特許拒絶査定不服審判
2018-015398
無尽蔵発電理論に基づく発電___
- 審判番号
- 2018-015398
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-250371外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年11月03日
- 審決日
- 2019年09月18日
- 公報発行日
- 2020年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】新谷 瑞穗
- 分類
- P18 .536-WZ (H02N) / P18 .537-WZ (H02N) / P18 .1 -WZ (H02N) / P18 .113-WZ (H02N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法36条4項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-250371「無尽蔵発電理論に基づく発電___」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月16日出願公開、特開2015-130788〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成26年11月23日の出願であって、平成29年10月16日付で補正書が提出され、平成30年3月29日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成30年4月10日)、これに対し、平成30年5月27日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年10月5日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成30年10月16日)、これに対し、平成30年11月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審により令和元年6月13日付で拒絶の理由が通知され(発送日:令和元年6月18日)、これに対し、令和元年7月7日付で意見書が提出されたものである。
2.特許請求の範囲
平成30年5月27日付の手続補正で特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
コイルを有する電気回路n個(n≧3)を相互に誘導的に結合した回路で、それらの
任意の回路に電気を流した時、各回路に流れる電流の大きさが時間と共に増加するもの。」
3.拒絶の理由
令和元年6月13日付の当審の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「I この出願は、明細書、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。
II この出願の請求項1に記載された事項は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。
III この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由I
記
(1)コイルを有する電気回路n個を相互に誘導的に結合した回路は、相互誘導電気回路がn=2の場合、一次回路と二次回路を有するトランスが該当する。トランスの一次側に電源を接続して電力を供給すると、二次側に出力が発生し、当該出力は一次側に電力が供給される限り継続するが、単にエネルギーを二次側に送っただけであり、何等発電はしていない。この回路動作は、n≧3の場合も同様である。そうすると、請求人は無尽蔵発電と主張するが、上記のトランスの動作のように、電源が存在する限り出力は発生するが、単にエネルギーを二次側に送っただけであり、何等発電はしておらず、何故無尽蔵発電となるのか不明である。なお、自然法則に基づいて発電を行う場合、ある形態のエネルギーを電気エネルギーの形態に変換することとなるが、ファラデーの電磁誘導の法則のような具体的原理が何等示されていない。(トランスの場合、エネルギーの形態は、電源の電気エネルギーがトランス一次側コイルで磁気エネルギーに変換され、当該磁気エネルギーがトランス二次側コイルに送られ、送られた磁気エネルギーが電気エネルギーに変換されて出力され、発電は行っていない。このエネルギーの変換は相互誘導を行う回路であれば同様の変換を行う。)
(2)明細書【0007】の「2-3」において、相互インダクタンスを全て等しいとしており、n個の基本回路から任意の2個の基本回路を選択すると、如何なる2個を選択しても相互インダクタンスが等しいこととなるが、どの様なn個のコイルを用いてどの様にn個のコイルを配置すれば如何なる2個を選択しても相互インダクタンスを等しくできるのか何等開示が無く不明である。インダクタンスL、抵抗R、静電容量C、インピーダンスZも、何故全てを等しい値にできるのか何等開示が無く不明である。
(3)請求項1に「任意の回路に電気を流した時、各回路に流れる電流の大きさが時間と共に増加するもの」とあり、時間とともに電流の大きさが増加すれば、所定時間経過後は無限大の電流が流れ続けることとなるが、有限の電源から何故無限の電流(電力)が取り出せるのか不明であり、本願の回路を用いると何故各回路の電流の大きさが時間と共に増加するのか明細書を参照しても不明である。
