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特許異議申立

2018-700071

加工助剤及び加工助剤用マスターバッチ

審判番号
2018-700071
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-554164外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年01月26日
審決日
2019年02月14日
公報発行日
2019年05月31日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第2号、特許法第113条第4号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6168330号発明「加工助剤及び加工助剤用マスターバッチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6168330号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~5]について訂正することを認める。 特許第6168330号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 主な手続の経緯等 特許第6168330号(設定登録時の請求項の数は5。以下、「本件特許」という。)は、国際出願日である2015年7月15日(パリ条約による優先権主張 2014年10月16日 大韓民国(KR))にされたとみなされる特願2016-554164号に係るものであって、平成29年7月7日に設定登録され、特許掲載公報が同年7月26日に発行された。 特許異議申立人 恒川朱美(以下、単に「申立人」という。)は、平成30年1月26日に本件特許の請求項1ないし5に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。 当審において、平成30年4月27日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年8月3日付けで意見書を提出したが、当審は、同年8月22日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、同年11月12日付けで訂正請求書(この訂正請求書による訂正を、以下、「本件訂正請求」という。)を提出するとともに、意見書を提出したので、申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、申立人は、同年12月19日付けで意見書を提出した。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のアのとおりである。なお、下線については訂正箇所に合議体が付したものである。 ア 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体からなる、直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が集まって粒子サイズ2μm~2mmのクラスタ型の2次粒子を形成するフルオロ重合体を含むことを特徴とする、加工助剤。」 とあるのを 「オレフィン系重合体樹脂の押出成形用加工助剤であって、 ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体からなり、直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が、前記オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まって、粒子サイズ2μm~2mmのクラスタ型の2次粒子を形成するフルオロ重合体を含むことを特徴とする、加工助剤。」 に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2ないし5についても同様に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る発明は、「加工助剤」の用途について特定されていない。これに対して、訂正後の請求項1は、「オレフィン系重合体樹脂の押出成形用加工助剤」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における加工助剤の用途をより具体的に特定し、更に限定するものである。 また、訂正前の請求項1に係る発明は、フルオロ重合体1次粒子が集まってクラスタ型の2次粒子を形成するフルオロ重合体において、フルオロ重合体1次粒子の集合態様は特定されていない。これに対して、訂正後の請求項1は、「前記オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように」との記載により、フルオロ重合体1次粒子の集合態様をより具体的に特定し、更に限定するものである。 したがって、訂正事項アは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。 (2) 新規事項の有無 訂正事項アの「加工助剤」という発明特定事項を、「オレフィン系重合体樹脂の押出成形用加工助剤」に訂正する点は、願書に添付した明細書の段落【0001】及び【0033】に「本発明は・・・押出成形時に使われる加工助剤及び加工助剤用マスターバッチに関し・・・」、「特に、本発明の加工助剤用マスターバッチはオレフィン系重合体樹脂を成形する時の加工助剤として適切に使用することができる。」との記載がなされていることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲である。 訂正事項アの「直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が集まって粒子サイズ2μm~2mmのクラスタ型の2次粒子を形成するフルオロ重合体」という発明特定事項を、「直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が、前記オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まって、粒子サイズ2μm~2mmのクラスタ型の2次粒子を形成するフルオロ重合体」に訂正する点は、願書に添付した明細書の段落【0027】に「一方、本発明に係る加工助剤は、・・・クラスタ型の2次粒子を構成する1次粒子が押出時に容易に分離されながら速やかにダイ表面と接触して潤滑層を形成する長所がある。」との記載がなされていることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲である。 