特許異議申立
2018-700804
識別コード付き印刷物
- 審判番号
- 2018-700804
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-253594
- 登録番号
- 特許第6305043号(P6305043)
- 請求日
- 2018年10月03日
- 審決日
- 2020年09月29日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】共同印刷株式会社
- 【権利者代理人】青木 篤
- 【権利者代理人】三橋 真二
- 【権利者代理人】関根 宣夫
- 【権利者代理人】胡田 尚則
- 【権利者代理人】塩川 和哉
- 【権利者代理人】石田 敬
- 【権利者代理人】古賀 哲次
- 【権利者代理人】出野 知
- 【異議申立人】加藤 浩志
- 審判長/審判官
- 審判長 尾崎 淳史
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 藤田 年彦
- 分類
- P1651.113-YAA(B42D) / P1651.121-YAA(B42D) / P1651.537-YAA(B42D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6305043号発明「識別コード付き印刷物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6305043号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。
特許第6305043号の請求項1乃至4、6乃至13に係る特許を維持する。
特許第6305043号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本件特許異議の申立てに係る特許第6305043号(以下「本件特許」という。)の経緯は以下のとおりである。
平成25年12月 6日 特許出願(特願2013-253594号)
平成30年 1月29日 特許査定
平成30年 3月16日 特許権の設定登録
平成30年 4月 4日 特許掲載公報発行
平成30年10月 3日 特許異議申立人 加藤浩志(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て
同年10月25日 特許異議申立人により手続補正書の提出
同年11月22日 取消理由通知
平成31年 1月28日 特許権者により意見書・訂正請求書の提出
同年 3月 5日 特許異議申立人により意見書の提出
平成31年 3月28日 取消理由通知(決定の予告)
令和 1年 5月30日 特許権者により意見書・訂正請求書の提出
同年 8月 8日 特許異議申立人により意見書の提出
同年11月20日 取消理由通知
令和 2年 1月28日 特許権者により意見書・訂正請求書の提出
同年 4月 7日 特許異議申立人により意見書の提出
同年 6月 3日 審尋
同年 7月 1日 特許権者により回答書の提出
2 訂正の適否についての判断
(1)令和2年1月28日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容
本件訂正は,その請求の趣旨を「特許第6305043号の明細書,特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1~13について訂正することを求める。」とするものであり,その訂正の内容は、次のとおりである。(注:下線部分は訂正箇所を示す。)
なお、平成31年1月28日付けの訂正請求、及び令和1年5月30日付けの訂正請求は、取り下げられたものとみなされる(特許法第120条の5第7項)。
ア 請求項1に係る訂正
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「基材、前記基材に印刷されている余白部及びコード部を含む識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、」
とあるのを、
「基材、前記基材に印刷されている識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、
前記識別コードは、余白部及びコード部を含み;」
と訂正する。
(イ)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「赤外光吸収性でかつ可視光吸収性であり;かつ
前記隠蔽部は、赤外透過性でかつ可視光吸収性である」
とあるのを、
「赤外光吸収性でかつ可視光吸収性であり;
前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり;
前記識別コードが2次元コードであり、前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であり;
前記隠蔽部が、不規則な線状であり;かつ
前記隠蔽部は、赤外透過性でかつ可視光吸収性である」
と訂正する。
イ 請求項2に係る訂正
(ア)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に
「基材、前記基材に印刷されている余白部及びコード部を含む識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、」
とあるのを、
「基材、前記基材に印刷されている識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、
前記識別コードは、余白部及びコード部を含み;」
と訂正する。
(イ)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に
「赤外光吸収性でかつ可視光吸収性であり;かつ
前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.4以下であり;かつ
前記隠蔽部は、赤外透過性でかつ可視光吸収性である」
とあるのを、
「赤外光吸収性でかつ可視光吸収性であり;
前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり;かつ
前記識別コードが2次元コードであり、前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であり;
前記隠蔽部が、不規則な線状であり;かつ
前記隠蔽部は、赤外透過性でかつ可視光吸収性である」
と訂正する。
ウ 請求項3に係る訂正
(ア)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に
「基材、前記基材に印刷されている余白部及びコード部を含む識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、」
とあるのを、
「基材、前記基材に印刷されている識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、
前記識別コードは、余白部及びコード部を含み;」
と訂正する。
(イ)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3に
「前記隠蔽部が、不規則な線状であり;かつ
前記識別コードが2次元コードであり、前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.5以上2.0以下の範囲である」
とあるのを、
「前記隠蔽部が、不規則な線状であり;
前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり;かつ
前記識別コードが2次元コードであり、前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲である」
と訂正する。
エ 請求項4に係る訂正
(ア)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に
「前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.4以下である」
とあるのを、
「前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.16以下である」
と訂正する。
オ.請求項5に係る訂正
(ア)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
カ 請求項6に係る訂正
(ア)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6に
「前記識別コードが2次元コードであり、前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.5以上2.0以下の範囲である、請求項1、2又は5に記載の印刷物。」
とあるのを、
「前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上1.6以下の範囲である、請求項1又は2に記載の印刷物。」
と訂正する。
キ 請求項8に係る訂正
(ア)訂正事項10
特許請求の範囲8に
「、請求項1~7のいずれか一項に記載の印刷物。」
とあるのを、
「、請求項1~4、6、及び7のいずれか一項に記載の印刷物。」
と訂正する。
ク 請求項9に係る訂正
(ア)訂正事項11
特許請求の範囲9に
「、請求項1~8のいずれか一項に記載の印刷物。」
とあるのを、
「、請求項1~4、及び6~8のいずれか一項に記載の印刷物。」
と訂正する。
ケ 請求項10に係る訂正
(ア)訂正事項12
特許請求の範囲10に
「、請求項1~9のいずれか一項に記載の印刷物。」
とあるのを、
「、請求項1~4、及び6~9のいずれか一項に記載の印刷物。」
と訂正する。
コ 請求項11に係る訂正
(ア)訂正事項13
特許請求の範囲11に
「、請求項1~10のいずれか一項に記載の印刷物。」
とあるのを、
「、請求項1~4、及び6~10のいずれか一項に記載の印刷物。」
と訂正する。
サ 請求項12に係る訂正
(ア)訂正事項14
特許請求の範囲12に
