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特許無効審判

2018-800156

音声情報再生装置

審判番号
2018-800156
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2010-267198
登録番号
4817157
請求日
2018年12月28日
審決日
2021年10月20日
公報発行日
2023年02月24日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】ソニックステクノロジー 株式会社
  • 【請求人代理人】松尾 淳一
  • 【請求人代理人】末松 亮太
  • 【請求人代理人】矢部 耕三
  • 【請求人代理人】西川 喜裕
  • 【請求人代理人】岡本 義則
  • 【被請求人】グリッドマーク 株式会社
  • 【被請求人代理人】細谷 道代
  • 【被請求人代理人】特許業務法人秀和特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 田中 秀人
  • 審判官 稲葉 和生
  • 審判官 須田 勝巳
分類
P1113.536-ZAB(G06F) / P1113.537-ZAB(G06F) / P1113.55 -ZAB(G06F) / P1113.841-ZAB(G06F) / P1113.851-ZAB(G06F) / P1113.852-ZAB(G06F) / P1113.855-ZAB(G06F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項、特許法第36条第4項第1号、特許法第126条第6項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第134条の2第6項、特許法第41条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第4817157号発明「音声情報再生装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 令和3年3月30日付け訂正請求において、特許第4817157号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書の段落0230,0231,0235,0236のとおり訂正することを認める。 特許第4817157号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第4817157号(以下,「本件特許」という。)は,平成22年11月30日に出願され,平成23年9月9日に請求項1~3に係る発明について特許権の設定登録がなされたものである。 これに対して,平成30年12月28日にソニックステクノロジー株式会社により,本件特許を無効にすることについての審判の請求がなされたところ,その審判における手続の経緯は,以下のとおりである。 平成30年12月28日付け 審判請求書(請求人) 令和 元年 6月10日付け 審判事件答弁書(被請求人) 同日付け 訂正請求 令和 元年 8月 2日付け 弁駁書(請求人) 令和 元年10月16日付け 審理事項通知(1回目) 令和 元年11月15日付け 口頭審理陳述要領書(第一回)(請求人) 令和 元年11月15日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人,1回目) 令和 元年11月22日付け 審理事項通知(2回目) 令和 元年12月 5日付け 口頭審理陳述要領書(第二回)(請求人) 令和 元年12月 6日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人,2回目) 令和 2年 1月14日付け 上申書(被請求人) 令和 2年 1月21日 口頭審理 令和 2年 1月28日付け 上申書(被請求人) 令和 2年 2月12日付け 上申書(請求人) 令和 2年 3月31日付け 上申書(被請求人) 令和 2年 7月15日付け 上申書(被請求人) 令和 2年 9月10日付け 上申書(請求人) 令和 3年 1月22日付け 審決の予告 令和 3年 3月30日付け 訂正請求(2回目) 令和 3年 3月30日付け 上申書(被請求人) 令和 3年 6月17日付け 弁駁書(2)(請求人) 令和 3年 8月 2日付け 答弁書(2)(被請求人) なお,本件無効審判事件に関連する事件として,以下の無効審判事件,特許権侵害差止等請求事件,同請求控訴事件がある。 無効2018-800155号 無効2018-800157号 無効2019-800003号 平成30年(ワ)第10126号 令和2年(ネ)第10045号 第2 訂正請求 1 訂正請求の趣旨および訂正の内容 本件特許の訂正について,令和元年6月10日付け訂正請求書及び令和3年3月30日付け訂正請求書(以下,「訂正請求書(2)」という。)が提出されているが,「訂正の請求がされた場合において,その審判事件において先にした訂正の請求があるときは,当該先の請求は,取り下げられたものとみなす」(特許法第134条の2第6項)と規定されているから,訂正請求書(2)における訂正の請求のみを審理の対象とする。 被請求人が,訂正請求書(2)で求める訂正請求(以下,「本件訂正請求」という。また,本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は,「特許第4817157号の明細書,特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。」であり,その訂正の内容は,以下のとおりである。(当審注:以下,本件訂正前の「特許第4817157号の明細書」を単に,「明細書」あるいは「本件特許明細書」ともいう。なお,下線は,訂正の内容について参考のために当審で付加したものである。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」とあるのを,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」に訂正する。 (2)訂正事項2 明細書の段落0010の「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」を「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」に訂正する。 (3)訂正事項3 明細書の段落0230の「ここで,4×4個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び,この格子ブロックの四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている。」を「ここで,図105における4×5個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び,この格子領域の四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている。」に訂正する。 (4)訂正事項4 明細書の段落0231の「どの格子ブロックからどの格子ブロックまでが1つのデータであるかを示すためにキードットKDを配置している。」を「どの格子領域からどの格子領域までが1つのデータであるかを示すためにキードットKDを配置している。」に訂正する。 (5)訂正事項5 明細書の段落0235の「データは,図103に示すように,ドット605を格子ブロック内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている。」を「データは,図103に示すように,ドット605を格子領域内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている。」に訂正する。 (6)訂正事項6 明細書の段落0235の「同図では,中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子ブロックで8通り,すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている。」を「同図では,中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子領域で8通り,すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている。」に訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の段落0236の「つまり,前述のようにキードットKDがデータ領域の範囲を定義しているため,このキードットKDの配置を変更すれば任意の可変長の格子ブロック群をデータ格納領域として扱うことができるわけである。」を「つまり,前述のようにキードットKDがデータ領域の範囲を定義しているため,このキードットKDの配置を変更すれば任意の可変長の格子領域群をデータ格納領域として扱うことができるわけである。」に訂正する。 2 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について (ア)訂正事項1は,特許請求の範囲の請求項1に「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」とあるのを,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」に訂正するものである。 (イ)訂正前の「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」という構成は,本件特許明細書の段落【0235】の「データは,図103に示すように,ドット605を格子ブロック内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている。同図では,中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子ブロックで8通り,すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている。なお,さらに中心点から距離を変更した点をさらに8個定義すれば16通り,すなわち4ビットのデータを表現できる。」との記載や本件特許の【図103】の記載において説明されるものであり,訂正前の構成は,「中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」ているから,8方向に情報ドットを配置することができるものである。 これに対し,訂正後の構成は,「中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」ているから,4方向にしか情報ドットを配置することができない。 そうすると,中心から等距離に情報ドットを配置した場合,8方向に情報ドットを配置できる構成を,4方向にしか情報ドットを配置することができない構成に変更すると,定義できるデータ内容の個数が8個から4個に減ってしまうから,両者は異なる構成であり,訂正後の構成は,訂正前の構成を下位概念に限定したものとはいえない(逆に,4個しか定義できない構成を8個定義できる構成に変更する場合であれば,そのための構成を付加し,上位概念から下位概念に限定したといえる余地もある。)。 したがって,訂正事項1は,上位概念を下位概念に限定したものとはいえないから,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとはいえない。 また,訂正事項1は,特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」,同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」,又は同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」のいずれを目的とするものともいえないことは明らかである。 (ウ)したがって,訂正事項1は,特許法第134条の2第1項ただし書に掲げるいずれかの事項を目的とするものではない。 (エ)被請求人の主張について 被請求人は,令和3年8月2日付けの答弁書の7頁において,「ところで,令和3年3月30日提出の訂正請求書に記載の通り,訂正前の請求項1は情報ドットを8方向のうちいずれかの方向(1方向~8方向)にずらす場合を含んでいたのに対し,本件訂正後の請求項1に係る発明(以下,「訂正発明1」という。)は情報ドットを4方向のみのうちいずれかの方向にずらす場合しか含まないから,情報ドットを8方向,7方向,6方向,5方向にずらした場合を含まなくなる。 すなわち,訂正前の請求項1は,45°づつずらした方向のうちいずれかの方向という,【図5】から【図8】の図5ドットパターンの概念を含みそれを拡張した技術的に上位の概念を含むのに対して,訂正後の請求項1は,90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向という,【図5】~【図8】の概念に限定される技術的に下位の概念という関係があることは明らかである。」などと主張しているが,8方向に情報ドットを配置できる構成を,4方向にしか情報ドットを配置することができない構成に変更すると,中心から等距離に情報ドットを配置した場合,定義できるデータ内容の個数が8個から4個に減ってしまうから,両者は異なる構成であり,訂正後の構成は,訂正前の構成を下位概念に限定したものとはいえないことは,上記したとおりである。 したがって,被請求人の上記主張は採用することができない。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更 (ア)上記アで検討したとおり,訂正事項1は,8方向に情報ドットを配置できる構成を,4方向にしか情報ドットを配置することができない構成に変更することで,訂正前の「少なくとも8個以上のデータ内容が定義できる」構成を,「4個のデータ内容が定義できる」構成を含む訂正後の構成に変更するものであり,両者は,定義できるデータ内容の個数が異なるものであるから,実質上特許請求の範囲を変更するものである。 (イ)したがって,訂正事項1は,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。 ウ 新規事項の有無 (ア)訂正事項1による訂正後の請求項1は,「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との事項で特定されるものである。 訂正事項1に関して,被請求人は,訂正請求書(2)の5頁において,以下の通り主張している。 「c 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は,図5~図8から明確に把握できる事項である。具体的には,図5~図8には,点線で囲まれた領域の中に,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点から上方向,下方向,右方向,左方向のうち少なくともいずれかの方向にドットが配置されている。点線で囲まれた領域から引き出し線で「この部分で情報を表現」と記載されていることからも明らかなように,これらのドットは,上方向,下方向,右方向,左方向のいずれかの方向,すなわち90°ずつずらした縦横方向のいずれかの方向にずれることによりデータ内容を定義している。 