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特許異議申立

2018-700673

ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子

審判番号
2018-700673
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-202517外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年08月13日
審決日
2019年03月29日
公報発行日
2019年07月26日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.537-YAA(C03C) / P1651.536-YAA(C03C) / P1651.851-YAA(C03C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6280015号発明「ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6280015号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 特許第6280015号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6280015号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成26年9月30日に特許出願され、平成30年1月26日にその特許権の設定登録がされ、平成30年2月14日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、平成30年8月13日に特許異議申立人宮園祐爾(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、特許権者に対して、平成30年10月31日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成31年1月31日付けで意見書の提出及び訂正の請求がなされたものであり、この訂正の請求に対して特許異議申立人に意見を求めたところ、意見書の提出はなされなかったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成31年1月31日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「B2O3とSiO2との合計含有量が28~38%」との記載を、「B2O3とSiO2との合計含有量が30~36%」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1において、「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量」との記載の前に、「SiO2含有量が5%以下、」との記載を追加する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1における「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量が48~60%」との記載を、「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量が50~58%」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1における「ZrO2含有量が2~14%」との記載を、「ZrO2含有量が2~10%」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1において、「MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量が5%以下、」との記載の次に、「Nb2O5含有量が2%以下、」との記載を追加する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項4における「B2O3とSiO2との合計含有量が28~38%」との記載を、「B2O3とSiO2との合計含有量が30~36%」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項4において、「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量」との記載の前に、「SiO2含有量が5%以下、」との記載を追加する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項4における「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量が48~60%」との記載を、「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量が50~58%」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項4における「ZrO2含有量が2~14%」との記載を、「ZrO2含有量が2~10%」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項4において、「MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量が5%以下、」との記載の次に、「Nb2O5含有量が2%以下、」との記載を追加する。 2 訂正要件の判断 (1)訂正事項1及び6について 訂正事項1及び6は、「B2O3とSiO2との合計含有量」を「28~38%」から「30~36%」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0017】には、「B2O3とSiO2の合計含有量の範囲を28~38%とする。B2O3とSiO2の合計含有量の好ましい下限は29%、より好ましい下限は30%であり、B2O3とSiO2の合計含有量の好ましい上限は36%、より好ましい上限は35%である。」と記載されているから、訂正事項1及び6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (2)訂正事項2及び7について 訂正事項2及び7は、「B2O3とSiO2との合計含有量」における「SiO2含有量」を「5%以下」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0019】には、「SiO2の含有量の好ましい上限は5%、より好ましい上限は4%である。」