「、請求項1~10のいずれか一項に記載の印刷物。」
とあるのを、
「、請求項1~4、及び6~10のいずれか一項に記載の印刷物。」
と訂正する。
シ 請求項13に係る訂正
(ア)訂正事項15
特許請求の範囲13に
「、請求項1~12のいずれか一項に記載の印刷物。」
とあるのを、
「、請求項1~4、及び6~12のいずれか一項に記載の印刷物。」
と訂正する。
ス 明細書に係る訂正
(ア)訂正事項16
明細書の段落0035に
「識別コードの余白部の面積の、識別コード全体の面積に対する比(識別コードの余白部の面積/識別コードの面積:識別コードの余白率)と、上記識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の、識別コード全体の面積に対する比(識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の面積/識別コードの面積:隠蔽部の不存在率)との差は、」
とあるのを、
「識別コードの余白部の面積の、識別コード全体の面積に対する比(識別コードの余白部の面積/識別コードの面積:識別コードの余白率)と、上記識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の、識別コード全体の面積に対する比(識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の面積/識別コードの面積:隠蔽部の不存在率)は、」
と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び一群の請求項について
ア 請求項1に係る訂正
(ア)訂正事項1について
a 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「印刷物」における「基材、前記基材に印刷されている余白部及びコード部を含む識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、」について、「識別コード」が「『基材に印刷されている余白部』及び『コード部』」を含むものであるのか、それとも、「基材に印刷されている余白部」及び「コード部を含む識別コード」であって、「識別コード」が「コード部」を含むことのみが特定されているのかが、明らかでなかったところ、「基材、前記基材に印刷されている識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、前記識別コードは、余白部及びコード部を含み;」と、「識別コード」が「『余白部』及び『コード部』」を含むものであることを明確に特定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の「識別コードは、余白部及びコード部を含み、そのコード部は識別コードのリーダーが用いる波長の赤外光を吸収し、僅かしか反射しない。」(【0021】),及び「識別コードの余白部の面積の、識別コード全体の面積に対する比(識別コードの余白部の面積/識別コードの面積:識別コードの余白率)と、上記識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の、識別コード全体の面積に対する比(識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の面積/識別コードの面積:隠蔽部の不存在率)との差は、同程度であることが好ましい。」(【0035】)との記載からすれば、「余白部」とは、識別コードの余白部を意味するのであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、「識別コードは、余白部及びコード部を含み、そのコード部は識別コードのリーダーが用いる波長の赤外光を吸収し、僅かしか反射しない。」(【0021】),及び「識別コードの余白部の面積の、識別コード全体の面積に対する比(識別コードの余白部の面積/識別コードの面積:識別コードの余白率)と、上記識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の、識別コード全体の面積に対する比(識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の面積/識別コードの面積:隠蔽部の不存在率)との差は、同程度であることが好ましい。」(【0035】)と記載されていることから、識別コードは、余白部及びコード部を含むということは、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものである。
したがって、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(イ)訂正事項2について
a 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「印刷物」における「識別コード」と「隠蔽部」との関係について「前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり」と具体的に限定し、「識別コード」について「2次元コードであり」と具体的に限定し、「隠蔽部」と「2次元コード」との関係について「前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であり」と具体的に限定し、「隠蔽部」について「前記隠蔽部が、不規則な線状であり」と具体的に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、「識別コードとしては1次元コード及び2次元コードが挙げられる。」(【0026】)、「隠蔽部は、規則的又は不規則な線若しくは点で描かれた」(【0036】)、及び「2次元コードのコード部の1セルの辺長と、隠蔽部を構成する線の径又は点の最小径とは同程度であることが、目視で読み取りにくくするために好ましい。具体的には、隠蔽部を構成する線の径又は点の最小径の、2次元コードのコード部の1セルの辺長に対する比(隠蔽部の径/2次元コードの辺長)は、0.5以上、0.7以上、又は0.9以上であることが好ましく、かつ2.0以下、1.5以下、又は1.2以下であることが好ましい。」(【0037】)と記載されていること、【表2】(【0049】)の実施例1の余白率と不存在率との差が0.23と記載されていること、同実施例1の径/辺長の比が2.0と記載されていること、及び同実施例1の隠蔽部のパターンが不規則線状であることから、識別コードの余白率と隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であること、識別コードが2次元コードであるということ、隠蔽部の線又は点の径の、2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であること、及び隠蔽部が不規則線状であることは、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものといえる。
したがって、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
イ 請求項2に係る訂正
(ア)訂正事項3について
a 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項2の「印刷物」における「基材、前記基材に印刷されている余白部及びコード部を含む識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、」について、「識別コード」が「『基材に印刷されている余白部』及び『コード部』」を含むものであるのか、それとも、「基材に印刷されている余白部」及び「コード部を含む識別コード」であって、「識別コード」が「コード部」を含むことのみが特定されているのかが、明らかでなかったところ、「基材、前記基材に印刷されている識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、前記識別コードは、余白部及びコード部を含み;」と、「識別コード」が「『余白部』及び『コード部』」を含むものであることを明確に特定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項3は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の「識別コードは、余白部及びコード部を含み、そのコード部は識別コードのリーダーが用いる波長の赤外光を吸収し、僅かしか反射しない。」(【0021】),及び「識別コードの余白部の面積の、識別コード全体の面積に対する比(識別コードの余白部の面積/識別コードの面積:識別コードの余白率)と、上記識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の、識別コード全体の面積に対する比(識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の面積/識別コードの面積:隠蔽部の不存在率)との差は、同程度であることが好ましい。」(【0035】)との記載からすれば、「余白部」とは、識別コードの余白部を意味するのであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、「識別コードは、余白部及びコード部を含み、そのコード部は識別コードのリーダーが用いる波長の赤外光を吸収し、僅かしか反射しない。」(【0021】),及び「識別コードの余白部の面積の、識別コード全体の面積に対する比(識別コードの余白部の面積/識別コードの面積:識別コードの余白率)と、上記識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の、識別コード全体の面積に対する比(識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の面積/識別コードの面積:隠蔽部の不存在率)との差は、同程度であることが好ましい。」(【0035】)と記載されていることから、識別コードは、余白部及びコード部を含むということは、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものである。
