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特許異議申立

2018-700057

DHA含有グリセリド含有組成物の製造方法

審判番号
2018-700057
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-563225
登録番号
特許第6175198号(P6175198)
請求日
2018年01月24日
審決日
2019年06月10日
公報発行日
2019年10月25日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】キユーピー株式会社
  • 【権利者代理人】永井 浩之
  • 【権利者代理人】中村 行孝
  • 【権利者代理人】小島 一真
  • 【権利者代理人】柏 延之
  • 【権利者代理人】砂山 麗
  • 【異議申立人】山田 芳男
審判長/審判官
  • 審判長 中島 庸子
  • 審判官 大宅 郁治
  • 審判官 高堀 栄二
分類
P1652.113-ZDB(C12P) / P1652.121-ZDB(C12P) / P1652.537-ZDB(C12P) / P1652.85 -ZDB(C12P) / P1652.855-ZDB(C12P)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6175198号発明「DHA含有グリセリド含有組成物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 平成31年1月4日付け訂正請求において、特許第6175198号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29について訂正することを認める。 特許第6175198号の請求項4ないし6、8、10及び13に係る特許を取り消す。 同請求項9に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6175198号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成28年3月25日(優先権主張 平成27年3月25日)に国際出願され、平成29年7月14日にその特許権の設定登録がされ、同年8月2日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成30年1月24日   : 特許異議申立人 山田芳男(以下、単に「特許異議申立人」という。)による請求項4ないし6及び8ないし10に係る特許に対する特許異議の申立て 平成30年4月3日付け  : 取消理由通知書 平成30年6月8日    : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 平成30年8月10日   : 特許異議申立人による意見書の提出 平成30年8月22日付け : 訂正拒絶理由通知書 平成30年9月27日   : 特許権者による意見書の提出 平成30年10月26日付け: 取消理由通知書(決定の予告) 平成31年1月4日    : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 平成31年2月25日付け : 訂正拒絶理由通知書(特許権者による意見書の提出なし) 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 平成31年1月4日付け訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。) なお、平成30年6月8日付け訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項4に「DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が12以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が70質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含む、DHA含有グリセリド含有組成物。 1≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦10」と記載されているのを、「イワシ油を原料とし、水及びエタノール存在下で1,3位特異リパーゼを作用させてエステル化反応を行うことを特徴とするDHA含有グリセリド含有組成物の製造方法であって、 前記DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が12以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が70質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含む、DHA含有グリセリド含有組成物であることを特徴とするDHA含有グリセリド含有組成物の製造方法。 1.7≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦10」に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5に「請求項4において、 前記DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が20質量%以上90質量%以下である、DHA含有グリセリド含有組成物。」と記載されているのを、「請求項4において、 前記DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が20質量%以上90質量%以下である、DHA含有グリセリド含有組成物の製造方法。」に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6に「請求項4又は5において、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、モノグリセリドの割合が5質量%以上45質量%以下であり、 ジグリセリドの割合が30質量%以上90質量%以下である、DHA含有グリセリド含有組成物。」と記載されているのを、「請求項4又は5において、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、モノグリセリドの割合が5質量%以上45質量%以下であり、 ジグリセリドの割合が30質量%以上90質量%以下である、DHA含有グリセリド含有組成物の製造方法。」に訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項8に「DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が0.1以上5以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が80質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含む、DHA含有グリセリド含有組成物。 2≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦15」と記載されているのを、「DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が0.1以上5以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が80質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含む、DHA含有グリセリド含有組成物(但し、マグロ油を原料油脂とするDHA含有グリセリド含有組成物と同一組成の物を除く)。 3.4≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦15」に訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8の記載を引用する請求項9の記載を、請求項8の記載を引用しない形式に書き替える。 (6) 訂正事項6 上記訂正事項5により書き替えられた特許請求の範囲の請求項9「DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が0.1以上5以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が80質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含み、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、モノグリセリドの割合が0%以上20質量%以下であり、 ジグリセリドの割合が5質量%以上50質量%以下である、 DHA含有グリセリド含有組成物。 2≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦15」を、「DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が0.1以上5以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が80質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含み、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、モノグリセリドの割合が0%以上20質量%以下であり、 ジグリセリドの割合が15質量%以上50質量%以下である、 DHA含有グリセリド含有組成物。 3.4≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦15」に訂正する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8の記載を引用する請求項10の記載を、請求項8の記載を引用しない形式に書き替える。 (8) 訂正事項8 上記訂正事項7により書き替えられた特許請求の範囲の請求項10「DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が0.1以上5以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が80質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含み、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、トリグリセリドの割合が40%以上95質量%以下である、DHA含有グリセリド含有組成物。 2≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦15」を、「DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が0.1以上5以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が80質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含み、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、トリグリセリドの割合が40%以上95質量%以下であって、 原料油脂がイワシ油であることを特徴とする、DHA含有グリセリド含有組成物。 3.4≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦15」に訂正する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9の記載を引用する請求項10の記載を、請求項9の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項13とする。 (10) 訂正事項10 上記訂正事項9により書き替えられた特許請求の範囲の請求項13「DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が0.1以上5以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が80質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含み、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、モノグリセリドの割合が0%以上20質量%以下であり、 ジグリセリドの割合が5質量%以上50質量%以下であって、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、トリグリセリドの割合が40%以上95質量%以下である、DHA含有グリセリド含有組成物。 2≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦15」を、「DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が0.1以上5以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が80質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含み、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、モノグリセリドの割合が0%以上20質量%以下であり、 ジグリセリドの割合が5質量%以上50質量%以下であって、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、トリグリセリドの割合が40%以上95質量%以下であって、 原料油脂がイワシ油であることを特徴とする、DHA含有グリセリド含有組成物。 2.0≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦15」に訂正する。 (11) 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項1ないし10のいずれか1項の記載を引用する請求項11について、請求項4ないし6及び請求項8ないし10の記載を引用しない形式に書き替える。 (12) 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項4の記載を引用する請求項11の記載を、請求項4の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項14とする。 (13) 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項4の記載を引用する請求項5の記載を引用する請求項11の記載を、これらの請求項の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項15とする。 (14) 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項4の記載を引用する請求項6の記載を引用する請求項11の記載を、これらの請求項の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項16とする。 (15) 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項4の記載を引用する請求項5の記載を引用する請求項6の記載を引用する請求項11の記載を、これらの請求項の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項17とする。 (16) 訂正事項16 特許請求の範囲の請求項8の記載を引用する請求項11の記載を、請求項8の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項18とする。 (17) 訂正事項17 特許請求の範囲の請求項8の記載を引用する請求項9の記載を引用する請求項11の記載を、これらの請求項の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項19とする。 (18) 訂正事項18 特許請求の範囲の請求項8の記載を引用する請求項10の記載を引用する請求項11の記載を、これらの請求項の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項20とする。 (19) 訂正事項19 特許請求の範囲の請求項8の記載を引用する請求項9の記載を引用する請求項10の記載を引用する請求項11の記載を、これらの請求項の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項21とする。 (20) 訂正事項20 特許請求の範囲の請求項1ないし10のいずれか1項の記載を引用する請求項12について、請求項4ないし6及び請求項8ないし10の記載を引用しない形式に書き替える。 (21) 訂正事項21 特許請求の範囲の請求項4の記載を引用する請求項12の記載を、請求項4の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項22とする。 (22) 訂正事項22 特許請求の範囲の請求項4の記載を引用する請求項5の記載を引用する請求項12の記載を、これらの請求項の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項23とする。 (23) 訂正事項23 特許請求の範囲の請求項4の記載を引用する請求項6の記載を引用する請求項12の記載を、これらの請求項の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項24とする。 (24) 訂正事項24 特許請求の範囲の請求項4の記載を引用する請求項5の記載を引用する請求項6の記載を引用する請求項12の記載を、これらの請求項の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項25とする。 (25) 訂正事項25 特許請求の範囲の請求項8の記載を引用する請求項12の記載を、請求項8の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項26とする。 (26) 訂正事項26 特許請求の範囲の請求項8の記載を引用する請求項9の記載を引用する請求項12の記載を、これらの請求項の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項27とする。 (27) 訂正事項27 特許請求の範囲の請求項8の記載を引用する請求項10の記載を引用する請求項12の記載を、これらの請求項の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項28とする。 (28) 訂正事項28 特許請求の範囲の請求項8の記載を引用する請求項9の記載を引用する請求項10の記載を引用する請求項12の記載を、これらの請求項の記載を引用しない形式に書き替えて、請求項29とする。 (29) 一群の請求項と別の訂正単位とする求め 本件訂正は請求項4ないし6及び8ないし12を訂正するものであるところ、訂正前のこれらの請求項間の引用関係から、訂正前の請求項4ないし6及び8ないし12は一群の請求項を構成する。 そして、上記訂正事項5、7、9、11ないし28は、訂正前の請求項9ないし12について請求項間の引用関係を解消する訂正であるところ、訂正前の請求項9ないし12についての訂正が認められる場合には、訂正前の請求項9ないし12に対応する訂正後の請求項9ないし29は、一群の請求項である請求項4ないし6及び8とは別の訂正単位として扱われることを求めている。 2 訂正の適否 (1) 請求項4ないし6について 訂正事項1は請求項4についての、訂正事項2は請求項5についての、訂正事項3は請求項6についての訂正であるところ、訂正事項1は、請求項4に係る発明のカテゴリーについて、「DHA含有グリセリド含有組成物」という「物の発明」から「DHA含有グリセリド含有組成物の製造方法」という「物を生産する方法の発明」に変更するものを包含し、また、訂正事項2及び3も、同様に、請求項5及び6に係る発明のカテゴリーを「物の発明」から「物を生産する方法の発明」に変更するものである。 しかし、請求項に係る発明のカテゴリーを変更する訂正は、特許請求の範囲の減縮、誤記若しくは誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明又は請求項間の引用関係の解消のいずれの事項を目的とするものではなく、また、実質上特許請求の範囲を変更することにほかならない。 したがって、請求項4ないし6に係る訂正については、特許法第120条の5第2項ただし書き各号に掲げる事項を目的とするものではなく、また、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しないので、これを認めることはできない。 (2) 請求項8ないし12について ア 請求項8 訂正事項4は請求項8についての訂正であり、DHA含有グリセリド含有組成物について、「但し、マグロ油を原料油脂とするDHA含有グリセリド含有組成物と同一組成の物を除く。」との限定を行い、また、グリセリド中のDHA/EPAの下限値を2から3.4に変更するものであるところ、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、原料油脂にマグロ油が含まれることは、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0024】~【0025】に記載されており、また、グリセリド中のDHA/EPAの値が3.4である組成物として実施例13の第3組成物が記載されている(段落【0178】の【表5】)。したがって、これらの訂正は新規事項の追加に該当しない。 イ 請求項9 訂正事項5及び6は請求項9についての訂正であるところ、訂正事項5は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また、訂正事項6は、DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対するジグリセリドの割合の下限値を5質量%から15質量%に変更し、かつ、グリセリド中のDHA/EPAの下限値を2から3.4に変更するものであるが、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。そして、DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対するジグリセリドの割合の下限値が15質量%であってもよいことは、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0116】に記載されており、また、グリセリド中のDHA/EPAの値が3.4である組成物として実施例13の第3組成物が記載されている(段落【0178】の【表5】)ことから、これらの訂正は新規事項の追加に該当しない。 ウ 請求項10 訂正事項7ないし10は訂正前の請求項10を訂正後の請求項10及び13とする訂正である。 訂正事項7及び9は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 訂正事項8は、DHA含有グリセリド含有組成物について、「原料油脂がイワシ油であることを特徴とする」との限定を行い、また、グリセリド中のDHA/EPAの下限値を2から3.4に変更するものであるところ、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、原料油脂にイワシ油が含まれることは本件特許の発明の詳細な説明の段落【0024】~【0025】に記載されており、また、グリセリド中のDHA/EPAの値が3.4である組成物として実施例13の第3組成物が記載されている(段落【0178】の【表5】)。したがって、これらの訂正は新規事項の追加に該当しない。 訂正事項10は、DHA含有グリセリド含有組成物について、「原料油脂がイワシ油であることを特徴とする」との限定を行い、また、グリセリド中のDHA/EPAの下限値を2から2.0に変更するものであるところ、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、原料油脂にイワシ油が含まれることは本件特許の発明の詳細な説明の段落【0024】~【0025】に記載されており、また、グリセリド中のDHA/EPAの値が2.0である組成物として実施例13の第2組成物Bが記載されている(段落【0178】の【表5】)。したがって、これらの訂正は新規事項の追加に該当しない。 エ 請求項11 訂正事項11ないし19は訂正前の請求項11を訂正後の請求項11、14ないし21とする訂正であるところ、これらの訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また、請求項11は特許異議の申立てがされていない請求項であるが、請求項11についてのこの訂正は請求項間の引用関係の解消を目的とするものであることから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。 オ 請求項12 訂正事項20ないし28は訂正前の請求項12を訂正後の請求項12、22ないし29とする訂正であるところ、これらの訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また、請求項12は特許異議の申立てがされていない請求項であるが、請求項12についてのこの訂正は請求項間の引用関係の解消を目的とするものであることから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。 カ 小括 前記アないしオで述べたとおり、請求項8ないし12についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項8ないし29について訂正することを認める。 また、上述のとおり訂正前の請求項9ないし12についての訂正が認められるので、訂正前の請求項9ないし12に対応する訂正後の請求項9ないし29を、一群の請求項である請求項4ないし6及び8とは別の訂正単位とする求めについても認める。 (3) まとめ 平成31年1月4日付け訂正請求について、特許第5719940号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項8ないし29について訂正することを認める。請求項〔4-6〕についての訂正はこれを認めない。 第3 本件発明 平成31年1月4日付け訂正請求に対する判断は前記第2の2(3)のとおりであることから、特許異議の申立てがされた訂正前の請求項4ないし6及び8ないし10について、請求項4ないし6に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項4ないし6に記載された事項により特定されるものであり、また、訂正前の請求項8ないし10に対応する訂正後の請求項8ないし10及び13に係る発明は、平成31年1月4日付け訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項8ないし10及び13に記載された事項により特定されるものであり、それぞれ次のとおりのものである。 「【請求項4】 DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が12以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が70質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含む、DHA含有グリセリド含有組成物。 1≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦10 【請求項5】 請求項4において、 前記DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が20質量%以上90質量%以下である、DHA含有グリセリド含有組成物。 【請求項6】 請求項4又は5において、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、モノグリセリドの割合が5質量%以上45質量%以下であり、 ジグリセリドの割合が30質量%以上90質量%以下である、DHA含有グリセリド含有組成物。 【請求項8】 DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が0.1以上5以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が80質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含む、DHA含有グリセリド含有組成物(但し、マグロ油を原料油脂とするDHA含有グリセリド含有組成物と同一組成の物を除く)。 3.4≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦15 【請求項9】 DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が0.1以上5以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が80質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含み、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、モノグリセリドの割合が0%以上20質量%以下であり、 ジグリセリドの割合が15質量%以上50質量%以下である、 DHA含有グリセリド含有組成物。 3.4≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦15 【請求項10】 DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が0.1以上5以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が80質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含み、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、トリグリセリドの割合が40%以上95質量%以下であって、 原料油脂がイワシ油であることを特徴とする、DHA含有グリセリド含有組成物。 3.4≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦15 【請求項13】 DHA含有グリセリド含有組成物は、酸価が0.1以上5以下であり、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、グリセリド含量が80質量%以上100質量%以下であり、 前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAとを以下の質量比で含み、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、モノグリセリドの割合が0%以上20質量%以下であり、 ジグリセリドの割合が5質量%以上50質量%以下であって、 前記DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、トリグリセリドの割合が40%以上95質量%以下であって、 原料油脂がイワシ油であることを特徴とする、DHA含有グリセリド含有組成物。 2.0≦(グリセリド中のDHA/EPA)≦15」(以下、これらの発明を「本件発明4」、「本件発明5」、・・・「本件発明13」という。) 第4 取消理由の概要 訂正前の請求項4ないし6及び8ないし10に係る特許に対して、当審が平成30年10月26日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 本件特許の請求項4ないし6及び8ないし10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 本件特許の請求項4ないし6及び8ないし10に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 引用例1:特開2000-342291号公報 引用例2:特開平8-214892号公報 引用例3:特開平2-295489号公報 第5 引用例の記載及び引用例に記載された発明 1 引用例の記載 (1) 引用例1 ア 特許請求の範囲 「【請求項1】 高度不飽和脂肪酸含有油脂からリパーゼを用いた加水分解により高度不飽和脂肪酸の濃縮された高度不飽和脂肪酸含有グリセリドを製造する高度不飽和脂肪酸含有グリセリドの製造方法において、 上記リパーゼとしてエイコサペンタエン酸の濃縮に有効なリパーゼとドコサヘキサエン酸の濃縮に有効なリパーゼが併用されることを特徴とする高度不飽和脂肪酸含有グリセリドの製造方法。」 イ 発明の詳細な説明 (ア) 発明の属する技術分野 「本発明は高度不飽和脂肪酸含有グリセリドの酵素的製造方法に関し、特にエイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸が共に高純度に濃縮された高度不飽和脂肪酸含有グリセリドの酵素的製造方法に関する。」(段落【0001】) (イ) 従来の技術 「イワシ、サバ、サンマ、アジ等の魚類の脂質(魚油)、・・・の構成脂肪酸中には、高度不飽和脂肪酸(以下、PUFAと略す)が多量に含まれている。このうち、エイコサペンタエン酸(以下、EPAと略す)やドコサヘキサエン酸(以下、DHAと略す)などはω-3系列の不飽和脂肪酸であり、プロスタグランジンやトロンボキサンとの関連性において、その生理活性が注目されている。」(段落【0002】) (ウ) 発明が解決しようとする課題 「このように、従来、EPA及びDHAをともに高純度に含有するグリセリドを得ることは非常に困難であり、得られた場合にも製造コストは非常に高価なものになるという問題点があった。 そこで、本発明は、EPA及びDHAがともに高純度に濃縮されたグリセリドを効率よく、かつ安価に製造することができる高度不飽和脂肪酸含有グリセリドの酵素的製造方法を提供することを目的とする。」(段落【0009】~【0010】) (エ) 課題を解決するための手段 「本発明は、PUFAが濃縮されたグリセリドを得るにあたり、エイコサペンタエン酸の濃縮に有効であるリパーゼとドコヘキサエン酸の濃縮に有効であるリパーゼを併用することを特徴とするものである。」(段落【0011】) (オ) 発明の実施の形態 a 実施例1 「イワシ油(EPA:18.1%、DHA:10.6%、酸価:4.6)100gに、アルカリゲネス(Alcaligenes)属由来のリパーゼ粉末(5,000ユニット/g)2.0gとキャンディダ(Candida)属由来のリパーゼ粉末(60,000ユニット/g)2.0gを含む水100gを加え、40℃、pH7.0の条件下で12時間撹拌しながら酵素反応を行って、加水分解油を得た。 次いで、この加水分解油を遠心分離し、油層を回収した後に水洗によってグリセリンを除去した。続いて、流下薄膜式分子蒸留装置を用いて、真空度0.005mmHg、蒸発面温度200℃、流速30g/Lの条件下で処理して、遊離脂肪酸の除去を行い、EPA及びDHAが濃縮されたグリセリド37.9gを得た。 得られたグリセリドの酸価は0.8であり、EPA及びDHAはそれぞれ27.1%及び25.4%であった。」(段落【0030】~【0032】) b 実施例3 「イワシ油(EPA:18.1%、DHA:10.6%、酸価:4.6)とカツオ油(EPA:6.1%、DHA:27.8、酸価:0.5)をあらかじめ1:1の割合で混合し得られた油脂(EPA:12.1%、DHA:19.2%、酸価:2.7)100gに、アルカリゲネス(Alcaligenes)属由来のリパーゼ粉末(5,000ユニット/g)3.0gとキャンディダ(Candida)属由来のリパーゼ粉末(60,000ユニット/g)1.0gとを含む水100gを加え、40℃、pH7.0の条件下で12時間撹拌しながら酵素反応を行って、加水分解油を得た。 次いで、実施例1と同様に油層の回収、グリセリン及び遊離脂肪酸の除去を行い、EPA及びDHAが濃縮されたグリセリド35.5gを得た。 得られたグリセリドの酸価は1.1であり、EPA及びDHAはそれぞれ25.3%及び26.1%であった。」(段落【0036】~【0038】) c 比較例1 「イワシ油(EPA:18.1%、DHA:10.6%、酸価:4.6)100gに、キャンディダ(Candida)属由来のリパーゼ粉末(60,000ユニット/g)2.0gを含む水100gを加え、40℃、pH7.0の条件下で12時間撹拌しながら酵素反応を行って、加水分解油を得た。 次いで、実施例1と同様に油層の回収、グリセリン及び遊離脂肪酸の除去を行い、EPA及びDHAが濃縮されたグリセリド25.6gを得た。 得られたグリセリドの酸価は1.2であり、EPA及びDHAはそれぞれ19.5%及び25.6%であった。」(段落【0039】~【0041】) d 比較例2 「マグロ油(EPA:7.1%、DHA:27.6%、酸価:0.2)100gに、アルカリゲネス(Alcaligenes)属由来のリパーゼ粉末(5,000ユニット/g)2.0gを含む水100gを加え、40℃、pH7.0の条件下で12時間撹拌しながら酵素反応を行って、加水分解油を得た。 次いで、実施例1と同様に油層の回収、グリセリン及び遊離脂肪酸の除去を行い、EPA及びDHAが濃縮されたグリセリド24.6gを得た。 得られたグリセリドの酸価は1.1であり、EPA及びDHAはそれぞれ14.8%及び26.9%であった。」(段落【0042】~【0044】) e 「以上の実施例、比較例の説明からも明らかなように、本発明では、エイコサペンタエン酸の濃縮に有効であるリパーゼとドコサヘキサエン酸の濃縮に有効であるリパーゼを併用することによって、カツオ油、マグロ油、イワシ油などの魚油から、EPA及びDHAをそれぞれ25%以上含むグリセリドを、安価に工業的規模で製造することができるという効果を奏する。」(段落【0045】) (2) 引用例2 ア 特許請求の範囲 「【請求項1】 油脂に、グリセリンの存在下でリパーゼを作用させ、30℃から5℃まで段階的に温度を下げながら反応を行うことを特徴とする高度不飽和脂肪酸高含有部分グリセリドの製造方法。」 イ 発明の詳細な説明 (ア) 発明が解決しようとする課題 「本発明は、魚油、グリセリン及び少量の水を原料として、乳化作用にすぐれ、かつ、高度不飽和脂肪酸を高濃度に含有する部分グリセリドの製造方法を提供することを目的とする。」(段落【0008】) (イ) 課題を解決するための手段 a 「本発明者らは、部分グリセリドが優れた乳化力を有することに着目し、高度不飽和脂肪酸を高濃度に含有する油脂を原料とした部分グリセリドの製造法について鋭意研究を行った結果、油脂及びグリセリンを含む溶液にリパーゼを作用させることにより、食品に添加可能で乳化安定性に優れ、かつ、生理活性を有する高度不飽和脂肪酸高含有部分グリセリドを製造することに成功し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、油脂に、グリセリンの存在下でリパーゼを作用させ、30℃から5℃まで段階的に温度を下げながら反応を行うことを特徴とする高度不飽和脂肪酸高含有部分グリセリドの製造方法である。」(段落【0009】~【0010】) b 「さらに、本発明での油脂とは、構成脂肪酸に高度不飽和脂肪酸を高濃度に含有し、好ましくはDHA30%以上を含むものである。