特許異議申立
2018-700808
トリガー式噴出器
- 審判番号
- 2018-700808
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-264477
- 登録番号
- 特許第6312322号(P6312322)
- 請求日
- 2018年10月04日
- 審決日
- 2019年10月04日
- 公報発行日
- 2020年02月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ライオン株式会社
- 【権利者代理人】小椋 正幸
- 【権利者代理人】黒瀬 雅一
- 【権利者代理人】川越 雄一郎
- 【権利者代理人】志賀 正武
- 【権利者代理人】高橋 詔男
- 【権利者代理人】鈴木 三義
- 【権利者代理人】加藤 広之
- 【異議申立人】笹倉 康助
- 【異議申立人代理人】樺澤 襄
- 【異議申立人代理人】樺澤 聡
- 【異議申立人代理人】山田 哲也
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 大島 祥吾
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.537-ZAA(B05B) / P1651.121-ZAA(B05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6312322号発明「トリガー式噴出器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6312322号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第6312322号の請求項1、2、4、5に係る特許を取り消す。
特許第6312322号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6312322号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成26年12月26日の出願であって、平成30年3月30日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年4月18日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、本件特許に対して特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続が行われた。
平成30年10月 4日 :特許異議申立人 笹倉康助(以下、「特許
異議申立人」という。)による特許異議の
申立て(対象請求項:全請求項)
平成30年12月20日付け:取消理由通知
平成31年 3月 6日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
平成31年 4月16日 :特許異議申立人による意見書の提出
令和 1年 5月28日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 1年 7月16日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
(以下、「本件訂正請求」という。)
令和 1年 8月26日 :特許異議申立人による意見書の提出
第2 訂正の許否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)ないし(6)のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1)訂正事項1
請求項1を
「トリガーを操作することによって容器内に収容された液体組成物を噴出可能なトリガー式噴出器であって、
前記液体組成物が噴出される噴出孔を有する噴出部を備え、
前記噴出部は、
前記噴出孔が設けられる壁部と、
前記噴出孔を囲んで前記壁部から前記液体組成物が噴出される噴出側に延びる筒部と、
前記筒部に設けられ前記噴出孔の前記噴出側に位置するメッシュ部と、
を有し、
前記筒部が延びる延出方向における、前記壁部と前記メッシュ部との間の距離を第1距離とし、
前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物が接触する接触領域の外縁と前記筒部の内側面との間の距離を第2距離としたとき、
前記第1距離に対する前記第2距離の比は、0.2以下であることを特徴とするトリガー式噴出器。」
から
「トリガーを操作することによって容器内に収容された液体組成物を噴出可能なトリガー式噴出器であって、
前記液体組成物が噴出される噴出孔を有する噴出部を備え、
前記噴出部は、
前記噴出孔が設けられる壁部と、
前記噴出孔を囲んで前記壁部から前記液体組成物が噴出される噴出側に延びる筒部と、
前記筒部に設けられ前記噴出孔の前記噴出側に位置するメッシュ部と、
を有し、
前記液体組成物が前記噴出孔から噴出される液霧は、主液霧と、主液霧の周囲の空間に噴出される飛散液霧と、を含み、
前記筒部が延びる延出方向における、前記壁部と前記メッシュ部との間の距離を第1距離とし、
前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外縁と前記筒部の内側面との間の距離を第2距離としたとき、
前記第1距離は、5mm以下であり、