したがって、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(イ)訂正事項4について
a 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項2に記載の「識別コード」と「隠蔽部」との関係について、「前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.4以下であり」とあったのを、「前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり」と数値範囲をさらに限定し、「識別コード」について、「2次元コードであり」と具体的に限定し、「隠蔽部」と「2次元コード」との関係について「前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であり」と具体的に限定し、「隠蔽部」について「前記隠蔽部が、不規則な線状であり」と具体的に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、「識別コードとしては1次元コード及び2次元コードが挙げられる。」(【0026】)、「隠蔽部は、規則的又は不規則な線若しくは点で描かれた」(【0036】)、及び「2次元コードのコード部の1セルの辺長と、隠蔽部を構成する線の径又は点の最小径とは同程度であることが、目視で読み取りにくくするために好ましい。具体的には、隠蔽部を構成する線の径又は点の最小径の、2次元コードのコード部の1セルの辺長に対する比(隠蔽部の径/2次元コードの辺長)は、0.5以上、0.7以上、又は0.9以上であることが好ましく、かつ2.0以下、1.5以下、又は1.2以下であることが好ましい。」(【0037】)と記載されていること、及び【表2】(【0049】)の実施例1の余白率と不存在率との差が0.23と記載されていること、同実施例1の径/辺長の比が2.0と記載されていること、及び同実施例1の隠蔽部のパターンが不規則線状であることから、識別コードの余白率と隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であること、識別コードが2次元コードであるということ、隠蔽部の線又は点の径の、2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であること、及び隠蔽部が不規則線状であることは、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものといえる。
したがって、当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 請求項3に係る訂正
(ア)訂正事項5について
a 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項3の「印刷物」における「基材、前記基材に印刷されている余白部及びコード部を含む識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、」について、「識別コード」が「『基材に印刷されている余白部』及び『コード部』」を含むものであるのか、それとも、「基材に印刷されている余白部」及び「コード部を含む識別コード」であって、「識別コード」が「コード部」を含むことのみが特定されているのかが、明らかでなかったところ、「基材、前記基材に印刷されている識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、前記識別コードは、余白部及びコード部を含み;」と明確に特定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の「識別コードは、余白部及びコード部を含み、そのコード部は識別コードのリーダーが用いる波長の赤外光を吸収し、僅かしか反射しない。」(【0021】),及び「識別コードの余白部の面積の、識別コード全体の面積に対する比(識別コードの余白部の面積/識別コードの面積:識別コードの余白率)と、上記識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の、識別コード全体の面積に対する比(識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の面積/識別コードの面積:隠蔽部の不存在率)との差は、同程度であることが好ましい。」(【0035】)との記載からすれば、「余白部」とは、識別コードの余白部を意味するのであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、「識別コードは、余白部及びコード部を含み、そのコード部は識別コードのリーダーが用いる波長の赤外光を吸収し、僅かしか反射しない。」(【0021】),及び「識別コードの余白部の面積の、識別コード全体の面積に対する比(識別コードの余白部の面積/識別コードの面積:識別コードの余白率)と、上記識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の、識別コード全体の面積に対する比(識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の面積/識別コードの面積:隠蔽部の不存在率)との差は、同程度であることが好ましい。」(【0035】)と記載されていることから、識別コードは、余白部及びコード部を含むということは、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものである。
したがって、当該訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(イ)訂正事項6について
a 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項3に記載の「識別コード」と「隠蔽部」との関係について「前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり」と具体的に限定し、「隠蔽部」と「2次元コード」との関係について、「前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.5以上2.0以下の範囲である」とあったのを、「前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であり」と数値範囲をさらに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、「2次元コードのコード部の1セルの辺長と、隠蔽部を構成する線の径又は点の最小径とは同程度であることが、目視で読み取りにくくするために好ましい。具体的には、隠蔽部を構成する線の径又は点の最小径の、2次元コードのコード部の1セルの辺長に対する比(隠蔽部の径/2次元コードの辺長)は、0.5以上、0.7以上、又は0.9以上であることが好ましく、かつ2.0以下、1.5以下、又は1.2以下であることが好ましい。」(【0037】)と記載されていること、及び【表2】(【0049】)の実施例1の余白率と不存在率との差が0.23と記載されていること、同実施例1の径/辺長の比が2.0と記載されていることから、識別コードの余白率と、隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であること、及び隠蔽部の線又は点の径の、2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であることは、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものといえる。
したがって、当該訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 請求項4に係る訂正
(ア)訂正事項7
a 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項4に記載の「識別コード」と「隠蔽部」との関係について、「前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.4以下である」とあったのを、「前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.16以下である」と数値範囲をさらに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、【表2】(【0049】)の実施例2の余白率と不存在率との差が0.16と記載されていることから、識別コードの余白率と、隠蔽部の不存在率との差が、0.16以下であることは、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものといえる。
したがって、当該訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
オ.請求項5に係る訂正
(ア)訂正事項8
a 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項8は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、当該訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
カ 請求項6に係る訂正
(ア)訂正事項9について