例えば、マグロ、カツオ、イワシ、サバ、アジ、サンマ、タラ、イカ等の魚油・・・を挙げることができる。」(段落【0014】) (ウ) 実施例 a 実施例1 「マグロ油(ケン化価:184.2,EPA:5.8%,DHA:23.3%)100gとグリセリン20g(モル比で1:2)及び蒸留水5mlを含む反応系にシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)のリパーゼ(天野製薬(株)製、リパーゼAK、26,800U/g)を50,000U(ユニット)加え、攪拌しながら反応させた。反応は30℃で5時間、室温で16時間、次いで5℃で24時間行った。 得られた反応混液を適量採取し、クロマロットS-III((株)ヤトロン製)にスポットし、ベンゼン:クロロホルム:酢酸(50:20:0.5(v/v))の混合溶媒で展開してからイヤトロスキャンTH-10((株)ヤトロン製)で脂質組成の分析を行った。その結果、脂質組成はトリグリセリド(TG)26.1%、脂肪酸(FFA)6.8%、ジグリセリド(DG)33.0%、モノグリセリド(MG)34.1%(重量%)であった。 このように魚油トリグリセリドの約70%がモノグリセリド及びジグリセリドに変換できることがわかった。得られた反応混液中の遊離脂肪酸はアルカリ脱酸法により水層に除去し、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドからなるグリセリド混合物90.8gを得た。グリセリド混合物中の脂肪酸組成は常法に従いメチルエステル化した後、キャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析した。 その結果、EPA5.7%、DHA24.6%であった。得られたグリセリド混合物は、原料としたマグロ油に比べ、乳化分散性及び安定性が飛躍的に向上しており、ドリンク剤350mlに対して、他の乳化剤を使用しなくても60mg(DHAとして14.8mg)の添加が可能であった。この乳化剤は5℃及び25℃で60日間密封保存しても油の分散や沈澱物の生成はまったく見られなかった。尚、5℃の保存において魚臭の発臭はまったくなかった。」(段落【0024】~【0027】) b 実施例2 (a) 「マグロ油(ケン化価:184.2,EPA:5.8%,DHA:23.3%)100g、水100g及びキャンディダ・シリンドラシェ(Candida cylindracea)のリパーゼ(名糖産業(株)製、リパーゼOF、360,000U/g)0.2gからなる反応混液を攪拌しながら30℃で16時間加水分解反応を行った。加水分解後の反応液は十分平衡に達していた。 次いで、該反応液からリパーゼを含む水層を除去して加水分解油を得た。(加水分解油の酸価は132.1であった。)さらに、該加水分解油から遊離した脂肪酸をアルカリ脱酸法によって水層に除去し、高度不飽和脂肪酸濃縮グリセリドを33.5g(収率33.5%)得た。この高度不飽和脂肪酸濃縮グリセリドの酸価は0.1であった。脂肪酸組成は、常法に従いメチルエステル化した後、キャピラリーガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、構成脂肪酸中のEPAは5.1%、DHAは47.8%であった。また、実施例1と同様にイヤトロスキャンで脂質組成の分析を行った結果、トリグリセリド(TG)85.3%、ジグリセリド(DG)12.9%、モノグリセリド(MG)1.8%であった。」(段落【0028】~【0029】) (b) 「このグリセリド混合物30gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより3.5gジグリセリド画分を精製単離した。このジグリセリドを常法に従いメチルエステル化した後、キャピラリーガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、EPAは4.1%、DHAは53.2%であった。」(段落【0030】) (c) 「次に、得られたジグリセリド3gとグリセリン0.4g(モル比で1:1)及び蒸留水150μlを含む反応系にシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)のリパーゼ(天野製薬(株)製、リパーゼAK、26,800U/g)を1,500U(ユニット)加え、攪拌しながら反応させた。反応は30℃で5時間、室温で16時間、次いで5℃で24時間行った。 得られた反応混液を実施例1と同様にイヤトロスキャンで脂質組成の分析を行ったところ、脂質組成は TG 18.8%、FFA 6.5%、DG 49.0%、MG 25.7%(重量%)であった。このように、マグロ油をリパーゼで選択的加水分解して得られた高度不飽和脂肪酸高含有油脂から、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製したジグリセリドについても、上記グリセロリシス反応により約25%モノグリセリド(MG)に変換させられることができた。 得られた反応混液中の遊離脂肪酸はアルカリ脱酸法により水層に除去し、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドからなるグリセリド混合物2.8gを得た。グリセリド混合物中の脂肪酸組成は、常法に従いメチルエステル化した後、キャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析した。 その結果、EPA4.5%、DHA53.8%であった。得られたグリセリド混合物は、原料としたマグロ油に比べ、乳化分散性及び安定性が飛躍的に向上しており、ドリンク剤350mlに対して他の乳化剤を使用しなくても60mg(DHAとして32.5mg)の添加が可能であった。この乳化剤は5℃及び25℃で60日間密封保存しても油の分散や沈澱物の生成はまったく見られなかった。尚、5℃の保存において魚臭の発臭はまったくなかった。」(段落【0031】~【0034】) (3) 引用例3 ア 特許請求の範囲 「長鎖高度不飽和脂肪酸を含有する油脂をリパーゼを用いて加水分解した後、脱グリセリンして得られた部分加水分解物であって、長鎖高度不飽和脂肪酸を多量に含むグリセリドと脂肪酸との混合物を用い、さらにクロモバクテリウム属(Chromobacterium)由来リパーゼを作用させることを特徴とする、長鎖高度不飽和脂肪酸含有トリグリセリドの製造方法。」(1ページ左下欄6~13行) イ 発明の詳細な説明 (ア) 産業上の利用分野 「本発明は油脂の製造法に関し、詳しくは長鎖高度不飽和脂肪酸を多量に含有するトリグリセリドの製造法に関する。」(1ページ左下欄16~18行) (イ) 課題を解決するための手段 「本発明に用いる長鎖高度不飽和脂肪酸含有油脂原料としては海産動物油、特にイワシ、サバ、サンマ、アジ、マグロ、カツオ等から得られる魚油がエイコサペンクエン酸やドコサヘキサエン酸を多く含むので好ましい。」(2ページ右上欄16~20行) (ウ) 実施例 a 実施例1 「魚油(IV=171.0,構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸23.5%(EPA13%、DHA8%))50gにキャンディダシリンドラシエより得られたリパーゼを油脂1gにつき100ユニットになるように量り取り、蒸留水50gを加えて、撹拌しながら室温で8時間反応させた。反応終了後、リパーゼを含む水層を除去して、分解油を得た。この分解油の酸価は128であった。この分解油の一部をとり脂肪酸部分をアルカリ脱酸法により除いてグリセリドを分取し、トリ-、ジ-、モノグリセリド比をTLC-クロマトスキャナー法で分析した結果、トリグリセリド75%、ジグリセリド23%、モノグリセリド2%であった。また、その構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸含量は47.3%であった。 この分解混合物を40℃の温湯で3回水洗して脱グリセリンし、50℃に昇温して乾燥窒素を吹き込みながら水分含量100ppm以下に調整した。この魚油分解物に固定化していない生のクロモバクテリウムリパーゼを油脂1g当たり1,000ユニット加え、乾燥窒素を吹き込みながら振盪し、45℃で24時間反応を行った。 反応後の油脂の脂肪酸部分をアルカリ脱酸法により除いてグリセリドを分取し、トリ-、ジ-、モノグリセリド比をTLC-クロマトスキャナー法で分析した結果、トリグリセリド85%、ジグリセリド13%、モノグリセリド2%であった。また、その構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸含量は45.3%(EPA10%、DHA28%)であった。」(3ページ右上欄2行~左下欄10行) b 実施例2 「実施例1と同様に分解、脱グリセリンした魚油分解物に10重量%のNa2SO4を加えて水分含量300ppmまで脱水し、セライト535に固定化したクロモバクテリウムリパーゼを油1gに対して1,000ユニット加え、乾燥窒素を吹き込みながら振盪撹拌し、50℃で24時間反応させた。反応後の油脂の脂肪酸部分をアルカリ脱酸法により除いてグリセリドを分取し、トリ-、ジ-、モノグリセリド比をTLC-クロマトスキャナー法で分析した結果、トリグリセリド98%、ジグリセリド2%、モノグリセリド0%であった。また、その構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸含量は42.3%(EPA11%、DHA26%)であった。」(3ページ左下欄12行~右下欄4行) c 実施例3 「魚油100gにクロモバクテリウムリパーゼをアミノ化ポリアクリロニトリル樹脂に固定化した固定化酵素を油脂1gにつき50ユニットになるように量り取り、蒸留水30gを加えて、撹拌しながら37℃で12時間反応させた。反応終了後、リパーゼを含む水層を除去して、分解油を得た。この分解油の酸価は125であった。 この分解油の一部をとり、脂肪酸部分をアルカリ脱酸法により除いてグリセリドを分取し、トリ-、ジ-、モノグリセリド比をTLC-クロマトスキャナー法で分析した結果、トリグリセリド70%、ジグリセリド25%、モノグリセリド5%であった。また、その構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸含量は46.2%であった。 この分解混合物を40℃の温湯で3回水洗して脱グリセリンし、50℃に昇温して乾燥窒素を吹き込みながら水分含量100ppm以下に調整した。DEAE-トヨパールに固定化したクロモバクテリウムリパーゼを油1gに対して2,000ユニット加え、乾燥窒素を吹き込みながら振盪撹拌し、60℃で15時間反応させた。反応後の油脂の脂肪酸部分をアルカリ脱酸法により除いてグリセリドを分取し、トリ-、ジ-、モノグリセリド比をTLC-クロマトスキャナー法で分析した結果、トリグリセリド97%、ジグリセリド3%、モノグリセリド0%であった。また、その構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸含量は40.4%(EPA9%、DHA27%)であった。」(3ページ右下欄6行~4ページ左上欄13行) d 実施例4 「実施例3と同様に固定化リパーゼで分解、脱グリセリンした魚油分解物を60℃まで昇温し、吸引脱水して水分含量60ppmまで脱水した。セファビーズFPに固定化したクロモバクテリウムリパーゼを油1gに対して500ユニット加え、連続脱水剤としてモレキュラーシーブ3Aを油脂に対して10重量%添加して振盪撹拌し、50℃で12時間反応させた。 反応後の油脂の脂肪酸部分をアルカリ脱酸法により除いてグリセリドを分取し、トリ-、ジ-、モノグリセリド比をTLC-クロマトスキャナー法で分析した結果、トリグリセリド98%、ジグリセリド2%、モノグリセリド0%であった。また、その構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸含量は42.4%(EPA10%、DHA28%)であった。」(4ページ左上欄15行~右上欄9行) e 比較例1 「実施例1と同様に分解、脱グリセリン、脱水した魚油分解物にセライト535に固定化したキャンディダシリンドラシエ由来リパーゼを油脂1gに対して1,000ユニット加え、45℃で振盪撹拌を行い、連続脱水のための乾燥窒素を吹き込みながら24時間反応させた。 反応後の油脂の脂肪酸部分をアルカリ脱酸法により除いてグリセリドを分取し、トリ-、ジ-、モノグリセリド比をTLC-クロマトスキャナー法で分析した結果、トリグリセリド74%、ジグリセリド23%、モノグリセリド3%であった。また、その構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸含量は45.3%(EPA11%、DHA29%)であり、トリグリセリド比の上昇は望めなかった。」(4ページ右上欄11行~左下欄4行) 2 引用例に記載された発明 (1) 引用例1 ア 引用発明1-3 引用例1の実施例3には、イワシ油とカツオ油を混合して得られた油脂にアルカリゲネス属由来のリパーゼとキャンディダ属由来のリパーゼを加え、加水分解油を得た後、実施例1と同様に油層を回収し、グリセリンと遊離脂肪酸を除去して、EPA及びDHAが濃縮されたグリセリドを得たこと、その酸価は1.1で、EPA及びDHAはそれぞれ25.3%及び26.1%であったことが記載されている(前記1(1)イ(オ)b)。 