特許異議申立
2018-700263
リチウム複合金属酸化物の製造方法
- 審判番号
- 2018-700263
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-525686
- 登録番号
- 特許第6202205号(P6202205)
- 請求日
- 2018年03月27日
- 審決日
- 2019年03月07日
- 公報発行日
- 2019年07月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社豊田自動織機
- 【権利者代理人】特許業務法人 共立
- 【異議申立人】津田 裕
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 賢一
- 審判官 菊地 則義
- 審判官 豊永 茂弘
- 分類
- P1652.537-ZDA(C01G) / P1652.113-ZDA(C01G) / P1652.121-ZDA(C01G) / P1652.851-ZDA(C01G) / P1652.857-ZDA(C01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6202205号発明「リチウム複合金属酸化物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6202205号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20について訂正することを認める。
特許第6202205号の請求項7に係る特許を取り消す。
同請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第6202205号の請求項1~11に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)5月29日(優先権主張 平成26年6月4日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年9月8日にその特許権の設定登録がされ、平成29年9月27日に特許掲載公報が発行されたものである。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年
3月27日付け :特許異議申立人津田裕による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て(甲第1~12号証)
5月15日付け :取消理由通知書
7月 6日付け :特許権者による意見書及び訂正請求書(平成30年7月20日付けの手続補正書(方式)あり)の提出
8月29日付け :特許異議申立人津田裕による意見書(参考文献1~4)の提出
10月11日付け :取消理由通知書(決定の予告)
そして、10月11日付けの取消理由通知書(決定の予告)に対する特許権者からの応答は無かったものである。
(証拠方法)
甲第1号証: 特開2005-44801号公報
甲第2号証: 国際公開第2011/049185号
甲第3号証: 特開2012-109190号公報
甲第4号証: 特開2012-109191号公報
甲第5号証: 特開2011-116580号公報
甲第6号証: 特開2014-40363号公報
甲第7号証: 特表2013-517599号公報
甲第8号証: 特開平9-293506号公報
甲第9号証: 特開平8-22826号公報
甲第10号証:特開2012-254889号公報
甲第11号証:国際公開第2009/099156号
甲第12号証:特開2010-15959号公報
参考文献1: 特開2014-63669号公報
参考文献2: 特開2012-28313号公報
参考文献3: 特開2011-187174号公報
参考文献4: 国際公開第2013/073633号
第2 訂正請求について
1.訂正請求の趣旨
平成30年7月6日付けの訂正請求は、平成30年7月20日付け手続補正書(方式)の内容も踏まえると、訂正事項1~15に基づき、訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~4、5、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20について訂正(以下、「本件訂正」という。)することを求めるものである。
2.訂正の適否
(1)訂正の内容について
以下の訂正事項1~15のとおりである。
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項11における
「請求項1~10のいずれかに記載の製造方法で製造されたリチウム複合金属酸化物を」
との記載を、
「ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500~700℃で10~30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750~1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法で製造されたリチウム複合金属酸化物を」
と訂正する。
訂正事項2
特許請求の範囲に請求項12を以下のとおり追加する。
「【請求項12】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を550~650℃で11~25時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750~1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法で製造されたリチウム複合金属酸化物を集電体に塗布する工程を含む、前記リチウム複合金属酸化物を活物質として具備するリチウムイオン二次電池の製造方法。」
訂正事項3
特許請求の範囲に請求項13を以下のとおり追加する。
「【請求項13】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500~700℃で10~30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を800~870℃で5~15時間加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法で製造されたリチウム複合金属酸化物を集電体に塗布する工程を含む、前記リチウム複合金属酸化物を活物質として具備するリチウムイオン二次電池の製造方法。」
訂正事項4
特許請求の範囲に請求項14を以下のとおり追加する。
「【請求項14】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む水溶液と塩基性水溶液を40~70℃で混合してニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を製造する複合金属水酸化物製造工程、
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500~700℃で10~30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750~1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法で製造されたリチウム複合金属酸化物を集電体に塗布する工程を含む、前記リチウム複合金属酸化物を活物質として具備するリチウムイオン二次電池の製造方法。」
