特許異議申立
2018-700903
画像処理プログラム
- 審判番号
- 2018-700903
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-135627
- 登録番号
- 特許第6319615号(P6319615)
- 請求日
- 2018年11月09日
- 審決日
- 2019年06月04日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ニデック
- 【権利者代理人】水越 邦仁
- 【異議申立人】箕浦 裕美子
- 審判長/審判官
- 審判長 伊藤 昌哉
- 審判官 福島 浩司
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 分類
- P1651.113-YAA(A61B) / P1651.121-YAA(A61B) / P1651.537-YAA(A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6319615号発明「画像処理プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6319615号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第6319615号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6319615号の請求項1に係る特許についての出願は、平成25年6月27日に出願され、平成30年4月13日にその特許権の設定登録がされ、平成30年5月9日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年11月9日に特許異議申立人箕浦 裕美子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、平成31年1月30日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成31年4月5日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和元年5月17日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)、(2)のとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
請求項1に「前記解析ステップにおける解析条件を、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された前記複数の画像に対し、一括的に特定又は変更するための指示を、前記表示ステップで表示されている1つの画像を介して、検者から受け付ける受付ステップと」とあるを、「前記解析ステップにおいて経過観察のための解析対象となる、被検眼の組織の範囲または被検眼の視細胞点を、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された前記複数の画像に対し、一括的に特定又は変更するための指示を、前記表示ステップで表示されている1つの画像を介して、検者から受け付ける受付ステップと」に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項1に「前記解析ステップでは、前記受付ステップにおいて受け付けた前記指示に基づいて、前記指示に応じた解析条件が反映された解析結果が、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された前記複数の画像のそれぞれについて出力される」とあるを、「前記解析ステップでは、前記受付ステップにおいて受け付けた前記指示に基づいて、前記指示に応じた前記解析対象による解析結果が、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された前記複数の画像のそれぞれについて出力される」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1に係る訂正について
訂正事項1に係る「前記解析ステップにおいて経過観察のための解析対象となる、被検眼の組織の範囲または被検眼の視細胞点」は、「前記解析ステップにおける解析条件」としての解析対象を限定するものである。すると、「前記解析ステップにおける解析条件」を「前記解析ステップにおいて経過観察のための解析対象となる、被検眼の組織の範囲または被検眼の視細胞点」にする訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項2に係る、「前記指示に応じた解析条件が反映された解析結果」を「前記指示に応じた前記解析対象による解析結果」とする訂正は、前記訂正事項1と同様、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、これら訂正事項1及び2に係る訂正は、実質上、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
次に、明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
(本a)「【0079】
<ROIの設定>
本実施形態のPC1には、上記の解析データ生成処理(図6参照)で作成された解析結果画像を用いて、解析データの修正、および、再解析を行う機能が用意されている。例えば、解析結果画像において解析される対象をユーザの指示に応じて変更したうえで、再解析を行うことができる。例えば、ユーザは、解析結果画像において解析に用いる範囲(即ち、ROI:Region of Interest)を指定して、再解析を行うことができる。データリスト31等で1以上の解析結果画像が選択されて、コントロールボックス32の「ROI設定」ボタン32dが操作された場合、CPU2は、図10に示すようなROI設定ウインドウ70を、コントローラ20に表示させる。」
(本b)「【0081】
データリスト31等において複数の解析結果画像が予め選択されている場合は、CPU2は、「ページ送り」ボタン71の操作に基づいて、選択中の別の解析結果画像を画像表示領域Tに表示させる。また、「解析」ボタン72が操作された場合は、CPU2は、データリスト31等において選択されている解析結果画像の再解析を行う。本実施形態において、再解析では、解析データ生成処理(図6参照)に含まれる視細胞解析処理と同様の処理が行われる。解析結果画像にROIが設定されている場合は、ROIに含まれる眼底組織が解析の対象となる。よって、PC1によれば、視細胞を検出し難い部位(例えば血管など)を除外してROIを設定しておくことで、適正な解析結果が再解析によって得られやすくなる。なお、コントロールボックス32等に用意されている他の「解析」ボタンが操作されても、同様の再解析が行われる。」