したがって,「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」ていることは,願書に添付した明細書等に記載された事項である。」(訂正請求書(2)第5頁「c」の項を参照。) そこで,【図5】~【図8】のドットパターンの記載について検討する。 【図5】~【図8】のドットパターンに関しては,本件特許明細書の段落【0057】に「図4は他のドットパターンを用いた情報再生方法の構成を示すブロック図であり,(a)はドットコードの生成について,(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図5から図8は他のドットパターンの一例を示す正面図である。」と記載されるほかは,特段,【図5】~【図8】のドットパターンの内容に関する説明は記載されていないので,各図面の記載自体から読み取れる内容について検討する。 a まず,【図5】について検討する。 【図5】(図は,後記第7の「1」を参照。以下同様。)の左上のx0,x1,y0,y1のうちのx0とy0は白丸であるのに対して,x1,y1は黒丸であり,【図5】の9箇所のx0,x1,y0,y1に対応する位置の黒丸(ドット)の配置と,【図5】の下に標記されている「上記は,x座標100110001 y座標110101011 表現可能範囲は,0≦x座標≦29-1 0≦y座標≦29-1」との記載を合わせて読むと,x0とx1のうちのx0にドットを配置した場合は“x=0”を表し,x1にドットを配置した場合は,“x=1”を表し,同様に,y0とy1のうちのy0にドットを配置した場合は“y=0”を表し,y1にドットを配置した場合は,“y=1”を表していることを読み取ることができる。 してみると,【図5】には,x0とx1の中間点(x0とx1を結ぶ線とy0とy1を結ぶ線とが交わる点)から図面に向かって左側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“x=0”が表現され,前記中間点から右側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“x=1”が表現され,また,y0とy1の中間点(x0とx1を結ぶ線とy0とy1を結ぶ線とが交わる点)から図面に向かって下側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“y=0”が表現され,前記中間点から上側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“y=1”が表現されることが記載されていると認められる。 そうすると,訂正後の請求項1の「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との記載と,【図5】に記載されるドットパターンとは,「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に配置することによってデータ内容を定義し」ている点では,共通しているものの,【図5】のドットパターンは,「情報ドット」を「格子点の中心」から「どの程度ずらすか」によってデータ内容を定義しているものとはいえない。 つまり,【図5】のドットパターンでは,格子点の中心と情報ドットが配置される上下左右方向の位置とは,1マス分の距離で一定となっており,「どの程度」というような可変の距離は想定されていない。 したがって,訂正後の請求項1における「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との事項は,【図5】のドットパターンには記載されていない。 b 次に,【図6】について検討する。 【図6】の左上のc0,c1,c2,c3のうちのc0の位置に黒丸(ドット)が配置されており,【図6】の9箇所のc0,c1,c2,c3に対応する位置におけるドットの配置と,【図6】の下に標記されている「上記は,コード124432311=000111111001100000 表現可能範囲は,0≦コード≦49-1≦218-1」との記載を合わせて読むと,等式の左辺の「124432311」との記載と図面のドットの位置から,c0にドットを配置した場合は“1”を表し,c1にドットを配置した場合は“2”を表し,c2にドットを配置した場合は“3”を表し,c3にドットを配置した場合は“4”を表していることを読み取ることができ,また,同様に等式の右辺の「000111111001100000」との記載と図面のドット位置から,c0にドットを配置した場合は二進数“00”を表し,c1にドットを配置した場合は“01”を表し,c2にドットを配置した場合は“10”を表し,c3にドットを配置した場合は“11”を表していることを読み取ることができる。 してみると,【図6】には,c0とc2を結ぶ線とc3とc1を結ぶ線とが交わる点(中心点)から図面に向かって上側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“00”が表現され,前記中心点から右側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“01”が表現され,前記中心点から下側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“10”が表現され,前記中心点から左側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“11”が表現されることが記載されていると認められる。 そうすると,訂正後の請求項1の「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との記載と,【図6】に記載されるドットパターンとは,「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に配置することによってデータ内容を定義し」ている点では,共通しているものの,【図6】のドットパターンは,「情報ドット」を「格子点の中心」から「どの程度ずらすか」によってデータ内容を定義しているものとはいえない。 つまり,【図6】のドットパターンでは,格子点の中心と情報ドットが配置される上下左右方向の位置とは,1マス分の距離で一定となっており,「どの程度」というような可変の距離は想定されていない。 したがって,訂正後の請求項1における「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との事項は,【図6】のドットパターンには記載されていない。 c 次に,【図7】について検討する。 【図7】の上の段に記載されている,x1,x2,x3,x4,x5,x6の部分をみると,x1,x3,x4の位置にドットが配置されており,また,y1,y2,y3,y4,y5,y6の部分をみると,y2,y4,y5の位置にドットが配置されていることが読み取れる。 そして,【図7】のx1~x18のドットの有無及びy1~y18のドットの有無と,【図7】の下に標記されている「上記は,x座標101100111001010110 y座標010110011010100110 表現可能範囲は,0≦x座標≦218-1 0≦y座標≦218-1」との記載を合わせて読むと,x1~x18,y1~y18にドットを配置した場合は“1”を表し,ドットを配置しない場合には,“0”を表していることを読み取ることができる。 してみると,【図7】には,x1とx2を結ぶ線とy1とy2を結ぶ線とが交わる点(中心点)から図面に向かって左側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“x1=1”が表現され,ドットを配置しないと“x1=0”が表現され,同様に,前記中心点から図面に向かって右側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“x2=1”が表現され,ドットを配置しないと“x2=0”が表現され,また,前記中心点から図面に向かって上側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“y1=1”が表現され,ドットを配置しないと“y1=0”が表現され,同様に,前記中心点から図面に向かって下側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“y2=1”が表現され,ドットを配置しないと“y2=0”が表現されることが記載されていると認められる。 そうすると,訂正後の請求項1の「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との記載と,【図7】に記載されるドットパターンとは,「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に配置することによってデータ内容を定義し」ている点では,共通しているものの,【図7】のドットパターンは,「情報ドット」を「格子点の中心」から「どの程度ずらすか」によってデータ内容を定義しているものとはいえない。 つまり,【図7】のドットパターンでは,格子点の中心と情報ドットが配置される上下左右方向の位置とは,1マス分の距離で一定となっており,「どの程度」というような可変の距離は想定されていない。 したがって,訂正後の請求項1における「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との事項は,【図7】のドットパターンには記載されていない。 d 最後に,【図8】について検討する。 図8の上の段に記載されている,c1,c2,・・・c12の部分をみると,c1,c4,c6,c7,c8,c9の位置にドットが配置されており,c2,c3,c5,c10,c11,c12の位置にはドットが配置されていないことが読み取れる。 そして,【図8】のc1~c36におけるドットの有無と,【図8】の下に標記されている「上記は,コード100101111000010010100011110011100101 表現可能範囲は,0≦コード≦236-1」との記載を合わせて読むと,c1~c36にドットを配置した場合は“1”を表し,ドットを配置しない場合には,“0”を表していることを読み取ることができる。 してみると,【図8】には,c1とc2を結ぶ線とc3とc4を結ぶ線とが交わる点(中心点)から図面に向かって上側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“c1=1”が表現され,ドットを配置しないと“c1=0”が表現され,同様に,前記中心点から図面に向かって下側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“c2=1”が表現され,ドットを配置しないと“c2=0”が表現され,また,前記中心点から図面に向かって左側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“c3=1”が表現され,ドットを配置しないと“c3=0”が表現され,同様に,前記中心点から図面に向かって右側に一マス分ずれた位置にドットを配置すると“c4=1”が表現され,ドットを配置しないと“c4=0”が表現されることが記載されていると認められる。 そうすると,訂正後の請求項1の「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との記載と,【図8】に記載されるドットパターンとは,「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に配置することによってデータ内容を定義し」ている点では,共通しているものの,【図8】のドットパターンは,「情報ドット」を「格子点の中心」から「どの程度ずらすか」によってデータ内容を定義しているものとはいえない。 つまり,【図8】のドットパターンでは,格子点の中心と情報ドットが配置される上下左右方向の位置とは,1マス分の距離で一定となっており,「どの程度」というような可変の距離は想定されていない。 したがって,訂正後の請求項1における「前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との事項は,【図8】のドットパターンには記載されていない。 (イ)上記(ア)で検討したとおり,本件特許の【図5】~【図8】には,訂正事項1に係る「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との構成は記載されていない。 ところで,本件特許明細書の段落【0235】には,「データは,図103に示すように,ドット605を格子ブロック内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている。同図では,中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子ブロックで8通り,すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている。なお,さらに中心点から距離を変更した点をさらに8個定義すれば16通り,すなわち4ビットのデータを表現できる。」と記載されていて,「中心点から距離を変更した点をさらに8個定義すれば16通り,すなわち4ビットのデータを表現できる」ことは,中心点からずらす「程度」によって異なる情報を表現できることであるから,この記載は,訂正事項1に係る「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°づつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」に対応する記載であると認められる。 しかしながら,上記段落【0235】の記載は,【図103】~【図106】の実施例に関する記載であって,後記第7の「1」で検討するとおり,【図5】~【図8】の実施例に基づくドットパターンと【図103】~【図106】の実施例に基づくドットパターンを組み合わせることは,本件特許明細書では想定されておらず,そのような組合せをすることは,新規事項の追加と判断されるものであることからすると,【図5】~【図8】のドットパターンにおいて,【図103】の説明である段落【0235】の記載に基づく構成を採用することは,同様に,新規事項の追加と判断されるものである。 (ウ)上記(ア)及び(イ)で検討したとおりであるから,訂正事項1に係る「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°の2倍である90°ずつずらした前記縦横方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との事項は,本件特許明細書にも,本件特許の図面にも記載されていない。 