したがって、当該訂正事項アは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(1)の理由から明らかなように、訂正事項アは、「加工助剤」という発明特定事項を、概念的により下位の「オレフィン系重合体樹脂の押出成形用加工助剤」にするものであり、「直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が集まって粒子サイズ2μm~2mmのクラスタ型の2次粒子を形成するフルオロ重合体」という発明特定事項を、概念的により下位の「直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が、前記オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まって、粒子サイズ2μm~2mmのクラスタ型の2次粒子を形成するフルオロ重合体」にするものである。 したがって、訂正事項アは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~5]について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、平成30年11月12日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。 「【請求項1】 オレフィン系重合体樹脂の押出成形用加工助剤であって、 ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体からなり、直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が、前記オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まって、粒子サイズ2μm~2mmのクラスタ型の2次粒子を形成するフルオロ重合体を含むことを特徴とする、加工助剤。 【請求項2】 前記フルオロ重合体100重量部に対し、パーティショニング剤(partitioning agent)1乃至20重量部を追加的に含み、界面活性剤がないことを特徴とする、請求項1に記載の加工助剤。 【請求項3】 前記パーティショニング剤(partitioning agent)は平均粒子サイズが0.5μm~10μmの無機物粉末、または平均粒子サイズが1mm以下の有機物粉末のうち、いずれか1つ以上を使用し、かつ 前記無機物粉末はタルク、シリカ、及び炭酸カルシウムからなる群から選択される1種以上であり、 前記有機物粉末は酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、熱安定剤、光安定化剤、金属不活性剤、強化剤、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、顔料、光学漂白剤、帯電防止剤、及び発泡剤で構成された群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項2に記載の加工助剤。 【請求項4】 請求項1に記載の加工助剤と非フッ素化溶融加工性重合体を含むことを特徴とする、加工助剤用マスターバッチ。 【請求項5】 前記加工助剤0.5~20重量%と非フッ素化溶融加工性重合体80~99.5重量%を含むことを特徴とする、請求項4に記載の加工助剤用マスターバッチ。」 第4 申立人の主張に係る申立理由の概要 申立人の主張は、概略、次のとおりである。 (1) 本件特許の請求項1ないし5で特定される構成は出願時の技術常識に反し、発明の詳細な説明には、前記技術常識に反する構成の実現方法が記載されていないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の要件を満足しない特許出願に対して特許されたものであって、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである(以下、「申立理由1」という。)。 (2) 本件特許の請求項1ないし5で特定される構成は出願時の技術常識に反し、発明の詳細な説明には、前記技術常識に反する構成の実現方法が記載されておらず、当業者は、本件発明1ないし5により、本件発明の課題が解決できると認識できないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満足しない特許出願に対して特許されたものであって、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである(以下、「申立理由2」という。)。 (3) 本件特許の請求項1の「クラスタ型」の定義が記載されておらず、明確でないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の要件を満足しない特許出願に対して特許されたものであって、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである(以下、「申立理由3」という。)。 (4) 本件特許の請求項1、4及び5に係る発明は、甲4に記載された発明であって、また、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲5に記載された発明であって、特許法第29条の規定により特許を受けることができない発明であるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(以下、甲4に基づく新規性を「申立理由4-1」、甲5に基づく新規性を「申立理由4-2」という。)。 (5) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲4に記載された発明を主たる引用発明とし、当該引用発明に基いて、あるいは、引用発明に甲5ないし甲7に記載の技術事項を適宜参照することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明であるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(以下「申立理由5-1」という。)。 (6) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲5に記載された発明を主たる引用発明とし、当該引用発明に基いて、あるいは、引用発明に甲4、甲6及び甲7に記載の技術事項を適宜参照することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明であるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(以下「申立理由5-2」という。)。 (7) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲6に記載された発明を主たる引用発明とし、引用発明に甲3、甲4及び甲7に記載の技術事項を適宜参照することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明であるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである(以下「申立理由5-3」という。)。 (8) また、証拠方法として書証を申出、以下の文書(甲1ないし10)を提出する。 ・甲1: *谷信三(当審注:*は、こめへんに「菊」のくさかんむりがないものを右側に配置した文字)、「ゴム材料科学序論」、日本バルカー工業株式会社、1995年、第9~14頁 ・甲2: 里川孝臣編、「ふっ素樹脂ハンドブック」、初版、日刊工業株式会社、1990年、第556~557頁 ・甲3: 田中隆明、「ミニファイル 顕微鏡と画像データ処理-光学顕微鏡-」、ぶんせき、社団法人日本分析化学会、2013年1月、第25~26頁 ・甲4: 特表2004-528451号公報 ・甲5: 国際公開第2006/080531号 ・甲6: 特公昭59-36658号公報 ・甲7: 国際公開第2006/118247号 ・甲8: 特開昭61-258839号公報 ・甲9: 国際公開第01/34666号 ・甲10: 特表2012-516360号公報 表記については、概ね特許異議申立書の記載に従った。 第4 取消理由(決定の予告)の概要 平成30年8月22日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、請求項1の「クラスタ型の2次粒子」の意味はわからず、明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるという理由(以下、「取消理由1」という。)と請求項1の「クラスタ型の2次粒子」には、一次粒子に分離できるクラスタ型の2次粒子と一次粒子に分離できない溶着している2次粒子とを含むものといえるが、一次粒子に分離できない溶着しているクラスタ型の2次粒子では、本件発明の課題が解決できないことは明らかであって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるという理由(以下、「取消理由2」という。)である。 なお、上記取消理由1は、申立人の申立理由3と同旨である。 第5 合議体の判断 当合議体は、以下述べるように、上記取消理由には理由はないと判断する。 1 取消理由1(明確性)について 本件訂正請求により、請求項1の「クラスタ型の2次粒子」は、「直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が、前記オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まっ」たものに特定された。 ここで、請求項1の「クラスタ」とは、「○1(当審注:丸囲み1を意味する。以下同じ)同種のものが集まってつくる一団・群れ。○2複数個の原子または分子が集まり、それらの一部分または全体に結合をつくって形成される集団。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味し、本件発明1は、そのようなクラスタ型の2次粒子のうちの「オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まっ」たものを意味しているといえる。そして、当該意味と解釈しても、本件特許明細書の記載において齟齬はない。 そうすると、本件発明の請求項1の「クラスタ型の2次粒子」の意味は明確である。 よって、上記取消理由1(申立人の申立理由3)には、理由がない。 2 取消理由2(サポート要件)について 本件特許明細書によれば、本件発明1が解決しようとする課題は「界面活性剤(interfacial  agent)が含まれていないことにも溶融破壊消滅時間を短縮させることができ、ダイビルド-アップ(DieBui1d-up)形成を抑制し、加工時の押出負荷が少なくて生産性が向上した非フッ素化溶融加工性重合体用加工助剤」「を提供すること」(段落【0010】)であり、上記課題を解決するための手段として、本件発明1の発明特定事項が提示されており、その作用機序として、「本発明に係る加工助剤は直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が集まって粒子サイズ2μm~2mmのクラスタ型の2次粒子を形成するものであって、クラスタ型の2次粒子を構成する1次粒子が押出時に容易に分離されながら速かにダイ表面と接触して潤滑層を形成する長所がある。」(段落【0027】)との記載がある。 そして、その具体的な実施例・比較例において、「成形時に」一次粒子に「分離するように集まっ」た「クラスタ型の2次粒子」では課題が解決され、一次粒子に分離できない「クラスタ型の2次粒子」では上記課題が解決できないことが確認されている。 してみれば、発明の詳細な説明において、本件発明1の発明特定事項により、上記本件発明1の解決しようとする課題が解決できることを当業者は認識できるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明である。 本件発明2ないし5についても同様である。 よって、上記取消理由2には、理由がない。 第6 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由(申立理由1、2、4-1、4-2、5-1、5-2、5-3)について 1 申立理由1(実施可能要件)及び申立理由2(サポート要件)について 申立人は、概ね、以下のように主張する。 本件発明1のビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体等のフッ素ゴムのTgは常温よりはるかに低く、未架橋の状態では常温でも流動性を有するから、このようなフッ素ゴムの1次粒子を集めて2次粒子に形成した場合、それらの1次粒子は互いに容易に融着し一体化してしまい、一旦融着し一体化した1次粒子を元の1次粒子に分離する方法は、現在知られていないというのが技術常識である。当該技術常識を踏まえると、本件発明1の「直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が集まって粒子サイズ2μm~2mmのクラスタ型の2次粒子を形成する」状態を維持することは技術的に困難であるし、明細書の発明の詳細な説明の段落【0027】の記載についても、実施することが技術的に困難で、その他の発明の詳細な説明には、前記の状態を維持する方法は記載されていないし、「2次粒子を構成する1次粒子が押出時に容易に分離される」フルオロ重合体を製造する方法も記載されていない。