(本c)「【0088】
<視細胞の検出結果の修正>
また、本実施形態のPC1では、解析結果画像における視細胞の検出結果を修正することでも、解析結果画像において解析される対象を変更できる。視細胞の検出結果の修正は、図12に示す視細胞点修正ウインドウ80上で行われる。データリスト31等で1以上の解析結果画像が選択されて、コントロールボックス32の「視細胞点修正」ボタン32eが操作された場合、CPU2は、視細胞点修正ウインドウ80を、コントローラ20に表示させる。」
(本d)「【0101】
以上に説明した通り、本実施形態のPC1では、ROI設定ウインドウ70、フォローアップウインドウ90等が表示されている場合に、視細胞の解析処理によって解析される対象を、複数の眼底画像において変更させるユーザからの指示を、操作部14および操作処理部8を介してCPU2が受け付ける。CPU2によって受け付けた指示に関わる対象が、複数の画像の重複部分に含まれている場合に(S44:Yes)、視細胞の解析処理が行われると、複数の画像のそれぞれに対してユーザからの指示を反映させた解析結果が、CPU2によって出力される。このように、ユーザからの指示で、複数の画像において解析される対象がまとめて変更される。よって、互いの少なくとも一部に重複部分を持つ複数の画像を解析する場合に、解析対象を変更させる指示を行うユーザの負担が抑制されやすい。特に、本実施形態では、CPU2は、ROI設定ウインドウ70、フォローアップウインドウ90等に表示されるいずれか1の画像を用いて、ユーザからの指示を受け付ける。このため、ユーザは、解析対象を変更させる指示を行いやすい。」
上記(本a)~(本d)より、「前記解析ステップにおいて経過観察のための解析対象」を、「被検眼の組織の範囲」(ROI)「または被検眼の視細胞点」とする点は発明の詳細な説明に記載されている。
よって、訂正事項1及び2に係る訂正は、新規事項の追加に該当しない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「画像処理装置のプロセッサで実行されることにより、
記憶装置に記憶されており、且つ、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された複数の画像であって、同一の被検眼が撮像された画像を解析して被検眼の組織に関する解析結果を画像毎に出力する解析ステップと、
表示装置に前記複数の画像のいずれか1つを表示させる表示ステップと、
前記解析ステップにおいて経過観察のための解析対象となる、被検眼の組織の範囲または被検眼の視細胞点を、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された前記複数の画像に対し、一括的に特定又は変更するための指示を、前記表示ステップで表示されている1つの画像を介して、検者から受け付ける受付ステップと、が前記画像処理装置によって実行され、
前記解析ステップでは、前記受付ステップにおいて受け付けた前記指示に基づいて、前記指示に応じた前記解析対象による解析結果が、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された前記複数の画像のそれぞれについて出力される画像処理プログラム。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審が平成31年1月30日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第113条第4号に該当し,取り消されるべきものである。
(2)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第113条第4号に該当し,取り消されるべきものである。
(3)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、本件特許の請求項1に係る特許は取り消すべきものである。
2 甲号証の記載
(1)甲1号証に記載された事項について
甲1号証(特開2011-083555号公報)には、以下の事項が記載されている。
(甲1a)「【0001】
本発明は、眼底画像から視神経乳頭部の検出解析を行う眼底画像の解析方法、及び眼底画像処理装置に関する。」
(甲1b)「【0013】
眼底画像処理装置20は、パーソナルコンピュータ等の既存の画像を処理することのできる装置が用いられる。眼底画像処理装置20は、被検者眼のC/D比、R/D比を算出するための眼底画像処理プログラム、及び眼科撮影装置10で撮影された多数の画像データが記憶されるハードディスクである記憶部21と、眼底画像処理プログラムの入出力画面である眼底画像処理画面及び眼底画像が表示される表示部であり、液晶ディスプレイ等からなるモニタ22と、モニタ22に表示された眼底画像処理画面上での各種操作を行うための入力手段(ポインティングデバイス)であるマウス23と、眼底画像処理装置20の全体の駆動を制御するためのCPUや通信回路等からなる制御部24と、から構成される。制御部24は、モニタ22の表示制御やプログラムの実行、マウス23等の入力手段からの入力信号に基づく装置の制御、画像処理等を行う。なお、図示はしないが各種設定や入力を行うための入力手段となるキーボードも備えている。また、記憶部21に記憶されている眼底画像等の多数の画像データには撮影日時等の各種撮影条件や被検者情報等が付されており、これらの情報を用いて多数の画像データを管理することができるようになっている。なお、本実施形態の眼底画像処理プログラムはこれらの画像データを一元で管理することのできるファイリングプログラムとしての機能を含む。」
(甲1c)「【0015】
次に、以上のような構成を備える眼底画像処理装置を用いた眼底画像の処理方法を図2乃至図4のフローチャートに基づき説明する。なお、図2は被検眼のC/D比、R/D比の経時変化を算出する手順を示したフローチャート、図3は経時変化を求める際に基準となる眼底画像(基準画像)の設定についてのフローチャート、図4は経時変化の演算についてのフローチャートを示す。
【0016】
まず、ステップ100で検者は眼科撮影装置10と眼底画像処理装置20とを起動させる。眼底画像処理装置20のモニタ22の初期画面には、眼底画像処理プログラムを立ち上げるための図示を略すアイコンと、マウス23による入力操作を行うための図示を略すカーソルが表示されている。検者によるカーソルの操作によりアイコンがダブルクリックされると、制御部24は眼底画像処理プログラムを起動させて、モニタ22上に眼底画像処理画面を表示させる。なお、眼底画像処理画面の初期画面としては、図示を略す患者一覧画面が表示されるので、検者は該当する患者IDを選択する。この状態で、眼科撮影装置10で取得された撮影画像を取り込むための図示を略す撮影アイコンが選択されると、モニタ22上に画像取込画面200が表示される。」