と記載されているから、訂正事項2及び7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (3)訂正事項3及び8について 訂正事項3及び8は、「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量」を「48~60%」から「50~58%」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0020】には、「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量の範囲を48~60%とする。La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量の好ましい下限は50%、より好ましい下限は52%である。La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量の好ましい上限は58%、より好ましい上限は56%である」と記載されているから、訂正事項3及び8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (4)訂正事項4及び9について 訂正事項4及び9は、「ZrO2含有量」を「2~14%」から「2~10%」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0026】には、「ZrO2の含有量を2~14%とする。ZrO2の含有量の好ましい下限は3%、より好ましい下限は4%であり、好ましい上限は12%、より好ましい上限は10%である。」と記載されているから、訂正事項4及び9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (5)訂正事項5及び10について 訂正事項5及び10は、「質量比(Nb2O5/(La2O3+Y2O3+Gd2O3+Yb2O3+Nb2O5+TiO2+WO3))が0.003以上」における「Nb2O5含有量」を「2%以下」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0028】には、「Nb2O5の含有量の好ましい上限は2%、より好ましい上限は1.5%である。」と記載されているから、訂正事項5及び10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (6)一群の請求項について 訂正前の請求項2、3、5~9は、訂正前の請求項1を引用するものであり、また、訂正前の請求項5~9は、訂正前の請求項4を引用するものであるから、訂正事項1~10の特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項1~9について請求されたものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 (1)本件訂正請求により訂正された請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1~9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認める。 「【請求項1】 La2O3、Y2O3、ZrO2、ZnOおよびNb2O5、ならびに、B2O3およびSiO2の一方または両方、を少なくとも含み、 質量%表示で、 B2O3とSiO2との合計含有量が30~36%、 SiO2合計含有量が5%以下、 La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量が50~58%、 Gd2O3含有量が3%未満、 Yb2O3含有量が2%未満、 ZrO2含有量が2~10%、 WO3含有量が1%未満、 MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量が5%以下、 Nb2O5含有量が2%以下、 であり、 質量比((La2O3+Y2O3)/(La2O3+Y2O3+Gd2O3+Yb2O3))が0.94以上、 質量比((La2O3+Y2O3+Gd2O3+Yb2O3)/(B2O3+SiO2))が1.9以下、 質量比((Nb2O5/(La2O3+Y2O3+Gd2O3+Yb2O3+Nb2O5+TiO2+WO3))が0.003以上、 質量比(ZnO/(ZrO2+Nb2O5+Ta2O5))が0.2~1.4、 質量比(ZnO/Y2O3)が0.30以上(ただし、0.375以下を除く)、 質量比((Li2O+ZnO)/(La2O3+Y2O3+Gd2O3+Yb2O3+ZrO2+Nb2O5+Ta2O5))が0.11以下、 であり、 屈折率ndが1.75~1.80の範囲であり、かつアッベ数νdが47~52の範囲であるガラス。 【請求項2】 質量比(ZnO/Y2O3)が0.40以上である請求項1に記載のガラス。 【請求項3】 質量比(ZnO/(ZrO2+Nb2O5+Ta2O5))が0.4~1.4の範囲である請求項1または2に記載のガラス。 【請求項4】 La2O3、Y2O3、ZrO2、ZnOおよびNb2O5、ならびに、B2O3およびSiO2の一方または両方、を少なくとも含み、 質量%表示で、 B2O3とSiO2との合計含有量が30~36%、 SiO2合計含有量が5%以下、 La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量が50~58%、 Gd2O3含有量が3%未満、 Yb2O3含有量が2%未満、 ZrO2含有量が2~10%、 WO3含有量が1%未満、 MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量が5%以下、 Nb2O5含有量が2%以下、 であり、 質量比((La2O3+Y2O3)/(La2O3+Y2O3+Gd2O3+Yb2O3))が0.94以上、 質量比((La2O3+Y2O3+Gd2O3+Yb2O3)/(B2O3+SiO2))が1.9以下、 質量比((Nb2O5/(La2O3+Y2O3+Gd2O3+Yb2O3+Nb2O5+TiO2+WO3))が0.003以上、 質量比(ZnO/(ZrO2+Nb2O5+Ta2O5))が0.4~1.4、 質量比(ZnO/Y2O3)が0.30以上、 質量比((Li2O+ZnO)/(La2O3+Y2O3+Gd2O3+Yb2O3+ZrO2+Nb2O5+Ta2O5))が0.11以下、 であり、 屈折率ndが1.75~1.80の範囲であり、かつアッベ数νdが47~52の範囲であるガラス。 【請求項5】 Y2O3含有量が12質量%未満である請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項6】 ガラス転移温度が645℃以上である請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか1項に記載のガラスからなるプレス成形用ガラス素材。 【請求項8】 請求項1~6のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子ブランク。 【請求項9】 請求項1~6のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子。」 