訂正事項5
特許請求の範囲に請求項15を以下のとおり追加する。
「【請求項15】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500~700℃で10~30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750~1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2~9の範囲内である一次粒子を50%(個数)以上含有し、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法で製造されたリチウム複合金属酸化物を集電体に塗布する工程を含む、前記リチウム複合金属酸化物を活物質として具備するリチウムイオン二次電池の製造方法。」
訂正事項6
特許請求の範囲に請求項16を以下のとおり追加する。
「【請求項16】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500~700℃で10~30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750~1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が5~9の範囲内である一次粒子を含有し、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法で製造されたリチウム複合金属酸化物を集電体に塗布する工程を含む、前記リチウム複合金属酸化物を活物質として具備するリチウムイオン二次電池の製造方法。」
訂正事項7
特許請求の範囲に請求項17を以下のとおり追加する。
「【請求項17】
ニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む水溶液と塩基性水溶液を混合して、pHが10.2~10.7及び55~65℃の条件でニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む複合金属水酸化物を製造する複合金属水酸化物製造工程、
前記複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を加熱して焼成体とする焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndZreDfOg(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法で製造されたリチウム複合金属酸化物を集電体に塗布する工程を含む、前記リチウム複合金属酸化物を活物質として具備するリチウムイオン二次電池の製造方法。」
訂正事項8
特許請求の範囲に請求項18を以下のとおり追加する。
「【請求項18】
ニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む水溶液と塩基性水溶液を混合して、pH10~11及び40~70℃の条件でニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む複合金属水酸化物を製造する複合金属水酸化物製造工程、
前記複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を加熱して焼成体とする焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndZreDfOg(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法であって、
前記焼成工程が、
前記混合物を500~700℃で10~30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を水に分散させる分散液調製工程、
ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液と、前記分散液を混合し、前記第1焼成体の表面にジルコニウムを析出させるジルコニウム析出工程、
前記ジルコニウム析出工程を経た第1焼成体を750~1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、を含むリチウム複合金属酸化物の製造方法で製造されたリチウム複合金属酸化物を集電体に塗布する工程を含む、前記リチウム複合金属酸化物を活物質として具備するリチウムイオン二次電池の製造方法。」
訂正事項9
特許請求の範囲に請求項19を以下のとおり追加する。
「【請求項19】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500~700℃で加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を水に分散させる分散液調製工程、
ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液と、前記分散液を混合し、前記第1焼成体の表面にジルコニウムを析出させるジルコニウム析出工程、
前記ジルコニウム析出工程を経た第1焼成体を加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndZreDfOg(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法で製造されたリチウム複合金属酸化物を集電体に塗布する工程を含む、前記リチウム複合金属酸化物を活物質として具備するリチウムイオン二次電池の製造方法。」
訂正事項10
特許請求の範囲に請求項20を以下のとおり追加する。
「【請求項20】
一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表される層状岩塩構造の材料を水に分散させる分散液調製工程、
ヒドロキシカルボン酸含有ジルコニウム水溶液と、前記分散液を混合し、塩基性水溶液を添加して、前記材料の表面にジルコニウムを析出させるジルコニウム析出工程、
前記ジルコニウム析出工程を経た材料を加熱して焼成体とする焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndZreDfOg(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法で製造されたリチウム複合金属酸化物を集電体に塗布する工程を含む、前記リチウム複合金属酸化物を活物質として具備するリチウムイオン二次電池の製造方法。」
訂正事項11
特許請求の範囲の請求項1に
「500~700℃で10~30時間加熱して」
とあるのを、
「600~650℃で11~25時間加熱して」
と訂正し、一般式中のbについて
「0<b<1」
とあるのを、
「0<b<0.7」
と訂正する。
訂正事項12
特許請求の範囲の請求項2に
「前記第1焼成工程の温度が550~650℃であり、加熱時間が11~25時間である請求項1に記載の」
とあるのを、
「ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を550~650℃で11~25時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750~1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0.5≦b<0.7、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表される」
と訂正する。
訂正事項13
特許請求の範囲の請求項5に
「前記リチウム複合金属酸化物が、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2~9の範囲内である一次粒子を50%(個数)以上含有する請求項1~4のいずれかに記載のリチウム複合金属酸化物の」
とあるのを、
「ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500~700℃で10~30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750~875℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法であって、
前記リチウム複合金属酸化物が、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2~9の範囲内である一次粒子を50%(個数)以上含有する、」
と訂正する。
訂正事項14
特許請求の範囲の請求項6に
「前記リチウム複合金属酸化物が、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が5~9の範囲内である一次粒子を含有する請求項1~5のいずれかに記載のリチウム複合金属酸化物の」
とあるのを、
「ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500~700℃で10~30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750~875℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法であって、
前記リチウム複合金属酸化物が、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が5~9の範囲内である一次粒子を含有する、」
と訂正する。
訂正事項15
特許請求の範囲の請求項7における
「焼成工程、
を含む、一般式」
とあるのを、
「焼成工程、
を含み、
前記複合金属水酸化物製造工程において、反応溶液のpHを10.2~10.7の範囲内に保つことを特徴とする、一般式」
と訂正する。
(2)訂正の目的について
訂正事項1~10は、何れも訂正前の請求項11についての引用関係を解消して独立形式としたものであって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的にするものである。
訂正事項11は、数値範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
訂正事項12~14は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとした上で、数値範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
訂正事項15は、新たな構成要件を付加して発明を技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
以上のことから、訂正事項1~15に係る訂正の目的は適法である。
(3)新規事項追加の有無について
訂正事項1~10は、明らかに新規事項の追加に該当しない。
訂正事項11~14に係る数値範囲の限定は、いずれも数値範囲をより狭い数値範囲に減縮するものである。そして、この限定による発明の効果の変更や追加は認められないから、この限定は新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項15は、本件特許明細書【0061】の以下の記載事項に基づくものであると認められる。
「複合金属水酸化物製造工程のpHは10.2~10.7の範囲内が好ましい。複合金属水酸化物製造工程においては、反応溶液を一定のpHに保つことが好ましい。反応溶液を一定のpHに保つために、他の塩基性水溶液を準備して、複合金属水酸化物製造工程の反応溶液に適宜添加することが好ましい。」
よって、新たな技術的事項は導入されておらず、新規事項の追加に該当しない。
以上、訂正事項1~15は、いずれも新規事項の追加に該当しない。
(4)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1~15は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)一群の請求項について
訂正前の請求項11は請求項1~10の何れかを引用することから、訂正事項1~15に係る訂正前の請求項1~11は一群の請求項を構成する関係にあったものであるが、訂正後の請求項〔1~4〕、5、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20のそれぞれについては、それぞれの請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することが求められている。
(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕、5、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20について訂正することを認める。
第3 訂正後の特許請求の範囲
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~7は、以下のとおりである(下線は、特許請求の範囲の減縮に係る訂正について、当審で付与したものである)。
以下、訂正後の請求項1~7に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」という。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を600~650℃で11~25時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750~1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<0.7、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法。
【請求項2】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を550~650℃で11~25時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750~1000℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0.5≦b<0.7、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記第2焼成工程の温度が800~870℃であり、加熱時間が5~15時間である請求項1又は2に記載のリチウム複合金属酸化物の製造方法。