理由II
記
(1)請求項1に「任意の回路に電気を流した時、各回路に流れる電流の大きさが時間と共に増加するもの」とあり、発明の詳細な説明も参照すると、容量の大小を問わない電源に本願の電気回路の1つを接続すれば、各回路に流れる電流の大きさが時間と共に増加し、所定時間経過後は無限大の電流が流れ続けることとなり、当該無限大の電流に見合う分のエネルギーが供給されていないにもかかわらず電気エネルギーを発生し続けることとなるため、請求項1に記載された事項は、自然法則を利用した発明であるとは認められない。
理由III
記 (引用例等については引用例等一覧参照)
・請求項1
・引用例等 1-2
・備考
引用例1、2には「コイルを有する電気回路n個を相互に誘導的に結合した回路。」が示されており、トランスであるから当然一次側に電源を接続することとなる。請求人の主張によれば、電気回路n個を有するトランスに電源を接続すれば、各回路に流れる電流の大きさが時間と共に増加するから、請求項1に係る発明は引用例1、2に記載された発明である。
引 用 例 等 一 覧
1.実願昭61-170327号(実開昭63-77319号)のマイクロフィルム
2.特開平6-151213号公報」
4.拒絶の理由に対する当審の判断
理由I
(1)コイルを有する電気回路n個を相互に誘導的に結合した回路は、相互誘導電気回路がn=2の場合、一次回路と二次回路を有するトランスが該当する。トランスの一次側に電源を接続して電力を供給すると、二次側に出力が発生し、当該出力は一次側に電力が供給される限り継続するが、単にエネルギーを二次側に送っただけであり、何等発電はしていない。この回路動作は、n≧3の場合も同様である。そうすると、請求人は無尽蔵発電と主張するが、上記のトランスの動作のように、電源が存在する限り出力は発生するが、単にエネルギーを二次側に送っただけであり、何等発電はしておらず、何故無尽蔵発電となるのか不明である。なお、自然法則に基づいて発電を行う場合、ある形態のエネルギーを電気エネルギーの形態に変換することとなるが、ファラデーの電磁誘導の法則(e=-Ndφ/dt)のような具体的原理が何等示されていない(例えば、トランスの場合、エネルギーの形態は、電源の電気エネルギーがトランス一次側コイルで磁気エネルギーに変換され、当該磁気エネルギーがトランス二次側コイルに送られ、送られた磁気エネルギーが電気エネルギーに変換されて出力されるから、発電は行っておらず、このエネルギーの変換は相互誘導を行う回路であれば同様の変換を行う。)。
(2)明細書【0007】の「2-3」において、相互インダクタンスを全て等しいとしているから、n個の基本回路から任意の2個の基本回路を選択する(n個から2個を選び出す組合せ)と、如何なる2個を選択しても相互インダクタンスが等しいこととなるが、どの様なn個のコイルを用いてどの様にn個のコイルを配置すれば如何なる2個を選択しても相互インダクタンスを等しくできるのか何等開示が無く不明である。インダクタンスL、抵抗R、静電容量C、インピーダンスZも、何故全てを等しい値にできるのか何等開示が無く不明である。
(3)請求項1に「任意の回路に電気を流した時、各回路に流れる電流の大きさが時間と共に増加するもの」とあり、時間とともに電流の大きさが増加すれば、所定時間経過後は無限大の電流が流れ続けることとなるが、有限の電源から何故無限の電流(電力)が取り出せるのか不明であり、本願の回路を用いると何故各回路の電流の大きさが時間と共に増加するのか明細書を参照しても全く不明である。
理由II
(1)請求項1に「任意の回路に電気を流した時、各回路に流れる電流の大きさが時間と共に増加するもの」とあり、発明の詳細な説明も参照すると、容量の大小を問わない電源に本願の電気回路の1つを接続すれば、各回路に流れる電流の大きさが時間と共に増加し、所定時間経過後は無限大の電流が流れ続けることとなり、当該無限大の電流に見合う分のエネルギーが供給されていないにもかかわらず本願の回路は電気エネルギーを発生し続けることとなるため、請求項1に記載された事項は、自然法則を利用した発明であるとは認められない。
理由III
上記理由IIで示したとおり、請求項1に記載された事項は「発明」とは認められないが、仮に「発明」であるとして以下検討する。
請求項1に記載された発明を、以下「本願発明」という。
(1)引用例1
当審の拒絶の理由に引用された引用例1(実願昭61-170327号(実開昭63-77319号)のマイクロフィルム)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
a「1次巻線を複数個の2次巻線に対応して分割し、かつその分割された1次巻線上に前記2次巻線をそれぞれ巻回して成ることを特徴とした多出力パルストランス。」(実用新案登録請求の範囲)
上記記載及び図面を参照すると、多出力パルストランスであるから、コイルを有する電気回路n個(n≧3)を相互に誘導的に結合した回路であり、1次巻線には電源が接続されるから、1次巻線の回路に電気を流した時、2次巻線の複数個の回路に流れる電流の大きさが所定のものといえる。
上記記載事項からみて、引用例1には、
「コイルを有する電気回路n個(n≧3)を相互に誘導的に結合した回路で、それらの
1次巻線の回路に電気を流した時、2次巻線の複数個の回路に流れる電流の大きさが所定のもの。」
との発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
