特許異議申立
2018-700610
PSAモード液晶表示素子用液晶配向剤、PSAモード液晶表示素子用液晶配向膜、並びにPSAモード液晶表示素子及びその製造方法
- 審判番号
- 2018-700610
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-008924
- 登録番号
- 特許第6264053号(P6264053)
- 請求日
- 2018年07月24日
- 審決日
- 2019年07月25日
- 公報発行日
- 2019年12月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】JSR株式会社
- 【権利者代理人】山田 強
- 【権利者代理人】廣田 美穂
- 【権利者代理人】日野 京子
- 【異議申立人】張 迪
- 審判長/審判官
- 審判長 岡崎 美穂
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 森 竜介
- 分類
- P1651.113-ZDA(G02F) / P1651.121-ZDA(G02F) / P1651.537-ZDA(G02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第4号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6264053号発明「PSAモード液晶表示素子用液晶配向剤、PSAモード液晶表示素子用液晶配向膜、並びにPSAモード液晶表示素子及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6264053号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、12、13〕、〔3~5、7、8、10、11〕、〔6、9〕について訂正することを認める。
特許第6264053号の請求項1、12、13に係る特許を取り消す。
特許第6264053号の請求項3~5、7、8、10、11に係る特許を維持する。
特許第6264053号の請求項2、6、9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6264053号の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成26年1月21日に出願され、平成30年1月5日にその特許権の設定登録がされ、平成30年1月24日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年 7月24日 :特許異議申立人張迪(以下「申立人」という
。)による請求項1~11に係る特許に対す
る特許異議の申立て
平成30年11月 1日付け:取消理由通知書
平成30年12月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成31年 3月28日付け:取消理由通知書(決定の予告)
なお、取消理由通知書(決定の予告)に対して、特許権者からは何ら応答はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「光照射によりラジカルを発生するラジカル発生機能及び光照射により増感作用を示す光増感機能の少なくともいずれかの機能を発現可能な構造(a)を有する化合物(A)を含有し、前記化合物(A)として、前記構造(a)を主鎖に有する重合体、ポリオルガノシロキサン、及び分子量1,000以下の低分子化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、PSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。」と記載されているのを、「光照射によりラジカルを発生するラジカル発生機能及び光照射により増感作用を示す光増感機能の少なくともいずれかの機能を発現可能な構造(a)を有する化合物(A)を含有し、前記化合物(A)として、ポリオルガノシロキサンを含む、PSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「前記構造(a)を主鎖に有する重合体が、ポリシラン骨格を有する重合体である、請求項1又は2に記載のPSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。」と記載されているのを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式に改め、「光照射によりラジカルを発生するラジカル発生機能及び光照射により増感作用を示す光増感機能の少なくともいずれかの機能を発現可能な構造(a)を有する化合物(A)を含有し、前記化合物(A)として、前記構造(a)を主鎖に有する重合体を含み、前記構造(a)を主鎖に有する重合体が、ポリシラン骨格を有する重合体である、PSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「前記化合物(A)が、前記構造(a)として、少なくとも前記光増感機能を発現可能な構造を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のPSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。」とあるうち、請求項1、2を引用するものについては除外し、「前記化合物(A)が、前記構造(a)として、少なくとも前記光増感機能を発現可能な構造を有する、請求項3に記載のPSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、「アルケニル基及びフルオロアルケニル基のいずれかを1つ有する単官能性の液晶性化合物を液晶層に含む液晶表示素子の製造用である、請求項1~4のいずれか一項に記載のPSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。」とあるうち、請求項1、2を引用するものについては除外し、「アルケニル基及びフルオロアルケニル基のいずれかを1つ有する単官能性の液晶性化合物を液晶層に含む液晶表示素子の製造用である、請求項3又は4に記載のPSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗布し、次いでこれを加熱して塗膜を形成する第1の工程と、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶性化合物を含む液晶層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する第2の工程と、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する第3の工程と、を含む液晶表示素子の製造方法。」とあるうち、請求項1、2を引用するものについては除外し、「請求項3~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗布し、次いでこれを加熱して塗膜を形成する第1の工程と、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶性化合物を含む液晶層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する第2の工程と、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する第3の工程と、を含む液晶表示素子の製造方法。