冷却とは独立して野菜室7の冷却を行うことができ、野菜室7の温度を適切に制御することができる。」
「
[図:0001387120000016.jpg]
[図:0001387120000017.jpg]
」
(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
ア 後者の「圧縮機4」は、前者の「圧縮機」に相当し、以下同様に、「蒸発器5」は「冷却器」に、「食品」は「冷却対象物」に、「冷凍室2」は「第1の貯蔵室」に、「貯蔵室冷却用送風機6」は「ファン」に、「冷凍室温度センサ8」は「第1温度センサ」に、「蒸発器温度センサ11」は「第2温度センサ」に、「冷蔵室3」は「第2の貯蔵室」に、「蒸発器温度センサ11の検出温度X℃」は「第2温度センサの検出温度」に、「冷凍室温度センサ8の検出温度Y℃」は「第1温度センサの検出温度」に、「冷蔵庫」は「冷凍機」に、それぞれ相当する。
イ 後者の「圧縮機4および蒸発器5」は、前者の「圧縮機、凝縮器、膨張装置、および冷却器が冷媒配管によって接続された冷媒回路」に、「少なくとも圧縮機および冷却器を含む機器」という点で一致する。
ウ 後者の「前記冷凍室2と冷蔵室3とを含む複数の貯蔵室」は、前者の「前記第1の貯蔵室と第2の貯蔵室と第3の貯蔵室とを含む複数の貯蔵室」に、「少なくとも前記第1の貯蔵室と第2の貯蔵室とを含む複数の貯蔵室」という点で一致する。
エ 後者の「前記貯蔵室冷却用送風機6は、前記圧縮機4が停止中、かつ前記蒸発器温度センサ11の検出温度X℃と前記冷凍室温度センサ8の検出温度Y℃と比較し、X<Yの関係が成立したときには、運転を継続」する態様は、X<Yの関係がY-X>0で表せるから(YからXを引いた温度差が0より大きい)、前者の「前記ファンは、前記圧縮機が停止中、かつ前記第1温度センサの検出温度から前記第2温度センサの検出温度を引いた温度差が第1裕度よりも大きい場合には、運転を継続」する態様に、「前記ファンは、前記圧縮機が停止中、かつ前記第1温度センサの検出温度から前記第2温度センサの検出温度を引いた温度差が第1判定値よりも大きい場合には、運転を継続」する点で一致する。
オ 後者の「前記貯蔵室冷却用送風機6は、前記圧縮機4の停止中において、X≧Yの関係が成立したとき運転を停止」する態様は、X≧Yの関係がY-X≦0で表せ、X<Yの関係から遷移した状態(YからXを引いた温度差が0より大きい状態から0より小さい状態に遷移した状態)であるから、前者の「前記ファンは、前記圧縮機の停止中において、前記温度差が前記第1裕度よりも大きい状態から小さい状態に遷移すると運転を停止」する態様に、「前記ファンは、前記圧縮機の停止中において、前記温度差が前記第1判定値よりも大きい状態から小さい状態に遷移すると運転を停止」する点で一致する。
カ 後者の「前記貯蔵室冷却用送風機6は、前記圧縮機4が運転中、かつX≧Yの関係が成立したときには、運転を停止」する態様は、X≧Yの関係がY-X≦0で表せるから(YからXを引いた温度差が0より小さい)、前者の「前記ファンは、前記圧縮機が運転中、かつ前記温度差が第2裕度よりも小さい場合には、運転を停止」する態様に、「前記ファンは、前記圧縮機が運転中、かつ前記温度差が第2判定値よりも小さい場合には、運転を停止」する点で一致する。
キ 後者の「前記貯蔵室冷却用送風機6は、前記圧縮機4が運転中において、X<Yの関係が成立したとき、運転を開始する」態様は、X<Yの関係がY-X>0で表せ、X≧Yの関係から遷移した状態(YからXを引いた温度差が0より小さい状態から0より大きい状態に遷移した状態)であるから、前者の「前記ファンは、前記圧縮機が運転中において、前記温度差が前記第2裕度よりも小さい状態から大きい状態に遷移すると、運転を開始」する態様に、「前記ファンは、前記圧縮機が運転中において、前記温度差が前記第2判定値よりも小さい状態から大きい状態に遷移すると、運転を開始」する点で一致する。
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「少なくとも圧縮機および冷却器を含む機器と、
冷却対象物を収容する第1の貯蔵室と、
前記冷却器を通過した空気を前記第1の貯蔵室に送るファンと、
前記第1の貯蔵室の温度を検出する第1温度センサと、
前記冷却器の温度を検出する第2温度センサと、
少なくとも前記第1の貯蔵室と第2の貯蔵室とを含む複数の貯蔵室とを備え、
前記第1の貯蔵室は、前記複数の貯蔵室のうちの最も設定温度が低い貯蔵室であり、
前記ファンは、前記圧縮機が停止中、かつ前記第1温度センサの検出温度から前記第2温度センサの検出温度を引いた温度差が第1判定値よりも大きい場合には、運転を継続し、
前記ファンは、前記圧縮機の停止中において、前記温度差が前記第1判定値よりも大きい状態から小さい状態に遷移すると運転を停止し、
前記ファンは、前記圧縮機が運転中、かつ前記温度差が第2判定値よりも小さい場合には、運転を停止し、
