特許異議申立
2018-701066
表面改質シリカ粉末及びスラリー組成物
- 審判番号
- 2018-701066
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-068657
- 登録番号
- 特許第6347644号(P6347644)
- 請求日
- 2018年12月27日
- 審決日
- 2020年09月29日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】デンカ株式会社
- 【権利者代理人】松本 悟
- 【異議申立人】丹羽 良子
- 審判長/審判官
- 審判長 日比野 隆治
- 審判官 後藤 政博
- 審判官 宮澤 尚之
- 分類
- P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B) / P1651.536-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B) / P1651.851-YAA(C01B) / P1651.853-YAA(C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6347644号発明「表面改質シリカ粉末及びスラリー組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6347644号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
特許第6347644号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6347644号の請求項1~3に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成26年3月28日に出願され、平成30年6月8日にその特許権の設定登録がされ、平成30年6月27日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続が行われた。
平成30年12月27日 特許異議申立人 丹羽良子(以下、「特許異
議申立人」という。)による請求項1~3に
係る特許に対する特許異議の申立て
平成31年 4月18日付け (特許権者及び特許異議申立人に対して)審
尋
令和 1年 6月 3日 特許権者による回答書
令和 1年 6月 6日 特許異議申立人による回答書
令和 1年 9月 3日付け 取消理由通知
令和 1年10月31日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 1年12月25日 特許異議申立人による意見書の提出
令和 2年 2月28日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和 2年 5月 1日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 2年 7月14日 特許異議申立人による上申書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和2年5月1日にされた訂正の請求(以下、その訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項及び同法同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1~3を訂正の単位とするものであり、本件訂正の内容は、以下のとおりである(下線部は、訂正箇所)。
なお、令和1年10月31日にされた訂正の請求は、本件訂正の請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「シリカ粒子表面のシランカップリング剤の反応量(A)が単位表面積(nm2)あたり1.5~3.0個、非反応量(B)が単位表面積(nm2)あたり反応量(A)の0.1~0.6倍であり、BET比表面積が3~45m2/gである表面改質球状シリカ粉末。」
とあるのを、
「加水分解基としてトリメトキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子表面のシランカップリング剤の反応量(A)が単位表面積(nm2)あたり1.5~3.0個、非反応量(B)が単位表面積(n
m2)あたり反応量(A)の0.1~0.6倍であり、BET比表面積
が3~45m2/gである表面改質球状シリカ粉末(ただし、(1)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量255のフェニルアミノシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.30mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、(2)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量236のエポキシシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.19mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、及び(3)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量341のビス(トリメトキシシリルプロピル」アミン0.8部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.40mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」を除く。)。」
に訂正する。
(なお、上記訂正箇所中の「(1)」、「(2)」、「(3)」は、それぞれ○で囲まれた数字を表す。以下、同様。)
(2)訂正事項2
本件明細書の段落【0009】に、
「(1)シリカ粒子表面のシランカップリング剤の反応量(A)が単位表面積(nm2)あたり1.5~3.0個、非反応量(B)が単位表面積(nm2)あたり反応量(A)の0.1~0.6倍であり、BET比表面積が3~45m2/gである表面改質球状シリカ粉末。」
とあるのを、
「(1)加水分解基としてトリメトキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子表面のシランカップリング剤の反応量(A)が単位表面積(nm2)あたり1.5~3.0個、非反応量(B)が単位表面積(nm2)あたり反応量(A)の0.1~0.6倍であり、BET比表面積が3~45m2/gである表面改質球状シリカ粉末(ただし、(1)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量255のフェニルアミノシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.30mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、(2)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量236のエポキシシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.19mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、及び(3)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量341のビス(トリメトキシシリルプロピル」アミン0.8部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.40mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」を除く。)。」
