特許異議申立
2018-700485
水処理剤
- 審判番号
- 2018-700485
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-067270
- 登録番号
- 特許第6245444号(P6245444)
- 請求日
- 2018年06月13日
- 審決日
- 2019年03月25日
- 公報発行日
- 2019年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三浦工業株式会社
- 【権利者代理人】市川 恒彦
- 【異議申立人】高橋 勇
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 賢一
- 審判官 豊永 茂弘
- 審判官 山崎 直也
- 分類
- P1651.113-YAA(C02F) / P1651.121-YAA(C02F) / P1651.851-YAA(C02F) / P1651.853-YAA(C02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6245444号発明「水処理剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6245444号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第6245444号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本件特許第6245444号は、平成26年3月27日に出願された特願2014-67270号の特許請求の範囲に記載された請求項1ないし5に係る発明について、平成29年11月24日に設定登録、同年12月13日に登録公報の発行がされたものであり、その後、その全請求項に係る特許について、平成30年6月13日付けの特許異議の申立てが高橋勇(以下、「異議申立人」という。)よりされ、同年9月25日付けの取消理由を通知したところ、特許権者より同年11月21日付けの意見書及び訂正請求書(以下、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正による請求を「本件訂正請求」という。)が提出され、これに対して、異議申立人より同年12月28日付けの意見書が提出されたものである。
第2.本件訂正の適否についての判断
(2-1)本件訂正の内容
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「水溶性重合体と、
スルホン化ピレン系化合物とを含み、
pHが12以上に調整されている」と記載されているのを、「水溶性重合体と、
スルホン化ピレン系化合物とを含み、
前記水溶性重合体の濃度が7~25重量%に設定されており、かつ、pHが12以上に調整されている」に訂正する。(当審注:下線は、特許権者が付与した。以下、同じ。)
イ 訂正事項2
願書に添付した明細書の【0009】に「水溶性重合体と、スルホン化ピレン系化合物とを含み、pHが12以上に調整されている。」と記載されているのを、「水溶性重合体と、スルホン化ピレン系化合物とを含み、水溶性重合体の濃度が7~25重量%に設定されており、かつ、pHが12以上に調整されている。」に訂正する。
(2-2)訂正事項が全ての訂正要件に適合しているか否かについて
ア 訂正事項1
a 訂正の目的について
訂正事項1は、「水溶性重合体」の濃度範囲を規定することで、「水溶性重合体」を限定するものであることから、特許法第120条の5第2項但し書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、請求項1を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書の【0028】の記載から導き出されたものであることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正事項2
a 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正事項1の訂正に伴って、特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るものであるので、特許法第120条の5第2項但し書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
訂正事項2は、願書に添付した明細書の【0028】の記載から導き出されたものであることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2-3)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし5について特許異議申立てがなされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2-4)小括
上記のとおり、訂正前の請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項の規定に適合する一群の請求項であり、本件訂正請求は、この一群の請求項1ないし5について訂正することを求めるものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合して請求されたものである。また、本件訂正は特許法第120条の5第2項但し書き1号、3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法126条第4ないし6項の規定に適合するものである。
したがって、本件訂正後の請求項〔1-5〕について訂正を認める。
第3.本件の発明について
本件の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、その訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりの以下のものである。
「【請求項1】
カルボン酸およびカルボン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの単量体単位を有する水溶性重合体と、
スルホン化ピレン系化合物とを含み、
前記水溶性重合体の濃度が7~25重量%に設定されており、かつ、pHが12以上に調整されている、
水処理剤。
【請求項2】
前記スルホン化ピレン系化合物がピレンテトラスルホン酸およびピレンテトラスルホン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項1に記載の水処理剤。
【請求項3】
ホスホン酸およびホスホン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つのホスホン酸系化合物をさらに含む、請求項1または2に記載の水処理剤。
【請求項4】
アゾ-ル系化合物をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の水処理剤。
【請求項5】
前記アゾ-ル系化合物が1,2,3-ベンゾトリアゾールである、請求項4に記載の水処理剤。」
第4.当審の取消理由について
(4-1)当審の取消理由1(特許法第29条第1項第3号)
