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特許異議申立

2021-700468

医療用コンテナ

審判番号
2021-700468
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-080991
登録番号
6787618
請求日
2021年05月17日
審決日
2022年01月05日
公報発行日
2022年05月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】FOREMOST株式会社
  • 【権利者代理人】古部 次郎
  • 【権利者代理人】尾形 文雄
  • 【異議申立人】山内 憲之
審判長/審判官
  • 審判長 藤井 昇
  • 審判官 島田 信一
  • 審判官 八木 誠
分類
P1651.113-YAA(A61G) / P1651.121-YAA(A61G) / P1651.537-YAA(A61G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6787618号発明「医療用コンテナ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6787618号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを認める。 特許第6787618号の請求項1、4~7に係る特許を維持する。 特許第6787618号の請求項2,3に係る特許についての異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6787618号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年5月1日に出願され、同年11月2日にその特許権の設定登録がされ、同年11月18日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年 5月17日付け:特許異議申立人 山内憲之(以下「申立人」という。)より請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 8月 3日付け:取消理由通知書 同年10月 8日付け:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年10月21日付け:訂正請求があった旨の通知書(特許法第120条の5第5項) 同年11月18日付け:申立人からの意見書 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和3年10月8日付け訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」といい、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」といい、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲、及び図面を含めて「本件明細書等」という。)を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 本件特許請求の範囲の請求項1に、 「コンテナの内部に設けられ医療従事者が感染症の患者を診療する診療室と、 前記コンテナの内部に設けられ前記診療室との間に扉を介して仕切られる前室と、 前記診療室に対して前記医療従事者および前記患者の何れか一方が入室する診療室扉と、 前記前室に対して前記医療従事者および前記患者の何れか他方が入室するとともに、前記診療室扉から入室する前記一方の動線と当該前室に入室する当該他方の動線とが異なる ように設けられる前室扉と、を備え、 前記前室と前記診療室との仕切りから見て前記コンテナの一方の妻側面側に当該前室が形成され他方の妻側面側に当該診療室が形成されて、当該コンテナの内部の長手方向にて当該前室と当該診療室とが区分されていることを特徴とする医療用コンテナ。」 と記載されているのを、 「コンテナの内部に設けられ医療従事者が感染症の患者を診療する診療室と、 前記コンテナの内部に設けられ前記診療室との間に扉を介して仕切られる前室と、 前記診療室に対して前記医療従事者および前記患者の何れか一方が入室する診療室扉と、 前記前室に対して前記医療従事者および前記患者の何れか他方が入室するとともに、前記診療室扉から入室する前記一方の動線と当該前室に入室する当該他方の動線とが異なるように設けられる前室扉と、 前記医療従事者側から前記患者側に向けて空気流が生じるように配置された陰圧設備と、を備え、 前記前室と前記診療室との仕切りから見て前記コンテナの一方の妻側面側に当該前室が形成され他方の妻側面側に当該診療室が形成されて、当該コンテナの内部の長手方向にて当該前室と当該診療室とが区分され、 前記前室は、前記医療従事者の感染予防のために当該医療従事者が使用する部屋であり、 前記空気流を形成するための外気を取り込む吸気口が前記診療室の前記前室に近い側に形成されることを特徴とする医療用コンテナ。」 に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項4~7も同様に訂正する。