【請求項4】
前記前駆体製造工程の前に、
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む水溶液と塩基性水溶液を40~70℃で混合してニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を製造する複合金属水酸化物製造工程、を含む請求項1~3のいずれかに記載のリチウム複合金属酸化物の製造方法。
【請求項5】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500~700℃で10~30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750~875℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法であって、
前記リチウム複合金属酸化物が、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2~9の範囲内である一次粒子を50%(個数)以上含有する、製造方法。
【請求項6】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を500~700℃で10~30時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程、
前記第1焼成体を750~875℃で加熱して第2焼成体とする第2焼成工程、
を含む、一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法であって、
前記リチウム複合金属酸化物が、(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が5~9の範囲内である一次粒子を含有する、製造方法。
【請求項7】
ニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む水溶液と塩基性水溶液を混合して、pHが10.2~10.7及び55~65℃の条件でニッケル、コバルト、マンガン及びジルコニウムを含む複合金属水酸化物を製造する複合金属水酸化物製造工程、
前記複合金属水酸化物を加熱して前駆体とする前駆体製造工程、
前記前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を加熱して焼成体とする焼成工程、
を含み、
前記複合金属水酸化物製造工程において、反応溶液のpHを10.2~10.7の範囲内に保つことを特徴とする、一般式:LiaNibCocMndZreDfOg(0.2≦a≦2、b+c+d+e+f=1、0<b<1、0<c<1、0<d<1、0<e<1、0≦f<1、DはFe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、La、Hf、Rfから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦g≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物の製造方法。」
第4 取消理由について
1.平成30年10月11日付け取消理由通知(決定の予告)について
当審において、本件特許発明7について、平成30年10月11日付けで「本件明細書【0072】等の記載からみて、第2焼成工程について特定のない本件特許発明7は、発明の詳細な説明に記載された発明ではないから、請求項7の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定の要件を満たしていないものである。
したがって、本件特許発明7に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。」
旨の取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項7に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
2.平成30年5月15日付け取消理由通知について
当審において、平成30年5月15日付けで通知した取消理由のうち、本件請求項1~6に係る理由の概要は、次のとおりである。
取消理由2-1(進歩性)
訂正前の本件請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された技術事項(周知技術)からみて、甲第1号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
取消理由2-2(進歩性)
訂正前の本件請求項1、3、4に係る発明は、甲第6号証又は甲第7号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
取消理由2-3(進歩性)
訂正前の本件請求項1~6に係る発明は、甲第8号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された技術事項(周知技術)からみて、甲第8号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
取消理由2-4(進歩性)
訂正前の本件請求項1、3~6に係る発明は、甲第5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第5 当審の判断
1.取消理由2-1について
(1)本件特許発明1について
甲第1号証には、【請求項7】、【0020】、【0021】の記載より、リチウム二次電池用正極活物質の合成について、以下の発明(以下、「甲1発明」という)が記載されていると認められる。
「ニッケル、コバルト及びマンガンを含む水酸化物を、リチウム包含化合物と混合した後、前記混合物を温度450乃至550℃で10時間乃至15時間1次熱処理した後、温度800℃乃至900℃で10時間乃至20時間2次熱処理する工程を含む工程により、 [化学式]LixNiyCozMn1-y-z-qXqO2(前記化学式で、1.05≦x、0<y<0.35、0<z<0.35であり、XはAl、 Mg、Sr、TiまたはLaであり、q<0.1である)からなるリチウム二次電池用正極活物質を合成する方法。」
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、以下の相違点1において相違する。
(相違点1)
本件特許発明1は「ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物」に対して、「150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程」に付し、「前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を600~650℃で11~25時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程」に付しているのに対して、甲1発明は前駆体製造に相当する工程を有さず、「リチウム包含化合物」との「混合物を温度450乃至550℃で10時間乃至15時間1次熱処理」している点。