ここで、油脂の成分はトリグリセリドであるから、油脂をリパーゼで加水分解すると、リパーゼを含む水層、グリセリン、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド及び遊離脂肪酸が含まれることになるところ、上記実施例3は、実施例1(前記1(1)イ(オ)a)と同様に油層を回収し、グリセリン及び遊離脂肪酸を除去したとのことなので、当該実施例でも、加水分解油を遠心分離して油層を回収し、水洗によりグリセリンを除去した後、分子蒸留により遊離脂肪酸を除去している。したがって、実施例3において得られたグリセリドはグリセリド(トリグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリド)の割合が実質100%に近いものと認められる。また、当該グリセリド中のEPA及びDHAの割合より、DHA/EPAが1.03(=26.1%/25.3%)である。 したがって、引用例1の実施例3には、「DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が1.1であり、前記組成物中の油脂成分に対し、グリセリド含量が実質100質量%で、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=1.03で含み、前記組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が26.1質量%である、DHA含有グリセリド含有組成物。」についての発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「引用発明1-3」という。) イ 引用発明1-比1 引用例1の比較例1には、イワシ油にキャンディダ属由来のリパーゼを加え加水分解油を得た後、実施例1と同様に油層を回収し、グリセリンと遊離脂肪酸を除去して、EPA及びDHAが濃縮されたグリセリドを得たこと、その酸価は1.2で、EPA及びDHAはそれぞれ19.5%及び25.6%であったことが記載されている(前記1(1)イ(オ)c)。 ここで、前記アで述べたのと同様の理由で、比較例1において得られたグリセリドはグリセリドの割合が実質100%に近いものと認められる。また、当該グリセリド中のEPA及びDHAの割合より、DHA/EPAが1.31(=25.6%/19.5%)である。 したがって、引用例1の比較例1には、「DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が1.2であり、前記組成物中の油脂成分に対し、グリセリド含量が実質100質量%で、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=1.31で含み、前記組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が25.6質量%である、DHA含有グリセリド含有組成物。」についての発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「引用発明1-比1」という。) ウ 引用発明1-比2 引用例1の比較例2には、マグロ油にアルカリゲネス属由来のリパーゼを加え加水分解油を得た後、実施例1と同様に油層を回収し、グリセリンと遊離脂肪酸を除去して、EPA及びDHAが濃縮されたグリセリドを得たこと、その酸価は1.1で、EPA及びDHAはそれぞれ14.8%及び26.9%であったことが記載されている(前記1(1)イ(オ)d)。 ここで、前記アで述べたのと同様の理由で、比較例2において得られたグリセリドはグリセリドの割合が実質100%に近いものと認められる。また、当該グリセリド中のEPA及びDHAの割合より、DHA/EPAが1.82(=26.9%/14.8%)である。 したがって、引用例1の比較例2には、「DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が1.1であり、前記組成物中の油脂成分に対し、グリセリド含量が実質100質量%で、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=1.82で含み、前記組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が26.9質量%である、DHA含有グリセリド含有組成物。」についての発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「引用発明1-比2」という。) (2) 引用例2 ア 引用発明2-1 引用例2の実施例1には、マグロ油とグリセリンを含む反応系にリパーゼを加え反応させた反応混液の脂質組成を分析したところ、トリグリセリド26.1%、脂肪酸6.8%、ジグリセリド33.0%、モノグリセリド34.1%(重量%)であったこと、得られた反応混液中の脂肪酸をアルカリ脱酸法により水層に除去し、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドからなるグリセリド混合物を得たこと、このグリセリド混合物中の脂肪酸組成を分析したところ、EPA5.7%、DHA24.6%であったことが記載されている(前記1(2)イ(ウ)a)。 ここで、上記実施例1では、アルカリ脱酸による脂肪酸除去後の酸価は記載されていないが、実施例2では、脂肪酸をアルカリ脱酸法によって除去することにより、酸価が132.1から0.1まで減少したことが記載されている(前記1(2)イ(ウ)b(a))ことから、マグロ油のリパーゼによる加水分解物をアルカリ脱酸法で脂肪酸除去を行う実施例1においても、酸価は実施例2の数値と同程度であるものと認められる。そして、当該グリセリド混合物中の脂肪酸組成より、グリセリド中のDHA/EPAは4.3(=24.6%/5.7%)であり、また、当該グリセリド混合物中のモノグリセリドの割合は36.6%(=34.1%/(26.1%+33.0%+34.1%))で、ジグリセリドの割合は35.4%(=33.0%/(26.1%+33.0%+34.1%))で、トリグリセリドの割合は28.0%(=26.1%/(26.1%+33.0%+34.1%))である。 したがって、引用例2の実施例1には、「DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対し、グリセリド含量が100質量%で、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=4.3で含み、前記組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が24.6質量%であり、前記組成物中の油脂成分に対し、モノグリセリドの割合が36.6%で、ジグリセリドの割合が35.4%で、トリグリセリドの割合が28.0%で、原料油脂がマグロ油である、DHA含有グリセリド含有組成物。」についての発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「引用発明2-1」という。) イ 引用発明2-2-1 引用例2の実施例2には、マグロ油にリパーゼを加え加水分解反応を行った反応液からリパーゼを含む水層を除去して加水分解油を得、当該加水分解油から遊離脂肪酸をアルカリ脱酸法によって水層に除去し、酸価が0.1の高度不飽和脂肪酸濃縮グリセリド混合物を得たこと、当該グリセリド混合物の脂肪酸組成を分析したところ、EPA5.1%、DHA47.8%であったこと、当該グリセリド混合物の脂質組成を分析したところ、トリグリセリド85.3%、ジグリセリド12.9%、モノグリセリド1.8%であったことが記載されている(前記1(2)イ(ウ)b(a))。ここで、当該グリセリド混合物中の脂肪酸組成より、グリセリド混合物中のDHA/EPAは9.4(=47.8%/5.1%)である。 したがって、引用例2の実施例2には、「DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対し、グリセリド含量が100質量%で、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=9.4で含み、前記組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が47.8質量%で、前記組成物中の油脂成分に対し、モノグリセリドの割合が1.8%で、ジグリセリドの割合が12.9%で、トリグリセリドの割合が85.3%で、原料油脂がマグロ油である、DHA含有グリセリド含有組成物。」についての発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「引用発明2-2-1」という。) ウ 引用発明2-2-2 引用例2の実施例2には、マグロ油にリパーゼを加え加水分解反応を行った反応液からリパーゼを含む水層を除去して加水分解油を得、当該加水分解油から遊離脂肪酸をアルカリ脱酸法によって水層に除去し、酸価が0.1の高度不飽和脂肪酸濃縮グリセリド混合物を得たこと、このグリセリド混合物からジグリセリド画分を精製単離したこと、このジグリセリド画分の脂肪酸組成を分析したところ、EPAは4.1%、DHAは53.2%であったことが記載されている(前記1(2)イ(ウ)b(a)及び(b))。ここで、当該ジグリセリド画分中の脂肪酸組成より、ジグリセリド中のDHA/EPAは13(=53.2%/4.1%)である。また、当該ジグリセリド画分は、酸価が0.1の高度不飽和脂肪酸濃縮グリセリド混合物をさらに精製したものであるから、当該ジグリセリド画分の酸価は前記グリセリド混合物と同様の0.1であると認められる。 したがって、引用例2の実施例2には、「DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対し、グリセリド含量が100質量%で、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=13で含み、前記組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が53.2質量%で、前記組成物中の油脂成分に対し、モノグリセリドの割合が0%で、ジグリセリドの割合が100%で、トリグリセリドの割合が0%で、原料油脂がマグロ油である、DHA含有グリセリド含有組成物。」についての発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「引用発明2-2-2」という。) エ 引用発明2-2-3 引用例2の実施例2には、マグロ油にリパーゼを加え加水分解反応を行った反応液からリパーゼを含む水層を除去して加水分解油を得、当該加水分解油から遊離脂肪酸をアルカリ脱酸法によって水層に除去し、酸価が0.1の高度不飽和脂肪酸濃縮グリセリド混合物を得たこと、このグリセリド混合物からジグリセリド画分を精製単離したこと、当該ジグリセリド画分とグリセリンの1:1(モル比)の混合物にリパーゼを加えて反応させ、得られた反応混液の脂質組成を分析したところ、トリグリセリド18.8%、脂肪酸6.5%、ジグリセリド49.0%、モノグリセリド25.7%であったこと、得られた反応混液中の遊離脂肪酸をアルカリ脱酸法により水層に除去し、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドからなるグリセリド混合物を得たこと、このグリセリド混合物中の脂肪酸組成を分析したところ、EPA4.5%、DHA53.8%であったことが記載されている(前記1(2)イ(ウ)b(a)ないし(c))ここで、当該グリセリド混合物は、酸価が0.1の高度不飽和脂肪酸濃縮グリセリド混合物に脂肪酸を加えることなく精製したものであるから、当該グリセリド混合物の酸価は酸価が0.1の高度不飽和脂肪酸濃縮グリセリド混合物と同様の0.1であると認められる。そして、当該グリセリド混合物の脂肪酸組成より、ジグリセリド中のDHA/EPAは12(=53.8%/4.5%)であり、また、当該グリセリド混合物中のモノグリセリドの割合は27.5%(=25.7%/(18.8%+49.0%+25.7%))で、ジグリセリドの割合は52.4%(=49.0%/(18.8%+49.0%+25.7%))で、トリグリセリドの割合は20.1%(=18.8%/(18.8%+49.0%+25.7%))である。 したがって、引用例2の実施例2には、「DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対し、グリセリド含量が100質量%で、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=12で含み、前記組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が53.8質量%であり、前記組成物中の油脂成分に対し、モノグリセリドの割合が27.5%で、ジグリセリドの割合が52.4%で、トリグリセリドの割合が20.1%で、原料油脂がマグロ油である、DHA含有グリセリド含有組成物。」