前記第1距離に対する前記第2距離の比は、0より大きく、0.2以下であることを特徴とするトリガー式噴出器。」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
請求項4を
「一度の前記トリガーの操作によって前記噴出孔から噴出される前記液体組成物の量は、2ml以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載のトリガー式噴出器。」
から、
「一度の前記トリガーの操作によって前記噴出孔から噴出される前記液体組成物の量は、2ml以上である、請求項1または2に記載のトリガー式噴出器。」
に訂正する。
(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
請求項5を
「前記噴出孔の直径は、0.25mm以上、0.45mm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のトリガー式噴出器。」
から、
「前記噴出孔の直径は、0.25mm以上、0.45mm以下である、請求項1、2、4のいずれか一項に記載のトリガー式噴出器。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
発明の詳細な説明の段落【0006】の
「本発明のトリガー式噴出器の一つの態様は、トリガーを操作することによって容器内に収容された液体組成物を噴出可能なトリガー式噴出器であって、前記液体組成物が噴出される噴出孔を有する噴出部を備え、前記噴出部は、前記噴出孔が設けられる壁部と、前記噴出孔を囲んで前記壁部から前記液体組成物が噴出される噴出側に延びる筒部と、前記筒部に設けられ前記噴出孔の前記噴出側に位置するメッシュ部と、を有し、前記筒部が延びる延出方向における、前記壁部と前記メッシュ部との間の距離を第1距離とし、前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物が接触する接触領域の外縁と前記筒部の内側面との間の距離を第2距離としたとき、前記第1距離に対する前記第2距離の比は、0.2以下であることを特徴とする。」
という記載を、
「本発明のトリガー式噴出器の一つの態様は、トリガーを操作することによって容器内に収容された液体組成物を噴出可能なトリガー式噴出器であって、前記液体組成物が噴出される噴出孔を有する噴出部を備え、前記噴出部は、前記噴出孔が設けられる壁部と、前記噴出孔を囲んで前記壁部から前記液体組成物が噴出される噴出側に延びる筒部と、前記筒部に設けられ前記噴出孔の前記噴出側に位置するメッシュ部と、を有し、前記液体組成物が前記噴出孔から噴出される液霧は、主液霧と、主液霧の周囲の空間に噴出される飛散液霧と、を含み、前記筒部が延びる延出方向における、前記壁部と前記メッシュ部との間の距離を第1距離とし、前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外縁と前記筒部の内側面との間の距離を第2距離としたとき、前記第1距離は、5mm以下であり、前記第1距離に対する前記第2距離の比は、0より大きく、0.2以下であることを特徴とする。」
に訂正する。
(6)訂正事項6
発明の詳細な説明の段落【0008】を削除する。
なお、本件訂正請求における請求項1に係る訂正は、一群の請求項〔1~5〕に対して請求されたものである。また、本件訂正請求における明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~5〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 請求項1に係る訂正のうち、
「前記筒部が延びる延出方向における、前記壁部と前記メッシュ部との間の距離を第1距離とし、
前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物が接触する接触領域の外縁と前記筒部の内側面との間の距離を第2距離としたとき、」
を
「前記液体組成物が前記噴出孔から噴出される液霧は、主液霧と、主液霧の周囲の空間に噴出される飛散液霧と、を含み、
前記筒部が延びる延出方向における、前記壁部と前記メッシュ部との間の距離を第1距離とし、
前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外縁と前記筒部の内側面との間の距離を第2距離としたとき、」
に変更する訂正事項は、噴出孔から噴出される液霧が、「主液霧」と「飛散液霧」を含むことを明らかにするとともに、「第2距離」を算出するための「接触領域」が、主液霧が接触する「接触領域」であることを明らかにするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0037】の、「トリガー31の操作を操作することで、図2の破線に示すように、液体組成物は液霧Fとなって噴出孔28から噴出される。液霧Fはメッシュ部33に接触することで泡となり、トリガー式噴出器1から噴出される。液霧Fは、主液霧Fmと、飛散液霧Fsと、を含む。」との記載、段落【0038】の、「図3に示すメッシュ部33における主液霧Fmが接触する接触領域ARF1の面積は、例えば、メッシュ部33の面積の30%以上である。」との記載、さらに、段落【0042】の、「噴出側筒部26bの延出方向と直交する方向、すなわち、噴出側筒部26bの径方向における、接触領域ARF1の外縁と噴出側筒部26bの内側面26dとの距離を第2距離L2とする。図3に示すように、第2距離L2は、外側領域ARF2の径方向の寸法である。外側領域ARF2は、メッシュ部33における接触領域ARF1の径方向外側に位置する部分である。外側領域ARF2は、円環状の領域である。」との記載から、請求項1に係る当該訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