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に、「請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成されたPSAモード液晶表示素子用液晶配向膜。」とあるうち、請求項1、2を引用するものについては除外し、「請求項3~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成されたPSAモード液晶表示素子用液晶配向膜。」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項5に、「アルケニル基及びフルオロアルケニル基のいずれかを1つ有する単官能性の液晶性化合物を液晶層に含む液晶表示素子の製造用である、請求項1~4のいずれか一項に記載のPSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。」とあるうち、請求項2~4を引用するものについて除外し、「アルケニル基及びフルオロアルケニル基のいずれかを1つ有する単官能性の液晶性化合物を液晶層に含む液晶表示素子の製造用である、請求項1に記載のPSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。」に訂正し、新たに請求項12とする。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗布し、次いでこれを加熱して塗膜を形成する第1の工程と、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶性化合物を含む液晶層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する第2の工程と、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する第3の工程と、を含む液晶表示素子の製造方法。」とあるうち、請求項2~5を引用するものについて除外し、「請求項1に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗布し、次いでこれを加熱して塗膜を形成する第1の工程と、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶性化合物を含む液晶層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する第2の工程と、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する第3の工程と、を含む液晶表示素子の製造方法。」に訂正し、新たに請求項13とする。
なお、訂正前の請求項1~5、7、8、10、11は、請求項2~5、7、8、10、11が請求項1の記載を直接または間接的に引用する関係にあるから、訂正前に一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項6、9は、請求項9が請求項6の記載を引用する関係にあるから、訂正前に一群の請求項に該当するものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正後の請求項1中、「前記化合物(A)として、ポリオルガノシロキサンを含む」との訂正事項は、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた「前記構造(a)を主鎖に有する重合体」及び「分子量1,000以下の低分子化合物」を削除するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正前の請求項1を引用する請求項5、7は、それぞれ訂正後の請求項1を引用する請求項12、13となったものであるから、請求項12、13に関する訂正事項は、請求項1に関する訂正事項と同様、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた「前記構造(a)を主鎖に有する重合体」及び「分子量1,000以下の低分子化合物」を削除したことで、訂正前の請求項1の記載を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項5、7の記載について訂正するものではなく、訂正前の請求項5、7のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた「前記構造(a)を主鎖に有する重合体」及び「分子量1,000以下の低分子化合物」を削除したことで、訂正前の請求項1の記載を減縮するものであることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載が請求項1、2の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1、2の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載が請求項1、2の記載を引用する記載であるところ、請求項1のみを引用しない記載とする訂正を含むものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項4、5、7、8、10、11は、訂正後の請求項3の記載を引用している。そのため、請求項4、5、7、8、10、11に関する訂正事項は、請求項3に関する訂正事項と同様、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、請求項間の引用関係を解消し、請求項1、2の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、訂正前の請求項3の記載を減縮するものである。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載以外に、訂正前の請求項3を引用する訂正前の請求項4、5、7、8、10、11の記載について訂正するものではなく、訂正前の請求項4、5、7、8、10、11のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、請求項間の引用関係を解消し、請求項1、2の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、訂正事項3は、請求項1のみの記載を引用しないものとするもので、訂正前の請求項3の記載を減縮するものであることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載が請求項1~3の記載を引用する記載であるところ、請求項1、2を引用しない記載とする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項5、7、8、10、11は、訂正後の請求項4の記載を引用している。そのため、請求項5、7、8、10、11に関する訂正事項は、請求項4に関する訂正事項と同様、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、訂正前の請求項について引用請求項の数を減少し、請求項1、2を引用しないものとするための訂正であって、訂正前の請求項4の記載を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載以外に、訂正前の請求項4を引用する訂正前の請求項5、7、8、10、11の記載について訂正するものではなく、訂正前の請求項5、7、8、10、11のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、請求項1、2の記載を引用しないものとするもので、訂正前の請求項4の記載を減縮するものであることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5の記載が請求項1~4の記載を引用する記載であるところ、請求項1、2を引用しない記載とする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項7、8、10、11は、訂正後の請求項5の記載を引用している。