についての発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「引用発明2-2-3」という。) (3) 引用例3 ア 引用発明3-1 引用例3の実施例1には、魚油にキャンディダシリンドラシエより得られたリパーゼを加え反応させ、反応終了後、リパーゼを含む水層を除去して分解油を得たこと、この分解混合物を水洗して脱グリセリンし、50℃に昇温して乾燥窒素を吹き込みながら水分含量を100ppm以下に調整した後、固定化していない生のクロモバクテリウム リパーゼを加え、乾燥窒素を吹き込みながら反応を行い、反応後の油脂の脂肪酸をアルカリ脱酸法により除いてグリセリドを分取し、トリ-、ジ-、モノ-グリセリドの比を分析したところ、トリグリセリド85%、ジグリセリド13%、モノグリセリド2%であったこと、当該グリセリドの構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸含量は45.3%で、内訳としてEPAが10%、DHAが28%であったことが記載されている。(前記1(3)イ(ウ)a)。 ここで、上記実施例1には、得られたグリセリドの酸価は記載されていないが、たとえば、引用例2の実施例2では、脂肪酸をアルカリ脱酸法によって除去することにより、酸価が132.1から0.1まで減少したことが記載されている(前記1(2)イ(ウ)b(a))ことから、魚油のリパーゼによる加水分解物について、アルカリ脱酸法で脂肪酸を除去する上記実施例1においても、酸価は引用例2の実施例2の数値と同程度であるものと認められる。そして、当該グリセリド中の脂肪酸組成より、グリセリド中のDHA/EPAは2.8(=28%/10%)である。 したがって、引用例3の実施例1には、「DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対し、グリセリド含量が100質量%で、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=2.8で含み、前記組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が28質量%であり、前記組成物中の油脂成分に対し、モノグリセリドの割合が2%で、ジグリセリドの割合が13%で、トリグリセリドの割合が85%で、原料油脂が魚油である、DHA含有グリセリド含有組成物。」についての発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「引用発明3-1」という。) イ 引用発明3-2 引用例3の実施例2には、魚油にキャンディダシリンドラシエより得られたリパーゼを加え反応させ、反応終了後、リパーゼを含む水層を除去して魚油分解物を得たこと、この分解物を水洗して脱グリセリンし、Na2SO4を加えて水分含量300ppmまで脱水した後、セライト535に固定化したクロモバクテリウム リパーゼを加え、乾燥窒素を吹き込みながら反応を行い、反応後の油脂の脂肪酸をアルカリ脱酸法により除いてグリセリドを分取し、トリ-、ジ-、モノ-グリセリドの比を分析したところ、トリグリセリド98%、ジグリセリド2%、モノグリセリド0%であったこと、当該グリセリドの構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸含量は42.3%で、内訳としてEPAが11%、DHAが26%であったことが記載されている。(前記1(3)イ(ウ)b)。 ここで、上記実施例2には、得られたグリセリドの酸価は記載されていないが、前記アで述べたのと同様の理由で、その値は約0.1であるものと認められる。そして、当該グリセリド中の脂肪酸組成より、グリセリド中のDHA/EPAは2.4(=26%/11%)である。 したがって、引用例3の実施例2には、「DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対し、グリセリド含量が100質量%で、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=2.4で含み、前記組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が26質量%で、原料油脂が魚油である、DHA含有グリセリド含有組成物。」についての発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「引用発明3-2」という。) ウ 引用発明3-3 引用例3の実施例3には、魚油にアミノ化ポリアクリロニトリル樹脂に固定化したクロモバクテリウム リパーゼを加え反応させ、反応終了後、リパーゼを含む水層を除去して分解油を得たこと、この分解混合物を水洗して脱グリセリンし、50℃に昇温して乾燥窒素を吹き込みながら水分含量を100ppm以下に調整した後、DEAE-トヨパールに固定化したクロモバクテリウム リパーゼを加え、乾燥窒素を吹き込みながら反応を行い、反応後の油脂の脂肪酸をアルカリ脱酸法により除いてグリセリドを分取し、トリ-、ジ-、モノ-グリセリドの比を分析したところ、トリグリセリド97%、ジグリセリド3%、モノグリセリド0%であったこと、当該グリセリドの構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸含量は40.4%で、内訳としてEPAが9%、DHAが27%であったことが記載されている。(前記1(3)イ(ウ)c)。 ここで、上記実施例3には、得られたグリセリドの酸価は記載されていないが、前記アで述べたのと同様の理由で、その値は約0.1であるものと認められる。そして、当該グリセリド中の脂肪酸組成より、グリセリド中のDHA/EPAは3.0(=27%/9%)である。 したがって、引用例3の実施例3には、「DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対し、グリセリド含量が100質量%で、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=3.0で含み、前記組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が27質量%で、原料油脂が魚油である、DHA含有グリセリド含有組成物。」についての発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「引用発明3-3」という。) エ 引用発明3-4 引用例3の実施例4には、魚油にアミノ化ポリアクリロニトリル樹脂に固定化したクロモバクテリウム リパーゼを加え反応させ、反応終了後、リパーゼを含む水層を除去して魚油分解物を得たこと、この分解物を水洗して脱グリセリンし、60℃まで昇温して、吸引脱水し水分含量60ppmまで低下させたこと、その後、セファビーズFPに固定化したクロモバクテリウム リパーゼと連続脱水剤としてモレキュラーシーブ3Aを加えて反応を行い、反応後の油脂の脂肪酸をアルカリ脱酸法により除いてグリセリドを分取し、トリ-、ジ-、モノ-グリセリドの比を分析したところ、トリグリセリド98%、ジグリセリド2%、モノグリセリド0%であったこと、当該グリセリドの構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸含量は42.4%で、内訳としてEPAが10%、DHAが28%であったことが記載されている。(前記1(3)イ(ウ)d)。 ここで、上記実施例4には、得られたグリセリドの酸価は記載されていないが、前記アで述べたのと同様の理由で、その値は約0.1であるものと認められる。そして、当該グリセリド中の脂肪酸組成より、グリセリド中のDHA/EPAは2.8(=28%/10%)である。 したがって、引用例3の実施例4には、「DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対し、グリセリド含量が100質量%で、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=2.8で含み、前記組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が28質量%で、原料油脂が魚油である、DHA含有グリセリド含有組成物。」についての発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「引用発明3-4」という。) オ 引用発明3-比1 引用例3の比較例1には、魚油にキャンディダシリンドラシエより得られたリパーゼを加え反応させ、反応終了後、リパーゼを含む水層を除去して分解油を得たこと、この分解混合物を水洗して脱グリセリンし、50℃に昇温して乾燥窒素を吹き込みながら水分含量を100ppm以下に調整した後、セライト535に固定化したキャンディダシリンドラシエ由来リパーゼを加え、連続脱水のための乾燥窒素を吹き込みながらと反応を行い、反応後の油脂の脂肪酸をアルカリ脱酸法により除いてグリセリドを分取し、トリ-、ジ-、モノ-グリセリドの比を分析したところ、トリグリセリド74%、ジグリセリド23%、モノグリセリド3%であったこと、当該グリセリドの構成脂肪酸中の長鎖高度不飽和脂肪酸含量は45.3%で、内訳としてEPAが11%、DHAが29%であったことが記載されている。(前記1(3)イ(ウ)e)。 ここで、上記実施例4には、得られたグリセリドの酸価は記載されていないが、前記アで述べたのと同様の理由で、その値は約0.1であるものと認められる。そして、当該グリセリド中の脂肪酸組成より、グリセリド中のDHA/EPAは2.6(=29%/11%)である。 したがって、引用例3の比較例1には、「DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対し、グリセリド含量が100質量%で、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=2.6で含み、前記組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が29質量%であり、前記組成物中の油脂成分に対し、モノグリセリドの割合が3%で、ジグリセリドの割合が23%で、トリグリセリドの割合が74%で、原料油脂が魚油である、DHA含有グリセリド含有組成物。」についての発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「引用発明3-比1」という。) 第6 判断 1 本件発明4 (1) 特許法第29条第1項第3号について ア 本件発明4と引用例1に記載された発明の対比・判断 本件発明4と引用発明1-3を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が1.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が実質100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=1.03で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 本件発明4と引用発明1-比1を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が1.2であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が実質100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=1.31で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 本件発明4と引用発明1-比2を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価は1.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が実質100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=1.82で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する したがって、本件発明4は引用例1に記載された発明である。 イ 本件発明4と引用例2に記載された発明の対比・判断 本件発明4と引用発明2-1を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=4.3で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 本件発明4と引用発明2-2-1を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=9.4で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 したがって、本件発明4は引用例2に記載された発明である。 ウ 本件発明4と引用例3に記載された発明の対比・判断 本件発明4と引用発明3-1を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=2.8で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 本件発明4と引用発明3-2を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=2.4で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 本件発明4と引用発明3-3を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=3.0で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 本件発明4と引用発明3-4を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=2.8で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 本件発明4と引用発明3-比1を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=2.6で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 したがって、本件発明4は引用例3に記載された発明である。