a 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項6に記載の「隠蔽部」と「2次元コード」との関係について、「前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.5以上2.0以下の範囲である」とあったのを、「前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上1.6以下の範囲であり」と数値範囲をさらに限定し、また、本件訂正前の請求項6が本件訂正前の請求項1、2又は5を引用するものであったところ、上記訂正事項8に係る訂正に伴い、引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項9は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9のうち、引用する請求項を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものといえ、また、訂正事項9のうち「前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上1.6以下の範囲であり」に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、「2次元コードのコード部の1セルの辺長と、隠蔽部を構成する線の径又は点の最小径とは同程度であることが、目視で読み取りにくくするために好ましい。具体的には、隠蔽部を構成する線の径又は点の最小径の、2次元コードのコード部の1セルの辺長に対する比(隠蔽部の径/2次元コードの辺長)は、0.5以上、0.7以上、又は0.9以上であることが好ましく、かつ2.0以下、1.5以下、又は1.2以下であることが好ましい。」(【0037】)と記載されていること、及び【表2】(【0049】)の実施例2の余白率と不存在率との差が0.16と記載されていることから、隠蔽部の線又は点の径の、2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上1.6以下の範囲であることは、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものといえる。
したがって、当該訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
キ 請求項8乃至13に係る訂正
(ア)訂正事項10乃至15について
a 訂正の目的について
訂正事項10乃至15は、上記訂正事項8に係る訂正に伴い、引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、上記訂正事項8に係る訂正に伴って削除された訂正前の請求項5の「隠蔽部が、不規則な線状である」との特定事項は、訂正後の請求項8乃至13が、直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項1乃至3で特定されることとなったのであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項10乃至15は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項10乃至15は、上記訂正事項8に係る訂正に伴うものであるから、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものといえる。
したがって、当該訂正事項10乃至15は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ク 明細書に係る訂正
(ア)訂正事項16について
a 訂正の目的について
明細書の段落【0035】には「識別コードの余白部の面積の、識別コード全体の面積に対する比(識別コードの余白部の面積/識別コードの面積:識別コードの余白率)と、上記識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の、識別コード全体の面積に対する比(識別コード上に隠蔽部が存在しない部分の面積/識別コードの面積:隠蔽部の不存在率)との差は、同程度であることが好ましい。具体的には、この差(識別コードの余白率-隠蔽部の不存在率)は、0.4以下、0.3以下、0.2以下、又は0.1以下であることが好ましい。」と記載され、同「この差(識別コードの余白率-隠蔽部の不存在率)は、0.4以下、0.3以下、0.2以下、又は0.1以下であることが好ましい。」との記載から、識別コードの余白率と隠蔽部の不存在率との差が小さいこと、すなわち、識別コードの余白率と隠蔽部の不存在率とが、同程度であることが好ましいとの趣旨であることは明らかである。そうすると、同「との差は、同程度であることが好ましい。」との記載が「は、同程度であることが好ましい。」との誤記であることは明らかであるから、訂正事項16は、誤記の訂正を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項16は、誤記の訂正を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項16は、誤記の訂正を目的とするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ケ.一群の請求項についての適否
訂正前の請求項1乃至13について、請求項4~6、8~13はそれぞれ直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1、4~6、8~13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものである。
また、訂正前の請求項5~13はそれぞれ直接的又は間接的に請求項2を引用しているものであって、訂正事項3及び4によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項2、5~13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものである。
また、訂正前の請求項4、7~13はそれぞれ直接的又は間接的に請求項3を引用しているものであって、訂正事項5及び6によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項3、4、7~13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものである。
また、訂正前の請求項8~13はそれぞれ直接的又は間接的に請求項6を引用しているものであって、訂正事項9によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項6、8~13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものである。
そして、上記各一群の請求項は、請求項8~13が共通するものであるから、組み合わされて、訂正前の請求項1~13は一群の請求項に該当するものであって、上記訂正事項1乃至9によって、連動して訂正されるものである。
よって、訂正事項1乃至9による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項ごとに」適法に請求されたものである。
また、訂正後の請求項1乃至4,6乃至13は、一群の請求項である。
カ.特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件において、訂正前の請求項1乃至13について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項1乃至13に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
3 訂正後の本件発明
上記「第2 訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は認められるから、上記訂正請求により訂正された請求項1乃至4、6乃至13に係る発明(以下、順に「本件訂正特許発明1」乃至「本件訂正特許発明4」、「本件訂正特許発明6」乃至「本件訂正特許発明13」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
基材、前記基材に印刷されている識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、
前記識別コードは、余白部及びコード部を含み;
前記識別コードのコード部は、赤外発色するロイコ染料と酸性物質とが加熱に応じて互いに反応して発色することによって、赤外光吸収性でかつ可視光吸収性であり;
前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり;
前記識別コードが2次元コードであり、前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であり;
前記隠蔽部が、不規則な線状であり;かつ
前記隠蔽部は、赤外透過性でかつ可視光吸収性である、
印刷物。
【請求項2】
基材、前記基材に印刷されている識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、
前記識別コードは、余白部及びコード部を含み;
前記識別コードのコード部は、赤外光吸収性でかつ可視光吸収性であり;
前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり;
前記識別コードが2次元コードであり、前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であり;
前記隠蔽部が、不規則な線状であり;かつ
前記隠蔽部は、赤外透過性でかつ可視光吸収性である、
印刷物。
【請求項3】
基材、前記基材に印刷されている識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、
前記識別コードは、余白部及びコード部を含み;
前記識別コードのコード部は、赤外光吸収性でかつ可視光吸収性であり;
前記隠蔽部は、赤外透過性でかつ可視光吸収性であり;
前記隠蔽部が、不規則な線状であり;
前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり;かつ
前記識別コードが2次元コードであり、前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲である、