(甲1d)「【0020】
このように、ステップ110とステップ120とを適宜繰り返し行うことによって、同一被検者(被検者眼)における撮影日時の異なる複数の眼底画像を取得することができる。撮影日時としては最初に撮影した眼底画像に対して、例えば1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後、1年後等、被検眼眼底の経時的な変化を知る上で必要とされる間隔であればよい。また、撮影された眼底画像は撮影日時や被検眼情報(例えば被検者識別用のID情報や左右眼情報等)とともに記憶部21に記憶される。
【0021】
次に、ステップ130で検者は経時変化を求める際に基準となる眼底画像(以下、基準画像と記す)の設定を行う。図3の基準画像設定のフローチャートにおいて、まず、検者は画面切換アイコン204を選択する。制御部24はアイコン204の選択による入力信号に基づき、モニタ22の表示を画像取込画面200からフォローアップ画面300に切り変える。
【0022】
図6はフォローアップ画面300の例である。ここで、画面300の構成を説明する。フォローアップ画面300の上部に用意されたコントロールバー310には、ディスク領域の境界線(ディスクライン)Dの設定を行うためのディスクアイコン311、カップ領域の境界線(カップライン)Cの設定を行うためのカップアイコン312、基準画像のディスクラインDを基準ライン(ベースライン)としてコピーするためのコピーアイコン313、後述する経過観察のグラフ表示の種類を切り替えるグラフ切換アイコン314、C/D比等を算出するための解析アイコン315等、各種条件設定を行うための複数のアイコンが用意されている。
【0023】
画面300の左側に用意されたサムネイルリスト320には、記憶部21に記憶された眼底画像のうち、患者のID情報によって抽出されたサムネイルの一覧が時系列で表示される。なお、切換タブ320aが選択されることでサムネイルリスト320の表示状態を両眼、左眼、右眼とで切り替えることができる。ここでは、切換タブ320aにより両眼が選択された場合が示されている。
【0024】
画面300の中央部の表示領域330にはサムネイルリスト320で選択された眼底画像が表示される。また、表示領域330は左側の表示欄331と右側の表示欄332とから構成され、登録された基準画像は必ず左側の表示欄331に表示される。右側の表示欄332には、基準画像との比較により経時観察を行うための眼底画像(以下、経過画像と記す)が表示される。なお、表示欄を3つ以上設けることにより、経過画像が一度に複数枚表示されるようにしても良い。」
(甲1e)「【0027】
このように、表示領域330の眼底画像とグラフ表示領域340のC/D比等の演算結果とが同時に表示されるので、検者は基準画像と経過画像、及びC/D比を見比べることで、乳頭のディスクとカップとの比率の変化をより的確に確認することができるようになる。
【0028】
このような画面300を用いてステップ130で示す基準画像の設定を行う。ステップ130はさらに図3に示すステップ131~135により構成される。初めにステップ131で、検者は経過観察の基準とする画像(基準画像)を選択する。サムネイルリスト320からサムネイルが選択されると、制御部24は記憶部21から該当する画像データを呼び出して、表示欄331に眼底画像を表示させる(図8参照)。
【0029】
次に検者はパンウィンドー321を利用して、表示欄331に眼底画像の乳頭付近が拡大表示されるように、倍率と表示位置を調節する。なお、表示欄331に表示されている画像をマウス23でドラッグさせることでも表示位置の調節ができる。
【0030】
次に、ステップ132にて、検者によるカーソルの操作でディスクラインDを設定する。図7はディスクラインDとカップラインCの設定の説明図である。ディスクアイコン311が選択されると、ディスク領域の境界線を指定するポイントpの設定が可能になる。なお、眼底の赤色に比べて、ディスク領域(乳頭)はピンク色から黄橙色の明るい色合いをしている。その為、検者は眼底画像から色合いの境界を読み取ることによってポイントpの位置を決定していく。」
(甲1f)「【0034】
更には、タッチパネルを有するモニタ22が使用される場合には、ポインティングデバイスとして使用されるタッチペンの操作によってディスクラインDが直接描かれるようにしても良い(後述のカップラインCについても同様に直接描かれるようにしても良い。)
次に、ステップ133で、以上のように算出されたディスクラインDをベースラインとして記憶部21に登録させる。基準画像のサムネイルをサムネイルリスト320で選択した状態で、マウス32の右クリックをすると、図示を略すポップアップメニューが表示される。ポップアップメニューにはベースライン登録のためのコマンド用意されている。カーソルにより該当するコマンドが選択されると、制御部24はディスクラインD(形状)をベースラインとして記憶部21に記憶させる。なお、ここでは、ディスクラインDを設定してから基準画像として登録するようにしているが、基準画像を登録してからディスクラインDを設定するようにしても良い。
【0035】
次に、ステップ134でカップ縁であるカップラインCを設定する。カップアイコン312が選択されると、カーソルの操作によってカップ縁の位置を示すポイントpの設定が可能になる。なお、カップ領域は乳頭(ディスク)の中でも、更に明るい色合いの薄いピンクがかった白色部分(蒼白部分)として捉えられる。つまり、カップラインCの設定には蒼白部分の境界線上にポイントpが指定されるようにすれば良い。
【0036】
図7(c)に示すように、検者はディスクラインDの設定と同様の方法で、カップ領域(蒼白部分)の境界線上に複数のポイントpを指定する。そして、再び始点のポイントpが選択されると、図7(d)に示すように、制御部24は指定された各ポイントpをスプライン曲線で接続してカップラインCを決定する。
【0037】