そのため、請求項7、8、10、11に関する訂正事項は、請求項5に関する訂正事項と同様、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、訂正前の請求項について引用請求項の数を減少し、請求項1、2を引用しないものとするための訂正であって、訂正前の請求項5の記載を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項5は、訂正前の請求項5の記載以外に、訂正前の請求項5を引用する訂正前の請求項7、8、10、11の記載について訂正するものではなく、訂正前の請求項7、8、10、11のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項5は、請求項1、2の記載を引用しないものとするもので、訂正前の請求項5の記載を減縮するものであることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、請求項6を削除するというものであるから、当該訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項6は、請求項6を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項6は、請求項6を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項7の記載が請求項1~5の記載を引用する記載であるところ、請求項1、2を引用しない記載とする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項8は、訂正後の請求項7の記載を引用している。そのため、請求項8に関する訂正事項は、請求項7に関する訂正事項と同様、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、訂正前の請求項について引用請求項の数を減少し、請求項1、2を引用しないものとするための訂正であって、訂正前の請求項7の記載を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項7は、訂正前の請求項7の記載以外に、訂正前の請求項7を引用する訂正前の請求項8の記載について訂正するものではなく、訂正前の請求項8のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項7は、請求項1、2の記載を引用しないものとするもので、訂正前の請求項7の記載を減縮するものであることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、請求項9を削除するというものであるから、当該訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項8は、請求項9を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項8は、請求項9を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項10の記載が請求項1~5の記載を引用する記載であるところ、請求項1、2を引用しない記載とする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項11は、訂正後の請求項10の記載を引用している。そのため、請求項11に関する訂正事項は、請求項10に関する訂正事項と同様、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項9は、訂正前の請求項について引用請求項の数を減少し、請求項1、2を引用しないものとするための訂正であって、訂正前の請求項10の記載を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項9は、訂正前の請求項10の記載以外に、訂正前の請求項10を引用する訂正前の請求項11の記載について訂正するものではなく、訂正前の請求項11のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項9は、請求項1、2の記載を引用しないものとするもので、訂正前の請求項10の記載を減縮するものであることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(10)訂正事項10
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、訂正前の請求項5の記載が請求項1~4の記載を引用する記載であるところ、請求項2~4を引用しない記載とする訂正を含み、新たな請求項12とする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項10は、訂正前の請求項について引用請求項の数を減少し、請求項2~4を引用しないものとするための訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項10は、請求項2~4の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(11)訂正事項11
ア 訂正の目的について
訂正事項11は、訂正前の請求項7の記載が請求項1~5の記載を引用する記載であるところ、請求項2~5を引用しない記載とする訂正を含み、新たな請求項13とする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項11は、訂正前の請求項について引用請求項の数を減少し、請求項2~5を引用しないものとするための訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。そのため、かかる訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項11は、請求項2~5の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
3 小括
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
訂正後の請求項3については、引用関係の解消を目的とする訂正であり、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項3についての訂正が認められる場合には、この訂正後の請求項3の記載を引用する訂正後の請求項4、5、7、8、10及び11の記載は訂正後の請求項3の記載を引用するものであるから、請求項3、4、5、7、8、10及び11は、請求項1、2、6、9、12及び13とは別途訂正することを求めがあった。したがって、訂正後の請求項3、4、5、7、8、10及び11について一群の請求項として訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1、3~5、7、8、10~13に係る発明(以下順に「本件発明1」、「本件発明3」~「本件発明5」、「本件発明7」、「本件発明8」、「本件発明10」~「本件発明13」という。)は、下記のとおりのものである。