に訂正する。
2 訂正の適否について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明は、「シリカ粒子表面のシランカップリング剤の反応量(A)が単位表面積(nm2)あたり1.5~3.0個、非反応量(B)が単位表面積(nm2)あたり反応量(A)の0.1~0.6倍であり、BET比表面積が3~45m2/gである表面改質球状シリカ粉末。」と特定している。
これに対して、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の上記「表面改質球状シリカ粉末。」から、(1)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量255のフェニルアミノシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.30mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、(2)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量236のエポキシシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.19mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、及び(3)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量341のビス(トリメトキシシリルプロピル」アミン0.8部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.40mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」を除くものであり、また、「シリカ粒子表面のシランカップリング剤」を「加水分解基としてトリメトキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子表面のシランカップリング剤」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の上記「表面改質球状シリカ粉末」から、(1)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量255のフェニルアミノシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.30mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、(2)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量236のエポキシシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.19mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、及び(3)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量341のビス(トリメトキシシリルプロピル」アミン0.8部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.40mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」を除くものであって、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかである。
また、訂正事項1の「シリカ粒子表面のシランカップリング剤」を「加水分解基としてトリメトキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子表面のシランカップリング剤」に限定する訂正は、本件明細書の段落【0019】の「シランカップリング剤1個あたり、3つの加水分解基を有する」という記載及び実施例に記載されたシランカップリング剤が全て加水分解基としてトリメトキシ基を有することを根拠にするものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正事項1に係る請求項1の訂正に伴って、本件明細書の段落【0009】に記載された「表面改質球状シリカ粉末」について、(1)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量255のフェニルアミノシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.30mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、(2)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量236のエポキシシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.19mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、及び(3)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量341のビス(トリメトキシシリルプロピル」アミン0.8部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.40mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」を除くものであり、また、「シリカ粒子表面のシランカップリング剤」を「加水分解基としてトリメトキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子表面のシランカップリング剤」と限定して訂正するものであるから、請求項1の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項2は,訂正事項1と同じく願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正の請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである(下線部は、訂正箇所)。
「【請求項1】
