特許異議申立
2018-700322
繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体及び繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体の製造方法
- 審判番号
- 2018-700322
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-097682外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年04月17日
- 審決日
- 2018年07月23日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】石川県
- 【権利者代理人】宮田 正道
- 【権利者代理人】宮田 誠心
- 【異議申立人】特許業務法人 朝日奈特許事務所
- 分類
- P1651.121-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6212764号発明「繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体及び繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6212764号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第6212764号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成28年5月16日の出願であって、平成29年9月29日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成30年4月17日に、その特許に対し、特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成30年5月7日に手続補正書が提出されたものである。
2.本件特許発明
本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1~6」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
芯材と、この芯材の両面に設けられた表皮材とを有する繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体であって、
前記芯材は不連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料であり、
前記表皮材は連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料であり、
一方の表皮材及び芯材は、面同士が接合されており、
他方の表皮材及び芯材は、点又は線状に接合されていることを特徴とする繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体。
【請求項2】
前記芯材は、前記一方の表皮材と接合されているベース部と、このベース部から立ち上がる立設部とを有しており、
ベース部は、立設部が立ち上がる面と反対側の面が前記一方の表皮材の面と接合されており、
立設部は、その先端が前記他方の表皮材と接合されていることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体。
【請求項3】
不連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料である芯材と、この芯材の両面に設けられた連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料である表皮材とを有する繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体の製造方法であって、
一方の表皮材に対して前記芯材の立設部が立ち上がるように、芯材となる材料及び一方の表皮材となる材料を成形して前記芯材と前記一方の表皮材とを一体化する一体化成形工程と、
他方の表皮材と、前記芯材及び前記一方の表皮材が一体となったものとを接合する接合工程とを有することを特徴とする繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体の製造方法。
【請求項4】
一体化成形工程において、前記一方の表皮材と前記芯材とを一体化すると同時に、前記一方の表皮材となる材料を任意の形状となるように賦形することを特徴とする請求項3に記載の繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体の製造方法。
【請求項5】
前記接合工程の前に、他方の表皮材となる材料を任意の形状となるように賦形する賦形工程をさらに有することを特徴とする請求項3又は4に記載の繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体の製造方法。
【請求項6】
前記一体化成形工程の後に、前記立設部に囲まれた空間に吸音材を充填する充填工程をさらに有することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体の製造方法。」
3.申立理由の概要
申立人は、甲第1号証~甲第5号証(以下「甲1」~「甲5」という。)を提出し、以下の理由を申立てている。
(1)本件発明1~4は、甲1に記載された発明、及び甲2又は甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、
本件発明5及び6は、甲1に記載された発明、並びに甲2又は甲3に記載された事項及び甲4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、
本件発明1~6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)本件発明1~4は、甲2に記載された発明、及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、
本件発明5及び6は、甲2に記載された発明、並びに甲1に記載された事項及び甲4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、
本件発明1~6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)本件発明1は、甲3に記載された発明、及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
甲1:特開2013-184630号公報
甲2:特開平4-259515号公報
甲3:特許第3035409号公報
甲4:特開2013-97345号公報
甲5:「パイロフィルペレット:炭素繊維強化熱可塑性樹脂」、[online]、株式会社富士経済ネットワークス、インターネット<http://www.enplanet.com/Company/00000036/Ja/Data/p004.html>
4.当審の判断
(1)本件発明1について
ア.本件発明1は、「芯材の両面に、繊維強化樹脂複合材料の表皮材を設けた繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体」(本件明細書の【0002】)について、従来、芯材が繊維強化樹脂複合材料ではない場合や熱硬化性樹脂のマトリックスからなる場合には、芯材と表皮材は接着剤を使用して接合しなければならず、製造効率の低下やリサイクル性が悪いという問題があり(同【0005】~【0008】)、「芯材が例えばハニカム構造である場合、表皮材との接触面積が小さくならざるを得」ず、そのため、「芯材との表皮材とが接合されている部分の接合力に限界」があり、「繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体の用途が限定」されており(同【0009】)、また、「芯材、一方の表皮材及び他方の表皮材をそれぞれ別個に成形した上で、芯材に一方の表皮材及び他方の表皮材を接合させると、その接合工程において、芯材と一方の表皮材、及び、芯材と他方の表皮材の2箇所での接合が必要となり、繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体の寸法精度向上に限界があるという問題もあった」(同【0010】)ことからなされたものである。