イ 請求項1に係る訂正のうち、
「前記第1距離は、5mm以下であり、」との事項を加える訂正事項は、訂正前の請求項3を請求項1に組み込むものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
ウ 請求項1に係る訂正のうち、
「前記第1距離に対する前記第2距離の比は、0.2以下である」を「前記第1距離に対する前記第2距離の比は、0より大きく、0.2以下である」に変更する訂正事項は、第1距離に対する第2距離の比の下限を導入するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0052】の「これに対して、本実施形態によれば、上述したようにして、適切に泡の飛散を抑制できる範囲を設定できる。そのため、外側領域ARF2を適切に設けて上記不具合の発生を抑制しつつ、泡の飛散を抑制できるように第1距離L1及び第2距離L2を設定することが容易である。なお、この場合、第1距離L1に対する第2距離L2の比は、例えば、0より大きく、0.2以下である。」との記載から、当該訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
エ 請求項1の記載を引用する請求項2、4、5も同様である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
(3)訂正事項3について
請求項4を
「一度の前記トリガーの操作によって前記噴出孔から噴出される前記液体組成物の量は、2ml以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載のトリガー式噴出器。」
から、
「一度の前記トリガーの操作によって前記噴出孔から噴出される前記液体組成物の量は、2ml以上である、請求項1または2に記載のトリガー式噴出器。」
にする訂正は、引用していた請求項3が削除されたことに伴い、請求項3を引用することができなくなったことから、引用する請求項を「請求項1または2」に変更するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものにあたる。そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(4)訂正事項4について
請求項5を
「前記噴出孔の直径は、0.25mm以上、0.45mm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のトリガー式噴出器。」
から、
「前記噴出孔の直径は、0.25mm以上、0.45mm以下である、請求項1、2、4のいずれか一項に記載のトリガー式噴出器。」
にする訂正は、引用していた請求項3が削除されたことに伴い、請求項3を引用することができなくなったことから、引用する請求項を「請求項1、2、4」に変更するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものにあたる。そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(5)訂正事項5、6について
段落【0006】、【0008】の訂正は、上記(1)の特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、段落【0006】、【0008】の訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項[1~5]について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、令和1年7月16日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(なお、請求項3は削除されている。)
「【請求項1】
トリガーを操作することによって容器内に収容された液体組成物を噴出可能なトリガー式噴出器であって、
前記液体組成物が噴出される噴出孔を有する噴出部を備え、
前記噴出部は、
前記噴出孔が設けられる壁部と、
前記噴出孔を囲んで前記壁部から前記液体組成物が噴出される噴出側に延びる筒部と、
前記筒部に設けられ前記噴出孔の前記噴出側に位置するメッシュ部と、
を有し、
前記液体組成物が前記噴出孔から噴出される液霧は、主液霧と、主液霧の周囲の空間に噴出される飛散液霧と、を含み、
前記筒部が延びる延出方向における、前記壁部と前記メッシュ部との間の距離を第1距離とし、
前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外縁と前記筒部の内側面との間の距離を第2距離としたとき、
前記第1距離は、5mm以下であり、
前記第1距離に対する前記第2距離の比は、0より大きく、0.2以下であることを特徴とするトリガー式噴出器。
【請求項2】
前記第1距離に対する前記第2距離の比は、0.1以下である、請求項1に記載のトリガー式噴出器。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