加水分解基としてトリメトキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子表面のシランカップリング剤の反応量(A)が単位表面積(nm2)あたり1.5~3.0個、非反応量(B)が単位表面積(nm2)あたり反応量(A)の0.1~0.6倍であり、BET比表面積が3~45m2/gである表面改質球状シリカ粉末(ただし、(1)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量255のフェニルアミノシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.30mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、(2)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量236のエポキシシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.19mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、及び(3)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量341のビス(トリメトキシシリルプロピル」アミン0.8部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.40mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」を除く。)。
【請求項2】
請求項1に記載の表面改質球状シリカ粉末を含むスラリー組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のスラリー組成物を用いた樹脂組成物。」
第4 特許異議の申立ての理由及び証拠方法について
1 申立ての理由
特許異議申立人は、証拠方法として甲第1号証~甲第4号証(以下、「甲1」~「甲4」という。)を提出し、本件特許は、以下の申立理由1~4により取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲1又は甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(特許法第29条第2項)
訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲1又は甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(特許法第36条第4項第1号)
訂正前の請求項1~3に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)申立理由4(特許法第36条第6項第2号)
訂正前の請求項1~3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 証拠方法
特許異議申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲1:特開2014-28880号公報
甲2:特開2014-15606号公報
甲3:信越化学工業株式会社の「シランカップリング剤」のカタログ、20 17年12月現在の内容(甲4のダウンロードサイトより入手可能)
(https://www.silicone.jp/catalog/pdf/SilaneCouplingAgents_J.p df)
甲4:信越化学工業株式会社のカタログダウンロードサイト
(https://www.silicone.jp/catalog/index.shtml)
第5 取消理由について
当審において通知した令和 2年 2月28日付けの取消理由通知(決定の予告)における取消理由の概要は、以下のとおりである。
1 先の訂正請求により訂正された請求項1~3に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 本件特許は、先の訂正請求により訂正された請求項1~3の記載が、下記の点で不備があるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
本件発明1で特定された反応量及び非反応量についての計算は、シランカップリング剤の構造や加水分解の程度により異なるため一義的に定まるものではないから、上記反応量及び非反応量についてどのように算出されるのか明らかでない。
よって、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、3は、明確でない。
第6 当審の判断
1 取消理由についての判断
(1)取消理由(特許法第29条第1項第3号)について
ア 本件発明1について
(ア)甲2の記載事項
2a「【0029】
アミノビス(アルコキシシラン)の分子量は、表面処理時や乾燥時の揮発抑止という点から、260以上が好ましく、280以上がより好ましく、300以上が更に好ましい。一方、適切な反応性という点から、2000以下が好ましく、1700以下がより好ましく、1400以下が更に好ましい。市販品としては、信越化学工業(株)製「KBM666P」(ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、分子量341)等が挙げられる。」
2b「【0034】
また、アミノビス(アルコキシシラン)で表面処理された無機充填材において、該無機充填材の表面組成を分析することによって、炭素原子の存在を確認し、該無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を求めることができる。カーボン分析計としては、堀場製作所製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0035】
具体的には、溶剤として十分な量のMEKをアミノビス(アルコキシシラン)で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて該無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所製「EMIA-320V」等を使用することができる。」
2c「【0038】
アミノビス(アルコキシシラン)で表面処理された無機充填材への表面処理方法は、特に限定されないが、乾式法や湿式法が挙げられる。乾式法としては、回転ミキサーに無機充填材を仕込んで、攪拌しながらアミノビス(アルコキシシラン)のアルコール溶液又は水溶液を滴下又は噴霧した後、さらに攪拌し、ふるいにより分級する。その後、加熱によりアミノビス(アルコキシシラン)と無機充填材とを脱水縮合させることにより得ることができる。湿式法としては、無機充填材と有機溶媒とのスラリーを攪拌しながらアミノビス(アルコキシシラン)を添加し、攪拌した後、濾過、乾燥及びふるいによる分級を行う。その後、加熱によりアミノビス(アルコキシシラン)と無機充填材とを脱水縮合させることにより得ることができる。さらに、樹脂組成物中にアミノビス(アルコキシシラン)を添加するインテグラルブレンド法でも可能である。」
2d「【0098】
無機充填材7:球形シリカ(電気化学工業(株)製「SFP-130MC」、平均粒径0.6μm)100部に対して、アミノビス(アルコキシシラン)(信越化学工業(株)製、「KBM666P」、分子量341)0.8部で表面処理したもの、単位表面積当たりのカーボン量0.40mg/m2。」
2e「【0102】
<実施例4> 液状ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)10部、結晶性2官能エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)5部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP7200H」、エポキシ当量約275)10部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量35000、三菱化学(株)製「YL7553BH30」、不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)15部をソルベントナフサ50部に撹拌しながら加熱溶解させ、その後室温にまで冷却した。次いで、活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC8000-65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)40部、難燃剤(三光(株)製「HCA-HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径1μm)3部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン、固形分4質量%のMEK溶液)3.5部を加え、更に無機充填材7を150部混合し、回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。」