「【請求項1】
光照射によりラジカルを発生するラジカル発生機能及び光照射により増感作用を示す光増感機能の少なくともいずれかの機能を発現可能な構造(a)を有する化合物(A)を含有し、
前記化合物(A)として、ポリオルガノシロキサンを含む、PSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
光照射によりラジカルを発生するラジカル発生機能及び光照射により増感作用を示す光増感機能の少なくともいずれかの機能を発現可能な構造(a)を有する化合物(A)を含有し、
前記化合物(A)として、前記構造(a)を主鎖に有する重合体を含み、
前記構造(a)を主鎖に有する重合体が、ポリシラン骨格を有する重合体である、PSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。
【請求項4】
前記化合物(A)が、前記構造(a)として、少なくとも前記光増感機能を発現可能な構造を有する、請求項3に記載のPSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。
【請求項5】
アルケニル基及びフルオロアルケニル基のいずれかを1つ有する単官能性の液晶性化合物を液晶層に含む液晶表示素子の製造用である、請求項3又は4に記載のPSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
請求項3~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗布し、次いでこれを加熱して塗膜を形成する第1の工程と、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶性化合物を含む液晶層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する第2の工程と、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する第3の工程と、
を含む液晶表示素子の製造方法。
【請求項8】
前記液晶層に、前記液晶性化合物として、アルケニル基及びフルオロアルケニル基のいずれかを1つ有する単官能性の液晶性化合物を含有させる、請求項7に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
請求項3~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成されたPSAモード液晶表示素子用液晶配向膜。
【請求項11】
請求項10に記載の液晶配向膜を有するPSAモード液晶表示素子。
【請求項12】
アルケニル基及びフルオロアルケニル基のいずれかを1つ有する単官能性の液晶性化合物を液晶層に含む液晶表示素子の製造用である、請求項1に記載のPSAモード液晶表示素子用液晶配向剤。
【請求項13】
請求項1に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗布し、次いでこれを加熱して塗膜を形成する第1の工程と、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶性化合物を含む液晶層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する第2の工程と、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する第3の工程と、
を含む液晶表示素子の製造方法。」
第4 当審が通知する取消理由
1 平成31年3月28日付け取消理由(決定の予告)の概要
本件特許の請求項1、12、13に係る発明は、その最先の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1、12、13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
引用文献等一覧
甲第1号証:特開2007-316625号公報
甲第2号証:特開2011-203703号公報
甲第3号証:特開2011-227453号公報
甲第4号証:特開2009-104119号公報
(以下、甲第1ないし4号証を順に「甲1」ないし「甲4」と略して記載する。)
周知技術を示す文献:特開2010-285499号公報(以下「周知文献1」という。)
周知技術を示す文献:特開2012-37868号公報(以下「周知文献2」という。)
周知技術を示す文献:特開2012-68541号公報(以下「周知文献3」という。)
2 平成30年11月1日付け取消理由の概要
理由1.(新規性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その最先の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
理由2.(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その最先の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
理由3.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
記
理由1(新規性)について
・請求項 1、2、4、7、10、11
・引用文献等 甲第2号証、甲第3号証
理由2(進歩性)について
・請求項 1、2、4~11
・引用文献等 甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、周知技術
理由3(サポート要件)について
・請求項 1、4~11
引用文献等一覧
甲第1号証:特開2007-316625号公報
甲第2号証:特開2011-203703号公報
甲第3号証:特開2011-227453号公報
甲第4号証:特開2009-104119号公報
(以下、甲第1ないし4号証を順に「甲1」ないし「甲4」と略して記載する。)
周知技術を示す文献:特開2010-285499号公報(以下「周知文献1」という。)
周知技術を示す文献:特開2012-37868号公報(以下「周知文献2」という。)
周知技術を示す文献:特開2012-68541号公報(以下「周知文献3」という。)
第5 取消理由に対する当審の判断
当審は、本件特許の請求項1、12、13に係る特許は、取消理由によって、特許を取り消すと判断する。
また、本件特許の請求項2、6、9に係る特許については、請求項が削除されたので、特許異議申立てを却下する。
さらに、本件特許の請求項3~5、7、8、10、11に係る特許については、取消理由によって、これらの特許を取り消すことができないと判断する。
以下、詳述する。
1 平成31年3月28日付け取消理由(決定の予告)について
(1)引用文献の記載事項
甲2の請求項1には、
「『対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方または両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面に形成された液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成された液晶層とを有し、』『式(I)または(II)で表される構成単位を有する、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体から選択される少なくとも1つと、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含有する液晶配向剤を使用して形成される液晶配向膜を有する液晶表示素子。』」について記載され、