したがって,訂正事項1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正ではなく,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 エ 小括 上記ア~ウで検討したとおり,訂正事項1は,特許法第134条の2第1項ただし書に掲げるいずれかの事項を目的とするものではなく,また,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しないから,訂正事項1に係る訂正を認めない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は,特許請求の範囲の請求項1の訂正(上記訂正事項1に係る訂正)に対応して,当該特許請求の範囲の請求項1の記載との整合を図るために明細書の記載を訂正するものであるから,特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 訂正事項2は,訂正事項1で請求項1の記載を訂正することに対応して,対応する明細書の段落【0010】の記載を訂正事項1と同様の内容で訂正するものであるから,上記(1)ウで検討した訂正事項1と同様の理由で,訂正事項2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正ではない。 したがって,訂正事項2は,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 ウ 小括 上記イで検討したとおり,訂正事項2は,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから,訂正事項2に係る訂正を認めない。 (3)訂正事項3~7について 訂正事項3~7それぞれの適否を以下の(4)~(8)で検討する前に,本件特許明細書における,「格子線」,「格子点」,「格子ドットLD」,「キードットKD」,「データブロック」,「格子領域」,「格子ブロック」と「ダミードット」,「空ドット」,「情報ドット」の各用語の意味を検討する。 なお,本件特許明細書は,平成23年6月30日付け手続補正により段落【0010】~【0012】が変更され,段落【0033】,【0041】,【0044】,【0045】,【0048】,【0050】が削除されているが,それ以外は願書に最初に添付した明細書(以下,「出願当初明細書」という。)と同じである。また,特許請求の範囲については,願書に最初に添付した特許請求の範囲から変更されているが,図面については,願書に最初に添付した図面から変更,削除はされていない(以下,出願当初明細書,願書に最初に添付した特許請求の範囲,及び図面を合わせて「出願当初明細書等」という。)。 ア 本件特許明細書と各図面の対応について 本件特許明細書の記載を,記載の文脈に沿って理解すると,本件特許明細書の段落【0228】~【0246】までは,段落【0228】に「次に,本発明におけるドットパターンの仕様について図103~図106を用いて説明する。」と記載されるとおり,主に,本件特許の図面の【図103】~【図106】を用いた,ドットパターンの仕様の説明であると認められる。 詳細には,訂正の対象部分の本件特許明細書は,以下のような,本件特許の図面との対応関係があると認められる。 ・本件特許明細書の段落【0229】~【0233】:本件特許の図面の【図105】を用いた,ドットパターンの構成要素の説明, ・本件特許明細書の段落【0234】:本件特許の図面の【図104】を用いた,「データの並び」の順序の説明, ・本件特許明細書の段落【0235】:本件特許の図面の【図103】を用いた,ドットを「ずらした点」の説明, ・本件特許明細書の段落【0236】~【0237】:「キードットKD」の変形(配置とずらし方)の説明。 なお,本件特許明細書の段落【0238】以下には,訂正の対象ではないが,以下の説明の記載がある。 ・本件特許明細書の段落【0238】~【0240】は,本件特許の図面の【図74】,【図76】,【図78】を用いた,角度パラメータによる階層的な情報配置の説明, ・本件特許明細書の段落【0241】は,本件特許の図面の【図106】を用いた,「ダミードット」の説明, ・本件特許明細書の段落【0242】は,「空ドット」の説明, ・本件特許明細書の段落【0243】~【0244】は,撮影中心と「異なるブロック」(「他のブロック」)の読み取りの説明, ・本件特許明細書の段落【0245】~【0246】は,本発明のドットパターンが,格子ドットを用いることで撮影条件による歪みに強いことの説明。 さらに,本件特許明細書の段落【0247】~【0254】は,本件特許の図面の【図61】~【図67】を用いた,サブブロックで構成された1ブロック相当のドットパターンをカメラで読み込む方法の説明である。 そこで,以下では,訂正事項の検討において,上記のような本件特許明細書の記載における前後の文脈に従って,本件特許明細書と対応する各図面とを参照して,検討する。 イ 「格子線」及び「格子点」について 本件特許明細書には,「格子線」及び「格子点」について,段落【0010】~【0012】に請求項1-請求項3の引き写しが記載され,また,段落【0229】,【0230】,【0232】,【0237】,及び【0288】に以下の記載があるほかは,「格子線」及び「格子点」に関する特段の記載はなされていない。(当審注:下線は当審で付加。) 「【0229】 ドットパターン部601は,図105に示すように,格子状に配置されたドットで構成されている。なお縦横方向の格子線はドットの配置位置を説明するためのものであり実際の印刷物上には存在しない。 【0230】 ここで,4×4個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び,この格子ブロックの四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている。格子ドットLD同士の間隔は0.35mm~1.0mm,好ましくは0.5mm程度であることが最適である。また,ドットの直径は前記格子ドット間隔の8~10%程度であることが望ましい。」 「【0232】 キードットKDとは,格子ドットLDの位置をずらしたものである。すなわち,格子ドットLDは本来格子点上に配置されているが,この位置をずらしてキードットKDを配置している。なお,キードットKDの格子点からのずれは約20%前後程度が好ましい。」 「【0237】 また,本発明のドットパターンでは,キードットのずらし方を変更することにより,同一のドットパターン部であっても別の意味を持たせることができる。つまり,キードットKDは格子点からずらすことでキードットKDとして機能するものであるが,このずらし方を格子点から等距離で45度ずつずらすことにより8パターンのキードットを定義できる。」 「【0288】 この場合,ペン型スキャナ1001の先端部をヒントを希望する空白枠内1133に当接させることで,該空白枠内に形成されたドットパターンを読み込んで当該ワードのヒントを液晶表示部1131に表示させることができる。このとき,同じ空白枠内に当接させる場合であっても,ペン型スキャナ1001を当接させる角度によって縦方向のヒント,横方向のヒント,斜め方向のヒントをそれぞれ表示させることができる。このとき,前述のように,格子ドットに対するキードットの格子点からのずれを中央処理装置(CPU)で計算する際に,カメラの傾き(紙面の鉛直軸を中心にした撮像素子の回転方向へのずれ)を計算できるため,カメラの傾きに応じたクロスワードパズルの縦,横,斜め方向を認識することができる。したがってそれに対応したヒントを記憶手段から読み出して表示したりスピーカ1007から発声させることができる。」 上記記載によれば,本件特許明細書において,「格子線」は,「ドットの配置位置を説明するためのもので」,「実際の印刷物上には存在しない」,「縦横方向の線」のことであることが読み取れ,また,「格子点」は,「格子線の交点」であることが読み取れる。 ここで,「格子」とは,「○一(当審注:原文の「丸付き漢数字」は,「〇」を付して表記する。以下同様。) 細い・木(竹)を縦横(タテヨコ)に組んだもの。建具(タテグ)に使う。○二 ←格子戸。 ○三 ←格子じま。」(三省堂国語辞典第三版(中型版),1989年3月25日 第32刷)の意味であり,また,「格子じま」とは,「すじを縦横(タテヨコ)に組み合わせた・しま(模様《モヨウ》)。」(三省堂国語辞典第三版(中型版),1989年3月25日 第32刷)の意味であるところ,当該意味は,本件特許明細書において,「格子線」は,「縦横方向の線」であるという,「格子線」に関する上記記載内容と整合するものであるから,本件特許明細書における「格子線」とは,「ドットの配置位置を説明するためのもので,実際の印刷物上には存在しない,縦横方向の線」のことであり,また,「格子点」とは,「格子線の交点」のことであると理解される。 「本件特許の図面の【図105】 [図:0001393415000001.jpg] 」 ウ 「格子ドットLD」及び「キードットKD」について 本件特許明細書の段落【0229】の「ドットパターン部601は,図105に示すように,格子状に配置されたドットで構成されている。なお縦横方向の格子線はドットの配置位置を説明するためのものであり実際の印刷物上には存在しない」との記載から,本件特許の図面の【図105】における縦横方向の線は,上記イに記載したように,「ドットの配置位置を説明するためのもので,実際の印刷物上には存在しない,縦横方向の線」であり,当該「縦横方向の線」のうち,その交点が「格子点」となる線が「格子線」であると認められる。 そして,本件特許明細書の段落【0232】の「格子ドットLDは本来格子点上に配置されているが,この位置をずらしてキードットKDを配置している」との記載から,「格子ドットLD」は,本件特許の図面の【図105】に記載されている縦横方向の格子線の交点である格子点上に配置されているドットであると認められ,下記の【図105A】においては,格子点上の位置に置かれた丸の印の中のドットそれぞれが「格子ドットLD」であると認められる。(当審注:なお,下記の【図105A】は,本件特許の図面の【図105】に,当審において説明の都合上,丸,三角等の印を付した図である。) また,同じく段落【0232】の「キードットKDとは,格子ドットLDの位置をずらしたものである」との記載と,本件特許の図面の【図105】中の,縦横方向に規則的に配置された「格子ドットLD」が当該規則どおりであれば本来配置されているはずの格子点から上方にずれた位置に置かれた2つのドットに対する「KD」(すなわち「キードット」)との表記から,下記の【図105A】においては,図中の2箇所の「KD」と表記された点を含む,格子点から上方にずれた位置に置かれた三角の印の中のドットそれぞれが「キードットKD」であると認められる。 「当審で【図105】に記号を付した【図105A】 [図:0001393415000002.jpg] 」 エ 「データブロック」について 本件特許明細書の段落【0233】の「キードットKDに囲まれた領域,またはキードットKDを中心にした領域が1つのデータを構成している」との記載から,ここで上記の【図105A】を参照すると,三角の印の中の4つのキードットKDに囲まれた範囲内には複数のドット,すなわち,データが含まれるから,段落【0233】の「1つのデータを構成」している,「キードットKDに囲まれた領域」が,ひとかたまりのデータ,すなわち,「1つのデータブロックを構成」していることを意味していることは明らかであって,上記の【図105A】においては,4つのキードットKDに囲まれている二重線の四角で囲まれた領域が「1つのデータブロック」であると認められる。 オ 「格子領域」について 「格子領域」という用語は,本件特許明細書の段落【0230】に「4×4個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び」との定義が記載されているのみである(当審注:後記(4)のとおり,「4×4個」は「図105における4×5個」の誤記であると認められる。)。当該記載の定義から,キードットKDで囲まれた領域である1つのデータブロックは,複数の格子領域から構成されているものであると認められる。 ここで,「格子領域」とは,文言どおりの「格子」状の「領域」,すなわち「四角形の領域」であると認められるところ,上記の【図105A】における点線の四角で囲まれた領域(格子ドットLDに相当する4つの丸の印の中のドットに囲まれた領域,または,キードットKDがずらされる前の格子ドットLDが本来配置されているはずの格子点と3つの丸の印の中のドットに囲まれた領域)のそれぞれは,4つのキードットKDで囲まれた1つのデータブロックを構成する複数の「四角形の領域」であることから,これを「格子領域」であると解釈するのが自然である。 カ 「格子ブロック」について 上記本件特許明細書の段落【0230】の記載からすると,「格子ブロック」は,「データブロック」と同義であり,複数の格子領域から構成されているものであると認められる。 キ 「ダミードット」,「空ドット」,「情報ドット」について 上記ウ記載の「格子ドットLD」及び「キードットKD」のほか,「ドット」として,「ダミードット」,「空ドット」,「情報ドット」について,以下の記載がある。(当審注:下線は当審で付加した。) (ア)本件特許明細書の段落【0105】~【0107】 「【0105】 図21は本発明のカメラ入力による情報入出力方法の構成を示すブロック図であり,(a)はドットコードの生成について,(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図22はドットパターンの一例を示す正面図である。 【0106】 本発明のカメラ入力によるドットパターンを用いた情報入出力方法は,ドットパターン1の生成と,そのドットパターン1の認識と,このドットパターン1から対応した情報およびプログラムを出力する手段とからなる方法である。すなわち,ドットパターン1をカメラユニット2によりその画像データを取り込み,先ずキードット3を抽出し,次に情報ドット4を抽出することによりデジタル化して情報領域を抽出して情報の数値化を図り,その数値情報より,このドットパターン1から対応した情報およびプログラムを出力させる方法である。 【0107】 本発明のドットパターン1の生成は,ドットコード生成アルゴリズムにより,情報を認識させるために微細なドット(キードット(KD)3a,格子ドット(LD)3b,情報ドット4)を所定の規則に則って配列する。ドットパターン1の認識には,カメラユニット2のレンズによる歪率の補正,またはカメラユニット2の傾きによる歪の補正と,キードット3a(KD)と情報ドット4の数値情報の再生とからなる。ドットパターン1については,C-MOSカメラまたはCCDカメラ等の撮像素子を備えたカメラユニット2を用いてその画像データを取り込む。」 (イ)本件特許の図面の【図22】 「 [図:0001393415000003.jpg] 」 (ウ)本件特許明細書の段落【0241】~【0242】 「【0241】 本発明において,ダミードットDDを定義することができる。このダミードットDDは,4個の格子ドットLDの正中心に配置したドットである(図106(a)参照)。このようなダミードットは,マスク領域毎に境界を定義した絵本等に適している。図106(c)に示すようにmask1とmask2の領域の境界にダミードットDDを配置している。このようなマスク境界にダミードットDD領域を配置することにより,それぞれのマスク領域に定義されたコード情報を同時に読み取ってしまうことを防止している。図106(d)はダミードットDDの配置状態を示した図である。 【0242】 また,絵本等の背景部分については,格子ドットの中心にドットを配置しない空ドットを配置することが好ましい。空ドットは,情報が記録された通常のデータドットに比べてドット数が少ないため,ドットパターンの目立たない印刷が可能となる。また,空ドットの連続であるために,模様が生じにくく,単一色の背景に適している。」 (エ)本件特許の図面の【図103】 「 [図:0001393415000004.jpg] 」 (オ)本件特許の図面の【図104】 「 [図:0001393415000005.jpg] 」 (カ)本件特許の図面の【図106】 「 [図:0001393415000006.jpg] 」 (キ)本件特許明細書の段落【0248】 「【0248】 図61に示すように,カメラは,被写体に光を照射するためにLEDと,LEDから出射される光をフィルターするためのLEDアクリルフィルターと,被写体からの反射光をフィルターするための可視光フィルター(赤外線透過フィルター)とを備える。カメラを収納する筒は,長手方向が10mm前後で構成されており,ドットパターンの撮像範囲は直径10mmとすると,4mm×4mmのドットパターン1ブロック分(I1~I16)を読み込むためには,最大2r=2×4√2=11.28mmの撮像範囲が必要となる(図62参照)。これを解消するために,1ブロックとして構成されるキードットの周辺に配置される情報ドット16個を順次読み込むのではなく,他の情報ドットと独立的な情報を有する4個の情報ドット毎(1/4ブロック(サブブロック)毎)に読み込む。これにより,撮像範囲からはずれた1/4ブロックの情報ドットを撮像範囲内にある,他のブロックの対応する情報ドット(1/4ブロック)を入力することにより,1ブロック分の情報を撮像範囲の直径10mm内で入力可能とする。」 (ク)本件特許の図面の【図62】 「 [図:0001393415000007.jpg] 」 (ケ)本件特許の図面の【図63】 「 [図:0001393415000008.jpg] 」 (コ)上記(ア)~(ケ)の記載から,4つの「格子ドットLD」(格子ドットLDの位置をずらした「キードットKD」である場合を含む)で囲まれた領域に配置されるドットとして,以下の3種類のドットがあると認められる。 ・「4個の格子ドットLDの正中心に配置した」ドットである「ダミードットDD」(特に,上記(ウ)の段落【0241】及び上記(カ)の【図106】の(a)参照), ・「格子ドットの中心にドットを配置しない」「空ドット」(特に,上記(ウ)の段落【0242】参照), ・4つの格子ドット△によって囲まれている領域の中心から所定の規則に則ってずらされて配置されている「情報ドット4」(特に,上記(ア)の段落【0107】及び上記(イ)の【図22】におけるX1~X12,Y1~Y12を参照)。 ここで,上記(カ)の【図106】の(a)及び(d)を参照すると,格子点上に配置されている格子ドットによって囲まれている領域である格子領域内に「ダミードットDD」や「情報ドット」を配置する場合に,「ダミードットDD」が配置される位置であり,かつ,「情報ドット」をずらす基点でもある「4個の格子ドットLDの正中心」は,「格子領域内の中心点」である。 よって,「情報ドット」は,「4個の格子ドットLDの正中心」や「格子領域内の中心点」からずらしたドットであるといえる。 (4)訂正事項3について ア 訂正の目的 上記(3)アに記載したとおり,本件特許明細書の段落【0230】は,本件特許の図面の【図105】を用いたドットパターンの構成要素を説明しているものと認められる。そして,上記(3)エに記載したとおり,「データブロック」は,上記【図105A】において4つのキードットKDに囲まれている二重線の四角で囲まれた領域であり,上記(3)オに記載したとおり,「格子領域」は,上記【図105A】において4つの格子ドットLD(格子ドットLDの位置をずらしたキードットKDである場合を含む)に囲まれている点線の四角で囲まれた領域であると認められるところ,4つのキードットKDに囲まれた,点線の四角で示された格子領域の数を計算すると,4×5(=20)個となるので,訂正後の段落【0230】の記載が正しく,訂正前の段落【0230】の記載は,誤記であると認められる。 また,訂正前の段落【0230】において,「4×4個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び,この格子ブロックの四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている」と記載されているが,上記(3)オに記載したとおり,上記【図105A】において,格子ブロックの四隅には格子線の交点(格子点)からずれた位置にキードットKDが配置されており,格子線の交点(格子点)上には格子ドットLDが配置されていない。そうすると,「この格子ブロック」における「この」が指しているのは,「格子ブロック」ではなく,四隅に格子ドットLDが配置されている「格子領域」であると解するのが自然であり,訂正前の段落【0230】の記載は,誤記であると認められる。 したがって,訂正事項3は,特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正は,出願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければならないところ,出願当初明細書等に記載した事項とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項を意味し,当該訂正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。(以下,本件審決において,「新規事項の有無」の判断について同じ。) そして,上記アに記載したとおり,訂正事項3は,出願当初明細書等における段落【0230】に記載した事項,及び【図105】に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項3は,誤記を訂正したものであるから,技術的事項を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 (5)訂正事項4について ア 訂正の目的 上記(3)エ及びカに記載したとおり,4つのキードットKDに囲まれた領域が「格子ブロック」であると認められるところ,本件特許明細書の段落【0233】に「キードットKDに囲まれた領域,またはキードットKDを中心にした領域が1つのデータを構成している」と記載されるように,キードットKDに囲まれた格子ブロック自体が1つのデータを構成しているものと認められる。 そうすると,訂正前の段落【0231】の「どの格子ブロックからどの格子ブロックまでが1つのデータであるかを示すためにキードットを配置している」との記載は誤記であり,上記(3)カに記載したとおり,「格子ブロック」が複数の格子領域から構成されたものであることから,上記訂正前の段落【0231】の記載は,「どの格子領域からどの格子領域までが1つのデータであるかを示すためにキードットを配置している」との記載が正しいと認められる。 したがって,訂正事項4は,特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 上記アに記載したとおり,訂正事項4は,出願当初明細書等における段落【0230】,【0231】,【0233】に記載した事項,及び【図105】に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項4は,誤記を訂正したものであるから,技術的事項を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 (6)訂正事項5について ア 訂正の目的 上記(3)エ及びオに記載したとおり,「格子領域」は,上記【図105A】において4つの格子ドットLD(格子ドットLDの位置をずらした「キードットKD」である場合を含む)に囲まれている点線の四角で囲まれた領域であり,「データブロック」は,上記【図105A】において4つのキードットKDに囲まれている二重線の四角で囲まれた領域であって,4×5個の格子領域から構成されているものと認められるところ,これら4×5個の格子領域それぞれが,格子領域内の中心点からドットをどの程度ずらすかによってデータ内容を定義しているものと認められる。そして,上記【図105A】の点線の四角で示された格子領域それぞれにおいて,格子領域内にあるドットが,本件特許の図面の【図103】に示されるように中心点からずらされてデータ内容を定義しているものと認められる。 そうすると,訂正前の段落【0235】の「データは,図103に示すように,ドット605を格子ブロック内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている」との記載における「格子ブロック」は「格子領域」の誤記であると認められる。 したがって,訂正事項5は,特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 上記アに記載したとおり,訂正事項5は,出願当初明細書等における段落【0235】に記載した事項,及び【図103】,【図105】に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項5は,誤記を訂正したものであるから,技術的事項を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 (7)訂正事項6について ア 訂正の目的 上記(3)エ及びオに記載したとおり,「格子領域」は,上記【図105A】において4つの格子ドットLD(格子ドットLDの位置をずらした「キードットKD」である場合を含む)に囲まれている点線の四角で囲まれた領域であり,「データブロック」は,上記【図105A】において4つのキードットKDに囲まれている二重線の四角で囲まれた領域であって,4×5個の格子領域から構成されているものと認められるところ,これら4×5個の格子領域それぞれが,格子領域内の中心点からドットをどの程度ずらすかによってデータ内容を定義しているものと認められる。そして,上記【図105A】の点線の四角で示された格子領域それぞれにおいて,格子領域内にあるドットが,【図103】に示されるように中心点からずらされてデータ内容を定義しているものと認められる。 そうすると,訂正前の段落【0235】の「同図では,中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子ブロックで8通り,すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている」との記載における「格子ブロック」は「格子領域」の誤記であると認められる。 したがって,訂正事項6は,特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 上記アに記載したとおり,訂正事項6は,出願当初明細書等における段落【0235】に記載した事項,及び【図103】,【図105】に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項6は,誤記を訂正したものであるから,技術的事項を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 (8)訂正事項7について ア 訂正の目的 上記(3)エ及びオに記載したとおり,「格子領域」は,上記【図105A】において4つの格子ドットLD(格子ドットLDの位置をずらした「キードットKD」である場合を含む)に囲まれている点線の四角で囲まれた領域であり,「データブロック」は,上記【図105A】において4つのキードットKDに囲まれている二重線の四角で囲まれた領域であって,複数個の格子領域(すなわち,「格子領域群」)から構成されているものと認められる。そして,本件特許明細書の段落【0236】における「キードットKDがデータ領域の範囲を定義している」とは,キードットKDがデータ領域の範囲であるデータブロック(格子領域群)を定義していることにほかならない。 そうすると,訂正前の段落【0236】の「つまり,前述のようにキードットKDがデータ領域の範囲を定義しているため,このキードットKDの配置を変更すれば任意の可変長の格子ブロック群をデータ格納領域として扱うことができるわけである」との記載における「格子ブロック群」は「格子領域群」でなければならず,上記訂正前の段落【0236】における「格子ブロック群」は「格子領域群」の誤記であると認められる。 したがって,訂正事項5は,特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 上記アに記載したとおり,訂正事項7は,出願当初明細書等における段落【0236】に記載した事項,及び【図105】に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項7は,誤記を訂正したものであるから,技術的事項を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 3 訂正請求に対する結論 上記2(1)で検討したとおり,訂正事項1は,特許法第134条の2第1項ただし書に掲げるいずれかの事項を目的とするものではなく,また,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しないから,訂正事項1に係る訂正を認めない。 また,上記2(2)で検討したとおり,訂正事項2は,特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから,訂正事項2に係る訂正を認めない。 また,上記2(3)~(8)で検討したとおり,訂正事項3~7は,特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に掲げる事項を目的とするものであり,また,訂正事項3~7は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,訂正事項3~7については,訂正を認める。 第3 本件特許発明 以上のとおり,本件訂正のうち,請求項1~3に係る訂正事項1,2は認められないので,本件特許の請求項1~3に係る発明は,特許請求の範囲に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。(以下,「請求項1に係る発明」を「本件特許発明1」といい,同様に「請求項2に係る発明」等を「本件特許発明2」等といい,本件特許発明1~3を総称して「本件特許発明」という。) 「【請求項1】 媒体表面に印刷され,所定の配置法則で印刷された所定のドットパターンを読み取る光学読取手段と, 予め所定の音声情報をドットパターンと関連づけた参照テーブルと, 前記音声情報が記憶された音声記憶手段と, 前記光学読取手段によって前記ドットパターンが読み取られたときに,前記参照テーブルを参照して前記音声記憶手段から当該ドットパターンに関連付けられた音声情報を読み出して出力する音声出力手段とからなる音声情報再生装置であって, 前記所定のドットパターンは,媒体面上に形成され,且つデータ内容が定義できる情報ドットが配置されたドットパターンであって,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し,前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置されたドットパターンであることを特徴とする音声情報再生装置。 【請求項2】 前記ドットパターンは,水平方向および/または垂直方向に,複数繰り返されていることを特徴とする請求項1記載の音声情報再生装置。 【請求項3】 前記格子ドットの1つは,前記格子点からのずれ方によって一般コードまたはXY座標を示すフラグを意味していることを特徴とする請求項1または2記載の音声情報再生装置。」 