なお、請求項2、3は、下記訂正事項2,3により削除されている。) (2)訂正事項2 本件特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 本件特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が、訂正請求の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~7〕に対して請求されたものである。 2 訂正の適否 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項2の記載内容に基づき、「前記医療従事者側から前記患者側に向けて空気流が生じるように配置された陰圧設備と、」を備え、との事項を付加するとともに、訂正前の請求項3の記載内容に基づき、「前記前室は、前記医療従事者の感染予防のために当該医療従事者が使用する部屋であり、前記空気流を形成するための外気を取り込む吸気口が前記診療室の前記前室に近い側に形成される」との事項を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項3を削除するものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~7〕についての訂正を認める。 第3 訂正後の本件発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項 1、4~7に係る発明(以下「本件発明1」、「本件発明4~7」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、4~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、請求項2、3は本件訂正により削除されている。 【請求項1】 コンテナの内部に設けられ医療従事者が感染症の患者を診療する診療室と、 前記コンテナの内部に設けられ前記診療室との間に扉を介して仕切られる前室と、 前記診療室に対して前記医療従事者および前記患者の何れか一方が入室する診療室扉と、 前記前室に対して前記医療従事者および前記患者の何れか他方が入室するとともに、前記診療室扉から入室する前記一方の動線と当該前室に入室する当該他方の動線とが異なるように設けられる前室扉と、 前記医療従事者側から前記患者側に向けて空気流が生じるように配置された陰圧設備と、を備え、 前記前室と前記診療室との仕切りから見て前記コンテナの一方の妻側面側に当該前室が形成され他方の妻側面側に当該診療室が形成されて、当該コンテナの内部の長手方向にて当該前室と当該診療室とが区分され、 前記前室は、前記医療従事者の感染予防のために当該医療従事者が使用する部屋であり、 前記空気流を形成するための外気を取り込む吸気口が前記診療室の前記前室に近い側に形成されることを特徴とする医療用コンテナ。 【請求項4】 前記診療室扉と前記前室扉とが前記コンテナの周囲4側面のうち異なる側面に形成されることにより前記動線を異ならせることを特徴とする請求項1記載の医療用コンテナ。 【請求項5】 前記前室内および/または前記診療室内が陰圧とされていることを特徴とする請求項1記載の医療用コンテナ。 【請求項6】 前記患者が使うトイレシステムが配置されていることを特徴とする請求項1記載の医療用コンテナ。 【請求項7】 前記コンテナの側面に、当該側面が十字に切り取られることにより形成された窓を備えたことを特徴とする請求項1記載の医療用コンテナ。 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1、2、4~7に係る特許に対して令和3年8月3日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 [取消理由1] 本件特許の下記請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 [取消理由2] 本件特許の下記請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 [刊行物] 引用文献1:特開2011-41765号公報 引用文献2:特開2003-328574号公報 なお、引用文献1、2は、申立人が証拠として提出した甲第1、3号証である。 [取消理由と請求項及び引用文献の関係] ○取消理由1 ・請求項1、5 ・引用文献:1 ○取消理由2 ・請求項2、4 ・引用文献:1 ・請求項6 ・引用文献:1、2 ・請求項7 ・引用文献:1、2 2 各引用文献の記載事項等 (1)引用文献1に記載された事項等 (1a)引用文献1の記載事項 ア 「【請求項1】 可搬式の居室用箱体の内部空間を間仕切壁で仕切って、一端側に医療スタッフ室、他端側に患者待機室を設けると共に、中間側に対処室を構成し、医療スタッフ室と患者待機室の夫々に箱体外との扉付き出入口を設けると共に、医療スタッフ室と対処室及び対処室と患者待機室との間に扉付き出入口を設け、患者待機室にフィルタを備えた室内空気の排気ユニットを設けると共に、医療スタッフ室に外気の給気ユニットを設け、排気ユニットの排気経路から分岐させて対処室に至る還流経路を設けたことを特徴とする可搬式感染症対策室装置。」(下線は当審が付与。