印刷物。
【請求項4】
前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.16以下である、請求項1又は3に記載の印刷物。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上1.6以下の範囲である、請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項7】
前記識別コードのコード部は、赤外発色するロイコ染料と酸性物質とが加熱に応じて互いに反応して発色することによって、赤外光吸収性でかつ可視光吸収性である、請求項2又は3に記載の印刷物。
【請求項8】
前記識別コードのコード部は、その下に白色基材のみを配置して測定した場合に、880nm~930nmの波長の光に対する平均反射率が20%以下である、請求項1~4、6、及び7のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項9】
前記隠蔽部は、その下に白色基材のみを配置して測定した場合に、880nm~930nmの波長の光に対する平均反射率が65%以上である、請求項1~4、及び6~8のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項10】
前記隠蔽部及び前記識別コードのコード部は、それぞれその下に白色基材のみを配置して測定した場合に、460nm~650nmの波長の光に対する平均反射率が30%以下である、請求項1~4、及び6~9のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項11】
それぞれその下に白色基材のみを配置して測定した場合に、460nm~650nmの波長の光に対する前記隠蔽部の平均反射率と、前記識別コードのコード部の平均反射率との差が10%以下である、請求項1~4、及び6~10のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項12】
前記基材が感熱紙であり、かつ前記識別コードが、前記感熱紙にサーマルプリントされている、請求項1~4、及び6~10のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項13】
さらに保護層を上に有する、請求項1~4、及び6~12のいずれか一項に記載の印刷物。
4 令和1年11月20日付け取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
請求項1乃至13に係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
令和1年5月30日付けの訂正請求により訂正された請求項1乃至13に係る発明は、本件特許明細書に記載の発明が解決しようとする課題である、目視での複製が容易ではない識別コード付き印刷物を与えることを解決するものではない。
(2)当審の判断
上記本件訂正請求により訂正された本件訂正特許発明1乃至3は、上記3において示したとおりのものであるところ、「識別コードの余白率と、隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり」、「識別コードが2次元コードであり、隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であり」及び「隠蔽部が、不規則な線状であり」と特定され(以下「特定事項」という。)、本件訂正特許発明1乃至3を直接的もしくは間接的に引用する本件訂正特許発明4乃至13も、前記特定事項を包含するものとなった。
そして、本件特許明細書、図面又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)の【0049】【表2】に示された実施例1乃至9並びに比較例1及び2のうち、上記特定事項の全てを満たすものは、実施例1及び2のみであって、実施例1及び2のみが、隠蔽性の評価が○(本件特許明細書等の【0046】には「2次元コードが極めて見えにくい場合には隠蔽性を○…として評価した。」と記載されている。)となっている。
また、上記特定事項の一部でも満たさない実施例3乃至9並びに比較例1及び2は、隠蔽性の評価が△もしくは×(本件特許明細書等の【0046】には「2次元コードが見えにくい場合を△、明らかに見えてしまう場合を×として評価した。」と記載されている。)となっている。
してみると、上記特定事項を包含する本件訂正特許発明1乃至13の記載に接した当業者は、本件特許明細書等に記載の発明が解決しようとする課題である「目視での複製が容易でない識別コード付き印刷物を与えること」を解決し得るものと認識できるものと認められる。
(3)特許異議申立人の主張について
ア 「本件訂正特許発明1乃至13は、本件訂正特許発明の課題を解決する手段が記載されていない」との主張について(令和2年4月7日付け意見書2頁21行~4頁16行)
特許異議申立人は、「隠蔽部のパターンが、不規則な線状で、余白率と不存在率との差が0.16以上0.23以下で、径/辺長の比が、1.6以上2.0以下」の条件(以下「条件」という。)を満たさないと、本件特許発明の課題を解決し得るものと認識できないと主張する。
これに対し、上記3において示したとおり、本件訂正特許発明1乃至4、6乃至13は、「識別コードの余白率と、隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり」、「隠蔽部の線又は点の径の、2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であり」、及び「隠蔽部が、不規則な線状であり」と特定されている。
そこで検討すると、特許異議申立人が主張する上記条件のうち、本件訂正特許発明1乃至4、6乃至13は、「隠蔽部のパターンが、不規則な線状で、余白率と不存在率との差が0.16以上0.23以下で、径/辺長の比が、2.0以下」の点は充足する。
そして、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0037】に「2次元コードのコード部の1セルの辺長と、隠蔽部を構成する線の径又は点の最小径とは同程度であることが、目視で読み取りにくくするために好ましい。具体的には、隠蔽部を構成する線の径又は点の最小径の、2次元コードのコード部の1セルの辺長に対する比(隠蔽部の径/2次元コードの辺長)は、0.5以上、0.7以上、又は0.9以上であることが好ましく、…」と記載されていることから、本件特許明細書等の発明の詳細な説明に接した当業者であれば、径/辺長の比は、1.0が最適であるところ、0.9は、1.0から僅かながらの幅を持たせた値であって、径/辺長の比が0.9以上であっても、本件特許明細書等に記載の発明が解決しようとする課題である「目視での複製が容易でない識別コード付き印刷物を与えること」を解決し得るものと認識し得るものと認められる。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
イ 「本件訂正特許発明1乃至13の『隠蔽部の線又は点の径』と『隠蔽部が、不規則な線状であり』とは矛盾する」との主張について(令和2年4月7日付け意見書6頁10~13行)
上記3において示したとおり、本件訂正特許発明1乃至4、6乃至13には、「隠蔽部の線又は点の径」及び「隠蔽部が、不規則な線状であり」と特定されているところ、一般に、「線」は「点」の集合体であることは、自明の事項であるのだから、「不規則な線状」である「隠蔽部」の「線」の「径」と、「不規則な線状」の「線」を集合体として構成する「点」の「径」とは等しいものといえる。
してみると、「隠蔽部が、不規則な線状」であるところ、「隠蔽部の点の径」との特定は、「不規則な線状」の「線」を集合体として構成する「点」の「径」を意味するのであって、何ら矛盾するものではない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
ウ 「本件訂正特許発明1乃至13の『隠蔽部の線又は点の径』は、発明の詳細な説明に記載されたものではない」との主張について(令和2年4月7日付け意見書6頁14行~7頁12行)
上記イのとおり、線は点の集合体であるのだから、本件特許明細書等の発明の詳細な説明に記載された不規則な線状の隠蔽部を、点の集合体の結果として不規則な線状と見なすことに何ら無理なところはない。
してみると、本件特許明細書等の発明の詳細な説明には、実質的に「隠蔽部が点」の場合も記載されているに等しいものというべきである。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
なお、特許異議申立人は、隠蔽部が点の場合、隠蔽部が線の場合と大きく効果が異なる、と主張するが、何ら根拠を示すしていないことから、採用するに足る主張とは認められない。
エ 「余白率と不存在率との差及び径/辺長の比の関係につき、令和1年11月20日付けの取消理由を解消していない」との主張について(令和2年4月7日付け意見書7頁17行~8頁4行)
上記アのとおり、本件特許明細書等の【0037】に「2次元コードのコード部の1セルの辺長と、隠蔽部を構成する線の径又は点の最小径とは同程度であることが、目視で読み取りにくくするために好ましい。具体的には、隠蔽部を構成する線の径又は点の最小径の、2次元コードのコード部の1セルの辺長に対する比(隠蔽部の径/2次元コードの辺長)は、0.5以上、0.7以上、又は0.9以上であることが好ましく、…」と記載されていることから、本件特許明細書等の発明の詳細な説明に接した当業者であれば、径/辺長の比は、1.0が最適であるところ、0.9は、1.0から僅かながらの幅を持たせたも値であって、径/辺長の比が0.9以上であっても、本件特許明細書等に記載の発明が解決しようとする課題である「目視での複製が容易でない識別コード付き印刷物を与えること」を解決し得るものと認識し得るものと認められる。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