甲2の請求項1を引用する請求項30には、
「式(I)または(II)で表されるポリイミド、ポリアミック酸またはポリアミック酸誘導体の、分子中のすべてのR1およびR2の4~50%が光によりラジカルを発生する基である、請求項1に記載の液晶表示素子。」、
甲2の請求項30を引用する請求項31には、
「ラジカルを発生する化合物をさらに含む配向剤を用いた、請求項30に記載の液晶表示素子。」
甲2の請求項31を引用する請求項32には、
「ラジカルを発生する化合物のラジカルを発生する基がベンゾフェノン骨格およびシンナメート骨格を有する基の群から選択される少なくとも1つである、請求項31に記載の液晶表示素子。」
と記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
また、甲2の請求項1を引用する請求項6には、二級アミンの構造または三級アミンの構造を有するテトラカルボン酸二無水物が、【化9】(IV-1-5)(Y40が-CO-である場合)のベンゾフェノン構造を含むテトラカルボン酸二無水物である液晶表示素子について記載され、甲2の請求項1を間接的に引用する請求項9には、二級アミンの構造または三級アミンの構造を有するジアミンの共重合時共に使用されるジアミンが、【化15】(V-5)(G51が-CO-である場合)のベンゾフェノン構造を含むジアミンである液晶表示素子について記載され、甲2の段落【0169】には「[ラジカルを発生する基の説明]光によりラジカルを発生する基の例は、ベンゾフェノン骨格を有する基、またはシンナメート骨格を有する基である。」と記載され、甲2の段落【0084】には、側鎖を有さないジアミンとして、【化64】(V-5)(G51が-CO-である場合)のベンゾフェノン構造を含むジアミンが記載され、ラジカルを発生する基の具体例として、甲2の段落【0172】には、【化133】(X-1-1)のベンゾフェノン構造を含むジアミン、【化134】(X-5-1)のベンゾフェノン構造が記載されている。
そして、甲2の段落【0215】には「本発明の液晶表示素子に用いられる液晶配向膜は、前述した液晶配向剤から得られる。本発明の液晶表示素子に用いられる液晶配向膜は、液晶配向剤の塗膜を形成する工程と、これを加熱して焼成する工程と、液晶を注入して液晶表示素子を調整した後、電場により配向剤の液晶界面に異方性を発生させ、光照射によりそれを固定化する工程によって得ることができる。」とPSAモードについて記載されている。
さらに、甲2の段落【0216】には「前記塗膜は、通常の液晶配向膜の作製と同様に、液晶表示素子における基板に本発明の液晶表示素子に用いられる液晶配向剤を塗布することによって形成することができる。前記基板には、ITO(Indium TinOxide)電極等の電極やカラーフィルタ等が設けられていてもよいガラス製の基板が挙げられる。」と記載されている。
(2)甲2に記載された発明
上記摘記1からみて、甲2には、以下の発明が記載されている。
「ジアミンとベンゾフェノン構造を含むテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体から選択される少なくとも1つと、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含有し、式(I)または(II)で表されるポリイミド、ポリアミック酸またはポリアミック酸誘導体の、分子中のすべてのR1およびR2の4~50%が光によりラジカルを発生する基であり、ラジカルを発生する基がベンゾフェノン骨格およびシンナメート骨格を有する基の群から選択される少なくとも1つであるラジカルを発生する化合物をさらに含む液晶配向剤を使用して形成される液晶配向膜を有するPSAモード液晶表示素子、
又は、ベンゾフェノン構造を含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体から選択される少なくとも1つと、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含有し、式(I)または(II)で表されるポリイミド、ポリアミック酸またはポリアミック酸誘導体の、分子中のすべてのR1およびR2の4~50%が光によりラジカルを発生する基であり、ラジカルを発生する基がベンゾフェノン骨格およびシンナメート骨格を有する基の群から選択される少なくとも1つであるラジカルを発生する化合物をさらに含む液晶配向剤を使用して形成される液晶配向膜を有するPSAモード液晶表示素子。」(以下「甲2-1発明」という。また、式(I)または(II)の構造式は省略。)
「それぞれの対向している面の両方に電極が形成されている一対の基板を形成する工程と、ジアミンとベンゾフェノン構造を含むテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体から選択される少なくとも1つと、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含有し、式(I)または(II)で表されるポリイミド、ポリアミック酸またはポリアミック酸誘導体の、分子中のすべてのR1およびR2の4~50%が光によりラジカルを発生する基であり、ラジカルを発生する基がベンゾフェノン骨格およびシンナメート骨格を有する基の群から選択される少なくとも1つであるラジカルを発生する化合物をさらに含む液晶配向剤、
又は、ベンゾフェノン構造を含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体から選択される少なくとも1つと、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含有し、式(I)または(II)で表されるポリイミド、ポリアミック酸またはポリアミック酸誘導体の、分子中のすべてのR1およびR2の4~50%が光によりラジカルを発生する基であり、ラジカルを発生する基がベンゾフェノン骨格およびシンナメート骨格を有する基の群から選択される少なくとも1つであるラジカルを発生する化合物をさらに含む液晶配向剤
の塗膜を形成する工程と、これを加熱して焼成する工程と、液晶を注入して液晶表示素子を調整した後、電場により配向剤の液晶界面に異方性を発生させ、光照射によりそれを固定化する工程によって得ることができる液晶配向膜を有するPSAモード液晶表示素子の製造方法。」(以下「甲2-2発明」という。また、式(I)または(II)の構造式は省略。)
(3)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲2-1発明とを対比すると、甲2-1発明の「ラジカルを発生する基がベンゾフェノン骨格およびシンナメート骨格を有する基の群から選択される少なくとも1つであるラジカルを発生する化合物をさらに含む」は、本件発明1の「光照射によりラジカルを発生するラジカル発生機能及び光照射により増感作用を示す光増感機能の少なくともいずれかの機能を発現可能な構造(a)を有する化合物(A)を含有し」に、甲2-1発明の「『PSAモード』『液晶配向剤』」は、本件発明1の「PSAモード液晶表示素子用液晶配向剤」に、それぞれ相当する。
そうすると、光照射によりラジカルを発生するラジカル発生機能及び光照射により増感作用を示す光増感機能の少なくともいずれかの機能を発現可能な構造(a)を有する化合物(A)として、本件発明1がポリオルガノシロキサンを含むのに対し、甲2-1発明がポリオルガノシロキサンを含むのか明らかでない点で相違する。