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1~9に係る特許に対して、平成30年10月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。 (1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に関する取消理由 ア 訂正前の請求項1に係る発明の各成分の含有量のうち、「B2O3とSiO2との合計含有量」の上限値及び下限値、「SiO2含有量」の上限値及び下限値、「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量」の上限値及び下限値、「ZrO2含有量」の上限値、並びに、「Nb2O5含有量」の上限値は、本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の実施例1に記載された各成分の含有量の数値範囲から大きく外れているため、本件特許明細書の記載や技術常識を考慮しても、訂正前の請求項1に係る発明の各成分の数値範囲において、訂正前の請求項1に係る発明の「屈折率ndが1.75~1.80の範囲であり、かつアッベ数νdが47~52の範囲である」との物性要件を満たす配合組成が存在することを当業者が認識できないから、訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 また、訂正前の請求項1に係る発明を引用する請求項2、3、5~9に係る発明も同様の理由により、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 イ 訂正前の請求項4に係る発明の各成分の含有量のうち、「B2O3とSiO2との合計含有量」の上限値及び下限値、「SiO2含有量」の上限値及び下限値、「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量」の上限値及び下限値、「ZrO2含有量」の上限値、並びに、「Nb2O5含有量」の上限値は、本件特許明細書の実施例1に記載された各成分の含有量の数値範囲から大きく外れているため、本件特許明細書の記載や技術常識を考慮しても、訂正前の請求項4に係る発明の各成分の数値範囲において、訂正前の請求項4に係る発明の「屈折率ndが1.75~1.80の範囲であり、かつアッベ数νdが47~52の範囲である」との物性要件を満たす配合組成が存在することを当業者が認識できないから、訂正前の請求項4に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 また、訂正前の請求項4に係る発明を引用する請求項5~9に係る発明も同様の理由により、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 ウ 以上のとおりであるから、訂正前の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に関する取消理由 上記(1)で指摘したとおり、訂正前の請求項1及び4に係る発明の組成範囲のうち、「B2O3とSiO2との合計含有量」の上限値及び下限値、「SiO2含有量」の上限値及び下限値、「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量」の上限値及び下限値、「ZrO2含有量」の上限値、並びに、「Nb2O5含有量」の上限値において、実施例1に記載された各成分の含有量から大きく外れる範囲を含んでいるため、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、訂正前の請求項1~9に係る発明を実施できるといえない。 したがって、訂正前の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 取消理由の検討 (1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に関する取消理由 ア B2O3とSiO2との合計含有量の上限値及び下限値について 本件発明1及び4では、「B2O3とSiO2との合計含有量が30~36%」と特定された。 そして、B2O3とSiO2との合計含有量の上限値に最も近い実施例1におけるガラスは、当該合計含有量が33.74%のガラス(No.3)であるところ、その屈折率ndは1.77026、アッベ数νdは49.60であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.3)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書に屈折率を高め且つ熱的安定性を低下させにくい成分と記載されているLa2O3(段落【0020】)や、屈折率を高め且つ熱的安定性の改善に有効な成分と記載されているZrO2(段落【0026】)の一部を、ガラスの熱的安定性の改善等の働きをする成分と記載されているB2O3(段落【0018】)に置き換えることによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、B2O3とSiO2との合計含有量が上限値(36%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できる。 また、B2O3とSiO2との合計含有量の下限値に最も近い実施例1のガラスは、当該合計含有量が32.71%のガラス(No.7)であるところ、その屈折率は1.77511、アッベ数は49.28であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.7)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書に分散を高めずに屈折率を高め且つ熱的安定性を低下させにくい成分と記載されているLa2O3(段落【0020】及び【0021】)や、溶融性の改善や光学特性の調整に有効な成分と記載されているZnO(段落【0032】)を増加し、含有量が多くなると屈折率が低下する傾向を示す成分と記載されているB2O3(段落【0018】)を減量したり、B2O3の一部を、B2O3とともにガラスのネットワークを形成する成分と記載されているSiO2(段落【0017】)に置き換えることによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、B2O3とSiO2との合計含有量が下限値(30%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できる。 イ SiO2含有量の上限値及び下限値について 本件発明1及び4では、「SiO2合計含有量が5%以下」と特定された。 