相違点1について検討するに、特に、甲1発明の1次熱処理温度について、温度450乃至550℃を600乃至650℃に変更する動機付けとなるものは、甲第1~5号証の何れの記載からも見当たらない。甲第2~5号証に記載された技術事項(周知技術)は、リチウム複合金属酸化物の製造において、「ニッケル、コバルト及びマンガンを含む水酸化物を150~500℃の範囲内で乾燥する」等の技術事項に留まり、甲1発明の1次熱処理温度の変更を動機づけたり、示唆するものではない。
特許異議申立人津田裕は、8月29日付け意見書(7頁下から3行~12頁17行)において、本件特許発明1の第1焼成工程に関し、甲第9号証、甲第8号証、甲第5号証により、リチウム金属複合酸化物の製造において二段階焼成を行う場合に、第1段階の焼成を600乃至650℃で11~25時間の範囲と重複する範囲とすることが公知であるから、第1焼成工程は設計事項にすぎないことを主張する。しかし、相違点1に係る対比の前提となる甲1発明における第1次熱処理の温度条件は、甲第1号証の【0021】に「前記混合物を温度450乃至550℃で1次熱処理する。1次熱処理時間は熱処理温度によって適切に調節でき、前記温度範囲では10時間乃至15時間続けて実施するのが適当である。前記1次熱処理工程によってリチウム化合物がニッケル、コバルト及びマンガン包含化合物の内側に拡散する。」と記載されているように、製造しようとするリチウム金属複合酸化物との兼ね合いで適切に調節できる条件として選択されたものであるから、単に二段階焼成を行う場合に公知の条件であるとの理由だけでは、これを異なる温度範囲に変更する動機付けとはならない。
よって、甲1発明において相違点1を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(2)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の相違点2において相違する。
(相違点2)
本件特許発明2は「ニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物」に対して、「150~500℃の範囲内で加熱して前駆体とする前駆体製造工程」に付し、「一般式:LiaNibCocMndDeOf」におけるNiの組成比bを「0.5≦b<0.7」とした「リチウム複合金属酸化物」を製造しているのに対して、甲1発明は前駆体製造に相当する工程を有さず、「[化学式]LixNiyCozMn1-y-z-qXqO2」でNiの組成比yを「0<y<0.35」とした「リチウム二次電池用正極活物質」を製造している点。
相違点2について検討するに、特に、甲1発明のNiの組成比yを「0<y<0.35」から「0.5≦y<0.7」に変更する動機付けとなるものは、甲第1~5号証の何れの記載からも見当たらない。
特許異議申立人津田裕は、8月29日付け意見書(3頁下から3行~7頁下から5行)において、参考文献1~4を提示し、本件特許発明1のNiの組成比に関し、出願時の技術常識(参考文献1~3)、参考文献4に記載の技術、甲第2~5号証に記載される事項より、Niの組成比yを「0<y<0.7」とすることや「0.5≦y<0.7」とすることは設計事項にすぎないことを主張する。しかし、相違点2に係る対比の前提となる甲1発明におけるNiの組成比は、甲第1号証の【0016】に「本発明のリチウム二次電池用正極活物質は下記の化学式1で表示される化合物である。
[化学式1]
LixNiyCozMn1-y-z-qXqO2
(前記化学式で、1.05≦x、0<y<0.35、0<z<0.35であり、XはAl、 Mg、Sr、TiまたはLaであり、q<0.1である)」と記載されていて、Niの組成比yが「0<y<0.35」と特定されているのは明らかに他の成分(Li、Co、Mn等)との兼ね合いがあるといえるから、単にNiの組成比yを「0<y<0.7」とすることや「0.5≦y<0.7」とすることが広く知られているからとの理由だけでは、これを変更する動機付けがあるとはいえない。
よって、甲1発明において相違点2を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(3)本件特許発明3及び4について
本件特許発明3、4は、何れも本件特許発明1もしくは本件特許発明2の何れかの発明特定事項をすべて含むものであるから、甲1発明との対比において、少なくとも上記相違点1もしくは相違点2を有する発明である。
そして、甲1発明において相違点1もしくは相違点2を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(4)本件特許発明5について
本件特許発明5と甲1発明とを対比すると、以下の相違点3において相違する。
(相違点3)
リチウム複合金属酸化物の製造方法について、本件特許発明5は「第2焼成温度を750~875℃」とし「(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2~9の範囲内である一次粒子を50%(個数)以上含有する」ものを製造すると特定するのに対して、甲1発明では「温度800℃乃至900℃で10時間乃至20時間2次熱処理する」ことで得られたリチウム複合金属酸化物の形状について特定がない点。
相違点3について検討するに、甲第2号証の[図42]には、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有する水溶液と塩基性水溶液を混合して得られたニッケル、コバルト及びマンガンを含む複合金属水酸化物を乾燥し、リチウム化合物と混合、焼成して得られたリチウム複合金属酸化物が(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2~9の範囲内である複数の扁平な一次粒子を含むものが示されていると認められ、甲第5号証の【請求項8】及び【0109】や甲第12号証の図1、2には、複合水酸化物粒子が板状一次粒子が凝集して二次粒子を構成していることが記載されている。しかしながら、本件明細書【0039】【0045】~【0047】の記載から、相違点3に係る特定の一次粒子の要件を満たすか否かは、第2焼成工程の温度条件に少なくとも依存することが窺え、さらに【0209】の記載や本件特許発明5に係る実施例1(第2焼成温度850℃)と比較例1(第2焼成温度が900℃)との対比から、本件特許発明5の相違点3に係る要件を満たすかに際しては、焼成温度や焼成時間の微妙な差異が影響することも窺えるから、甲1発明の製造条件において、甲第2号証あるいは甲第5号証で得られたものと同様のものが得られているかについては不明であるし、ましてや「(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2~9の範囲内である一次粒子を50%(個数)以上含有する」ものが製造されているか、またはそのような製造物の得られることが予期できるかについては、なおさら不明である。
特許異議申立人津田裕は、8月29日付け意見書(14頁1行~18頁16行)において縷々述べているが、甲1発明の製造条件において、本件特許発明5と同様の粒子が得られていることを推認するに十分なものとはいえない。