次に、ステップ135で、制御部24は基準画像でのC/D比を求める。解析アイコン315がカーソルにより選択されると、制御部24はディスクラインDの上下左右方向に外接する四角形(長方形)の図形を想定してその中心Oを求める。さらに制御部24は中心Oの座標とディスクラインDの座標により求められる線分aと、中心Oの座標とカップラインCの座標により求められる線分bとを所定の角度毎に求め、線分bを線分aで除算することで角度毎にC/D比を求めて記憶部21に記憶させる。例えば、C/D比の演算は1~5度ステップで、中心Oを中心として360度方向で行われる。360度方向でのC/D比が求めら得ることで、乳頭全体のC/D比の経時変化だけでなく、乳頭(ディスク)の特定の箇所でのC/D比の変化を確認出来るようになる。また、制御部24は、中心Oを通る水平方向のライン(軸)AX1と、垂直方向のライン(軸)AX2とを表示欄331上に表示させる。この水平方向と垂直方向の軸AX1、AX2によりディスク領域は4分割され、ここでは、軸AX1の右端を原点(0°)として、反時計回りに軸AX1の右端がT=0°、軸AX2の上端がS=90°、軸AX1の左端がN=180°、軸AX2の下端がI=270°と定義される(図7(d)参照)。」
(甲1g)「【0040】
以上のように基準画像の設定・演算が行なわれた後に、基準画像と後日に撮影された眼底画像との比較から、C/D比及びR/D比の経時変化を求める。図2のステップ140で、検者は前述と同様の手順でモニタ22にフォローアップ画面300を表示させる。このとき、制御部24は記憶部21から基準画像として登録された画像データを自動的に呼び出して、水平・垂直のラインと共に表示欄331に表示させる。
【0041】
前述したステップ100からステップ120の繰り返しにより、新たな眼底の画像データが記憶部21に記憶されていると、サムネイルリストには新しく追加された眼底画像のサムネイルも表示される。
【0042】
図4のステップ141で、サムネイルリスト320から経過観察をしたい眼底画像(基準画像と同じ側の眼)のサムネイルが選択されると、制御部24は、記憶部21から画像データを呼び出して、サムネイルリスト320上に選択された経過画像を表示させる。次に、検者は前述と同様に、画面330上に表示されたパンウィンドー321の操作によって、表示欄332上に表示された経過画像が所望の表示状態になるようにする。
【0043】
次に、表示欄331の眼底画像(基準画像)と表示欄332の眼底画像(経過画像)との整合性を取るために、表示欄332の眼底画像の補正を行う。図8はディスクコピーに
よる画像補正についての説明図である。
【0044】
ステップ142で、ディスクコピーアイコン313が選択されると、表示欄331の基準画像のディスクラインD上に複数箇所の特徴点chを指定できる状態となる。ここでは特徴点chは4箇所指定されるように記憶部21に予め設定されているとする。図8(a)に示すように、検者によるカーソルの操作で4箇所の特徴点chが指定されると、制御部24は各特徴点chの座標を記憶部21に記憶させる。なお、特徴点chとしてはディスクラインD上に位置する血管等、経時変化に関わらず位置・形状が固定されているものが選択されれば良い。なお、各特徴点chには指定した順番を示す番号が付けられている。なお、特徴点chは少なくとも3箇所以上入力されれば良い。少なくとも3箇所の特徴点chが入力されることで、眼底画像の拡大縮小、回転だけでなく、歪の補正ができるようになる。
【0045】
次に、ステップ143で、表示欄332の経過画像に、ベースライン上に指定した4箇所の特徴点chと同じ位置となるように特徴点chを指定する。この時、基準画像の特徴点chの番号を参照しながら、同じ順番で特徴点chが指定されるようにする。図8(a)に示すように、4箇所の特徴点chが指定されると、制御部24はフォローアップ画面300上にディスクコピーの有無を確認するための図示を略すコメントを表示させる。
【0046】
同一被検者の乳頭の大きさ(ディスクラインD)は経時的に変わらないことが経験的に知られている。制御部24は、先ず基準画像側にて設定した4つの特徴点chに基づく相互の位置関係情報と、経過画像側にて設定した4つの特徴点に基づく相互の位置関係情報と相関するように基準画像に対する経過画像全体の回転、歪み等を補正するとともに、基準画像で設定されたディスクラインDの形状を経過画像におけるディスクラインDとして適用する。
【0047】
ステップ144で、ディスクコピーが実行されると、制御部24はベースラインの画像データを記憶部21から呼び出し、ベースラインの特徴点chの各座標と、経過画像上に指定された特徴点chの各座標とを一致させるように、表示欄332の経過画像上にコピーをする。
【0048】
そして、ステップ145で、制御部24は、表示欄332の経過画像の表示状態を表示欄331の基準画像に合わせるために、経過画像の回転、歪み、大きさ等を補正する演算を自動的に行う。これにより、表示欄331の基準画像の表示状態と表示欄332の経過画像の表示状態とが自動的に一致される共に、表示欄332には自動的にディスクラインDが設定される。
【0049】
次に、ステップ146で、前述と同様の手順で経過画像のカップ領域の境界線上に複数のポイントpを指定することによりカップラインCが設定されると、図8(b)に示すように、表示欄332にも表示欄331と同様に、中心Oを通る水平方向と垂直方向の軸が表示される。そして、ステップ147で、ステップ144で設定されたディスクラインDとステップ146で設定されたカップラインCとに基づき、前述のステップ135と同様の方法でC/D比が求められる。
【0050】
以上のように基準画像と経過画像でのC/D比が演算されたら、ステップ150で、所定の角度ステップ毎に算出された基準画像と経過画像のそれぞれのC/D比及びR/D比等が同じグラフ表示領域340上に曲線にてグラフ表示される(図8(b)参照)。」
(2) 甲1号証に記載された発明
ア 上記(甲1e)において、「ステップ130はさらに」「ステップ131~135により構成される」から、「ステップ130はさらに」、
「検者は経過観察の基準とする画像(基準画像)を選択し、
制御部24は記憶部21から該当する画像データを呼び出して、表示欄331に眼底画像を表示させるステップ131と、
検者によるカーソルの操作でディスクラインDを設定するステップ132と、
カップ縁であるカップラインCを設定するステップ134と、
制御部24は基準画像でのC/D比を求めるステップ135と、」
からなる点が理解できる。
イ すると、上記(甲1a)~(甲1g)より、甲1号証には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「被検者眼のC/D比を算出するための眼底画像処理プログラム、及び眼科撮影装置10で撮影された多数の画像データが記憶されるハードディスクである記憶部21と、眼底画像処理プログラムの入出力画面である眼底画像処理画面及び眼底画像が表示される表示部であり、液晶ディスプレイ等からなるモニタ22と、眼底画像処理装置20の全体の駆動を制御するためのCPU等からなる制御部24と、から構成される眼底画像処理装置20の眼底画像処理プログラムであって、