そうすると、明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないし、明細書の発明の詳細な説明には、当該技術常識に反する構成を実現するための方法について一切記載されていないから、当業者は、本件発明1の構成によって本件発明1の課題が解決されると認識できない。 しかし、当業者は、ビニリデンフロライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素ゴムの乳化重合後の乾燥条件や水性乳濁液中に充填材を適宜添加分散せしめる等の手段を利用することで融着しにくい粒子を得ることができるということが技術常識と認められる(甲6の4欄第13行~第44行を参照)から、当該技術常識を参酌して、本件特許明細書の段落【0027】の記載をみれば、当業者は本件発明1を実施することができるといえるし、当該技術常識を有する当業者は、発明の詳細な説明の段落【0027】の記載から、本件発明1の構成によって、本件発明1の課題が解決されると認識できる。 よって、申立人の上記主張は失当であって採用できず、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第4号に該当しない。 2 申立理由4-1及び申立理由5-1(甲4に基づく新規性及び進歩性) (1) 甲4に記載された発明 甲4の段落【0001】、【0004】、【0075】~【0079】、【0083】、【0084】の記載から、実施例5として記載されているフルオロポリマーのポリマー溶融加工添加剤として、甲4には、以下の発明が記載されているといえる。 「乳化重合で得られたフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーからなる粒径306nmのラテックス粒子を含むポリマー分散液を凝固させて得られたフルオロポリマーを含むポリマー溶融加工添加剤。」(以下、「甲4発明A」という。) また、甲4の実施例5には、上記甲4発明Aのポリマー溶融加工添加剤をキャリア樹脂であるブテン改質直鎖状低密度ポリエチレンに添加濃度2重量%で配合したマスターバッチを使用したことが記載されているから、甲4には、以下の発明が記載されているといえる。 「乳化重合で得られたフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーからなる粒径306nmのラテックス粒子を含むポリマー分散液を凝固させて得られたフルオロポリマーを含むポリマー溶融加工添加剤2重量%と、ブテン改質直鎖状低密度ポリエチレンとを含むマスターバッチ。」(以下、「甲4発明B」という。) (2) 本件発明1と甲4発明Aとの対比・判断 甲4発明Aの「フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー」、「フルオロポリマー」及び「ポリマー溶融加工添加剤」は、それぞれ、本件発明1の「ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体」、「フルオロ重合体」及び「加工助剤」に相当することは明らかである。 また、甲4発明Aの「粒径306nmのラテックス粒子」は、本件発明1の「直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子」に相当する。 さらに、甲4発明Aの「フルオロポリマー」は「ラテックス粒子を含むポリマー分散液を凝固させて得られた」ものであることから考えて、上記「ラテックス粒子」が「集まっ」たものであることは明らかである。 そうすると、本件発明1と甲4発明Aとは、 「ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体からなり、直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が集まったフルオロ重合体を含む、加工助剤。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 加工助剤の用途として、本件発明1では、「オレフィン系重合体樹脂の押出成形用」と特定するのに対して、甲4発明Aでは、この点を特定しない点。 <相違点2> 一次粒子が集まったフルオロ重合体に関し、本件発明1では、「前記オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まって、粒子サイズ2μm~2mmのクラスタ型の2次粒子を形成する」と特定するのに対して、甲4発明Aでは、この点を特定しない点。 事案に鑑み、相違点2について検討する。 甲4には、フルオロポリマーの粒子サイズについての記載はなく、オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まったクラスタ型の2次粒子であることも記載されていない。そして、甲4発明Aのフルオロ重合体の粒子サイズは必ず2μm~2mmであって、オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まったクラスタ型の2次粒子であるという証拠は示されていないから、相違点2は実質的な相違点である。 してみれば、本件発明1は甲4発明Aということはできない。 そして、申立人の提示するいずれの証拠にも、フルオロ重合体として、オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まったクラスタ型の2次粒子は記載されていない。 そうすると、相違点2は当業者において想到容易でない。 さらに、本件発明1の加工助剤は、界面活性剤が含まれていない場合でも溶融破壊消滅時間を短縮させることができ、ダイビルドーアップを抑制し、加工時の押出付加が少なくて生産性を向上させることができるという効果が奏されるところ、当該効果は、申立人の提示するいずれの証拠からも示唆されない効果である。 以上のことから、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲4発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3) 本件発明2及び3と甲4発明Aとの対比・判断 本件発明2及び3は、直接又は間接的に本件発明1を引用する発明である。そして、本件発明1が甲4発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのは上記(2)で検討したとおりであるから、本件発明2及び3についても同様に、甲4発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4) 本件発明4と甲4発明Bとの対比・判断 甲4発明Bの「ブテン改質直鎖状低密度ポリエチレン」は、本件発明4の「非フッ素化溶融加工性重合体」に相当し、その余の点は、上記(2)での検討のとおりであるから、本件発明4と甲4発明Bとは、上記(2)における相違点1及び2で相違し、当該相違点2についての判断は、上記(2)で検討したとおりである。 