一度の前記トリガーの操作によって前記噴出孔から噴出される前記液体組成物の量は、2ml以上である、請求項1または2に記載のトリガー式噴出器。
【請求項5】
前記噴出孔の直径は、0.25mm以上、0.45mm以下である、請求項1、2、4のいずれか一項に記載のトリガー式噴出器。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審が令和1年5月28日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)は、要旨、次の理由を含むものである。
本件特許の請求項1~5に係る特許発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
そして、具体的理由は次のとおりである。
本件の請求項1には、
「【請求項1】
トリガーを操作することによって容器内に収容された液体組成物を噴出可能なトリガー式噴出器であって、
前記液体組成物が噴出される噴出孔を有する噴出部を備え、
前記噴出部は、
前記噴出孔が設けられる壁部と、
前記噴出孔を囲んで前記壁部から前記液体組成物が噴出される噴出側に延びる筒部と、
前記筒部に設けられ前記噴出孔の前記噴出側に位置するメッシュ部と、
を有し、
前記液体組成物が前記噴出孔から噴出される液霧は、主液霧と、主液霧の周囲の空間に噴出される飛散液霧と、を含み、
前記筒部が延びる延出方向における、前記壁部と前記メッシュ部との間の距離を第1距離とし、
前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外縁と前記筒部の内側面との間の距離を第2距離としたとき、
前記第1距離に対する前記第2距離の比は、0.2以下であることを特徴とするトリガー式噴出器。」
と、「第2距離」を定める上で前提となる「メッシュ部の前記液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外縁」が液体組成物を噴出した結果で示されており、かつ、このような結果を得るためのトリガー式噴出器自体の具体的な構成について何ら規定されてはいない。
このような液体組成物を噴出した結果は、噴出孔から噴出される液体組成物の量及び粘性等の物性や、トリガーを操作する力(噴出される勢い)等に大きく依存する。
例えば、機械的構成が全く同一のトリガー式噴出器であっても、噴出させる液体組成物の種類によっては噴出孔から噴出された後に拡散せずにメッシュ部に到達することもあり得、また、トリガーを操作する力(噴出される勢い)によっては、メッシュ部に到達した液体組成物が付着したメッシュ部領域が異なること(あるいはメッシュ部に到達しないこと)もあり得ることとなる。
してみれば、本件発明1は、請求項1において特定された「第2距離」を得るための具体的な構成については何ら規定しておらず、トリガー式噴霧器自体の構成とは無関係に変動し得る「液体組成物を噴出した結果」に依存するものであるため、本件発明1の「トリガー式噴霧器」の構成が不明確である。
同じことが、請求項1を引用する本件発明2、3、4、5においてもいえる。
第5 当審の判断
上記取消理由について判断する。
1 検討・判断
本件の請求項1には、
「【請求項1】
トリガーを操作することによって容器内に収容された液体組成物を噴出可能なトリガー式噴出器であって、
前記液体組成物が噴出される噴出孔を有する噴出部を備え、
前記噴出部は、
前記噴出孔が設けられる壁部と、
前記噴出孔を囲んで前記壁部から前記液体組成物が噴出される噴出側に延びる筒部と、
前記筒部に設けられ前記噴出孔の前記噴出側に位置するメッシュ部と、
を有し、
前記液体組成物が前記噴出孔から噴出される液霧は、主液霧と、主液霧の周囲の空間に噴出される飛散液霧と、を含み、
前記筒部が延びる延出方向における、前記壁部と前記メッシュ部との間の距離を第1距離とし、
前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外縁と前記筒部の内側面との間の距離を第2距離としたとき、
前記第1距離は、5mm以下であり、
前記第1距離に対する前記第2距離の比は、0より大きく、0.2以下であることを特徴とするトリガー式噴出器。」
と、「第2距離」を定める上で前提となる「メッシュ部の前記液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外縁」が液体組成物を噴出した結果で示されており、かつ、このような結果を得るためのトリガー式噴出器自体の具体的な構成について何ら規定されてはいない。
このような液体組成物を噴出した結果は、噴出孔から噴出される液体組成物の量及び粘性等の物性や、トリガーを操作する力(噴出される勢い)等に大きく依存する。
例えば、機械的構成が全く同一のトリガー式噴出器であっても、噴出させる液体組成物の種類によっては噴出孔から噴出された後に拡散せずにメッシュ部に到達することもあり得、また、トリガーを操作する力(噴出される勢い)によっては、メッシュ部に到達した液体組成物が付着したメッシュ部領域が異なること(あるいはメッシュ部に到達しないこと)もあり得ることとなる。
してみれば、本件の請求項1に係る本件発明1は、請求項1において特定された「第2距離」を得るための具体的な構成については何ら規定しておらず、トリガー式噴霧器自体の構成とは無関係に変動し得る「液体組成物を噴出した結果」に依存するものであるため、本件の請求項1に係る本件発明1の「トリガー式噴霧器」の構成が不明確である。
