特許異議申立
2018-700115
気泡シート及びその製造方法並びに断熱食品容器の製造方法
- 審判番号
- 2018-700115
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-085454外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年02月14日
- 審決日
- 2018年08月22日
- 公報発行日
- 2018年10月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】中本パックス株式会社
- 【権利者代理人】田中 政浩
- 【異議申立人】遠藤 哲子
- 分類
- P1651.121-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6247016号発明「気泡シート及びその製造方法並びに断熱食品容器の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6247016号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許6247016号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成25年4月16日を出願日とする出願であって、平成29年11月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成30年2月14日にその特許について、特許異議申立人遠藤哲子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」等という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
真空又は真空・圧空成形によって断熱食品容器を形成するための気泡シートであって、該断熱食品容器の側壁部及び底部に形成される側壁形成部が、バックシートと円筒状凸部を有するキャップシートとで形成され、該断熱食品容器のフランジ部に形成されるフランジ形成部が、バックシートと円筒状凸部を有しないキャップシートとで形成されていることを特徴とする気泡シート。
【請求項2】
前記気泡シートが、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1記載の気泡シート。
【請求項3】
ポリエチレンテレフタレート樹脂にエポキシ基が9~10個/分子有するスチレン・アクリルオリゴマーの鎖延長剤を添加し、ベント孔が2以上の押出機に投入し、ポリエチレンテレフタレート樹脂が加熱・溶融された状態でベント孔から-99.99kPa以上の高真空下で吸引・脱気した後、押出成形してバックシート及びキャップシートを形成することを特徴とする請求項1記載の気泡シートの製造方法。
【請求項4】
バックシートとキャップシートを有する気泡シート製造工程と、該気泡シート製造工程で製造された気泡シートを真空又は真空・圧空成形により容器状に成形する容器成形工程とからなる断熱食品容器の製造方法であって、該気泡シート製造工程において、該断熱食品容器の側壁部及び底部を形成するための側壁形成部を、バックシートと円筒状凸部を有するキャップシートで形成し、該断熱食品容器のフランジ部を形成するためのフランジ形成部を、バックシートと円筒状凸部を有しないキャップシートで形成することを特徴とする断熱食品容器の製造方法。」
第3 申立理由の概要
申立人は、大要、以下の甲第1~6号証を提出し、本件発明1~4は、以下の【理由】により特許を受けることができないから、本件発明1~4のそれぞれに係る特許は取り消されるべきである旨主張している。
なお、甲第1号証等を、以下「甲1」等といい、甲1等に記載された発明あるいは事項を、以下「甲1発明」あるいは「甲1事項」という。
【理由】 本件発明1~4は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1~4のそれぞれに係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
記
1.本件発明1について
本件発明1は、甲1発明、甲2~4事項及び甲5に例示される従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2.本件発明2について
本件発明2は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3.本件発明3について
本件発明3は、甲6発明及び従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4.本件発明4について
本件発明4は、甲1発明、甲2~4事項及び甲5に例示される従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
<刊 行 物 一 覧>
甲1:特開2000-85039号公報
甲2:特開2006-36295号公報
甲3:特開平11-156929号公報
甲4:特開2005-28691号公報
甲5:特開2001-145969号公報
甲6:特開2011-184580号公報
第4 当審の判断
1.刊行物
(1)甲1について
甲1の【0001】、【0009】~【0011】、【0016】~【0019】の記載、及び、【図1】~【図4】の図示から、甲1には、次の甲1発明の1及び甲1発明の2が記載されている。
・甲1発明の1
「真空成形や圧空成形等の金型成形によって断熱性を必要とする食品包装用容器として使用する成形体5を形成するための積層シート1であって、該成形体5の側壁部及び底部に形成される側壁形成部が、樹脂シート2と突起4aを有する樹脂シート4とで形成され、該成形体5の周縁部に形成される周縁形成部が、樹脂シート2と突起4aを有する樹脂シート4とで形成されている積層シート1。」