以下同様。) イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は可搬式感染症対策室装置、特に、インフルエンザ等の空気感染、飛沫感染等の感染者の診断や治療等の対処に適した感染症対策室装置に関するものである。」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 このように移動検診車を利用して発熱外来を設ければ、一般の患者や入院患者への感染は防げるが、医療スタッフに対しての感染を防ぐことは困難である。また自動車に特殊な医療設備を設けているので、非常に高価である。 【0009】 そこで本発明では、医療スタッフに対しての感染症の感染を確実に防ぐと共に、外部へのウィルス等の感染症原因物質の放出を確実に防止することができ、しかも比較的安価に構成することができる可搬式の医療用設備、即ち、感染症対策室装置を構成することを目的としている。」 エ 「【発明を実施するための形態】 【0026】 次に本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。 まず図1、図2は本発明の可搬式感染症対策室装置を模式的に示す平面図で、また図3は天井側と側壁側の一部を便宜的に切り欠いて模式的に示す斜視図である。本発明の可搬式感染症対策室装置は、可搬式の居室用箱体1内を間仕切壁2a,2bで仕切って、前部に医療スタッフ室3、後部に患者待機室4を設けると共に、中間部に対処室5を構成し、医療スタッフ室3と患者待機室4の夫々に居室用箱体外との扉6、7付きの出入口8、9を設けると共に、医療スタッフ室3と対処室5及び対処室5と患者待機室4との間に扉10、11付きの出入口12、13を設け、患者待機室4にフィルタ(図示省略)を備えた室内空気の排気ユニット14を設けると共に、医療スタッフ室3に外気の給気ユニット15を設け、上記排気ユニット14の排気経路16から分岐させて対処室に至る還流経路17を設けている。また室3と室5間の間仕切壁2a及び室5と室4間の間仕切壁2bには差圧ダンパー18a,18bを設けると共に、排気経路16には、還流経路17との分岐位置よりも下流側にボリュームダンパー19を設けて、還流経路17を経て対処室5に還流する空気の割合を調節可能に構成している。尚、符号20は還流空気口であり、また符号21は給気ユニット15の外気取入口、22は給気口、23は排気経路16の排気口である。ここで、扉に関し、図1、図2では両開き式の扉、図3では片開き式の扉を示しているが、扉の形式は適宜であり、引き戸式の扉とすることもできる。また差圧ダンパーに関し、図3では間仕切壁2a,2bの夫々の差圧ダンパー18a,18bを、平面位置の同じ位置に設けているが、図1に示すように反対側の位置に設けて、ジグザグ状の空気流通が行われるような配置とすることもできる。また夫々の間仕切壁2a,2bに設置する差圧ダンパー18a,18bの個数も適宜である。尚、居室用箱体1を可搬式とする構成は後述する。」 オ 「【0034】 この際、扉10が開いていない状態においては、医療スタッフ室3内の空気は差圧ダンパ18aを介して対処室5内に流れ、対処室5内は医療スタッフ室3内に対して陰圧に維持される。 【0035】 以上のことから本発明の可搬式感染症対策室装置では、医療スタッフが待機する医療スタッフ室3に対しての対処室5内の空気の侵入を確実に防止することができると共に、医療スタッフが出入りして患者の診察、治療等の対処を行う対処室5に対しては、患者待機室4内の空気の侵入を確実に防止することができるので、これらの空気に含まれる感染症原因物質による感染を確実に防止することができる。 【0036】 そして本発明の可搬式感染症対策室装置は、可搬式として所望の場所まで移動又は運搬が可能であるので、病院の通常の外来や病棟と離れた場所、例えば病院等の駐車場や、駅頭や、繁華街等に駐車させて、感染症用の外来、いわば発熱外来として利用することにより、高熱を伴うインフルエンザの患者が、病院の通常の外来にて、診察、治療等が行われることによる、医療スタッフ、他の患者、そして入院患者への二次感染の確実な防止を図ることができる。」 カ また、以下の図面が示されている。 【図2】 [図:0001384126000001.jpg] 【図3】 [図:0001384126000002.jpg] (1b)認定事項 段落【0026】の「符号21は給気ユニット15の外気取入口」との記載から、医療スタッフ室3に外気取入口21を有する給気ユニット15を設けることが理解できる。 (1c)引用文献1に記載された発明 上記(1a)、(1b)から、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。 <引用発明> 「可搬式の居室用箱体1の内部空間を間仕切壁2a、2bで仕切って、一端側に医療スタッフ室3、他端側に患者待機室4を設けると共に、中間側に対処室5を構成し、医療スタッフ室3と患者待機室4の夫々に箱体外との扉6、7付き出入口8、9を設けると共に、医療スタッフ室3と対処室5及び対処室5と患者待機室4との間に扉10、11付き出入口12、13を設け、患者待機室4にフィルタを備えた室内空気の排気ユニット14を設けると共に、医療スタッフ室3に外気取入口21を有する給気ユニット15を設ける可搬式感染症対策室装置。」 (2)引用文献2に記載された事項等 (2a)引用文献2の記載事項 ア 6頁9欄31~37行 「1(コンテナ本体) 上述したエネルギー自給型診療所システムにおいては、例えば20フィートの海上輪送用の箱型状のコンテナ本体(例えばW6.1m×D2.5m×H2.8m)を使用し、医療機器、器材、ソーラーシステム、給電給水システム、トイレシステム及び通信システム等を各々組み込んだものである。」 (2b)引用文献2に記載された事項 上記(2a)の記載事項から、引用文献2には次の事項が記載されていると認められる(以下「引用文献2に記載された事項」という。)。 「エネルギー自給型診療所システムのコンテナ本体において、トイレを備えること。」 3 当審の判断 3-1 取消理由1について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明とを対比すると、 (ア)後者の「可搬式の居室用箱体1」は、前者の「コンテナ」に相当する。 後者の「可搬式感染症対策室装置」に設けられた「対処室」は、感染症の患者を診療する室といえるところ、後者の「可搬式の居室用箱体1の内部空間を間仕切壁2a、2bで仕切って、一端側に医療スタッフ室3、他端側に患者待機室4を設けると共に、中間側に対処室5を構成し」との事項、及び【図2】等から、「可搬式の居室用箱体1」の内部に設けられていることは明らかであるから、前者の「コンテナの内部に設けられ医療従事者が感染症の患者を診療する診療室」に相当する。 (イ)後者の「医療スタッフ室3」及び「患者待機室4」の各々は、後者の「医療スタッフ室3と対処室5及び対処室5と患者待機室4との間に扉付き出入口12、13を設け」との事項から、「可搬式の居室用箱体1」の内部に設けられ「対処室」との間に「扉付き出入口12」及び「扉付き出入口13」を介して仕切られていることは明らかであるから、前者の「前記コンテナの内部に設けられ前記診療室との間に扉を介して仕切られる前室」に相当する。 (ウ)後者の「対処室5と患者待機室4との間に」「設け」られた「扉付き出入口13」は、「対処室5」に対して患者が入室するための扉であることは明らかであるから、前者の「前記診療室に対して」「前記患者」「が入室する診療室扉」に相当する。 また、後者の「医療スタッフ室3と対処室5」「との間に」「設け」られた「扉付き出入口12」は、「対処室5」に対して医療スタッフが入室するための扉であることは明らかであるから、前者の「前記診療室に対して前記医療従事者」「が入室する診療室扉」に相当する。 (エ)後者の「医療スタッフ室3」に「設け」られた「扉付き出入口8」は、前者の「前記前室に対して前記医療従事者」「が入室する」「前室扉」に相当する。さらに、引用文献1の段落【0009】の「医療スタッフに対しての感染症の感染を確実に防ぐ」との課題、及び【図2】に示された「扉付き出入口8」、「扉付き出入口13」、及び「医療スタッフ室3」の配置から、後者の「扉付き出入口8」は、「扉付き出入口13」から入室する「患者」の動線と、「医療スタッフ室3」に入室する「医療スタッフ」の動線とが異なるように設けられていることは明らかであるところ、かかる「患者」の動線は前者の「一方の動線」に相当し、かかる「医療スタッフ」の動線は前者の「他方の動線」に相当しているから、後者の「医療スタッフ室3」に「設け」られた「扉付き出入口8」は、前者の「前記前室に対して前記医療従事者」「が入室するとともに、前記診療室扉から入室する前記一方の動線と当該前室に入室する当該他方の動線とが異なるように設けられる前室扉」に相当する。 また、後者の「患者待機室4」に「設け」られた「扉付き出入口9」は、前者の「前記前室に対して」「前記患者」「が入室する」「前室扉」に相当する。さらに、【図2】に示された「扉付き出入口9」、「扉付き出入口12」、及び「患者待機室4」の配置から、後者の「扉付き出入口9」は、「扉付き出入口12」から入室する「医療スタッフ」の動線と、「患者待機室4」に入室する「患者」の動線とが異なるように設けられていることは明らかであるところ、かかる「医療スタッフ」の動線は前者の「一方の動線」に相当し、かかる「患者」の動線は前者の「他方の動線」に相当しているから、後者の「患者待機室4」に「設け」られた「扉付き出入口9」は、前者の「前記前室に対して」「前記患者」「が入室するとともに、前記診療室扉から入室する前記一方の動線と当該前室に入室する当該他方の動線とが異なるように設けられる前室扉」に相当する。 (オ)後者の「可搬式の居室用箱体1の内部空間を間仕切壁2a、2bで仕切って、一端側に医療スタッフ室3、他端側に患者待機室4を設けると共に、中間側に対処室5を構成」する構造において、上記(イ)で述べたとおり、後者の「医療スタッフ室3」及び「患者待機室4」がそれぞれ前者の「前室」に相当するところ、【図2】を参照すると、「医療スタッフ室3」と「対処室5」との「間仕切り壁2a」から見て「可搬式の居室用箱体1」の一方の妻側面側に当該「医療スタッフ室3」が形成され他方の妻側面側に当該「対処室5」が形成されているといえる。 また、「患者待機室4」と「対処室5」との「間仕切り壁2b」から見て「可搬式の居室用箱体1」の一方の妻側面側に当該「患者待機室4」が形成され他方の妻側面側に当該「対処室5」が形成されているといえる。さらに、「可搬式の居室用箱体1」の内部の長手方向にて「医療スタッフ室3」、「患者待機室4」、及び「患者待機室4」とが区分されているから、後者の上記「可搬式の居室用箱体1の内部空間を間仕切壁2a、2bで仕切って、一端側に医療スタッフ室3、他端側に患者待機室4を設けると共に、中間側に対処室5を構成」する構造は、前者の「前記前室と前記診療室との仕切りから見て前記コンテナの一方の妻側面側に当該前室が形成され他方の妻側面側に当該診療室が形成されて、当該コンテナの内部の長手方向にて当該前室と当該診療室とが区分されている」ことに相当する。 (カ)後者の「医療スタッフ室3」は、引用文献1の段落【0009】の「医療スタッフに対しての感染症の感染を確実に防ぐ」との課題を踏まえると、医療スタッフの感染予防のために当該医療スタッフが使用する部屋であることは明らかである。 (キ)後者の「可搬式感染症対策室装置」は「可搬式の居室用箱体1」を備えるものであるから、前者の「医療用コンテナ」に相当する。 以上によれば、本件発明1と引用発明とは、 「コンテナの内部に設けられ医療従事者が感染症の患者を診療する診療室と、 前記コンテナの内部に設けられ前記診療室との間に扉を介して仕切られる前室と、 前記診療室に対して前記医療従事者および前記患者の何れか一方が入室する診療室扉と、 前記前室に対して前記医療従事者および前記患者の何れか他方が入室するとともに、前記診療室扉から入室する前記一方の動線と当該前室に入室する当該他方の動線とが異なるように設けられる前室扉と、を備え、 前記前室と前記診療室との仕切りから見て前記コンテナの一方の妻側面側に当該前室が形成され他方の妻側面側に当該診療室が形成されて、当該コンテナの内部の長手方向にて当該前室と当該診療室とが区分されている医療用コンテナ。」 の点で一致し、以下の相違点1、2で相違する。 <相違点1> 本件発明1は、「前記医療従事者側から前記患者側に向けて空気流が生じるように配置された陰圧設備」を備えるのに対し、 引用発明は、「患者待機室4に」「室内空気の排気ユニット14を設けると共に、医療スタッフ室3に外気の給気ユニット15を設け」る点。 <相違点2> 本件発明1は、「前記空気流を形成するための外気を取り込む吸気口が前記診療室の前記前室に近い側に形成される」のに対し、 引用発明は、そのような「吸気口」が「対処室5」に形成されていない点。 イ 判断 上記(ア)で述べたように、本件発明1と引用発明1とは、上記相違点1、2で実質的に相違するから、本件発明1は引用発明であるとはいえない。 (2)本件発明5について 本件発明5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、本件発明5は引用発明であるとはいえない。 3-2 取消理由2について 取消理由2(進歩性違反)の対象請求項2、4、6、7のうち請求項2は削除された。 また、請求項4、6、7は、訂正後の請求項1の記載を引用しているところ、上記訂正事項1により、訂正後の請求項1が対象請求項でない訂正前の請求項3の発明特定事項を全て含むものとなったので、取消理由2は解消された。 第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立人が主張する特許異議申立理由の概要 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。 [申立理由1] 本件発明4は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 [申立理由2] 本件発明1~5、7は、引用発明、及び甲第2号証に記載された事項に基いて、本件発明6は、引用発明、及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 なお、本件訂正により、特許請求の範囲の請求項2、3は削除された。 [申立理由3] 請求項3の記載には不備があるから、本件発明3は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 なお、本件訂正により、訂正前の請求項3の記載は訂正後の請求項1に含まれることになった。 2 当審の判断 (1)[申立理由1]について 上記「第4 3 3-1(1)ア 対比」で述べたように、本件発明1と引用発明1とは、上記相違点1、2で実質的に相違するものであるところ、本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、本件発明4は引用発明であるとはいえない。 (2)[申立理由2]について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明を対比すると、上記「第4 3 3-1(1)ア 対比」で述べた、一致点で一致し、相違点1、2で相違する。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点2を先に検討する。 引用発明は「医療スタッフ室3に外気取入口21を有する給気ユニット15を設ける」ものであるが、本件発明1の「診療室」に相当する「対処室5」に「外気取入口21」が形成されているものでない。甲第2号証(特開昭61-1768号公報には、2ページ右上欄7~9行には「各コンテナには、それぞれの用途に適合した専用の設備(医療機械、住居用器具など)を設ける」との記載、及び第14図等から、医療設備用コンテナにおいて、コンテナの内部の長手方向にて2室が区分されている点が開示されていると認められるが、上記相違点2に係る本件発明1の「前記空気流を形成するための外気を取り込む吸気口が前記診療室の前記前室に近い側に形成される」ことは開示されていない。