同じことが、請求項1を引用する請求項2、4、5に係る本件発明2、4、5においてもいえる。
2 特許権者の主張について
(1)特許権者の主張
特許権者は令和1年7月16日提出の意見書の5(3)コにおいて、次のように主張する。
訂正後の請求項1の記載において、「第2距離」は、「前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外延と前記筒部の内側面との間の距離」と特定されているが、上記の「前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外延と前記筒部の内側面との間の距離」との記載は、発明の構成として明確に把握できるものであって、その構成を一義的に知ることができ、技術的な意味も明確に理解できるものであり、第2距離を明確に定義することができる。
そして、上記の記載は、本件訂正明細書の段落【0042】等に記載されているものである。
また、訂正後の請求項1に記載のような「物の発明」の場合、例えば、作用、機能、特性等の様々な表現方式を用いることができるのであるから、第2距離を上記のように記載することが、訂正後の請求項1の記載を不明確にしているものではないし、上記のように記載して、本件発明1の「トリガー式噴霧器」の構成を特定して明らかにしているものである(審査基準 第II部 第3節 2.3(1)参照。)。
そして、訂正後本件発明1は、筒部、噴出孔、及びメッシュ部を備え、噴出孔から主液霧と、主液霧の周囲の空間に噴出される飛散液霧とが噴出され、第1距離を5mm以下とし、前記第1距離に対する第2距離の比を、0より大きく、0.2以下とし、前記第2距離をメッシュ部における液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外延と前記筒部の内側面の間の距離としたものであるから、その構成は明らかといえる。
また、訂正後本件発明1のようなトリガー式噴出器に使用される液体組成物の粘性等の物性が種々あることや、噴出孔へ液体組成物を供給する通路の形状や寸法、液体組成物の噴出量等を液体組成物の粘性等の物性にあわせて適宜設計すれば液体組成物が適正に噴出できることは、当業者であれば当然理解しているものであって、トリガー式噴出器を設計する際の前提となるものである。
また、訂正後本件発明1のようなトリガー式噴出器は、当業者は使用者がトリガーを操作する力を想定して液体組成物が適正に噴出できるように設計しているものであって、トリガー式噴出器を設計する際の前提となるものである。例えば、トリガーを操作する力を当業者が想定しない弱い力でトリガーを操作すれば、液体組成物が適正に噴出できないのは当然のことである。
これらの事項が、トリガー式噴出器を設計する際の前提であることは、例えば、甲第1~3号証の特許請求の範囲を見ても、液体組成物の粘性等の物性、液体組成物の噴出量、トリガーを操作する力等について何ら特定されていないことからも理解できる。
してみると、液体組成物の粘性等の物性、液体組成物の噴出量、トリガーを操作する力等については、液体組成物が適正に噴出できるように当業者が適宜設計すれば良いものであって、これらの事項を請求項1に記載していないからと言って、訂正後本件発明1の構成が不明確とはならない。
(2)特許権者の主張に対する検討
上記主張について検討する。
「第2距離」は、「前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外延と前記筒部の内側面との間の距離」と特定されており、当該記載自体は、一見明確であるように見える。
しかしながら、「前記延出方向と直交する方向における、前記メッシュ部の前記液体組成物の前記主液霧が接触する接触領域の外延と前記筒部の内側面との間の距離」とは、液体組成物を噴出させた結果得られるものである。
そして、特許権者も認めているように、トリガー式噴出器に使用される液体組成物の粘性等の物性、噴出孔へ液体組成物を供給する通路の形状や寸法、液体組成物の噴出量、トリガーを操作する力によって、特許権者がいうところの「適正に」噴出できるかどうかが関わるものである。
してみると、仮に全く同じ「トリガー式噴出器」を用いたとしても、使用される液体組成物の粘性等の物性、液体組成物の噴出量、トリガーを操作する力が異なれば、「第2距離」も異なる結果が得られる、つまり、本件発明1を満たす場合も満たさない場合もありうるということになるから、本件発明1に関する特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに、特許発明の技術的範囲が不明確であるといわざるを得ない。
また、特許権者は、甲第1~3号証の特許請求の範囲の記載についても触れているが、甲第1~3号証の特許請求の範囲の記載は、その構造が特定されているものであって、液体組成物を噴出した結果による特定を含むものではないから、本件発明1とは事情が異なる。
以上のとおりであるから、特許権者の主張は採用できない。
3 まとめ
上記1、2のとおり、本件特許の請求項1、2、4、5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1、2、4、5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
また、請求項3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700808