(イ)甲2に記載された発明
記載事項2a~2dによると、球形シリカ(電気化学工業(株)製「SFP-130MC」、平均粒径0.6μm)100部を、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン(信越化学工業(株)製、「KBM666P」、分子量341)0.8部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.40mg/m2である無機充填剤7(表面処理球形シリカ)が記載されているといえる。
そうすると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「球形シリカ(電気化学工業(株)製「SFP-130MC」、平均粒径0.6μm)100部をビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン(信越化学工業(株)製、「KBM666P」、分子量341)0.8部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.40mg/m2である表面処理球形シリカ。」
(ウ)対比・判断
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「球形シリカ」及び「表面処理球形シリカ」は、本件発明1の「シリカ粒子」及び「表面改質球状シリカ粉末」に相当する。
また、甲1の段落【0094】には、「球形シリカ(電気化学工業(株)製「SFP-130MC」、平均粒径0.6μm、比表面積6.2m2/g)」と記載されており、当該比表面積は、常用のBET比表面積と解するのが合理的であるから、甲2発明における「球形シリカ(電気化学工業(株)製「SFP-130MC」、平均粒径0.6μm)」のBET比表面積は6.2m2/gであると解することができる。
そうすると、甲2発明に係る表面処理球状シリカ粉末は、本件発明1において「(ただし、 ・・・ (3)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量341のビス(トリメトキシシリルプロピル」アミン0.8部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.40mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」を除く。)」として除かれているものにほかならないから、本件発明1と甲2発明との間に一致点はなく、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。
イ 本件発明2、3について
本件発明2,3は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様に、甲2に記載された発明であるとはいえない。
(2)取消理由(特許法第36条第6項第2号)について
本件訂正により、表面処理により用いるシランカップリング剤は、「加水分解基としてトリメトキシ基を有する」ことが特定され、本件明細書の実施例の記載及び技術常識からすると、本件発明1で特定する反応量及び非反応量は、表面処理に使用したシランカップリング剤の量から求められる全体の炭素量と、トリメトキシ基が加水分解した後の炭素数が減少した表面に化学吸着したシランカップリング剤の炭素量とを用いて計算されることが明らかとなった。
よって、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、3は、明確でないとはいえない。
2 取消理由に採用しなかった特許異議申立ての理由についての判断
(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲1に記載された無機充填材2、4、5及び甲2に記載された無機充填材3から認定した各発明は、訂正前の請求項1~3に係る発明と同一であるから、訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲1又は甲2に記載された発明であると主張しているので、以下に検討する。
ア 本件発明1について
(ア)甲1の記載事項
1a「【0034】
また、アミノアルキルシランで表面処理された無機充填材においては、該無機充填材の表面組成を分析することによって、炭素原子の存在を確認し、該無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を求めることができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKをアミノアルキルシランで表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて該無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所製「EMIA-320V」等を使用することができる。」
1b「【0037】
アミノアルキルシランで表面処理された無機充填材への表面処理方法は、特に限定されないが、乾式法や湿式法が挙げられる。乾式法としては、回転ミキサーに無機充填材を仕込んで、攪拌しながらアミノアルキルシランのアルコール溶液又は水溶液を滴下又は噴霧した後、さらに攪拌し、ふるいにより分級する。その後、加熱によりアミノアルキルシランと無機充填材とを脱水縮合させることにより得ることができる。湿式法としては、無機充填材と有機溶媒とのスラリーを攪拌しながらアミノアルキルシランを添加し、攪拌した後、濾過、乾燥及びふるいによる分級を行う。その後、加熱によりアミノアルキルシランと無機充填材とを脱水縮合させることにより得ることができる。さらに、樹脂組成物中にアミノアルキルシランを添加するインテグラルブレンド法でも可能である。」
1c「【0095】
無機充填材2:球形シリカ(アドマテックス(株)製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.5m2/g)100部に対して、3-アミノプロピルシラン(信越化学工業(株)製、「KBE903」、分子量221)0.4部で表面処理したもの、単位表面積当たりのカーボン量0.15mg/m2。
・・・
【0097】
無機充填材4:球形シリカ(電気化学工業(株)製「SFP-130MC」、平均粒径0.6μm、比表面積6.2m2/g)100部に対して、フェニルアミノシラン(信越化学工業(株)製、「KBM573」、分子量255)0.5部で表面処理したもの、単位表面積当たりのカーボン量0.30mg/m2。
【0098】
無機充填材5:球形シリカ(電気化学工業(株)製「SFP-130MC」、平均粒径0.6μm、比表面積6.2m2/g)100部に対して、エポキシシラン(信越化学工業(株)製、「KBM403」、分子量236)0.5部で表面処理したもの、単位表面積当たりのカーボン量0.19mg/m2。」