眼底画像処理プログラムは、制御部24で実行され、
記憶部21に記憶されている眼底画像等の多数の画像データには撮影日時等の各種撮影条件や被検者情報等が付されており、これらの情報を用いて多数の画像データを管理することができ、
被検眼のC/D比の経時変化を算出する手順は、
同一被検者(被検者眼)における撮影日時の異なる複数の眼底画像を取得し、
撮影された眼底画像は撮影日時や被検眼情報とともに記憶部21に記憶されるステップ110とステップ120と、
検者は経時変化を求める際に基準となる眼底画像(以下、基準画像と記す)の設定を行い、
入力信号に基づき、モニタ22の表示を画像取込画面200からフォローアップ画面300に切り変え、
画面300の中央部の表示領域330にはサムネイルリスト320で選択された眼底画像が表示される、
画面300を用いて基準画像の設定を行う
ステップ130と
C/D比の経時変化を求めるステップ140と、
サムネイルリスト320から経過観察をしたい眼底画像(基準画像と同じ側の眼)のサムネイルが選択されると、制御部24は、記憶部21から画像データを呼び出して、サムネイルリスト320上に選択された経過画像を表示させるステップ141と、
表示欄331の基準画像のディスクラインD上に複数箇所の特徴点chを指定できる状態となり、検者によるカーソルの操作で4箇所の特徴点chが指定され、
制御部24は各特徴点chの座標を記憶部21に記憶させるステップ142と、
表示欄332の経過画像に、ベースライン上に指定した4箇所の特徴点chと同じ位置となるように特徴点chを指定し、
制御部24は、先ず基準画像側にて設定した4つの特徴点chに基づく相互の位置関係情報と、経過画像側にて設定した4つの特徴点に基づく相互の位置関係情報と相関するように基準画像に対する経過画像全体の回転、歪み等を補正するとともに、基準画像で設定されたディスクラインDの形状を経過画像におけるディスクラインDとして適用するステップ143と、
制御部24はベースラインの画像データを記憶部21から呼び出し、ベースラインの特徴点chの各座標と、経過画像上に指定された特徴点chの各座標とを一致させるように、表示欄332の経過画像上にコピーをするステップ144と、
制御部24は、表示欄332の経過画像の表示状態を表示欄331の基準画像に合わせるために、経過画像の回転、歪み、大きさ等を補正する演算を自動的に行う。これにより、表示欄331の基準画像の表示状態と表示欄332の経過画像の表示状態とが自動的に一致される共に、表示欄332には自動的にディスクラインDが設定されるステップ145と、
経過画像のカップ領域の境界線上に複数のポイントpを指定することによりカップラインCが設定され、表示欄332にも表示欄331と同様に、中心Oを通る水平方向と垂直方向の軸が表示されるステップ146と、
ステップ144で設定されたディスクラインDとステップ146で設定されたカップラインCとに基づき、前述のステップ135と同様の方法でC/D比が求められるステップ147と、
算出された基準画像と経過画像のそれぞれのC/D比がグラフ表示領域340上に曲線にてグラフ表示されるステップ150とからなり、
上記ステップ130はさらに、
検者は経過観察の基準とする画像(基準画像)を選択し、
制御部24は記憶部21から該当する画像データを呼び出して、表示欄331に眼底画像を表示させるステップ131と、
検者によるカーソルの操作でディスクラインDを設定するステップ132と、
カップ縁であるカップラインCを設定するステップ134と、
制御部24は基準画像でのC/D比を求めるステップ135とからなる
眼底画像処理プログラム。」
(3)甲2号証に記載された事項について
甲2号証(特開2012-254164号公報)には、以下の事項が記載されている。
(甲2a)「【0022】
まずステップS1で、オペレータは、マウスを操作してC/D比を描画する眼底画像を指定する。この操作は、例えば、眼底画像のサムネイル画像表示から画像をクリックし、画像を選択して実行する。選択実行されると、制御部3は選択画像の情報を読込み、画像に関連付けられている患者情報を読み込む。この読み込んだ選択画像のデータと関連付けられた患者情報を含んでデータをデータ1(第一眼科検査データ9A)とする。データ例を図4に示す。患者情報から患者ID,選択画像の情報から、検査UID、左右眼、部位、画像UID、撮影日、撮影時刻、C/D比データUID。C/D比データUIDは、C/D比のデータであるC/D比の描画情報(選択画像と関連づけられている位置情報)、C/D比の計測結果を格納している情報と関連付けられている。C/D比データUIDから、それらの情報を取得することができる。C/D比データが存在しない場合は、データの存在を示さない値(例えば、NULL等)が入力されている。なお、C/D比の描画情報は、選択画像上のある座標点の集合として表現される。」
(甲2b)「【0024】
ステップS3では、選択された画像を読み込む処理を行う。この読み込んだ画像データとそれに関連付けられたC/D比データを含んだデータをデータ2(第二眼科検査データ9B)とする。次にステップS4では、データ1の眼底画像とデータ2の眼底画像に対して位置合わせ処理を行う。位置合わせ処理は位置合わせ部の画像位置合わせの処理を行う。この位置合わせを行う処理は、まず眼底画像から乳頭を自動抽出して、差分を補正値として算出し、この補正値に基づいて乳頭の位置合わせを行う。特に乳頭の中心が最も良く合うように位置を合わせる処理がよい。すなわち、視神経乳頭を前記眼科画像から乳頭領域を抽出する乳頭抽出手段を有し、この抽出手段により抽出した乳頭領域を用いて視神経乳頭の中心が最も良く位置が合うように位置合わせを行う。」
(甲2c)「【0029】
次に、ステップS7でデータ1の画像に対してディスクラインをマウス操作等によって描画する。まず、データ1の画像上に描画されているデータ2のC/D比のディスクラインの描画をデータ1のディスクラインとして反映して描画する。ディスクラインを描画開始時に、データ2のディスクラインを反映するかどうかをオペレータに確認してもよい。
【0030】
ここで、新規にディスクラインを描画する場合を説明する。ディスクラインの描画はオペレータがマウス操作をしながら、ディスプレイに表示されているデータ1の画像上に描画するポイントをクリックすることで指定し、ディスクラインを描画する。ディスクラインの外縁に複数ポイントを指定し、指定ポイントをスプライン曲線で滑らかなラインとなるように結ぶ。描画されたポイントを編集したい場合は、編集したいポイントをマウスで選択し、マウス移動の操作によってポイントを移動させたり、ポイントを追加、削除したりする。あるいは、ディスクラインの描画をディスクの外縁を自動認識して、認識した外縁に沿ってポイントを自動で指定しても良い。この場合の編集方法は上記に記載した方法と同じである。編集が完了したらディスクラインの描画完了をオペレータが選択しディスクラインを確定する。例えば、編集の終了はダブルクリックなどで終了させる。あるいは、画面上に編集終了のボタンをオペレータに操作させることで終了させてもよい。ディスクラインの描画でデータ2のディスクラインを反映した場合は、データ2の指定ポイント数と同じポイント数が描画される。ディスクラインを編集したい場合は上記に記載した方法で編集を行う。