オ 「『不規則』は否定的表現である結果、発明の範囲が不明確である」との主張について(令和2年4月7日付け意見書8頁5~末行)
「不規則」とは「規則立っていないこと。規則正しくないこと。」との意味であるところ、本件特許明細書等に記載された市松模様等の繰り返し現れるパターン等の規則立ったものを除いたものとの概念で、何ら不明確さはないと認められる。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
カ 「本件特許明細書等に記載の図3(実施例1)は、本件訂正特許発明1の実施例ではなく、本件訂正特許発明1が、発明の課題を解決する手段が記載されているものでない」との主張について(令和2年4月7日付け意見書9頁1~17行)
本件特許明細書等の【0040】には「実施例1~9で、異なるパターンの隠蔽部を印刷した。各例のパターンの詳細を表2に示す。また、実施例1、3、及び4のサンプルの写真を図3及び4に示す。」と記載され、同【0049】【表2】には「実施例1 不規則線状 … ○(隠蔽性)」と記載されている。
また、【図3】から、識別コードの有無さえ判別できないようになっている不規則な線状を有する印刷物が看取できる。
そして、本件特許明細書等に、【図3】に示された印刷物が、本件訂正特許発明1の実施例であることを否定する記載や示唆は、何ら認められない。
してみると、本件特許明細書等の記載どおり、【図3】に示された印刷物は、本件訂正特許発明1の実施例と認められる。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
なお、特許異議申立人は、【図3】に示された印刷物が、本件訂正特許発明1の実施例でないことの根拠を何ら示すものでもないことから、採用するに足る主張とは認められない。
(4)取消理由通知に記載した取消理由についてのまとめ
上記のとおり、本件訂正特許発明1乃至4、6乃至13は、いずれも本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものといえることから,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし4,6乃至13の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないとはいえないから、上記取消理由により、本件特許請求の範囲の請求項1乃至13に係る特許を取り消すことはできない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
ア 理由1
請求項1乃至13に係る特許は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲第1乃至6号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1乃至13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 理由2
請求項1及び12に係る特許は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された特開2013-4025号公報(甲第1号証)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
ウ 理由3
請求項1乃至13に係る特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
エ 理由4
請求項1乃至13に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)各甲号証の記載
ア 甲第1号証(特開2013-4025号公報)
本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第1号証(特開2013-4025号公報)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同じ。)
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一部に光学読取コードを印字する読取コード印字欄が設けられ、読取コード印字欄を挟んだ対称位置に、真偽判定用の判定コードを隠蔽層で隠蔽した判定コード印字欄が設けられていることを特徴とする光学読取帳票。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、光学読取装置により読み取られる光学読取帳票と、この光学読取帳票の真偽判定方法に関する。」
(ウ)「【0013】
図1に示す実施形態は、本発明に係る光学読取帳票を鉄道の乗車券に適用したものである。この光学読取帳票1は、基材2の片面に読取コード印字欄3と判定コード印字欄4を近接して設けることにより、読取装置での手かざしによる読取機能と真偽判定機能を付与したことを特徴とする。
【0014】
本実施形態では、サーマルプリンタで印字できるように、基材2としてサーマル紙を使用している。図2に示すように、サーマル紙2は、紙材5の上にサーマル層6を積層一体化したものである。サーマル層6は、赤外発色するロイコ染料(電子供与体)と酸性物質(電子受容体)を樹脂バインダ中に固体微粒子として分散させ、これを紙材5の上に均一に塗布することにより構成されている。そして、このサーマル層6をサーマルヘッドで加熱すると、ロイコ染料と酸性物質の両成分が互いに反応して赤外発色し、特定波長域の赤外光を吸収する特性を有するようになっている。
【0015】
基材2の中央には読取コード印字欄3が設けられており、この印字欄3には、乗車券に記録された情報を光学読取装置で読み取るための光学読取コード7が印字される。本実施形態では、光学読取コード7の一例としてモデル1のQRコード(登録商標、以下同じ。)を採用し、このQRコード7のシンボルのうちファインダパターン、タイミングパターン及びデータセルが、サーマル層6の赤外発色により印字される。QRコード7のデータセルには、券種、乗車区間、発券駅、発券日、有効期限等のデータがコード変換されて記録される。
【0016】
読取コード印字欄3を挟んだ対称位置には、判定コード印字欄4,4が上下に並んで設けられており、この印字欄4には、乗車券が本物か偽物かを判定するための真偽判定用の判定コード8が印字される。本実施形態では、判定コード8の一例としてバーコードを採用し、このバーコード8は同じくサーマル層6の赤外発色により印字される。上下に印字されたバーコード8,8には、それぞれ乗車券の真偽を判定するためのデータとして、全く同じデータ、例えば券種、乗車区間等のデータがコード変換されて記録される。
【0017】
また、判定コード印字欄4には、印字される判定コード(バーコード)8を外部から目視できないように隠蔽するため、隠蔽層9が設けられている。隠蔽層9は、特定波長域の赤外光を吸収しない赤外非吸収インキからなり、このインキをサーマル層6の上からQRコード7の上下の領域に所定幅で被覆印刷することにより構成されている。なお、乗車券の券面には、従来と同様に「特急券」なる券種や有効期限等の文字情報も印字される。」
上記記載事項から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「基材の一部に光学読取コードを印字する読取コード印字欄が設けられ、読取コード印字欄を挟んだ対称位置に、真偽判定用の判定コードを隠蔽層で隠蔽した判定コード印字欄が設けられている光学読取帳票であって、
基材としてサーマル紙を使用し、サーマル紙は、紙材の上にサーマル層を積層一体化したものであり、サーマル層は、赤外発色するロイコ染料(電子供与体)と酸性物質(電子受容体)を樹脂バインダ中に固体微粒子として分散させ、これを紙材の上に均一に塗布することにより構成され、そして、このサーマル層をサーマルヘッドで加熱すると、ロイコ染料と酸性物質の両成分が互いに反応して赤外発色し、特定波長域の赤外光を吸収する特性を有するようになっており、
光学読取コードとしてQRコード(登録商標、以下同じ。)を採用し、サーマル層の赤外発色により印字され、
判定コードとしてバーコードを採用し、サーマル層の赤外発色により印字され、
判定コード印字欄には、印字される判定コードを外部から目視できないように隠蔽するため、隠蔽層が設けられ、隠蔽層は、特定波長域の赤外光を吸収しない赤外非吸収インキからなり、このインキをサーマル層の上からQRコードの上下の領域に所定幅で被覆印刷することにより構成されている、光学読取帳票。」
イ 甲第2号証(特開2008-183723号公報)
本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第号証(特開号公報)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、情報隠蔽性感熱記録紙、特にハガキなどに秘密情報を記載しその情報を隠蔽することができる情報隠蔽性感熱記録紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各自治体、社会保険庁、国税庁、水道局などやNTTなどの公的および準公的機関からの使用料通知、請求通知、受領書通知またはその他銀行などの利用額案内や残高通知、督促状、さらには学校などの成績通知や合否通知などの個人プライバシーにかかわる書類の郵送が多く、それらは発送者の判断により古くは封書で郵送されていた。封書は、ハガキと比較し、情報の隠蔽化と多量伝達することが可能であるが、輸送料金がハガキ50円に対し封書80円と高いことから、費用がかかる問題がある。
【0003】
そのような問題を情報隠蔽性のハガキを用いて解決する方法が現在多く使用されている。例えば、特開昭64-16691号公報(特許文献1)には、透明フイルムを介した粘着二つ折り接着ハガキが提案されている。また、特開平2-289393号公報(特許文献2)には、結合部のエッジ部分の全領域または一部分が非エッジ部分より大きな剥離力を有することを特徴とする再剥離性の感圧接着ハガキなどが開示されている。」