・甲1発明の2
「樹脂シート2と樹脂シート4を有する積層シート1製造工程と、該積層シート1製造工程で製造された積層シート1を、真空成形や圧空成形等の金型成形により容器状に成形する金型成形工程とからなる断熱性を必要とする食品包装用容器として使用する成形体5の製造方法であって、該積層シート1製造工程において、成形体5の側壁部及び底部に形成される側壁形成部を、樹脂シート2と突起4aを有する樹脂シート4で形成し、該成型体5の周縁部を形成するための周縁形成部を、樹脂シート2と突起4aを有する樹脂シート4で形成する断熱性を必要とする食品包装用容器として使用する成形体5の製造方法。」
(2)甲6について
甲6には【0001】、【0007】、【0008】、【0020】~【0027】、【0032】~【0039】の記載があり、当該記載から、甲6には、次の甲6発明が記載されている。
・甲6発明
「回収PETフレーク(水分量4,500ppm)に流動パラフィン0.10%をヘンシェルミキサーを用いてまぶした後、粉沫状のBASFジャパン株式会社製鎖延長剤ADR4368Sを0.5%添加し、ヘンシェルミキサーで混合撹拌して付着させた後に、主押出し機(日立造船株式会社製、同方向回転2軸押出し機HMT100、L/D=38、吐出量;650kg/hr、2ベント孔)に投入し、押出し温度280℃、ベント孔から-755mmHgの高真空下で吸引・脱気しながら主層の回収PETフレーク層を押出し、
一方、ユニチカ株式会社製PET樹脂、MA2101M(水分量2,700ppm)を副押出し機(日立造船株式会社製、同方向回転2軸押出し機HMT57、L/D=36、吐出量;200kg/hr、2ベント孔)に投入し、押出し温度280℃、ベント孔から-755mmHgの高真空下で吸引・脱気しながら副層(バージン層)を押出し、主層と合わせて共押出しを行ないバージン層(30μm)/回収PETフレーク層(340μm)/バージン層(30μm)の総厚み400μmのシートを作製する食品容器用シートの製造方法。」
2.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明の1を対比すると、少なくとも次の相違点1において相違する。
<相違点1>
本件発明1の気泡シートは、「該断熱食品容器」の「フランジ部に形成されるフランジ形成部が、バックシートと円筒状凸部を有しないキャップシートとで形成されている」のに対し、甲1発明の1の「積層シート1」の「断熱性を必要とする食品包装用容器して使用する成形体5の周縁部に形成される周縁形成部」が、「樹脂シート2と突起4aを有する樹脂シート4」とで形成されている点。
(2)検討
甲1には、樹脂シート4のうち周縁部に形成するための部分を、突起4aを有しないものとすることは記載されていないし、示唆する記載もない。むしろ、甲1の「・・・ハニカム構造部Aの空間部(空気封入部a以外の部分)bの一部または全部が外部と連通していることにより、ハニカム構造部Aの電子レンジ等による加熱により空気が堆積膨張し過ぎで容器を大きく変形させることもない。」(段落【0019】)という記載から、周縁形成部を突起4aを有しないものとすると、上記外部と連通する部分が塞がれるから、甲1発明には、そうすることの阻害事由があるといえる。
そして、甲2には、食品を包装するための包装用トレーを「(1)・・・キャップフィルムおよびバックフィルムからなる二層構成のもの」や「(2)・・・キャップフィルムオヨビバックフィルムに加えて、キャップの頂を連ねて別の平坦なプラスチックのライナーフィルムを貼り合わせてなる三層構成」(【0009】)とするものが記載されているが、当該包装用トレーの周縁5、6に形成されるキャップフィルムの部分を、キャップを有さないものとすることは記載されていないし、示唆する記載もない。
さらに、甲3に記載された緩衝シート1を形成するフィルム5は、エンボス4が多数形成される部分と、エンボスが形成されない部分2とを有するものである(【0031】)。そして、甲4に記載されたプラスチック気泡シートを形成するキャップフィルムは、キャップが形成された部分とキャップが存在しない折り畳むべき線に沿った部分とを有するものである。(【0014】~【0017】、【0027】)。しかし、甲3及び甲4のいずれにも、食品包装容器として使用する成形体の周縁部に形成される樹脂シート4の周縁形成部を、突起4aを有さないものとすることまでは記載されていないし、示唆する記載もない。
また、甲5には、「・・・この発明は、合成樹脂ボードに関する。」(【0001】)「・・・この実施形態に係る合成樹脂ボード1は、自動車のラゲッジフロアボードとして使用されるもので、・・・」(【0014】)、「合成樹脂ボード1の端部となるコアシート3の周縁には、エンボス部2が形成されておらず、製品形状の外径に沿って、エンボス部2と同じ深さの溝部6が形成される。」(【0016】)という記載がある。しかし、甲5に記載された「合成樹脂ボード」は「自動車のラゲッジフロアボード」として使用されるもので、甲1発明の1の「断熱性を必要とする食品包装用容器として使用する成形体5」とはその用途や形状、そして必要とされる強度や断熱性能が大きく異なるから、甲5に記載された上記「コアシート3の周縁には、エンボス部2が形成されて」いない構成が、従来周知であったとしても、当該周知の事項を適用して、甲1発明の1の積層シート1を形成する樹脂シート4を、断熱性を必要とする食品包装用容器として使用する成形体5の周縁部に形成される周縁形成部を、突起4aを有さないものとすることが、当業者にとって容易になし得た事項であるとまではいえない。
そして、本件発明1は、上記相違点1に係る構成を備えることで、フランジ部を「ヒートシール作業等において好ましいもの」(本件特許明細書 【0023】)とすることができるとの格別な作用効果を奏する。