よって、甲1発明において相違点3を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(5)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲1発明とを対比すると、以下の相違点4において相違する。
(相違点4)
リチウム複合金属酸化物の製造方法について、本件特許発明6は「第2焼成温度を750~875℃」とし「(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が5~9の範囲内である一次粒子を含有する」ものを製造すると特定するのに対して、甲1発明では「温度800℃乃至900℃で10時間乃至20時間2次熱処理する」ことで得られたリチウム複合金属酸化物の形状について特定がない点。
相違点4について検討するに、上記相違点3と同様のことがいえるから、甲1発明において相違点4を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(6)小括
以上のことから、本件特許発明1~6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された技術事項(周知技術)からみて、甲第1号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、取消理由2-1は理由がない。
2.取消理由2-2について
(1)本件特許発明1について
(ア)甲第6号証に記載された発明との対比・判断
甲第6号証の【0058】~【0062】の記載より、甲第6号証には、実施例1の正極活物質を得る方法として、以下の発明(以下、「甲6発明」という)が記載されていると認められる。
「硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガン混合水溶液に硫酸アンモニウム水溶液を加え、さらに反応溶液がpH11.6に保持されるように水酸化ナトリウム水溶液を加え、反応溶液温度を50℃で保持し、ニッケルコバルトマンガン複合金属水酸化物のコアを製造した後、混合液中の硫酸ニッケル濃度を減少させつつ硫酸アンモニウム水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を同様に加えてコアの周囲にニッケル濃度が徐々に減少するシェルが形成されたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を形成した後、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を棚段式温風乾燥機にて110℃の温風で12時間乾燥し、得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物と水酸化リチウムとをLi/Me(Ni,Co,Mnの合計)の原子比が1.11となるように混合し、700℃で10時間保持した後、800℃で10時間保持して、コアにおいてニッケルのMeに対する原子比が80mol%、シェルにおいてニッケルのMeに対する原子比が外側に向かって徐々に減少して最外縁で43mol%であるリチウム-ニッケルコバルトマンガン複合酸化物を得る方法。」
本件特許発明1と甲6発明とを対比すると、以下の相違点Aにおいて少なくとも相違する。
(相違点A)
本件特許発明1は、「150~500℃の範囲内で加熱」する「前駆体製造工程」に付し、「前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を600~650℃で11~25時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程」に付しているのに対して、甲6発明は、「110℃」で加熱する「前駆体製造工程」に付し、「700℃で10時間」の第1焼成工程に付している点。
相違点Aについて検討するに、甲6発明の第1焼成工程の条件、特に加熱時間について変更する動機付けとなるものは見当たらない。
特許異議申立人津田裕は、甲第6号証に加えて甲第2~5号証に記載された技術事項を挙げているが、甲第2~5号証に記載された技術事項(周知技術)は、リチウム複合金属酸化物の製造において、「ニッケル、コバルト及びマンガンを含む水酸化物を150~500℃の範囲内で乾燥する」等の技術事項に留まり、甲6発明の第1焼成工程の条件変更を動機づけたり、示唆するものではない。
よって、甲6発明において相違点Aを解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(イ)甲第7号証に記載された発明との対比・判断
甲第7号証の【0067】~【0072】の記載より、甲第7号証には、実施例の正極活物質粉末を得る方法として、以下の発明(以下、「甲7発明」という)が記載されていると認められる。
「硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンの混合割合を種々変化させた前駆体水溶液にアンモニア水溶液を加え、さらに、pHが11となるように水酸化ナトリウム溶液を加え、反応器内の温度を50℃に維持し、ニッケルマンガンコバルト複合水酸化物を得た後、110℃の温風乾燥機で12時間乾燥し、水酸化リチウムを混合して550℃で10時間熱処理を行った後、750℃で20時間焼成させて、内部コア層はLi(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O2として、外部シェル層はLi(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O2からLi(Ni0.4Co0.1Mn0.5)O2まで連続的な濃度勾配を有する正極活物質粉末を得る方法。」
本件特許発明1と甲7発明とを対比すると、以下の相違点Bにおいて少なくとも相違する。
(相違点B)
本件特許発明1は、「150~500℃の範囲内で加熱」する「前駆体製造工程」に付し、「前駆体及びリチウム塩を混合した混合物を600~650℃で11~25時間加熱して第1焼成体とする第1焼成工程」に付しているのに対して、甲7発明は、「110℃」で加熱する「前駆体製造工程」に付し、「550℃で10時間」の第1焼成工程に付している点。
相違点Bについて検討するに、甲7発明の第1焼成工程の条件、特に加熱時間について変更する動機付けとなるものは見当たらない。
特許異議申立人津田裕は、甲第6号証に加えて甲第2~5号証に記載された技術事項を挙げているが、上記相違点Aについて検討したと同様であり、甲7発明の第1焼成工程の条件変更を動機づけたり、示唆するものではない。
よって、甲7発明において相違点Bを解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(2)本件特許発明3及び4について
本件特許発明3、4のうち、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含むものについては、甲6発明との対比において少なくとも上記相違点Aを有し、甲7発明との対比において少なくとも上記相違点Bを有する発明である。
そして、甲6発明において相違点Aを解消することも、甲7発明において相違点Bを解消することも、当業者が容易になし得たことではない。
(3)小括