前記ファンは、前記圧縮機が運転中において、前記温度差が前記第2判定値よりも小さい状態から大きい状態に遷移すると、運転を開始する、
冷凍機。」
[相違点1]
「少なくとも圧縮機および冷却器を含む機器」に関し、
本件補正発明では、「圧縮機、凝縮器、膨張装置、および冷却器が冷媒配管によって接続された冷媒回路」を備えるのに対して、
引用発明では、「圧縮機4および蒸発器5」を備えるものの、冷媒回路について特定されていない点。
[相違点2]
本件補正発明では、「前記膨張装置は、開度を全閉にすることが可能に構成され、前記圧縮機の停止中には開度が全閉とされ」、「前記膨張装置は、
複数のキャピラリチューブと、
前記キャピラリチューブに連通する冷媒配管を開閉可能な流路切替弁とを含み、
前記流路切替弁は、前記複数のキャピラリチューブのいずれかを選択することにより冷媒の流路を切り換えるように構成されている」のに対して、
引用発明では、膨張装置について特定されていない点。
[相違点3]
本件補正発明では、「第1判定値」が「第1裕度」であり、「第2判定値」が「第2裕度」であるのに対して、引用発明では、「第1判定値」及び「第2判定値」がいずれも「0」である点。
[相違点4]
「少なくとも前記第1の貯蔵室と第2の貯蔵室とを含む複数の貯蔵室」に関し、
本件補正発明では、「前記第1の貯蔵室と第2の貯蔵室と第3の貯蔵室とを含む複数の貯蔵室」を備え、「前記冷却器から前記第2の貯蔵室を塞ぐ(審決注:「繋ぐ」の誤記である。)風路の途中にダンパーが設けられ、
前記冷却器から前記第3の貯蔵室を塞ぐ(審決注:「繋ぐ」の誤記である。)風路の途中に前記ダンパーが設けられ、
前記冷却器から前記第1の貯蔵室までの風路には前記ダンパーが設けられて」いないのに対して、
引用発明では、「前記冷凍室2と冷蔵室3とを含む複数の貯蔵室」を備えるものであり、ダンパーの設置については特定されていない点。
(4)判断
ア 相違点1について
引用発明の「圧縮機4および蒸発器5」は冷凍サイクルを構成するものであるところ(引用文献1の段落0012及び0016を参照。)、冷蔵庫において、冷凍サイクルが圧縮機、凝縮器、膨張装置、および冷却器が冷媒配管によって接続された冷媒回路により構成されることは、例えば引用文献2及び3の上記(1)イ及びウの記載に示されているように本願の出願前に技術常識であり、また、引用文献1の段落0020及び図7に記載された例において、凝縮器13が記載されていることを考慮すると、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正発明1の発明特定事項を備えていることは明らかであるから、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に相違点1が実質的な相違点であるとしても、引用発明において、技術常識に基づき上記相違点1に係る本件補正発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2について
例えば引用文献4及び5の上記(1)エ及びオの記載から理解できるように、冷蔵庫において、冷媒回路の膨張装置を、複数のキャピラリチューブと、前記キャピラリチューブに連通する冷媒配管を開閉可能な流路切替弁とを含み、前記流路切替弁が、前記複数のキャピラリチューブのいずれかを選択することにより冷媒の流路を切り換えるようにするとともに、圧縮機の停止中に前記流路切替弁を全閉にすることは、本願の出願前に周知の技術(以下「周知技術1」という。)であり、流路切替弁を全閉にすることができることにより、膨張装置は、開度を全閉にすることが可能に構成され、圧縮機の停止中には開度が全閉とされるものといえるから、周知技術1は上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項に対応するものである。
そして、周知技術1は、流路切替弁が、複数のキャピラリチューブのいずれかを選択することにより冷媒の流路を切り換えることで、冷媒流量を可変にして冷却能力を変更することができるとともに(引用文献4の段落0084)、膨張装置が圧縮機の停止中に開度が全閉とされることにより、冷媒の移動を防止し、熱移動による損失を低減(蒸発器における新たな冷媒による熱交換を抑制し、庫内の冷却状態を維持)して、消費電力量を低減できるものであり(引用文献4の段落0140及び引用文献5の段落0083)、冷却能力を変更することや消費電力量を低減することは冷蔵庫に通常考慮されることであるから、引用発明において周知技術1を適用し、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。
ウ 相違点3について
例えば引用文献8ないし10の上記(1)カないしクの記載から理解できるように、センサからの入力に基づき状態を判定するのに、センサの検知誤差やバラツキを考慮して判定値に裕度(マージン)を持たせることは、本願の出願前に周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