【0031】
一般的にはディスクの外縁の変化は少ないことが多いので、自動でディスクラインを反映し、ディスクラインの編集を行わずにステップS8の処理に移行してもよい。この場合はカップラインを描画した後に必要があればディスクラインの編集を行う。次にステップS8では、カップラインを描画する。カップラインの描画もディスクラインと同様に行う。ただし、緑内障の進行具合や治療具合を確認する経過観察の場合は、カップラインの変化が大きくなることが多いので、カップライン描画選択時には、前回のカップラインを反映して編集を行える状態になっているのが良い。あるいは、新規にカップラインの描画入力を行う状態になっているのがよい。カップラインの入力で、カップの外縁を自動認識して描画させる方法は、公知のカップ抽出の認識アルゴリズムでは、カップの外縁の認識が困難なため行わない。これは、自動認識の処理は通常、多くの処理時間がかかることを考慮すると、手動でオペレータが編集する方が、短時間で、かつ本件の手法により公知より正確なカップラインを描画できるからである。」
(4)甲3号証に記載された事項について
甲3号証(特開2002-063563号公報)には、以下の事項が記載されている。
(甲3a)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した画像が、同一被写体について比較読影の対象となる2以上の画像である場合もある。すなわち例えば、ある特定の患者の体内に何らかの病変部が有り、その病変部の進行状況や治癒状況を経過観察する場合である。この場合、最初に画像(放射線画像等)を撮影してから、例えば1週間後、2週間後または1ヶ月後といったように所定の時間間隔をあけてから再度撮影を行ない、得られた画像を最初の画像と比較読影するなどして、病変部の変化を観察するのが一般的である。そしてこのような経過観察が長期に亘る場合は、同一の被写体について多数の画像が蓄積されることになる。」
(甲3b)「【0009】すなわち本発明の第1の画像処理方法は、同一被写体について比較対象となる2以上の画像のうち1つの画像の、所定の処理が施された関心領域と略同一の、他の画像についての対応関心領域を求め、前記求められた前記対応関心領域について、前記所定の処理と同一の処理を施すことを特徴とするものである。」
(甲3c)「【0013】そして所定の処理とは、当該関心領域における所定の物理量(例えば濃度平均値等)を定量化する処理や、当該関心領域における所定の特徴を強調または抽出する画像処理(周波数強調、階調強調、拡大等の画像処理)や、当該関心領域における所定の画像特徴量を計測する計測処理などを適用することができる。」
(甲3d)「【0019】なお「所定の処理」が画像処理の場合、関心領域や対応関心領域についてその画像処理が施されたのちの全体画像が「処理が施された結果」であり、「所定の処理」が関心領域における所定の物理量を定量化する処理である場合や画像特徴量を計測する計測処理である場合は、得られた定量値(定量化の処理条件等も含む)または計測値(計測処理の処理条件等も含む)の外、当該関心領域または対応関心領域が設定された全体画像も「処理が施された結果」とすることができる。したがって、処理が施された結果を再生する場合、定量化する処理によって得られた定量値とその関心領域が設定された画像も再生し、計測処理によって得られた計測値とその関心領域が設定された画像も再生することができる。なお定量値や計測値は、別途さらに他の視覚に訴える方法(例えばグラフ化するなどの方法)で再生するようにしてもよい。
【0020】本発明の第1の画像処理システムは、上述した本発明の第1の画像処理方法を実施するシステムであって、同一被写体について比較対象となる2以上の画像のうち1つの画像の、所定の処理が施された関心領域と略同一の、他の画像についての対応関心領域を求める対応関心領域設定手段と、前記対応関心領域について、前記所定の処理と同一の処理を施す関心領域処理手段とを備えたことを特徴とするものである。」
(甲3e)「【0031】ここで、現在画像P2のうち画像処理が施される関心領域R2は、外部の関心領域設定手段20により設定され、例えばCRT1に最初に表示された全体画像P1,P2を観察読影した医師等の読影者が、現在画像P2中において関心のある領域、すなわち画像P2において例えば通常とは異なる陰影P3部分等の詳しく観察することを希望する領域を関心領域R2として設定する手段であり、当該関心領域R2を内部領域とするようなROI枠を表示させて指定する。なお、具体的にはCRT1の表示面上において、マウスやカーソル等のポインティングデバイスを関心領域設定手段20としてこの指定を行えばよい。」
(甲3f)「【0035】関心領域処理手段2が過去画像P1の対応関心領域R1、現在画像P2の関心領域R2に対してそれぞれ施す画像処理としては、周波数強調処理や階調強調処理、拡大処理などであり、現在画像P2の関心領域R2に対して施した画像処理の条件を保持しておき、この画像処理条件をそのまま使って、過去画像P1の対応関心領域R1に同じ画像処理を施す。なお、画像処理の処理条件は予め設定されていてもよいし、画像読影者の読影の好みに応じて適宜変更することができるように設定しておいてもよい。
【0036】次に本実施形態の画像処理システム10の作用について説明する。
【0037】まず外部の画像読取装置や画像記憶媒体等から、図2に示した過去画像P1、現在画像P2がそれぞれ、画像再生システム10のCRT3、対応関心領域設定手段1、および関心領域処理手段2にそれぞれ入力される。過去画像P1、現在画像P2がそれぞれ入力されたCRT3は、これら過去画像P1、現在画像P2を可視像としてその画面上に並べて表示する(図3参照)。」
(甲3g)「【0044】また関心領域処理手段1は、関心領域R1,R2に対して、同一の処理条件で画像処理を施すものとして説明したが、画像処理に代えて、関心領域内の平均濃度等を求める計測処理を適用することもできる。この場合、得られた計測結果を計測値として数値表示してもよいし、グラフ化して表示するようにしてもよい。またこれらの結果や対応関心領域が設定された画像などをその場で表示等することなく、データとして単に記憶媒体等に保管のみし、後に必要に応じて読み出して、表示またはプリントするなどしてもよい。」