以上のことから、本件特許発明1、3、4は、甲第6号証に記載された発明又は甲第7号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、取消理由2-2は理由がない。
3.取消理由2-3について
(1)本件特許発明1について
甲第8号証の【請求項1】、【請求項2】の記載より、甲第8号証には、非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法として、以下の発明(以下、「甲8発明」という)が記載されていると認める。
「ニッケル塩として酸化ニッケルまたは水酸化ニッケルを用い、そのニッケルの一部をコバルト、マンガン、鉄、バナジウム、クロム、アルミニウム、マグネシウムそれぞれの塩で置換した化合物とリチウム塩を混合した混合物を2段階で焼成することにより合成する一般式LiNi1-YMYO2 (M=Co、Mn、Fe、V、Cr、Al、Mgから選ばれる少なくとも1つの元素:0<Y≦0.25)で表わされる正極活物質の製造方法であって、第1段目の焼成を590~690℃で2~20時間行ない、第2段目の焼成を700~850℃で0.25~30時間行なう方法。」
本件特許発明1と甲8発明とを対比すると、以下の相違点8において少なくとも相違する。
(相違点8)
本件特許発明1は「一般式:LiaNibCocMndDeOf」におけるNiの組成比bを「0<b<0.7」とした「リチウム複合金属酸化物」を製造しているのに対して、甲8発明は「一般式LiNi1-YMYO2 (M=Co、Mn、Fe、V、Cr、Al、Mgから選ばれる少なくとも1つの元素:0<Y≦0.25)で表わされる正極活物質」を製造している点。
相違点8について検討するに、特に、甲8発明のNiの組成比(1-Y)については「0<Y≦0.25」であることから「0.75≦(1-Y)<1」となるが、これを「0<(1-Y)<0.7」に変更する動機付けとなるものは、甲第8号証及び甲2~5号証の何れの記載からも見当たらない。
特許異議申立人津田裕は、8月29日付け意見書(3頁下から3行~7頁下から5行)において、Niの組成比については設計変更と主張する。しかし、甲第8号証には、【0009】に「一般式中のYは0.25以下であることが必要であり、Yが0.25を超えると従来と同程度の放電容量しか得られない。」と記載されているから、組成比の変更には阻害要因があり、該主張は採用できない。
よって、甲8発明において相違点8を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、Niの組成比bを「0.5≦b<0.7」とした「リチウム複合金属酸化物」に係るものであるから、甲8発明と対比すると、上記相違点8と同様の相違点があり、当該相違点を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(3)本件特許発明3及び4について
本件特許発明3、4は、何れも本件特許発明1もしくは本件特許発明2の何れかの発明特定事項をすべて含むものであるから、甲8発明との対比において、少なくとも上記(1)もしくは(2)で述べたと同じ相違点を有する発明であり、当該相違点を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(4)本件特許発明5について
本件特許発明5と甲8発明とを対比すると、以下の相違点3’において相違する。
(相違点3’)
リチウム複合金属酸化物の製造方法について、本件特許発明5は「第2焼成温度を750~875℃」とし「(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2~9の範囲内である一次粒子を50%(個数)以上含有する」ものを製造すると特定するのに対して、甲8発明では「第2段目の焼成を700~850℃で0.25~30時間行なう」ことで得られたリチウム複合金属酸化物の形状について特定がない点。
相違点3’について検討するに、上記取消理由2-1で検討した相違点3と同様に、相違点3’に係る特定の一次粒子の要件を満たすか否かは、第2焼成工程における焼成温度や焼成時間の微妙な差異が影響すること等が窺えるから、甲8発明の製造条件において、甲第2号証あるいは甲第5号証で得られたものと同様のものが得られているかについては不明であるし、ましてや「(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2~9の範囲内である一次粒子を50%(個数)以上含有する」ものが製造されているか、またはそのような製造物の得られることが予期できるかについては、なおさら不明である。
よって、甲8発明において相違点3’を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(5)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲8発明とを対比すると、以下の相違点4’において相違する。
(相違点4’)
リチウム複合金属酸化物の製造方法について、本件特許発明6は「第2焼成温度を750~875℃」とし「(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が5~9の範囲内である一次粒子を含有する」ものを製造すると特定するのに対して、甲8発明では「第2段目の焼成を700~850℃で0.25~30時間行なう」ことで得られたリチウム複合金属酸化物の形状について特定がない点。
相違点4’について検討するに、上記相違点3’と同様のことがいえるから、甲8発明において相違点4’を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(6)小括
以上のことから、本件特許発明1~6は、甲第8号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された技術事項(周知技術)からみて、甲第8号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、取消理由2-3は理由がない。
4.取消理由2-4について
(1)本件特許発明1について
甲第5号証の【0104】~【0110】の記載より、甲第5号証には、実施例1の正極活物質の製造方法として、以下の発明(以下、「甲5発明」という)が記載されていると認める。
「槽内温度を40℃に設定した反応槽に、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸ジルコニウム、タングステン酸ナトリウムを含む混合水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及び25%アンモニア水を加えて、液温25℃を基準として測定するpH値として槽内の反応液のpHを12.6に制御しながら核生成を行い、その後、液温25℃を基準として測定するpH値として槽内の反応液のpH値を11.6に制御しながら粒子成長を行うことにより、Ni0.33Co0.33Mn0.33Zr0.005W0.005(OH)2+α(0≦α≦0.5)で表される複合水酸化物粒子を得た後、得られた複合水酸化物粒子を150℃で12時間の熱処理をした後、炭酸リチウムと混合して混合物を形成し、混合物を760℃で4時間仮焼した後、950℃で10時間焼成し、Li1.146Ni0.33Co0.33Mn0.33Zr0.005W0.005O2である正極活物質を得るリチウム複合金属酸化物の製造方法。」