そして、SiO2含有量の上限値に最も近い実施例1のガラスは、当該含有量が2.75%のガラス(No.12)であるところ、その屈折率ndは1.77147、アッベ数νdは49.48であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.12)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書の段落【0017】に、ともにガラスのネットワークを形成する成分として記載されているB2O3の一部をSiO2に置き換えることによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、SiO2含有量が上限値(5%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できる。 また、SiO2含有量の下限値に最も近い実施例1のガラスは、当該含有量が1.98%のガラス(No.7)であるところ、その屈折率ndは1.77511、アッベ数νdは49.28であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.7)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、SiO2をB2O3に置き換えることによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、SiO2含有量が下限値(0%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できる。 ウ La2O3、Y2O3、Gd2O3及びYb2O3の合計含有量の上限値及び下限値について 本件発明1及び4では、「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量が50~58%」と特定された。 そして、La2O3、Y2O3、Gd2O3及びYb2O3の合計含有量の上限値に最も近い実施例1におけるガラスは、当該合計含有量が54.66%のガラス(No.7)であるところ、その屈折率ndは1.77511、アッベ数νdは49.28であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.7)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書に屈折率を高める成分と記載されているZrO2(段落【0026】)の一部を、分散を高めずに屈折率を高める働きをする成分と記載されているLa2O3やY2O3(段落【0020】)に置き換えたり、含有量が多くなると屈折率が低下する傾向を示す成分として記載されているB2O3(段落【0018】)の一部を、分散を高めずに屈折率を高める働きをする成分と記載されているLa2O3(段落【0020】)に置き換えたり、B2O3とともにガラスのネットワークを形成する成分であって、粘度調整にも有効な成分と記載されているSiO2(段落【0017】及び【0019】)に置き換えることによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、La2O3、Y2O3、Gd2O3及びYb2O3の合計含有量が上限値(58%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できる。 また、La2O3、Y2O3、Gd2O3及びYb2O3の合計含有量の下限値に近い実施例1におけるガラス(No.8)の当該合計含有量が54.04%であるところ、その屈折率ndは1.77129、アッベ数νdは49.92であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.8)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書に屈折率を高め且つ熱的安定性を低下させにくい成分と記載されているLa2O3(段落【0020】)の一部を、屈折率を高め且つ熱的安定性の改善に有効な成分と記載されているZrO2(段落【0026】)やガラスの熱的安定性の改善等に効果を奏する成分と記載されているSiO2(段落【0019】)に置き換えることによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、La2O3、Y2O3、Gd2O3及びYb2O3の合計含有量が下限値(50%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できる。 エ ZrO2含有量の上限値について 本件発明1及び4では、「ZrO2含有量が2~10%」と特定された。 そして、ZrO2含有量の上限値に最も近い実施例1におけるガラスは、当該含有量が7.47%のガラス(No.8)であるところ、その屈折率ndは1.77129、アッベ数νdは49.92であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.8)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書に屈折率を高め且つ熱的安定性を低下させにくい成分と記載されているLa2O3(段落【0020】)の一部を、屈折率を高め且つ熱的安定性の改善に有効な成分と記載されているZrO2(段落【0026】)やガラスの熱的安定性の改善等に効果を奏する成分と記載されているSiO2(段落【0019】)に置き換えることによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、ZrO2含有量が上限値(10%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できる。 オ Nb2O5含有量の上限値について 本件発明1及び4では、「Nb2O5含有量が2%以下」と特定された。 そして、Nb2O5含有量の上限値に最も近い実施例1におけるガラスは、当該含有量が1.11%のガラス(No.2)であるところ、その屈折率ndは1.77041、アッベ数νdは49.54であり、本件発明1及び4の物性要件を十分な余裕をもって満たしているから、ガラス(No.2)のガラス組成において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、本件特許明細書に屈折率を高めるとともにガラスの熱的安定性の改善に有効な成分と記載されているZrO2(段落【0026】)の一部を、ガラスの熱的安定性を維持しつつ屈折率を高める働きをする成分と記載されているNb2O5(段落【0027】)に置き換えることによって、本件発明1及び4の物性要件を満たしつつ、Nb2O5含有量が上限値(2%)であるガラス組成が得られることを当業者であれば認識できる。 カ 以上のとおり、本件発明1及び4の各成分の数値範囲において、「屈折率ndが1.75~1.80の範囲であり、かつアッベ数νdが47~52の範囲である」との物性要件を満たすガラス組成が存在することを当業者が認識できるから、本件発明1及び4は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえる。 