よって、本件発明4は、甲4発明Bではないし、相違点1について検討するまでもなく、甲4発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5) 本件発明5と甲4発明Bとの対比・判断 本件発明5は、直接本件発明4を引用する発明である。そして、本件発明4が、甲4発明Bではないし、甲4発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのは上記(4)で検討したとおりであるから、本件発明5についても同様に、甲4発明Bではないし、甲4発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6) 小括 以上のとおり、本件特許の請求項1、4及び5に係る発明は、甲4に記載された発明ではないし、また、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第113条第2号に該当しない。 3 申立理由4-2及び申立理由5-2(甲5に基づく新規性及び進歩性) (1) 甲5に記載された発明 甲5の段落[0001]、[0014]、[0025]~[0028]、[0031]、[0034]、[0035]、[0049]の記載から、実施例1として記載されている加工助剤組成物として、甲5には、以下の発明が記載されているといえる。 「乳化重合で得られたビニリデンフルオライド(VDF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体の凝集体である平均粒子径1.7mmのフッ素ゴムを含む加工助剤組成物。」(以下、「甲5発明A」という。) また、甲5には、加工助剤組成物を利用してマスターバッチを作成することが記載されているから、以下の発明が記載されているといえる。 「乳化重合で得られたビニリデンフルオライド(VDF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体の凝集体である平均粒子径1.7mmのフッ素ゴムを含む加工助剤と、ポリエチレン等の溶融加工性樹脂とを含み、前記フッ素ゴムは、溶融加工性樹脂及びフッ素ゴムの質量の合計の0.5質量%を超え、且つ、20質量%以下である、加工助剤用マスターバッチ。」(以下、「甲5発明B」という。) (2) 本件発明1と甲5発明Aとの対比・判断 甲5発明Aの「ビニリデンフルオライド(VDF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体」、「フッ素ゴム」及び「加工助剤組成物」は、それぞれ、本件発明1の「ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体」、「フルオロ重合体」及び「加工助剤」に相当することは明らかである。 また、甲5発明Aの「凝集体である平均粒子径1.7mmのフッ素ゴム」は、本件発明1の「粒子サイズ2μm~2mmの2次粒子」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲5発明Aとは、 「ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体からなる、粒子サイズ2μm~2mmの2次粒子を形成するフルオロ重合体を含む、加工助剤。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 加工助剤の用途として、本件発明1では、「オレフィン系重合体樹脂の押出成形用」と特定するのに対して、甲5発明Aはこの点を特定しない点。 <相違点4> 乳化重合で得られたビニリデンフルオライド(VDF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体に関し、本件発明1では、「直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子」と特定するのに対して、甲5発明Aでは、この点を特定しない点。 <相違点5> 2次粒子に関し、本件発明1では、「前記オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まって」「クラスタ型の2次粒子を形成する」と特定するのに対して、甲5発明Aでは、この点を特定しない点。 事案に鑑み、相違点5について検討する。 甲5には、フルオロ重合体がオレフィン系重合体の成形時に分離するように集まったクラスタ型の2次粒子であることは記載されていない。そして、甲5発明Aの乳化重合で得られたビニリデンフルオライド(VDF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体の一次粒子径が必ず直径が0.02μm~0.5μmであること、及び、その凝集体がオレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まったクラスタ型の2次粒子であるという証拠は示されていないから、相違点5は実質的な相違点である。 してみれば、本件発明1は甲5発明Aということはできない。 そして、申立人の提示するいずれの証拠にも、凝集したフッ素樹脂として、オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まったクラスタ型の2次粒子は記載されていない。 そうすると、相違点5は当業者において想到容易でない。 さらに、本件発明1の加工助剤は、界面活性剤が含まれていない場合でも溶融破壊消滅時間を短縮させることができ、ダイビルドーアップを抑制し、加工時の押出付加が少なくて生産性を向上させることができるという効果が奏されるところ、当該効果については、申立人の提示するいずれの証拠からも示唆されない効果である。 以上のことから、本件発明1は、相違点3及び4について検討するまでもなく、甲5発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3) 本件発明2及び3と甲5発明Aとの対比・判断 本件発明2及び3は、直接又は間接的に本件発明1を引用する発明である。そして、本件発明1が、甲5発明Aということはできないこと、及び甲5発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのは上記(2)で検討したとおりであるから、本件発明2及び3についても同様に、甲5発明Aとはいえないし、また、甲5発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4) 本件発明4と甲5発明Bとの対比・判断 甲5発明Bの「ポリエチレン等の溶融加工性樹脂」は、本件発明4の「非フッ素化溶融加工性重合体」に相当し、その余の点は、上記(2)での検討のとおりであるから、本件発明4と甲5発明Bとは、上記(2)における相違点3ないし5で相違し、当該相違点5についての判断は、上記(2)で検討したとおりである。 