本件特許発明1と甲5発明とを対比すると、以下の相違点1’において相違する。
(相違点1’)
本件特許発明1は「第1焼成工程」の加熱温度及び時間について「600~650℃で11~25時間」とするのに対して、甲5発明は「760℃で4時間仮焼」とする点。
相違点1’について検討するに、特に、甲5発明の仮焼時間について、甲第5号証には【0054】に「とくに、リチウムを含有する物質として、水酸化リチウムや炭酸リチウム等を使用した場合には、800~1000℃の温度で焼成する前に、350~800℃の温度で1~10時間程度保持して仮焼することが好ましい。」と記載されるに留まるから、甲5発明の4時間を11~25時間に変更する動機付けとなるものがあるとはいえない。
特許異議申立人津田裕は、甲第5号証に加えて甲第1、8、9号証に記載された技術事項を挙げているが、甲5発明の他の要件をそのままに仮焼時間のみを変更するための動機づけとなるものではない。
よって、甲5発明において相違点1’を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(2)本件特許発明3及び4について
本件特許発明3、4のうち、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含むものについては、甲5発明との対比において、少なくとも上記相違点1’を有する発明であり、甲5発明において相違点1’を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(3)本件特許発明5について
本件特許発明5と甲5発明とを対比すると、以下の相違点5において相違する。
(相違点5)
リチウム複合金属酸化物の製造方法について、本件特許発明5は「500~700℃で10~30時間」の「第1焼成工程」及び「第2焼成温度を750~875℃」と焼成条件を特定し、リチウム複合金属酸化物は「(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2~9の範囲内である一次粒子を50%(個数)以上含有する」のに対して、甲5発明では「760℃で4時間仮焼」し、「950℃で10時間焼成」し、リチウム複合金属酸化物は「(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が2~9の範囲内である一次粒子を50%(個数)以上含有する」か否か不明な点。
相違点5について検討するに、甲5発明の焼成に関し、仮焼時間について、甲第5号証には【0054】に「とくに、リチウムを含有する物質として、水酸化リチウムや炭酸リチウム等を使用した場合には、800~1000℃の温度で焼成する前に、350~800℃の温度で1~10時間程度保持して仮焼することが好ましい。」と記載され、甲第5号証の【請求項8】及び【0109】から、複合水酸化物粒子は板状一次粒子が凝集して二次粒子を構成していることが一応把握できるものの、本件明細書【0039】【0045】~【0047】の記載から、相違点5に係る特定の一次粒子の要件を満たすか否かは、第2焼成工程の温度条件に少なくとも依存することが窺え、さらに【0209】の記載や本件特許発明5に係る実施例1(第2焼成温度850℃)と比較例1(第2焼成温度が900℃)との対比から、当該要件には、焼成温度や焼成時間の微妙な差異が影響することも窺えるから、甲5発明の製造条件において、本件特許発明5と同様のものが得られるか否かは不明である。
特許異議申立人津田裕は、8月29日付け意見書において縷々述べているが、甲5発明の製造条件において、本件特許発明5と同様の粒子が得られていることを推認するに十分なものとはいえない。
よって、甲5発明において相違点5を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(4)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲5発明とを対比すると、以下の相違点6において相違する。
(相違点6)
リチウム複合金属酸化物の製造方法について、本件特許発明6は「500~700℃で10~30時間」の「第1焼成工程」及び「第2焼成温度を750~875℃」と焼成条件を特定し、リチウム複合金属酸化物は「(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が5~9の範囲内である一次粒子を含有する」のに対して、甲5発明では「760℃で4時間仮焼」し、「950℃で10時間焼成」し、リチウム複合金属酸化物は「(最大長/最大長方向に垂直な第2最大長)の値が5~9の範囲内である一次粒子を含有する」か否か不明な点。
相違点6について検討するに、上記相違点5と同様のことがいえるから、甲5発明において相違点6を解消することは、当業者が容易になし得たことではない。
(5)小括
以上のことから、本件特許発明1~6は、甲第5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、取消理由2-4は理由がない。
5.本件特許発明1~6について、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人津田裕は、以下の特許異議申立理由を主張する。
「訂正前の請求項1に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明には実施例1が記載されているのみであって、複合水酸化物の組成比や焼成条件等の製造条件が実施例1と異なった場合に発明の課題を解決できるかが不明であり、実施例1に具体的に記載の内容を請求項1で特定されている範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第1号に規定の要件を満たしていないものである。」
この主張について検討するに、本件特許発明1に対応した本件明細書に記載の具体的な実施例は実施例1のみであるが、本件明細書には、本件特許発明1の発明特定事項である、前駆体製造工程について【0032】【0033】等、第1焼成工程について【0037】【0038】等、第2焼成工程について【0039】【0040】等、リチウム複合金属酸化物を構成する元素の組成比について【0021】【0022】【0043】等の説明が記載されており、当業者であれば実施例1の製造条件を変更した場合であっても課題の解決を図ることができるといえるから、本件の特許請求の範囲や明細書の記載に不備はない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1-6に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1-6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項7に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明ではないから、本件請求項7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定の要件を満たしていない出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700263