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1ないし3に記載された発明である。 (2) 特許法第29条第2項について 本件発明4は、DHA含有グリセリド含有組成物について、その酸価、組成物中の油脂成分に対するグリセリド含量、及びグリセリド中の構成脂肪酸としてのDHAとEPAの比で特定するものであるところ、前記(1)のとおり、本件発明4は前記(1)で言及した引用発明を包含するものである。そして、これら引用発明における本件発明4の発明特定事項に対応する数値が、これら引用発明から多少外れるものについては、これら引用例に記載された処理条件を変更することによって得ることができるものであるところ、このようなものを想到することに格別の創意は認められない。 したがって、本件発明4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1ないし3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 2 本件発明5 (1) 特許法第29条第1項第3号について ア 本件発明5と引用例1に記載された発明の対比・判断 引用発明1-3のDHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が26.1質量%であることから、本件発明5と引用発明1-3は、DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合においても一致する。 引用発明1-比1のDHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が25.6質量%であることから、本件発明5と引用発明1-比1は、DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合においても一致する。 引用発明1-比2のDHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が26.9質量%であることから、本件発明5と引用発明1-比2は、DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合においても一致する。 したがって、本件発明5は引用例1に記載された発明である。 イ 本件発明5と引用例2に記載された発明の対比・判断 引用発明2-1のDHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が24.6質量%であることから、本件発明5と引用発明2-1は、DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合においても一致する。 引用発明2-2-1のDHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が47.8質量%であることから、本件発明5と引用発明2-2-1は、DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合においても一致する。 したがって、本件発明5は引用例2に記載された発明である。 ウ 本件発明5と引用例3に記載された発明の対比・判断 引用発明3-1のDHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が28質量%であることから、本件発明5と引用発明3-1は、DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合においても一致する。 引用発明3-2のDHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が26質量%であることから、本件発明5と引用発明3-2は、DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合においても一致する。 引用発明3-3のDHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が27質量%であることから、本件発明5と引用発明3-3は、DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合においても一致する。 引用発明3-4のDHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が28質量%であることから、本件発明5と引用発明3-4は、DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合においても一致する。 引用発明3-比1のDHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合が29質量%であることから、本件発明5と引用発明3-比1は、DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合においても一致する。 したがって、本件発明5は引用例3に記載された発明である。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1ないし3に記載された発明である。 (2) 特許法第29条第2項について 本件発明5は、DHA含有グリセリド含有組成物について、その酸価、組成物中の油脂成分に対するグリセリド含量、グリセリド中の構成脂肪酸としてのDHAとEPAの比、及びグリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合で特定するものであるところ、前記(1)のとおり、本件発明5は前記(1)で言及した引用発明を包含するものである。そして、これら引用発明における本件発明5の発明特定事項に対応する数値が、これら引用発明から多少外れるものについては、これら引用例に記載された処理条件を変更することによって得ることができるものであるところ、このようなものを想到することに格別の創意は認められない。 したがって、本件発明5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1ないし3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 3 本件発明6 (1) 特許法第29条第1項第3号について ア 本件発明6と引用例2に記載された発明の対比・判断 引用発明2-1のDHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対して、モノグリセリドの割合は36.6%で、ジグリセリドの割合は35.4%であることから、本件発明6と引用発明2-1は、DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対するモノグリセリド及びジグリセリドの割合においても一致する。したがって、本件発明6は本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例2に記載された発明である。 (2) 特許法第29条第2項について 本件発明4を引用する本件発明6は、DHA含有グリセリド含有組成物について、その酸価、組成物中の油脂成分に対するグリセリド含量、グリセリド中の構成脂肪酸としてのDHAとEPAの比、並びに、組成物中の油脂成分に対するモノグリセリド及びジグリセリドで特定するものであり、また、本件発明5を引用する本件発明6は、さらに、グリセリド中に構成脂肪酸として含まれるDHAの割合又はで特定するものであるところ、前記(1)のとおり、本件発明6は引用発明2-1を包含するものである。そして、引用発明2-1における本件発明6の発明特定事項に対応する数値が、当該引用発明から多少外れるものについては、引用例2に記載された処理条件を変更することによって得ることができるものであるところ、このようなものを想到することに格別の創意は認められない。 したがって、本件発明6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例2に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 4 本件発明8 (1) 特許法第36条第6項第2号について 本件発明8は、「(但し、マグロ油を原料油脂とするDHA含有グリセリド含有組成物と同一組成の物を除く)」との表現により発明を特定するものである。しかし、「マグロ油を原料油脂とするDHA含有グリセリド含有組成物」という表現では当該組成物の具体的な組成が不明であることから、「マグロ油を原料油脂とするDHA含有グリセリド含有組成物と同一組成の物」がどのような物か不明であり、本件発明8から除かれる物の範囲が不明である。そうしてみると、本件発明8と本件発明8から除かれる物を明確に区別することができないから、本件発明8についての特許請求の範囲の記載は、明確ではない。 (2) 特許法第29条第1項第3号について ア はじめに 前記(1)で述べたように、本件発明8は特許請求の範囲の記載が不明確であることから、本件発明8と引用発明の対比を正しく行うことができない。そこで、本件発明8を不明確とする「(但し、マグロ油を原料油脂とするDHA含有グリセリド含有組成物と同一組成の物を除く)」との発明特定事項の以外の本件発明8の発明特定事項について、本件発明8と引用例2に記載された発明の対比を行う。 イ 本件発明8と引用例2に記載された発明の対比 本件発明8と引用発明2-1を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=4.3で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 本件発明8と引用発明2-2-1を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=9.4で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 本件発明8と引用発明2-2-2を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=13で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 本件発明8と引用発明2-2-3を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=12で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致する。 ウ 判断 前記イのとおり、本件発明8を不明確とする発明特定事項の以外の本件発明8の発明特定事項については、引用例2に記載された各発明と一致する。そして、本件発明8を不明確とする発明特定事項により、本件発明8と引用例2に記載された各発明が相違すると判断することは適切ではない。したがって、本件発明8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例2に記載された発明である。 (3) 特許法第29条第2項について ア はじめに 前記(1)で述べたように、本件発明8は特許請求の範囲の記載が不明確であることから、本件発明8と引用発明の対比を正しく行うことができない。そこで、本件発明8を不明確とする「マグロ油を原料油脂とするDHA含有グリセリド含有組成物と同一組成の物を除く」との発明特定事項が、「原料油脂がマグロ油であるDHA含有グリセリド含有組成物を除く」との意味であると仮定して、以下に、本件発明8の進歩性について検討する。 イ 本件発明8と引用例2に記載された発明の対比・判断 (ア) 対比 本件発明8と引用発明2-1を対比すると、両者のDHA含有グリセリド含有組成物は、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=4.3で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致し、本件発明8は原料油脂がマグロ油であるDHA含有グリセリド含有組成物を除くのに対し、引用発明2-1の原料油脂はマグロ油である点において相違する。 本件発明8と引用発明2-2-1を対比すると、両者のDHA含有グリセリド含有組成物は、その酸価が0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=9.4で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致し、本件発明8は原料油脂がマグロ油であるDHA含有グリセリド含有組成物を除くのに対し、引用発明2-2-1の原料油脂はマグロ油である点において相違する。 