よって、本件発明4は、甲5発明Bではないし、相違点3及び4について検討するまでもなく、甲5発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5) 本件発明5と甲5発明Bとの対比・判断 本件発明5は、直接本件発明4を引用する発明である。そして、本件発明4が、甲5発明Bではないし、甲5発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのは上記(4)で検討したとおりであるから、本件発明5についても同様に、甲5発明Bではないし、甲5発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6) 小括 以上のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲5に記載された発明ではないし、また、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第113条第2号に該当しない。 4 申立理由5-3(甲6に基づく進歩性) (1) 甲6に記載された発明 甲6の特許請求の範囲、第3欄第9~14行、第4欄第3~10行、第5欄第20~23行、第6欄第1~15行、同第23~44行の記載から、甲6には、以下の発明が記載されているといえる。 「ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなり、主として粒径0.01~0.5μmの一次粒子からなる、粒径が約0.5~5mmの範囲の二次粒子を含む粒状フッ素ゴム。」(以下、「甲6発明」という。) (2) 本件発明1と甲6発明との対比・判断 甲6発明の「ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体」、「粒状フッ素ゴム」は、それぞれ、本件発明1の「ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体」、「フルオロ重合体」に相当することは明らかである。 また、甲6発明の「主として粒径0.01~0.5μmの一次粒子からなる粒径が約0.5~5mmの範囲の二次粒子」は、本件発明1の「直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が集まっ」た「粒子サイズ2μm~2mmの2次粒子」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲6発明とは、 「ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる、直径が0.02μm~0.5μmのフルオロ重合体1次粒子が集まって粒子サイズ2μm~2mmの2次粒子を形成するフルオロ重合体。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点6> フルオロ重合体に関し、本件発明1では、「オレフィン系重合体樹脂の押出成形用加工助剤」と特定するのに対して、甲6発明はこの点を特定しない点。 <相違点7> 1次粒子が集まった2次粒子に関し、本件発明1では、「前記オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように」集まっていて、「クラスタ型の2次粒子を形成する」と特定するのに対して、甲6発明では、この点を特定しない点。 事案に鑑み、相違点7について検討する。 甲6には、フルオロ重合体がオレフィン系樹脂の成形時に分離するように集まったクラスタ型の2次粒子であることは記載されていない。そして、申立人の提示するいずれの証拠にも、フルオロ重合体として、オレフィン系重合体樹脂の成形時に分離するように集まったクラスタ型の2次粒子は記載されていない。 そうすると、相違点7は当業者において想到容易でない。 さらに、本件発明1の加工助剤は、界面活性剤が含まれていない場合でも溶融破壊消滅時間を短縮させることができ、ダイビルドーアップを抑制し、加工時の押出付加が少なくて生産性を向上させることができるという効果が奏されるところ、当該効果については、申立人の提示するいずれの証拠からも示唆されない効果である。 以上のことから、本件発明1は、相違点6について検討するまでもなく、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3) 本件発明2及び3と甲6発明との対比・判断 本件発明2及び3は、直接又は間接的に本件発明1を引用する発明である。そして、本件発明1が、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのは上記(2)で検討したとおりであるから、本件発明2及び3についても同様に、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4) 本件発明4と甲6発明との対比・判断 本件発明4と甲6発明とを対比すると、上記(2)での検討を踏まえると、本件発明4と甲6発明とは、上記(2)における相違点7に加え、下記の点で相違する。 <相違点8> フルオロ重合体に関し、本件発明4では、フルオロ重合体が「オレフィン系重合体樹脂の押出成形用加工助剤」と特定するとともに、「非フッ素化溶融加工性重合体を含む加工助剤用マスターバッチ」と特定するのに対して、甲6発明はこの点を特定しない点。 相違点について検討すると、相違点7についての判断は、上記(2)で検討したとおりである。 よって、本件発明4は、相違点8について検討するまでもなく、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5) 本件発明5と甲6発明との対比・判断 本件発明5は、直接本件発明4を引用する発明である。そして、本件発明4が、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのは上記(4)で検討したとおりであるから、本件発明5についても同様に、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6) 小括 以上のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第113条第2号に該当しない。 5 まとめ 以上のとおりであるから、申立理由1、2、4-1、4-2、5-1、5-2、5-3には、理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700071

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