第4 無効理由 1 請求人の請求の趣旨および主張した無効理由の概要 請求人は,「特許第4817157号発明の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」との請求の趣旨を述べ,証拠方法として以下の書証を提出し,本件特許が無効とされるべき理由として,以下に要約される無効理由1ないし9を主張している。 (1)無効理由1:特許法第36条第4項第1号 本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明が,下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず,本件特許の請求項1~3に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し,無効とされるべきである。 ア 本件特許明細書段落【0228】~【0246】及び【図103】~【図106】の記載からは,「格子領域」「格子ブロック」「格子ブロック群」を互いに矛盾なく定義することができず,その結果として,「情報ドット」も正しく定義することができない。したがって,本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載は,少なくとも,本件特許発明1の「前記所定のドットパターンは」,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」に関し,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 イ 本件特許発明1における「第一方向ライン」「第二方向ライン」を「ドットパターン」のみから一義的に導き出せることが,本件特許明細書及び図面には記載されている必要があるところ,少なくとも明示的には「ドットパターン」のみから「第一方向ライン」「第二方向ライン」を導き出せることは,本件特許明細書及び図面には記載されておらず,本件特許明細書及び図面の記載は,本件特許発明1の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいうことができないのであるから,本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載は,少なくとも,本件特許発明1の「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置されたドットパターンである」に関し,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (2)無効理由2:特許法第17条の2第3項 本件特許に係る出願の願書に添付した特許請求の範囲について,平成23年6月30日付でした補正は,下記の点で,本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから,平成23年6月30日付でした補正は,特許法第17条の2第3項の規定に規定する要件を満たしておらず,本件特許の請求項1~3に係る特許は同法第123条第1項第1号に該当し,無効とされるべきである。 ア 本件特許明細書段落【0228】~【0246】及び【図103】~【図106】に記載される発明と,本件特許に係る【図5】,【図6】,【図7】,【図8】に記載される発明が組合せたものとされる本件特許発明1は,本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものではない。 イ 本件特許発明1における「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように」という点は,本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものではない。 (3)無効理由3:特許法第36条第6項第1号 本件特許の請求項1~3に係る発明は,下記の点で本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないから,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず,本件特許の請求項1~3に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し,無効とされるべきである。 ア 本件特許発明1の「前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン」「該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン」という点は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。 イ 本件特許発明1の「前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」という点は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。 ウ 本件特許発明3の「前記格子ドットの1つは,前記格子点からのずれ方によって一般コードまたはXY座標を示すフラグを意味していることを特徴とする」という点は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (4)無効理由4:特許法第36条第6項第2号 本件特許の請求項1~3に係る発明は,下記の点で明確ではないから,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,本件特許の請求項1~3に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し,無効とされるべきである。 ア 本件特許発明1の「音声情報再生装置」の「媒体表面に印刷され,所定の配置法則で印刷された所定のドットパターンを読み取る光学読取装置」を「ドットパターン」に関する事項を用いて特定しようとする記載は明確ではない。 イ 本件特許発明1の「縦横方向」「縦方向」「横方向」「水平方向」「垂直方向」は明確ではない。 ウ 本件特許発明1における「格子点の中心」は明確ではない。 エ 本件特許発明1における「格子線」「格子点」「格子点の中心」「縦横方向に等間隔に設けられた格子線」「格子点を中心に」は明確ではない。 オ 本件特許発明1における「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすか」は明確ではない。 カ 本件特許発明1における「所定の格子点間隔」は明確ではない。 キ 本件特許発明3の「格子点からのずれ方」は明確ではない。 ク 本件特許発明3の「一般コードまたはXY座標を示すフラグ」は明確ではない。 (5)無効理由5:特許法第29条第2項 本件特許発明1,2は,甲第1~3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,本件特許の請求項1,2に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 (6)無効理由6:特許法第29条第2項 本件特許に係る出願(特願2010-267198号)(以下,「本件特許出願」という。)は,特許法第41条に基づく優先権の主張を適法にしたものではなく,本件特許発明1,2に関する新規性,進歩性等の判断は,原出願である特願2005-501954号(PCT/JP2003/012364)の現実の国際出願日である平成15年9月26日を基準としてなされるべきものである。 そして,本件特許発明1,2は,甲第4,3,2,5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,本件特許の請求項1,2に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 (7)無効理由7:特許法第29条第2項 本件特許出願は分割の要件を満たさないから,本件特許出願の出願日は,現実の出願日である平成22年11月30日とすべきものである。 そして,本件特許発明1,2は,甲第6,3,5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,本件特許の請求項1,2に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 (8)無効理由8:特許法第29条第2項 本件特許出願は分割の要件を満たさないから,本件特許出願の出願日は,現実の出願日である平成22年11月30日とすべきものである。 そして,本件特許発明1~3は,甲第7,3,8号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,本件特許の請求項1~3に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 (9)無効理由9:特許法第29条第1項第3号 本件特許出願は分割の要件を満たさないから,本件特許出願の出願日は,現実の出願日である平成22年11月30日とすべきものである。 そして,本件特許発明1~3は,甲第8号証に記載されたものであるから,本件特許の請求項1~3に係る特許は,特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 (10)証拠方法 甲第1号証:特開平10-326331号公報(平成10年(1998年)12月8日公開) 甲第2号証:米国特許出願公開第2002/0091711号明細書(2002年7月11日公開) 甲第3号証:特開昭60-108894号公報(昭和60年(1985年)6月14日公開) 甲第4号証:英国特許出願公開第2384094号明細書(2003年7月16日公開) 甲第5号証:特開平03-038791号公報(平成3年(1991年)2月19日公開) 甲第6号証:特開2007-288756号公報(平成19年(2007年)11月1日公開) 甲第7号証:国際公開第2006/070458号(2006年7月6日公開) 甲第8号証:国際公開第2004/029871号(2004年4月8日公開) 甲第9号証:優先権証明書(特願2002-281815号) 甲第10号証:優先権証明書(特願2002-292907号) 甲第11号証:優先権証明書(特願2002-380503号) 甲第12号証:優先権証明書(特願2002-380932号) 甲第13号証:優先権証明書(特願2002-381743号) 甲第14号証:特願2008-177416号に対する平成22年11月30日付拒絶理由通知書 甲第15号証:特願2008-177416号に対する平成23年1月31日付意見書 甲第16号証:特願2010-254460号に対する平成23年3月8日付拒絶理由通知書 甲第17号証:特願2010-254460号に対する平成23年4月28日付意見書 甲第18号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における平成30年9月7日付原告第1準備書面 甲第19号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における平成31年1月31日付原告第3準備書面 甲第20号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における令和元年6月12日付原告第5準備書面 甲第21号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における平成31年4月16日付被告補助参加人第5準備書面 甲第22号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における令和元年10月7日付原告第7準備書面 甲第23号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における平成31年4月16日付被告補助参加人第5準備書面抜粋 甲第24号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件における令和元年11月6日付原告第8準備書面 甲第25号証:ウィキペディア(Wikipedia)の『ブロック(データ)』 甲第26号証:長屋隆之外 "4G-11 高速読取り対応2次元コード[QRコード]の開発" 情報処理学会第52回(平成8年前期)全国大会講演論文集 メディア情報処理 (1996), pp. 2-253~2-254 甲第27号証:野村政弘外 "QRコード(2次元バーコード)の開発と生産管理" 生産管理, Vol.8, No.2, (2002年3月), pp. 107-112 甲第28号証:特願2007-026471号(特開2007-115291号公報) 甲第29号証:特願2008-177416号(特開2009-026311号公報) 甲第30号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件被告補助参加人第9準備書面 甲第31号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件原告第9準備書面 甲第32号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件被告補助参加人第10準備書面 甲第33号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件原告第10準備書面 甲第34号証:特願2010-267198号に対する平成23年4月27日付拒絶理由通知書 甲第35号証:特願2010-267198号に対する平成23年6月30日付意見書 甲第36号証:特願2010-267198号に対する平成23年6月30日付手続補正書 甲第37号証:平成30年(ワ)第10126号特許権侵害差止等請求事件判決 甲第38号証:令和2年(ネ)第10045被控訴人補助参加人控訴答弁書 甲第39号証:令和2年(ネ)第10045被控訴人補助参加人第1準備書面 甲第40号証:令和3年3月4日付知的財産高等裁判所特許権侵害差止等請求控訴事件(令和2年(ネ)第10045号)判決 甲第41号証:令和3年3月4日付知的財産高等裁判所特許権侵害差止等請求控訴事件(令和2年(ネ)第10045号)判決の判決確定証明書 甲第42号証:特許第4231947号公報 第5 被請求人の主張および証拠方法 被請求人は,「請求人の請求をすべて棄却する。審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める。」との反論を述べ,上記請求人の主張する無効理由は,いずれも理由がないと主張し,証拠方法として以下の書証を提出している。 