ベンゾフェノン構造等の光増感機能を併有するポリオルガノシロキサンを含む液晶配向剤は、本件特許の最先の優先日前に周知技術(必要ならば、周知文献2(請求項1~3、段落【0002】、段落【0030】、段落【0217】、段落【0218】参照)、周知文献3(請求項8~11、段落【0002】、段落【0022】~【0025】、段落【0052】、段落【0226】、段落【0227】参照)を参照されたい。)である。
そうすると、甲2-1発明の「さらに含」まれる「ラジカルを発生する基がベンゾフェノン骨格およびシンナメート骨格を有する基の群から選択される少なくとも1つであるラジカルを発生する化合物」として、上記周知のベンゾフェノン構造等の光増感機能を併有するポリオルガノシロキサンを用いることは、当業者が容易になし得る事項にすぎない。
よって、本件発明1は、当業者が甲2-1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明12について
液晶表示素子に関する技術において、アルケニル基及びフルオロアルケニル基のいずれかを1つ有する単官能性の液晶性化合物は、本件特許の最先の優先日前に周知技術(必要ならば、甲4(請求項2、段落【0007】、段落【0008】参照)、周知文献1(請求項1、段落【0002】参照)を参照されたい。)である。
よって、本件発明12は、当業者が甲2-1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件発明13について
本件発明13と甲2-2発明とを対比すると、甲2-2発明の「光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含有し、ラジカルを発生する基がベンゾフェノン骨格およびシンナメート骨格を有する基の群から選択される少なくとも1つであるラジカルを発生する化合物をさらに含む」は、本件発明13の「光照射によりラジカルを発生するラジカル発生機能及び光照射により増感作用を示す光増感機能の少なくともいずれかの機能を発現可能な構造(a)を有する化合物(A)を含有し」に、甲2-2発明の「『それぞれの対向している面の両方に電極が形成されている一対の基板を形成する工程と、』『液晶配向剤の塗膜を形成する工程と、』『これを加熱して焼成する工程』」は、本件発明13の「液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗布し、次いでこれを加熱して塗膜を形成する第1の工程」に、甲2-2発明の「液晶を注入して液晶表示素子を調整した」は、本件発明13の「前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶性化合物を含む液晶層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを構築する第2の工程」に、甲2-2発明の「電場により配向剤の液晶界面に異方性を発生させ、光照射によりそれを固定化する工程」は、本件発明13の「前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する第3の工程」に、甲2-2発明の「PSAモード液晶表示素子の製造方法」は、本件発明13の「液晶表示素子の製造方法」に、それぞれ相当する。
そうすると、光照射によりラジカルを発生するラジカル発生機能及び光照射により増感作用を示す光増感機能の少なくともいずれかの機能を発現可能な構造(a)を有する化合物(A)として、本件発明1がポリオルガノシロキサンを含むのに対し、甲2-2発明がポリオルガノシロキサンを含むのか明らかでない点で相違するが、当該相違点については上記(1)の周知技術を参照されたい。
よって、本件発明13は、当業者が甲2-2発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
(4)特許権者の主張について
ア 平成30年12月28日付けの意見書において「甲2に記載された発明(以下「甲2発明」という。)は、甲2の請求項1等に記載されているように、ポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体から選択される少なくとも1つを必須の構成としている。そのため甲1発明と同様に、甲2発明の課題を解決するために必須の構成であるポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体から選択される少なくとも1つを、他の構成に置き換える動機づけがないし、他の構成に変更することには阻害要因があるといえる。よって、甲2は、本件訂正発明1に想到するための基礎とはなり得ない。」と特許権者は主張している。
イ しかしながら、甲2に記載された発明(甲2-1発明、甲2-2発明)には、ポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体から選択される少なくとも1つを必須の構成としていたとしても、前者の必須の構成を置き換えずに、さらに、ラジカルを発生する基がベンゾフェノン骨格およびシンナメート骨格を有する基の群から選択される少なくとも1つであるラジカルを発生する化合物を含んでいることを踏まえると、前者の必須の構成を置き換えずに、当該「さらに含まれる化合物」において周知技術を適用する動機付けはあり、その適用について阻害要因はない。
よって、特許権者の主張は採用されない。
したがって、本件発明1、12、13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 平成30年11月1日付け取消理由について
本件発明1、12、13以外について検討する。
(1)理由1(新規性)について
ア 甲2を主引用例とした場合
(ア)甲2に記載された発明
甲2には、請求項1、請求項6、段落【0084】、段落【0169】、段落【0172】、段落【0215】、段落【0216】の記載からみて、以下の発明が記載されている。以下の発明が記載されている。
「ジアミンとベンゾフェノン構造を含むテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体から選択される少なくとも1つと、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含有する液晶配向剤を使用して形成される液晶配向膜を有するPSAモード液晶表示素子、又は、ベンゾフェノン構造を含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体から選択される少なくとも1つと、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含有する液晶配向剤を使用して形成される液晶配向膜を有するPSAモード液晶表示素子。」(以下「甲2-1発明」という。)
「ジアミンとベンゾフェノン構造を含むテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体から選択される少なくとも1つと、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含有する液晶配向剤、又は、ベンゾフェノン構造を含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体から選択される少なくとも1つと、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含有する液晶配向剤の塗膜を、それぞれの対向している面の両方に電極が形成されている一対の基板に形成する工程と、これを加熱して焼成する工程と、液晶を注入して液晶表示素子を調整した後、電場により配向剤の液晶界面に異方性を発生させ、光照射によりそれを固定化する工程によって得ることができる液晶配向膜を有するPSAモード液晶表示素子の製造方法。」(以下「甲2-2発明」という。)