また、相違点2に係る本件発明1の構成が技術常識若しくは周知技術であると認めるに足る証拠はないから、上記相違点2に係る本件発明1の構成が、当業者が必要に応じてなし得ることは認められない。 この点に関し、申立人は、令和3年11月18日付け意見書の3ページ11~17行において「甲1発明において、例えば構造の簡素化等の目的で差圧ダンパ18aを省略する必要が生じた場合等に、・・・吸気ユニット15(「給気ユニット15」の誤記)および外気吸気口12(「外気取入口21」の誤記)を対処室5における医療スタッフ室3に近い側に配置することは、居室用箱体1の仕様変更に伴って当業者が適宜なし得る設計的事項であり、当業者にとって格別困難なことではない」と主張している。 しかしながら、甲第1号証の段落【0033】には「一方、医療スタッフ室3には適宜のフィルタを経た清浄な外気が給気ユニット15により供給されていて、この医療スタッフ室3内の気圧は、対処室5内の気圧よりも高く維持されるので、医療スタッフが対処室5に対して出入りする際、対処室5側の出入口12の扉10を開いても、空気は医療スタッフ室3から対処室5へと流れるため、対処室5内の空気が医療スタッフ室3内に流入することを防ぐことができる。」と記載され、かつ、請求項1には「医療スタッフ室に外気の給気ユニットを設け」との構成が特定されていることに基づけば、引用発明は、対処室5内の空気が医療スタッフ室3内に流入することを防ぐために、医療スタッフ室3に外気取入口21を有する給気ユニット15を設けることが必要不可欠な構成といえる。そうすると、引用発明において、本件発明1の「診療室」に相当する引用発明の「対処室5」に「外気取入口21を有する給気ユニット15」を設ける動機付けがあるとはいえない。 また、引用発明において、「医療スタッフ室3」から「対処室5」へ「外気取入口21を有する給気ユニット15」を配置転換する契機となる証拠は示されていないから、上記相違点2に係る構成が、当業者が適宜なし得る設計的事項であるともいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (ウ)以上のとおり、上記相違点1を検討するまでもなく、上記相違点2に係る本件発明1の構成を容易想到といえるものでないから、本件発明1は、引用発明、及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者であれば容易に想到し得るたことであるとはいえない。 イ 本件発明4~7について 本件発明4~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明4~5、7は、引用発明、及び甲第2号証に記載された事項に基いて、本件発明6は、引用発明、及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者であれば容易に想到し得るたことであるとはいえない。 (3)[申立理由3]について ア 申立理由3の概要は、異議申立書の16ページ16~21行の記載内容、及び本件訂正により訂正前の請求項3の事項が訂正後に請求項1に含まれるようになったことを考慮に入れると、 訂正後の請求項1には、「前記空気流を形成するための外気を取り込む吸気口が前記診療室の前記前室に近い側に形成される」との記載がある。かかる記載では、「近い」という相対的な表現について、何を基準として「近い」とするのかが記載されていないから、診療室内のいかなる範囲、領域が「前記前室に近い側」であるのかを明確に特定することができず、本件発明1の技術的範囲が不明確となってる。 というものである。 イ 検討 本件発明1の「吸気口」は「前記空気流を形成するための」ものであって、「前記空気流」が「前記医療従事者側から前記患者側に向けて」「生じる」ものである。 そして、「前記診療室の前記前室に近い側」とは、「コンテナ内部の長手方向」において「診療室」の中心若しくは中心線を基準とすることは通常、明らかである。 そうすると、請求項1の「前記空気流を形成するための外気を取り込む吸気口が前記診療室の前記前室に近い側に形成される」との記載は、空気流が医療従事者側から患者側に向けて生じるように、コンテナ内部の長手方向における診療室の中心若しくは中心線を基準として近くに形成されることが明らかであるから、本件発明1の技術的範囲は明確である。。 (4)小括 以上のとおり、申立人の主張する[申立理由1]~[申立理由3]により本件請求項1、4~7に係る特許を取り消すことができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、4~7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、4~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項2、3に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項2、3に係る申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項にで準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700468

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