乙第1号証:特許第4817157号訂正請求書 乙第2号証:岩波 数学入門辞典,「格子」の項 乙第3号証:広辞苑 第七版,「一般」の項 乙第4号証:広辞苑 第七版,「コード」の項 乙第5号証:広辞苑 第七版,「フラグ」の項 乙第6号証:特許・実用新案審査ハンドブック附属書Aの抜粋(記載要件(特許法第36条)に関する事例集〔事例41〕) 乙第7号証:広辞苑 第七版,「横」の項 乙第8号証:広辞苑 第七版,「縦」の項 乙第9号証:広辞苑 第七版,「垂直」の項 乙第10号証:広辞苑 第七版,「水平」の項 乙第11号証:広辞苑 第七版,「点」の項 乙第12号証:広辞苑 第七版,「ずれる」の項 乙第13号証:特開平6-231466号公報(平成6年8月19日公開) 乙第14号証:特開2004-166177号公報(平成16年6月10日公開) 乙第15号証:特許・実用新案審査基準,「3.2 分割出願の明細書等に記載された事項が,原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること(要件2)」の項 乙第16号証:特許・実用新案審査基準,(参考)知財高判平成20年5月30日(平成18年(行ケ)10563号)「ソルダーレジスト」大合議判決 乙第17号証:特願2012-39515号に対する平成25年5月20日付け拒絶理由通知書 乙第18号証:特願2012-39515号に対する平成27年4月13日付け拒絶理由通知書 乙第19号証:特願2013-162943号に対する平成26年10月9日付け拒絶理由通知書 乙第20号証:特願2013-162943号に対する平成27年6月4日付け拒絶理由通知書 乙第21号証:特開2001-343979号公報,特開2002-140541号公報,特開2002-164862号公報,特開2002-152833号公報,特開2002-82959号公報,特開2002-64807号公報,特開2002-32396号公報,特開平11-265324号公報,及び,特開平11-215217号公報における特許出願公開公報の抄録 乙第22号証:特許技術用語集第3版,「連設」の項 乙第23号証:特願2010-254460号における平成23年4月28日付け手続補正書 乙第24号証:特開2011-44180号公報 乙第24号証:特許・実用新案審査ハンドブック附属書B「第1章 コンピュータソフトウエア関連発明」,「b 技術的思想ではないもの」における,「情報の提示(提示それ自体,提示手段,提示方法等)に技術的特徴があるものは,情報の単なる提示に当たらない。」との記載 乙第25号証:特開2002-23937号公報,特開2000-309192号公報,特開平9-123683号公報,特開平5-262093号公報,特表平5-503473号公報,特開平3-297407号公報,特開平3-292908号公報,特開平3-292907号公報,特開昭59-125513号公報,特開昭56-162697号公報,特開昭56-105999号公報,特開昭55-144198号公報,特開昭54-159058号公報,特開昭54-148625号公報,特開昭54-89844号公報,特開昭54-29221号公報,特開昭52-134521号公報,特開昭52-4326号公報,特開昭51-70027号公報,特開昭50-21820号公報,特開昭49-112716号公報,特開昭47-16217号公報,及び,特開昭46-214号公報における特許出願公開(公表)公報の抄録 乙第26号証:特開2002-23937号公報 乙第27号証:特開平9-123683号公報 乙第28号証:特開平5-262093号公報 乙第29号証:広辞苑 第七版,「群」の項 乙第30号証:岩波 情報科学辞典,「パルス」の項 乙第31号証:令和2年(ネ)第10045号特許権侵害差止等請求控訴事件控訴理由書 乙第32証:広辞苑無料検索 格子 乙第33号証:NTT DoCoMoテクニカル・ジャーナル Vol.1 NO.3 乙第34号証:広辞苑 第七版,「仮想」の項 第6 当審の判断 当審は,無効理由1~9について検討したところ,無効理由1~3のみに理由があると判断する。無効理由1~3についての判断の理由は以下のとおり。 1 無効理由2(特許法第17条の2第3項)について 事案に鑑み,まず,無効理由2について先に検討する。 (1)新規事項の追加の判断の枠組みについて 特許請求の範囲等の補正は,出願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければならないところ,出願当初明細書等に記載した事項とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項を意味し,当該補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。 以下,この観点に立って,判断する。 (2)本件特許発明及びその意義 ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。 (ア)発明の属する技術分野 「本発明は,印刷物に形成したドットパターン情報を光学的に読み取り該ドットパターンに対応した種々の情報を再生する技術に関する。」【0001】 (イ)背景技術 「従来より,光センサを用いて絵本やゲームカードに印刷されたバーコードを読み取り,特定の音声を発音させる音声発生玩具が提案されている。これらの音声発生玩具では,読み込んだバーコードに対応した音声情報をメモリから読み出すことで多種の音声情報を再生できるようにしていた。」【0002】 「しかし,このようなバーコードを用いた技術は,紙面上にバーコード印刷用の専用領域を確保しなければならず,かつバーコードは情報処理システムが読み取るためのものであり,絵本や書籍の読者にとっては目視でそのコード内容を把握しかねるものであったため,限られた紙面上にバーコードが印刷されていることは読者にとっては煩わしく絵本等書籍の製品価値を下げかねないものとなっていた。」【0003】 「さらに,上記のようにバーコード技術は,紙面上に印刷された文字,図形,記号に重ねて印刷することができないために,これらの文字,図形,記号等に対して音声再生を行いたい場合に文字等の近傍にバーコードを印刷するしかなく,読者にとって直感的に文字等に別の音声情報等が付加されていることを伝えにくい特性を有していた。」【0004】 「この点について,特開平10-261059号公報に開示されている『ドットコード』技術では,ドットパターンで印刷されたコード情報を読み取って情報を再生させる方法が提案されている。」【0005】 「係る先行技術では,ブロック領域内のドットパターンの配置の仕方によってデータを定義するとともに,データドットパターンではあり得ないドットパターンでマーカを定義することにより,これを同期信号として機能させている。したがって,この技術では,ドットを所定の法則で紙面の二次元方向に印刷したドットパターンをペン型のスキャナで読み取り,このスキャナの走査速度と走査方向を情報処理装置で解析して予め対応付けられた音声等の情報を再生させる方法となっている。」【0006】 「しかし,係るドットコード技術では,動的にスキャナを走査させることを前提としているために,紙面に印刷された文字に沿って音声情報を再生することは可能であるものの, 紙面上にキャラクタ等が自由に印刷配置された絵本等で静的に読取装置を当接させるだけで情報を再生させたいような用途には不向きであった。すなわち,このドットコード技術では意味のあるコード情報を取得するためにはXY座標上で一定の距離以上のスキャニングを実行する必要があるため,紙面上に印刷された極小領域にドットコードを対応付けて印刷することはできなかった。」【0007】 (ウ)発明が解決しようとする課題 「本発明は,極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットパターンを提案し,係るドットパターンに基づいた情報再生方法および情報再生装置を提案するものである。」【0008】 「特に,ドットパターンに関連付けられた音声情報を再生する音声情報再生装置を提案するものである。」【0009】 (エ)発明の効果 「本発明によれば,ドットパターンを読み取る光学読取手段と,ドットパターンに対応する音声情報を出力する音声情報出力手段とが一体となっているため,ドットパターンによる音声再生を,より簡易かつ便利に実現することが可能となる。」【0056】 イ 本件特許発明の意義 前記アによれば,本件特許発明の意義は,以下のとおりであると認められる。 従来から,光センサを用いて絵本やゲームカードに印刷されたバーコードを読み取り,特定の音声を発音させる音声発生玩具が提案されており,先行技術においては,バーコードに代わってドットパターンで印刷されたコード情報を読み取って情報を再生させる方法が提案されていた。同技術においては,ドットを所定の法則で紙面の二次元方向に印刷したドットパターンをペン型のスキャナで読み取り,このスキャナの走査速度と走査方向を情報処理装置で解析してあらかじめ対応付けられた音声等の情報を再生させるが,動的にスキャナを走査させることを前提としているために,紙面上にキャラクタ等が自由に印刷配置された絵本等で静的に読取装置を当接させるだけで情報を再生させる用途には不向きであった。 本件特許発明は,印刷物に形成したドットパターン情報を光学的に読み取り該ドットパターンに対応した種々の情報を再生する技術に関するものであり,極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットパターンを提案し,このドットパターンに基づいた情報再生方法及び情報再生装置を提案するものである。 (3)本件特許明細書におけるドットパターンの記載 本件特許明細書には,発明に係るドットパターンについて説明した以下の記載がある。また,本件特許の図面には,図1~図113が掲載されており,このうち,ドットパターンを示すものとして,【図2】,【図5】~【図8】,【図22】,【図103】~【図106】がある。 「図1は本発明のドットパターンを用いた情報再生方法の構成を示すブロック図であり,(a)はドットコードの生成について,(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図2はドットパターンの一例を示す正面図である。図3は絵本と情報再生方法の状態を説明する機能ブロック図である。」【0058】 「本発明のドットパターン601の生成は,ドットコード生成アルゴリズムにより,音声情報を認識させるために微細なドット605を第一方向ライン603に所定の規則に則って配列し,かつこの第一方向ライン603に交差するように配置した第二方向ライン604に所定の規則に則ってドット605を配列する。さらに,パソコン608内のメモリまたはカメラ602内に設けられたメモリにマッピングテーブルも生成する。この第一方向ライン603と第二方向ライン604とは90度の角度で交差させたものに限定されず,たとえば,60度の角度で交差させたものでもよい。」【0061】 「図4は他のドットパターンを用いた情報再生方法の構成を示すブロック図であり,(a)はドットコードの生成について,(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図5から図8は他のドットパターンの一例を示す正面図である。」【0067】 「上述したようにカメラ602で取り込んだ画像データは,画像処理アルゴリズムで処理してドット605を抽出し,歪率補正のアルゴリズムにより,カメラ602が原因する歪とカメラ602の傾きによる歪を補正するので,ドットパターン601の画像データを取り込むときに正確に認識することができる。」【0068】 「このドットパターンの認識では,先ず連続する等間隔のドット605により構成されたラインを抽出し,その抽出したラインが正しいラインかどうかを判定する。このラインが正しいラインでないときは別のラインを抽出する。」【0069】 「次に,抽出したラインの1つを水平ラインとする。この水平ラインを基準としてそこから垂直に延びるラインを抽出する。垂直ラインは,水平ラインを構成するドットからスタートし,次の点もしくは3つ目の点がライン上にないことから上下方向を認識する。」【0070】 「最後に,情報領域を抽出してその情報を数値化し,この数値情報を再生する。」【0071】 「図21は本発明のカメラ入力による情報入出力方法の構成を示すブロック図であり,(a)はドットコードの生成について,(b)はドットパターンの認識についての説明図である。図22はドットパターンの一例を示す正面図である。」【0105】 「次に,本発明におけるドットパターンの仕様について図103~図106を用いて説明する。」【0228】 「ドットパターン部601は,図105に示すように,格子状に配置されたドットで構成されている。なお縦横方向の格子線はドットの配置位置を説明するためのものであり実際の印刷物上には存在しない。」【0229】 「ここで,図105における4×5個の格子領域を1つのデータブロックまたは格子ブロックと呼び,この格子領域の四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている。格子ドットLD同士の間隔は0.35mm~1.0mm,好ましくは0.5mm程度であることが最適である。また,ドットの直径は前記格子ドット間隔の8~10%程度であることが望ましい。」【0230】(訂正後) 「どの格子領域からどの格子領域までが1つのデータであるかを示すためにキードットKDを配置している。」【0231】(訂正後) 「キードットKDとは,格子ドットLDの位置をずらしたものである。すなわち,格子ドットLDは本来格子点上に配置されているが,この位置をずらしてキードットKDを配置している。なお,キードットKDの格子点からのずれは約20%前後程度が好ましい。」【0232】 「前記キードットKDに囲まれた領域,またはキードットKDを中心にした領域が1つのデータを構成している。」【0233】 「このデータの並びは,図104に示すように,左上から下方向に向かって順番に配置されている。」【0234】 「データは,図103に示すように,ドット605を格子領域内の中心点からどの程度ずらすかによってデータ内容が定義できるようになっている。同図では,中心から等距離で45度ずつそれぞれずらした点を8個定義することによって単一の格子領域で8通り,すなわち3ビットのデータを表現できるようになっている。なお,さらに中心点から距離を変更した点をさらに8個定義すれば16通り,すなわち4ビットのデータを表現できる。」【0235】(訂正後) 「本発明のドットパターンは,1個のデータブロックを構成する格子を自由に定義することができる点に特徴がある。つまり,前述のようにキードットKDがデータ領域の範囲を定義しているため,このキードットKDの配置を変更すれば任意の可変長の格子領域群をデータ格納領域として扱うことができるわけである。」【0236】(訂正後) 「また,本発明のドットパターンでは,キードットのずらし方を変更することにより,同一のドットパターン部であっても別の意味を持たせることができる。つまり,キードットKDは格子点からずらすことでキードットKDとして機能するものであるが,このずらし方を格子点から等距離で45度ずつずらすことにより8パターンのキードットを定義できる。」【0237】 「ここで,ドットパターン部をC-MOS等の撮像手段で撮像した場合,当該撮像データは当該撮像手段のフレームバッファに記録されるが,このときもし撮像手段の位置が紙面の鉛直軸(撮影軸)を中心に回動された位置,すなわち撮影軸を中心にして回動した位置(ずれた位置)にある場合には,撮像された格子ドットとキードットKDとの位置関係から撮像手段の撮像軸を中心にしたずれ(カメラの角度)がわかることになる。この原理を応用すれば,カメラで同じ領域を撮影しても角度という別次元のパラメータを持たせることができる。そのため,同じ位置の同じ領域を読み取っても角度毎に別の情報を出力させることができる。」【0238】 「いわば,同一領域に角度パラメータによって階層的な情報を配置できることになる。」【0239】 「この原理を応用したものが図74,図76,図78に示すような例である。図74では,ミニフィギュア1101の底面に設けられたスキャナ部1105でこのミニフィギュア1101を台座上で45度ずつ回転させることでドットパターン部の読取り情報とともに異なる角度情報を得ることできるため,8通りの音声内容を出力させることができる。」