そして、本件発明1の「繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体」により、「芯材及び表皮材が共に熱可塑性樹脂複合材料であることによって、熱可塑性樹脂複合材料のマトリックス同士を溶着接合し、接着剤を使用することなく芯材及び表皮材を一体化することができ」(同【0013】)、「芯材及び表皮材が共に熱可塑性樹脂複合材料であることによって、繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体に接着剤などの異種材料が含まれることがないので、リサイクル性が向上」し(同【0014】)、「一方の表皮材及び芯材は、面同士が接合されていることで、芯材との表皮材とが接合されている部分の接合力を向上させることができる。そのため、繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体の用途を拡大することができる」(同【0015】)ものである。
イ.一方、甲1には「横断面が底部両側にフランジ部を備えたハット形の熱可塑性樹脂成形品にシート状繊維強化樹脂成形体を貼り付けたビーム成形品であって、熱可塑性樹脂成形品がリブを有すること」が、
甲2には「繊維強化プラスチック構造体において、強度特性に優れた補強体と、流動性に優れた熱可塑性成形材料を組み合わせ、補強体が一方向に引き揃えて配列した繊維または織布に熱可塑性樹脂を含浸させて得られた積層板であり、熱可塑性成形材料が長さ0.1~100mmの繊維状補強材を含有するものであること」が、
甲3には「可撓性を有する炭素繊維複合材料板の表面に炭素繊維強化ポリカーボネート樹脂(三菱レイヨン社製パイロフィルペレットPC-C-20)を射出成形して、結合一体化せしめること」が、
それぞれ記載されているものの、いずれにも、本件発明1の、「不連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料」からなる「芯材」と、「連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料」からなる「表皮材」が、「点又は線状に接合されていること」が、記載も示唆もされていない。
ウ.この点について、申立人は、甲1には、熱可塑性樹脂成形品がリブを有してもよく(請求項5)、横断面が底部両側にフランジ部を備えたハット形の熱可塑性樹脂成形品において、その天面および底部の全面に、シート状繊維強化樹脂成形体が貼り付けられ(請求項1)、その際、シート状繊維強化樹脂成形体は、フランジ部の車体後側の面の全面に貼り付けられてもよい(【0019】)とされることから、「リブを有した熱可塑性樹脂成形品の底部(フランジ部)の車体後側の全面に貼り付けられた状態」は、本件発明1の「他方の表皮材及び芯材は、点又は線状に接合されている」ことに相当する旨主張する。(特許異議申立書29頁「<構成要件1Fについて>」)
しかし、甲1の【0019】の記載は、熱可塑性樹脂成形品のフランジ部11の車体後側へのシート状繊維強化樹脂成形体の貼り付けを示唆するものであって、リブの車体後側への貼り付けを示唆する記載ではなく、甲1に、「他方の表皮材及び芯材は、点又は線状に接合されている」ことが記載されているものとはいえない。
エ.そして、本件発明1は、「不連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料」からなる「芯材」と、「連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料」からなる「表皮材」を、「点又は線状に接合されていること」により、上記ア.で述べたように、「芯材及び表皮材が共に熱可塑性樹脂複合材料であること」で、「熱可塑性樹脂複合材料のマトリックス同士を溶着接合し、接着剤を使用することなく芯材及び表皮材を一体化することができ」、「繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体に接着剤などの異種材料が含まれることがないので、リサイクル性が向上」する「繊維強化樹脂製サンドイッチ構造体」を得ることができるものである。
オ.よって、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び甲2又は甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2に記載された発明、及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲3に記載された発明、及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、本件発明1は特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記(1)のように、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び甲2又は甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2に記載された発明、及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2についても、甲1に記載された発明、及び甲2又は甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2に記載された発明、及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明2は特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
(3)本件発明3について
ア.甲1及び甲2のいずれにも、本件発明3の「他方の表皮材と、前記芯材及び前記一方の表皮材が一体となったものとを接合する接合工程」について、記載も示唆もされていない。
イ.この点について、申立人は、「実施例で得られた構造体にさらに補強するために、他方の面にも補強材を設けることは設計的事項である」旨主張する。(特許異議申立書47頁「<構成要件3Cについて>」)
しかし、構造体の補強のために補強材を設けることまでは設計的事項であるとしても、表皮材と一体化された芯材の立設部に対して、あえて補強材を設けることまでは設計的事項であるとはいえず、むしろ、補強のためには他の平坦な安定して取り付けができる箇所に、補強材を設けようとするはずであり、甲1のリブ、あるいは甲2の補強用リブに、さらに補強材を設ける動機付けがあるとはいえない。
ウ.よって、本件発明3は、甲1に記載された発明、及び甲2又は甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2に記載された発明、及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、本件発明3は特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
(4)本件発明4~6について
本件発明4~6は、本件発明3の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記(3)のように、本件発明3は、甲1に記載された発明、及び甲2又は甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2に記載された発明、及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明4についても、甲1に記載された発明、及び甲2又は甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2に記載された発明、及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
同様に、本件発明5及び6についても、甲1に記載された発明、並びに甲2又は甲3に記載された事項及び甲4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2に記載された発明、並びに甲1に記載された事項及び甲4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものもない。
よって、本件発明4~6は特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明4~6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
(5)むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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