(2)本願発明と引用発明1との対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「1次巻線の回路」、「2次巻線の複数個の回路」は、本願発明の「任意の回路」、「各回路」に相当する。
引用発明1の「電流の大きさが所定のもの」と、本願発明の「電流の大きさが時間と共に増加するもの」は、「電流の大きさが所定のもの」で一致する。
したがって、両者は、
「コイルを有する電気回路n個(n≧3)を相互に誘導的に結合した回路で、それらの
任意の回路に電気を流した時、各回路に流れる電流の大きさが所定のもの。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
〔相違点〕
各回路に流れる電流に関し、本願発明は、電流の大きさが時間と共に増加するのに対し、引用発明1は、電流の大きさが所定である点。
(3)引用例2
当審の拒絶の理由に引用された引用例2(特開平6-151213号公報)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
b「【請求項1】複数の導体を相互に絶縁して撚り合せて成るツイスト電線をうず巻状に巻回し、複数の電線の中の少なくとも1本を1次巻線として用い、残りの電線を2次巻線として用いることを特徴とするツイスト薄型電圧変換装置。」
c「図6は電線15が1次巻線で電線14,16がそれぞれ独立した2次巻線として多出力を実現した場合の結線で、巻線比は1:1である。図7は電線14,16が直列に接続された1次巻線で、電線15が2次巻線であり、巻線比は2:1(すなわち2次電圧は1次電圧の約1/2)である。図8は電線14,16が並列に接続された1次巻線で、電線15が2次巻線であり、巻線比は1:1である。図9は電線15が1次巻線で、電線14,16が直列に接続された2次巻線であり、巻線比は1:2(すなわち2次電圧は1次電圧の約2倍)である。図10は電線15が1次巻線で、電線14,16が並列に接続された2次巻線であり、巻線比は1:1である。」(【0019】)
上記記載及び図面を参照すると、多出力トランスであるから、コイルを有する電気回路n個(n≧3)を相互に誘導的に結合した回路であり、1次巻線には電源が接続されるから、1次巻線の回路に電気を流した時、2次巻線の複数個の回路に流れる電流の大きさが所定のものといえる。
上記記載事項からみて、引用例2には、
「コイルを有する電気回路n個(n≧3)を相互に誘導的に結合した回路で、それらの
1次巻線の回路に電気を流した時、2次巻線の複数個の回路に流れる電流の大きさが所定のもの。」
との発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
(4)本願発明と引用発明2との対比
そこで、本願発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「1次巻線の回路」、「2次巻線の複数個の回路」は、本願発明の「任意の回路」、「各回路」に相当する。
引用発明2の「電流の大きさが所定のもの」と、本願発明の「電流の大きさが時間と共に増加するもの」は、「電流の大きさが所定のもの」で一致する。
したがって、両者は、
「コイルを有する電気回路n個(n≧3)を相互に誘導的に結合した回路で、それらの
任意の回路に電気を流した時、各回路に流れる電流の大きさが所定のもの。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
〔相違点〕
各回路に流れる電流に関し、本願発明は、電流の大きさが時間と共に増加するのに対し、引用発明2は、電流の大きさが所定である点。
(5)判断
引用発明1、2は、本願発明と一致点・相違点が同じのため、一緒に判断する。
請求人が平成30年5月27日付で提出した意見書の記載「上記の議論をn個の相互誘導の場合に敷衍すれば、無尽蔵発電理論はエネルギー保存則に反する理論ではなく、相互誘導と言う現象を利用する事により利用不能な電気エネルギーを利用可能な電気エネルギーに変換する事が出来る事を示した理論だと言う事が解ります。」とはどの様なことか技術的に不明であるが、本願発明と引用発明1、2とは、回路構成自体が同一であるから同一の作用効果を奏するものと認められ、かかる請求人の主張に基づけば、電気回路n個を有するトランスに電源を接続すれば、各回路に流れる電流の大きさが時間と共に増加という同一の作用効果を奏するから、本願発明と引用発明1、2に差異は認められない。
したがって、本願発明は、引用発明1、2と同一と認められ、特許法第29条第1項第3号に該当する。
5.むすび
したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の記載は明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、請求項1に記載された事項は、自然法則を利用した発明とは認められないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、また、本願の請求項1に記載された事項が仮に「発明」であったとしても、本願発明は、引用発明1、2と同一と認められるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
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