(3)本件発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4事項、及び、甲5に例示される従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
3.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明2と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記2.に示した<相違点1>において両者は相違する。そして、上記2.(2)に示したとおり<相違点1>は、当業者が容易になし得た事項であるということはできず、本件発明1は、甲1発明、甲2~4事項及び甲5に例示される従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明1の全ての発明特定事項を備え、さらに別の発明特定事項が付加されて技術的に限定された、本件発明2は、甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、申立人は「したがって、本件特許発明2は、甲1発明と同一である・・・」(特許異議申立書 15ページ下から3~最下行)と主張している。しかし、上記<相違点1>は、気泡シートを形成するキャップシートの「フランジ形成部」における「円筒状凸部」の有無についての実質的な相違点であるから、本件特許発明2は、甲1発明と同一であるとはいえない。
以上のとおりであるから、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
1.本件発明3について
(1)対比
本件発明3と甲6発明とを対比すると、少なくとも次の相違点2が存在する。
<相違点2>
本件発明3の気泡シートの製造方法は、気泡シートが、真空又は真空・圧空成形によって断熱食品容器を形成するための気泡シートであって、該断熱食品容器の側壁部及び底部に形成される側壁形成部が、バックシートと円筒状凸部を有するキャップシートとで形成され、該断熱食品容器のフランジ部に形成されるフランジ形成部が、バックシートと円筒状凸部を有しないキャップシートとで形成されているものであるのに対し、甲6発明の食品包装用シートの製造方法は、「バージン層(30μm)/回収PETフレーク層(340μm)/バージン層(30μm)」からなる食品容器用シートの製造方法ではあるが、これらの層が円筒状凸部を有するか否かについて特定がない点。
(2)検討
甲6には、複数の層を積層する食品容器用シートにおいて、当該層の中に、食品容器の側壁部及び底部に形成される側壁形成部を円筒状凸部を有するものとし、食品容器のフランジ部に形成されるフランジ形成部に形成されるフランジ形成部を円筒状凸部を有しない層から形成することは記載されていないし、示唆する記載もない。さらに、この点が従来周知であることを示す証拠もない。よって、甲6において、上記相違点2の本件発明3に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
そして、本件発明3は、上記相違点2における本件発明3に係る構成を備えることで、「・・・容器を手に持つ際に接触する側壁部が、気泡シート内に存在する空間部分(中間部)により高い断熱性が付与され、側壁部の表面にまで収容した飲食物の高温が達することが無い。したがって、容器を手に持った際、手に暑さを感じることを極めて低減させることが出来る」(本件特許明細書 段落【0013】)とともに、フランジ部の「ヒートシール作業等において好ましい」(本件特許明細書 【0023】)断熱食品容器を形成するための気泡シートを製造することができるとの格別な作用効果を奏する。
(3)本件発明3についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明3は、甲6発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
5.本件発明4について
(1)対比
本件発明4と甲1発明の2とを対比すると、少なくとも次の相違点3において相違する。
<相違点3>
本件発明4の断熱食品容器の製造方法は、「該気泡シート製造工程において、・・・該断熱食品容器のフランジ部を形成するためのフランジ形成部を、バックシートと円筒条凸部を有しないキャップシートで形成する」ものであるのに対し、甲1発明の2の断熱性を必要とする食品包装容器として使用する成形体5の製造方法は、「該積層シート1製造工程において、該成形体5の周縁部を形成するための周縁形成部を、樹脂シート2と突起4aを有する樹脂シート4で形成する」ものである点。
(2)検討
上記2.(2)に示したように、甲1~5のいずれにも、断熱性を必要とする食品包装用容器の周縁形成部を突起4aを有さないものとすることの記載はないし示唆する記載はないから、甲1発明の2において、相違点3に係る本件発明4に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
(3)本件発明4についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明4は、甲1発明の2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
6.小括
上記2.~5.に示したように、本件発明1~4に係る特許は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。よって、本件発明1~4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、上記申立理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-700115