また、本件発明1を引用する本件発明2、3、5~9、及び、本件発明4を引用する本件発明5~9についても同様の理由により、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。 したがって、特許法第36条第6項第1号に関する取消理由は解消した。 (2)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に関する取消理由 本件発明1及び4の組成範囲の「B2O3とSiO2との合計含有量」の上限値及び下限値、「SiO2含有量」の上限値及び下限値、「La2O3、Y2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量」の上限値及び下限値、「ZrO2含有量」の上限値、並びに、「Nb2O5含有量」の上限値において、上記(1)で検討したとおり、本件特許明細書の記載に基づき、当業者が通常行う試行錯誤の範囲で、本件発明1及び4の物性要件を満たす具体的な各成分のガラス組成を決定できるから、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1~9を実施できるといえる。 したがって、特許法第36条第4項第1号に関する取消理由は解消した。 4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の検討 (1)特許異議申立人は、以下のア~ウの点について、本件発明1及び4のガラス組成の範囲に対して、本件特許明細書の実施例1に記載されたガラス組成は限定的な範囲となっているため、本件発明1及び4のガラス組成のうち、実施例1に記載された範囲を超える部分については、本件発明1及び4の物性要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者が認識できないこと(サポート要件違反)、本件発明1及び4の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載していないこと(明確性要件違反)、及び、本件特許明細書の記載では、本件発明1及び4を実施するために当業者が過度な試行錯誤を要するから、本件特許明細書は当業者が実施可能な程度に明確に記載されていないこと(実施可能要件違反)を主張し、本件発明1~9は、サポート要件、明確性要件及び実施可能要件を満たしていないことを主張している。 ア 本件発明1及び4では、La2O3、Y2O3、Gd2O3及びYb2O3の合計含有量が特定されているものの、La2O3及びGd2O3それぞれの含有量の範囲が特定されていないため、La2O3及びGd2O3は共に0~58%と広範囲にわたり含有できるのに対して、本件特許明細書の実施例1に記載されたLa2O3及びGd2O3それぞれの含有量は限定的な範囲となっている点。 イ 本件発明1及び4の質量比((La2O3+Y2O3+Gd2O3+Yb2O3)/(B2O3+SiO2))が1.9以下に対して、本件特許明細書の実施例1に記載された当該質量比は限定的な範囲となっている点。 ウ 本件発明1の質量比(ZnO/Y2O3)が0.30以上(ただし、0.375以下を除く)、及び、本件発明4の質量比(ZnO/Y2O3)が0.30以上に対して、本件特許明細書の実施例1に記載された当該質量比は限定的な範囲となっている点。 (2)まず、上記(1)アの点について検討すると、La2O3、Y2O3、Gd2O3及びYb2O3の合計含有量が50~58%の範囲において、本件発明1及び4の物性要件を満たす光学ガラスが得られることは、上記3(1)ウで検討したとおり、当業者が本件特許明細書の記載から認識できる。そして、本件特許明細書の段落【0020】に「La2O3、Y2O3、Gd2O3、Yb2O3は、いずれも分散を高めずに(アッベ数を低下させずに)屈折率を高める働きを有する成分である。」と記載されているように、La2O3、Y2O3、Gd2O3及びYb2O3は置換可能な成分であるから、本件発明1及び4において、La2O3及びGd2O3それぞれの含有量の範囲が上記合計含有量の範囲であれば、本件発明1及び4の物性要件を満たす光学ガラスが得られると当業者であれば認識できる。 次に、上記(1)イの点について検討すると、本件発明1及び4では、B2O3とSiO2との合計含有量が30~36%であって、La2O3、Y2O3、Gd2O3及びYb2O3の合計含有量が50~58%であることが特定され、上記3(1)ア及びウで検討したとおり、これら数値範囲において、本件発明1及び4の物性要件を満たす光学ガラスが得られることを当業者が認識できるから、質量比((La2O3+Y2O3+Gd2O3+Yb2O3)/(B2O3+SiO2))が1.9以下の範囲においても、本件発明1及び4の物性要件を満たす光学ガラスが得られると当業者であれば認識できる。 最後、上記(1)ウの点について検討すると、本件発明1及び4の課題は、Gd2O3を低減させた光学ガラスにおいて、原料が熔け残った未熔融物が存在することである(段落【0005】)。これに対して、本件特許明細書の段落【0032】に「ZnOは、熔融性の改善、ガラス転移温度の過剰な上昇の抑制、光学特性の調整に有効な必須成分である。」と記載されているように、ZnOは溶融性を改善させる成分であって、上記課題を解決できる成分といえるところ、比較例2の質量比(ZnO/Y2O3)が0.28のガラスでは、未熔融物が発生するのに対して、実施例1の質量比(ZnO/Y2O3)が0.403のガラス(No.2)では未熔融物が無いことが記載されているから、本件発明1の質量比(ZnO/Y2O3)が0.30以上(ただし、0.375以下を除く)、及び、本件発明4の質量比(ZnO/Y2O3)が0.30以上の範囲の光学ガラスが上記課題を解決できると当業者が認識できる。 また、本件特許明細書の段落【0032】の記載のとおり、ZnOは光学特性の調整に有効な成分であるところ、本件発明1及び4では、質量比((Li2O+ZnO)/(La2O3+Y2O3+Gd2O3+Yb2O3+ZrO2+Nb2O5+Ta2O5))が0.11以下であることが特定され、本件発明1及び4の必須成分の含有量を踏まえると、ZnO含有量は最大でも6.9%しか含まれないことも明らかであるから、本件発明1及び4の質量比(ZnO/Y2O3)の上限値の特定がなくても、本件発明1及び4の各成分の数値範囲において、本件発明1及び4の物性要件を満たす光学ガラスが得られると当業者であれば認識できる。 以上のとおりであるから、本件発明1~9は、サポート要件及び明確性要件を満たしているといえるし、また、当業者が通常行う試行錯誤の範囲で、本件発明1及び4の物性要件を満たす具体的な各成分のガラス組成を決定できるから、本件特許明細書の記載は実施可能要件を満たしているといえる。 よって、特許異議申立人の主張する申立理由に理由は無い。 5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700673

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