【0240】 「本発明において,ダミードットDDを定義することができる。このダミードットDDは,4個の格子ドットLDの正中心に配置したドットである(図106(a)参照)。このようなダミードットは,マスク領域毎に境界を定義した絵本等に適している。図106(c)に示すようにmask1とmask2の領域の境界にダミードットDDを配置している。このようなマスク境界にダミードットDD領域を配置することにより,それぞれのマスク領域に定義されたコード情報を同時に読み取ってしまうことを防止している。図106(d)はダミードットDDの配置状態を示した図である。」【0241】 「また,絵本等の背景部分については,格子ドットの中心にドットを配置しない空ドットを配置することが好ましい。空ドットは,情報が記録された通常のデータドットに比べてドット数が少ないため,ドットパターンの目立たない印刷が可能となる。また,空ドットの連続であるために,模様が生じにくく,単一色の背景に適している。」【0242】 「また,本発明では,本来撮影中心を含む1ブロック分のデータを解析する必要があるが,撮影中心の近傍の格子データ(情報データ)をブロックをまたがって読取りデータとしてもよい。このような場合,本来の1ブロックから欠けている情報データに該当するデータを隣り合う他のブロックから読み込んで1ブロック分のデータに補完して入力を完了することができる。」【0243】 「XY座標を定義するドットパターンについては,撮影中心とは異なるブロックからそれに相当するXY座標を構成する情報ドットを読み,補正をかけて撮影中心のXY座標値とすることができる。」【0244】 「本発明は,以上に説明したような,格子ドットを用いたドットパターンであるため,撮影条件にあまり左右されないという特性を有している。すなわち,撮影条件(カメラのレンズのひずみ,カメラの写す角度,紙の変形) によってドットパターン全体がひずみを起こした場合,4個の格子ドットで形成される形状と,情報ドットの位置のずれが同様に起きるため,格子ドットからの相対的な位置関係にかわりはなく,これら格子ドットを基準に補正計算を行えば,各情報ドット,キードットについての真の位置がわかる。」【0245】 「つまり,本発明の格子ドットを用いたドットパターンは歪みに強いといえる。」【0246】 「本件特許の図面の【図5】 [図:0001393415000009.jpg] 」 「本件特許の図面の【図6】 [図:0001393415000010.jpg] 」 「本件特許の図面の【図7】 [図:0001393415000011.jpg] 」 「本件特許の図面の【図8】 [図:0001393415000012.jpg] 」 「本件特許の図面の【図103】 [図:0001393415000013.jpg] 」 「本件特許の図面の【図104】 [図:0001393415000014.jpg] 」 「本件特許の図面の【図105】 [図:0001393415000015.jpg] 」 「本件特許の図面の【図106】 [図:0001393415000016.jpg] 」 (4)補正要件違反について ア 補正の内容 (ア)本件特許について平成23年6月30日付けでした補正(以下「本件補正」という。)は,以下の内容を含む。 a 平成23年6月30日付け手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1の「前記所定のドットパターンは,媒体面上に形成され,且つデータ内容が定義できる情報ドットが配置されたドットパターンであって,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットをいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し,」との事項が追加されたこと(以下,この補正部分を「本件補正第1部分」といい,この補正に係る「前記所定のドットパターンは」,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との構成要件を「構成要件1」という。) b 平成23年6月30日付け手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1の「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」(以下,この補正部分を「本件補正第2部分」という。)との事項が追加されたこと(以下,この補正に係る「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」との構成要件を「構成要件2」という。) c 段落【0010】の記載について,上記a及びbと同じ変更がされたこと イ 出願当初明細書等の記載 (ア)本件特許に係る出願当初明細書等には,本件特許の図面の【図2】,【図5】~【図8】,【図22】,【図103】~【図106】と同じ図面に加え,上記(3)の段落【0067】~【0071】,【0228】~【0246】と同一の段落に同一の記載がある。 そして,上記図面のうち,【図2】及び【図22】は,いずれも,発明の詳細な説明において,ドットパターンを示す一例であるとだけ記載され,ドットパターンの内容に関する説明はなく(【0058】,【0105】),発明の詳細な説明にドットパターンの内容についての記載があるのは,【図5】~【図8】のドットパターンと,【図103】~【図106】のドットパターンである。 (イ)a 出願当初明細書等の【図5】~【図8】のドットパターンに関係して,上記(3)のとおり,【0067】~【0071】の記載がある。これらには,情報を示すドットパターンについて,等間隔のドットにより構成されたラインが抽出されるとともに,そのうちの一つを水平ラインとして,そこから垂直に延びるラインを抽出し,その垂直ラインは,水平ラインを構成するドットの次の点,または3つ目の点がライン上にないことから上下方向を認識し,情報領域を抽出して,その数値情報を再生することが記載されている(以下,【図5】~【図8】や上記発明の詳細な説明に記載されている技術思想のドットパターンを「図5ドットパターン」ということがある。)。 b ここで,下記【図5】の参考図に示すように,【図5】において縦方向に引かれた16本のラインを左から縦1,縦2,縦3,・・・,縦16と呼び,横方向に引かれた16本のラインを上から横1,横2,横3,・・・,横16と呼ぶこととする。 「【図5】の参考図 [図:0001393415000017.jpg] 」 横1,横13上には,水平方向に等間隔にドットが配置されている。縦1は,横1,横13上に配置されたドットから垂直方向に延びるところ,縦1上には,垂直方向に基本的に等間隔にドットが配置されている。ただし,縦1と横4との交点にはドットはなく,その交点から左に矢印が伸び,その先にドットがあり,このドットに「x,y座標フラグ」との説明がある。また,縦13上には,垂直方向に基本的に等間隔にドットが配置されているが,縦13と横4との交点にはドットがなく,その左側にドットがある。そして,【図5】には,概ね,縦1,縦13,横1,横13で囲まれる範囲に対応する,点線で囲まれた部分が「この部分で情報を表現」と説明されている。そうすると,【図5】では,横1,横13が第一方向ラインであり,縦1,縦13が第二方向ラインであって,それらにより情報領域が示されているといえる。また,【図5】で「情報を表現」として記載されている部分をみると,例えば,縦4,縦7,縦10と,横4,横7,横10の各交点について,水平方向及び垂直方向に矢印が示され,その先に水平方向及び垂直方向に各1個のドットが記載されている。縦4と横4上の交点について,同交点から上にずれた場合はy1を示し,下にずれた場合はy0を示し,右にずれた場合はx1を示し,左にずれた場合はx0を示すと記載され,【図5】では,上にずれたドットと右にずれたドットが示され,それがx座標,y座標ともに1を示す旨が記載されている。そして,【図5】のドットパターンがx座標,y座標を示しているとして,その具体的な座標が記載されている。 c 出願当初明細書等の【図6】に示されたドットパターンは,概ね出願当初明細書等の【図5】に示されたドットパターンと同じであるが,第二方向ライン上にドットがない部分について右に矢印が示されその先にドットがあり,このドットに「一般コードフラグ」との説明がある。第一方向ラインと第二方向ラインで概ね囲まれる「この部分で情報を表現」とされている部分では,第一方向ライン上に配置されたドットから垂直方向に延びるラインと,第二方向ライン上に配置された各ドットから水平方向に延びるラインの交点から,上にずれた場合にはc0,右にずれた場合にはc1,下にずれた場合にはc2,左にずれた場合にはc3などと示され,各交点について,水平方向又は垂直方向にずれたドットが1個示されている。そして,【図6】のドットパターンがコードを示しているとして,その具体的なコードが記載されている。 d 出願当初明細書等の【図7】に示されたドットパターンは,概ね出願当初明細書等の【図5】に示されたドットパターンと同じであり,第一方向ラインと第二方向ラインで概ね囲まれ「この部分で情報を表現」とされている部分では,第一方向ライン上に配置されたドットから垂直方向に延びるラインと,第二方向ライン上に配置された各ドットから水平方向に延びるラインの交点から,上にずれた場合にはy1,下にずれた場合にはy2,右にずれた場合にはx2,左にずれた場合にはx1などと示され,各交点について,水平方向又は垂直方向にずれたドットが1~3個示されている。そして,【図7】のドットパターンがx座標,y座標を示しているとして,その具体的な座標が記載されている。 e 出願当初明細書等の【図8】に示されたドットパターンは,概ね出願当初明細書等の【図5】に示されたドットパターンと同じであるが,第二方向ライン上にドットがない部分について右に矢印が示されその先にドットがあり,このドットに「一般コードフラグ」との説明がある。第一方向ラインと第二方向ラインで概ね囲まれ「この部分で情報を表現」とされている部分では,第一方向ライン上に配置されたドットから垂直方向に延びるラインと,第二方向ライン上に配置された各ドットから水平方向に延びるラインの各交点について,水平方向又は垂直方向にずれたドットが1~3個示されている。そして,【図8】のドットパターンがコードを示しているとして,その具体的なコードが記載されている。 (ウ)a 出願当初明細書等の【図103】~【図106】のドットパターンに関係して,上記(3)のとおり,段落【0228】~【0239】の記載がある。これらによれば,そのドットパターンは,格子状に配置されたドットで構成される。そして,格子ドットLDと呼ばれるドットを四隅に配置し,その4つの格子ドットLDで囲まれた領域の中心からどの程度ずらすかによってテータ内容が定義され,例えば,同領域の中心から等距離の位置で45度づつずらした点を8個定義することで,8通りのデータを表現でき,このずらす距離を変更した点を8個定義することで16通りのデータを表現できる。また,格子ドットLDは,本来,縦横方向の格子線の交点上である格子点上に配置されるが,その位置をずらしたドットをキードットKDとして,このキードットKDに囲まれた領域,又は,キードットKDを中心にした領域が一つのデータを示している。また,キードットKDを格子点から等距離で45°づつずらすことにより,その角度ごとに別の情報を定義することができることなどが記載されている。(以下,【図103】~【図106】や上記発明の詳細な説明に記載されている技術思想のドットパターンを「図105ドットパターン」ということがある。) b ここで,下記【図105】の参考図に示すように,【図105】において縦方向に引かれた19本のラインを左から縦1,縦2,縦3,・・・,縦19と呼び,横方向に引かれた11本のラインを上から横1,横2,横3,・・・,横11と呼ぶこととする。 「【図105】の参考図 [図:0001393415000018.jpg] 」 【図105】においては,例えば,垂直方向の格子線である縦1,縦3,縦5と,水平方向の格子線である横1,横3,横5の交点に格子ドットが配置され,格子ドットが四隅に配置されている領域が示されている(例えば,縦1と横1の交点,縦1と横3の交点,縦3と横3の交点,及び縦3と横1の交点を四隅とするもの,縦1と横3の交点,縦1と横5の交点,縦3と横5の交点,及び縦3と横3の交点を四隅とするもの)。そして,その4個の格子ドットで囲まれる領域の中心から等距離の位置でいずれかの位置に1個のドットが配置されていることが示され(例えば,縦2と横2の交点から右にずれたドット,縦2と横4の交点から下にずれたドット),【図105】全体では,上記領域の中心から等距離の位置で,45°づつずれた位置のいずれか1つの位置にドットが配置されることが記載されている。また,【図103】には,交点から45°づつずれた位置にドットを配置する構成が記載されている。そして,縦3と横1の交点から上にずれたドットや縦11と横1の交点から上にずれたドットは,垂直方向の格子線である縦3又は縦11上にあるが,水平方向の格子線である横1上にはなく,これらは,格子線の交点からずれたキードットKDであることが示されている。 ウ(ア)図105ドットパターンにおいては,情報ドットは,四隅を格子ドットで囲まれた領域の中心からずれた位置に置かれるところ,構成要件1の情報ドットは,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点の中心」からずれた位置に置かれる。図105には,水平又は垂直の格子線の中間に各格子線と平行な線が引かれているが,出願当初明細書等に,「格子状に配置されたドットで構成されている。」(【0229】),「格子領域の四隅(格子線の交点(格子点)上)には格子ドットLDが配置されている」(【0230】(訂正後)),「4個の格子ドットLDの正中心に配置したドットである(図106(a)参照)」(【0241】)と記載されているとおり,格子ドットは等間隔に配置されたドットにより構成された水平ラインと垂直ラインの交点であり,格子線は格子ドットを結ぶラインであるから,図105に示された各格子線の中間に引かれた線は格子ドットで囲まれた領域の中心を示すために参考として引かれた補助線にすぎず,格子線とは認められない(図106(a)のように,格子ドット同士を対角線で結べば,その交点は「格子線の交点」となるが,その線は構成要件1に規定する「縦横方向」のラインではない。)。 そうすると,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点の中心」を基点として情報ドットが位置付けられることを構成要件とする本件補正第1部分は,図105のドットパターンとは似て非なるものであり,そもそも図105ドットパターンに基づく補正であるとは認められない。 (イ)図5ドットパターンにおいては,情報を表現するドットは,格子ドットから上下左右の格子線上にずらした位置に配置されるところ,構成要件1の情報ドットは「格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向」に配置されるものであるから,本件補正第1部分は,図5ドットパターンに基づく補正であるとは認められない。 (ウ)そのほか,出願当初明細書等に本件補正第1部分に対応する記載は認められないから,本件補正前の本件補正第1部分に対応する部分と構成要件1とを対比するまでもなく,本件補正第1部分は新たな技術的事項を導入するものである。 (エ)以上のとおり,本件補正第1部分は新たな技術的事項を導入するものであることが明らかであり,本件補正第2部分について判断するまでもないが,事案に鑑み,更に検討する。 エ(ア)本件補正による補正後の構成要件1は「前記所定のドットパターンは」,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」である。 被請求人の主張によれば,上記構成要件1に係る構成は,出願当初明細書等の段落【0228】~【0239】及び【図105】に記載されているものである。 他方,図5ドットパターンにおいて,出願当初明細書等の【図5】~【図8】では,縦横方向に等間隔で設けられた格子線(例えば縦4,縦7,縦10,横4,横7,横10)の交点から等距離に,水平方向及び(又は)垂直方向にずらした位置に各1~3個のドットが記載されて情報を示している。これらでは,縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,情報内容を定義するドットが格子点の中心からずれることで情報が示されているといえるが,情報内容を定義するドットは,水平方向及び(又は)垂直方向にずらされるのであり,等距離で90°づつずらしているとはいえるとしても,等距離で45°づつずらしているものではない。【図5】~【図8】では,格子線の間に設けられた垂直方向及び水平方向のライン(例えば,縦3,縦5,横3,横5)が示された上で,それらのラインや格子線の交点(例えば,縦4と横3の交点,縦5と横4の交点)に情報を示すドットが示されていて,これは情報を示すドットを格子点の中心から等距離で90°づつずらすことを前提としているものであり,このように交点に情報を示すドットを配置するこの図では情報を示すドットを等距離で45°づつずらすことは想定されていない。そうすると,上記構成要件1に係る構成は,出願当初明細書等の段落【0067】~【0071】及び【図5】~【図8】に記載されているものではない。 (イ)本件補正による補正後の構成要件2は「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」である。 上記(ア)のとおり,被請求人の主張によれば,本件補正による補正後の構成要件1に係る構成は,図105ドットパターンに関する記載において記載されているものである。しかし,図105ドットパターンにおいては,縦横方向の格子線の交点上である格子点上に格子ドットLDが配置され,その位置をずらしたドットをキードットKDとして,このキードットKDに囲まれた領域,又は,キードットKDを中心にした領域が一つのデータを示すものとされている。このようなキードットKDに囲まれた領域又はキードットKDを中心にした領域が一つのデータを示すものであり,「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分」(構成要件2)であるといえるところ,図105ドットパターンでは,前記のようにキードットKDによって,それに囲まれた領域,又はそれを中心にした領域が情報を表現する部分とされているのであり,また,【図105】では,情報を表現する部分はキードットKDにより囲まれていることが示されているのであって,そうである以上,「第一方向ライン」及び「第二方向ライン」(構成要件2)として特定される水平方向及び垂直方向のラインによって,情報を表現する部分を囲んでいると直ちにいえるものではない。したがって,「第一方向ライン」,「第二方向ライン」がない以上,情報を示すドットが配置されて情報を表現する部分を囲むような「第一方向ライン」及び「第二方向ライン」上にドットが配置されているということもできない。以上によれば,上記構成要件2に係る構成は,出願当初明細書等の段落【0228】~【0239】及び【図105】に記載されているとは認められない。 なお,図5ドットパターンについて,補正後の構成要件1に係る構成の記載はないのであるが,図5ドットパターンには,情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,縦方向の所定のドットの間隔ごとに水平方向に引いた水平ラインと,水平ラインと交差するように横方向の所定のドットの間隔ごとに垂直方向に引いた垂直ラインが存在し,また,それらのライン上において,複数の格子点上に格子ドットが配置されているといえる。したがって,上記構成要件2に係る構成は,出願当初明細書等の段落【0067】~【0071】及び【図5】~【図8】に記載されているとはいえる。 オ(ア)上記エによれば,出願当初明細書等において,仮に構成要件1に係る構成は,段落【0228】~【0239】及び【図105】には記載されているとはいえても,そこで記載されているドットパターンである図105ドットパターンは構成要件2の構成を有するものではない。また,出願当初明細書等において,構成要件2に係る構成は,段落【0067】~【0071】及び【図5】~【図8】には記載されているとはいえるが,そこで記載されているドットパターンである図5ドットパターンは構成要件1の構成を有するものではない。 そして,図5ドットパターンと図105ドットパターンは,情報ドットのずらし方,1つの交点に対する情報ドットの個数,情報ドット以外のドットの配置,格子線又はラインのうち特定のものを「第一方向ライン」等として特定するか否か,垂直ライン上のドットが本来の位置からのずれ方によってデータの種類を表すか否か,1つのデータを区画するキードットKDが存在するか否か等,多くの点で相違しており,これらの相違は,各実施例が開示する技術的事項,すなわちドットパターンによる情報の定義方法が相当に異なることに起因する。出願当初明細書等は,極小領域であってもコード情報やXY座標情報が定義可能なドットパターンを提供するとし(【0008】),複数のドットパターンを記載しているのであるが,そこに記載されたドットパターンである図5ドットパターンと図105ドットパターンの情報の定義方法は上記のとおり相当に異なるのであり,また,出願当初明細書等に,これらの異なる情報定義方法を採用した各ドットパターンが採用する情報定義方法を相互に入れ替えたり,重ねて採用したりすることについては何ら記載されていない。したがって,出願当初明細書等に,これらのドットパターンを組み合わせたものについての記載があるとはいえないし,それが当業者に自明であるともいえない。 以上によれば,出願当初明細書等には,本件補正によって変更された構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンについての記載があるとはいえない。 そうすると,出願当初明細書等において,全ての記載を総合したとしても,出願当初明細書等には,本件補正による補正後のドットパターンが記載されているとはいえず,本件補正は,出願当初明細書等に開示されていない新たな技術的事項を導入するものである。 (イ)被請求人は,【図103】~【図106】の実施例と【図5】~【図8】の実施例は,共通の課題を解決するための異なる実施例であり,これらを組み合わせることは当業者には自明の範囲のものであると主張する。 しかしながら,【図5】~【図8】の実施例で示される図5ドットパターンと【図103】~【図106】の実施例で示される図105ドットパターンでは,上記のとおり,情報の定義方法が相当に異なり,それを組み合わせることが当業者に自明とはいえないし,出願当初明細書等にそのような組み合わせを前提とした記載も存在しないから,被請求人の主張は採用することができない。 (5)小括 したがって,本件補正は,出願当初明細書等の記載等から導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入したものであるから,特許法第17条の2第3項の補正要件に違反するものである。 よって,本件特許発明1~3に係る特許は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから,特許法第123条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきものである。 2 無効理由3(特許法第36条第6項第1号)について 次に,無効理由3について判断する。 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下,この観点に立って,判断する。 (1)本件特許発明1について 本件特許発明1は,「前記所定のドットパターンは」,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との構成要件1を含むものであるところ,上記1(4)ウのとおり,当該構成要件1に係る構成は,出願当初明細書等に記載されているとは認められない。 また,本件特許発明1は,「前記所定のドットパターンは」,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との構成要件1と,「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」との構成要件2をいずれも備えるドットパターンの発明であるところ,上記1(4)オ(ア)のとおり,出願当初明細書等には,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンについての記載があるとはいえない。 そして,本件特許明細書は,平成23年6月30日付け手続補正により段落【0010】~【0012】が変更され,段落【0033】,【0041】,【0044】,【0045】,【0048】,【0050】が削除されているが,それ以外は出願当初明細書と同じであり,また,特許請求の範囲については,願書に最初に添付した特許請求の範囲から変更されているが,図面については,願書に最初に添付した図面から変更,削除はされていない。 そうすると,出願当初明細書等に,構成要件1に係る構成は記載されておらず,また,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンについての記載があるともいえないのであるから,本件特許明細書の発明の詳細な説明にも,構成要件1に係る構成,或いは,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンについての記載があるとはいえない。 したがって,構成要件1を備えるドットパターンである本件特許発明1,或いは,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンである本件特許発明1は,発明の詳細な説明に記載されたものではないから,本件特許発明1に係る発明は,サポート要件に適合しない。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2は,本件特許発明1の構成を全て含むものであるところ,上記(1)のとおり,構成要件1を備えるドットパターンである本件特許発明1,或いは,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンである本件特許発明1は,サポート要件に適合しないものであるから,本件特許発明2も,同様に,サポート要件に適合しない。 (3)本件特許発明3について 上記(2)と同様の理由により,本件特許発明3も,サポート要件に適合しない。 (4)小括 したがって,本件特許発明1~3に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。 3 無効理由1(特許法第36条第4項第1号)について 次に,無効理由1について判断する。 特許法第36条第4項は,「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」と記載され,その第1号において,「経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しなければならない。」と規定している。同号は,明細書のいわゆる実施可能要件を規定したものであって,ものの発明では,そのものを製造し使用するための具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか,そのような記載がない場合には,明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき,当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく,そのものを製造し使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。 以下,この観点に立って,判断する。 (1)本件特許発明1は,「前記所定のドットパターンは」,「縦横方向に等間隔に設けられた格子線の交点である格子点を中心に,前記情報ドットを前記格子点の中心から等距離で45°づつずらした方向のうちいずれかの方向に,どの程度ずらすかによってデータ内容を定義し」との構成要件1と,「前記情報ドットが配置されて情報を表現する部分を囲むように,前記縦方向の所定の格子点間隔ごとに水平方向に引いた第一方向ライン上と,該第一方向ラインと交差するように前記横方向の所定の格子点間隔ごとに垂直方向に引いた第二方向ライン上とにおいて,該縦横方向の複数の格子点上に格子ドットが配置された」との構成要件2をいずれも備えるドットパターンの発明であるところ,上記2で検討したように,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,構成要件1に係る構成,或いは,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備えるドットパターンの具体的な記載はないし,当業者がそのドットパターンを製造し使用することができる程度に記載されているともいえない。 したがって,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は,構成要件1及び構成要件2の構成をいずれも備える本件特許発明1のドットパターンに係る発明を,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2は,本件特許発明1の構成を全て含むものであるから,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件特許発明2のドットパターンに係る発明を,当業者が実施することができる程度に,明確かつ十分に記載したものとはいえない。 (3)本件特許発明3について 上記(2)と同様の理由により,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件特許発明3のドットパターンに係る発明を,当業者が実施することができる程度に,明確かつ十分に記載したものとはいえない。 (4)小括 したがって,本件特許発明1~3に係る特許は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。 第7 むすび 以上のとおりであるので,本件特許発明1~3に係る特許は,無効理由1,無効理由2及び無効理由3により,無効とすべきものである。 審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。

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2018-800156

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