1d「【0099】
<実施例1>
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」)10部、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)5部、ナフトール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ESN-475V」)20部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量35000、三菱化学(株)製「YL7553BH30」、不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5部をソルベントナフサ50部に撹拌しながら加熱溶解させ、その後室温にまで冷却した。次いで、活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC8000-65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)10部、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発分75質量%のMEK溶液)20部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30S」、シアネート当量約133、不揮発分85質量%のMEK溶液)10部、ゴム粒子(ガンツ化成(株)製、スタフィロイドAC3816N)4部をソルベントナフサ16部に室温で12時間膨潤させておいたもの、難燃剤(三光(株)製「HCA-HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径1μm)3部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン、固形分4質量%のMEK溶液)0.5部、硬化促進剤(東京化成(株)製、コバルト(III)アセチルアセトナート、固形分1質量%のMEK溶液)4.5部を加え、更に無機充填材1を150部混合し、回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスをアルキド系離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm)の離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80~110℃(平均95℃)で5分間乾燥し、接着フィルムを得た。
・・・
【0102】
<比較例2>
無機充填材1を無機充填材4に変更した以外は、実施例1と全く同様にして樹脂ワニスを作製した。次いで、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0103】
<比較例3>
無機充填材1を無機充填材5に変更した以外は、実施例1と全く同様にして樹脂ワニスを作製した。次いで、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
(イ)甲2の記載事項
2a「【0034】
また、アミノビス(アルコキシシラン)で表面処理された無機充填材において、該無機充填材の表面組成を分析することによって、炭素原子の存在を確認し、該無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を求めることができる。カーボン分析計としては、堀場製作所製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0035】
具体的には、溶剤として十分な量のMEKをアミノビス(アルコキシシラン)で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて該無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所製「EMIA-320V」等を使用することができる。」
2b「【0038】
アミノビス(アルコキシシラン)で表面処理された無機充填材への表面処理方法は、特に限定されないが、乾式法や湿式法が挙げられる。乾式法としては、回転ミキサーに無機充填材を仕込んで、攪拌しながらアミノビス(アルコキシシラン)のアルコール溶液又は水溶液を滴下又は噴霧した後、さらに攪拌し、ふるいにより分級する。その後、加熱によりアミノビス(アルコキシシラン)と無機充填材とを脱水縮合させることにより得ることができる。湿式法としては、無機充填材と有機溶媒とのスラリーを攪拌しながらアミノビス(アルコキシシラン)を添加し、攪拌した後、濾過、乾燥及びふるいによる分級を行う。その後、加熱によりアミノビス(アルコキシシラン)と無機充填材とを脱水縮合させることにより得ることができる。さらに、樹脂組成物中にアミノビス(アルコキシシラン)を添加するインテグラルブレンド法でも可能である。」
2c「【0094】
無機充填材3:球形シリカ(電気化学工業(株)製「SFP-130MC」、平均粒径0.6μm)100部に対して、フェニルアミノシラン(信越化学工業(株)製、「KBM573」、分子量255)0.5部で表面処理したもの、単位表面積当たりのカーボン量0.30mg/m2。」
2d「【0099】
<実施例1>
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」)10部、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)5部、ナフトール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ESN-475V」)20部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量35000、三菱化学(株)製「YL7553BH30」、不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5部をソルベントナフサ50部に撹拌しながら加熱溶解させ、その後室温にまで冷却した。次いで、活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC8000-65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)10部、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発分75質量%のMEK溶液)20部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30S」、シアネート当量約133、不揮発分85質量%のMEK溶液)10部、ゴム粒子(ガンツ化成(株)製、スタフィロイドAC3816N)4部をソルベントナフサ16部に室温で12時間膨潤させておいたもの、難燃剤(三光(株)製「HCA-HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径1μm)3部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン、固形分4質量%のMEK溶液)0.5部、硬化促進剤(東京化成(株)製、コバルト(III)アセチルアセトナート、固形分1質量%のMEK溶液)4.5部を加え、更に無機充填材1を150部混合し、回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスをアルキド系離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm)の離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80~110℃(平均95℃)で5分間乾燥し、接着フィルムを得た。