(イ)対比・判断
当該理由は、請求項1、2、4、7、10、11に対して通知されたところ、請求項1以外の請求項2、4、7、10、11について検討する。
請求項2は、訂正により削除されたので、甲2-1発明に基づく取消理由の対象となる請求項2は存在しない。
そして、当該理由の対象でない請求項3は、訂正により独立形式請求項へ改められ、請求項4、7、10、11は当該理由の対象でない請求項3を引用し、請求項1、2を引用しないものとなったので、本件発明4、7、10、11は、甲2-1発明又は甲2-2発明と相違する。
イ 甲3を主引用例とした場合
(ア)甲3に記載された発明
甲3には、請求項1、請求項2、段落【0035】、段落【0037】、段落【0038】の記載からみて、以下の発明が記載されている。以下の発明が記載されている。
「ベンジルジメチルケタールを含む開始剤を含む配向膜と液晶層に光を照射して配向重合体を形成する段階を含むPSAモード液晶表示装置。」(以下「甲3発明」という。)
(イ)対比・判断
当該理由は、請求項1、10、11に対して通知されたところ、請求項1以外の請求項10、11について検討する。
そして、当該理由の対象でない請求項3は、訂正により独立形式請求項へ改められ、請求項10、11は当該理由の対象でない請求項3を引用し、請求項1、2を引用しないものとなったので、本件発明10、11は、甲3発明と相違する。
(2)理由2(進歩性)について
ア 甲1を主引用例とした場合
(ア)甲1に記載された発明
甲1には、請求項1、請求項5、段落【0043】、段落【0047】、段落【0048】の記載からみて、以下の発明が記載されている。
「ベンゾフェノン構造を含む第一テトラカルボン酸二無水物と、第一ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンを含む第二ジアミンを反応させて得られるポリアミック酸および/または当該ポリアミック酸を脱水閉環させて得られるイミド化重合体を含有する垂直配向型液晶配向剤から形成された垂直配向型液晶配向膜を具備する垂直配向型液晶表示素子。」(以下「甲1発明」という。)
(イ)対比・判断
まず、当該理由は、請求項1、2、4~11に対して通知されたところ、請求項1以外の請求項2、4~11について検討する。
請求項2、6、9は、訂正により削除されたので、甲1発明に基づく取消理由の対象となる請求項2、6、9は存在しない。
当該理由の対象でない請求項3は、訂正により独立形式請求項へ改められ、請求項4、5、7、8、10、11は当該理由の対象でない請求項3を引用し、請求項1、2を引用しないものとなったので、本件発明4、5、7、8、10、11は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、甲1発明において、ポリオルガノシロキサンを含む液晶配向剤は、本件特許の最先の優先日前に周知技術であったとしても、構造(a)を主鎖に有する重合体が、ポリシラン骨格を有する重合体であるようにする動機もない。
イ 甲2を主引用例とした場合
まず、当該理由は、請求項1、2、4~11に対して通知されたところ、請求項1以外の請求項2、4~11について検討する。
請求項2、6、9は、訂正により削除されたので、甲2-1発明又は甲2-2発明に基づく取消理由の対象となる請求項2、6、9は存在しない。
当該理由の対象でない請求項3は、訂正により独立形式請求項へ改められ、請求項4、5、7、8、10、11は当該理由の対象でない請求項3を引用し、請求項1、2を引用しないものとなったので、本件発明4、5、7、8、10、11は、甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、甲2発明において、構造(a)を主鎖に有する重合体が、ポリシラン骨格を有する重合体であるようにする動機もない。
ウ 甲3を主引用例とした場合
請求項2、6、9は、訂正により削除されたので、甲3発明に基づく取消理由の対象となる請求項6、9は存在しない。
請求項3は、訂正により独立形式請求項へ改められ、請求項5、7、8は請求項3を引用し、請求項1、2を引用しないものとなったので、本件発明5、7、8は、甲3発明と相違する。
そして、甲3発明において、構造(a)を主鎖に有する重合体が、ポリシラン骨格を有する重合体であるようにする動機もない。
(3)理由3(サポート要件)について
理由3(サポート要件)の概要は、請求項1、4~11に対して、分子量1,000以下の低分子化合物について、発明の詳細な説明に記載されたものではないというものであるところ、請求項1以外の請求項4~11について検討する。
請求項6、9は、訂正により削除された。
さらに、当該理由の対象でない請求項3は、訂正により独立形式請求項へ改められ、請求項4、5、7、8、10、11は当該理由の対象でない請求項3を引用し、請求項1、2を引用しないものとなった。
そうすると、化合物(A)として、分子量1,000以下の低分子化合物を含むとの選択肢が訂正により削除されたので、請求項4、5、7、8、10、11に係る発明は、課題を解決し得る発明となり、発明の詳細な説明に記載のものになった。
第6 取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由
1 取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由の概要
(1)本件特許の請求項1、2、4~6、8~10に係る発明は、その最先の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)本件特許の請求項1、2、4~10に係る発明は、その最先の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)請求項1の「前記構造(a)を主鎖に有する重合体」により、その発明の課題を解決し得る効果が得られることを当業者が認識できる程度に、具体例を開示して記載しているとはいえない。
よって、請求項1に係る発明は明細書によってサポートされておらず、特許法第36条第6項第1号を満たしておらず、請求項1を直接又は間接に引用する、請求項2~5、7~8及び10~11に係る発明についても同様であり、請求項1~5、7~8、10~11に係る発明は、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
したがって、本件発明1~5、7~8及び10~11に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)本件特許発明1及び6「PSAモード液晶表示素子用」は、PSAモードの液晶表示素子への用途と解されるが、その用途に用いられる液晶配向剤が、その用途に用いられない液晶配向剤と如何にして区別されるのか不明である。
よって、本件特許発明1及び6は不明確であり、本件特許発明1及び6を直接又は間接に引用する、本件特許発明2~5及び7~11についても同様であり、本件特許発明1~11は、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
したがって、本件発明1~11に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)証拠方法
甲第1号証:特開2007-316625号公報
甲第2号証:特開2011-203703号公報
甲第3号証:特開2011-227453号公報
甲第4号証:特開2009-104119号公報
2 当審の判断
(1)申立理由(1)について
申立理由のうち、取消理由で採用しなかった具体的な申立理由は、
・請求項1、2、4、10に係る発明は、甲1に記載された発明に該当する、