(甲3h)「【0048】また上述したように過去画像と現在画像との2つを比較読影するものに限らず、3以上の画像(経時画像等)が比較読影の対象となる場合においても、同様に適用することができる。なお、比較読影の対象となる2つ(または3つ以上)の画像としては、例えば図7に示すように、単一の記録媒体(フイルム、蓄積性蛍光体シート等)を4つの記録領域に分けて各領域にそれぞれ比較読影の対象となる画像P1,P2,P3,P4を1つずつ記録することによって全体として単一の画像Pとして読み取られる画像であるが、この単一の画像Pのうちの4つの画像P1,P2,P3,P4が比較読影の対象となるときは、このような態様の2以上の画像P1,P2,…をも含めることができる。」
(5)甲4号証に記載された事項について
甲4号証(特開2007-287027号公報)には、以下の事項が記載されている。
(甲4a)「【0007】
関心領域設定手段は、時系列に取得された複数の医用画像をモニタ画面に表示して、その複数の医用画像のうち少なくとも1つの医用画像に対する領域指定操作を受け付けることにより、前記各医用画像について関心領域を設定するものである。時系列に取得された複数の医用画像は、同一患者の同一部位について異なる日もしくは異なる時刻に行われた検査で取得された医用画像のことであるが、被写体が同じであれば検査に使用されたモダリティの種類は必ずしも同じでなくてよい。」
(甲4b)「【0048】
関心領域設定手段11は、ステップS102で選択された画像が、選択された1つ目の画像であれば(S104)、取得した画像情報10の画像データをモニタ15の画面に出力して、ROIの指定操作を受け付ける(S105)。」
(甲4c)「【0052】
本実施形態では、関心領域設定手段21は、2つ目以降の画像選択では(S104)、ステップS105の操作に代えて、ステップS110のROI推定処理を実行する。ROI推定処理は、1つ目の画像に対しステップS105において設定されたROIに基づいて、2つ目の画像のROIを推定する処理である。
【0053】
図9は、ステップS110のROI推定処理について説明するための図である。例えば、図9(a)に例示するように、選択された第1の画像がX線単純撮影画像であり、その画像について座標点(xa,ya)を基点とする所定の縦幅V、横幅HのROIが指定されたとする。この場合、選択された第2の画像が第1の画像と同じくX線単純撮影画像であれば、同じ座標(xa,ya)を基点とし、同じ縦幅Vおよび横幅Hの領域を第2の画像上に自動的に設定する。あるいは、特開2002-092589号公報に示されている手法で位置合わせを行った後に、同じ縦幅Vおよび横幅Hの領域を第2の画像上に自動的に設定してもよい。」
(甲4d)「【0056】
なお、1つ目の画像か2つ目以降の画像かによらず(ステップS104の判定を行わず)、常にステップS105のROI指定操作受付処理を行うようにしてもよい。すなわち、ステップS110のROI推定処理は、画面上でROIを指定する操作の負担を軽減するための処理であり、類似症例機能において必須の処理ではない。」
3 当審の判断
(1)特許法第29条第1項第3号について
ア 対比
本件特許発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「眼底画像処理プログラム」、「眼底画像処理装置20」及び「CPU」は、それぞれ本件特許発明の「画像処理プログラム」、「画像処理装置」及び「プロセッサ」に相当する。そして、引用発明の「眼底画像処理プログラム」は、「制御部24で実行され」、該「制御部24」は、「眼底画像処理装置20」を構成する「CPU等からな」っているから、引用発明の「制御部24で実行され」る「眼底画像処理プログラム」は、本件特許発明の「画像処理装置のプロセッサで実行される」「画像処理プログラム」に相当する。
(イ)引用発明の「記憶部21」は、本件特許発明の「記憶装置」に相当する。そして、引用発明の「ステップ110とステップ120」において取得された「同一被検者(被検者眼)における撮影日時の異なる複数の眼底画像」は、「記憶部21に記憶され」ているから、本件特許発明の「記憶装置に記憶されており、且つ、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された複数の画像であって、同一の被検眼が撮像された画像」に相当する。
また、引用発明の「ステップ146」では、「ステップ144で設定されたディスクラインDとステップ146で設定されたカップラインCとに基づき、前述のステップ135と同様の方法でC/D比が求められ」、「ステップ144」及び「ステップ146」では、ともに「ステップ110とステップ120」において取得された「眼底画像」である「経過画像」に対し「ディスクラインD」と「カップラインC」を設定し、「同一被検者(被検者眼)における撮影日時の異なる複数の眼底画像」に対し、「ディスクラインD」と「カップラインC」を設定し、「C/D比」を求めているから、該「C/D比」は、本件特許発明の「同一の被検眼が撮像された画像を解析して被検眼の組織に関する解析結果」に相当する。そして、引用発明の「C/D比」は、各「経過画像」毎に解析されることは明らかであり、求められた「C/D比」は、「ステップ150」で表示されるから、引用発明の「記憶部21に記憶され」ている「同一被検者(被検者眼)における撮影日時の異なる複数の眼底画像」である「経過画像」に対し、「ディスクラインD」と「カップラインC」を設定し、「C/D比」を求める「ステップ146」及び該「C/D比」を表示する「ステップ150」とは、本件特許発明の「記憶装置に記憶されており、且つ、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された複数の画像であって、同一の被検眼が撮像された画像を解析して被検眼の組織に関する解析結果を画像毎に出力する解析ステップ」に相当する。
(ウ)引用発明の「ステップ131」において、「制御部24は記憶部21から該当する画像データを呼び出して、表示欄331に眼底画像を表示させる」から、該「ステップ131」は、本件特許発明の「表示装置に前記複数の画像のいずれか1つを表示させる表示ステップ」に相当する。
(エ)引用発明の「モニタ22」は、本件特許発明の「表示装置」に相当する。そして、「制御部24は記憶部21から該当する画像データを呼び出して、表示欄331に眼底画像を表示させるステップ131」の「該当する画像データ」は、「サムネイルリスト320で選択された眼底画像」であり、「モニタ22」に表示された「フォローアップ画面300」の「中央部の表示領域330に」「表示され」ているから、引用発明の「ステップ131」は、本件特許発明の「表示装置に前記複数の画像のいずれか1つを表示させる表示ステップ」に相当する。