本件発明8と引用発明2-2-2を対比すると、両者のDHA含有グリセリド含有組成物は、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=13で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致し、本件発明8は原料油脂がマグロ油であるDHA含有グリセリド含有組成物を除くのに対し、引用発明2-2-2の原料油脂はマグロ油である点において相違する。 本件発明8と引用発明2-2-3を対比すると、両者のDHA含有グリセリド含有組成物は、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=12で含む、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致し、本件発明8は原料油脂がマグロ油であるDHA含有グリセリド含有組成物を除くのに対し、引用発明2-2-3の原料油脂はマグロ油である点において相違する。 (イ) 判断 前記(ア)で述べた本件発明8と引用例2に記載された発明の相違点は、いずれも、本件発明8は原料油脂がマグロ油であるDHA含有グリセリド含有組成物を除くのに対し、引用例2に記載された発明の原料油脂はマグロ油である点で共通することから、この相違点についてまとめて判断を行う。 引用例1には、EPAとDHAがともに高純度に濃縮されたグリセリドを効率よく、かつ安価に製造することができる製造方法を提供することを目的とするものであるところ(前記第5の1(1)イ(ウ))、引用例1に記載された発明では、カツオ油、マグロ油、イワシ油などの魚油から、EPA及びDHAをそれぞれ25%以上含むグリセリドを、安価に工業的規模で製造することができたと記載されている(前記第5の1(1)イ(オ)e)。また、引用例2には、構成脂肪酸に高度不飽和脂肪酸を高濃度に含有し、好ましくはDHA30%以上を含むものの例として、マグロ、カツオ、イワシ、サバ、アジ、サンマ、タラ、イカ等の魚油が記載されている(前記第5の1(2)イ(イ)b)。さらに、引用例3には、イワシ、サバ、サンマ、アジ、マグロ、カツオ等から得られる魚油がEPAやDHAを多く含むことが記載されている(前記第5の1(3)イ(イ))。 このように、マグロ油のほかにも、カツオ油やイワシ油といった魚油がEPAやDHAを多く含むことが、本件特許の出願前に公知の事項であった。そうしてみると、引用例2に記載された各発明において、原料油脂をマグロ油以外の魚油とすることは、当業者であれば格別の創意を要する事項とは認められない。 したがって、本件発明8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1ないし3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 5 本件発明9 (1) 特許法第29条第1項第3号について ア 本件発明9と引用例1に記載された発明の対比 グリセリド中のDHAとEPAの質量比について、本件発明9は、DHA/EPA=3.4~15であるのに対し、引用例1に記載された各発明(引用発明1-3、引用発明1-比1、引用発明1-比2)は、DHA/EPA=1.03~1.82である点において、本件発明9と引用例1に記載された発明は少なくとも相違する。 イ 本件発明9と引用例2に記載された発明の対比 組成物中の油脂成分に対するモノグリセリド及びジグリセリドの割合について、本件発明9は、それぞれ、0%以上20質量%以下及び15質量%以上50質量%以下であるのに対し、引用発明2-1では、それぞれ、36.6%及び35.4%、引用発明2-2-1では、それぞれ、1.8%及び12.9%、引用発明2-2-2では、それぞれ、0%及び100%、引用発明2-2-3では、それぞれ、27.5%及び52.4%であり、本件発明9と引用例2に記載された各発明は、組成物中の油脂成分に対するモノグリセリドの割合及び/又はジグリセリドの割合において相違する。 ウ 本件発明9と引用例3に記載された発明の対比 グリセリド中のDHAとEPAの質量比について、本件発明9は、DHA/EPA=3.4~15であるのに対し、引用例3に記載された各発明(引用発明3-1、引用発明3-2、引用発明3-3、引用発明3-4、引用発明3-比1)は、DHA/EPA=2.4~3.0である点において、本件発明9と引用例3に記載された各発明は少なくとも相違する。 エ 小括 以上に述べたように、本件発明9と引用例1又は引用例3に記載された発明は、グリセリド中のDHAとEPAの質量比について相違し、また、本件発明9と引用例2に記載された発明は、組成物中の油脂成分に対するモノグリセリドの割合及び/又はジグリセリドの割合において相違することから、本件発明9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1ないし3に記載された発明ということはできない。 (2) 特許法第29条第2項について 前記(1)のとおり、本件発明9と引用例1又は引用例3に記載された発明は、グリセリド中のDHAとEPAの質量比について相違するところ、引用例1ないし3には、DHA含有グリセリド含有組成物のグリセリド中のDHA/EPAの値を大きくする方法についての開示はない。また、本件発明9と引用例2に記載された発明は、組成物中の油脂成分に対するモノグリセリドの割合及び/又はジグリセリドの割合において相違するところ、引用例1ないし3には、DHA含有グリセリド含有組成物中の油脂成分に対するモノグリセリドの割合とジグリセリドの割合を本件発明9で特定された範囲内に調整する方法についての開示はない。そうしてみると、たとえ当業者であっても、引用例1ないし3の記載から、本件発明9を容易に想到することができるということはできない。 したがって、本件発明9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1ないし3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたということはできない。 6 本件発明10 (1) 特許法第29条第1項第3号について ア 本件発明10と引用例2に記載された発明の対比・判断 本件発明10と引用発明2-2-1を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=9.4で含み、前記組成物中の油脂成分に対しトリグリセリドの割合が85.3質量%である、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致し、本件発明10の原料油脂がイワシ油であるのに対し、引用発明2-2-1の原料油脂がマグロ油である点において一応相違する。 しかし、原料Aをある一連の手段で処理することにより得ることができる組成物と、原料Bをそれとは異なる一連の手段で処理することにより得ることができる組成物が、物として異なるか否かは不明であるため、DHA含有グリセリド含有組成物という物の発明をその原料で特定することは、物の発明の発明特定事項として、発明を不明確にするものであり、また、物の発明の発明特定事項として、物を区別するために寄与するものではない。そうしてみると、上述した一応の相違点を実質的な相違点ということはできない。 したがって、本件発明10は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例2に記載された発明である。 (2) 特許法第29条第2項について ア 本件発明10と引用例2に記載された発明の対比・判断 本件発明10が引用発明2-2-1と同一である点は、前記(1)アのとおりであるが、仮に、本件発明10と引用発明2-2-1が原料油脂の点で相違するとしても、引用例1ないし3には、前記4(3)イ(イ)のとおりの記載があり、マグロ油やイワシ油がEPAやDHAを多く含むことは本件特許の出願前に公知の事項であったことから、引用発明2-2-1の原料油脂であるマグロ油をイワシ油とすることは当業者であれば格別の創意を要する事項とは認められない。 7 本件発明13 (1) 特許法第29条第1項第3号について ア 本件発明13と引用例2に記載された発明の対比・判断 本件発明13と引用発明2-2-1を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=9.4で含み、前記組成物中の油脂成分に対し、モノグリセリドの割合が1.8質量%で、ジグリセリドの割合が12.9質量%で、トリグリセリドの割合が85.3質量%である、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致し、本件発明13の原料油脂がイワシ油であるのに対し、引用発明2-2-1の原料油脂がマグロ油である点において一応相違する。 しかし、当該一応の相違点についての判断は、前記6(1)アで述べたとおりである。したがって、本件発明13は引用例2に記載された発明である。 イ 本件発明13と引用例3に記載された発明の対比・判断 本件発明13と引用発明3-1を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=2.8で含み、前記組成物中の油脂成分に対し、モノグリセリドの割合が2質量%で、ジグリセリドの割合が13質量%で、トリグリセリドの割合が85質量%である、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致し、本件発明13の原料油脂がイワシ油であるのに対し、引用発明3-1の原料油脂が魚油である点において一応相違する。また、本件発明13と引用発明3-比1を対比すると、両者は、DHA含有グリセリド含有組成物であって、その酸価が約0.1であり、前記組成物中の油脂成分に対しグリセリド含量が100質量%であり、前記グリセリド中に構成脂肪酸としてDHAとEPAをDHA/EPA=2.6で含み、前記組成物中の油脂成分に対し、モノグリセリドの割合が3質量%で、ジグリセリドの割合が23質量%で、トリグリセリドの割合が74質量%である、DHA含有グリセリド含有組成物である点において一致し、本件発明13の原料油脂がイワシ油であるのに対し、引用発明3-比1の原料油脂が魚油である点において一応相違する。 しかし、当該一応の相違点についての判断は、前記6(1)アで述べたとおりである。したがって、本件発明13は引用例3に記載された発明である。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明13は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例2又は3に記載された発明である。 (2) 特許法第29条第2項について ア 本件発明13と引用例2に記載された発明の対比・判断 本件発明13が引用発明2-2-1と同一である点は、前記(1)アのとおりであるが、仮に、本件発明13と引用発明2-2-1が原料油脂の点で相違するとしても、前記6(2)アで述べたのと同じ理由で、引用発明2-2-1の原料油脂であるマグロ油をイワシ油とすることは当業者であれば格別の創意を要する事項とは認められない。 イ 本件発明13と引用例3に記載された発明の対比・判断 本件発明13が引用発明3-1及び引用発明3-比1と同一である点は、前記(1)イのとおりであるが、仮に、本件発明13と引用発明3-1及び引用発明3-比1が原料油脂の点で相違するとしても、引用例3には、DHAやEPAを多く含む魚油としてイワシから得られるものが例示されている(前記第5の1(3)イ(イ))し、引用例1や2にも、DHAやEPAを含有するグリセリドを製造する際の原料油脂としてイワシ油の例示があることを考慮すると、引用例3に記載された発明の原料油脂であるマグロ油をイワシ油とすることは当業者であれば格別の創意を要する事項とは認められない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明13は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1ないし3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本件発明4ないし6、8、10及び13は、引用例1ないし3に記載された発明であるから、請求項4ないし6、8、10及び13に係る発明についての特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。また、本件発明4ないし6、8、10及び13は、引用例1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4ないし6、8、10及び13に係る発明についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。さらに、請求項8に係る発明についての特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 一方、請求項9に係る発明についての特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項9に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700057

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