・・・
【0104】
<比較例2>
無機充填材1を、無機充填材3に変更した以外は、実施例1と全く同様にして樹脂ワニスを作製した。次いで、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。」
(ウ)甲1に記載された発明(無機充填剤2、4、5)
記載事項1cによると、甲1には、無機充填剤2、4、5として、次の表面処理球形シリカが記載されているといえる。
・無機充填材2:球形シリカ(アドマテックス(株)製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.5m2/g)100部に対して、3-アミノプロピルシラン(信越化学工業(株)製、「KBE903」、分子量221)0.4部で表面処理したもの(単位表面積当たりのカーボン量0.15mg/m2)
・無機充填材4:球形シリカ(電気化学工業(株)製「SFP-130MC」、平均粒径0.6μm、比表面積6.2m2/g)100部に対して、フェニルアミノシラン(信越化学工業(株)製、「KBM573」、分子量255)0.5部で表面処理したもの(単位表面積当たりのカーボン量0.30mg/m2)
・無機充填材5:球形シリカ(電気化学工業(株)製「SFP-130MC」、平均粒径0.6μm、比表面積6.2m2/g)100部に対して、エポキシシラン(信越化学工業(株)製、「KBM403」、分子量236)0.5部で表面処理したもの(単位表面積当たりのカーボン量0.19mg/m2)
(エ)甲2に記載された発明(無機充填材3)
記載事項2cによると、甲2には、無機充填剤3として、次の表面処理球形シリカが記載されているといえる。
・無機充填材3:球形シリカ(電気化学工業(株)製「SFP-130MC」、平均粒径0.6μm)100部に対して、フェニルアミノシラン(信越化学工業(株)製、「KBM573」、分子量255)0.5部で表面処理したもの(単位表面積当たりのカーボン量0.30mg/m2)
(オ)甲1に記載された発明(無機充填材2、4、5)との対比・判断
本件発明1と甲1に記載された無機充填剤2、4、5とを対比すると、当該無機充填材4、5は、本件発明1において「(ただし、(1)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量255のフェニルアミノシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.30mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」、(2)「BET比表面積が6.2m2/gであるシリカ粒子100部を分子量236のエポキシシラン0.5部で表面処理した、単位表面積当たりのカーボン量が0.19mg/m2である表面改質球状シリカ粉末」 ・・・ を除く。)」として、本件発明1から除かれているものであるし、無機充填材2は、「3-アミノプロピルシラン(信越化学工業(株)製、「KBE903」、分子量221)」で表面処理されたものであるところ、当該「KBE903」は、甲3の製品カタログ(20頁を参照した。)によれば、「3-アミノプロピルトリエトキシシラン」であることが分かるから、加水分解基としてトリメトキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理することが特定されている本件発明1とは相違するものである。
したがって、本件発明1は、上記甲1の無機充填剤2、4、5、すなわち、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(カ)甲2に記載された発明(無機充填材3)との対比・判断
甲2に記載された無機充填材3は、上記(オ)において検討した甲1の「無機充填材4」と同一のものであり、これが本件発明1と相違することも前述のとおりである。
したがって、本件発明1は、甲2の無機充填材3、すなわち甲2に記載された発明であるとはいえない。
イ 本件発明2、3について
本件発明2,3は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様に、甲1又は甲2に記載された発明であるとはいえない。
(2)申立理由2(特許法第29条第2項)について
甲1及び甲2には、無機充填材であるシリカの単位表面積当たりのカーボン量が、0.05~1mg/m2であることが好ましいことが記載されている(甲1:請求項6、9、段落【0035】、甲2:請求項6、9、段落【0036】)。
しかし、甲1及び甲2には、本件発明1のように、シリカ粒子表面のシランカップリング剤の反応量に対する非反応量の比率を制御するという技術思想はなく、また、シランカップリング剤の仕込み量を調整するなどして表面処理を制御することで、本件発明1で特定する反応量及び反応量に対する非反応量の範囲になるともいえない。
したがって、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、3は、甲1又は甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由3(特許法第36条第4項第1号)及び申立理由4(特許法第36条第6項第2号)について
申立理由3及び申立理由4は、本件明細書及び特許請求の範囲にはBET法の測定のための吸着ガスについて開示がないから、BET法による表面積が特定された訂正前の請求項1及びこれを引用する請求項2、3に係る発明は、発明の詳細な説明が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、また、明確ではないというものである。
しかし、本件明細書の段落【0015】、【0034】には、BET比表面積の測定機として「Macsorb HM model-1208」(MACSORB社製)を使用することが記載され、測定装置の情報から吸着ガスについて明らかであるといえるから(なお、吸着ガスについては、特許権者の令和元年6月3日付けの回答書及び添付された乙第1号証(上記装置の取扱説明書)からも明らかである。)、本件発明1~3のBET比表面積についての特定は明確でないとはいえず、また、発明の詳細な説明は当業者が本件発明1~3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。
3 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和2年7月14日付けの上申書において、甲1及び甲2には、種々のシランカップリング剤による処理が行われることが前提とすることが記載されているから、本件発明1は、上記甲1に記載された発明等のシランカップリング剤に代えて他のシランカップリング剤を用いることにより容易に発明をすることができた旨主張している。
しかし、上記2(2)に記載したように、甲1及び甲2には、本件発明1のように、シリカ粒子表面のシランカップリング剤の反応量に対する非反応量の比率を制御するという技術思想の開示はなく、また、甲1に記載された発明等において、他のシランカップリング剤を用いた場合に一分子当たりの炭素数が異なり、同様なシリカ表面のカーボン量が得られるともいえないから、本件発明1の反応量及び非反応量についての特定事項が導出できるとはいえない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-701066