(オ)引用発明の「ディスクラインD」及び「カップラインC」と、本件特許発明の「被検眼の組織の範囲または被検眼の視細胞点」とは、「経過観察のための解析対象」である点で共通する。そして、引用発明は、まず、「ステップ131」で選択された「基準とする画像(基準画像)」に対し、「ステップ132」で「ディスクラインD」を設定し、「ステップ143」において、「基準画像で設定されたディスクラインDの形状を経過画像におけるディスクラインDとして適用」し、ここで「経過画像」は、「同一被検者(被検者眼)における撮影日時の異なる複数の眼底画像」であって、「基準画像で設定されたディスクラインD」は、これら「同一被検者(被検者眼)における撮影日時の異なる複数の眼底画像」全てに一括して適用されることは明らかであって、該「ステップ131」は「眼底画像処理装置20」によって実行されるから、引用発明の「眼底画像処理装置20」と、本件特許発明の「画像処理装置」とは、「前記解析ステップにおいて経過観察のための解析対象を、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された前記複数の画像に対し、一括的に特定又は変更するための指示を、前記表示ステップで表示されている1つの画像を介して、検者から受け付ける受付ステップと、が前記画像処理装置によって実行され」る点で共通する。
(カ)引用発明の「ステップ150」は、「基準画像で設定されたディスクラインDの形状を経過画像におけるディスクラインDとして適用」した結果の「C/D比」を表示しているから、本件特許発明の「前記解析ステップ」とは、「前記受付ステップにおいて受け付けた前記指示に基づいて、前記指示に応じた前記解析対象による解析結果が、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された前記複数の画像のそれぞれについて出力される」点で一致する。
(キ) 上記ア~カより、本件特許発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有している。
(一致点)
「画像処理装置のプロセッサで実行されることにより、
記憶装置に記憶されており、且つ、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された複数の画像であって、同一の被検眼が撮像された画像を解析して被検眼の組織に関する解析結果を画像毎に出力する解析ステップと、
表示装置に前記複数の画像のいずれか1つを表示させる表示ステップと、
前記解析ステップにおいて経過観察のための解析対象を、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された前記複数の画像に対し、一括的に特定又は変更するための指示を、前記表示ステップで表示されている1つの画像を介して、検者から受け付ける受付ステップと、が前記画像処理装置によって実行され、
前記解析ステップでは、前記受付ステップにおいて受け付けた前記指示に基づいて、前記指示に応じた前記解析対象による解析結果が、互いに同じ撮影方法で互いに異なる日に撮影された前記複数の画像のそれぞれについて出力される画像処理プログラム。」
(相違点)解析対象が、本件特許発明は、「被検眼の組織の範囲または被検眼の視細胞点」であるのに対し、引用発明は「ディスクラインD」及び「カップラインC」である点。
イ 判断
上記のとおり、本件特許発明と引用発明とは、上記相違点があるから、本件特許発明は引用発明であるとはいえない。
(2)特許法第36条第6項第1号及び第2号について
当審が平成31年1月30日に特許権者に通知した取消理由において、訂正前の請求項1に係る発明の「解析条件」がどのようなものであるか理解することができないから、訂正前の請求項1に係る発明は明確ではなく、そして、訂正前の請求項1に係る発明の「解析条件」は発明の詳細な説明に記載されていないから、訂正前の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない旨通知したが、本件訂正請求により、「前記解析ステップにおける解析条件」は、「前記解析ステップにおいて経過観察のための解析対象となる、被検眼の組織の範囲または被検眼の視細胞点」に訂正されたことにより、本件特許発明は明確になり、そして、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。
(3)申立人の意見について
申立人は、ディスクラインは「眼底におけるディスク領域の境界線」であることから、ディスクラインとは、眼底における、ディスク領域という被検眼の組織の範囲の外線を規定する線であることから、引用発明の「ディスクラインD」を設定するという検者の操作により、ディスク領域を特定することは、「経過観察のための解析対象となる、被検眼の組織の範囲」を特定することになるから、引用発明の基準画面においてディスクラインDを設定し、基準画面で設定したディスクラインDの形状を経過画像におけるディスクラインとして適用する検者の操作は、本件特許発明の「経過観察のための解析対象となる、被検眼の組織の範囲または被検眼の視細胞点」を「一括的に特定又は変更するための指示」に相当する旨主張しているが、引用発明の解析対象は「ディスクラインD」自体であって、ディスク領域内の組織ではないから、「ディスクラインD」を設定するという検者の操作により、ディスク領域を特定することは、「経過観察のための解析対象となる、被検眼の組織の範囲」を特定することにはならない。
よって、申立人のかかる主張は、採用することができない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1に係る発明は、甲1-4号証から当業者が容易に想到できたものである旨を主張する。
そこで、上記第4の3(1)において検討した上記相違点について検討すると、「前記解析ステップにおいて経過観察のための解析対象」を「被検眼の組織の範囲または被検眼の視細胞点」とする構成は、甲2-4号証に記載されていないが、該構成が、本願出願前において周知技術であったとしても、甲1号証の「ディスクラインD」及び「カップラインC」にかえて、「被検眼の組織の範囲または被検眼の視細胞点」とする動機付けがない。
したがって、本件特許発明は引用発明及び甲2-4号証に記載された事項から当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。
したがって、申立人のかかる主張は、採用することができない。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700903