取消理由通知書に記載した取消理由1(概略)は、「訂正前の本件発明1ないし4は、特表2003-532113号公報(甲第1号証)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。」 というものである。
(4-2)当審の取消理由2(特許法第29条第2項)
取消理由通知書に記載した取消理由2(概略)は、「訂正前の本件発明1ないし4は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。」及び「本件発明5は、甲第1号証に記載された発明及び特開平7-308516号公報(甲第2号証)、特開2001-170687号公報(甲第5号証)の記載事項に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。」というものである。
第5.当審の判断
(5-1)当審の取消理由1について
(5-1-1)本件発明1
ア 甲第1号証に記載の発明
甲第1号証には、これの特に【0063】からして、「水と、ホスホノブタントリカルボキシル酸(ナトリウム塩)と、ヒドロキシエチリデンジホスホリック酸(カリウム塩)と、3重量%のアクリレート/アクリルアミドポリマーと、トリルトリアゾール(ナトリウム塩)、ピレンテトラスルホン酸(ナトリウム塩)と、フルオレセインとの組み合わせであり、これは水酸化ナトリウムによってph13に調製された、冷却水処理剤。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
イ 対比・判断
○甲1発明の「アクリレート/アクリルアミドポリマー」、「ピレンテトラスルホン酸(ナトリウム塩)」、「ph13に調製された」及び「冷却水処理剤」は、本件発明1の「カルボン酸およびカルボン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの単量体単位を有する水溶性重合体」、「スルホン化ピレン系化合物」、「pHが12以上に調整されている」及び「水処理剤」にそれぞれ相当する。
○甲1発明の「との組み合わせであり」は、本件発明1の「とを含み」に相当する。
上記からして、本件発明1と甲1発明とは、「カルボン酸およびカルボン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの単量体単位を有する水溶性重合体と、スルホン化ピレン系化合物とを含み、pHが12以上に調整されている、水処理剤」という点で一致し、
上記「水処理剤」において、本件発明1は、「水溶性重合体の濃度が7~25重量%に設定され」るのに対して、甲1発明は、3重量%のアクリレート/アクリルアミドポリマー(水溶性重合体)である点で相違している。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。
(5-1-2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1と同じく、上記「水処理剤」において、「水溶性重合体の濃度が7~25重量%に設定され」ることを発明特定事項にするものであるので、甲第1号証に記載された発明ではない。
(5-1-3)小括
上記「(5-1-1)」及び「(5-1-2)」より、取消理由通知書に記載した取消理由1に理由はない。
また、上記「(5-1-1)」及び「(5-1-2)」で示した理由と同じ理由より、異議申立書に記載した「特許法第29条第1項第3号」を根拠とする申立理由にも、理由はない。
(5-2)当審の取消理由2について
(5-2-1)本件発明1
上記「(5-1-1)」で示した相違点について検討する。
甲第2号証、特表2007-535402号公報(甲第3号証)、特表2013-531705号公報(甲第4号証)、甲第5号証、特開2004-211137号公報(甲第6号証)、国際公開03/096810号(甲第7号証)は、本件請求項2、5に記載された発明特定事項に関する文献であって、これらのいずれにも、甲1発明において、ピレンテトラスルホン酸(ナトリウム塩)(スルホン化ピレン系化合物)を含んだ上で、pHを変更することなく、アクリレート/アクリルアミドポリマー(水溶性重合体)の濃度を7~25重量%にすることについて示唆するものではない。
そして、本件発明1の「日光の照射環境においてもトレーサー物質であるスルホン化ピレン系化合物が劣化しにくい」(【発明の効果】【0013】)という効果についても、甲第1号証ないし甲第7号証には、記載も示唆もない。
したがって、本件発明1は、「甲1発明及び甲第2号証、甲第5号証の記載事項、更に加えて、甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証、甲第7号証の記載事項に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものである」とはいえない。
(5-2-2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1と同じく、「カルボン酸およびカルボン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの単量体単位を有する水溶性重合体と、スルホン化ピレン系化合物とを含み、pHが12以上に調整されている、水処理剤」において、「水溶性重合体の濃度が7~25重量%に設定され」ることを発明特定事項にするものであるので、「甲1発明及び甲第2号証、甲第5号証の記載事項、更に加えて、甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証、甲第7号証の記載事項に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものである」とはいえない。
(5-2-3)小括
上記「(5-2-1)」及び「(5-2-2)」より、取消理由通知書に記載した取消理由2に理由はない。
また、上記「(5-2-1)」及び「(5-2-2)」で示した理由と同じ理由より、異議申立書に記載した「特許法第29条第2項」を根拠とする申立理由にも、理由はない。
第6.その他
異議申立人は、平成30年12月28日付け意見書において、参考資料1ないし6(参考資料2は甲第5号証)を提出し、本件発明1ないし5は、依然として、進歩性を有するものではない旨の主張をしているところ、参考資料1ないし6には、pH12以上でカルボン酸またはその塩を単量体単位とする重合体を7重量%以上含む水処理剤について記載されているが、いずれも、トレーサー物質を含むものではなく、甲1発明において、トレーサー物質であるピレンテトラスルホン酸(ナトリウム塩)(スルホン化ピレン系化合物)を含んだ上で、pHを変更することなく、アクリレート/アクリルアミドポリマー(水溶性重合体)の濃度を7~25重量%にすることや、その効果について示唆するものとはいえない。
したがって、参考資料1ないし6を考慮したとしても、本件発明1ないし5の進歩性が否定されることにはならないというべきである。
第7.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由および取消理由通知書に記載した取消理由によっては、本件発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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