そして、引用発明においても、冷凍室温度センサ8(第1温度センサ)及び蒸発器温度センサ11(第2温度センサ)を備えて、蒸発器温度センサ11の検出温度X℃と前記冷凍室温度センサ8の検出温度Y℃と比較して、Y-X>0の関係やY-X≦0の関係を判定するものであり、センサの検知誤差やバラツキは当業者であれば装置の設計を行う上で当然考慮することであり、そのバラツキも運転条件や検出する温度範囲によって変わるものであるから、引用発明に周知技術2を適用し、圧縮機が停止中の第1判定値として「0」の代わりに第1裕度を採用するとともに、圧縮機が運転中の第2判定値として「0」の代わりに第2裕度を採用して、上記相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が適宜なし得たことである。
エ 相違点4について
例えば引用文献11ないし13の上記(1)ケないしサの記載から理解できるように、冷蔵庫において、第1の貯蔵室と第2の貯蔵室と第3の貯蔵室とを含む複数の貯蔵室を備え、冷却器から前記第2の貯蔵室を繋ぐ風路の途中にダンパーが設けられ、前記冷却器から前記第3の貯蔵室を繋ぐ風路の途中に前記ダンパーが設けられ、前記冷却器から最も設定温度が低い前記第1の貯蔵室までの風路には前記ダンパーが設けられていないことは、本願の出願前に周知の技術(以下「周知技術3」という。)である。
そして、周知技術3は、第1~3の貯蔵室の各貯蔵室への風量を個別に制御するにあたり、最も設定温度が低い第1の貯蔵室までの風路にはダンパーが設けられていないことで、構造が簡易化されるものであり、引用発明において、構造を簡易化してコストを低減することは内在する課題であるから、引用発明に周知技術3を適用し、上記相違点4に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。
オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「(3)進歩性について」(5ページ25行~7ページ15行;特に6ページ16~同ページ17行及び7ページ9~同ページ10行)において、各引用文献には、本件補正により追加された事項は教示も示唆もされていない旨を主張する。
しかし、本件補正により追加された事項は、上記相違点4に係る本件補正発明の発明特定事項と同じであり、上記エで検討したとおり、引用発明に周知技術3を適用することにより、当業者が容易になし得たことであるから、請求人の上記主張は採用できない。
カ 効果について
そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1ないし周知技術3の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
キ まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1ないし周知技術3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和3年4月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1及び2に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の一部は、以下のとおりである。
<理由(特許法第29条第2項)について>
本願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開平9-89432号公報
引用文献2:特開2002-107026号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:実願昭58-105884号(実開昭60-14470号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2003-42628号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2012-78028号公報(周知技術を示す文献)
引用文献8:特開昭63-213766号公報(周知技術を示す文献)
引用文献9:特開2012-172890号公報(周知技術を示す文献)
引用文献10:国際公開第2013/168199号(周知技術を示す文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし5及び8ないし10、それらの記載並びに引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明と引用発明とは、前記第2の[理由]2(3)の対比を踏まえると、前記相違点1ないし3で相違し、その余の点で一致する。
そうすると、前記第2の[理由]2(4)の判断を踏まえると、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-011037