(イ)「【発明の効果】【0008】 本発明によれば、基材の上に薄い透明または半透明の用紙を感熱発色するように被覆し、その透明または半透明の用紙上に、暗色のベタ印刷を行い、さらにその上に特定の迷彩模様を重ね印刷することにより、熱ヘッドで情報を記録しても、暗色のベタ印刷と迷彩模様とが重なって印字した情報の内容が読取れなくなるものである。単なるベタ印刷だけでは、やはり記録した情報が読めるので、その上に迷彩模様を特定のインキで設けることにより、迷彩模様に惑わされてその記録内容が読めなくなるものである。迷彩模様の面積が少ないと記録した情報が読めることもあるのであるいは逆に多すぎてもそういうことが起こるので、迷彩模様の各面積当たりに存在する量が重要となる。」
(ウ)「【0010】
図1において、1は感熱発色紙であり、2は感熱発色紙上に剥離可能な状態に圧着される透明または半透明の用紙であり、1と2は、圧着されて剥離可能にされる。感熱発色紙1と透明または半透明の用紙2の間には感熱発色層3が存在し、必要に応じて両者の間にはさらに接着剤層を設けてもよい。透明または半透明の用紙2のさらに上方には暗色のベタ印刷層4と迷彩模様5が存在する。以下それぞれの層について説明する。
【0011】感熱発色層
前記感熱発色紙1上に形成される感熱発色層2は、発色剤と顕色剤を含有し、更に必要に応じてバインダー、無機顔料、増感剤などの各種添加剤を適宜含有する。尚、発色剤と顕色剤を2層に分けてもよく、必要に応じて用紙2側に発色剤層を設けて、熱転写可能にしてもよい。」
(エ)「【0023】 さらにその上に形成される迷彩模様層5は、反射率が50%以上のものであって、白、黄、グレー、銀または金などの彩色を用いて形成される迷彩模様である。迷彩模様とは、ランダムな模様を意味し、ベタ印刷部に好ましくは迷彩模様印刷部の面積比が5m2当たり30~90%、好ましくは60~90%、より好ましくは70~85%を偏りなくある程度均一に模様が施される必要がある。図2に迷彩模様の例を示すが、もちろんこれに限定されるものではない。迷彩模様に偏りがあるとその部分に空白が生じ、感熱発色した文字が読取れる傾向にある。反射率が50%未満であると、やはり感熱記録した情報が読取れる傾向にある。また、上記印刷の面積比が30%以下であってもあるいは90%を越える値であっても、感熱記録した情報が読取れる傾向にある。」
(オ)「【実施例】【0025】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
本発明はこれら実施例に限定されるものと解してはならない。
実施例1
下記の成分を混合することにより、暗色ベタ印刷用インキを作成した。
…
得られたインキは、反射率5%を有していた。
次に、下記の成分を混合することにより、迷彩模様用インキを作成した。
…
得られたインキは、反射率80%を有していた。
【0026】 上記ベタ印刷用インキを感熱発色紙に半透明用紙を圧着したもの(王子製紙(株)から市販のDM80B:厚さ80μm)の上にベタ印刷を施した。
【0027】 そのベタ印刷部の上に、迷彩模様インキを用いてベタ部に対して17%、32%、54%、61%および87%になるように迷彩模様を形成した。それぞれは図3,図4,図5,図6および図7に示す。
【0028】
得られた迷彩模様の上から、隠蔽すべき情報を感熱ヘッドを用いて印字した。印字した状態を示す図を図3に対しては図8に、図4に対しては図9、図5には図10、図6には図11および図7には図12に示した。
【0029】
結果から明らかなように、図3および図8に対応する17%の迷彩模様では明らかに情報が読みとれる。その他の図のものでは、情報を読みとることが出来ず、隠蔽性が確保できた。」
上記記載事項から、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「感熱発色紙、感熱発色紙上に剥離可能な状態に圧着される透明または半透明の用紙、感熱発色紙と透明または半透明の用紙の間の感熱発色層、透明または半透明の用紙のさらに上方の暗色のベタ印刷層と迷彩模様層からなる、情報隠蔽性感熱記録紙。」
ウ 甲第3号証(特開2006-143778号公報)
(ア)「【0003】 このような偽造などを防止するため、カーボンブラックなどの赤外線吸収物質を含む印刷インキで証券類などの所定部に情報パターンを印刷し、赤外線読み取り装置により情報パターンの有無を読み取り、真偽を判定している。しかし、前記カーボンブラックは可視光域でも光吸収性を有するため、情報パターンの有無を目視で判別できる。そのため、情報パターンを形成しても識別されてしまい、真偽の判別精度を低下させる。」
(イ)「【0034】 情報パターンによる赤外線の反射率は、照射する赤外線(例えば、波長850~950nmの赤外線)に対して、例えば、0~40%(例えば、3~35%)、好ましくは0~30%、さらに好ましくは0~25%(例えば、5~20%)程度である。」
エ 甲第4号証(特開昭58-134782号公報)
(ア)「本発明は照合用印刷物に関するものである。」(1頁左欄17行)
(イ)「本発明はこれ等の従来技術の問題点を克服するために鋭意研究の結果完成に至ったものであり、特定の顔料を配合したインキと同色調の従来のインキを選定して印刷をすることにより、該特定のインキにより印刷された隠し柄をいかなるフイルターを使用しても、或いは光を照射しても肉眼では識別が不可能であり、700~1,000nmの波長域の近赤外線に比較的強い感度を有するカメラで撮影しCRTにラフし出すか、或いは赤外線ビュアー等で見ることによってのみ識別することが出来、自動照合が可能な悪用される事のない安全性の高い、如何なる色調でも使用できる実用性の高い照合用印刷物を提供しようとするものである。」(2頁左上欄12行~右上欄4行)
(ウ)「第1図において、Aは700~1,000nmの近赤外線を透過又は反射するインキ層、Bは700~1,000の近赤外線を透過及び反射しないインキ層でAのインキ層と同色調であり、該2種類の同色調のインキ層を基材2の上に密着して並設したものである。」(1頁左下欄16行~右下欄1行)
(エ)「実施例3 オフセット用の黄、紅、藍インキを、それぞれ等量ずつ混合練肉し、墨インキA3、とし、コート紙に展色、又顔料にカーボンを使用している墨インキB3、をコート紙にRTテスターで展色したサンプルを実施例1と同様の方法で分光反射率を測定した結果を第10図に示した。波長800nmにおける反射率の差は90%であった。」(5頁左上欄11~18行)
オ 甲第5号証(特開平7-101190号公報)
(ア)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、株券、商品券、入場券、OMRシートのような各種情報を印刷した帳票に関し、特に、ゼログラフィ方式等の複写機による偽造防止に適した帳票に関する。」
(イ)「【0012】この実施例によれば、図3に示すように、波長の短い紫外線領域及び可視光線領域たる波長が約700nm以下の領域では、一般のインキと赤外線反射インキとは、共に反射率が低くほぼ同一であるが、波長が約750nmを超えた近赤外線領域では、赤外線反射インキの反射率が急激に高くなり、波長が約800nmに至ると反射率が80%を超えて、両インキの反射率の差は明らかとなる。したがって、近赤外線領域である波長が約800nmを超えた領域では、両インキの反射率を分光光度計等により測定することにより、明確に識別可能である。」
カ 甲第6号証(特開2011-178009号公報)
(ア)「【0004】 この印刷物20を図3で説明する。印刷物20は、紙等の赤外光を反射又は透過する基材1’上に、印刷領域20aと印刷領域20bとが形成される。このとき、図4の分光スペクトルに示すように、可視光領である700nmにおける第1のインキと第2のインキにおける反射率は、約10%であり、光を吸収して黒く視認される。一方、700nm以降の近赤外線領域における分光スペクトルとして、第1のインキは、800nm以上の波長領域で吸収率が急激に変化し、以降の反射率が90%程度で安定している。一方、第2印のインキは、700nm以降の分光スペクトルも約10%を維持している。」
(3)当審の判断
事案に鑑み、理由2から検討する。
ア 理由2(特許法第29条第1項第3号)について
(ア)本件訂正特許発明1について
a 対比
本件訂正特許発明1と甲1発明とを対比すると、
後者の「基材」、「『印字』された、『光学読み取りコード』及び『真偽判定用の判定コード』」、及び「『被覆印刷』された『隠蔽層』」は、それぞれ、前者の「基材」、「基材に印刷されているコード部を含む識別コード」、及び「印刷されている隠蔽部」に相当する。
後者の「光学読取帳票」は、読取コード印字欄及び判定コード印字欄が設けられているものであるから、前者の「印刷物」に相当する。
後者の「光学読み取りコード」はQRコードであり、また、「真偽判定用の判定コード」はバーコードであるから、それぞれのコード内に「余白部」を含んでいることは明らかな事項である。
後者の「隠蔽層」は、「光学読み取りコード」の上下の領域に所定幅で被覆印刷されているものであって、「光学読み取りコード」上には印刷されていないから、後者の「隠蔽層」は、前者の「識別コード上の一部に印刷されている隠蔽部」を含むものといえる。
また、後者の「隠蔽層」が被覆印刷している「真偽判定用の判定コード」であるバーコードは余白部を含んでいるものであって、余白部上の隠蔽層は、基材上に印刷されているといえるから、後者の「隠蔽層」は、前者の「基材上に印刷されている隠蔽部」を含むものといえる。
後者の「光学読み取りコード」及び「判定コード」は、サーマル層の赤外発色により印字され、該サーマル層は、赤外発色するロイコ染料(電子供与体)と酸性物質(電子受容体)を樹脂バインダ中に固体微粒子として分散させ、これを紙材の上に均一に塗布することにより構成され、このサーマル層をサーマルヘッドで加熱すると、ロイコ染料と酸性物質の両成分が互いに反応して赤外発色し、特定波長域の赤外光を吸収する特性を有するようになっているものであるから、後者の「『印字』された、『光学読み取りコード』及び『真偽判定用の判定コード』」と、前者の「識別コードのコード部」とは、「赤外発色するロイコ染料と酸性物質とが加熱に応じて互いに反応して発色することによって、赤外光吸収性」である点で共通する。
後者の「判定コード」は、隠蔽層で隠蔽されなければ目視できるものであるから「可視光吸収性」であるといえる。