・請求項5、8、9に係る発明は、甲4に記載された発明に該当する、
・請求項6に係る発明は、甲2に記載された発明に該当する、
というものであった。
そこで、訂正により削除された請求項2、6、9を除いた本件発明1、12、13以外の請求項4、5、8、10について検討する。
請求項4、5、8、10は、訂正により申立理由(1)の対象でない請求項3を引用するものとなり、請求項1、2を引用しないものとなった。そして、請求項4、5、8、10に係る発明は、これらが引用する請求項3に係る発明と同様に、「化合物(A)として、・・・ポリシラン骨格を有する重合体」を発明特定事項とするものであり、この事項について、甲1又は甲4には記載がない。
したがって、請求項4、10に係る発明は甲1に記載された発明でなく、また、請求項5、8に係る発明は、甲4に記載された発明ではない。
よって、申立理由(1)はその理由がなく、請求項4、5、8、10に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、これらの特許は、同法第113条第2号に該当しないから、取り消すべきものではない。
(2)申立理由(2)について
申立理由のうち、取消理由で採用しなかった具体的な申立理由は、
・請求項1に係る発明は、甲1、甲2又は甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである、
・請求項2、4、10に係る発明は、甲1又は甲2に記載された発明に基づいて、あるいは甲1に記載された周知技術と甲2に記載された発明を組み合わせることにより、当業者が容易に想到し得たものである、
・請求項5、8、9に係る発明は、甲4に記載された発明に基づいて、あるいは甲4に記載された発明と甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、甲3に記載された発明のいずれか一つを組み合わせることにより、当業者が容易に想到し得たものである、
・請求項6に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである、
・請求項7に係る発明は、甲1に記載された発明と本件明細書中でも公知と認めている技術事項を組み合わせることにより、当業者が容易に想到し得たものである、
というものであった。
そこで、訂正により削除された請求項2、6、9を除いた本件発明1、12、13以外の請求項4、5、7、8、10について検討する。
まず、請求項4、10は、上述したとおり、訂正により申立理由(2)の対象でない請求項3を引用するものとなり、請求項1、2を引用しないものとなった。そして、請求項4、10に係る発明は、これらが引用する請求項3に係る発明と同様に、「化合物(A)として、・・・ポリシラン骨格を有する重合体」を発明特定事項とするものであり、この事項について、甲1、甲2には記載がなく、甲1に記載された周知技術でもないから、請求項4、10に係る発明は、甲1又は甲2に記載された発明に基づいて、あるいは甲1に記載された周知技術と甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
請求項5、8は、訂正により申立理由(2)の対象でない請求項3を引用するものとなり、請求項1、2を引用しないものとなった。そして、請求項5、8に係る発明は、これらが引用する請求項3に係る発明と同様に、「化合物(A)として、・・・ポリシラン骨格を有する重合体」を発明特定事項とするものであり、この事項について、甲1~甲4には記載がないから、請求項5、8に係る発明は、甲1~甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
請求項7は、訂正により申立理由(2)の対象でない請求項3を引用するものとなり、請求項1、2を引用しないものとなった。そして、請求項7に係る発明は、請求項3に係る発明と同様に、「化合物(A)として、・・・ポリシラン骨格を有する重合体」を発明特定事項とするものであり、この事項について、甲1にも記載がなく、公知技術でもないから、請求項7に係る発明は、甲1に記載された発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、申立理由(2)はその理由がなく、請求項4、5、7、8、10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではないから、これらの特許は、同法第113条第2号に該当しないから、取り消すべきものではない。
(3)申立理由(3)について
請求項3は、訂正により独立形式請求項へ改められ、請求項4、5、7、8、10、11は請求項3を引用し、請求項1、2を引用しないものとなった。
本件発明3は「前記化合物(A)として、前記構造(a)を主鎖に有する重合体を含み、前記構造(a)を主鎖に有する重合体が、ポリシラン骨格を有する重合体である」と特定されている。
そして、本件発明3に係る実施例としてポリメチルフェニルシラン(PMPS)を使用した液晶配向剤が、実施例6に記載されており、当該実施例6には、液晶配向膜が光照射後に高い電圧保持率を維持し、少ない光照射量で適正なプレチルト角を表すことが記載されていることから、本件発明3は、本件特許の解決しようとする課題を解決し得るものである
そうすると、本件発明3は、化合物(A)として、構造(a)を主鎖に有する重合体を含むだけではなく、構造(a)を主鎖に有する重合体が、ポリシラン骨格を有する重合体であることから、課題を解決し得る発明となり、発明の詳細な説明に記載のものになっている。
そして、請求項3を引用する本件発明4、5、7、8、10、11についても同様である。
よって、申立理由(3)はその理由がなく、請求項3~5、7、8、10、11に係る発明は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たすものであるから、これらの特許は、同法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。
(4)申立理由(4)について
PSAモードは、液晶に関する技術において一般的に行われており、本件発明3~5、7、8、10、11の液晶配向剤が「PSAモード液晶表示素子用」であることは、不明確であるとまではいえない。
よって、申立理由(4)はその理由がなく、請求項3~5、7、8、10、11に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たすものであるから、これらの特許は、同法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明1、12、13は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて、その最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1、12、13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件発明3~5、7、8、10、11に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件発明3~5、7、8、10、11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項2、6、9に係る特許は、訂正により削除されたため、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、この特許についての特許異議の申立ては却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700610