後者の「隠蔽層」は、特定波長域の赤外光を吸収しない赤外非吸収インキからなるものであるから、「赤外透過性」であるといえ、また、判定コードを外部から目視できないように隠蔽するためのものであるから、「可視光吸収性」であるといえる。
よって、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点]
「基材、前記基材に印刷されている識別コード、及び前記識別コード上の一部及び前記基材上に印刷されている隠蔽部を有する印刷物であって、
前記識別コードは、余白部及びコード部を含み;
前記識別コードのコード部は、赤外発色するロイコ染料と酸性物質とが加熱に応じて互いに反応して発色することによって、赤外光吸収性でかつ可視光吸収性であり;かつ
前記隠蔽部は、赤外透過性でかつ可視光吸収性である、
印刷物。」
[相違点]
本件訂正特許発明1が、「前記識別コードの余白率と、前記隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり;前記識別コードが2次元コードであり、前記隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であり;前記隠蔽部が、不規則な線状であり」との事項を有しているのに対し、甲1発明は、何ら特定されていない点。
b 判断
以上のとおり、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、相違点において相違するものであって、本件訂正特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
(イ)本件訂正特許発明12について
本件訂正特許発明12は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものであるから、本件訂正特許発明12と甲1発明とは、少なくとも上記相違点において相違するものである。
したがって、本件訂正特許発明12は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
(ウ)理由2(特許法第29条第1項第3号)についてのまとめ
上記のとおり、本件訂正特許発明1及び12は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではないから、上記理由2により、本件特許請求の範囲の請求項1及び12に係る特許を取り消すことはできない。
イ 理由1(特許法第29条第2項)について
(ア)本件訂正特許発明1について
a 対比
上記ア(ア)aのとおり、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、上記[相違点]で相違する。
b 判断
特許異議申立人は,上記相違点は,甲2発明を適用することで容易に想到し得ると主張する。
そこで、以下検討する。
上記(2)イのとおり、甲2発明は、「感熱発色紙、感熱発色紙上に剥離可能な状態に圧着される透明または半透明の用紙、感熱発色紙と透明または半透明の用紙の間の感熱発色層、透明または半透明の用紙のさらに上方の暗色のベタ印刷層と迷彩模様層からなる、情報隠蔽性感熱記録紙。」であるところ、情報の読み取りは、上記(2)イ(ア)からすれば、感熱発色層上の、用紙、暗色ベタ印刷層及び明細模様層を剥離して、感熱発色層の情報を目視で読み取るものと認められる。
これに対し、甲1発明の光学読取帳票は、赤外線照射式のコードリーダーにかざすことでその情報が読み取られるものであるから、甲1発明の隠蔽層に、甲2発明の迷彩模様層を適用すると、甲1発明の光学読取帳票を赤外線照射式のコードリーダーにかざして読み取る機能が失われてしまうことは明らかであるから、甲1発明に、甲2発明を適用することに、阻害要因があると認められる。
そして、特許異議申立人が提出した甲第3乃至6号証に、上記相違点に係る事項は、記載されておらず、また、上記相違点が設計的事項とする理由も見当たらないから、上記相違点1を当業者が容易に想到し得るものということはできない。
c 小括
したがって、本件特許発明1は、甲1発明、甲2発明及び甲第3乃至6号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件訂正特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。
(イ)本件訂正特許発明2乃至4、6乃至13について
本件訂正特許発明2は、上記[相違点]に係る発明特定事項を有するものであるから、本件訂正特許発明2と甲1発明とは、少なくとも上記相違点において相違するものである。
そうすると、上記(ア)bと同様の理由により、本件訂正特許発明2は、甲1発明、甲2発明及び甲第3乃至6号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
本件訂正特許発明3も、上記[相違点]に係る発明特定事項を有するものであるから、上記(ア)bと同様の理由により、本件訂正特許発明3は、甲1発明、甲2発明及び甲第3乃至6号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
本件訂正特許発明4、6乃至13は、本件訂正特許発明1乃至3を、直接的又は間接的に引用し、さらなる限定を付加したものであるから、本件訂正特許発明4、6乃至13と、甲1発明とは、少なくとも上記相違点において相違するものである。
そうすると、上記(ア)bと同様の理由により、本件訂正特許発明4乃至13は、甲1発明、甲2発明及び甲第3乃至6号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(ウ)理由1(特許法第29条第2項)についてのまとめ
上記のとおり、本件訂正特許発明1乃至4、6乃至13は、特許法第29条第2項に該当するものではないから、上記理由1により、本件特許請求の範囲の請求項1乃至4、6乃至13に係る特許を取り消すことはできない。
ウ 理由3(特許法第36条第4項第1号)について
特許異議申立人は、発明の詳細な説明には、隠蔽性を向上させるための条件が、当業者が実施しうる程度に記載されていないと主張する。
しかし、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0049】【表2】に示された実施例1及び2は、隠蔽性の評価が○であるのだから、実施例1及び2に係る隠蔽部のパターンの条件は、隠蔽性を向上さえるための条件といえる。
また、その他の実施例3乃至9及び比較例1及び2から、「識別コードの余白率と、隠蔽部の不存在率との差が、0.23以下であり」、「識別コードが2次元コードであり、隠蔽部の線又は点の径の、前記2次元コードの1セルの辺長に対する比が、0.9以上2.0以下の範囲であり」及び「隠蔽部が、不規則な線状であり」との特定事項を有する本件訂正特許発明1乃至4、6乃至13であれば、当業者が本件特許明細書等に記載の発明が解決しようとする課題を解決し得ることは上記4(2)で検討したところ、当業者はこの条件を満たせば隠蔽性を向上させることができるものと理解できるといえるのであるから、本件特許明細書等の発明の詳細な説明には、隠蔽性を向上させるための条件が記載されているのだから、当業者が実施できる程度の記載されているといえる。
したがって、本件訂正特許発明1乃至4、6乃至13は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないとはいえないから、異議申立理由の上記理由3により、本件特許請求の範囲の請求項1乃至4、6乃至13に係る特許を取り消すことはできない。
エ 理由4(特許法第36条第6項第2号)について
特許異議申立人は、請求項1乃至4、6乃至13に係る特許について、その特許請求の範囲の「余白部」が識別コードの外縁の外側を含むのか否か、本件特許明細書等(特に、【0026】及び【0035】)を参酌しても定かでないと主張する。
しかし、上記訂正請求により訂正された本件訂正特許発明1乃至3は、「識別コードは、余白部及びコード部を含み」と特定されることとなった。
そして、上記特定から、余白部が、識別コードの一部を構成するものであることが明らかとなったのであるから、余白部が識別コードの外縁の外側を含まないことは明らかである。
また、本件特許明細書等の【0026】には、「なお、本発明に適用できる識別コードは、余白部及びコード部を含むものである」と記載されていることから、同【0026】の「基材自体が余白部となる。」の「余白部」が、識別コードの一部を構成する余白部であることも明らかである。
してみると、請求項1乃至4、6乃至13に係る特許について、その特許請求の範囲の「余白部」が不明確とはいえない。
また、特許異議申立人は、請求項1乃至13に係る特許について、サポート要件違反であるから発明特定事項が不足していることが明らかであると主張する。
しかし、上記4(2)のとおり、本件訂正特許発明1乃至4、6乃至13は、本件特許明細書等に記載の発明が解決しようとする課題である「目視での複製が容易でない識別コード付き印刷物を与えること」を解決するものと認められるのであるから、発明特定事項が不足しているとはいえない。
したがって、本件訂正特許発明1乃至4、6乃至13は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないとはいえないから、異議申立理由の上記理由4により、本件特許請求の範囲の請求項1乃至4、6乃至13に係る特許を取り消すことはできない。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1乃至4、6乃至13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1乃至4、6乃至13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項5は、本件訂正請求により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議申立てについて、請求項5に係る申立ては、申立ての対象が存在しなくなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700804